説明

硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、光学材料、並びに発光装置

【課題】 硬化前の流動性及び硬化後の硬度や強度などの機械的特性、並びに、屈折率などの光学的特性が、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適な硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供すること。
【解決手段】 まず、高屈折率無機材料からなる微粒子の表面を、凝集を防止する表面処理剤で被覆する。次に、架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を有するシリコーン樹脂材料と、上記微粒子と、ヒドロシリル化反応触媒とを混合して、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を調製する。シリコーン樹脂材料は、C=C結合を2つ以上有する単量体と、SiH基を2個以上有する単量体とで構成し、これらを別々に前記微粒子と混合して、貯蔵しておく。硬化処理に際して、両単量体を混合した後、加熱して重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が変更された樹脂−微粒子複合体の材料である硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズや光透過性フィルムなどの一般光学部品や、オプトエレクトロニクス用の精密光学部品の材料として、有機高分子樹脂からなる光学材料(以下、略して有機光学樹脂と言う。)が用いられる傾向が強まっている。この理由として、有機光学樹脂が、無機光学材料に比べて、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れていることが挙げられる。
【0003】
例えば、有機光学樹脂は、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの発光素子を備えた発光装置(発光デバイス)の封止材料等として用いられている。これらの発光装置は、小型でありながら、高輝度であるため、自動車のストップランプ、信号灯、野外用大型ディスプレイ等、種々の用途で用いられている。また、消費電力が少なく、長寿命であることから、最近では携帯電話用液晶ディスプレイや大型液晶テレビのバックライト光源等としても用いられている。
【0004】
図4は、上記発光装置の一般的な構造の一例を示す断面図である。図4に示すように、発光装置100では、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように封止部材114が配置されている。発光素子13から出射された光は、封止部材114との境界面を通過した後、封止部材114内を通り、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、外部に取り出される。
【0005】
封止部材114は、発光素子13や配線が空気中の酸素や湿気やその他の腐食性ガスに直接接触するのを防止することや、さらには発光素子が外力によって物理的な損傷を受けるのを防止すること等を目的として設けられるもので、発光装置100の特性や封止部材114の設置目的に応じて、適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、一般的なLEDでは、発光素子13の上あるいは上方に、図4に示すような形状で適当な厚さに配置される。
【0006】
封止部材114の材料としては、従来、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の透明樹脂が用いられているが、多くの場合、エポキシ系樹脂が用いられている。しかし、エポキシ系樹脂は耐熱性および耐光性が不足し、近年需要が増大している高出力の発光素子に用いるには問題がある。
【0007】
例えば、エポキシ系樹脂のガラス転移点Tgは100〜150℃であり、ガラス転移点Tg以上の温度では線膨張係数が増大する(Phys.Stat.Sol.(a),194,No.2,380-388(2002)参照。)。このため、エポキシ系樹脂を封止部材として用いた場合、発光素子の発熱によってエポキシ系樹脂がガラス転移点Tg以上の温度に加熱されると、封止部材の変形によって発光素子への配線が切断されるおそれが生じる。これを防止するためには、発光素子の出力を、エポキシ系樹脂の温度がガラス転移点Tgを越えない大きさに制限せざるを得なくなる。
【0008】
また、エポキシ系樹脂は耐光性、特に紫外光や青色光に対する耐光性が不足している。このため、高輝度LEDや青色発光LED等の封止に用いられた場合、LEDから放射される青色光に暴露されて黄色に変色し、時間の経過とともにLEDの出力を低下させる原因になる。
【0009】
そこで、最近、発光素子、特に高輝度LEDや青色発光LEDでは、エポキシ樹脂に代わる封止材料として、シリコーン系樹脂が用いられるようになってきている。シリコーン系樹脂は耐光性が良好であり、高輝度LEDや青色発光LED等の封止に用いられた場合でも、LEDの出力を低下させる原因になりにくい。また、適度な柔軟性を有するので、発光素子の発熱によって加熱され高温になった場合でも、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。
【0010】
但し、シロキサン骨格のみで構成されるシリコーン系樹脂では、強度が不足し、封止部材自体が外力によって変形してしまい、発光素子の物理的な損傷を防止することができない場合があり得る。後述の特許文献1には、架橋環式構造の導入などによって、シリコーン系樹脂の硬度および強度を高めることができる例が示されている。
【0011】
一方、上記とは別の有機光学樹脂の問題点として、屈折率が小さいことが挙げられる。例えば、実用化されているシリコーン系樹脂の屈折率は高々1.5程度であり、これよりやや大きいエポキシ系樹脂の屈折率でも1.53〜1.57である。一般に屈折率が1.7をこえる有機光学樹脂を得ることは難しい。これに対し、高輝度LEDや青色発光LEDなどのチップ基板として用いられることの多いサファイア基板の屈折率は、1.76である。このように、従来の発光装置では、発光素子13と封止部材114との間に大きな屈折率の差が存在するため、発光素子13から出射された光の一部が発光素子13と封止部材114との界面において全反射され、全反射された光の多くが発光素子13によって吸収されるため、発光素子13から光を取り出す効率が低く抑えられている。従って、発光素子13からの光取り出し効率を向上させるために、封止部材114の高屈折率化が求められている。
【0012】
そこで、大きな屈折率を有する無機ナノ粒子を有機光学樹脂に分散させ、有機光学樹脂を複合体化することによって、より大きな屈折率を有し、しかも、有機光学樹脂と同様に、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れている材料を実現しようとする研究開発が行われている。近年、粒径が1μm以下のナノ粒子が注目されており、粒径が光の波長の1/4以下のナノ粒子であれば、光を散乱させることが少ない。無機材料の中には、金属酸化物などからなり、大きな屈折率を有するものがある。
【0013】
例えば、後述の特許文献2には、上述した有機光学樹脂−無機ナノ粒子複合体を介して、LEDなどの発光素子からの光を取り出すように構成された発光装置が提案されている。有機光学樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示され、高屈折率の無機材料としては、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が例示され、高屈折率の無機ナノ粒子の添加によって、複合体の屈折率を1.5から1.8程度へ向上させることができると記載されている。
【0014】
また、後述の特許文献3には、ポリマーと無機粒子とをリンカー分子などによって一体化させたブレンド材料によって屈折率が異なる種々の材料を形成し、これらの材料を積層することによって、フォトニック結晶などの光学構造体を作製した例が報告されている。
【0015】
【特許文献1】特開2005−272697号公報(第4−7及び9頁)
【特許文献2】特開2004−15063号公報(第8−10頁、図2及び3)
【特許文献3】特表2004−537767号公報(第12−16頁、図31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
シリコーン系樹脂を、発光素子の封止部材や、封止部材を用いない発光装置の充填部材などとして用いる場合、シロキサン骨格のみで構成されるシリコーン系樹脂では、硬度および強度が不足する場合がある。特許文献1には、架橋環式構造の導入などによって、シリコーン系樹脂の硬度および強度を適度に高めることができる例が示されている。しかし、例示されているシリコーン系樹脂の屈折率は1.5程度であるため、光取り出し効率の向上のためには、例示されている樹脂を高屈折率化することが望まれる。特許文献1には、他の成分を配合することは任意であり、例えば、強度を向上させるためにヒュームドシリカ等の無機質充填剤を配合してもよいと記載されているが、屈折率の向上に関しては何も述べられていない。
【0017】
また、シリコーン系樹脂に上記無機質充填剤を均一に分散させる構成や製造方法について、何も述べられていない。通常、有機光学樹脂に無機微粒子を均一に分散させる方法としては、まず、適当な溶媒に無機微粒子を分散させた分散液を調製し、これに硬化前の硬化性有機光学樹脂モノマーを均一に混合した後、モノマーを重合させ、有機光学樹脂−無機微粒子複合体を形成する方法が用いられる。この際、無機微粒子は一般に有機材料に対する親和性が乏しく、しかも、無機微粒子同士は凝集し合う力が極めて強いので、無機微粒子同士が凝集し、上記複合体の透明性が損なわれてしまう懸念がある。このような凝集を起こさせず、無機微粒子を有機光学樹脂中に均一に分散させるための追加的構成や製造方法が必要であるのは明らかである。
【0018】
一方、特許文献2には、無機ナノ粒子を有機光学樹脂に分散させ、屈折率を向上させた有機光学樹脂−無機ナノ粒子複合体が提案されている。しかし、特許文献2においても、上記無機ナノ粒子を均一に分散させるための構成や製造方法について、何も述べられていない。
【0019】
また、特許文献3には、ポリマーと無機粒子とを一体化させたブレンド材料によって、屈折率が種々に異なる材料を形成することが提案されている。特許文献3では、ポリマー中に無機ナノ粒子を分散させるための構成として、無機ナノ粒子表面を活性化させるリンカー分子を用いる構成が示されている。しかし、特許文献3には、上記ブレンド材料を光学素子の封止部材などとして用いることの可否に関する記述や、封止部材などとして用いる場合に必要な特性、例えば、硬化前の上記ブレンド材料の流動性や、硬化後の上記ブレンド材料の硬度や強度などに関する記述はない。既述したように、発光素子の封止部材などとして用いるためには、硬化前の材料が、塗布や印刷や注入などの方法で配置できるように、好適な粘度を有する必要がある。しかも、硬化後の材料が、発光素子を保護できる硬度、例えば、手で押した程度では容易には変形しない硬度をもち、かつ、熱応力により発光素子から剥離したり、発光素子を破損したり、配線を断線する等の障害を生じないように、硬すぎないことが必要である。
【0020】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、硬化前の流動性及び硬化後の硬度や強度などの機械的特性、並びに、屈折率などの光学的特性が、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適な硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明は、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記シリコーン樹脂材料が、架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を有し、
前記微粒子の表面に、前記微粒子同士が凝集するのを防止する表面処理が施されてい る、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に係わるものである。なお、「架橋環式炭化水素(又はその置換体)の基」とは、厳密には、「架橋環式炭化水素(又はその置換体)から1個又は複数個の水素原子を取り除くことによって生じる構造を有する、1価又は多価の基」のことである。
【0022】
本発明は、また、前記した屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
表面処理剤を含む溶媒中において、前記微粒子の2次凝集を解消する分散処理を行い 、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法に係わるものである。
【0023】
本発明は、また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料に係わり、また、発光素子から出射された光が、前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置に係わるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であるが、前記シリコーン樹脂材料が前記架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を有している。前記架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基では、分子内回転による環の変形が架橋によって制限されるため、架橋環の部分は硬い(rigidな)分子骨格を有する。分子中にこのような硬い部分構造が存在する効果は、流動性を有している、未硬化又は半硬化の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では比較的現れにくいが、重合による硬化が進んだ前記樹脂−微粒子複合体では顕著に現れる。従って、前記架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を導入することによって、硬化前の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の流動性をほとんど損なわずに、硬化後の前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させることができる。
【0025】
さらに、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、前記微粒子同士が凝集するのを防止する表面処理が、前記微粒子の表面に施されているので、屈折率の大きな無機材料からなる前記微粒子が、凝集することなく、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に均一に分散する。このため、前記微粒子の添加によって、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、及びこれから得られる前記樹脂−微粒子複合体の透明性を損なうことなく、それらの屈折率を向上させることができる。
【0026】
以上の結果、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、硬化前には、塗布法や印刷法によって所定の位置に配置するのに適した流動性を有し、硬化後には、透明性が高く、屈折率が向上し、発光素子の封止部材又は充填部材などとして用いるのに十分な硬度および強度を有する前記樹脂−微粒子複合体を形成することができる。また、前記樹脂−微粒子複合体は、従来のシリコーン樹脂と同様、化学的に安定で、耐光性が良好であり、軽量、安価で、加工性や量産性に優れている。
【0027】
また、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法は、
表面処理剤を含む溶媒中において、前記微粒子の2次凝集を解消する分散処理を行い 、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う
ので、前記微粒子の前記2次凝集を解消し、前記微粒子を前記未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に均一に分散させることができ、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を確実に製造することができる。
【0028】
また、本発明の光学材料は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる前記樹脂−微粒子複合体からなるので、上述したように、透明性が高く、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも大きな屈折率を有している。また、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも硬度および強度が向上しており、発光素子の封止部材又は充填部材などとして用いるのに十分な硬度および強度を有する。また、この光学材料は、従来のシリコーン樹脂と同様、化学的に安定で、耐光性が良好であり、軽量、安価で、加工性や量産性に優れている。
【0029】
また、本発明の発光装置では、発光素子から出射された光が、本発明の光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている。この際、前記光学材料は、透明性が高く、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも大きな屈折率を有しているので、前記発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
また、前記光学材料は、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも硬度および強度が向上しており、前記発光素子の封止部材などとして用いられた場合に、前記発光素子を保護する性能が高いので、外力によって封止部材自体が変形して前記発光素子の損傷を防止できないなどということは起こらない。また、発光素子の発熱によって加熱されて高温になった場合でも、流動性が増大しすぎて前記光学材料が前記発光装置から流出するといった現象が発生することがなく、前記発光装置の長期的信頼性を確保することができる。一方、硬くなりすぎることがない適度な硬度を有するので、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。以上の結果、歩留まりよく、耐久性に優れた発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記の架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有する前駆体分子に対するヒドロシリル化反応によって、前記シリコーン樹脂材料中に導入するのがよい。付加反応性とは、アルケンなどの炭素−炭素二重結合が一般的に有する、酸分子などの付加を受けやすい反応性のことであるが、本発明では、特に、下記の反応式(1)で示されるように、ケイ素原子に水素原子が結合した基(SiH基)の付加を受け、二重結合を形成している2個の炭素原子が、それぞれ、水素原子およびケイ素原子と結合を形成するヒドロシリル化反応を行う反応性を意味するものとする。
【0032】
反応式(1):
【化1】

【0033】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法において、前記の架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基は、前記シリコーン樹脂材料のシロキサン結合からなる主鎖に含まれるのがよい。前記架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基の導入位置は、特に限定されるものではないが、シリコーン樹脂高分子の主鎖に含まれていると、分子内回転によるシリコーン樹脂高分子の変形を制限する働きが、側鎖に含まれる場合よりも有効になるので、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させる効果が大きくなる。
【0034】
この際、前記架橋環式炭化水素が、ノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)及び/又はテトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカンであるのがよい。ノルボルネンは、下記の構造式(1)で示されるビシクロ[2,2,1]ヘプタンであり、コンパクトで歪みの少ない環構造であるシクロヘキサン環に、メチレン基による適度な長さの橋かけが形成されている。このため、ノルボルネン分子では、効果的に分子内回転による環の変形が抑制され、硬く、安定な分子骨格が形成されているので、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させる効果が大きい。
【0035】
構造式(1):
【化2】

【0036】
また、テトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカンの構造は、下記の構造式(2)で示される。この分子はノルボルネンと類似した環構造をもち、ノルボルネンと同様に、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させる効果が大きい。
【0037】
構造式(2):
【化3】

【0038】
これらの架橋環式炭化水素の基を前記シリコーン樹脂材料に導入する方法は、とくに制限されないが、例えば、5−ビニルビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エンにSiH基を有するシロキサン系化合物を作用させると、ヒドロシリル化反応によってノルボルネンの2価基を主鎖中に導入することができる。同様に、9−ビニルテトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカ−4−エンにSiH基を有するシロキサン系化合物を作用させると、テトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカンの2価基を主鎖中に導入することができる。
【0039】
また、前記シリコーン樹脂材料は、主として有機シロキサン、例えばジメチルシロキサンの構造を有する部分からなるのがよい。有機シロキサンは化学的に安定な構造である。また、前記シリコーン樹脂材料は、フェニル基を含有する構造部分、例えばメチルフェニルシロキサンやジフェニルシロキサンの構造を有する部分からなるのがよい。フェニル基を含有すると、前記シリコーン樹脂材料、ひいては前記樹脂−微粒子複合体の屈折率が高くなるので好ましい。
【0040】
また、前記シリコーン樹脂材料は、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するのがよい。これらの基は、前記シリコーン樹脂材料と基板材料などとの結びつきを強化する働きをする。
【0041】
また、前記シリコーン樹脂材料が、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、SiH基を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒とからなり、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とは別々に貯蔵され、ヒドロシリル化反応によって前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とを重合させる硬化処理の前に、混合されるのがよい。このように、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)とSiH基とを別々のシロキサン系化合物に保有させ、両者を別々に貯蔵することによって、貯蔵中にヒドロシリル化反応が進行してしまうことを完全に防止することができる。この結果、長期間の保存が可能となり、いわゆるポットライフが長くなる。
【0042】
前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とが次々に連結して高分子を形成するには、各単量体が付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)およびSiH基をそれぞれ2個以上保有していることが必要である。それ以外の制限はこれらの単量体にないが、適切な特性を有する単量体を用い、重合度を適切に調節することによって、硬化前の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、および硬化後の前記樹脂−微粒子複合体の硬度を所望の大きさにするか、少なくとも近づけることができる。例えば、低分子量の単量体分子を用いれば、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度を低下させることができる。また、単量体1分子が保有する付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)及び/又はSiH基の数を増加させることによって、三次元網目状に高分子鎖を連結して、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させることができる。
【0043】
前記架橋環式炭化水素の基は、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とのいずれに含まれていてもよく、両方に含まれていてもよい。前記微粒子は、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とのいずれに混合されていてもよく、両者に混合されていてもよい。両者に混合されている場合、前記第1のシロキサン系化合物に混合される微粒子と前記第2のシロキサン系化合物に混合される微粒子とは、同じ種類の微粒子であってもよいし、異なる種類の微粒子であってもよい。前記ヒドロシリル化反応触媒は、前記第1のシロキサン系化合物に混合されているのがよい。これは、前記ヒドロシリル化反応触媒が前記第2のシロキサン系化合物に混合されていると、前記微粒子の前記表面処理剤と前記第2のシロキサン系化合物との間でヒドロシリル化反応が進行し、貯蔵中にゲル化してしまう恐れがあるからである。
【0044】
前記第1のシロキサン系化合物が保有する付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を含む基として、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基などを挙げることができる。これらの基が含まれる位置は、前記第1のシロキサン系化合物の末端でも側鎖でもよい。
【0045】
また、前記第2のシロキサン系化合物において、SiH基が含まれる位置は、前記第2のシロキサン系化合物の末端でも側鎖でもよい。
【0046】
前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の構成の一例を、それぞれ、下記一般式(3)および(4)に示す。これらは分子骨格が直鎖状である例であるが、分子骨格が枝分かれを有していてもよい。また、下記一般式(3)および(4)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、それらの結合順などの構造を示すものではない。
【0047】
前記第1のシロキサン系化合物の一般式(3):
【化4】

(一般式(3)中、Xは付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を含む基を表し、Tは架橋環式炭化水素の2価の基を表す。また、RA〜RCはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。lおよび(m+n)は1以上の整数であり、m、n、pおよびqは0以上の整数である。また、1分子中にXは2個以上含まれる。)
【0048】
前記第2のシロキサン系化合物一般式(4):
【化5】

(一般式(4)中、ZはSiH基を含む基を表し、Tは架橋環式炭化水素の2価の基を表す。また、RA〜RCはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。lおよび(m+n)は1以上の整数であり、m、n、pおよびrは0以上の整数である。また、1分子中にZは2個以上含まれる。なお、T、RA〜RC、l、m、n、pは、一般式(3)と同じ記号を用いたが、これは便宜上であって、これらが示す構造又は数値は、一般式(3)における構造又は数値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。pは、少なくとも、一般式(3)および(4)のいずれか一方で1以上である。)
【0049】
前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物からなる前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の前記硬化処理は、加熱によってヒドロシリル化反応による重合を促進することによって行われるのがよい。また、前記ヒドロシリル化反応触媒が白金族系触媒であるのがよく、具体的には、塩化白金酸、白金アセチルアセトネート、塩化白金酸とオクタノールとの錯体、白金のビニルシロキサンとの錯体を挙げることができる。白金族系触媒の添加量は、白金の質量が、オルガノシロキサン系化合物の全質量に対して0.5〜200ppmであるのが好ましい。白金族系触媒の添加量が多すぎると、前記樹脂−微粒子複合体が黄変または茶変する等の問題が生じることがある。
【0050】
また、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法において、前記表面処理に用いられる表面処理剤が、前記微粒子の表面と共有結合或いはイオン結合を形成する官能基と、前記シリコーン樹脂材料に親和性を有する有機基とをもち、前記表面処理において前記微粒子の表面を被覆するのがよい。前記表面処理剤は界面活性剤あるいは分散剤として機能する。前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の良好な分散状態は、前記表面処理剤と前記シリコーン樹脂材料とを適切に選択することにより、達成することができる。
【0051】
この際、前記表面処理剤の分子量が1×103以下であるのがよい。前記表面処理剤の分子量が1×103を超えると、低屈折率成分である前記表面処理剤の割合が大きくなりすぎ、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における、高屈折率成分である前記微粒子の体積充填率を十分に大きくすることができない。この結果、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率、ひいては前記樹脂−微粒子複合体の屈折率を所望の値に向上させることができなくなるおそれがある。なお、前記微粒子の体積充填率とは、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積の割合のことである。また、前記表面処理剤の分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。この際、分子量が既知のポリスチレンを用いて検量線を作成し、これを基準として分子量を決定するのがよい。
【0052】
そして、前記表面処理剤に、必須の表面処理剤として、下記一般式(1)で示される化合物が少なくとも1種類含まれているのがよい。
一般式(1):R1−X1
(式中、R1は、前記有機基であり、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、前記微粒子同士が凝集するのを防止する。R1の一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。X1は、前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【0053】
さらに、前記表面処理剤に、前記必須の表面処理剤に加えて、追加の表面処理剤として、下記一般式(2)で示される化合物が少なくとも1種類含まれているのがよい。
一般式(2):R2−X2
(式中、R2は、前記有機基であり、末端に付加反応性炭素-炭素二重結合を有する炭化水素基からなる。R2は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X2は、前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【0054】
上述したX1およびX2のうち、カルボキシル基、ヒドロヒドロキシホスホリル基、ホスホノ基、スルフィノ基、およびスルホ基は、前記微粒子の表面とイオン結合する。メルカプト基は、前記微粒子の表面と共有結合する。ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基は、前記微粒子の表面のヒドロキシ基−OHと反応して、前記微粒子の表面に−O−Si−結合を形成して結合する。その他に、前記表面処理剤は、前記微粒子の表面と配位結合あるいは水素結合を形成する官能基を有するものであってよい。
【0055】
前記微粒子の表面を被覆し、前記微粒子同士の凝集を防止するために、前記R1は、炭素数6〜18程度の大きさを有しているのがよい。具体的には、前記必須の表面処理剤として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、アセチル安息香酸、ジフェニル−4−安息香酸、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、メチル安息香酸、ブチル安息香酸、フェノキシ酢酸、フェノキシ安息香酸、フェニルブタン酸、フェニル酪酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、デカンチオール、ドデカンチオール、およびオクタデカンチオールなどを挙げることができる。
【0056】
また、がシラン置換体である場合、オクチルトリメトキシシラン、オクチルジメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、4−フェニルブチルジメチルクロロシラン、4−フェニルブチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、およびm−フェノキシフェニルジメチルクロロシランなどを挙げることができる。
【0057】
なお、4−フェニルブチルジメチルクロロシラン、4−フェニルブチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、m−フェノキシフェニルジメチルクロロシラン、およびスチリルエチルトリメトキシシランなどのシラン置換体は、屈折率が高いので、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を高くするのに好適である。これらシラン置換体は、用いるシリコーン樹脂材料に応じて複数を任意の比率で配合して用いることができる。
【0058】
前記必須の表面処理剤で前記表面処理を行っただけでは、前記微粒子と前記シリコーン樹脂材料との結びつきが弱い場合がある。このような場合、硬化が始まり、前記第1および前記第2のシロキサン系化合物間の結びつきが強まり、シリコーン樹脂の高次の網目状構造が形成されると、樹脂材料のみが高分子化して、前記微粒子が排除され、前記微粒子同士の凝集が生じ、白濁することがある。このような場合に、前記追加の表面処理剤が有効である。
【0059】
前記追加の表面処理剤は、前記R2の末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有している。このため、前記第2のシロキサン系化合物が有するSiH基とのヒドロシリル化反応によって、シリコ−ン樹脂と効率よく結合することができ、前記微粒子とシリコ−ン樹脂との間を架橋する働きをすることができる。このようにして、前記追加の表面処理剤は、前記微粒子と前記シリコーン樹脂との結びつきを強め、硬化反応時に起こる前記微粒子同士の凝集と、その結果起こる白濁を抑制する働きをする。
【0060】
前記追加の表面処理剤として、アクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、9−デセン酸、3−ビニル安息香酸、および4−ビニル安息香酸などを挙げることができる。また、前記追加の表面処理剤がシラン置換体である場合、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、およびスチリルエチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0061】
前記樹脂−微粒子複合体の硬度を調整する目的で、前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物と重合しない非重合性シロキサン系化合物を前記シリコーン樹脂材料に含めることができる。非重合性シロキサン系化合物の例として、ジオルガノポリシロキサンを挙げることができる。特にフェニル基を含むジオルガノポリシロキサンは、前記樹脂−微粒子複合体の屈折率が高くなるので好ましい。非重合性シロキサン系化合物の添加量は、前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の合計を100重量部としたとき、80重量部以下とすることが好ましい。また、非重合性シロキサン系化合物の分子量は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の流動性が損なわれない範囲で選択するのがよい。
【0062】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が80℃で100Pa・s以下であるのがよい。このようであれば、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、薄膜コーティング、印刷、注入等の方法で配置するのに適したものとなる。なお、本発明において、粘度は、コーンプレート型の回転式粘度計を用いて測定した数値である。
【0063】
前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の粘度として、1×10-2〜10Pa・s、好ましくは1×10-2〜5Pa・s、より好ましくは1×10-2〜2.5Pa・sを例示することができる。これらのシロキサン系化合物の粘度が大きすぎる場合には、前記微粒子を分散させた前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の流動性が損なわれ、発光素子を封止することが困難になる場合がある。上記のシロキサン系化合物の数平均分子量としては、2×102〜2×104を例示することができる。なお、シロキサン系化合物の分子量は、GPCを用いた方法に基づき測定することができる。
【0064】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化して得られる前記樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さ(最大荷重/圧子の接触面積)が2〜20N/mm2であるのがよい。この点に関しては、本発明の光学材料及び発光装置の項で説明する。なお、前記樹脂−微粒子複合体の硬さは、公知の硬さ試験機によって測定することができるが、本発明において硬さとは、Fischer社製の微小硬さ計PICODENTOR HM500を用いて測定したマルテンス硬さを意味するものとする。この際、最大荷重は100mNであり、圧子として4角錐形状のダイヤモンドを用いるものとする。
【0065】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は透明であるのがよい。このようであれば、硬化して得られる樹脂−微粒子複合体を光学材料として好適に用いることができる。なお、本発明において「透明である」とは、後述の実施例において説明する光透過率の測定方法に基づいて測定された、厚さ0.5mmの試料の光透過率が、可視光及び/又は近赤外光に対して80%以上であることを意味するものとする。
【0066】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率が可視光域において1.55以上であるのがよい。この場合、この硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、既存のエポキシ樹脂の屈折率と同等以上となり、屈折率の高い光学樹脂材料として高い利用価値をもつことになる。なお、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、前記微粒子の種類と体積充填率とに基づき制御が可能であり、可視光域において屈折率1.55以上を達成することができる。なお、屈折率は、例えばアッベ屈折率計あるいはVブロック方式の屈折率計を用いて測定する。
【0067】
また、前記微粒子を構成する前記無機材料は、可視光域において1.9以上の屈折率を有するのがよい。この前記無機材料は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなるのがよい。前記微粒子は、これら無機化合物のうちの2種類以上の前記微粒子が混合された状態で構成されていてもよい。なお、上記の無機化合物を構成する金属元素の窒化物によって、前記微粒子を構成することもできる。
【0068】
また、前記微粒子の粒径(R)が2〜20nmであるのがよく、好ましくは2〜10nmであることが望ましい。ここで言う前記微粒子の粒径は、ミクロトームを用いて前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の薄片を作製し、これを透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、前記微粒子の観察像の粒径を計測することによって得られた測定値である。透過型電子顕微鏡にて観察された前記微粒子の立体形状が球形ではない(平面形状が円形ではない)場合には、観察された前記微粒子の平面形状の面積と同じ面積を有する円形を想定し、その円形の直径を粒径とするものとする。球形ではない前記微粒子の立体形状の例として、ロッド状、回転楕円体状、直方体などを挙げることができる。
【0069】
前記微粒子の粒径(R)の平均値をRave、標準偏差をσとしたとき、前記微粒子の粒径(R)の上限が20nmであり、好ましくは10nmであるとは、
ave+2σ≦20nm
であり、好ましくは
ave+2σ≦10nm
であることを意味するものとする。
【0070】
前記微粒子の粒径を20nm以下に限定することで、レイリー散乱に起因した樹脂−微粒子複合体における光透過率の低下を抑制することができ、実用上、透明な樹脂−微粒子複合体を得ることができる。光透過率は、光路長が長くなるに伴って指数関数的に減少するので、光路長が長くなる程、小さな微粒子を用いることが好ましい。なお、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料中において前記微粒子の凝集体が形成されると、凝集体のサイズが実効的な粒子サイズとなるので、光の散乱を抑えるためには、既述したように、前記微粒子が凝集体を形成しないように表面処理された状態で分散していることが必要である。
【0071】
なお、前記微粒子の粒径が2nmより小さくなると、前記微粒子の比表面積が著しく大きくなり、前記微粒子の表面を被覆するために必要になる表面処理剤の量が多くなりすぎる。このような場合、被覆された前記微粒子において、屈折率の小さい表面処理剤の割合が大きくなりすぎ、前記微粒子を添加しても硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率をそれほど高めることができなくなる。また、粒径が2nmより小さくなると、少量の前記微粒子の添加で前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が著しく増加する。これらの理由から、前記微粒子の粒径は2nm以上であるのがよい。
【0072】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、以下の考え方に基づき、前記微粒子の充填量によって調節することができる。すなわち、高屈折率の前記微粒子が樹脂材料中に均一に分散した前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、Maxwell-Garnet理論に基づく下記の関係式(1)を用いて見積もることができる(C. F. Bohren and D. R. Huffman, "Adsorpiton and Scattering of Light by Small Particles", John Wiley & Sons, New York, 1983, pp 213 参照)。但し、関係式(1)においては、前記微粒子を被覆する表面処理剤はないものと仮定している。
【0073】
数式(1):
【数1】

(式中、
εav :前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の平均比誘電率
εp :前記微粒子の比誘電率
εm :樹脂の比誘電率
η :前記微粒子の体積充填率
である。)
【0074】
屈折率nは、n=ε1/2で表されるので、式(1)を用いて、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の平均屈折率を見積もることができる。例えば、屈折率2.5のアナターゼ型の酸化チタン・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、前記微粒子の体積充填率ηを0.06および0.15としたとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体(平均)の屈折率は、1.55および1.63となる。
【0075】
この例のように、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に含有させる前記微粒子の体積充填率ηを変えることによって、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の屈折率を調整することが可能である。それ故、予め前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の目標の屈折率に応じて前記微粒子の構成材料を選定し、更には、体積充填率ηを設定すればよい。ここで、前記微粒子の体積充填率ηは、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を加熱して有機成分を燃焼した後の残渣(前記微粒子)の量から求めることができる。加熱重量変化は、例えば、TG測定により測定することができる。最終的に得られた前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積充填率の値は、例えば、0.01〜0.4であることが好ましい。
【0076】
また、粒径が光の波長よりも十分に小さい場合のレイリー散乱に基づく前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における光透過率は、以下の数式(2)及び(3)から得ることができる。
【0077】
数式(2):
【数2】

【0078】
数式(3):
【数3】


(式中、
sca:散乱断面積(単位:nm2
αsca:消光率(単位:nm-1
m :マトリクス(シリコーン樹脂)の屈折率
p :球状粒子(前記微粒子)の屈折率
r :球状粒子(前記微粒子)の半径(=Rave/2)
λ :空気中の光の波長
である。)
【0079】
従って、例えば、屈折率2.5のアナターゼ型の酸化チタン・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、体積充填率ηが0.15のとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光が通過する部分の厚さt=0.5mmにおいて透明であるためには、前記微粒子の粒径Rを6nm以下にしなければならない。また、屈折率2.2の酸化ジルコニウム・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、体積充填率ηが0.15のとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光が通過する部分の厚さt=0.5mmにおいて透明であるためには、前記微粒子の粒径Rを8nm以下にしなければならない。このように前記微粒子の粒径R及び体積充填率ηは、用いるマトリクス樹脂材料の屈折率及び前記微粒子の屈折率により、所望の透明性が得られるように適宜選択されることが望ましい。
【0080】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料には、耐熱性、耐光性を維持する目的で、公知の酸化防止剤や光安定剤が、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に含まれていてもよい。
【0081】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、前記樹脂材料単独の場合と同様に、透明、軽量、安価で、加工性や量産性に優れており、しかも、前記樹脂単独の場合よりも大きな屈折率を有するため、発光装置の光路に屈折率調整部材を設けるための発光装置用充填材料として好適に用いられ、発光装置からの光出射効率を向上させることができる。
【0082】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記表面処理剤による前記微粒子の表面処理は、液相中において行う。具体的には、まず、前記微粒子を有機溶媒中に展開し、次に、前記必須の表面処理剤と、必要なら前記追加の表面処理剤を添加する。有機溶媒は、前記表面処理剤が溶解するものであればよい。前記表面処理剤の添加量は、前記微粒子表面を一層だけ被覆する量よりも少し過剰な量とすることが望ましい。
【0083】
次に、この混合物に対して、公知の分散機を用いた分散処理を行う。これによって、前記微粒子の2次凝集体が解砕される。前記微粒子が、液相合成されたものであって、未乾燥のものであれば、2次凝集が緩やかであるため、解砕が容易であり、好適である。また、前記表面処理剤は、分散機による解砕処理の際に前記微粒子表面に吸着される。分散機による解砕処理の温度は、室温から80℃までの間であることが望ましい。
【0084】
その後、前記表面処理剤で被覆された前記微粒子を、前記微粒子が一様に分散した分散液あるいは沈殿物として回収する。分散液あるいは沈殿物の違いは、使用する有機溶媒の種類による。また、得られた分散液に貧溶媒を添加して前記微粒子を再凝集させ、遠心分離により沈殿物として回収することも可能である。沈殿物として回収する場合には、遠心分離による沈殿分離、洗浄用の有機溶媒による洗浄を繰り返して余剰の前記表面処理剤を除去した後、真空乾燥して回収すればよい。
【0085】
また、本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記表面処理剤によって表面処理された前記微粒子と、前記第1のシロキサン系化合物及び/又は前記第2のシロキサン系化合物との混合は、具体的には、以下の2通りの方法の何れかによって行うことができる。すなわち、第1の方法は、シロキサン系化合物、および必要に応じて添加される添加成分と共通の良溶媒中に前記微粒子を分散させた後、シロキサン系化合物および添加成分を添加し、攪拌、混合した後、溶媒のみを加熱減圧下で除去する方法である。この際、シロキサン系化合物および添加成分は蒸気圧が低いため、ほとんど蒸発することはない。第2の方法は、微粒子の乾燥粉と、シロキサン系化合物および添加成分とを直接混合し、公知の混練機を用いて均一に混ぜ合わせる方法である。
【0086】
そして、表面処理された前記微粒子と前記第1のシロキサン系化合物とを混合して第1の混合物を調製する工程と、表面処理された前記微粒子と前記第2のシロキサン系化合物とを混合して第2の混合物を調製する工程とを行い、前記第1の混合物と前記第2の混合物を別々に貯蔵しておき、前記硬化処理の前に混合するのがよい。この際、前記第1のシロキサン系化合物に混合される微粒子と前記第2のシロキサン系化合物に混合される微粒子とは、同じ種類の微粒子であってもよいし、異なる種類の微粒子であってもよい。前記ヒドロシリル化反応触媒は、前記第1のシロキサン系化合物に混合されているのがよい。
【0087】
ヒドロシリル化触媒が添加され、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とが均一に混合された前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、温度80〜150℃に加熱することによってヒドロシリル化反応を促進し、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とを重合させて、硬化させる。加熱雰囲気は大気雰囲気とすることができ、具体的な加熱方法としては、公知のオーブンを用いて150℃にて5時間保持するといった方法を例示することができる。
【0088】
この際、前記表面処理剤に前記追加の表面処理剤が含まれていると、前記追加の表面処理剤が末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有するため、効率よくその一部の分子がヒドロシリル化反応によって前記第2のシロキサン系化合物と一体化する。このため、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の分散性が維持されたまま、硬化が起こり、前記微粒子の位置が固定化されるので、硬化時における前記微粒子同士の凝集を効果的に防止することができる。
【0089】
本発明の光学材料は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなり、屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられるのがよい。例えば、前記屈折率調整材料としては発光装置用の封止部材や充填部材として用いることができる。
【0090】
前記樹脂−微粒子複合体は、固体状あるいはゲル状である。なお、本発明で前記樹脂−微粒子複合体がゲル状であるとは、柔軟性を有し、しかも、塑性変形しない性状であることを意味するものとする。
【0091】
前記樹脂−微粒子複合体の硬さは、2〜20N/mm2であるのがよい。前記樹脂−微粒子複合体は、前記架橋環式炭化水素の基を含まないシリコーン樹脂からなる光学材料よりも硬度および強度が向上している。上記の条件を満たすことによって、前記発光素子の封止部材などとして用いられた場合に、前記発光素子を保護する性能が十分高くなり、外力によって封止部材自体が変形して前記発光素子の損傷を防止できないなどということは起こらない。また、発光素子の発熱によって加熱されて高温になった場合でも、流動性が増大しすぎて前記光学材料が前記発光装置から流出するといった現象が発生することがなく、前記発光装置の長期的信頼性を確保することができる。
【0092】
前記樹脂−微粒子複合体の線膨張係数は、20〜150℃において5×10-4以下であるのがよい。前記樹脂−微粒子複合体は、線膨脹係数が大きすぎず、適度な硬さを有する。上記の条件を満たすことによって、前記発光素子の封止部材などとして用いられた場合に、発光装置の動作時、発光素子の発熱に起因して前記樹脂−微粒子複合体が高温になった場合でも、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。なお、線膨張係数は熱機械分析装置(TMA)を用いて測定することができる。
【0093】
以上の結果、歩留まりよく、耐久性に優れた発光装置を提供することができ、前記発光装置の長期的信頼性を確保することができる。耐久性に優れた発光装置を提供することができる。
【0094】
本発明の発光装置は、前記発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材とを具備する発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなるのがよい。この際、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記封止部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。
【0095】
また、前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなるのがよい。この際、上記発光装置が、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。
【0096】
これらの発光装置において、前記封止部材の表面に防汚層が設けられているのがよい。この防汚層は、フッ素系樹脂、例えば、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物などからなるのがよい。
【0097】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態に基づく発光装置についてより具体的に説明するが、本発明の発光装置はこれらの例に限定されるものではない。
【0098】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に基づく発光装置10の構造を模式的に示す断面図である。発光装置10は、請求項40および41に記載した発光装置に対応する。発光装置10は、図4に示した従来の一般的な発光装置100と同様の構造を有し、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように封止部材14が配置されており、発光素子13から出射された光が、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、封止部材14を介して外部に取り出されるように構成されている。封止部材14は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置10の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図1に示すように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。
【0099】
従来の発光装置100と異なる発光装置10の特徴は、封止部材14を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子13から出射された光が発光素子13と封止部材14との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が従来の発光装置100よりも向上している。
【0100】
発光装置10を構成する発光素子13として、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザを挙げることができる。ここで、発光ダイオードとしては、赤色光(例えば、波長640nmの光)を発光する赤色発光ダイオード、緑色光(例えば、波長530nmの光)を発光する緑色発光ダイオード、青色光(例えば、波長450nmの光)を発光する青色発光ダイオード、白色発光ダイオード(例えば、紫外または青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色光を出射する発光ダイオード)を例示することができる。発光ダイオードは、所謂フェイスアップ構造を有していてもよいし、フリップチップ構造を有していてもよい。即ち、発光ダイオードは、基板、および、基板上に形成された発光層から構成されており、発光層から光が外部に出射される構造としてもよいし、発光層からの光が基板を通過して外部に出射される構造としてもよい。
【0101】
より具体的には、発光ダイオード(LED)は、例えば、基板上に形成された第1導電型(例えばn型)を有する化合物半導体層からなる第1クラッド層、第1クラッド層上に形成された活性層、活性層上に形成された第2導電型(例えばp型)を有する化合物半導体層からなる第2クラッド層が積層された構造を有し、第1クラッド層に電気的に接続された第1電極、および、第2クラッド層に電気的に接続された第2電極を備えている。発光ダイオードを構成する層は、発光波長に依存して、周知の化合物半導体材料から構成すればよい。
【0102】
なお、封止部材14の代わりに光取り出しレンズを取り付けた発光装置とすることもできる。また、後述するように、封止部材14の表面に防汚層を設けてもよい。
【0103】
実施の形態2
図2は、本発明の実施の形態2に基づく発光装置20の構造を模式的に示す断面図である。発光装置20は、請求項42及び43に記載した発光装置に対応する。発光装置20は、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように充填部材21が配置され、充填部材21に接して封止部材22が配置されており、発光素子13から出射された光が、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、充填部材21および封止部材22を介して外部に取り出されるように構成されている。
【0104】
従来の発光装置と異なる発光装置20の特徴は、充填部材21を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子23の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子13から出射された光が発光素子13と充填部材21との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が向上する。この界面の形状が凸形の曲面であるのは、封止部材22の屈折率が、充填部材21を構成する光学材料の屈折率よりも低い場合に、界面における全反射を抑える効果が、平坦面である場合よりも高いからである。
【0105】
しかも、光学材料が固体状で適度な硬さを有しているが故に、動作中に発光素子13が高い温度になった場合においても、光学材料の流動性が増大して発光装置20の凹部12から流出するといった現象が発生することがなく、発光装置20の長期的信頼性を確保することができる。また、光学材料は耐光性および耐熱性の良好なものである。これらのことから、本発明による光学材料を用いることで、発光装置20に高い耐久性を付与することができる。
【0106】
封止部材22は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置20の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図2に示すように、充填部材21を封入するように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。封止部材22は、透明材料からなるが、充填部材21との界面における光反射を抑制するという観点から、充填部材21を構成する光学材料と同程度の高屈折率材料(例えば、屈折率1.6のポリカーボネート樹脂)からなるのが好ましい。
【0107】
封止部材22を構成する材料として、具体的には、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スピロ化合物、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、(臭素化)ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体およびその共重合体、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)、不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。なお、封止部材は、これらの材料の少なくとも1種類の材料から構成されていればよい。また、耐熱性を考慮した場合、アラミド系樹脂の使用も可能である。この場合、後述するフッ素系樹脂からなる防汚層を形成する際の加熱温度の上限が200℃以上となり、フッ素系樹脂の選択自由度を高めることができる。
【0108】
なお、封止部材22の代わりに光取り出しレンズを取り付けた発光装置とすることもできる。また、後述するように、封止部材22の表面に防汚層を設けてもよい。
【0109】
実施の形態1および2に示した発光装置10および20は、光の出射を必要とする如何なる分野においても使用することができ、このような分野として、例えば、液晶表示装置のバックライト[面状光源装置を含み、直下型およびエッジライト型(サイドライト型とも呼ばれる)の2形式が知られている]、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送手段における灯具や灯火(例えば、ヘッドライト、テールライト、ハイマウントストップライト、スモールライト、ターンシグナルランプ、フォグライト、室内灯、メーターパネル用ライト、各種のボタンに内蔵された光源、行き先表示灯、非常灯、非常口誘導灯等)、建築物における各種の灯具や灯火(外灯、室内灯、照明具、非常灯、非常口誘導灯等)、街路灯、信号機や看板、機械、装置等における各種の表示灯具、トンネルや地下通路等における照明具や採光部を挙げることができる。
【0110】
また、封止部材14および22や、光取り出しレンズ34の表面に防汚層を形成することもできる。防汚層の厚さは特に限定されないが、透明性の関係から0.5〜50nm、好ましくは1〜20nmであることが望ましい。防汚層を構成する材料は、フッ素系樹脂などがよく、基本的にはパーフルオロポリエーテル基を有していればよく、好ましくはアルコキシシラニル基を有していればよい。
【0111】
防汚層を構成する材料は、本質的にはパーフルオロポリエーテル基以外の分子構造についての制限はないが、実際的には、合成の行い易さ、つまり実現性の観点からの要請に基づく制限は存在する。すなわち、防汚層を構成するのに好ましいフッ素系樹脂として、下記の一般式(7)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を例示することができる。
f(CO−U−R4−Si(OR5)3)j・・・(7)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基であり、Uは2価の原子または基であり、R4はアルキレン基であり、R5はアルキル基であり、j=1または2である。)
【0112】
化学式(7)で示されるアルコキシシラン化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取り扱い易さ等の点から、数平均分子量で4×102〜1×104、好ましくは5×102〜4×103である。
【0113】
パーフルオロポリエーテル基Rfは、1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、このようなパーフルオロエーテル基の具体的な構造を一般式(8)〜(11)に示すが、これらに限定されるものではない。一般式(8)〜(11)中、pおよびqは1〜50の整数であることが好ましく、k〜nは、それぞれ、1以上の整数を示す。また、l/mの値は、0.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。
【0114】
j=2である場合、一般式(7)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(8)を例示することができる。
−CF2−(OC24)p−(OCF2)q−OCF2−・・・(8)
【0115】
また、j=1である場合、一般式(7)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(9)〜(11)を例示することができる。但し、全てのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている必要はなく、部分的に水素原子が含まれていてもよい。
F(CF2CF2CF2)k− ・・・(9)
CF3(OCF(CF3)CF2)l(OCF2)m− ・・・(10)
F(CF(CF3)CF2)n− ・・・(11)
【0116】
また、パーフルオロポリエーテル基を含む防汚層を構成する材料として、例えば、末端に極性基を持つパーフルオロポリエーテル(特開平9−127307号公報参照。)、特定構造を有するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物(特開平9−255919号公報参照。)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を各種材料と組み合わせて得られる表面改質剤(特開平9−326240号公報、特開平10−26701号公報、特開平10−120442号公報、および特開平10−148701号公報参照。)を用いることもできる。
【0117】
Uは、パーフルオロポリエーテル基RfとR4とを連結する、2価の原子または原子団であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外の−O−、−NH−、−S−といった原子または原子団が好ましい。R4は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲であることが好ましい。具体的には、R4としてメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基等のアルキレン基や、フェニレン基を例示することができる。R5はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまり、イソプロピル基、プロピル基、エチル基、およびメチル基を例示することができる。但し、炭素数は4以上であってもよい。
【0118】
防汚層の形成のためには、通常、フッ素系樹脂(例えば、一般式(7)で示したアルコキシシラン化合物)を、溶媒に希釈して用いる。この溶媒としては、特に限定されないが、使用に当たっては、組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決める必要がある。具体的には、エチルアルコール等のアルコール系溶剤やアセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤等を例示することができ、更には、これらの単独あるいは2種以上の混合物を溶媒として用いることができる。
【0119】
あるいは又、フッ素系樹脂を溶解する溶媒は、使用にあたっての組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決定すればよく、例えば、フッ素化炭化水素系溶媒が用いられる。フッ素化炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素、エーテル等の炭化水素系溶媒の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した化合物である。例えば、日本ゼオン社製の商品名ZEORORA−HXE(沸点78℃)、パーフルオロヘプタン(沸点80℃)、パーフルオロオクタン(沸点102℃)、アウトジモント社製の商品名H−GALDEN−ZV75(沸点75℃)、H−GALDEN−ZV85(沸点85℃)、H−GALDEN−ZV100(沸点95℃)、H−GALDEN−C(沸点130℃)、H−GALDEN−D(沸点178℃)等のハイドロフルオロポリエーテル、あるいは、SV−110(沸点110℃)、SV−135(沸点135℃)等のパーフルオロポリエーテル、住友3M社製のFCシリーズ等のパーフルオロアルカン等を挙げることができる。そして、これらのフッ素化炭化水素系溶媒の中でも、上記フッ素系化合物を溶解する溶媒として、ムラのない、膜厚が均一な防汚層を得るために、沸点が70〜240℃の範囲のものを選択し、中でも、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)を選択し、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることが好ましい。沸点が低すぎると、例えば塗布ムラになり易い傾向があり、一方、沸点が高すぎると、乾燥し難くなり、均一な防汚層の形成が困難となる傾向にある。HFPEまたはHFCは、上記フッ素系化合物に対する溶解性が優れており、優れた塗布面を得ることができる。
【0120】
そして、上記フッ素系樹脂を溶媒に希釈したものを、封止部材の表面に塗布し、例えば加熱することによって溶媒を揮発させると共に、封止部材を構成する材料と防汚層を構成するフッ素系樹脂との結合を生じさせることで、封止部材の表面に防汚層を形成することができる。塗布方法としては、通常のコーティング作業で用いられる各種の方法が適用可能であるが、スピン塗布、スプレー塗布等を好ましく用いることができる。また、作業性の点から紙、布等の材料に液を含浸させて、塗布する方法を採用してもよい。加熱温度は、封止部材の耐熱性等を考慮して選定すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を封止部材として用いた場合には、30〜80℃の範囲が適当である。
【0121】
一般式(7)で示されるアルコキシシラン化合物は、パーフルオロポリエーテル基を分子中に有することにより、撥水性を有し、耐汚染性が向上している。従って、このアルコキシシラン化合物を含有する防汚層の形成によって、更に、封止部材の表面に耐摩耗性、耐汚染性等の特性を付与することができる。
【0122】
なお、封止部材を構成する材料と、防汚層を構成する材料との間の反応を促進するための触媒として、酸、塩基、リン酸エステル、および、アセチルアセトンからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を防汚層を構成する材料に添加することが好ましい。触媒として、具体的には、塩酸等の酸、アンモニア等の塩基、あるいは、リン酸ジラウリルエステル等のリン酸エステルを例示することができる。触媒の添加量として、1×10-3〜1mmol/Lを挙げることができる。酸または塩基を添加する場合には、アセチルアセトンのようなカルボニル化合物を添加すると、その反応性が高まることから、防汚層を形成するための組成物にカルボニル化合物を添加することが推奨される。このようなカルボニル化合物の添加量は、1×10-1〜1×102mmol/L程度とすることができる。このように、触媒を添加することによって、加熱(乾燥)温度を低くしても、封止部材と防汚層との間に強い結合を形成することができる。その結果、製造プロセス的に有利になると共に、封止部材を構成する材料の選定範囲が広がる。
【0123】
次に、実施の形態2で示した発光装置20の封止部材22の表面に防汚層を形成した実例について説明する。
【0124】
フッ素系樹脂として、両末端にパーフルオロポリエーテル基を有する、下記の一般式(12)で示されるアルコキシシラン化合物(平均分子量は約4000)
f(CO−NH−C36−Si(OCH2CH3)3)2・・・(12)
2重量部を、フッ素系溶剤であり、沸点が130℃のハイドロフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製、商品名H−GALDEN)200重量部に溶解し、更に、触媒として、リン酸のパーフルオロポリエーテルエステル0.08重量部を加えて均一な溶液とした後、更に、メンブランフィルターで瀘過を行い、防汚層形成用の組成物を得た。そして、封止部材22の表面に、防汚層形成用の組成物をスプレーを用いて塗布した後、温度70℃で1時間乾燥させ、封止部材22の表面に防汚層が形成された発光装置20を得た。
【0125】
得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0126】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(13)で示される樹脂(平均分子量約2000)
f=−CH2CF2(OC24)p(OCF2)qOCF2−・・・(13)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0127】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(14)で示される樹脂(平均分子量約650)
CF3(CF2)8CH2Si(OC25)3・・・(14)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【実施例】
【0128】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0129】
実施例1
実施例1では、前記微粒子として酸化ジルコニウムZrO2(屈折率2.2)のナノ粒子を用い、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、前記樹脂−微粒子複合体、および発光装置を作製し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度および屈折率、前記樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さ、光透過率、および線膨張率、並びに発光装置の輝度向上率を測定した例について具体的に説明する。
【0130】
実施例1では、前記第1のシロキサン系化合物として、主としてメチルフェニルシロキサンからなり、両末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有し、主鎖中に前記架橋環式炭化水素であるノルボルネンの2価の基を含むシロキサン系化合物(I)(屈折率=1.54、粘度=8.0Pa・s)を用いた。シロキサン系化合物(I)の構成を示す化学式を下記の化学式(1)に示す。なお、化学式(1)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、それらの結合順などの構造を示すものではない。
【0131】
シロキサン系化合物(I)の化学式(1):
【化6】

【0132】
また、前記第2のシロキサン系化合物として、主としてメチルフェニルシロキサンからなり、両末端および主鎖中にSiH基を有するシロキサン系化合物(II)(屈折率=1.51、粘度=0.40Pa・s)を用いた。シロキサン系化合物(II)の構成を示す化学式を下記の化学式(2)に示す。
【0133】
シロキサン系化合物(II)の化学式(2):
【化7】

【0134】
また、前記表面処理剤には、前記必須の表面処理剤としてアリールオキシ基を含むカルボン酸である4−フェノキシ安息香酸を用い、前記追加の表面処理剤として末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有する9−デセン酸を用いた。また、前記ヒドロシリル化反応触媒として、白金族系触媒である白金のビニルシロキサン錯体を用いた。
【0135】
(1)ナノ粒子表面の処理
ゾル−ゲル法で合成された粒径5nmのZrO2ナノ粒子1gをトルエン10mLに加え、これに4−フェノキシ安息香酸1gと9−デセン酸0.1gとを添加し、ディスパーを用いて室温で攪拌した。次に、エタノール40mLを加えた後、遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。そして、この沈殿物にトルエン10mLを加えてディスパーで分散させた後、エタノール40mLを加え、再度、遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。この洗浄と遠心分離との処理工程を3回繰り返した後、沈殿物を回収し、真空下にて乾燥して、4−フェノキシ安息香酸および9−デセン酸によって表面を被覆されたZrO2ナノ粒子を得た。なお、ZrO2ナノ粒子の粒径が5nmであるとは、粒径の平均値をDave、標準偏差をσとしたとき、Dave+2σの値が5nmを越えることはないことを意味する。
【0136】
(2)シリコーン系化合物−微粒子複合材料の調製
次に、上記の表面処理したZrO2ナノ粒子をトルエンに所定量添加し、ディスパーにてトルエン中でZrO2ナノ粒子を分散させた。これに、ZrO2ナノ粒子の体積充填率が10%になるようにシロキサン系化合物(I)を加え、さらに白金のビニルシロキサン錯体を、白金の質量がメチルフェニルシロキサンの質量に対して10ppmになるように加え、攪拌機にて均一に混合した。次に、この混合液からエバポレーター(設定温度40℃)を用いてトルエンを除去した。このようにして、4-フェノキシ安息香酸および9-デセン酸で被覆されたZrO2ナノ粒子が、シロキサン系化合物(I)中に分散したシリコーン系化合物−微粒子複合材料(1)を得た。
【0137】
同様に、表面処理したZrO2ナノ粒子をトルエンに所定量添加し、ディスパーにてトルエン中でZrO2ナノ粒子を分散させた。これに、ZrO2ナノ粒子の体積充填率が10%になるようにシロキサン系化合物(II)を加え、攪拌機にて均一に混合した。次に、この混合液からエバポレーター(設定温度40℃)を用いてトルエンを除去した。このようにして、4-フェノキシ安息香酸および9-デセン酸で被覆されたZrO2ナノ粒子がシロキサン系化合物(II)中に分散したシリコーン系化合物−微粒子複合材料(2)を得た。
【0138】
(3)硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の作製
次に、シリコーン系化合物−微粒子複合材料(1)とシリコーン系化合物−微粒子複合材料(2)とを1:1の質量比で配合し、攪拌、混合した後、脱泡した。
【0139】
(4)硬化処理:樹脂−微粒子複合体の作製
得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を大気中、150℃にて5時間加熱することにより、シロキサン系化合物(I)とシロキサン系化合物(II)とを重合させ、樹脂−微粒子複合体を得た。
【0140】
上述した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を、アッベ屈折率計(ATAGO社製:型番NAR−4T)を用いて25℃にて測定した。測定波長はナトリウムD線(589nm)とした。また、コーンプレート型の回転式粘度計を用いて、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度を80℃にて測定した。また、光路長0.5mmの石英セルに硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を封入し、150℃にて5時間、大気中で加熱して硬化させた後、得られた樹脂−微粒子複合体の光透過率を、UV−可視分光光度計(日立ハイテク社製:型番U−3410)を用い、波長350〜800nmの範囲で測定した。樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さは、微小硬さ計(Fischer社製:商品名 PICODENTOR、型番HM500)を用いて測定した。光透過率の測定結果を図3に示す。また、用いた材料を表1に、その他の測定結果を表2にまとめて示す。
【0141】
D線で測定した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は1.6であった。また、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度は、80℃にて40Pa・sであった。これは、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を薄膜コーティング、印刷、注入等の方法で配置するのに適した大きさである。また、図1に示すように、実施例1による樹脂−微粒子複合体の、波長350〜800nmの可視光域における光透過率は85%以上であった。また、樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さは7N/mm2であった。微粒子を添加していないシリコーン樹脂単独の場合のマルテンス硬さは、110N/mm2である。樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さがシリコーン樹脂単独の場合より小さいのは、微粒子によってシリコーン樹脂材料同士の高分子化が抑制された結果だと考えられる。なお、この樹脂−微粒子複合体の硬度は、実用上十分な硬度である。ちなみに、ジメチルシロキサン骨格をもつシリコーン樹脂のマルテンス硬さは1N/mm2未満である。
【0142】
表1中、粒子充填率は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積の割合のことである。被覆剤の体積を含まない、ZrO2ナノ粒子単独の体積で求めた数値である。被覆されたZrO2ナノ粒子(粒径5nm)において、ZrO2ナノ粒子の質量分率はおよそ70〜80%であり、残りのおよそ20〜30%が表面処理剤の質量分率であった。
【0143】
(5)発光装置の作製
発光素子として、発光波長455nmの青色発光ダイオードを用い、実施の形態2で説明した発光装置20を試作し、その輝度を測定した。その結果、屈折率1.5の封止部材114を用いて作製した従来の発光装置100(図4参照。)の輝度を基準(100%)として、輝度が11%向上した。
【0144】
実施例2〜4
実施例2〜4では、前記第2のシロキサン系化合物として、下記の化学式(3)で示されるシロキサン系化合物(III)を用いた。
【0145】
シロキサン系化合物(III)の化学式(3):
【化8】

【0146】
また、表面処理剤は、前記必須の表面処理剤および前記追加の表面処理剤として下記の化合物をそれぞれ用いた。
[前記必須の表面処理剤]+[前記追加の表面処理剤]
実施例2:4−フェノキシ安息香酸+9−デセン酸
実施例3:4−フェニル酪酸+9−デセン酸
実施例4:4−フェニルブチルトリクロロシラン+7−オクテニルトリメトキシシラン
【0147】
それ以外は実施例1と同様にして、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、前記樹脂−微粒子複合体、並びに発光装置を作製し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度および屈折率、前記樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さ、光透過率、および線膨張率、並びに発光装置の輝度向上率を測定した。用いた材料を表1に、測定結果を表2にまとめて示す。
【0148】
比較例1
比較例1では、表面処理剤を用いず、それ以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、ZrO2ナノ粒子がシリコーン樹脂材料中で著しく凝集しており、全可視光域において透過率は1%以下であり、屈折率は測定不可能であった。
【0149】
【表1】

【表2】

【0150】
以上のように、本実施例の樹脂−微粒子複合体は高い透明性を有し、屈折率が高いことから、従来の部材に比べて発光装置の輝度を向上させることが可能になった。また、適度な硬さを有し、更に線膨張係数が大きすぎないことから、発光装置に優れた耐久性を付与することができる。
【0151】
なお、実施例1〜4において、白金族系触媒を、シロキサン系化合物(I)に添加する代わりに、シロキサン系化合物(II)または(III)に添加しても、最終的に得られた樹脂−微粒子複合体の特性に相違は認められなかった。
【0152】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が向上した樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置は、光の入出射を必要とするすべての分野において応用することができ、光学装置、とりわけ発光装置の特性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1によって得られた樹脂−微粒子複合体の光透過率を示すグラフである。
【図4】従来の発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0155】
10…発光装置、11…反射カップ、12…凹部、13…発光素子、14…封止部材、
15…高屈折率微粒子、20…発光装置、21…充填部材、22…封止部材、
23…高屈折率微粒子、100…発光装置、114…封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記シリコーン樹脂材料が、架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を有し、
前記微粒子の表面に、前記微粒子同士が凝集するのを防止する表面処理が施されてい る、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項2】
前記の架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基は、前記シリコーン樹脂材料のシロキサン結合からなる主鎖中に含まれている、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項3】
前記架橋環式炭化水素が、ノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)及び/又はテトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカンである、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂材料は、主として有機シロキサンの構造を有する部分からなる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂材料はフェニル基を含有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂材料は、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂材料が、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、水素原子と結合しているケイ素原子を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒からなり、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とは別々に貯蔵され、ヒドロシリル化反応による硬化処理の前に混合される、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項8】
前記硬化処理は加熱によって行われる、請求項7に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項9】
前記ヒドロシリル化反応触媒が白金族系触媒である、請求項7に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項10】
前記表面処理に用いられる表面処理剤が、前記微粒子の表面と共有結合或いはイオン結合を形成する官能基と、前記シリコーン樹脂材料に親和性を有する有機基とをもち、前記表面処理において前記微粒子の表面を被覆する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項11】
前記表面処理剤の分子量が1×103以下である、請求項10に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項12】
前記表面処理剤に、必須の表面処理剤として、下記一般式(1)で示される化合物が少なくとも1種類含まれている、請求項10に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
一般式(1):R1−X1
(式中、R1は、前記有機基であり、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、前記微粒子同士が凝集するのを防止する。R1の一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。X1は、前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【請求項13】
前記表面処理剤に、前記必須の表面処理剤に加えて、追加の表面処理剤として、下記一般式(2)で示される化合物が少なくとも1種類含まれている、請求項12に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
一般式(2):R2−X2
(式中、R2は、前記有機基であり、末端に付加反応性炭素-炭素二重結合を有する炭化水素基からなる。R2は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X2は、前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【請求項14】
粘度が80℃において100Pa・s以下である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項15】
硬化して得られる樹脂−微粒子複合体のマルテンス硬さ(最大荷重/圧子の接触面積)が2〜20N/mm2である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項16】
透明である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項17】
屈折率が1.55以上である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項18】
前記無機材料は1.9以上の屈折率を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項19】
前記無機材料は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなる、請求項18に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項20】
前記微粒子の粒径が2〜20nmである、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項21】
発光装置の光路に屈折率調整部材を配置するための発光装置用充填材料として用いられる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項22】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記シリコーン樹脂材料が、架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を有し、
前記微粒子の表面に、前記微粒子同士が凝集するのを防止する表面処理が施されてい る、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
表面処理剤を含む溶媒中において、前記微粒子の2次凝集を解消する分散処理を行い 、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項23】
前記の架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基を、付加反応性炭素−炭素二重結合を有する前駆体分子に対するヒドロシリル化反応によって、前記シリコーン樹脂材料中に導入する、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項24】
前記シリコーン樹脂材料として、前記の架橋環式炭化水素及び/又はその置換体の基が、シロキサン結合からなる主鎖中に含まれているシリコーン樹脂材料を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項25】
前記シリコーン樹脂材料として、前記架橋環式炭化水素がノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)、及び/又はテトラシクロ[6,2,1,13,6,02,7]ドデカンであるシリコーン樹脂材料を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項26】
前記シリコーン樹脂材料として、主として有機シロキサンの構造を有する部分からなるシリコーン樹脂材料を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項27】
前記シリコーン樹脂材料として、フェニル基を含有するシリコーン樹脂材料を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項28】
前記シリコーン樹脂材料として、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するシリコーン樹脂材料を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項29】
前記シリコーン樹脂材料として、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、水素原子と結合しているケイ素原子を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒からなるシリコーン樹脂材料を用い、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物は別々に貯蔵し、ヒドロシリル化反応による硬化処理の前に混合する、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項30】
表面処理された前記微粒子と前記第1のシロキサン系化合物とを混合して第1の混合物を調製する工程と、表面処理された前記微粒子と前記第2のシロキサン系化合物とを混合して第2の混合物を調製する工程とを行い、前記第1の混合物と前記第2の混合物を別々に貯蔵しておき、前記硬化処理の前に混合する、請求項29に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項31】
前記硬化処理を加熱によって行う、請求項29に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項32】
前記ヒドロシリル化反応触媒として白金族系触媒を用いる、請求項29に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項33】
前記表面処理剤として、前記微粒子の表面と共有結合或いはイオン結合を形成する官能基と、前記シリコーン樹脂材料に親和性を有する有機基とをもち、前記表面処理において前記微粒子の表面を被覆する表面処理剤を用いる、請求項22に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項34】
前記表面処理剤として、分子量が1×103以下である表面処理剤を用いる、請求項33に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項35】
前記表面処理剤の必須の表面処理剤として、下記一般式(1)で示される化合物を少なくとも1種類用いる、請求項33に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
一般式(1):R1−X1
(式中、R1は前記有機基であり、アリール基、アリールオキシ基、或いは、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、前記微粒子同士が凝集するのを防止する。R1の一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。X1は前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【請求項36】
前記表面処理剤の追加の表面処理剤として、前記必須の表面処理剤に加えて、下記一般式(2)で示される化合物を少なくとも1種類用いる、請求項35に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
一般式(2):R2−X2
(式中、R2は、前記有機基であり、末端に付加反応性炭素-炭素二重結合を有する炭化水素基からなる。R2は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X2は、前記官能基であり、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である。)
【請求項37】
請求項1〜21のいずれか1項に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料。
【請求項38】
屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられる、請求項37に記載した光学材料。
【請求項39】
発光装置用充填部材として用いられる、請求項37に記載した光学材料。
【請求項40】
発光素子から出射された光が、請求項37に記載した光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置。
【請求項41】
前記発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材とを具備する発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなる、請求項40に記載した発光装置。
【請求項42】
反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記封止部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、請求項41に記載した発光装置。
【請求項43】
前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなる、請求項40に記載した発光装置。
【請求項44】
反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、請求項43に記載した発光装置。
【請求項45】
前記封止部材の表面に防汚層が設けられている、請求項41又は43に記載した発光装置。
【請求項46】
前記防汚層はフッ素系樹脂からなる、請求項45に記載した発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−24116(P2009−24116A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190334(P2007−190334)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】