説明

硬化性樹脂組成物

【課題】優れた耐熱性と接着性とを有し、硬化性、成形加工性に優れる末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族重合体と熱可塑性樹脂とからなる硬化性樹脂組成物及びこれから得られるフィルム、樹脂付き金属箔及び樹脂基板を提供する。
【解決手段】(A)成分:ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物を共重合して得られる共重合体であって、その末端の一部に重合添加剤に由来するフェノール性水酸基を有し、かつ、ジビニル芳香族化合物に由来する未反応のビニル基を含有する構造単位の含有量が10〜90モル%である可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と、(B)成分:熱可塑性樹脂、からなる樹脂組成物であって、(A)、(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜98wt%、(B)成分の配合量が98〜2wt%である硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族重合体と熱可塑性樹脂とからなる硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物から得られるフィルム、樹脂付き金属箔及び樹脂基板に関する。
【背景技術】
【0002】
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、不飽和結合が開裂して、連鎖反応を起こす触媒と適切な反応条件を選択することにより多量体を生成することができる。このような不飽和結合を有する単量体を代表する汎用的な単量体としてスチレン、アルキルスチレン及びアルコキシスチレン等のビニル芳香族化合物を挙げることができる。そして、このようなビニル芳香族化合物を単独で又はこれらを共重合させることにより多種多様な樹脂が合成されている。
【0003】
しかし、このようなビニル芳香族化合物から得られる重合体の用途は主に、比較的安価な民生機器の分野に限られており、電気・電子分野におけるプリント配線基板のような高機能で高度の熱的・機械的特性が要求される先端技術への適用はほとんどない。その理由としては、耐熱性あるいは耐熱分解性といった熱的特性と溶剤可溶性あるいはフィルム成形性といった加工性を同時に満足させることができないことがあげられる。
【0004】
この様な従来のビニル芳香族系重合体の欠点を解決する方法として、特開2004−123873号公報(特許文献1)にはジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)を有機溶媒中、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤の存在下、20〜100℃の温度で重合させることによって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。また、特開2005−213443号公報(特許文献2)には4級アンモニウム塩の存在下で、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤により、ジビニル芳香族化合物(a)を20〜100モル%含有してなる単量体成分を20〜120℃の温度でカチオン重合させるて制御された分子量分布を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を製造する方法が開示されている。これらの文献で開示されている技術によって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は溶剤可溶性及び加工性に優れ、これを使用することによってガラス転移温度の高い耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0005】
そして、これらの技術によって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を使用した硬化性樹脂組成物が特開2004−131638号公報に開示されているが、高いガラス転移温度を持つ硬化物を与えるという点では耐熱性に優れた硬化性樹脂組成物であると言うことはできるものの、接着性や極性ポリマーとの相溶性という観点から見ると、その特性は十分なものではなく、高温の熱履歴によって、密着性の不良が生ずるケースがあった。更に、この技術によって得られた硬化性樹脂組成物は金属との接着性を与える極性基を有していないために、金属配線との接着性が十分でないという問題点も有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2004−123873号公報
【特許文献2】特開2005−213443号公報
【特許文献3】特開2004−131638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記の従来技術の種々の問題点を解決し、高温での熱履歴に対しても優れた耐熱性と接着性とを有し、硬化性に優れ、なおかつ成形加工性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明は、高温での熱履歴に対しても優れた耐熱性と接着性とを有し、硬化性に優れ、なおかつ成形加工性に優れる上記末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族重合体と熱可塑性樹脂とからなる硬化性樹脂組成物、及びこれから得られるフィルム、樹脂付き金属箔及び樹脂基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)20〜99モル%及びモノビニル芳香族化合物(b)80〜1モル%を共重合して得られる共重合体であって、その末端の一部に重合添加剤(c)に由来するフェノール性水酸基を有し、かつ、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する下記式(a1)
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表される未反応のビニル基を含有する構造単位の含有量が10〜90モル%である末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と、
(B)成分:熱可塑性樹脂
からなる樹脂組成物であって、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜98wt%、(B)成分の配合量が98〜2wt%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0009】
ここで、末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mnが500〜100000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が50.0以下であること、又はフェノール性水酸基の末端への導入量が2.2個/分子以上であることを満足することは優れた硬化性樹脂組成物を与える。
【0010】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコールブロック共重合体などのポリエステル類及びその誘導体、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート類、アクリル酸(又はメタクリル酸)エステル共重合体類、ポリスチレン類、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン系共重合体等のポリスチレン類及びその共重合体類、ポリ酢酸ビニル類、エチレンアクリル酸エステル共重合体、スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム類、ポリメトキシエチレン、ポリエトキシエチレン等のポリビニルエーテル類、ポリアクリルアマイド、ポリホスファーゼン類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド及び熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂が好ましく挙げられる。
【0011】
また、本発明は、(A)成分及び(B)成分の他に、(C)成分としての熱硬化性樹脂、(D)成分としての難燃剤又は(E)成分としての無機フィラーを含む上記の硬化性樹脂組成物である。ここで、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計に対する(C)成分の配合量が2〜40wt%であること、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(D)成分の配合量が2〜40wt%であること、又は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計に対する(E)成分の配合量が2〜60wt%であることのいずれかを満足することがよい。
【0012】
更に本発明は、上記の硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂フィルム、硬化性樹脂組成物の膜を有する樹脂付き金属箔、又は硬化性樹脂組成物の硬化物及びこの硬化物からなる樹脂基板である。
【0013】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分として末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(以下、共重合体ともいう)と(B)成分としての熱可塑性樹脂を含み、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜98wt%、(B)成分の配合量が98〜2wt%である。
【0015】
(A)成分の共重合体は、ジビニル芳香族化合物(a)20〜99モル%及びモノビニル芳香族化合物(b)80〜1モル%を共重合して得られる共重合体であって、その末端の一部に重合添加剤(c)に由来するフェノール性水酸基を有し、かつ、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する上記式(a1)で表される未反応のビニル基を含有する構造単位(以下、構造単位(a1)という。)の含有量が10〜90モル%であり、末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体である。ここで、可溶性とはトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることを意味する。この共重合体の数平均分子量Mnが500〜100000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が50.0以下であり、フェノール性水酸基の末端への導入量は2.2個/分子以上であることが好ましい。
【0016】
共重合体は、ジビニル芳香族化合物を含む単量体を共重合して得られるものであるので、ジビニル芳香族化合物に由来するいくつかの構造単位を有する。そして、上記式(a1)で表される構造単位(a1)を一定量有する多官能ビニル芳香族共重合体となっている。構造単位(a1)中の未反応のビニル基はペンダントビニル基ともいい、これは重合性を示すため、更なる重合処理により重合し、溶剤不溶の熱硬化樹脂を与えることができる。その他、多官能性を与えるための分岐構造や主鎖中にビニル基を与える構造単位を有するが、架橋構造単位は可溶性を示す程度に制限される。更に、本発明の共重合体は、末端に重合添加剤に由来するフェノール性水酸基を有する。
【0017】
共重合体の末端の一部にフェノール性水酸基を有しているが、この末端のフェノール性水酸基の量としては2.2(個/分子)以上導入されていることが好ましい。末端にフェノール性水酸基が導入されることによって、接着性が向上した樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
共重合体は、20〜99モル%のジビニル芳香族化合物(a)と1〜80モル%のモノビニル芳香族化合物(b)を共重合して得られるものであるので、ほぼこの単量体の組成比でジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位とモノビニル芳香族化合物(b)由来の構造単位を有する。この共重合体はジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位を全ての単量体由来の構造単位に対して、25〜95モル%含んでいることが好ましい。
【0019】
ジビニル芳香族化合物(a)は、本発明の共重合体を分岐させると共に、ペンダントビニル基を有する構造単位(a1)を生じさせ、この共重合体を熱硬化して得られる硬化物に耐熱性を発現させるための架橋成分として重要な役割を果たす。
【0020】
ジビニル芳香族化合物(a)の例としては、ジビニルベンゼン(m−及びp−両方の異性体)、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、コスト及び入手の容易さの観点からはジビニルベンゼン(m−及びp−両方の異性体)、より高度の耐熱性が求められる場合は、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)が好ましく使用される。
【0021】
構造単位(a1)は、ジビニル芳香族化合物(a)から生じるものであるので、ジビニル芳香族化合物(a)から式(a1)におけるR1を理解することができる。すなわち、ジビニル芳香族化合物としてジビニルベンゼンを使用した場合は、R1フェニレン基であり、ジビニルビフェニル等他のジビニル芳香族化合物もこれらから2つのビニル基を除いて生じる残基と理解される。
【0022】
モノビニル芳香族化合物(b)はジビニル芳香族化合物(a)と共に使用されて、共重合体の溶剤可溶性及び加工性を改善する。
【0023】
モノビニル芳香族化合物(b)の例としては、スチレン、核アルキル置換モノビニル芳香族化合物、α−アルキル置換モノビニル芳香族化合物、β−アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン等があるが、これらに制限されるものではない。
【0024】
モノビニル芳香族化合物(b)及びジビニル芳香族化合物(a)以外にその他の単量体成分(d)を少量使用することもできる。その他の単量体成分(d)の具体例としては、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルナフタレン、1,2,4−トリビニルシクロへキサン、エチレングリコールジアクリレート、ブタジエン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。その他の単量体成分(d)に由来する構造単位は単量体成分(a)由来の構造単位及び単量体成分(b)由来の構造単位の総量に対して30モル%未満の範囲内で使用される。
【0025】
共重合体の数平均分子量Mn(ここで、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である)は500〜100000が好ましく、より好ましくは700〜50000であり、更に好ましくは1000〜20000である。Mnが500未満であると可溶性多官能ビニル芳香族重合体の粘度が低すぎるため、厚膜の形成が困難になるなど、加工性が低下し、また、Mnが100000以上であると、ゲルが生成しやすくなり、また、粘度が高くなるため、フィルム等に成形した場合、外観の低下を招くので好ましくない。Mnと重量平均分子量Mwより求められる分子量分布(Mw/Mn)の値は50.0以下、好ましくは30.0以下である。特に好ましくは2〜20.0である。Mw/Mnが50.0を超えると、共重合体の加工特性の悪化、ゲルの発生といった問題点を生ずる。
【0026】
(A)成分として使用する共重合体は、上記単量体を、ルイス酸触媒、エステル化合物から選ばれる一種以上の助触媒及びフェノール系化合物から選ばれる一種以上の重合添加剤(c)の存在下でカチオン共重合させることにより得ることができる。
【0027】
共重合体を製造するには、ジビニル芳香族化合物(a)を、20〜99モル%、好ましくは25〜95モル%、より好ましくは30〜90モル%と、モノビニル芳香族化合物を80〜1モル%、好ましくは75〜5モル%、より好ましくは70〜10モル%を含有する単量体成分を共重合させる。この際、上記したようにその他の単量体成分(d)を30モル%未満使用することができる。
【0028】
この共重合体の製造に用いられるルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。
【0029】
助触媒としては、エステル化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。その中で、重合速度及び重合体の分子量分布制御の観点から炭素数4〜30のエステル化合物が好適に使用される。入手の容易さの観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルが好適に使用される。
【0030】
重合添加剤(c)は重合反応時に重合活性種との間で連鎖移動反応を起こし、本発明の共重合体の末端に、接着性等の機能付与を可能にするフェノール性水酸基を導入する役割を果たす化合物である。
【0031】
重合添加剤(c)としては、フェノール系化合物であれば特に制限はないが、フェノール、アルキルフェノール、ジアルキルフェノール、フェニルフェノール、アルキルフェニルフェノール、ナフトール、アルキルナフトール等の炭素数6〜30のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物からなる群から選ばれる1種以上の重合添加剤が挙げられる。これらのフェノール系化合物の内、反応性、入手の容易さの観点から、フェノール及び2,6−キシレノールが好ましく用いられる。
【0032】
ルイス酸触媒は、重合添加剤(c)1モルに対して、0.001〜10モルの範囲内で用いるが、より好ましくは0.001〜0.01モルである。
【0033】
助触媒は、重合添加剤(c)1モルに対して0.001〜10モルの範囲内で使用するが、より好ましくは0.01〜1モルである。
【0034】
また、重合添加剤(c)は全単量体の合計1モルに対し、0.005〜50モルの範囲内で使用することが好ましく、より好ましくは、0.01〜10モルである。なお、この場合、重合添加剤(c)は単量体としては計算しない。
【0035】
重合温度は20〜120℃の範囲であるが、好ましくは40〜100℃である。重合温度が120℃を超えると、反応の選択性が低下するため、分子量分布の増大やゲルの発生といった問題点が生じ、20℃未満で重合を行うと得られた共重合体の分子量が増大し、成形加工性の低下を招くので好ましくない。
【0036】
重合反応停止後、共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物に於いて、(B)成分として使用される熱可塑性樹脂としては、(A)成分である末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体との相溶性に優れたものが好適に使用することができる。このような熱可塑性樹脂を例示すると、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12などのポリアミド類及びその誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコールブロック共重合体などのポリエステル類及びその誘導体、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート類、アクリル酸(又はメタクリル酸)エステル共重合体類、ポリスチレン類、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン系共重合体等のポリスチレン類及びその共重合体類、ポリ酢酸ビニル類、エチレンアクリル酸エステル共重合体、スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム類、ポリメトキシエチレン、ポリエトキシエチレン等のポリビニルエーテル類、ポリアクリルアマイド、ポリホスファーゼン類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、側鎖に液晶成分を含有する側鎖型液晶ポリマー、あるいはエポキシ基、水酸基、無水マレイン酸基の中から選ばれた少なくとも一つの官能基が導入されている熱可塑性のブロック共重合等が挙げられる。
【0038】
上記の熱可塑性樹脂の内で、(A)成分の共重合体との相溶性に優れる、接着性改良に関する相乗効果が大きい、靱性改良の効果に優れるといった観点から、ガラス転移温度が20℃以下、好ましくは0℃以下の重合体セグメントを有するゴム類を使用することがよい。有利には、ゴム類以外の熱可塑性樹脂とゴム類を併用することがよい。ここで、ガラス転移温度が20℃以下の重合体セグメントを有するゴム類は、スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、エチレンアクリル酸エステル共重合体、若しくは水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類であることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物の耐熱酸化劣化性と相溶性の観点から、エチレンアクリル酸エステル共重合体又は水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等の水添ゴム類であることが最も好ましい。
【0039】
また、本発明の硬化性樹脂組成物では、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜98wt%、(B)成分の配合量が98〜2wt%であり、好ましくは(A)成分の配合量が5〜95wt%、(B)成分の配合量が95〜5wt%であり、より好ましくは(A)成分の配合量が10〜90wt%、(B)成分の配合量が90〜10wt%である。(A)成分の配合量が2wt%に満たない場合には、硬化性樹脂組成物の耐熱性が低下し、98wt%を超えて使用すると、靭性の低下が著しくなるため好ましくない。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物には、(A)及び(B)成分の他、(C)成分として、熱硬化性樹脂、(D)成分として難燃剤、(E)成分として無機フィラー又は(F)成分としてシランカップリング剤を配合することができる。
【0041】
(C)成分としては、熱硬化性ポリフェニレンエーテルや多官能性エポキシ化合物、ジアリルフタレート、多官能性アクリロイル化合物、多官能性メタクリロイル化合物、多官能性マレイミド、多官能性シアン酸エステル、多官能性イソシアネート、不飽和ポリエステルからなる化合物及びこれらのそのプレポリマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上が用いられる。
【0042】
(D)成分としては、ハロゲン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、リン酸エステル難燃剤、窒素系難燃剤及び無機系難燃剤からなる群から選ばれる1種以上の難燃剤が挙げられる。
【0043】
ここで、ハロゲン系難燃剤としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリジブロモフェニレンオキサイド、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリス(トリブロモフェニル)シアヌレート、臭素化ポリスチレン、臭素化スチレン−メチルメタクリレート系共重合体、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物)、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダンなどのハロゲン系難燃剤を挙げることができる。
【0044】
また、リン−窒素系化合物としては、一分子中に窒素原子とリン原子とを共に有する化合物であることが必要である。このようなリン−窒素系化合物としては、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシフォスファゼン、アミノフォスファゼン等のようなフォスファゼン化合物;脂肪族アミン化合物、トリアジン、メラミン、シアヌル酸等の含窒素複素環化合物等の窒素系化合物のリン酸塩及びポリリン酸塩;N,N−ジエチルフォスファミドのようなリン酸アミド;ポリ(N,N−ジエチルフォスファミド)のようなポリリン酸アミドなどを挙げることができる。
【0045】
リン酸エステル系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート等を挙げることができる。
【0046】
窒素系難燃剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸等の含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素等を例示することができる。
【0047】
更に、無機系難燃剤としては、金属水酸化物及び金属酸化物からなる群から選ばれる1種以上の無機系難燃剤を挙げることができる。かかる無機系難燃剤として好適に使用できる金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト類、カルシウム・アルミネート水和物、下記式で示される複合水酸化マグネシウム等が挙げられる。
Mg1-xx(OH)2
(ここで、MはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種以上であり、Xは0より大きく0.1以下の値である)
【0048】
(E)成分として使用される無機フィラーとしては、特に制限はないが、具体的には例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフイライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム等の珪酸塩、二硫化モリブデン、アルミナ、塩化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタンなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ポリリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素及びシリカなどの粉状、板状、あるいは粒状の充填剤等が挙げられ、これらは中空であってもよい。中でも、周期表の2族(2A族)の金属(例えば、マグネシウム、カルシウム等)の炭酸塩、リン酸塩及び珪酸塩、あるいは溶融シリカが強度・密着性の観点から好ましい。硬化物の特性の異方性が少なく、かつ、外観に優れているという観点からは、溶融シリカが好ましい例として挙げられる。
【0049】
(F)成分のシランカップリング剤としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
上記の(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の配合量(wt%)は下記式を満足することがよい。
(C)成分配合量=(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計に対して2〜40(wt%)。好ましくは5〜35(wt%)である。(C)成分の配合量が2wt%未満であると熱硬化性樹脂を添加したことによる接着性や耐熱性の向上の程度が不十分であり、40wt%を越える場合は、組成物の機械的物性が著しく低下するので好ましくない。
(D)成分配合量=(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対して2〜40wt%。好ましくは、(D)成分配合量は5〜30(wt%)である。(D)成分の配合量が2wt%未満であると難燃剤を添加したことによる難燃性の向上の程度が不十分であり、40wt%を越える場合は、組成物の機械的物性が著しく低下するので好ましくない。
【0051】
(E)成分配合量=(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計に対して2〜60wt%。好ましくは、(E)成分配合量は10〜50(wt%)である。(E)成分の配合量が2wt%未満であると無機フィラーを添加したことによる機械的特性や寸法安定性の向上の程度が不十分であり、60wt%を越える場合は、組成物の機械的物性が著しく低下するので好ましくない。
(F)成分配合量=(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の合計に対して0.01〜10wt%。好ましくは、0.1〜5(wt%)である。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で、着色剤、安定剤等のその他の各種添加剤を配合することができる。
【0053】
次に、本発明の硬化性樹脂フィルムの製造方法について説明する。本発明の硬化性樹脂フィルムは、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素等の溶剤に(A)成分、(B)成分を含む硬化性樹脂組成物を溶解し、ワニス化し、それをポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム等の基材フィルムの上に塗工し、二層構造のフィルムを形成させた後、基材フィルムを剥離することにより得られる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを硬化する方法としては、加熱や活性光線の照射などによって硬化を行うことができる。加熱による硬化は、硬化剤の有無やその種類によっても異なるが、70〜300℃、より好ましくは、100〜250℃の範囲内の加熱温度で、加熱時間は30秒〜5時間、好ましくは1分〜2時間である。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物は後述するように加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くする、あるいは、不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられるラジカル開始剤の量は(A)成分と(B)成分の和を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%である。
【0056】
ラジカル開始剤の代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンもラジカル開始剤として使用できる。しかし、本樹脂組成物の硬化に用いられる開始剤はこれらの例に限定されない。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物の膜を有する樹脂付き金属箔は、本発明の硬化性樹脂組成物と金属箔より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより硬化物を得ることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、適当な溶剤中で、ガラス基材に含浸させてプリプレグとして使用することもできるものであるし、更には、このプリプレグを用いて、乾燥後、加熱硬化させることによって、積層板、プリント配線板などの樹脂基板として用いることができるものである。
【0059】
そして、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた積層板、プリント配線板などの樹脂基板は、ガラス転移温度及び線膨張率の物性を維持しながら、低温、かつ、短時間で硬化を完結させて生産効率を向上させることができるものとなる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、成形材、シート又はフィルムに加工することができ、低誘電率、低吸水率、高耐熱性、良接着性等の特性を満足できるプリント配線板関連材料、半導体関連材料又は光学デバイス用透明材料、更には、塗料・インキ、感光性材料、接着剤への適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の軟化温度等の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0062】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0063】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
【0064】
3)末端フェノール性水酸基
上記のGPC測定より得られる数平均分子量と1H−NMR測定と元素分析の結果より得られる末端のフェノール性水酸基量とから算出した。
【0065】
4)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度(Sp)測定の試料調製及び測定
乾燥後の厚さが20μmになるように、ガラス基板に可溶性多官能ビニル芳香族共重合体溶液を均一に塗布し、ホットプレートを用いて90分で30分間加熱し、乾燥させた。ガラス基板とともに得られた樹脂膜はTMA(熱機械分析装置)にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に220℃で20分間加熱処理することにより残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャン測定を行い、接線法でTg及びSp値を求めた。
【0066】
5)耐熱性評価及び耐熱変色性の測定
共重合体をTGA(熱天秤)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から320℃までスキャンさせることにより測定を行い、300℃における重量減少を耐熱性として求めるとともに測定後の試料の変色量を目視にて確認し、A:熱変色なし、B:淡黄色、C:茶色、D:黒色に分類することにより耐熱変色性の評価を行った。
【実施例】
【0067】
合成例1
ジビニルベンゼン4230g(32.4モル)、エチルビニルベンゼン169g(1.35モル)、スチレン1170g(11.3モル)、酢酸エチル158g(1.8モル)、2,6−キシレノール1649g(13.5モル)、トルエン12745gを30Lの反応器内に投入し、70℃で18g(120ミリモル)の三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、2時間反応させた。重合溶液を1−ブタノール53.3gで停止させた後、室温で反応混合液を大量のn−へキサンに投入し、共重合体を析出させた。得られた共重合体をn−へキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体Aを3948g(収率:70.9wt%)得た。
【0068】
得られた共重合体AのMnは2820、Mwは10800、Mw/Mnは3.84であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Aは2,6−キシレノール末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Aの元素分析結果を行った結果、C:88.2wt%、H:7.9wt%、O:3.3wt%であった。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のフェノール性水酸基の導入量は5.8(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を79.2モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計20.7モル%含有していた。共重合体A中に含まれる構造単位(a1)の含有量は32モル%であった。
また、TMA測定の結果、Tgは275℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は1.5wt%、耐熱変色性はAであった。共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0069】
合成例2
ジビニルベンゼン4230g(32.4モル)、エチルビニルベンゼン169g(1.35モル)、スチレン1170g(11.3モル)、酢酸ブチル209g(1.8モル)、フェノール2771g(16.5モル)、トルエン11956gを30Lの反応器内に投入し、70℃で8gの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、2.5時間反応させた。重合溶液を1−ブタノール26.7gで停止させた後、室温で反応混合液を大量のn−へキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をn−へキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体Bを2606g(収率:46.8wt%)得た。
【0070】
得られた共重合体BのMnは1940、Mwは5640、Mw/Mnは2.91であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Bはフェノール末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Bの元素分析結果を行った結果、C:85.8wt%、H:7.2wt%、O:4.7wt%であった。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のフェノール性水酸基の導入量(a)は4.0(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を71.8モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計28.2モル%含有していた。共重合体B中に含まれる構造単位(a1)の含有量は36モル%であった。
また、TMA測定の結果、Tgは282℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は1.5wt%、耐熱変色性はAであった。濁度計による全光線透過率の測定の結果は88%であった。共重合体Bはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0071】
合成例3
ジビニルベンゼン28.2g(0.216モル)、エチルビニルベンゼン1.1g(9ミリモル)、スチレン7.8g(0.075モル)、1−クロロエチルベンゼン(12.0mmol)のジクロロエタン溶液(0.634mmol/mL)23.8g、n−テトラブチルアンモニウム・ブロミド(0.45mmol)のジクロロエタン溶液(0.135mmol/mL)4.2g及びジクロロエタン(誘電率:10.3)189gを300mLのフラスコ内に投入し、70℃で0.45mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(0.068mmol/mL)8.3gを添加し、1時間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体Cを7.07g(収率:27.1wt%)得た。
【0072】
得られた共重合体CのMnは2010、Mwは2780、Mw/Mnは1.6であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Cはジビニルベンゼン由来の構造単位を76.6モル%、エチルベンゼン由来の構造単位を2.3モル%、スチレン由来の構造単位を21モル%含有しており、フェノール末端に由来する共鳴線は観察されなかった。共重合体Cの元素分析結果を行った結果、C:86.8wt%、H:7.4wt%、O:0.3wt%、Cl:5.06wt%であった。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体の末端への塩素の導入量は3.8(個/分子)であった。また、TMA測定の結果、Tgは290℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は12.1wt%、耐熱変色性はDであった。濁度計による全光線透過率の測定の結果は52%であった。共重合体Cはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0073】
実施例1
合成例1で得られた共重合体A:4.5重量部、両末端にビニル基を含有するポリフェニレンエーテル(MGC OPE−2ST):18重量部、ゴム成分1(KRATON GRP6935):11.5重量部、ゴム成分2(タフテック M1913):4.5重量部、ゴム成分3(タフテック H1041):4.5重量部、ゴム成分4(タフテック H1053):4.5重量部、リン−窒素系難燃剤(SPB−100):2.5重量部、及び平均粒子径0.5μmの球状シリカ(SO−C2):25.0重量部、熱硬化性樹脂(EOCN−1020−65):2.5重量部、シランカップリング剤(A−1289):0.5重量部と溶剤としてキシレン:132重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤(パーブチルP):0.5重量部及び硬化促進剤キュアゾール(2E4MZ):0.05重量部を加えて、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
【0074】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートを張りつけた台に、硬化性樹脂組成物溶液をキャストし、フィルムを得た。得られたフィルムは窒素ガスを流したイナートオーブンで、80℃で10分間乾燥させた。得られたフィルムは約50μmの厚みであり、べたつき等がなく成膜性に優れていた。このフィルムをポリイミドフィルム(デュポン社製カプトンEN25μm)と銅箔をエッチアウトしたFR−4基板の間に挟みこみ、真空プレス成形機にて180℃、1時間熱硬化させ、積層板を得た。
この積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:1.02(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、Tgは203℃であった。
【0075】
実施例2
合成例2で得られた共重合体B:8.0重量部、GMA変性E−MA共重合体(グリシジルメタクリレート変性エチレンメタクリル酸メチルランダム共重合体:LOTADER AX8900):2.0重量部と溶剤としてトルエン:150重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤パーブチルP:1.0重量部及びトリフェニルフォスフィン(TPP):0.1重量部を加えて、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
それ以降は実施例1と同様にして積層板を作製し、積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.92(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、変曲点は観測されず、Tgレスであった。
【0076】
比較例1
合成例3で得られた共重合体C:8.0重量部、GMA変性E−MA共重合体(LOTADER AX8900):2.0重量部と溶剤としてトルエン:150重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤パーブチルP:1.0重量部及びトリフェニルフォスフィン(TPP):0.1重量部を加えて、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
それ以降は実施例1と同様にして積層板を作製し、積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.23(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、Tgは200℃であった。
【0077】
合成例4
ジビニルベンゼン32.4モル(4618mL)、エチルビニルベンゼン1.35モル(192mL)、スチレン11.3モル(1291mL)、酢酸ブチル1.8モル(175.5mL)、2,6−キシレノール37.5モル(4581g)、トルエン14.8Lを30Lの反応器内に投入し、80℃で90ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を1−ブタノール49.4mLで停止させた後、室温で反応混合液を大量のn−へキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をn−へキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体D 4979g(収率:89.4wt%)を得た。
【0078】
得られた共重合体DのMnは1100、Mwは2300、Mw/Mnは2.10であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Dは2,6−キシレノール末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Dの元素分析結果を行った結果、C:85.0wt%、H:7.9wt%、O:5.3wt%であった。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のヒドロキシ基の導入量(a)は3.6(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を78.1モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計21.9モル%含有していた。共重合体D中に含まれる構造単位(a1)の含有量は、26モル%であった。また、TMA測定の結果、Tgは287℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は1.9wt%、耐熱変色性はAであった。
共重合体Dはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0079】
実施例3
合成例4で得られた共重合体Dを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法で積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.73(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、Tgは204℃であった。
【0080】
合成例5
ジビニルベンゼン32.4モル(4618mL)、エチルビニルベンゼン1.35モル(192mL)、スチレン11.3モル(1291mL)、酢酸ブチル1.8モル(175.5mL)、2,6−キシレノール37.5モル(4581g)、トルエン14.8Lを30Lの反応器内に投入し、80℃で90ミリモルの三フッ化ホウ素のメチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を1−ブタノール49.4mLで停止させた後、室温で反応混合液を大量のn−へキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をn−へキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体E 3569g(収率:64.08wt%)を得た。
【0081】
得られた共重合体EのMnは1270、Mwは2570、Mw/Mnは2.30であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Eは2,6−キシレノール末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Eの元素分析結果を行った結果、C:85.3wt%、H:8.1 wt%、O:5.3wt%であった。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のヒドロキシ基の導入量(a)は3.5(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を77.8モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計22.0モル%含有していた。共重合体E中に含まれる構造単位(a1)の含有量は、25モル%であった。また、TMA測定の結果、Tgは287℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は1.9wt%、耐熱変色性はAであった。
共重合体Eはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0082】
実施例4
合成例4で得られた共重合体Eを使用したこと以外は、実施例2と同じ方法で積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.72(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、変曲点は観測されず、Tgレスであった。
【0083】
実施例5
合成例2で得られた共重合体B:3.0重量部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−3000R):7.0重量部と溶剤としてトルエン:150重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤(パーブチルP):1.0重量部を加えて、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
それ以降は実施例1と同様にして積層板を作製し、積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.65(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、Tgは167℃であった。
【0084】
比較例2
合成例3で得られた共重合体C:3.0重量部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−3000R):7.0重量部と溶剤としてトルエン:150重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤パーブチルP:1.0重量部を加えて、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
それ以降は実施例1と同様にして積層板を作製し、積層板のポリイミドフィルムの引き剥がし強さについて試験した。その結果、ポリイミドフィルムの引き剥がし強さ:0.05(kN/m)であった。また、TMA測定の結果、Tgは149℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)20〜99モル%及びモノビニル芳香族化合物(b)80〜1モル%を共重合して得られる共重合体であって、その末端の一部に重合添加剤(c)に由来するフェノール性水酸基を有し、かつ、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する下記式(a1)
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表される未反応のビニル基を含有する構造単位の含有量が10〜90モル%である末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と、
(B)成分:熱可塑性樹脂
からなる樹脂組成物であって、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜98wt%、(B)成分の配合量が98〜2wt%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が、数平均分子量Mnが500〜100000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が50.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
末端にフェノール性水酸基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が、フェノール性水酸基の末端への導入量が2.2個/分子以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコールブロック共重合体などのポリエステル類及びその誘導体、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート類、アクリル酸(又はメタクリル酸)エステル共重合体類、ポリスチレン類、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン系共重合体等のポリスチレン類及びその共重合体類、ポリ酢酸ビニル類、エチレンアクリル酸エステル共重合体、スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等のゴム類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム類、ポリメトキシエチレン、ポリエトキシエチレン等のポリビニルエーテル類、ポリアクリルアマイド、ポリホスファーゼン類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド及び熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(C)成分として熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計に対する(C)成分の配合量が2〜40wt%である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(D)成分として難燃剤を含む硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(D)成分の配合量が2〜40wt%である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(E)成分として無機フィラーを含む硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計に対する(E)成分の配合量が2〜60wt%である請求項請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物から形成された硬化性樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の膜を金属箔の片面に有することを特徴とする樹脂付き金属箔。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂硬化物からなる樹脂基板。

【公開番号】特開2008−248001(P2008−248001A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88599(P2007−88599)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】