説明

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法

【課題】磁気ディスク用ガラス基板の欠陥が両主表面のどちらにあるのかを正確に検出することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、製造された主表面磁気ディスク用ガラス基板を検査する検査工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記検査工程において、磁気ディスク用ガラス基板に対して光学式自動外観検査で欠陥の検査を行い、前記光学式自動外観検査で特定された前記欠陥の位置について、磁気ディスク用ガラス基板レーザドップラー干渉計で、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面上の欠陥を検出する。これにより、磁気ディスク用ガラス基板の欠陥が両主表面のどちらにあるのかを正確に検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ装置に搭載される磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置(HDD装置)に搭載される磁気記録媒体として磁気ディスクがある。磁気ディスクは、アルミニウム−マグネシウム合金などで構成された金属板上にNiP膜を被着した基板、ガラス基板、セラミックス基板上に磁性層や保護層を積層したりして作製される。従来では、磁気ディスク用の基板としてアルミニウム合金基板が広く用いられていたが、近年の磁気ディスクの小型化、薄板化、高密度記録化に伴って、アルミニウム合金基板に比べて表面の平坦度や薄板での強度に優れたガラス基板が用いられるようになってきている。
【0003】
このような磁気ディスク用ガラス基板は、素材加工工程及び第1ラッピング工程;端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び/又は内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程));端面研磨工程(外周端部及び内周端部);第2ラッピング工程;主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程);化学強化工程;検査工程などの工程を経て製造される。
【0004】
上述した検査工程においては、光学的に欠陥を検出する方法が採用されている(特許文献1参照)。そして、欠陥検出結果に基づいて磁気ディスク用ガラス基板のOK/NGを判定している。例えば、磁気ディスク用ガラス基板に所定数以上の欠陥(パーティクル(ごみ)や表面上の凹凸など)があれば、その磁気ディスク用ガラス基板をNGと判定する。
【0005】
磁気ディスクの記録密度は年々増加の途を辿っており、それに伴って片面のみ記録面として使用する機会が多くなってきている(特許文献2参照)。例えば、ノート型のパーソナルコンピュータについては、既に160GB以上もの記録容量を有するものも市販されてきているが、使用用途に応じては80GBもあれば十分であり、片面のみを磁気記録面として使用することで対応できる場合もある。片面のみ磁気記録面として使用することで、磁気記録面として使用しない面に対する磁気記録層の形成を省くことができ、コスト削減が可能となる。
【特許文献1】特開平10−267858号公報
【特許文献2】特開2001−351229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、磁気ディスク用基板がガラス基板である場合においては、ガラスが透明体であることから、欠陥検査を光学的に行う場合、欠陥そのものを検出することはできるが、当該欠陥が両面のどちらの主表面にあるかまでは判別することができない。このため、上述したように、片面のみを磁気記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板を検査する場合に、正確に欠陥検出を行うことができないことが想定される。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、磁気ディスク用ガラス基板の欠陥が両面のどちらにあるのかを正確に検出することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、製造された主表面磁気ディスク用ガラス基板を検査する検査工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記検査工程において、磁気ディスク用ガラス基板に対して光学式自動外観検査で欠陥の検査を行い、前記光学式自動外観検査で特定された前記欠陥の位置について、磁気ディスク用ガラス基板レーザドップラー干渉計で、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面上の欠陥を検出することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、製造された磁気ディスク用ガラス基板を検査する検査工程において、磁気ディスク用ガラス基板に対して光学式自動外観検査で欠陥検査を行った後に、光学式自動外観検査で特定された前記欠陥の位置について、レーザドップラー干渉計を用いて欠陥検査を行う。このため、透明体である磁気ディスク用ガラス基板の欠陥が両面のどちらにあるのかを正確に検出することが可能となる。これにより、片面のみを磁気記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板の検査も正確に行うことができ、このような磁気ディスク用ガラス基板の良品を増やすことができ、製品歩留まりの向上を図ることができる。
【0010】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記検査工程において、前記磁気ディスク用ガラス基板の一方の主表面上の欠陥数が所定の数以下である場合に前記一方の主表面のみを磁気記録面とする磁気ディスク用ガラス基板の良品として判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、製造された主表面磁気ディスク用ガラス基板を検査する検査工程において、磁気ディスク用ガラス基板に対して光学式自動外観検査で欠陥の検査を行い、前記光学式自動外観検査で特定された前記欠陥の位置について、磁気ディスク用ガラス基板レーザドップラー干渉計で、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面上の欠陥を検出するので、磁気ディスク用ガラス基板の欠陥が両面のどちらにあるのかを正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
ここで、磁気ディスク用ガラス基板の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を提供することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
【0013】
磁気ディスクの製造工程は、素材加工工程及び第1ラッピング工程;端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び/又は内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程));端面研磨工程(外周端部及び内周端部);第2ラッピング工程;主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程);化学強化工程;記録層等形成工程などの工程を含む。
【0014】
以下に、磁気ディスクの製造工程の各工程について説明する。
(1)素材加工工程及び第1ラッピング工程
まず、素材加工工程においては、例えば溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらの方法うち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。
【0015】
第1ラッピング工程においては、板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス基材とする。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行うことができる。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行う。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス基板を得ることができる。
【0016】
(2)端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程))
コアリング工程においては、例えば、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とする。チャンファリング工程においては、内周端面及び外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施す。
【0017】
(3)第2ラッピング工程
第2ラッピング工程においては、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行う。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0018】
(4)端面研磨工程
端面研磨工程においては、ガラス基板の外周端面及び内周端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行う。このとき、研磨砥粒としては、例えば、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いることができる。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、ナトリウムやカリウムの析出の発生を防止できる鏡面状態になる。
【0019】
(5)主表面研磨工程(第1研磨工程)
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施す。第1研磨工程は、前述のラッピング工程で主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とする工程である。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行う。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いることができる。
【0020】
(6)化学強化工程
化学強化工程においては、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施す。化学強化に用いる化学強化液としては、例えば、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)の混合溶液などを用いることができる。化学強化においては、化学強化液を300℃〜400℃に加熱し、洗浄済みのガラス基板を200℃〜300℃に予熱し、化学強化溶液中に3時間〜4時間浸漬することによって行う。この浸漬の際には、ガラス基板の両表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダに収納した状態で行うことが好ましい。
【0021】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中の相対的にイオン半径の大きなナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。
【0022】
(7)主表面研磨工程(最終研磨工程)
次に、最終研磨工程として、第2研磨工程を施す。第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする工程である。第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、両主表面の鏡面研磨を行う。スラリーとしては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカなどを用いることがきる。
【0023】
(8)検査工程
検査工程においては、図1に示すような光学式自動外観検査(AOI;Automated Optical Inspection)による外観検査装置300を用いて、磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥を検出する。図1に示す外観検査装置300は、2個の欠陥検出プローブ用レーザ302a,302bと、それぞれがレーザ光のほぼ全方向の散乱光を検出する4個の検出器304a〜304dとを備えている。2個の欠陥検出プローブ用レーザ302a,302bは、レーザ出力方向を同じにして離間配置されている。欠陥検出プローブ用レーザ302aは測定用レーザ光を出光し、欠陥検出プローブ用レーザ302bは参照用レーザ光を出光する。検出器304a,304b,304cは、欠陥検出プローブ用レーザ302aのレーザ照射位置の回折・散乱光を検出できる位置に配置されており、それぞれ磁気ディスク用ガラス基板100からの回折・散乱光を検出し、散乱光強度情報を取得する。検出器304a,304b,304cの散乱光強度が強いと欠陥が存在していることになる。なお、検出器304bは、検出器304cの前段に配置されたビームスプリッタ305で分割されたうちの一方の光を検出するように配置されている。また、検出器304dは、欠陥検出プローブ用レーザ302bのレーザ照射位置の回折・散乱光を検出できる位置に配置されており、磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥のない部分での基準となる回折・散乱光を検出し、参照散乱光強度情報を取得する。
【0024】
図1に示す外観検査装置300においては、レーザ径が例えば5μm程度で小さく、レーザ波長が短くパワーが大きいので欠陥検出感度が高い。このような構成の外観検査装置300においては、磁気ディスク用ガラス基板100を移動させながら、磁気ディスク用ガラス基板100の表面に対して、2個の欠陥検出プローブ用レーザ302a,302bからレーザ光を照射し、そのときの回折・散乱光を各検出器304a〜304dで検出する。その後、各検出器304a〜304dの出力信号を判定回路(図示せず)が取り込み、当該出力信号を基に磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥を検出する。
【0025】
磁気ディスク用ガラス基板100は透明体であるので、図1に示す外観検査装置では、欠陥の位置は特定できても、その欠陥がガラス基板100のどちらの主表面に存在するのか、あるいはガラス基板100の内部に存在するのかを判断することが難しい。このため、この検査工程においては、外観検査装置で特定された欠陥がガラス基板100のどちらの主表面に存在するかを判定する。本発明においては、この判定ができるように、レーザドップラー干渉計を用いて観測を行う。図2は、2台のレーザドップラー干渉計400を磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面それぞれに対して配置した例を示す図である。図2に示すように、一対のレーザドップラー干渉計400が、磁気ディスク用ガラス基板100を挟むように、すなわち磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面に対向するように配置されている。
【0026】
各レーザドップラー干渉計400は、例えば波長633nmのHe−Neレーザを使用し、このビームを測定用ビーム、比較用ビームの2つに分割して位相差を検出し、その位相差によって測定対象物の形状を特定するものである。したがって、この一対のレーザドップラー干渉計400を磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面に対向するようにそれぞれ配置することにより、磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面上の欠陥を個別に観測することができる。2台のレーザドップラー干渉計400を欠陥の位置まで移動させるには、外観検査装置300にあるX−Yステージを利用し、外観検査装置300からの欠陥位置情報(欠陥が特定された位置の情報)に基づき、X−Yステージを連動させて欠陥位置まで2台のレーザドップラー干渉計400を移動させる。それぞれのレーザドップラー干渉計400で欠陥を検出することができるので、磁気ディスク用ガラス基板のいずれの主表面上に欠陥が存在するかを特定することができる。
【0027】
このように、本発明によれば、外観検査装置300で磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥検出を行い、欠陥を検出した場合は、磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面の少なくとも1つの面の欠陥位置までレーザドップラー干渉計400を移動させて観測を行い、この観測結果から磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥が該磁気ディスク用ガラス基板100のいずれの主表面にあるかを確認するので、磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥が両主表面のどちらにあるのかを正確に検出することが可能となる。
【0028】
このような正確な欠陥検査を行うことができることにより、片面のみを磁気記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板の良品を増やすことができ、製品歩留まりの向上を図ることができる。図3は、このような片面のみを磁気記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板の良品判定を含む欠陥検査の手順を示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、図1に示す装置を用いて、磁気ディスク用ガラス基板100に対して外観検査装置300を用いて基板状態測定工程(ST10)と欠陥面内位置特定工程とを行う(ST11)。このとき、磁気ディスク用ガラス基板100に表面欠陥があるかどうかを判定し(ST12)、表面欠陥があれば、その欠陥数が所定の欠陥数(閾値)以下であるかどうかを判断する(ST14)。一方、表面欠陥がない場合や、表面欠陥数が閾値以下であれば、磁気ディスク用ガラス基板100の他の不良項目をチェックし、両面が良品であるかどうかを評価し(ST13)、両面が良品であれば、両面良品(DS(Double Side)−OK)とする(ST15)。表面欠陥数が閾値を超えるものや、両面が良品であるかの評価でNGとなったものは、片面のみを記録面とする磁気ディスク用ガラス基板として使用できる可能性があるので、仮の不良品として片面のみを記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板として使用できるかどうかの判定がなされる(ST16)。
【0030】
次いで、図2に示す装置を用いて、磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥面の確認を行う(ST17)。これにより、いずれかの主表面が所定の基準を満足しているのであれば、その主表面を記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板(SS(Single Side))の良品とする。すなわち、一方の主表面上の欠陥数が所定の数(閾値)未満である場合に磁気ディスク用ガラス基板をOKと判定する(SS−OK)。なお、欠陥面確認においては、上記欠陥面内位置特定工程で特定された欠陥面内位置の情報が図2に示す装置にフィードバックされる。
【0031】
上述したように図2に示す装置を用いて、磁気ディスク用ガラス基板100の欠陥面の確認を行って、磁気ディスク用ガラス基板100の一方の面(これを”A面”とする)に欠陥がある場合はA面欠陥品とする(ST18)。そして、他方の面(これを”B面”とする)の欠陥数が所定の閾値以下であるかどうか判定する(ST19)。B面の欠陥数が所定の閾値以下である場合は、B面が使用可能なB面良品(SSB)として(ST20)処理を終える。一方、B面の欠陥数が所定の閾値を超える場合には不良品とする(ST25)。
【0032】
また、磁気ディスク用ガラス基板100のB面に欠陥がある場合はB面欠陥品とし(ST21)、A面の欠陥数が所定の閾値以下であるかどうか判定する(ST22)。A面の欠陥数が所定の閾値以下である場合は、A面が使用可能なA面良品(SSA)として(ST23)処理を終える。一方、A面の欠陥数が所定の閾値を超える場合には不良品とする(ST25)。また、A面及びB面共に欠陥がある場合は両面欠陥品とし(ST24)、それを不良品として(ST25)処理を終える。
【0033】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例)
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラス素材(ブランクス)を得た。この時点でブランクスの直径は66mmである。次に、このブランクスの両主表面を第1ラッピング加工して後、円筒状のコアドリルを用いて、このガラス基板の中心部に穴部を形成し円環状のガラス基板に加工(コアリング)を実施、そして端部(外周端部及び内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程))を施し、その後第2ラッピング加工を行った。
【0034】
次いで、ガラス基板の外周端部について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。
【0035】
そして、鏡面研磨工程を終えたガラス基板を水洗浄した。これにより、ガラス基板の直径は65mmとなり、2.5インチ型磁気ディスクに用いる基板とすることができた。
【0036】
次いで、主表面研磨工程として、ガラス基板の両主表面に対して第1研磨工程を施した。第1研磨工程においては、研磨装置として、両面研磨機を使用した。この研磨装置における研磨パッドとしては、軟質スウェードパッドを用いた。また、研磨剤としては、セリウム研磨剤を用いた。また、研磨条件としては、加工面圧を130g/cmとし、加工回転数を22rpmとした。これにより、ガラス基板の算術平均粗さRaは約1.5nmとなった。
【0037】
次いで、第2研磨処理を施した。第2研磨工程においては、研磨装置として、両面研磨機を使用した。この研磨装置における研磨パッドとしては、軟質スウェードパッド(アスカーC硬度:54、圧縮変形量:476μm以上、密度:0.53g/cm以下)を用いた。また、研磨剤としては、平均粒径100nmのセリウム研磨剤を用いた。また、研磨条件としては、加工面圧を60g/cmとし、加工回転数を20rpmとした。ガラス基板の記録面として使用する主表面の算術平均粗さRaは約0.30nmとなった。
【0038】
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、KOH溶液に浸漬して、超音波を印加して120秒洗浄し、アルカリ洗浄液を用いてスクラブ洗浄を4秒行い、極微量に希釈した希硫酸及び前記アルカリ洗浄液で洗浄を行った後に、IPA(イソプロピルアルコール)の蒸気乾燥を行った。
【0039】
次いで、ガラス基板の両主表面について、欠陥があるかどうかを検査する検査工程を施した。検査工程においては、図1に示す外観検査装置を用いて、欠陥の有無と、欠陥がある場合にその位置情報を取得した。さらに、外観検査装置で検出された欠陥の位置情報を用いて、図2に示すレーザドップラー干渉計を外観検査装置で検出された欠陥まで移動させ、外観検査装置で検出された欠陥が磁気ディスク用ガラス基板のどの面にあるかを調べた。そして、図3に示すような手順にしたがって片面のみを記録面として使用できる磁気ディスク用ガラス基板を選別した。このようにして磁気ディスク用ガラス基板を作製した。
【0040】
このような片面のみを磁気記録面として使用できる磁気ディスク用ガラス基板に、それぞれ下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を順次積層して磁気ディスクを100枚作製した。これらの磁気ディスクに対して、GH(グライドハイト)6.0nmのグライド試験を行ったところ、図4に示すように、良品率が93%であった。
【0041】
(比較例)
図1に示す外観検査装置のみを用いて片面のみを記録面として使用できる磁気ディスク用ガラス基板を選別すること以外は実施例と同様にして磁気ディスク用ガラス基板を作製した。このような片面のみを記録面として使用できる磁気ディスク用ガラス基板に、それぞれ下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を順次積層して磁気ディスクを100枚作製した。これらの磁気ディスクに対して、実施例と同様にしてのグライド試験を行ったところ、図4に示すように、良品率が85%であった。これは、外観検査装置のみを用いて片面(A面)のみを記録面として使用できる磁気ディスク用ガラス基板を選別する際に、欠陥がいずれの面に存在しているかを正確に確認できないために、本来ならばNGとすべきA面の欠陥数のうちいくつかの欠陥がB面にあると誤認して、A面の欠陥数を少なくカウントしてOKとしてしまったためであると考えられる。
【0042】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。上記実施の形態においては、2台のドップラー干渉計400を磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面それぞれに対して配置し、磁気ディスク用ガラス基板100の両主表面に対してそれぞれ欠陥検査を行う場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、1つのレーザドップラー干渉計400を磁気ディスク用ガラス基板100に対して配置し、磁気ディスク用ガラス基板100の一方の主表面に欠陥が存在するかどうかを判定した後に、磁気ディスク用ガラス基板100を裏返して磁気ディスク用ガラス基板100の他方の主表面に欠陥が存在するかどうかを判定するようにしても良い。また、上記実施の形態における材質、個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造において用いられる外観検査装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造において用いられるレーザドップラー干渉計を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造における欠陥検査の手順を示すフローチャートである。
【図4】外観検査装置のみの場合と外観検査装置とレーザドップラー干渉計とを組み合わせた場合における良品率の違いを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
100 磁気ディスク用ガラス基板
300 外観検査装置
302a,302b 欠陥検出プローブ用レーザ
304a〜304d 検出器
305 ビームスプリッタ
400 レーザドップラー干渉計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造された主表面磁気ディスク用ガラス基板を検査する検査工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記検査工程において、磁気ディスク用ガラス基板に対して光学式自動外観検査で欠陥の検査を行い、前記光学式自動外観検査で特定された前記欠陥の位置について、レーザドップラー干渉計で、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面上の欠陥を検出することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記検査工程において、前記磁気ディスク用ガラス基板の一方の主表面上の欠陥数が所定の数以下である場合に前記一方の主表面のみを磁気記録面とする磁気ディスク用ガラス基板の良品として判定することを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−79965(P2010−79965A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245534(P2008−245534)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(503069159)ホーヤ ガラスディスク タイランド リミテッド (85)
【Fターム(参考)】