説明

磁気ヨークの製造方法及び電磁駆動装置並びに光量調整装置

【課題】真円度が得られ磁気的特性に優れた円筒形状の磁気ヨークを簡単な加工方法で安価に製造することが可能な磁気ヨークを提供する。
【解決手段】軟磁性素材から予め設定されたヨーク外径D、ヨーク内径d、ヨーク軸長Lの円筒状ヨークを製作する磁気ヨークの製造方法であって、ヨーク外径Dより小径でヨーク軸長Lより長い線状素材と、ヨーク外径Dと略々同一内径Dの円筒状成形孔を有する成形型とから、ヘッダ加工によってヨーク外径Dと実質的に同一外径Dの扁平円盤形状のブランクを作成するヘッダ加工工程と、上記ブランクを上記ヨーク外径Dと同一内径で、ヨーク軸長Lと同一長さの軸長Lを有する円筒状成形孔を備えた成形型内で絞り加工によって有底円筒形状の中間成型品を成形する絞り加工工程と、上記中間成型品の底壁をヨーク内径dと同一外径dを有するパンチ部材で打ち抜き加工して円筒状ヨークを生成するパンチ加工工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカメラの光量調整羽根を開閉動するアクチュエータなどの電磁駆動装置に於ける電磁ヨークの製造方法とこれを用いた電磁駆動装置に係わり、マグネットロータを安定した磁気回路でシールドすることが可能な電磁ヨークの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の電磁駆動装置は、回転軸を有するロータと、このロータに回転力を付与するステータと、このロータとステータを覆う電磁ヨークとで構成されている。例えば特許文献1にはコイル枠の内部にマグネットロータを回転自在に軸承し、その外周に励磁コイルを巻回する電磁駆動装置が開示されている。そして励磁コイルを巻回したコイル枠の外周には電磁ヨークが嵌合されている。このヨークは、マグネットロータと励磁コイルを磁気的に覆ってシールドしている。
【0003】
このような構成の磁気ヨークは、一般に電磁軟鉄などの軟磁性素材で円筒形状のスリーブで構成され、このスリーブを内部にマグネットロータを軸支持したコイル枠に嵌合している。そしてマグネットロータは中心に回転軸を、その周囲に円筒形状の永久磁石を一体化して構成されている。
【0004】
従来広く知られているこのような電磁駆動装置に於ける磁気ヨークは、造管加工方法、マルチ加工方法、トランスファ加工方法で加工されている。造管加工方法は板状材料を引き抜き加工でパイプ状の円筒形状に加工する。またマルチ加工方法は板状材料を円柱形状の芯材に沿わせて円筒形状に加工する。トランスファ加工方法は板状材料を深絞りしてカップ形状に形成し、その両端縁をカットして円筒形状に加工する。従来これらの方法で磁気ヨークを円筒形状に作成し、このヨークと内部に収容するマグネットロータとの間にエアーギャップを形成している。特許文献2(特開平9−99844号)にはトランスファ加工方法によってヨークを製作することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−296142号公報
【特許文献2】特開平9−99844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような電磁駆動装置における磁気ヨークは、円筒形状のマグネットロータを覆うように円筒形状のスリーブに構成される。そしてこの磁気ヨークはマグネットロータとの間にエアーギャップを形成してロータの周囲を磁気的に覆うように作用する。従ってスリーブ状のヨークの真円度と肉厚にバラツキが生ずるとロータに回転斑が発生する。例えばマグネットロータを所定角度範囲で往復動する場合にヨークの真円度に狂いが生じているとロータには回転斑が発生する。同様にヨークの肉厚にバラツキが生じていてもロータには回転斑が発生する。このようなマグネットロータと磁気ヨークとの間のエアーギャップの歪みによってマグネットロータの周囲は磁気的に不安定となり円滑な回転が得られない。このような磁気ヨークがマグネットロータに及ぼす磁気的アンバランスによって励磁コイルに所定の電流を供給しても、ロータに連結した羽根部材が正確に回転動作しないことが問題となる。
【0006】
上述のヨーク製作時の真円度、肉厚の精度問題と同時に加工コストが問題となる。つまりヨークを構成するパーマロイ、電磁軟鉄材などの素材は均質、特に透磁率などの磁気特性に優れた素材を使用するため、加工時の材料取りの効率が問題となる。例えば前掲特許文献2の深絞り加工方法では帯状の板素材をカップ形状にプレス成形する際に板状素材には不要な残滓部が残る。この材料取りの残滓が材料コストを高くする原因であることは広く知られている。
【0007】
これと同時に深絞り加工方法ではカップ形状にプレス成形する際に開口端部にフランジ状の耳部が残り、この耳部をカットする加工が必要となる。この端縁部の耳部をカットはする際の断面形状(破断面)が磁気的特性のアンバランスを招く。
【0008】
上述のようにスリーブ状に形成する磁気ヨークは真円度と肉厚の均質化と軸方向長さの加工精度が得られ均一な磁気的特性が要求される。これに対し前述の造管加工方法及びマルチ加工方法では円周上の繋ぎ目部で磁気特性が不均衡となり、また前掲特許文献2のトランスファ加工方法では材料コストが高くなり、真円度と軸方向長さの加工精度に問題が存在する。
【0009】
本発明者は深絞り加工方法で従来は帯状の板素材から段階的にプレス加工してカップ状形状にプレス加工しているため、材料コストが高く、真円度と軸方向端面の加工精度に問題が生ずることを究明するに至った。つまり板状材料から加工するため材料取りコストが高く、プレス加工後の端面部にフランジ状の耳部が形成される。そしてこれをカットする際に軸方向長さ精度と破断面の不均質が磁気的特性に影響を及ぼす。これと同時に真円度も複数のプレス型で段階的に絞り加工すると、複数の型の精度差と材料セット時の位置ズレによって真円度を確保することが困難であることを究明するに至った。
【0010】
そこで本発明者は線状素材をヨーク外径と同一径の成形孔内でヘッダ加工して円盤状ブランクを形成し、この成形孔(又は同一径の成形孔)内で絞り加工することによって、カップ状成形と同時に開口端縁を成形する。これによって上述の材料コストの低減とカップ状成型品の加工端縁のカット加工を省くことができ、真円度の確保と同時に端面カットによる破断面の磁気的特性の不均衡を解決し得るとの着想に至った。
【0011】
従って本発明は真円度が得られ磁気的特性に優れた円筒形状の磁気ヨークを簡単な加工方法で安価に製造することが可能な磁気ヨークの製造方法を提供することをその課題としている。
同時に、本発明は線状素材からカップ状成型品、次いでスリーブ形状のヨークを同一の成形型で製造することをその課題としている。
更に本発明は磁気的特性に優れた磁気ヨークによって動作斑がなく円滑な回転動作が可能な電磁駆動装置及びこれを用いた光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。軟磁性素材から予め設定されたヨーク外径D、ヨーク内径d、ヨーク軸長Lの円筒状ヨークを製作する磁気ヨークの製造方法であって、上記ヨーク外径Dより小径で上記ヨーク軸長Lより長い線状素材と、上記ヨーク外径Dと略々同一内径Dの円筒状成形孔を有する成形型とから、ヘッダ加工によって上記ヨーク外径Dと実質的に同一外径Dの扁平円盤形状のブランクを作成するヘッダ加工工程と、上記ブランクを上記ヨーク外径Dと同一内径で、上記ヨーク軸長Lと同一長さの軸長Lを有する円筒状成形孔を備えた成形型内で絞り加工によって有底円筒形状の中間成型品を成形する絞り加工工程と、上記中間成型品の底壁を上記ヨーク内径dと同一外径dを有するパンチ部材で打ち抜き加工して円筒状ヨークを生成するパンチ加工工程とを備える。
【0013】
前記ヘッダ加工工程における成形型の成形孔と、前記絞り加工工程における成形型の成形孔は少なくともその一部が同一部材の共通型で構成する。
【0014】
前記ヘッダ加工工程と絞り加工工程とパンチ加工工程における各成形型は、組み合わせ型で構成し、この組み合わせ型は、少なくとも前記ヨーク外径と同一径に構成された成形孔は共通型に配置する。
【0015】
本発明に係わる電磁駆動装置は、少なくともNS磁極を有するマグネットロータと、上記マグネットロータの外周に巻回された励磁コイルと、上記励磁コイルの外周に配置された磁気ヨークとから構成し、上記磁気ヨークは、(1)軟磁性材の線状素材から上記磁気ヨークの外周径と同一の扁平円盤形状のブランクをヘッダ加工で成形し、(2)上記ブランクから上記磁気ヨークの外周径及び内周径と同一の有底円筒形状に絞り加工されること、(3)上記絞り加工の後、底壁を上記磁気ヨークの内周径と同一径のパンチ部材で打ち抜き加工される。
【0016】
光路開口を有する基板と、上記光路開口に配置され通過光量を調節する羽根部材と、上記羽根部材を上記光路開口を開閉するように駆動する電磁駆動装置とを備えた光量調整装置であって、上記電磁駆動装置は上記構成を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明は外径D、内径d、軸長Lの円筒形状ヨークを、外径Dより小さい線状素材と、この外径Dと同一内径の円筒状成形孔を有する成形型とからヘッダ加工によってヨーク外径と実質的に同一外径の扁平円盤形状のブランクを作成し、このブランクをヨーク外径と同一径でヨーク軸長Lと同一長さの円筒状成形孔で絞り加工してカップ形状の中間成形品を作成し、この中間成型品の底壁ヨーク内径dと同一径の外径を有するパンチ部材で打ち抜き加工するものであるから次の効果を有する。
【0018】
従来の平板状素材から造管加工或いはマルチ加工で円筒形状に形成する加工法のように外周に継ぎ目が存在しないため、特に外周方向に均質な磁気特性を有する円筒形状のヨークを成形することが出来る。このため例えばマグネットロータを励磁コイルで回転駆動する場合に回転斑がなく円滑な駆動回転を得ることが出来る。これと同時に励磁コイルの非通電時にマグネットロータを所定位置に静止させる場合にこのロータに及ぼすヨークの磁力が製品毎に異なることがなく常に安定した位置に静止保持することが出来る。
【0019】
また、従来の平板状素材からプレス加工で絞り成形する場合に比べ、本発明は線状素材をヘッダ加工によってヨーク外径と等しい外径の円盤形状のブランクを作成し、このブランクをプレス加工で絞り成形するものであるから、材料の加工損がなく材料コストを低減することが出来る。これと共にブランクから成形したカップ状中間成型品にはフランジ状耳部が残存することがない。従って従来この耳部をカットしていたのに対し、カット工程を省くことが出来、材料コストと同時に加工コストを低減することが出来る。また、カップ状中間成型品の開口端縁をプレス加工により同時形成するためカット加工により生ずる破断面の磁気的特性が不安定となることがない。
【0020】
更に、本発明はヘッダ加工して得るブランクと、このブランクをカップ形状に絞り加工する円筒状成形孔を同一型で連続成形することにより、順次複数の型にセットする際の位置ズレも、また複数型相互の成形孔の精度差が生ずることがなく、真円度が高精度で均一な肉厚の円筒状ヨークを成形することが出来る。
【0021】
また、本発明はヨーク外径Dと同一径の円盤状ブランクを、これと同一径でヨーク軸長と等しい軸長の成形孔内で絞り加工するため、ヨーク端縁を絞り加工で同時成形するものであるからヨーク軸長を所定長さにバラツキなく作成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる磁気ヨークの製造方法の工程説明図である。図2は図1の各工程に於ける成形品の形状を示す説明図であり、同3及び図4は製造型の構成を示す説明図である。図5乃至図7は本発明に係わる電磁駆動装置の斜視説明図である。
【0023】
まず本発明に係わる電磁ヨークの製造方法について説明する。図1はその工程を示し、素材形成工程(St1)と、ブランク成形工程(St2)と、中間成形工程(St3)と、最終成形工程(St4)とから構成される。以下各工程について順次説明する。
【0024】
[素材形成工程]
本発明の磁気ヨークYは、フェライト、電磁軟鉄(SUY)などの軟磁性素材から成形された線状素材p1を使用する。この線状素材p1は、原材料を引き抜き加工若しくは押し出し加工して作成される。この線状素材p1の断面は円形、矩形その他適宜断面に形成されている。そこでこの素材形成工程St1では、外径寸法が電磁ヨークYの外径Dより小さい線材料p1を選択する。例えば線状素材p1が円形断面の場合にはその直径DSが電磁ヨークY(最終成型品)の外径Dより小さい(DS<D)材料を選定する。また、線状素材p1が矩形断面のときにはその縦長さ(D1)と横長さ(D2)のいずれもが電磁ヨークY(最終成型品)の外径Dより小さい(D1<D&D2<D)材料を選定する。
【0025】
上記のように選定された線状素材p1を軸方向長さLSでカットする。このときの軸長さLSは、線状素材p1の体積V1と後述する中間成形品p3の体積V3が等しく(V1=V3)なるように算出する。つまり、最終ヨークp4からその前工程の中間成型品p3の体積V3を算出し、この体積V3と線状素材p1の体積V1が等しくなる軸長さLSを算出する。そして連続した線状素材を軸長LSでカットする。
【0026】
[ブランク成形工程]
次に上述の線状素材p1を製造型K1内でヘッダ加工して円盤状(コイン状)のブランクp2を成形する。このときの成形型K1は図3(a)、(b)に示すように内径kd、軸長LSの成形孔10内でヘッダ加工する。このときの成形孔10の内径kdは最終ヨークYの外径Dと等しい径にする。またヘッダ11の外径hdも外径Dと等しいか若干小さく成形する。つまり最終ヨークYの外径Dと等しい内径kdの成形孔内でヘッダ加工して外径Dbの円盤状ブランクp2を形成する。
【0027】
特に図示の成形型K1(図3(a)、(b)参照)は組み合わせ型で構成し、型本体12と第1キャップ型13とから構成し、型本体12に対して第1キャップ型13をボルト14で連結するようになっている。これは型本体12を次工程の中間成形工程の成形型K2と共通化するためである。このようにブランク成形型(雌型)と次工程の絞り成形時の成形型(雌型)を同一型で構成することによって型製作時の精度差による加工誤差を少なくすることが出来る。
【0028】
[中間成形工程]
次に上述の円盤状ブランクp2を成形型K2内で絞り加工する。このときの成形型K2(図4(c))は前述のブランク成形工程に於ける成形孔10と同一形状に製作するか、或いは共通型として前記型本体12を使用する。また絞り型(雄型)M1の外径は最終ヨークYの内径dと等しい径に形成してある。従ってこの絞り加工で有底円筒形状(カップ形状)の中間成形品p3が製造される。この中間成形品p3は最終ヨークYの外径D及び内径dで形成され最終ヨークと同一の肉厚tに形成される。特に成形型K2は前工程の成形型K1と同一の型本体12と第2キャップ型15で構成され、キャップ型15には上端フランジ部15aが形成されている。この上端フランジ部15aは成形孔10内に肉厚tに相当する張り出し部を構成する。従ってこの絞り加工で上端フランジ部Yf1が同時成形される。
【0029】
[最終成形工程]
上述の中間成形品p3の底壁を成形型K3で打ち抜き加工する。この成形型K3(図4(d))は前工程の成形型K2(図4(c))と同一の内径D(最終ヨークYの外径Dと同一径)を有する成形孔16を備えている。従って前述の中間成形品p3を内部に挿入して位置決めし、最終ヨークYの内径dと同一径(外径)のパンチ部材で打ち抜き加工する。この打ち抜き加工で中間成形品p3の底壁部が打ち抜かれ下端フランジ部Yf2が形成される。従ってこの下端フランジ部には破断面が残される。
【0030】
以上の工程で製造される最終ヨークYは次の特徴を有している。(1)ブランクp2はヘッダ加工で最終ヨークYの外径Dと同一径の円盤形状(コイン形状)に形成される。このため従来の帯状に連続した板状素材からカップ形状の中間成形品p3を絞り成形する際の材料のムダ(材料損)がない。(2)円盤形状のブランクから絞り成形してカップ形状の中間成形品p3を形成するから、この絞り加工時に上端フランジ部Yf1が同時成形される。このため従来の板状素材から絞り加工する場合の上端部に耳状の折曲げフランジが形成され、これをカットする工程を必要としない。また絞り加工で最終ヨークYの軸長Lを形成するから、従来の上端部と下端部をカットする場合に比べヨークの軸長Lを均一に作成することが出来る。
【0031】
上述の各工程に於ける製造型の特徴について説明する。上述のヘッダ加工で扁平円盤状のブランクp2を作成する成形型K1(図3(a))と、このブランクからカップ形状の中間成形品p3を絞り加工する成形型K2(図4(c))とは、ヨーク外径Dに等しい内径Dを有する成形孔10を共通型としている。これによって複数の成形型を製造する際の寸法誤差の問題がなく、これと同時に材料及び加工品を製造型にセットする際の位置ズレの問題が解消される。つまり単一の成形孔10内で、円盤状ブランクp2、次いで有底円筒形状の中間成形品p3を形成することが可能である。
【0032】
次に上述の方法で作成した電磁ヨークを用いた電磁駆動装置及び光量調整装置について説明する。図5は電磁駆動装置を示す要部断面説明図であり、図6はその斜視図である。また図7はこの電磁駆動装置を備えた光量調整装置の組み立て分解斜視図である。図5に示す装置は外周に少なくとも2極のNS磁極を形成した円筒形状の永久磁石42と、この永久磁石42の軸中心に回転軸43を一体形成して構成されたマグネットロータ41と、この回転軸43の両端部を軸承する一対の軸受を有するコイル枠46と、このコイル枠46の外周に巻回した励磁コイル49と、電磁ヨーク52で構成されている。
【0033】
永久磁石42は強磁性材料を焼結などで円筒形状に形成し、その外周には少なくとも2つの磁極(N極とS極)を形成する。この永久磁石42には円筒形状の軸中心に回転軸43を設ける。図示のものは永久磁石42の中央に軸孔を一体形成し、この軸孔に樹脂製の回転軸43をインサート成形で一体形成してある。このように円筒形状の永久磁石42の中心に回転軸43を一体形成してマグネットロータ41を形成し、このマグネットロータ41をコイル枠46に形成した上下一対の軸受(後述の軸受孔47a,軸受凹溝48a)で回動自在に支持する。
【0034】
コイル枠46は内部にマグネットロータ41を収容する空洞部と外周に励磁コイル49を巻廻する凹溝を備え、樹脂などのモールド成形で上下若しくは左右に分割した2つの半裁状コイル枠で構成する。図示のものは上コイル枠47と下コイル枠48で上下に区割され、マグネットロータ41の回転軸43を回動自在に支持する軸受孔47aが上コイル枠47に形成してあり、同様に軸受凹溝48aが下コイル枠48に形成してある。つまり上下に軸端を有する回転軸43の上端軸承部43aは上コイル枠47の軸受孔47aに嵌合して回動自在に支持され、回転軸43の下端軸承部43bは先端が球形状に形成され、下コイル枠48の軸受凹溝48aにピボット支持されている。
【0035】
そして、上端軸承部43aと軸受孔47aとは軸外周と孔内周との間に少許の間隔(クリアランス)を設け回転軸43がスムーズに回転するように嵌合する。同様に、この上端軸承部43aと軸受孔47aとの間には軸方向(スラスト方向)にも少許の間隔(クリアランス)を設け、回転軸43の摩擦を軽減する。
【0036】
一方、下端軸承部43bは先端を球形状に形成し、軸受凹溝48aでこれを支持する。その為、軸受凹溝48aは断面V字状のテーパ面で構成し、回転軸43をピボット支持する。このようなピボット軸受によって回転軸43に加わる回転時の摩擦力は著しく低減され、小さな駆動トルクで円滑に回転することが出来る。
【0037】
このようにコイル枠46に回動自在に軸受支持したマグネットロータ41はコイル枠46の外周に巻廻した励磁コイル49によって回転軸43を中心に回転することとなる。そこで回転軸43には1つ若しくは図示のように2つのアーム状の伝動レバー(伝動アーム)44と、このレバーに一体形成した伝動ピン44a,44bを設け、この伝動ピン44a,44bには後述のように羽根部材を連結する。そしてマグネットロータ41の回転を羽根部材に連結する駆動伝達系にマグネットロータ41が所定角度内で回動するように運動規制する規制手段を設ける。この規制手段は例えばストッパー部材で構成し、このストッパー部材は所定角度内の運動を許容し、その角度領域外の運動を阻止するようにマグネットロータ41の回動領域に設けるか、伝動アーム44の回動領域あるいは羽根部材の開閉領域に設ける。
【0038】
以上の構成において前述の電磁ヨーク52(以下「ヨーク」という)は、図1に基づいて前述した製造方法で形成され、コイル枠46に嵌合されている。そしてマグネットロータ41の永久磁石42の端面とこの端面に対峙する磁気誘導部材Pの面との間の間隙がマグネットロータ41の永久磁石42の外周面とヨーク52の内周面との間の間隙より小さくなる様に磁気誘導部材Pが配設されており、マグネットロータ41の永久磁石42と磁気誘導部材Pの間の磁気抵抗をマグネットロータ41の永久磁石42とヨーク52の間の磁気抵抗より小さくすることで、その磁気抵抗の差によりマグネットロータ41の永久磁石42からヨーク52に流れる磁束の一部を磁気誘導部材Pを経由する磁気回路を構成し、マグネットロータ41を常時回転軸方向に磁気吸引力を付与する様にしている。
【0039】
次に上述の電磁駆動装置40を用いた光量調整装置Eについて説明する。図7に示すように光量調整装置Eは光路開口を有する基板30と、この基板30に組み込んだ一対の羽根部材10、20と、この羽根部材を開閉する駆動装置40とから構成されている。
【0040】
その基板30は合成樹脂のモールド成形或いは金属板のプレス加工で後述する羽根部材を開閉自在に支持し、この羽根部材を開閉駆動する駆動装置を取付けられる形状でカメラ装置などの組込みスペースに応じた形状に形成されている。この基板30にはカメラ装置などの撮影光軸Y2−Y2を中心とする光路開口31を形成する。この光路開口31は撮影に要する光路の最大径より若干大きい口径に形成する。そして、この光路開口31には複数の羽根部材10、20を配置する。図示のものは第1の羽根部材10と第2の羽根部材20の2枚で構成されている。
【0041】
この第1、第2の羽根部材10、20の形状は光路開口31を通過する光量を大小に調整する絞り羽根と、光路開口31を遮閉するシャッタ羽根と、光路開口31の光量(露光量)を調整した後、光路を遮閉する絞り兼用シャッタ羽根との何れかその働きに適した形状に構成される。図示のものは絞り兼用シャッタ羽根として図示の形状に構成してある。つまり第1の羽根部材10は開口11とこの開口11の一部端縁を先鋭状に形成した絞り形成面11aと光路開口31の一部を覆うシャッタ機能部14を備えている。また第2の羽根部材20は半円形状の開口21と、この開口21の一部端縁を先鋭状に形成した絞り形成面21aとを備えている。
【0042】
この第1、第2の羽根部材10、20の形状は基板30に摺動自在に支持するか回動自在に支持するか或いは2枚構成にするか3枚以上複数の構成にするかによってそれぞれ異なった形状を採用する。図示のものは2枚構成の羽根を同一直線上で反対方向に移動(摺動)するようにしている関係で、第1の羽根部材10には右側の半円弧を形成する開口11が、第2の羽根部材20には左側の半円弧を形成する開口21が必要となる。
【0043】
従って、この左右の半円状の開口11、開口21が互いに接近或いは離反することによって光路開口31を開閉することとなる。また、図示のものは撮影などの露光量を規制する為、開口11には先鋭状の絞り形成面11aが第1の羽根部材10に、同様の絞り形成面21aが第2の羽根部材20にそれぞれ形成してある。これは略々菱型形状の絞り口径を第1、第2の羽根部材10、20で形成し、この絞り口径を大小に調整することによって近似した開口径で開口11を通過する光量を調整する為である。
【0044】
従って、この絞り口径をどのような形状に設定するかによって開口11と開口21の形状が決定される。そこで、前述の基板30には第1の羽根部材10と第2の羽根部材20とを摺動自在に案内するガイドリブ36a、36bとガイドピン34a、34b、34cが形成され、第1の羽根部材10にはガイド溝12a、12bが、第2の羽根部材20にはガイド溝22a、22bとが形成されている。つまり、第1の羽根部材10は前述の開口11を備え、互いに平行するガイド溝12a、12bが形成され、このガイド溝12aには基板30に植設したガイドピン34aが係合し、ガイド溝12bにはガイドピン34bが係合するようになっている。
【0045】
また、この第1の羽根部材10の側縁は基板30に形成したガイドリブ36bと係合する。従って、第1の羽根部材10はガイドピン34aと34b及びガイドリブ36bに沿って図7左右方向に摺動自在に案内されることとなる。同様に第2の羽根部材20は前述の開口21を備え、平行するガイド溝22aと22bが形成され、ガイド溝22aにはガイドピン34bが、ガイド溝22bにはガイドピン34cがそれぞれ嵌合され、またこの第2の羽根部材20の側縁(図7下側)は基板30に形成したガイドリブ36aと係合するようになっている。
【0046】
以上説明した構成によって第1の羽根部材10と第2の羽根部材20とは基板30に同一直線上(図7左右方向)で摺動自在に支持され、この第1、第2の羽根部材10、20はそれぞれ基板30に形成した光路開口31を過ぎる方向に移動自在となる。そこで、前述した駆動装置40は基板30の羽根部材を配置した側の背面側にビスなどで固定され、図7に示す様にその基板30には伝動ピン44a、44bの逃げ溝35a、35bが設けられている。
【0047】
そしてこの基板30に形成した逃げ溝(スリット溝)35a,35bが伝動ピン44a、44bの回転角度を規制している。このようにマグネットロータはスリット溝などのストッパー部材(運動規制手段)で所定角度内で揺動するように運動規制されている。また第1、第2の羽根部材10、20にはこの伝動ピン44a、44bと係合するスリット孔13、23が設けられている。そしてその逃げ溝35a、35bに伝動ピン44a,44bが挿通され基板30の羽根部材を配置した面側に突出する。そこで伝動アーム44に設けた伝動ピン44a、44bが第1、第2の羽根部材10、20のスリット孔13、23に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係わる電磁ヨークの製造方法の工程説明図。
【図2】図1の方法による電磁ヨークの成形順を示す説明図であり、(a)は線状素材p1の形状を、(b)は上記線状素材p1から作成したブランクの形状を、(c)はこのブランクから作成した中間成形品p3の形状を、(d)は中間成形品p3から形成した最終ヨークYの形状をそれぞれ示す。
【図3】図1の製造工程に於いて用いる製造型の構造を示す説明図であり、(a)及び(b)は線状素材からブランクを成形する型構造を示す。
【図4】図1の製造工程に於いて用いる製造型の構造を示す説明図であり、(c)はブランクから有底円筒形状の中間成形品p3を形成する型構造を、(d)は中間成形品p3から最終ヨークYを形成する型構造をそれぞれ示す。
【図5】本発明に係わる電磁駆動装置の要部の説明図であり、(a)は電磁駆動装置の断面図を示し、(b)は軸受凹溝と下端軸承部との係合を示す断面図。
【図6】図5の装置の斜視説明図。
【図7】本発明に係る光量調整装置の分解斜視図。
【符号の説明】
【0049】
p1 線状素材
p2 ブランク
p3 中間成形品
p4 最終ヨーク
K1 ブランクを成形する成形型
K2 中間成形品を成形する成形型
K3 最終ヨークを成形する成形型
12a 成形孔
12 型本体
13 第1キャップ部材
14 締結ボルト
15 第2キャップ部材
10 第1の羽根
11 開口
20 第2の羽根
21 開口
30 基板
31 光路開口
40 電磁駆動装置
41 マグネットロータ
42 永久磁石
43 回転軸
43a 上端軸承部
43b 下端軸承部
44 伝動アーム
46 コイル枠
47 上コイル枠
48 下コイル枠
48a 軸受凹溝
49 励磁コイル
52 ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性素材から予め設定されたヨーク外径D、ヨーク内径d、ヨーク軸長Lの円筒状ヨークを製作する磁気ヨークの製造方法であって、
上記ヨーク外径Dより小径で上記ヨーク軸長Lより長い線状素材と、
上記ヨーク外径Dと略々同一内径Dの円筒状成形孔を有する成形型とから、ヘッダ加工によって上記ヨーク外径Dと実質的に同一外径Dの扁平円盤形状のブランクを作成するヘッダ加工工程と、
上記ブランクを上記ヨーク外径Dと同一内径で、上記ヨーク軸長Lと同一長さの軸長Lを有する円筒状成形孔を備えた成形型内で絞り加工によって有底円筒形状の中間成型品を成形する絞り加工工程と、
上記中間成型品の底壁を上記ヨーク内径dと同一外径dを有するパンチ部材で打ち抜き加工して円筒状ヨークを生成するパンチ加工工程と、
を備えた磁気ヨークの製造方法。
【請求項2】
前記ヘッダ加工工程における成形型の成形孔と、前記絞り加工工程における成形型の成形孔は少なくともその一部が同一部材の共通型で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヨークの製造方法。
【請求項3】
前記ヘッダ加工工程と絞り加工工程とパンチ加工工程における各成形型は、組み合わせ型で構成され、
この組み合わせ型は、少なくとも前記ヨーク外径と同一径に構成された成形孔は共通型に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ヨークの製造方法。
【請求項4】
少なくともNS磁極を有するマグネットロータと、
上記マグネットロータの外周に巻回された励磁コイルと、
上記励磁コイルの外周に配置された磁気ヨークと、
から構成され、
上記磁気ヨークは、
(1)軟磁性材の線状素材から上記磁気ヨークの外周径と同一の扁平円盤形状のブランクをヘッダ加工で成形され、
(2)上記ブランクから上記磁気ヨークの外周径及び内周径と同一の有底円筒形状に絞り加工され、
(3)上記絞り加工の後、有底円筒形状の底壁を上記磁気ヨークの内周径と同一径のパンチ部材で打ち抜き加工されていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項5】
前記磁気ヨークの上端フランジ面は、前記有底円筒形状に絞り加工される際に同時形成され、
前記磁気ヨークの下端フランジ面は、前記パンチ部材による打ち抜き加工時の破断面を有していることを特徴とする請求項4に記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
光路開口を有する基板と、
上記光路開口に配置され通過光量を調節する羽根部材と、
上記羽根部材を上記光路開口を開閉するように駆動する電磁駆動装置と、
を備えた光量調整装置であって、
上記電磁駆動装置は請求項4又は5に記載の構成を備えていることを特徴とする光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−301605(P2008−301605A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144036(P2007−144036)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】