説明

立体地図表示ナビゲーション装置、立体地図表示システム及び立体地図表示プログラム

【課題】描画負担が低減するだけでなく、立体地図表示に関する総合的なコンピュータ負荷も低減する立体地図表示技術を提供する
【解決手段】道路データを格納する道路データベース21と立体物の立体図データを格納する立体図データベース22とを有する地図データベースと、道路データに基づいて設定された案内経路に関する経路情報を記憶する経路情報記憶部と、地図データベースにアクセスするとともに、案内経路と立体物との離散距離を演算し、離散距離に応じて簡略化された立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み手段6と、バッファ部7から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像を生成する地図画像生成手段と備えた立体地図表示ナビゲーション装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体地図表示技術、特に立体地図表示を行うナビゲーション装置や立体地図表示システム、及び立体図データに基づいて立体地図を作成して表示する立体地図表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DVDやハードディスク内に構築されている地図データベースから地図データを読み出して画面上に建物や道路などの地図を表示し、GPS等の自車位置検出センサにより検出した自車位置と目的地への方向を案内経路として地図上に表示するナビゲーション装置が知られている。その際、地図データベースに立体物の立体図データを格納しておいて、通過予定の道路付近の建物を立体的に表示すると、分かり易い道路案内が可能となる。しかしながら、立体物を立体的に表示する場合、各立体物の側面を構成するポリゴンの数が平面的な表示に比べて圧倒的に増大して、コンピュータの演算負荷が大きくなる。また、ナビゲーション装置などで用いられるモニタの画面サイズは比較的小さく、建物などが密接した場所では、多数のポリゴンで立体物を表示しても、かえって見づらくなるという問題もある。
【0003】
そのような問題を解決するため、移動体の位置あるいはユーザが指定した位置に対応して設定された表示領域内の地図情報を地図データベースから読み込み、当該地図情報を用いて、予め設定された視点から眺めた透視地図を生成し、当該透視地図に対応する景観を表示画面上に表示する立体地図表示方法を用いて地図画像を生成するナビゲーション装置において、前記視点から前記地図情報に含まれる地図要素までの水平距離、直線距離および高度差のうちのいずれかに応じて、該地図要素の表示形態を変更するものが知られている(特許文献1参照)。その際、表示形態の変更に関しては、(a)前記視点との水平距離、直線距離および高度差のうちのいずれかが所定値以上の地図要素、(b)前記視点との水平距離、直線距離および高度差のうちのいずれかが所定値以下の地図要素、あるいは、(c)前記視点と前記表示領域中に設定された注視されるべき位置との間に存在する地図要素について、その表示形態を、残りの地図要素に比べて描画詳細度あるいは視認性がより低いものに変更することが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−221876号(段落番号0008−0018、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1による立体地図表示技術によれば、立体表示のための視点位置との関係から、表示すべき地図要素の立体化の描画詳細度を低減するので、全ての地図要素を高い描画詳細度で表示することに較べ、コンピュータの演算負荷を低減することができる。しかしながら、この立体地図表示技術では、視点位置と地図要素との関係が変化するたびに簡略化判定が行われるので、描画負担は低減されても簡略化判定の演算負担が多くなり、立体地図表示に関する総合的なコンピュータ負荷に関しては効果的ではなく、場合によっては増大する可能性さえある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、描画負担が低減するだけでなく、立体地図表示に関する総合的なコンピュータ負荷も低減する立体地図表示技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による立体地図表示ナビゲーション装置は、道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、前記道路データに基づいて設定された案内経路に関する経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記地図データベースにアクセスするとともに、前記案内経路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み手段と、前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像を生成する地図画像生成手段とを備えている。
【0007】
この構成によれば、道路データに基づいて設定された案内経路と立体物との離散距離に応じて、前記立体物に関する簡略化された立体図データがバッファ部に転送され、その立体物の描画処理時には、バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像が生成される。つまり、立体物の描画処理に先だって、立体図データベースから立体図データがバッファ部に転送される段階で、案内経路と立体物との離散距離に応じて決定された簡略な立体図データがバッファ部に転送される。従って、3次元の経路案内用地図画像の生成時には、常にこのバッファ部の立体図データが使用されるので、前述した従来技術にように視点位置と地図要素との関係が変化するたびに簡略化判定を行う必要がなく、立体地図表示に関する総合的なコンピュータ負荷が低減する。また、この立体地図表示処理に使用されるメモリ容量も少なくなる。
【0008】
また、立体図データ読み込み手段による簡略立体図データのバッファ部への転送には、複数の異なる特徴構成が可能である。
その1つは、前記離散距離が長いほどより簡略化された立体図データをバッファ部に転送することである。この特徴構成によれば、立体物と経路との間の離散距離が長くなっていくほど、立体物は簡略化された形態で描画されるので、実際の光景に較べ、ほとんど違和感が生じないという利点が得られる。
他の1つは、設定された離散距離しきい値を判定基準とし、演算された離散距離が前記離散距離しきい値を超える立体物に関しては簡略立体図データを前記バッファ部に転送し、演算された離散距離が前記離散距離しきい値以下の立体物に関しては詳細立体図データを前記バッファ部に転送することである。この特徴構成によれば、離散距離しきい値が1つであれば簡略化された立体図データは1つだけで済むし、また、数個の離散距離しきい値が用いられたとしても、連続的に簡略度が変更されていくことに較べて、その簡略化処理が簡単であり、処理速度に関して有利である。判定基準として1つ以上の離散距離しきい値を用いる場合に、この離散距離しきい値は道路条件又は道路周辺条件に応じて可変設定するならば、その簡略化に自在性が生じ、有利である。
【0009】
一般的に、立体図データベースに格納するために用意されている立体図データは詳細立体図データであるので、この詳細立体図データを利用する場合は、そのまま立体図データベースから読み込んでバッファ部に転送しておけば、描画時に利用できる。しかしながら、簡略立体図データに関しては詳細立体図データから新たに作成する必要がある。このような簡略立体図データの取り扱いに関して、本発明では、2つの特徴構成が提案される。
その1つは、前記立体図データベースが同一立体物に関して詳細立体図データと簡略立体図データとを格納し、前記立体図データ読み込み手段は、前記離散距離に応じて詳細立体図データと簡略立体図データとのいずれかを前記立体図データベースから読み込むことである。この特徴構成では、予め簡略立体図データを作成しておき、立体図データベースに格納しているので、直接立体図データベースから簡略立体図データを読み込むことができ、読み込まれた簡略立体図データはバッファ部に転送される。その読み込み・転送速度は詳細立体図データ読み込み・転送速度に較べ、データ容量が少ないことから速くなるし、詳細立体図データを簡略立体図データに変換する処理も不必要となる。
他の1つは、前記立体図データベースが同一立体物に関して詳細立体図データだけを格納し、前記立体図データ読み込み手段は、前記離散距離が長い立体物に関しては、前記立体図データベースから読み込んだ詳細立体図データを簡略化処理により簡略立体図データに変換して、前記バッファ部に転送することである。この特徴構成では、詳細立体図データを簡略立体図データに変換する処理が必要となるが、予め簡略立体図データが用意しておく必要はないので、立体図データベースの容量が少なくなるという利点がある。
【0010】
詳細立体図データを簡略立体図データに変換するにあたって、前記詳細立体図データのテクスチャデータの解像度と階調度のいずれかあるいは両方の低減、及びポリゴンデータのポリゴン数低減あるいはそれらの組み合わせが行われることが好ましい。テクスチャデータは画像データであるため、解像度や階調度を低減することでそのデータ容量は大幅に減少する。また、ポリゴンデータのポリゴン数低減は立体の描写速度を大幅に短縮する。
【0011】
また、前記離散距離は、前記案内経路と前記立体物の立体図データ上の平面外形との間の最短距離とすると、単なる座標計算だけで得られるので、コンピュータ演算にとって有利である。
【0012】
上述した本発明による立体地図表示ナビゲーション装置の技術的特徴は、カーナビゲーションシステムなどに用いられているような案内経路を基準としてその周辺の立体物を経路とともに立体表示するナビゲーション装置のみならず、特定の道路の特定区間を指定することで、その特定道路区間の周辺の立体物を道路とともに立体表示する汎用的な立体地図表示システムに本発明を適用することも可能である。本発明によるそのような立体地図表示システムは、道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、前記道路データに基づいて予め設定された設定道路に関する道路情報を記憶する道路情報記憶部と、前記地図データベースにアクセスするとともに、前記設定道路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み手段と、前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の設定道路用地図画像を生成する地図画像生成手段を備えている。
【0013】
さらには、上述した本発明による立体地図表示ナビゲーション装置の技術的特徴は、立体地図表示ナビゲーションプログラムにも適用可能であり、それゆえ、本発明は、そのような方法やプログラムも権利の対象とすることができる。例えば、道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、前記道路データに基づいて設定された案内経路に関する経路情報を記憶する経路情報記憶部とを備えた立体地図表示ナビゲーション装置のための立体地図表示プログラムは、本発明によれば、前記地図データベースにアクセスするとともに、前記案内経路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み機能と、前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像を生成する地図画像生成機能とをコンピュータに実現させる。当然ながら、このような立体地図表示プログラムも上述した立体地図表示ナビゲーション装置で述べた作用効果を得ることができ、さらにその好適な形態例として述べたいくつかの付加的技術を組み込むことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における立体地図表示ナビゲーション装置の主要要素の構成を模式的に示すブロック図である。この立体地図表示ナビゲーション装置では、自車位置情報検出手段1から出力される自車位置情報に基づいて、立体地図表示に必要な、道路データと立体図データが地図データベース2から読み込まれ、これらのデータを用いて作成された3次元の経路案内用地図画像は、必要に応じて自車位置を示すシンボルを重ね合わせてモニタ31に表示される。さらに、現在位置と操作入力部32を通じてユーザが指定した地点(例えば目的地)を結ぶ最適な案内経路が経路探索手段41によって探索され、探索された案内経路は経路情報記憶部42に設定される。設定された案内経路と自車位置に基づいて経路案内手段43がスピーカ33やモニタ31を通じてユーザに経路案内を行う。
【0015】
操作入力部32は、ユーザからの指示を受け付ける機能を有し、タッチパネル、機械的な操作ボタン、ソフトウエアボタンなどから構成される。タッチパネルやソフトウエアボタンは、表示処理手段34との協働によりユーザグラフィックインターフェースを構築している。
【0016】
自車位置情報検出手段1は、自車位置すなわち自車の現在位置を示す自車位置情報を取得する。この実施形態では、自車位置情報検出手段1は、GPS受信機11、方位センサ12、及び距離センサ13と接続されている。ここで、GPS受信機11は、GPS衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、自車位置情報取得手段1へ出力される。自車位置情報検出手段1では、GPS受信機11で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、自車の現在位置(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ12は、自車の進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ12は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成され、その検出結果を自車位置情報検出手段1へ出力する。距離センサ13は、自車の車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ13は、例えば、自車のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、自車の加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ13は、その検出結果としての車速及び移動距離の情報を自車位置情報検出手段1へ出力する。
【0017】
自車位置情報検出手段1は、これらのGPS受信機11、方位センサ12及び距離センサ13からの出力に基づいて、公知の方法により自車位置を特定する演算を行う。また、自車位置情報取得手段1は、地図データベース2から自車位置周辺の地図データを取得し、それに基づいて公知のマップマッチングを行うことにより自車位置を地図データに示される道路上に合わせる補正も行う。このようにして、自車位置情報検出手段1は、緯度及び経度で表された自車の現在位置の情報、及び自車の進行方位の情報を含む自車位置情報を取得する。
【0018】
地図データベース2には、道路データを格納する道路データベース21と立体物の立体図データを格納する立体図データベース22とが含まれている。地図データベース2は、DVDやハードディスクなどの大容量記憶媒体で構成される。また、書き換え可能な記憶媒体を採用している場合には、適時、最新の地図データをデータ通信を通じてダウンロードすることができる。
【0019】
道路データベース21から道路データを読み出し、ワーキングメモリに展開するために2次元データ読み込み手段5が備えられている。ワーキングメモリに展開された道路データは、2次元画像生成手段81により、表示地図画像に適した2次元画像に生成される。
【0020】
立体図データベース22にアクセスし、案内経路と立体物との離散距離を演算し、得られた離散距離に応じて簡略化された立体物に関する立体図データをワーキングメモリで構成されているバッファ部である立体図バッファ部7に転送する立体図データ読み込み手段6が備えられている。この実施形態では、立体図データベース22には、同一立体物に関して詳細立体図データと簡略立体図データとが格納されている。そのため、この実施形態での立体図データ読み込み手段6は、得られた離散距離に応じて詳細立体図データと簡略立体図データとのいずれかが前記立体図データベース22から読み込み、立体図バッファ部7に転送するように構成されている。
【0021】
立体物の立体図データの立体図バッファ部7への転送は、所定区画単位毎に該当立体物の立体的描画処理に先立って行われ、自車がその所定区画単位を過ぎ去るまで、その所定区画単位に含まれている立体物の立体図データは立体図バッファ部7に格納される。立体図バッファ部7に格納されている詳細立体図データ又は簡略立体図データを用いた立体物の立体的描画処理は3次元画像生成手段82によって公知の3次元描画アルゴリズムを用いて行われる。
【0022】
2次元画像生成手段81又は3次元画像生成手段82あるいはその両方によって生成された画像は、地図画像生成手段9によって、モニタ31の表示に適した地図画像に生成される。表示処理手段34は、この地図画像に、必要に応じて種々の情報やシンボルを重ね合わせて、モニタ表示データに変換し、モニタ31に出力する。
【0023】
地図データベース2の道路データベース21に格納されている道路データの模式的なデータ構造が図2に示されている。道路データベース21に格納されている道路データは、所定間隔の緯度経度によって分割された区域を表す標準地域メッシュで管理される。この標準地域メッシュにはメッシュコードが割り当てられている。道路データは、管理テーブル領域と実データ領域とに分かれたデータ構造となっている。管理テーブル領域には、前記メッシュコード、作成年月などの属性情報、実データへのリンク先を示すリンク情報などが含まれている。実データ領域では、リンク情報のリンク先となるリンク列ID毎にデータ管理されており、交差点データ、接続データ、道路データ、形状データが記録されている。交差点データは、交差点を表すノードの座標情報、信号機や案内標識の有無等を表す交差点の属性情報、当該交差点(ノード)が複数のレイヤの何れのレイヤにまで含まれるかを示す階層情報等を含んでいる。接続データは、交差点を表すノードにどの道路(リンク)が接続されているかを示すノード・リンク情報、交差点での進行方向に応じた案内の要否や規制の有無を示す属性情報等を含んでいる。道路データは、道路を表すリンクの両端ノードの情報、道路種別情報、幅員情報、車線数情報、当該道路(リンク)が複数のレイヤの何れのレイヤにまで含まれるかを示す階層情報等を含んでいる。形状データは、道路を表すリンクの形状を規定する形状補間点群の座標情報等を含んでいる。
【0024】
地図データベース2の3次元市街地データベース22に格納されている立体図データの模式的なデータ構造が図3に示されている。3次元市街地データベース22に格納されている立体図データも、所定間隔の緯度経度によって分割された区域を表す標準地域メッシュで管理されており、管理テーブル領域と実データ領域とに分かれたデータ構造となっている。管理テーブル領域には、前記メッシュコード、作成年月などの属性情報、実データへのリンク先を示すリンク情報などが含まれている。
【0025】
実データ領域では、リンク情報のリンク先となる立体物ID毎に立体物の立体図データが管理されているが、この実施形態では、同一立体物に関して詳細立体図データと簡略立体図データが用意されている。このため、立体物ID毎に、立体物属性データ、詳細立体図データ、簡略立体図データなどが記録されている。立体物属性データには、立体物の種別、立体物の名称、立体物の説明など立体物の属性に関する情報が含まれている。詳細立体図データと簡略立体図データのデータ構造自体は同じであり、それぞれには、底面データ、ポリゴンデータおよびテクスチャデータが含まれている。底面データは、立体物と関連付けられた2次元領域データであり、立体物が含まれる敷地や立体物の底面などの情報であり、底面を規定する各頂点の2次元座標データ群を有する。ポリゴンデータは、立体物を立体的に描画するために使用されるポリゴンのデータであり、立体物を構成するポリゴン数、立体物を構成するポリゴンを識別する識別子、ポリゴン識別子で識別されるポリゴンの頂点の座標データを有する。テクスチャデータは、ポリゴンに貼り付ける画像の画像データであり、各ポリゴンに対応してテクスチャ画像データを有する。
【0026】
詳細立体図データと簡略立体図データにおける、それぞれの底面データ、ポリゴンデータおよびテクスチャデータの違いは、簡略立体図データのものが詳細立体図データのものより簡略化されていることである。例えば、底面データやポリゴンデータに関しては、その簡略化は、ポリゴンの頂点数を間引くことで実現している。また、テクスチャデータに関しては、テクスチャ画像データの解像度と階調度の両方あるいはいずれかを低減することで簡略化を図っている。
【0027】
図4に、地図データベース2にアクセスするとともに、案内経路とその周辺の立体物との間の離散距離に応じて簡略化された立体物に関する立体図データを立体図バッファ部7に転送する立体図データ読み込み手段6の機能要素を示すブロック図が示されている。この実施形態では、この立体図データ読み込み手段は、設定された離散距離しきい値を判定基準とし、演算された離散距離がその離散距離しきい値以下の立体物に関しては詳細立体図データを立体図バッファ部7に転送する。また、演算された離散距離がその離散距離しきい値を超える立体物に関しては簡略立体図データを立体図バッファ部7に転送する。
【0028】
この立体図バッファ部7には、立体図データ読み込み管理部60、演算予備用道路データ入力部61、演算予備用立体図データ入力部62、離散距離演算部63、詳細/簡略決定部64、離散距離しきい値設定部65、立体図データ読み込み部66、データ転送部67が備えられている。
【0029】
立体図データ読み込み管理部60は、立体図読み込み手段6の上記したような機能要素の動作を管理・制御するものである。演算予備用道路データ入力部61は、経路情報記憶部42に記憶されている案内経路と自車位置情報とによって規定されているこれから走行する道路区間の位置情報(座標データ)等を、離散距離演算での利用のために、2次元地図データ読み込み手段21を介して道路データベース21から受け取る。演算予備用立体図データ入力部62は、前記道路区間の周辺に位置する立体物の底面データ等を、離散距離演算での利用のために、3時点市街図データベース22から読み込む。離散距離演算部63は、演算予備用道路データ入力部61で確保されている道路区間の位置情報や演算予備用立体図データ入力部62で確保されている立体物の底面データ等を用いて、案内経路としての前記道路区間とその周辺の各立体物の平面外形との間の最短距離を離散距離として演算する。なお、立体物の平面外形に関するデータとしては立体物の底面データを用いる。ここでは、地図上での、道路区間と立体物の平面外形との間の最短距離を離散距離としたが、そのほか、道路区間と立体物の平面外形との間を連絡する道路に沿った距離を離散距離として採用してもよい。
【0030】
詳細/簡略決定部64は、設定された離散距離しきい値を判定基準とし、離散距離演算部63で演算された離散距離に応じて対象となっている立体物の詳細立体図データ又は簡略立体図データのいずれを選択するかを決定する。この離散距離しきい値は、離散距離しきい値設定部65によって設定されるが、この実施形態では、前もって定められた所定値、例えば「100m」を離散距離しきい値としている。もちろん、この離散距離しきい値は道路条件又は道路周辺条件に応じて可変設定できるような構成を採用してもよい。例えば、その道路区間の道路幅が広い場合、離散距離しきい値を大きくすることで、道路幅の影響を離散距離から取り除くようにすると好都合である。
【0031】
立体図データ読み込み部66は、詳細/簡略決定部64で決定された内容に応じて、立体図データベース22から該当する立体物の詳細立体図データ又は簡略立体図データを読み込む。データ転送部67は、立体図データ読み込み部66によって読み込まれた詳細立体図データ又は簡略立体図データを立体図バッファ部7に転送する。立体図バッファ部7に転送された詳細立体図データ又は簡略立体図データは、立体地図生成時に3次元画像生成手段82によって利用され、車両が該当する立体物を通過すると、その立体図データは立体図バッファ部7から消去される。
【0032】
上述したように構成された立体図データ読取手段6による、立体図データの取り込み処理の流れを、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、立体図データ読み込み管理部60が案内経路のうちで立体地図を作成しようとする区間を処理対象道路区間として選定する(#01)。選定された道路区間の位置情報を道路データベース21から演算予備用道路データ入力部61を通じて入力する(#02)。離散距離しきい値設定部65が詳細/簡略決定部64に対して離散距離しきい値:SHを設定する(#03)。その際、選定された道路区間の道路条件又は道路周辺条件、例えば道幅や道路種別などによって変動させてもよい。次に、選定された道路区間の周辺に位置する立体物の底面データを立体図データベース22から演算予備用立体図データ入力部62を通じて入力する(#04)。
【0033】
以上のステップで、選定された道路区間(案内経路)と立体物との離散距離を演算する準備が完了したので、選定された道路区間の周辺に位置する立体物毎の処理を順次行う。まず、立体図データ読み込み管理部60が処理対象となる注目立体物を指定する(#11)。注目立体物と選定された道路区間との離散距離:Xを離散距離演算部63が行う(#12)。求められた離散距離:Xと離散距離しきい値:SHとを比較する(#13)。離散距離:Xが離散距離しきい値:SH以下の場合(#13No分岐)、注目立体物の詳細立体図データを立体図データベース22から立体図データ読み込み部66を通じて読み込む(#14)。また、離散距離:Xが離散距離しきい値:SHを超える場合(#13Yes分岐)、注目立体物の簡略立体図データを立体図データベース22から立体図データ読み込み部66を通じて読み込む(#15)。立体図データ読み込み部66を通じて読み込まれた立体図データはデータ転送部67によって立体図バッファ部7に転送される(#21)。次に注目立体物として指定する立体物が残っているかどうかを立体図データ読み込み管理部60がチェックする(#22)。残っていれば(#22Yes分岐)、ステップ#11に戻って注目立体物を指定し、ステップ#12から#21の処理を繰り返し、残っていなければ(#22No分岐)、このルーチンを終了する。
【0034】
一旦、立体図バッファ部7に転送された詳細立体図データ又は簡略立体図データは、3次元画像生成手段82によって立体図描画ために指定された立体物毎に、その立体図データに基づいてその立体物が描画される。例えば、ある立体物に関して、詳細立体図データが立体図データ読み込み手段6を通じて立体図バッファ部7に転送されている場合、図7に例示するように、多数のポリゴンを用いていることにより詳細な外観形状を有する立体物となる。さらに、各ポリゴンに貼り付けられるテクスチャ画像の階調度や解像度の高いでの、実物に近い質感をもった立体物が描画されることになる。これに対して、簡略立体図データが立体図データ読み込み手段6を通じて立体図バッファ部7に転送されている立体物の場合、図8に例示するように、かなり頂点数が間引かれたポリゴンが用いられ、場合によっては小さなポリゴンが省略されるので、簡略した外形形状を有する立体物が描画される。その上、各ポリゴンに貼り付けられるテクスチャ画像の階調度や解像度も低いので、その立体物の描画処理速度が高速化される。
【0035】
3次元画像生成手段82による、特定視点からの立体視野に入る立体物の描画が終わると、走行中の道路とともに立体地図画像が作成され、表示処理手段34を通じてモニタ31に表示される。モニタ31に表示される立体地図画像の一例は図8に示されている。図8から理解できるように、案内経路である道路から遠い立体物は簡略されて描画されており、道路から近い立体物は詳細に描画されている。この関係は、自車両が走行し、特定の立体物に対して自車両が近づいても、同じである。つまり、最初に案内経路と立体物との間の離散距離に基づいて決定され、立体図バッファ部7に転送された立体図データがそのまま利用されるからである。つまり、立体描画される立体物が詳細表示又は簡略表示されるかどうかは、最初に立体図バッファ部7にどのような形態で転送されているかで決定される。
【0036】
〔別実施形態〕
上記実施の形態では、地図データベース2の立体図データベース22には、各立体図に関して詳細立体図データと簡略化立体図データが格納されており、離散距離演算部63による離散距離と離散距離しきい値を比較して、描画対象となる立体物の詳細立体図データ又は簡略化立体図データが立体図バッファ部7に転送されていた。これに代えて、立体図データベース22には、各立体図に関して詳細立体図データだけを格納しておき、簡略立体図データが要求される場合には、立体図データ読み込み部66からデータ転送部67を通じて立体図データを立体図バッファ部7に転送する前に、詳細立体図データを簡略立体図データに変換する構成を採用してもよい。そのような別実施形態における立体図読み込み手段6のブロック図が示されている。先の実施形態における立体図読み込み手段6のブロック図(図4参照)との違いは、詳細立体図データを簡略立体図データに変換する立体図データ変換部68が付加されていることである。
【0037】
この別実施形態での立体地図表示ナビゲーション装置では、立体図データベース22は同一立体物に関して詳細立体図データだけを格納しており、立体図データ読み込み手段6は、離散距離演算部63によって求めた離散距離が長い立体物に関しては、立体図データベースから読み込んだ詳細立体図データを立体図データ変換部68による簡略化処理により簡略立体図データに変換して、立体図バッファ部に7転送することになる。その際、先の実施形態と同様に、離散距離しきい値設定部65によって設定された離散距離しきい値を判定基準とし、演算された離散距離が前記離散距離しきい値以下の立体物に関しては詳細立体図データを前記バッファ部に転送し、演算された離散距離が前記離散距離しきい値を超える立体物に関しては簡略立体図データを前記バッファ部に転送してもよい。また、立体図データ変換部68を任意の簡略度で詳細立体図データを簡略立体図データに変換できる構成とし、離散距離が長いほどより簡略化された立体図データをバッファ部に転送する構成を採用してもよい。
【0038】
この別実施形態における、立体図データ読み込み手段6による立体図データ読み込み制御の流れが図10のフローチャートに示されている。先の実施形態における立体図データ読み込み制御の流れ(図5参照)との違いは、ステップ#13の判定で離散距離:Xが離散距離しきい値:SHを超えていることでYes分岐した場合の処理である。この場合、立体図データベース22には簡略立体図データは含まれていないので、立体図データ読み込み部66は、とりあえず詳細立体図データを立体図データベース22から読み込む(#16)。読み込まれた詳細立体図データは、立体図データ変換部68によって、上述したような概略立体図データに変換される(#16)。変換された概略立体図データはデータ転送部67によって立体図バッファ部7に転送される(#21)。
つまり、先に実施形態との違いは、ステップ#15がステップ#16と17に入れ替わっただけであるが、その際、簡略立体図データへの変換時に離散距離に応じて変化する簡略度に基づいて詳細立体図データの簡略化を行ってもよい。
【0039】
上述した実施の形態での立体地図表示ナビゲーション装置では、カーナビゲーションシステムなどに用いられているような案内経路を基準としてその周辺の立体物を経路とともに立体表示することが主題となっていたが、単純な地図表示システム、例えば、特定の道路の特定区間を指定することで、その特定道路区間の周辺の立体物を道路ともに立体表示す汎用的な立体地図表示システムに本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係わる立体地図表示ナビゲーション装置のブロック図
【図2】道路データの一例を示すデータ構造図
【図3】立体図データの一例を示すデータ構造図
【図4】立体図読み込み手段のブロック図
【図5】立体図データ読み込み制御の流れを示すフローチャート
【図6】詳細立体図データに基づいて描画され、モニタ表示された立体物の一例を示す図
【図7】簡略立体図データに基づいて描画され、モニタ表示された立体物の一例を示す図
【図8】詳細立体図データ及び簡略立体図データに基づいて描画された立体地図モニタ表示図
【図9】別実施形態における立体図読み込み手段のブロック図
【図10】別実施形態における立体図データ読み込み制御の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0041】
2:地図データベース
6:立体図データ読み込み手段
7:立体図バッファ部(バッファ部)
9:地図画像生成手段
21:二次元道路データベース
22:立体図データベース
31:モニタ
42:経路情報記憶部
63:離散距離演算部
65:離散距離しきい値決定部
67:データ転送部
68:立体図データ変換部
82;3次元画像生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、
前記道路データに基づいて設定された案内経路に関する経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記地図データベースにアクセスするとともに、前記案内経路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み手段と、
前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像を生成する地図画像生成手段とを、
備えた立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記立体図データ読み込み手段は、前記離散距離が長いほどより簡略化された立体図データをバッファ部に転送する請求項1に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記立体図データ読み込み手段は、設定された離散距離しきい値を判定基準とし、演算された離散距離が前記離散距離しきい値を超える立体物に関しては簡略立体図データを前記バッファ部に転送し、演算された離散距離が前記離散距離しきい値以下の立体物に関しては詳細立体図データを前記バッファ部に転送する請求項1又は2に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記離散距離しきい値は道路条件又は道路周辺条件に応じて可変設定される請求項3に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記立体図データベースは同一立体物に関して詳細立体図データと簡略立体図データとを格納しており、前記立体図データ読み込み手段は、前記離散距離に応じて詳細立体図データと簡略立体図データとのいずれかを前記立体図データベースから読み込む請求項3又は4に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記立体図データベースは同一立体物に関して詳細立体図データだけを格納しており、前記立体図データ読み込み手段は、前記離散距離が長い立体物に関しては、前記立体図データベースから読み込んだ詳細立体図データを簡略化処理により簡略立体図データに変換して、前記バッファ部に転送する請求項1から4のいずれか一項に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記簡略化処理において、前記詳細立体図データのテクスチャデータの解像度と階調度のいずれかあるいは両方の低減、及びポリゴンデータのポリゴン数低減あるいはそれらの組み合わせが行われる請求項6に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記離散距離は、前記案内経路と前記立体物の立体図データ上の平面外形との間の最短距離である請求項1から7のいずれか一項に記載の立体地図表示ナビゲーション装置。
【請求項9】
道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、
前記道路データに基づいて予め設定された設定道路に関する道路情報を記憶する道路情報記憶部と、
前記地図データベースにアクセスするとともに、前記設定道路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み手段と、
前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の設定道路用地図画像を生成する地図画像生成手段とを、
備えた立体地図表示システム。
【請求項10】
道路データを格納する道路データベースと立体物の立体図データを格納する立体図データベースとを有する地図データベースと、前記道路データに基づいて設定された案内経路に関する経路情報を記憶する経路情報記憶部とを備えた立体地図表示ナビゲーション装置のための立体地図表示プログラムにおいて、
前記地図データベースにアクセスするとともに、前記案内経路と前記立体物との離散距離を演算し、前記離散距離に応じて簡略化された前記立体物に関する立体図データをバッファ部に転送する立体図データ読み込み機能と、
前記バッファ部から取り出した立体図データに基づいて3次元の経路案内用地図画像を生成する地図画像生成機能とを、
コンピュータに実現させるための立体地図表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−157053(P2009−157053A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334361(P2007−334361)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】