説明

結晶シリコン基板を製造するための方法及び装置

液体供給材料、例えばシリコンのメルトプールから連続的に結晶リボンを製造する装置及び方法。シリコンは、溶融され且つ成長トレイ内へ流されて液体シリコンのメルトプールを提供する。当該メルトプールからチムニーを介して上方へ熱を流れさせることによって、熱が受動的に除去される。熱の損失をチムニーを介して生じさせながら、シリコンを液体相に保つために、成長トレイに熱が同時に適用される。熱がチムニーを介して失われるときに、シリコンが“凍結”(すなわち、凝固)し始め且つテンプレートに付着するように、テンプレートがメルトプールと接触せしめられる。当該テンプレートは、次いで、メルトプールから引き出されて結晶シリコンの連続するリボンが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電電池セルを製造するのに適している薄いシリコン基板を製造する方法及び装置に関し、一つの特徴においては、非種結晶成長によって形成され且つ強い可変放射線による熱損失の制御によって達成されるメルトから細長い結晶リボンを横方向へ引き出す方法及び装置に関する。
(関連出願)
本願は、2006年9月28日に出願された米国仮特許出願60/827,246号に基づく優先権を主張している。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に対する代替エネルギ源の開発は、何年もの間益々重要になって来ている。このような代替エネルギ源のうちの一つは、太陽電池セル等が太陽エネルギを有用な電気エネルギに変換する太陽エネルギである。典型的には、これらの太陽電池セルは複数の透明シート(例えば、ガラス、プラスチック等)と裏打ちシートとの間に封止されて平らな矩形形状のモジュール(ときどきは、“ラミネート”又は“パネル”とも呼ばれる)が形成され、当該モジュールは、次いで、既存構造(例えば、住宅、ビル等)の屋根上に設置されて当該既存構造によって使用される電気エネルギの全て又は少なくとも一部分を提供する。
【0003】
太陽電池セルの大部分は、シリコンを基材とする結晶基板によって作られる。これらの基板は、溶融シリコンのバッチから“成長”せしめられるシリコンのインゴット又はシリコンのリボンから切り取られたウェーハとすることができる。リボン結晶成長及び太陽エネルギの当初の開発においては、良好な結晶品質を有するシリコン本体又は基板を形成するために幾つかの装置が開発された。しかしながら、不幸にも、これらのリボン成長装置のほとんどは、(a)リボンの完全な結晶成長(例えば、典型的には、厚みが200〜400ミクロンであった)を製造すること、又は(b)連続的な成長動作に必要な溶融と成長との組み合わせを完璧にすることに焦点が絞られて来た。これは、ほんの小さな結晶面積が成長せしめられるか、又は代替的には、成長領域と接触している2つのメルト等温面のために、動作全体が不安定であった。
【0004】
これらの努力の一部として、冷却ガスとしてヘリウムを成長領域に適用して、結晶の所望の成長に必要とされる適切な冷却をもたらすことに大きな焦点がおかれていた。しかしながら、成長動作中に適正な体積の冷却ガスを維持することに困難性が生じた。すなわち、冷却ガスが不十分なために、結晶基板の成長中に十分な冷却ができず、十分に速い成長速度が容易に経済的に競争力があるようにすることができなかった。他方、冷却ガスの流れを必要とされる冷却を達成するのに十分な速度まで単に速くすると、基板の溶融された面を粉砕する大きなガスの流れがもたらされ、それによって所望の結晶の平らなシートの形成が阻止された。この問題点を解決するための更に別の試みとして、ヒーターの入力電力を減じることがあるが、これは、不幸にも、不十分な温度勾配の制御すなわち樹枝状結晶を形成する傾向が無い安定した結晶成長先端を維持する機能が生じた。
【0005】
更に最近においては、シリコンを基材とする結晶基板の成長に関する上記の問題点の幾つかを解決する別の方法が提案されている。例えば、米国特許第4,329,195号には、冷却ガス(すなわち、アルゴンと水素又はヘリウムとの混合物)と、基板の成長を開始させるための種結晶とを使用することによって、薄く且つ幅の広い基板を、比較的速い速度で成長させる技術が記載されている。しかしながら、溶融シリコンの供給はシリコン給送ロッドによって補給され、当該シリコン給送ロッドは、次いで、近くの結晶質のシートを形成する同じ溶融領域内に配置され、それによって、制御問題を提起する不所望な2つのメルト等温面問題をもたらす。別の技術としては、成長中の基板の冷却を制御するために、基板をヒートシンクに直に接触させる方法があり(米国特許第3,681,033号及び1993年9月23日〜1996年12月31日のFinal Report−DOE登録第DE−FG45−93R551901号、“Float Zone Silicon Sheet Growth(浮遊領域のシリコンシートの成長)”C.E.Bleilを参照のこと)、これは基板表面に凹凸を生じさせるかも知れない。
【0006】
更に、結晶基板を形成するための多くの従来の技術は、成長過程の単独の支持部材として作用するメニスカスの形成によるものである(米国特許第2,927,008号を参照)。しかしながら、このような自立型のメニスカスの形成及びそれに関連する技術の多くは、リボンの形成のためにグラファイト又はシリコン蓋イドのダイを使用しており、変化する条件下で安定し且つ均一なリボンの厚みを提供する困難性を有する。更に、これらの炭素供給源のうちの一つとの連続的且つ直接的な接触は、メルトの汚染をもたらし且つ最終的に得られる太陽電池の性能を制限する。これらのタイプの技術はまた、メルトからの垂直方向への引っ張りにも依存し、熱は成長先端に対して直角な成長リボンの長さに沿って失われるので、除去できる熱の全体量が著しく限られる。
【特許文献1】米国特許第4,329,195号
【特許文献2】米国特許第3,681,033号
【特許文献3】DOE登録第DE−FG45−93R551901号
【特許文献4】米国特許第2,927,008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、好ましくは液体シリコンのメルトプールからシリコンのシート又はリボンを連続的に製造又は形成する装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】

シリコンは、溶融室内で溶融され且つ成長トレイ内へ流し込まれ、当該成長トレイ内に、ある深さの液体シリコンのメルトプールを形成する。熱は、メルトプールから溶融室の下流に配置されているチムニーすなわち煙突を介して上方へ流されることによって受動的に除去される。熱は、熱損失がチムニーを介して起こっている間シリコンを液体相に維持するために、成長トレイに同時に適用される。テンプレート(型板)の一端は、熱損失が起ってシリコンが“凍結”(すなわち、凝固)し始め且つテンプレートに付着し始めた位置でメルトプールと接触状態に配置される。テンプレートはメルトプールから引き出され、それによって、シリコン好ましくは結晶シリコンの連続リボンが形成される。
【0009】
本発明は、より特別には、シリコンが坩堝内で溶融され次いで加圧された水冷式炉内に配置される装置及び方法を提供する。当該坩堝は、同じく当該坩堝の下流に冷却手段(例えば、チムニー)を支持している成長プレート上に支持されている。溶融されたシリコンは、坩堝の出口を通って成長トレイ内へ流れ込む。好ましくは、出口下方の成長トレイ内の窪み及びトレイ中央の畝状突出部は、溶融されたシリコンがトレイを充填するときに滑らかに流れるのを補助し且つトレイ内にほぼ均一な深さのメルトプールを形成する。
【0010】
調整可能な手段例えば絞り板がチムニー内に設けられ、当該調整手段によってチムニーを介するメルトプールからの熱の流れを調整することができる。放射された熱(すなわち熱損失)は、チムニーを介して上方へ流れ且つ炉の水冷壁において放散される。テンプレートは、制御された熱損失によってシリコンを凝固し始めさせる位置でメルトプールと接触状態に配置され、その位置でシリコンはテンプレートに付着する。当該テンプレートは成長トレイから引き出され、それによって新しく凝固するシリコンのシート又はリボンがテンプレートに沿って引き出される。本発明は、太陽電池を製造するのに適したシリコン好ましくは結晶シリコンを形成するための供給材料としてシリコンを使用することに関して説明されているけれども、本発明の装置及び方法は、他の供給材料をこのような供給材料のリボンに変えるために使用することができることは理解されるべきである。このような他の供給材料は、例えば他の半導体材料を含むことができる。当該他の供給材料は、少なくとも約1200℃の溶融温度、高い表面張力及び固体相より高密度の液体相を有しているのが好ましい。シリコン以外の供給材料が使用される場合には、成長トレイを構成するために使用される材料及び坩堝は、特に液体供給材料と互換性があるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、炉の簡素化された図であり、結晶基板を製造するために内部に配置された本発明の装置の一実施形態を示すために部分的に破断されている。
【図2】図2は、図1の装置の拡大図である。
【図3】図3は、図2の装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実際の製造作業及び明らかな利点は、同じ符号が同じ部品を特定している必ずしも原寸ではない図面を参考にすることによって更に十分に理解されるであろう。
【0013】
以下、本発明を、好ましい実施形態と組み合わせて説明するが、本発明はこれに限定されないことは理解されるべきである。これと対照的に、本発明は、特許請求の範囲によって規定されている本発明の精神及び範囲に含まれる全ての代替例、改造例及び等価物を保護することが意図されている。
【0014】
図面を参照すると、図1は、本発明による炉50を示している。炉50は、炉内の雰囲気の制御を可能にする水冷壁52を備えた真空/圧力容器51によって構成されている。容器51内には、本発明の方法に従って、薄い連続した好ましくは結晶の基板又はリボン(本明細書を通して互換可能に使用されている)を製造するために使用される装置10が配置され且つ支持されている。
【0015】
装置10は、溶融室11によって構成されており、当該溶融室11は、内部に注入坩堝13が配置され且つ周囲に絶縁層14が備えられている注入坩堝サセプタ12によって構成されている。本明細書を通して使用されている“サセプタ”という用語は、(a)高温での機械的支持部材として機能し且つ(b)誘導加熱コイルから電力を受け取るように導電性とされている安定した本体を提供する構造を指している。絶縁層14の周囲には、注入坩堝13内でシリコンを溶融させるのに必要な電力を供給するための加熱手段(例えば、電気誘導加熱コイル15)が配置されている。蓋16は、溶融室11の頂部を閉塞し且つ以下において更に詳述するように注入坩堝13内へ固体シリコン(図示せず)を供給するための貫通開口部17を備えている。
【0016】
注入坩堝13は成長プレート18上に支持されており、成長プレート18は成長トレイサセプタ19上に支持されている。図3に示されているように、成長プレート18は、グラファイト材料によって形成されている。当該グラファイト材料は、以下に説明するように、選択的な冷却のための熱絶縁領域と一体化されている支持領域を提供するように機械加工されている。上方絶縁層20、下方絶縁層21及び底部絶縁層22は、成長トレイサセプタ19の周りに配置されており、成長トレイ加熱手段(例えば誘導加熱コイル23)が以下に説明する目的のために、下方絶縁層21を包囲している。図3は、絶縁層20、21及び22とは別個の成長トレイサセプタ19を示していない。更に、絶縁のためのフォーク形状の層25(図3を参照)が、成長プレート18(図2参照)の上方で且つ当該成長プレートの長さに沿って配置されている。注入坩堝13は、層25と成長プレート18との両方の穴を貫通している出口26を下方端部に有しており且つ成長トレイ27内へと開口しており、成長トレイ27は、成長トレイサセプタ19上に支持されている。溶融シリコン(すなわち、メルトプール33−図2)のみを出口を介して流れさせる一方で、非溶融シリコン又はその他の固体を遮断するフィルタとして有効に機能するように、出口26にバッフル(じゃま板)26aが設けられている。
【0017】
成長トレイ27は、後に説明する目的で出口26の下方及び当該出口の下流の畝状突出部29のすぐ下方に窪み28を備えている。成長プレート18はまた、以下に説明するように、成長トレイ27から離隔されているが熱的に連通している冷却手段例えばチムニー30を支持している。チムニー30は、出口26の下流に配置されており且つ以下に説明するようにチムニーを介する熱の流れを制御するために、調整手段(例えば、少なくとも1つの絞り板31(2つが図示されている))を備えている。
【0018】
炉の正確な詳細は重要ではなく、種々の動作において実質的に変えても良いが、以下の説明は使用されている典型的な寸法及び材料の例を単に記載しており、いずれにしても限定的なものと考えられるべきではない。図示されているように、注入坩堝3は、円筒形状(多量の供給材料を収容するために、例えば、典型的には10cmよりも大きな直径及び15cmを超える高さ)を有していても良く且つ溶融されるべき材料すなわち溶融シリコンに適合性の材料によって構成されているのが好ましい。この材料はシリカによって構成されているのが好ましい。成長プレート18は、熱伝導性材料(例えば炭素グラファイト)によって作られた矩形のプレートであり、図面に示されているように、30cmの長さ及び15cmの幅からなる典型的な寸法を有していても良い。当該特別な寸法は、所望のリボンシート引き出し速度のための所望のリボンシート幅及び長さに必要とされるあらゆる幅まで自由に拡大縮小されるべきである。チムニー30は、成長プレート18の成長領域に適合する形状とされた矩形形状であるのが好ましく、主としてグラファイト、グラファイト絶縁材及びセラミックによって作られるのが好ましい。成長トレイ27はまた、矩形であり、例えば、幅60cm長さ25cmで、約30mmの深さとすることができ、少なくとも98%のシリカによって作られるのが好ましい。以上に述べた装置10の構造によってなされる本発明の方法を以下に記載する。
【0019】
作動時には、(丸太、小片、ロッド等内の)所望量の固体シリコンが開口部17を介してバッフル26aの頂部上の注入坩堝13内に充填され、炉50は、閉じられ且つリボン成長過程を汚染し又は劣化させる酸素を除去するために排気される。ひとたび十分な真空が達成されると、処理チャンバは、炉の構成要素上に付着するかも知れない水分の除去を補助するために、300℃まで加熱され、次いで500℃まで加熱される。次いで、炉は、外気圧となるまで不活性ガス(例えば、アルゴン)が再充填され、リボン出口穴53が開かれてリボンテンプレート40が炉内へ挿入されるのを可能にする。リボンテンプレート40は、チムニー30の下端と同じ幅にほぼ適合している所望のリボンの幅と同じ幅を有しているグラファイトをコーティングした炭素又はグラファイト繊維のような炭素を基材とする材料の薄いシートであるのが好ましい。正の圧力を維持し且つ溶融シリコンのメルトプール33と成長プレート18との間のヘッドスペースから外方への流れを維持するために、及び出口穴53を介する炉のチャンバ内への空気の逆流を防止するために、一定の流量のアルゴンがガス注入器34によって供給される。
【0020】
注入坩堝13と成長トレイサセプタ19との両方の温度が上昇せしめられ且つ1400℃で安定化される。リボンプレート40の一端は、何らかのタイプの公知の除去機構54に結合され且つ成長トレイ27内のメルトプール33の近くの位置へと動かされ、その後、成長トレイサセプタ19の温度は約1420℃まで上昇せしめられる。
【0021】
この例においては、注入坩堝13内の固体シリコンの溶融を開始させるためには、注入坩堝サセプタ12の周囲の電気誘導コイル15への入力電力は、約2000ワットだけ増大せしめられる。溶融温度(例えば、1412℃)においては、約1.1グラムのシリコンが1秒当たりに溶融されるべきである。付加される電力量は、製造に必要とされるシリコンの量に比例して変えられる。溶融が起こると、比較的密度の高い溶融シリコンすなわち液体シリコンが坩堝13の底部へと移動し、出口26から成長トレイ27内へと出て行く。バッフル26aは、あらゆる固体の流れも遮断しながら、液体シリコンのみを出口26を通過させる。
【0022】
液体シリコンは、出口26を通過し且つ成長トレイ27内の窪み28上へと直接流れる。窪み28は、シリコンの跳ね落ち深さを浅くし、それによって、波立ちの形成を制限している。トレイ中央の畝状突出部29は、成長領域内への波の進入を制限し、それによって、トレイ27内の液体シリコンのメルトプール33への比較的滑らかな面を提供する。溶融シリコンは、深さが約10mmの浅いプール内へと広がるであろう。浅いメルトプールは、局部的なホットスポットを生じさせ且つリボンの不均一な厚みの成長速度を生じさせる対流を抑制する。溶融シリコンは、その性質上、極めて高い表面張力を有しており、これは、溶融シリコンを一緒に引き出されるようにし且つ自由に流れさせて所望の薄い液体層とする。このことが問題となる場合には、これは、ガスポート34を介してメルトプール33上へガス例えば窒素を流れさせることによって問題を軽減してメルトプールの表面特性を修正することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態においては、ガスポート34を介して供給されるガスは、メルトプールを冷却する補助とはならないが、メルトプールの表面を洗い流すか又は浄化し且つメルトプール33と成長プレート18との間の空間内に存在するかも知れないガス状で小さい粒子を除去する助けとなる。以下において更に説明するように、成長プレート18は、所望の成長パラメータに到達するのに必要とされる溶融シリコンからの熱好ましくは熱の全てを除去するために設けられている。形成されるべきリボンは極めて薄いので、極めて小さな熱勾配(例えば、約0.3℃)のみがメルトプール33から分離される位置の頂面と底面との間に存在するであろう。
【0024】
メルトプール33が所定の深さ(例えば、10mm)に達すると、コイル15への電力は2000ワットだけ減じられ、テンプレート40は、当該テンプレートの端縁を湿潤させるために、接触点40aにおいてメルトプール33と接触状態となるように動かされる。絞り板31は、成長プレート18から除去できる放射熱の量を調節するために開放される。当該成長プレートは、溶融物と、絞り板の開閉角によって調節が制御される炉の冷却壁との間のガスバリアー及び調節器として機能する。この熱は、チムニー30を介してテンプレート40の表面及び/又は成長リボン40bから成長プレート18へ及び熱が放散される炉の水冷壁52上へと放散するであろう。絞り板は、最初に開かれる接触点40aに最も近い絞り板に続いて開かれ、それによって、テンプレート40が液体シリコンと接触する領域40aにおいて、薄いシリコン結晶リボン40bが成長を開始させるのが好ましい。
【0025】
公知のように、固体シリコンと液体シリコンとの間の相変化は、等温プロセス(両方が1412℃であるとき)であり、水と良く似て、多量のエネルギ(熱)を温度変化がない状態で除去するか又は付加することができる。凝固の際に放散される熱の一部分のみが、成長プレート18へと放散され、一方、残りは、ちょうど形成された固体と接触している液体を介して伝導によって除去される。絞り板31が開かれると、放射出力成分が成長サセプタ19の周囲のコイル23に付加されて、適正な溶融温度勾配を確保し且つ成長している結晶上の樹脂状結晶の形成を防止する。ここで使用されている“放射出力”という用語は、伝導又は対流とは別の放射によって失われるものを意味している。
【0026】
好ましい作動モードにおいては、絞り板31は、リボンが形成されるときに溶融物の冷却制御の唯一の供給源であることは注目されるべきである。絞り板は、成長を開始させ且つ形成されているリボンの厚みを制御するように能動的に制御される。絞り板の開口部は、シリコンリボンの下方に存在する液体シリコンの温度を著しく下げることなく、その凝固点でメルトプールからの熱の流れの調節を可能にする。上記したように、コイル23は、成長プレートサセプタ19への熱の誘導源を提供し、これは次いでリボンがメルトプールから引き出されるときに、メルトプール33の本体を加熱し且つ溶融状態に維持する。
【0027】
ひとたびリボンが形成され始めると、テンプレート40は、メルトプール33から引き出され且つ成長プレート18を介する熱の損失に比例した速度で前進せしめられる。リボン40bが取り付けられているテンプレート40は、液体シリコンの浮力/重量、液体シリコンの表面張力、液体メルトプール33、固体リボン及び気体雰囲気の間の三重点メニスカスを維持するために、例えば、水平から約1°〜約15°の角度(例えば、約4°)(図1参照)のようなリボンの形成のために提供される取り出し角度αで引き出される。シリコンリボンを形成する当該方法は、テンプレートとして単一の種結晶を使用することを必要としないので、通常、これに伴う多くの問題を避けることができる。更に、リボン内に誘起される応力は、リボンがメルトプール33から出て来る自然な弛み形状をとるようにさせることによって減じることができる。形成されたリボンの冷却過程は、引き出しガイド54の周囲の種々の絶縁手段による成長速度に無関係に調整でき、このようにして、シリコンの電気的特性の注文製造を可能にすることができる。
【0028】
リボンは、形成後短期間(例えば、約3分未満)に出て行くので、直接的な厚みの測定は、(a)チムニー30を介する熱損失の量を調節するために絞り板31に対して、(b)滞留時間を変えるための引き出し速度に対して、及び/又は(c)前記熱損失量に影響を及ぼすために加熱コイルへの電力量に対して小さな調整を行うために、使用することができる。リボンが形成されるときに、炉の外部のアームその他の引き出し機構55(例えば、対向しているローラー、“たぐり寄せ”挟持又はその他の連続的な給送装置)を調整して速度及び連続的なリボンの成長を維持することができるようにしつつ、滑らかで且つ平坦な取り出し角度を維持するために使用することができる。連続的なリボンの一部分が前進して取り出し機構を通り過ぎると、けがき且つ形成されつつあるリボンから取り出すことができ、最終的な基板サイズに切断し、又は下流での動作において更に処理するために連続的なリボンの一部分として残すことができる。
【0029】
更に、当該技術において理解されるべきであるように、固体シリコンの給送機構(図示せず)は、動作を連続状態に保つのに必要とされるシリコンの部片を注入坩堝内に添加するために、注入坩堝13上の蓋18内の開口部17と協働することができる。当該シリコン部片は、通常は、溶融物の付加と付加との間の中断時間に添加されて、次のサイクルが始まる前に固体シリコンが予溶融温度にされる。形成されたリボンの抵抗の調整は、固体シリコンの添加の特性(ドープ剤)を変えることによって行うことができる。装置の滞留時間は短いので、この調整は、形成されたリボンを所定の抵抗範囲内に維持するために、比較的迅速に行うことができる。更に、成長の安定性及びリボンテンプレートの形成に必要とされる場合には、ガスポート34を介してアルゴン雰囲気内に少量の窒素を添加することによって、その場で異種の種結晶面を形成することができる。これは、結晶シリコンの成長を下方でテンプレート化することができる。これは、結晶シリコン成長を下方でテンプレート化するために、メルトプール33の表面上に窒化シリコン/酸窒化シリコンの極めて薄い表皮(<10mm)を形成させる。
【0030】
当該連続的なプロセスは、成長トレイ又は注入坩堝がそれらの有効寿命の終了時に達したとき又はシリコンのメルトプールが適切な品質のリボンをもはや製造することができない程度まで不純物又はドープ剤が濃縮されたときに中断されるであろう。この時点で、炉は冷却させることができ、摩耗要素及びシリコンを置換することができ、当該方法を再スタートさせることができる。
【0031】
2006年9月28日に出願された米国仮特許出願第60/827,246号は、その全体が本明細書に組み入れられている。
【符号の説明】
【0032】
10 装置、
11 溶融室、
12 注入坩堝サセプタ、
13 注入坩堝、
14 絶縁層、
15 電気誘導加熱コイル、
16 蓋、
17 開口部、
18 成長プレート、
19 成長トレイサセプタ、
20 上方絶縁層、
21 下方絶縁層、
22 底部絶縁層、
23 誘導加熱コイル、
25 フォーク形状の層、
26 出口、
26a バッフル、
27 成長トレイ、
28 窪み、
29 畝状突出部、
30 チムニー、
31 絞り板、
33 メルトプール、
34 ガス注入器、
40 リボンテンプレート、
40a 接触点、
40b シリコン結晶リボン、
50 炉、
51 真空/圧力容器、
52 水冷壁、
53 リボン出口穴、
54 冷却機構、
55 引き出し機構、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給材料を含む連続的なリボンを製造するための装置であり、
前記供給材料を溶融させる溶融室であって、出口を備えた溶融室と、
当該溶融室の前記出口から、溶融された供給材料を受け取るように配置された成長トレイと、
当該成長トレイから離隔されているが熱的に連通しており且つ前記溶融室内の前記出口の下流に配置された冷却手段であって、前記成長トレイ内の前記溶融せしめられた供給材料から放射される熱の量を調節するようになされた調節可能な手段と、を含んでいる装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり、
前記溶融室の前記出口内に配置され且つ溶融した供給材料のみを前記出口を介して前記成長トレイ内へ流入させ且つ固体は前記溶融室内に残すようになされたバッフルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であり、
前記冷却手段が、前記溶融室の出口の下流において前記成長プレート上に配置されており且つ前記成長トレイ内の前記溶融した供給材料からの熱を通過させて放射させるようになされたチムニーを備えており、
前記調節可能な手段が、好ましくは前記チムニー内に枢動可能に取り付けられ且つ当該チムニーを通る熱の通路の面積を制御するように動くことができる少なくとも1つの絞り板を備えていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であり、
前記溶融室の前記出口の下方に配置されている前記成長トレイに設けられた窪みであって、溶融された供給材料の跳ね落ち深さを浅くし且つ前記溶融された供給材料が前記出口の中を通り且つ前記成長トレイ内へ流れ込むときに、当該溶融された供給材料の波立ちの形成を制限するようになされた窪みを含んでいることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であり、
前記窪みの下流に配置されており且つ前記成長トレイ内の溶融された供給材料内での波の進行を制限するようになされた畝状突出部を前記成長トレイ内に含んでいることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であり、
前記成長トレイが支持されている成長トレイサセプタと、
前記連続するリボンの成長中に、前記供給材料を液体相に維持するために、前記成長トレイサセプタを介して前記成長トレイに誘導熱を供給するための電気加熱手段と、を含んでいることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であり、
前記注入坩堝と前記バッフルとが支持されている注入坩堝サセプタと、
供給材料をその溶融点の若干下方に維持し且つ必要に応じて溶融速度を制御するように熱入力を調整するために、前記注入坩堝サセプタを介して前記注入坩堝に誘導熱を供給するための電気加熱手段と、を含んでいることを特徴とする装置。
【請求項8】
供給材料の連続するリボンを製造する方法であり、
前記供給材料を、溶融室内で溶融させるステップと、
前記溶融された供給材料を、前記溶融室から成長トレイ内へ流入させ且つ当該成長トレイ内に深さの浅いメルトプールを形成させるステップと、
前記メルトプールからの熱の損失を、前記溶融室の下流に配置されているチムニーを介する上方への前記メルトプールからの熱の放射によって可能にするステップと、
前記メルトプールが前記熱の損失を受けた位置に前記メルトプールと接触しているテンプレートを配置し、それによって、前記熱の損失を受けた位置で、前記テンプレートが前記溶融された供給材料に取り付けられるようにするステップと、
前記テンプレートを前記メルトプールから引き出して前記リボンを製造するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であり、
前記テンプレートが、前記メルトプールの表面に対して約1°〜約15°の角度で、前記メルトプールから引き出されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であり、
前記リボンの製造中に、前記メルトプール内の前記供給材料をその液体相に保つために、前記成長トレイへ熱を供給するステップを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、
前記チムニーを通る流れを調節することによって、前記メルトプールからの前記熱の損失を調節するステップを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であり、
前記熱の損失が、前記チムニーを介する熱の流れの面積を増大させ又は減少させるために、前記チムニー内で少なくとも1つの絞り板を動かすことによって調整されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、
前記チムニーが、当該チムニー内の流れの領域を横切るように並置された第一及び第二の絞り板を備えており、前記第一の絞り板は、前記第二の絞り板よりも、前記テンプレートと前記メルトプールとの間の前記接触点により近く、
前記第一の絞り板が最初に開かれると、これに続いて前記第二の絞り板を開いて、前記リボンの成長を開始させるステップを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であり、
前記メルトプールの上方から出て行く気体状で且つ小さい粒子不純物を取り除くために、流動ガスによって前記メルトプールの表面を洗い流すステップを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であり、
前記気体がアルゴン及び窒素からなることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であり、
溶融物の表面特性を変えるために、前記気体の組成を調整するステップを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であり、
テンプレートが、炭素を基材とする材料のシートによって構成されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であり、
前記供給材料が半導体材料を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であり、
前記供給材料がシリコンを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項8に記載の方法であり、
前記供給材料が半導体材料を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項8に記載の方法であり、
前記供給材料がシリコンを含んでいることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−504905(P2010−504905A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530566(P2009−530566)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/079484
【国際公開番号】WO2008/039816
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】