説明

縦型パワートランジスタ装置、半導体チップ、および縦型パワートランジスタ装置の製造方法

縦型トランジスタ装置は、III−V族半導体材料から形成される基板(100)と、少なくとも部分的に基板内に収容される多層スタック(116)とを備える。多層スタックは、基板(100)に隣接して配置される半絶縁層(108)と、第1のIII−V族半導体材料から形成されており、半絶縁層に隣接して配置される第1の層(110)とを備える。多層スタック(116)はまた、第2のIII−V族半導体材料から形成されて、第1の層(110)に隣接する第2の層(112)と、第1の層と第2の層との界面に形成されるヘテロ接合部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲に記載した縦型パワートランジスタ装置、半導体チップ、および縦型パワートランジスタ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が環境へ与える重大な不利益の増大の結果、車両製造者には、自身の製造した車両エンジンによる二酸化炭素(CO)排出量を低減することが、圧力として加えられ続けている。そのため、車両製造者等は、製造した車両によるカーボンフットプリントを低減する一手段として、ハイブリッド車(HV)技術、電気自動車(EV)技術、燃料電池(FC)技術、および進歩したバイオ燃料技術を開発している。
【0003】
HV技術に関連して、いわゆるハイブリッド車両は、ハイブリッド車の制御系により制御されるパワートレインを備えることが知られている。パワートレインは、内燃機関と電気モータとを備え、この内燃機関および電気モータは、パワースプリッタを経由して駆動輪に接続されている。パワースプリッタは、駆動輪の動力が、内燃機関のみ、電気モータのみ、または内燃機関と電気モータの両方の何れかによって供給されることを可能として、内燃機関が所与の時間において最も効率な負荷と速度を保つことを実現する。電気モータは高電圧バッテリによって駆動される。いわゆる「インバータアセンブリ」が設けられており、この「インバータアセンブリ」は、インバータと、いわゆる「ブーストコンバータ」とを備える。インバータは車両の高電圧バッテリの高電圧直流を三相交流に変換し、電気モータの動力とする。車両のパワートレインは、複数の電気モータを備えることもある。
【0004】
三相交流を提供するべく、高電圧バッテリの出力電圧は、ブーストコンバータにより例えば、200Vから500Vへと段階的に昇圧される。その後、インバータはブーストコンバータによって提供される段階的に昇圧された電圧から三相交流を提供する役割を担う。三相交流を生成するために、インバータが絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)と電力変調用の並列ダイオードとからなるバンクを備えることは知られており、このIGBTが電力切替部を構成している。
【0005】
しかし、将来のハイブリッドまたはその他の電気駆動車両では、エネルギー損失の低減、小型化、コスト効率化を含め、インバータへの要求は高くなる。さらにインバータの半導体装置には、ワイドバンドギャップ半導体材料から形成されており高い絶縁破壊電圧を示すこと、高い動作温度に耐えられることが求められる。
【0006】
シリコンを材料としたIGBTの性能は現時点では許容可能だが、これらの装置は将来の車両設計によってシリコンを材料としたIGBTに要求される高電流密度の要求や、高電源電圧および高動作温度の要求の観点においては、性能が十分でありそうにない。
【0007】
パワートランジスタを製造するための半導体材料として有望な候補は、窒化ガリウムである。しかし、これらの装置は、窒化ガリウム(GaN)基板を必要とする。シリコン基板上に窒化ガリウム基板を成長させて後にシリコン基板から分離することは、格子不整合によって生じる応力のため実行し難い。これに関して、シリコン基板から窒化ガリウム層を分離しようとするときに、窒化ガリウム層にクラックを生じさせることなく、窒化ガリウムの層を十分に厚く成長させることはできない。
【0008】
この問題を軽減するために、窒化ガリウムの結晶構造と十分に格子整合する炭化ケイ素基板上に窒化ガリウムを成長させる方法が知られている。しかし、炭化ケイ素基板上に所望の厚さの窒化ガリウム基板を形成することはコストが高いため、製造者の選択肢として比較的望ましくない。
【0009】
炭化ケイ素を使用する代わりに、サファイア基板上に窒化ガリウムを成長させることにより、結果として、よりコスト効率的に窒化ガリウム基板が生産されることが知られている。実際に、サファイア基板上に成長させた自立窒化ガリウム基板上に形成された縦型パワートランジスタ装置構造は、非特許文献1に記載されている。非特許文献1では、自立GaN基板であって、その上に形成されたn型GaNドリフト層を有する自立GaN基板について説明している。絶縁ゲートを有する埋め込み型の構造が、次いで、このn型GaNドリフト層上に形成される。ゲートおよびソースは、装置の上面上に形成される一方、ドレインは、装置の裏面上に形成されることにより、この装置は縦型トランジスタ装置となる。しかし、そのような装置構造は、高い絶縁破壊電圧を維持することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】杉本(Sugimoto)ら、「自立n‐GaN基板上のAlGaN/GaN HEMTの垂直デバイス動作(Vertical device operation of AlGaN/GaN HEMTs on free−standing n−GaN substrates)」、電力変換国際会議2007(Power Conversion Conference 2007)、名古屋、2007年4月2日〜5日
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図2】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図3】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図4】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図5】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図6】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図7】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図8】本発明の一実施形態を構成する縦型パワートランジスタ装置の製造方法の一連の工程による例示的な段階の模式図。
【図9】図1から8に関連した製造方法の例示的な工程のフローチャート。
【図10】本発明の他の実施形態を構成する隣接した縦型パワートランジスタ装置を例示した模式図。
【図11】本発明のさらなる実施形態を構成する隣接した縦型パワートランジスタ装置の他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特定な実施形態については、従属請求項に記載する。本発明のそれらの特徴および他の特徴については、後述の実施形態の参照により明確に理解される。
示した本発明の実施形態は、ほとんどの部分において当業者にとって既知である電子部品や回路を用いて実装されていることから、本発明の基本的な概念が理解され認められることに必要と見なされる程度を越えては、また本発明の教示を不明瞭にしたり紛らわしくしたりしないよう、詳細な説明はしない。
【0013】
図1から図9を参照すると、パワートランジスタ装置の製造に係る自立窒化ガリウム基板100が提供(工程200)され、ウエハ102を構成する。本例では、窒化ガリウム基板は、HVPE(High Vapour Process Epitaxy)法を用いて形成されてよく、サファイア基板上に成長させた後に、適切な分離または当技術分野において知られている開裂技術により、サファイア基板からの分離(工程202)が行われてもよい。しかし、窒化ガリウム基板100はサファイア基板上に配置されたまま、後述する処理工程を用いて処理されてもよく、その後、窒化ガリウム基板をサファイア基板から分離することが可能であることを、当業者であれば理解されるであろう。また、所望であれば、例えば原子結合技術を用いてシリコン基板上に形成され得ることを、当業者であれば理解されるであろう。さらに、窒化ガリウム基板100は、自立する必要はない。確かに、基板100は、所望であれば、適切な材料、例えばIII−V族半導体材料の適切な窒化物から形成されてもよい。
【0014】
窒化ガリウム基板100の成長処理は、主に鉄(Fe)による汚染の傾向にある。しかし、本例では、汚染物質の存在は窒化ガリウム基板100を導電性として、基板100を、例えばトランジスタ装置のドレインの端子として機能させることができるため、この汚染は有益である。
【0015】
凹部106は、基板100内に形成されてもよい。例えば、窒化ガリウム基板を用意した後、二酸化シリコン(SiO)キャップ層104(図2)は、例えば物理気相成長(PVD)法を用いて窒化ガリウム基板100上に配置(工程204)されてもよく、その後、フォトレジスト(図なし)は、二酸化シリコンキャップ層104上に、例えばスピンコーティングによって塗付され、フォトレジストは適切なマスクを用いてパターニング(工程206)されてよい。硬化されていないフォトレジストは、次いで、窒化ガリウム基板100内に凹部106(図3)を形成するように除去され、ウエハは、例えば塩素ガスをエッチング剤として用いるプラズマエッチングを行うことにより、エッチングされる(工程208)。凹部106の適切な深さは、約1μm厚〜約2μ厚の間だが、他の深さが用いられてもよい。SiOキャップ層104の提供は、以下に説明する選択的な局所的なエピタキシャル再成長を可能にするよう機能し、ゆえに、凹部166の外側における成長を防止する。本例において、キャップ層104はSiOから形成されることができるが、キャップ層104は窒化シリコン(SiN)または他の適切な材料から形成されることができる。
【0016】
凹部106を形成した後、ウエハ102は多層選択的エピタキシャル再成長処理される。例えば、半絶縁エピタキシャル層108(図4)は、はじめに凹部内において成長(工程210)されてよい。半絶縁層108は、基板100と(凹部領域内における)半絶縁層108の上に形成された複数の層とを電気的に絶縁する。半絶縁層108は、特に、垂直方向における上の層から基板へ、またはその逆方向の電荷キャリアのドリフトを抑制、または少なくとも減少させる。こうして、絶縁破壊電圧の向上を可能にする。半絶縁層108の厚みは、凹部106の深度より小さいため、半絶縁層108は、凹部の外、本例では基板100の面109の上に延びない。この層は例えば凹部106内において、約1μm〜約1.5μmの間の厚みでもよいため、半絶縁層108の上面107は、基板100の面109より下になる。本例では、成長技術は、分子線エピタキシー(MBE)法または有機金属化学気相成長(MOCVD)法であってもよく、半絶縁層108は、基板100内に凹設される。本例では、半絶縁層108はp型にドープされた窒化ガリウムであり、ドーパントはマグネシウム(Mg)である。しかし、半絶縁層108の電気抵抗を高めるため、またはその層にp型の性質を発達させるために、例えば、炭素(C)、鉄(Fe)などの他のドーパントを用いることができる。あるいは、半絶縁層108は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)、または他の適切なドープされている、あるいはドープされていない半絶縁材料の層であることができる。
【0017】
半絶縁層108を配置した後、第1の窒化ガリウム層110(図5)は、半絶縁層108上に成長(工程212)される。適切な厚みは、約200nm〜約0.5μmの間であるが、他の厚みが用いられてもよい。窒化ガリウム層110は、半絶縁層108に隣接している。示されるように、GaN層110は、凹部106において半絶縁層108の上面107の上方に延びている。GaN層110の上面113は、面109と同じ高さあるいは、より低い高さである。窒化ガリウム層110を形成するために、例えば、MBE法またはMOCVD法など、適切な成長技術が用いられ得る。本例では、層108は、意図的にドープされていないGaN層である。もちろん、第1の層108は、他の適切な材料、例えばIII族窒化物の半導体材料などの適切なIII−V族半導体材料から形成されることができる。用いられる複数のあるいは単一のIII族窒化物材料は、例えば、III族窒化物材料の二元系、III族窒化物材料の三元系、III族窒化物材料の四元系、GaN、AlGaN、InGaN、AlInN、AlInGaN、およびエピタキシー法により成長されたIII族窒化物材料からなる群における1つ以上の材料でもよい。
【0018】
本例に示されるように、半絶縁層108およびGaN層110は、(自立)窒化ガリウム基板100により、ほぼ囲まれている。関連して、水平面において、すなわち面109に平行に、半絶縁層108およびGaN層110は、基板100の凹部の側面111によって囲まれており、層108,110の配置されている凹部106の底面もまた、基板100によって塞がれている。凹部106の上は、しかしながら、基板100によって覆われておらず、本例においては、基板100に関して開いている。
【0019】
その後、例えば意図的にドープされない窒化アルミニウムガリウムにより形成される第2の障壁層112(図6)が成長(工程214)されてもよい。GaN層110と障壁層112との界面は、ヘテロ接合として機能するため、形成されるパワートランジスタ装置は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)またはヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)である。層112は、例えば同様のエピタキシー手法(MOCVDまたはMBE)を用いて窒化ガリウム層110上に成長されてもよい。適切な障壁層112の厚みは、約15nm〜約30nmの間であるが、他の厚みが用いられてもよい。窒化アルミニウムガリウム障壁層112は、窒化ガリウム層110に隣接して配置されてもよく、例えば層110上に提供されてもよい。窒化アルミニウムガリウム中のアルミニウム原子濃度は、約20%〜30%程度とすることができ、これは、式:AlGa1−xN(xは、約0.20〜約0.30)として表すことができる。あるいは、障壁層112は、窒化インジウムガリウム(InGaN)から形成することができ、インジウム原子濃度は、約10%〜約20%であり、式:InGa1−xN(xは、約0.1〜約0.2)として表すことができる。またあるいは、障壁層112は、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)から形成することができ、インジウム原子の割合は、約10%〜約20%であり、式:Al1−xInN(xは、約0.1〜約0.2)として表すことができる。前述の材料は、適切なIII−V族半導体材料の例であって、ヘテロ接合を形成するための他の適切な材料、例えば界面において量子井戸の形成を引き起こす異なるバンドギャップ、または界面から基板へ横断方向に圧電分極を引き起こす異なる格子定数を有する材料を用いることができることは、当業者であれば理解されるであろう。例えば、III族窒化物(の化合物、あるいは合成物、合金)、Alおよび/またはInおよび/またはGaなどの窒化物など他の適切なIII−V族半導体材料が用いられてもよい。III族窒化物材料、または、例えば複数のあるいは単一のIII族窒化物材料、例えば、III族窒化物材料の二元系、III族窒化物材料の三元系、III族窒化物材料の四元系、GaN、AlGaN、InGaN、AlInN、AlInGaN、およびエピタキシー法により成長されたIII族窒化物材料からなる群における1つ以上の材料を用いられてもよい。
【0020】
窒化ガリウムキャップ層114(図7)は、窒化アルミニウムガリウム障壁層112上に成長(工程216)されてもよいため、窒化ガリウムキャップ層114は、AlGaN障壁層112の酸化を防止するように窒化アルミニウムガリウム障壁層112に隣接している。多層スタック116の形成後、二酸化シリコンキャップ層104は除去(工程218)されてもよく、サファイア基板(図なし)は、もし既に除去されていなければ、前述した方法により除去(工程220)されてもよいため、窒化ガリウムキャップ基板100は、自立窒化ガリウム基板100になる。
【0021】
選択的なエピタキシー再成長により形成された半絶縁層108、窒化ガリウム層110、窒化アルミニウムガリウム層112、および窒化ガリウムキャップ層114は、多層スタック116を構成する。多層スタック116は、窒化ガリウム基板100に関連しており、多層スタック116は窒化ガリウム基板100内に形成されている。図7に示すように、多層スタック116の上面115は凹部のエッジと同じ高さ、あるいはエッジの上に、すなわち基板100の面109の上に延びている。図8に例示するように、半絶縁層108は、面109から基板100の底面へ垂直方向において、基板100と多層スタック116内の他の層とを分離する。このようにして、障壁層は凹部106において、基板からスタック116へ、あるいは逆へ垂直方向に流れる直流電流を抑制、または少なくとも減少させる。
【0022】
GaN層110と障壁層112との間の界面付近において水平方向に、それからGaN基板100内において垂直方向に直流電流が流れるように、GaN層110と障壁層112との間の界面は、凹部106のエッジと同じ高さ、あるいはそれよりも低く配置されている。すなわち、本例では、基板100との電気的な接続を確実にするように、基板100の面109よりも低い。本例では、界面は面109と同じ高さであるため、障壁層112およびキャップ層114は面109の上に位置している。しかし、界面が面109より下の十分な距離に配置されていれば、多層スタック116の残りの層は、多層スタック116の上面が面109と同じ高さに形成されることができる。図8に示すように、ドレインコンタクト118は基板100の裏側120上に形成(工程222)されてもよい。ドレインコンタクト118は、電気的にGaN基板100に接続する。GaN基板が他の基板上、例えばSi上に提供されている場合には、その基板を部分的に導体にするように部分的にドーピングされた金属のビアなどのコネクタが、その基板を通じて提供されてもよい。ソースコンタクト122およびゲートコンタクト124は、適切な金属配線技術を用いることにより、窒化ガリウムキャップ層114上に形成されてもよい。ゲートコンタクト124は、例えば、ニッケル、白金、モリブデン、またはイリジウムから形成されるショットキー接点にすることができる。あるいは、ゲートコンタクト124は、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは、酸化ハフニウムなど、金属−絶縁体−半導体(MIS)接点にすることもできる。ソースとドレインコンタクトは、タンタル、チタン、およびアルミニウムの組み合わせから当技術分野において知られている適切な技術を用いて形成されたオーミック接点でもよい。GaN層内において、いわゆるオーミック接点を形成するために金属の元素を拡散する高速熱アニール処理をすることができる。
【0023】
パワートランジスタ装置の構造は「ノーマリーオン」型の装置の構造であるので、パワートランジスタ装置の動作について対応して説明する。しかしながら、パワートランジスタ装置を「ノーマリーオフ」型となるように形成できることは、当業者であれば理解されるであろう。
【0024】
動作中には、−5Vの負バイアス電圧VGSを、例えば、装置のうちの一つのソースとゲート接点122,124との間に印可すると、その結果として、パワートランジスタ装置はオフ状態とされる。オン状態では、ヘテロ接合部における自発的な圧電分極に起因する約2.5ナノメートル(25Å)の厚みの量子井戸によって、ゲート接点122より下における2次元電子ガス(2DEG)領域と、GaN層110と障壁層112との間の界面とを形成する。この2DEG領域は、横方向のドリフト領域を構成する。しかしながら、−5Vのバイアス電圧VGSが印可されると、2DEG領域は空乏化するため、電流が流れず、結果としてオフ状態になる。
【0025】
バイアス電圧VGSを0Vに近づくように上昇させると、2DEG領域の空乏が現減少し、2DEG領域は電子で満たされる。極めて抵抗性の半絶縁層108が存在するため、電流は、基板100を通ってドレインコンタクト118に向かって下に流れる前に、凹部、正式には凹部の側面111と隣接する基板100の領域へ向かって水平方向に流れ始める。バイアス電圧VGSを上昇させて正とすると、2DEG領域の空乏が減少し、2DEG領域に電子が堆積されて、これがドレイン電流の増加に寄与する。
【0026】
他の実施形態(図10)では、自立窒化ガリウム基板100内に形成された第1の多層スタック116に加えて、第2の多層スタック126は、自立窒化ガリウム基板100内において水平方向に並ぶように、同様に形成されてもよく、第1および第2の多層スタック、116,126は窒化ガリウム基板100の垂直領域によって分離されている。これを達成するために、実行されたパターニング(工程206)は、第1の凹部106をエッチングすると同時に、自立窒化ガリウム基板100内にエッチングされてもよい第2の凹部128の位置を定義してもよい。それから第2の凹部128は、第1の多層スタック116が第1の凹部106内に形成されると同時に、第2の多層スタック126により充填されてもよい。ゆえに、自立窒化ガリウム基板100は本例において、第1と第2の多層スタック116,126が形成される共通の基板を構築する。したがって、第1のパワートランジスタ装置と第2のパワートランジスタ装置は、ウエハ102上および/またはウエハ内に形成される。第1の多層スタック116は第1のパワートランジスタ装置と関連しており、第2の多層スタック126は第2のパワートランジスタ装置と関連している。
【0027】
第1および第2の多層スタック116,126の形成後、接続領域130は、第1と第2の多層スタックである116と126との間、本例では、第1と第2の多層スタックである116と126との間を架橋するように、第1と第2の多層スタック116と126との対向する側面の間に形成されてもよい。これに関して、ゲートおよびソースコンタクトを形成する前に、ウエハ102の表面は、例えばフォトレジストを用いることによりパターニングされてもよく、接続領域130の位置は定義される。接続領域130は、それから約0.5μmの厚みよりも薄いn型領域132を形成するために、例えばシリコンイオンを用いるイオン注入法によって形成される。n型領域132は、第1と第2のパワートランジスタ装置のそれぞれの窒化ガリウム層110、窒化アルミニウムガリウム障壁層112、および窒化ガリウムキャップ層114同士を架橋する。本例では、接続領域はゲートコンタクト124から約10μm〜約30μm離れていてもよい。所望であれば、n型領域132は、第1および第2の多層スタック116,126のそれぞれと相対的に隣接する二つの分離領域に分割されることができる。したがって、他の実施形態において、複数のトランジスタ装置は、高電流用途において、ネットワークあるいは二次元アレイを形成するために平行に配置されることができる。ゆえに、前述の実施形態では、n型オーミック領域が単一領域であって、二つの多層スタック間を架橋しているという文脈で説明されているが、前記多層スタックの側面に相対して延びるn型オーミック領域にある程度関係して、上述された方法により多層スタックに隣接して配置されたn型オーミック領域におけるそれぞれの架橋しない領域の提供が考えられることを、当業者であれば理解されるであろう。
【0028】
動作時において、第1および第2のパワートランジスタ装置は、オン状態において、AlGaN障壁112とGaN層110との間の界面の下であり、かつゲート124の反対であるn型領域132の方向に延びるように、それぞれ相対する水平ドリフト領域を生成する。関連して、第1および第2のパワートランジスタ装置のそれぞれは、単一のパワートランジスタ装置の形成に関連して前述された方法で動作する。しかし、接続領域130の存在は、第1および第2のパワートランジスタ装置の水平ドリフト領域から第1および第2の多層スタック116と126との間に配置された垂直ドリフト領域134への基板100内における電流伝達を向上するために機能する。関連して、接続領域130は、第1および第2の多層スタックにおけるヘテロ接合と基板100の垂直ドリフト領域とを電気的に結合させる。単一のパワートランジスタ装置を、それ自身の水平ドリフト領域を生成するパワートランジスタ装置であり、多層スタックに隣接して配置された架橋しないn型オーミック領域における単一のパワートランジスタ装置とみなすのであれば、n型領域132の存在もまた、パワートランジスタ装置の水平ドリフト領域から垂直ドリフト領域134への電流伝達を向上するために機能することは理解されるであろう。
【0029】
さらなる実施形態(図11)において、接続領域130はn型領域132を覆うように形成されるオーミックコンタクト136によって補われてもよいため、オーミックコンタクト136はn型領域132に隣接して配置される。オーミックコンタクト136は、ソースコンタクト122を形成するために用いられた工程と同じ処理工程内において実装されることができる。第1および第2のパワートランジスタ装置における水平ドリフト領域から垂直ドリフト領域134への電流伝達は、したがって更に向上される。前述されるように、二つの分離した領域として配列されているn型オーミック領域に加えて、オーミックコンタクト136もまた、それぞれが第1および第2の多層スタック116,126と相対的に隣接している二つの分離したオーミックコンタクトとして配置されることができる。
【0030】
このように、縦型トランジスタ装置および製造方法を提供することが可能であり、その結果、バンドギャップは、例えば約3.5eV(電子ボルト)に向上し、よってオフ状態における絶縁破壊電圧を高くする。装置は、キャリアの移動性の向上による利益も得る。接続領域130の提供は、オフ状態において、装置のゲートとソースとの間において三次元状に電界を分散する機能もする。そのため、絶縁破壊電圧の向上にも対応し、その結果、装置のチップ専有領域が低減され、同様に、縦型パワートランジスタ装置の正規化オン抵抗は低減する。さらに、共通の基板上のスタック間に接続領域が提供されることにより、2次元電子ガスと隣接する装置における垂直ドリフト領域との間の電気的な不連続性を減少させ、よって、隣接した装置の水平ドリフト領域から共通の基板に対応する垂直ドリフト領域への電流の伝達が容易になる。ゆえに、水平ドリフト領域と垂直ドリフト領域との間の高い抵抗は、ドレイン−ソース間の電気的な絶縁を犠牲にすることなく下げられる。
【0031】
もちろん、上述した利点は一例であり、本発明により、これらの点、またはその他の利点も実現される。さらに、上述した利点のすべてをここで説明する実施形態により実現する必要がないことは、当業者であれば理解されるであろう。
【0032】
前述した明細において、本発明は、発明の実施形態の特定の例を参照して説明されている。しかし、広義の精神や特許請求の範囲に記述されている発明の範囲から大きくかけ離れることがなければ、様々な変形および変更をしてよいことは明白である。
【0033】
例えば、抵抗、ダイオード、コンデンサ、およびその他同様の他の受動または能動装置は、単一のトランジスタあるいは複数のトランジスタと一緒に基板上に提供されてもよい。さらに、他の層が上に提供されてもよい。
【0034】
また例えば、一つの実施形態における実施例は、一つの集積回路上または同じ装置内に配置される回路として実装される。例えば、図10および図11の実施形態に示すように、第1と第2の多層スタック116,126は、共通の自立窒化ガリウム基板100を共有している。代替えとして、適切な方法で互いに接続された複数の別々の集積回路または別々の装置を実装する例がある。
【0035】
しかしながら、他の変形と、変化と、代替えもまた可能である。明細書および図面は、したがって、限定的な意味よりも実例とすることを考慮したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型パワートランジスタ装置において、
III−V族半導体材料から形成された基板と、
少なくとも部分的に基板内に収容される多層スタックと、を備え
前記多層スタックは、
第1のIII−V族半導体材料から形成された第1の層と、
第2のIII−V族半導体材料から形成された第2の層と、
第1の層と第2の層との界面に形成されたヘテロ接合部と
凹部において基板からヘテロ接合部を電気的に絶縁するべく、基板と第1の層との間に配置された半絶縁層とを備える、装置。
【請求項2】
半絶縁層は、III族窒化物材料、III族窒化物材料の二元系、III族窒化物材料の三元系、III族窒化物材料の四元系、p型のドーパントを含む窒化ガリウム、AlGaN、InGaN、およびAlInNからなる群から選択されるIII−V族の半導体材料から形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1層、第2層またはその両方は、III族窒化物材料、III族窒化物材料の二元系、III族窒化物材料の三元系、III族窒化物材料の四元系、GaN、AlGaN、InGaN、およびAlInNからなる群から選択される、ドープされた、または意図的にドープされていないIII−V族半導体材料から形成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第2層は、障壁層である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
障壁層は、AlGaN、InGaN、およびAlInNからなる群から選択される材料から形成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
障壁層は、AlGa1−xNから形成されており、xは約0.20〜約0.30である、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
多層スタックは、障壁層に隣接して配置された窒化ガリウムキャップ層を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
多層スタックは、エピタキシャル多層スタックである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
半絶縁層および第1の層は、基板によってほぼ囲まれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
基板は、凹部を備え、多層スタックは少なくとも部分的に前記凹部内に位置する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも半絶縁層は、基板内に凹設されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
半導体チップにおいて、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の縦型パワートランジスタ装置の構造を備える第1パワートランジスタ装置と、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の縦型パワートランジスタ装置の構造を備える第2パワートランジスタ装置と、を備え、
第1および第2のパワートランジスタ装置の基板は、第1および第2のパワートランジスタ装置に共通した基板であって、前記基板は第1のパワートランジスタ装置における第1の多層スタックと第2のパワートランジスタ装置における第2の多層スタックとの間の垂直ドリフト領域を支持可能であり、
半導体チップはさらに、
第1および第2のパワートランジスタ装置における第1および第2の多層スタックの対向する側面の間の接続領域であって、第1および第2多層スタックのヘテロ接合部を垂直ドリフト領域に電気的に結合させるための接続領域、を備える半導体チップ。
【請求項13】
接続領域は、第1の多層スタックにおける第1の層と第2の多層スタックにおける第1の層とを架橋するように配列されたイオン注入領域を備える、請求項12に記載の半導体チップ。
【請求項14】
イオン注入領域は、第1の多層スタックにおける第2の層およびキャップ層と、第2の多層スタックにおける第2の層およびキャップ層とを架橋する、請求項7に従属する請求項13に記載の半導体チップ。
【請求項15】
接続領域は、イオン注入領域に隣接して配置されているオーミックコンタクトをさらに備える、請求項13または14に記載の半導体チップ。
【請求項16】
縦型トランジスタ装置の製造方法において、
III−V族半導体材料の窒化物から形成されている基板を提供する工程と、
基板内にエッチングによって凹部を形成する工程と、
第1のIII−V族半導体材料から形成される第1の層を成長させる工程と、
第2のIII−V族半導体材料から形成される第2の層を成長させる工程と、
第1の層と第2の層との界面にヘテロ接合部を形成する工程と、
前記凹部において基板からヘテロ接合部を電気的に絶縁するべく、前記凹部において基板と第1の層との間に配置される半絶縁層を成長させる工程と、を備える方法。
【請求項17】
基板にエッチングによって別の凹部を形成する工程と、前記凹部および前記別の凹部は、水平方向において基板の垂直領域によって分離される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記別の凹部に別の多層スタックを形成する工程をさらに備える、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記多層スタックと前記別の多層スタックとを対向する側面を架橋するように、かつ、前記多層スタックおよび前記別の多層スタックのそれぞれのヘテロ接合部を基板に電気的に結合させるように、接続領域を形成する工程をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基板を自立基板として形成する工程をさらに備える、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−511833(P2013−511833A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539420(P2012−539420)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/056014
【国際公開番号】WO2011/061573
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】