説明

膜厚測定用標準試料、その製造方法、膜厚測定方法および半導体装置の製造方法

【課題】膜厚測定に用いる標準試料中のLaを含む膜の保管時の安定性を向上させる。
【解決手段】膜厚測定用標準試料100は、シリコン基板101上に設けられたLa含有膜103およびLa含有膜103の上部に設けられてLa含有膜103を覆うとともに金属窒化物を含む保護膜105を含む。これにより、Laを含む膜103の保管時の変質による膜厚変動を効果的に抑制する。このような膜厚測定用標準試料100を用いて、Laを含む膜の膜厚の測定値を補正するステップを含む、膜厚測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚測定用標準試料、その製造方法、膜厚測定方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiO2換算膜厚で0.9nm以下のゲート絶縁膜が求められる32nmノード以降の先端相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor:CMOS)では、ゲート電極を構成する多結晶シリコン(Poly−Si)の空乏化によるゲート絶縁膜の実効的な膜厚増加が問題になる。この問題を解決するために、空乏化を生じないメタルゲート電極の導入が求められている。
【0003】
メタルゲート電極に用いる材料には、トランジスタの閾値電圧(Vth)を適切な値に設定可能であることが求められる。具体的には、N型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)では、実効的な仕事関数(Effective Work Function:EWF)がSiの伝導帯端近傍である、EWF=4.0eV程度の材料が求められている。また、p型MOSFETでは、Siの価電子帯端近傍である、EWF=5.17eV程度の材料が求められている。
【0004】
現在、メタルゲート電極の候補材料として、熱的安定性や、ゲート加工の容易さの観点から、窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)などが広く検討されている(特許文献1)。しかしながら、TiNやTaNは、高誘電体(High−k)ゲート絶縁膜上でSiバンドギャップのミッドギャップ付近のEWFを持つことが知られており、この技術だけではVthの適正値設定が実現できない。
【0005】
そこで、メタルゲート/High−kゲート絶縁膜(本明細書において、積層構造を「上層/下層」と記載する。)を用いたCMOSトランジスタでは、ゲート絶縁膜に仕事関数調整用元素(Work Function Metal:WFメタル)を添加することで閾値電圧を制御する技術が検討されている。たとえば、N型MOSFETでは、WFメタルの候補材料として、ランタノイドまたはランタノイド化合物であるLaおよびLa23がある。WFメタルの添加により、N型MOSFETではフラットバンド電圧を負バイアス側にシフトさせる、すなわちEWFをSi伝導帯付近まで低減させることができる。よって、所望のVthを得ることが可能となる。
【0006】
ここで、WFメタルであるLa膜またはLa23膜を半導体製造プロセスに適用するには、その膜厚を所望の範囲内に管理することが必要となる。一般に、半導体製造プロセスの薄膜形成工程で膜厚規格外れが生じた場合、成膜装置の変動と膜厚測定装置の変動を切り分けるために、保管していた膜厚既知の標準試料の測定を行う。このため、既知の膜厚のLa膜あるいはLa23膜を有する標準試料を準備することになる。
【0007】
これまでの半導体プロセスにおいて用いられている膜厚測定の標準試料としては、特許文献2および3の記載のものがある。
特許文献2(特開2001−184633号公報)には、カーボン膜の膜厚測定用標準試料として、膜厚が既知であるカーボン膜を表面に有する基体と、前記カーボン膜の上に形成された、有機物汚染を有しない表面を備えたマスキング層とを含んでなる膜厚測定用標準試料が開示されている(図3)。
ここで、マスキング層が無く、カーボン膜が露出した構造を膜厚測定用標準試料として用いると、膜厚測定装置内に存在する微量の有機汚染物が、測定中に標準試料表面に付着する。カーボン膜も有機物であるため、汚染物の付着により得られる膜厚測定値の増大を引き起こし、測定誤差が大きくなってしまう。そこで、同文献では、上記構成により、有機物汚染を有しないマスキング層をカーボン膜上に形成することで、カーボン膜と、測定中に付着する有機汚染物質を区別している。これにより、測定装置内における有機物汚染に起因した測定精度の低下を伴わない膜厚測定用標準試料が提供できるとされている。
また、同文献では、マスキング層に付着した有機汚染物を測定前に紫外線照射や酸素プラズマ処理などを施すことにより除去することが記載されている。カーボン膜が露出した状態ではこれら処理を行うと、カーボン膜自体が除去されてしまうが、マスキング層の存在により有機汚染物を除去する工程を追加しても、下層のカーボン膜が同時に除去されることが防げるため、カーボン膜の膜厚変化が生じないとされている。
【0008】
特許文献3(特開平10−64967号公報)には、基板上に評価用薄膜および保護用薄膜を形成した標準試料が記載されている。評価用薄膜としてボロフォスフォシリケイトガラス(Boron Phosphor Silicate Glass:BPSG)膜が用いられ、その保護用薄膜としては金蒸着膜等の金属膜が用いられる。これにより、評価用薄膜の吸湿による標準試料の劣化を防ぐことができるとされている。
【0009】
また、膜厚測定用の標準試料に関する技術ではないが、特許文献4および5には、BPSG膜内の不純物濃度測定に用いる基準試料が記載されている。
特許文献4(特開平10−70168号公報)には、BPSG膜と膜外の水との接触を断つために、半導体基板上にBPSG膜を形成し、アニーリングした後、遮断膜としてシリコン窒化膜またはプラズマ法で蒸着される酸化膜を蒸着して形成することが記載されている。
【0010】
特許文献5(特開平9−246338号公報)には、シリコンウエハー上にBPSG膜またはリンケイ酸塩ガラス(Phosphor Silicate Glass:PSG)を形成した後、その上にSi34を堆積してバリアフィルムとすることが記載されている。
【0011】
また、技術分野は異なるが、金属酸化物薄膜の形成に関する技術として、特許文献6〜9に記載の技術がある。
特許文献6(特開2005−79390号公報)には、ゲート絶縁膜となる高誘電体膜としてLaアルミネイト膜を形成することが記載されている。また、同文献には、La23膜は吸水性の高い膜であることが記載されている。
【0012】
特許文献7(再公表WO2004/086486号公報)には、La23膜を含む金属酸化物の積層薄膜をシリコン基板上に形成することが記載されている。
【0013】
特許文献8(再公表WO1998/48075号公報)には、耐食性に優れ、クロメート皮膜を代替するための表面処理金属板を形成する技術が記載されている。同文献では、希土類金属錯体をマトリックス中に含む皮膜を金属板上に形成することが記載されている。
【0014】
特許文献9(特開2000−311889号公報)には、ダマシンプロセスにおけるエッチング後の銅表面の腐食を防止するために、プラズマ処理をおこなうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国公開第6696345号明細書
【特許文献2】特開2001−184633号公報
【特許文献3】特開平10−64967号公報
【特許文献4】特開平10−70168号公報
【特許文献5】特開平9−246338号公報
【特許文献6】特開2005−79390号公報
【特許文献7】再公表WO2004/086486号公報
【特許文献8】再公表WO1998/48075号公報
【特許文献9】特開2000−311889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、LaおよびLa23の膜については、図2(a)〜図2(c)を参照して以下に説明するように、保管時の安定性の面で改善の余地があった。
図2(a)は、La膜またはLa23の膜を有する基板を模式的に示す断面図である。図2(a)に示した基板200は、シリコン(Si)基板201上にLa膜またはLa23膜203が設けられた構成を有する。
【0017】
図2(b)および図2(c)は、図2(a)に示した基板200の保管時の変化を説明する断面図である。図2(c)に示すように、LaおよびLa化合物は潮解性を有するため、長期保管すると、La膜またはLa23膜203が大気と反応して粉状に崩壊することがあった。
さらに、LaおよびLa23は大気中のフッ素(F)と反応してフッ化ランタンに変質する。このため、図2(b)に示すように、1週間程度の短期保管においても、La膜またはLa23膜203が変質して膜厚変化が生じることがあった。
【0018】
このように、Laおよびその化合物は大気に接触すると変質する。よって、これらの材料を半導体製造プロセスに適用するには、膜厚測定用の標準試料についても、保管時の安定性を向上させなければならない。ところが、LaおよびLa23膜の保護に適した材質や製法は、これまで知られていなかった。
【0019】
また、Laおよびその化合物の変質は、背景技術の項で前述した材料に生じる変質とは異なっているため、保管時の安定性の向上のために解決すべき課題が異なる。このため、LaおよびLa23膜の保管時の安定性を向上させるためには、これまでに用いられてきた材料およびその保護膜とは異なる観点からの検討が必要であった。
すなわち、特許文献2における有機物汚染はカーボン膜厚測定時に生じるものであり、測定をせずにカーボン膜を長期保管するだけであれば問題はない。これに対して、LaおよびLa23膜は、大気中で1週間程度の短期保管にすら耐えられない。
【0020】
また、Laまたはその化合物の膜上に保護膜を形成したとしても、保護膜の材質によっては、保護膜中を酸素が拡散し、Laまたはその化合物の膜に到達することが考えられる。このため、Laまたはその化合物の膜に対しては、単に上部に膜を形成すればよいのではなく、Laまたはその化合物の膜の変質に寄与する酸素やフッ素を拡散させない材質および製法とする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、
基板と、
該基板上に設けられた、ランタン(La)を含む膜と、
Laを含む前記膜の上部に設けられて前記膜を覆うとともに、金属窒化物を含む保護膜と、
を含む、膜厚測定用標準試料が提供される。
【0022】
また、本発明によれば、
基板上に、Laを含む膜を形成する工程と、
Laを含む前記膜の表面に、前記膜を覆うとともに金属窒化物を含む保護膜を形成する工程と、
を含み、
Laを含む膜を形成する前記工程および保護膜を形成する前記工程を、真空中で連続しておこなうとともに、大気中に曝すことなくおこなう、膜厚測定用標準試料の製造方法が提供される。
【0023】
本発明においては、Laを含む膜上に保護膜として金属窒化物を含む膜が設けられる。金属窒化物を含む膜は、Laを含む膜と大気との接触を遮断する機能を有するため、Laを含む膜が大気に曝されて潮解およびフッ化することをいずれも抑制できる。これにより、Laを含む膜の保管時の変質による膜厚変動を効果的に抑制することができる。
【0024】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0025】
たとえば、本発明によれば、
X線光電子分光法を用いて試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する方法であって、
本発明における前記膜厚測定用標準試料中のLaを含む前記膜の膜厚を測定するステップと、
前記試料中のLaを含む膜の膜厚を測定するステップと、
膜厚測定用標準試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する前記ステップで得られた測定値に基づいて、試料中のLaを含む膜の膜厚を測定するステップで得られた前記試料中のLaを含む膜の測定値を補正するステップと、
を含む、膜厚測定方法が提供される。
【0026】
本発明によれば、
Laを含む膜を有する半導体装置の製造方法であって、
基板上にLaを含む前記膜を形成する第1工程と、
Laを含む膜を形成する前記工程で得られた前記膜の膜厚を測定する第2工程と、
本発明における前記膜厚測定用標準試料中のLaを含む前記膜の膜厚を測定し、得られた測定値に基づいて、前記第2工程で得られた前記膜の膜厚の測定値を補正する第3工程と、
を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、膜厚測定に用いる標準試料中のLaを含む膜の保管時の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態における膜厚測定用試料の構成を示す断面図である。
【図2】Laまたはその化合物の膜を有する基板の構成を示す断面図である。
【図3】従来の膜厚測定用試料の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号が付され、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
【0030】
図1(a)および図1(b)は、本実施形態における膜厚測定用標準試料の構成を示す断面図である。
図1(a)に示した膜厚測定用標準試料100は、基板(シリコン基板101等の半導体基板)、シリコン基板101上に設けられ、ランタン(La)を含む膜(La含有膜103)および保護膜105を含む。
【0031】
La含有膜103は、構成元素としてLaを含む膜であり、La膜であってもよいし、La化合物の膜でもよい。また、La含有膜103は、一種類の膜から構成されていてもよいし、二種類以上の膜の積層膜であってもよい。La含有膜103は、さらに具体的には、La膜またはLa23膜である。
La含有膜103は、たとえばシリコン基板101に接して設けられている。また、La含有膜103は、シリコン基板101に設けられた酸化シリコン膜上に設けられていてもよい。
【0032】
保護膜105は、La含有膜103の上部に設けられてLa含有膜103を覆う。保護膜105は、大気とLa含有膜103との接触および反応を遮断する機能を有する。この遮断機能をより一層確実に発揮する観点からは、図1(a)に示したように、保護膜105がLa含有膜103の全面を覆うことが好ましい。
【0033】
保護膜105は、La含有膜103への酸素およびフッ素拡散に対するバリア性を有する材料として、金属窒化物を含む。このような特性を有する保護膜105を用いることで、La含有膜103の大気との接触が防止される。これにより、図1(b)に示すように、La含有膜103の構成材料、たとえばLaまたはLa23が潮解やフッ化することによって、La含有膜103に膜厚変動や崩壊が生じるのを防ぐことができる。
【0034】
保護膜105は、Ti、AlおよびSiからなる群から選択される一種以上の金属元素を含んでいてもよい。保護膜105は、さらに具体的には、TiN、AlNおよびSi34からなる群から選択される一種以上の金属窒化物からなる。
【0035】
また、保護膜105は、一種類の膜から構成されていてもよいし、二種類以上の膜の積層膜であってもよい。たとえば、保護膜105は、金属窒化物の膜と金属膜とが積層された構成であってもよい。金属膜として、たとえばそれ自身が酸素と反応することで酸素の下層への拡散を防止する膜を用いることができる。このような金属膜の材料として好適なものの例としては、Ti、AlおよびSiが挙げられる。また、金属膜は、二種以上の金属の合金または混合物により構成されていてもよい。
【0036】
また、保護膜105の膜厚は、広い範囲で変更可能だが、たとえば1nm以上20nm以下とする。
大気の拡散およびフッ化をさらに確実に抑制する観点からは、保護膜105の膜厚をたとえば1nm以上、好ましくは3nm以上とする。
一方、下層のLa含有膜103の膜厚測定精度をさらに高める観点からは、たとえば20nm以下、好ましくは5nm以下とする。
ここで、La含有膜103の膜厚測定は、たとえばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS法)により行う。XPS法では、測定対象の薄膜にX線を入射した際に放出される光電子のエネルギーおよび強度分布を求めることで膜厚を算出する。このため、測定対象薄膜の上に保護膜105がある場合は、上記光電子が保護膜を通り抜ける必要がある。保護膜105が厚すぎると、光電子が保護膜105を通過しきれなくなり、検出エネルギー強度が低下する場合がある。すなわち、検出エネルギー強度とノイズレベルとの差が小さくなり、膜厚測定精度が低下する場合がある。
【0037】
次に、膜厚測定用標準試料100の製造方法を説明する。
まず、シリコン基板101上に、La含有膜103を形成する(ステップ11)。そして、La含有膜103の表面に、La含有膜103を覆うとともに金属窒化物を含む保護膜105を形成する(ステップ12)。
【0038】
ステップ11およびステップ12は、真空中で連続しておこなうとともに、大気中に曝すことなくおこなう。つまり、La含有膜103形成後に大気開放することなく真空チャンバー内に試料を保持し、続けて保護膜105の形成をおこなう。これにより、La含有膜103が大気に晒されることによる潮解およびフッ化の影響を全く受けることなく、保護膜105で大気から遮断することができる。
【0039】
なお、La含有膜103および保護膜105の形成方法は、これらの膜の材料等に応じて適宜選択される。たとえば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法や物理気相成長法(Physical Vapor Deposition:PVD)法などの一般的な手法によるが、これに限定されない。薄膜形成中の不純物の混入を抑制する観点からは、スパッタ法が好ましい。
【0040】
得られた膜厚測定用標準試料100においては、製造工程でのLa含有膜103の大気暴露が防止されており、また、La含有膜103の薄膜表面が別の保護膜105で覆われている。このため、大気との接触による潮解や、フッ化などの変質が抑制される。これにより、La含有膜103の膜厚変動や崩壊が抑制され、大気中で保管する際にも安定性に優れた構成となっている。このため、LaまたはLa化合物薄膜の膜厚測定時に、膜厚既知の標準試料として好適に用いることができる。
【0041】
次に、膜厚測定用標準試料100を用いる膜厚測定方法を説明する。この膜厚測定方法は、X線光電子分光法を用いて試料中のランタンを含む(Laまたはその化合物の)膜の膜厚を測定する方法であり、以下のステップを含む。
ステップ21:膜厚測定用標準試料100のLa含有膜103の膜厚を測定する、
ステップ22:試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する、および
ステップ23:ステップ21で得られたLa含有膜103の膜厚の測定値に基づいて、ステップ22で得られた試料中のLaを含む膜の測定値を補正する。
【0042】
また、Laを含む膜を有する半導体装置を製造する際に、上記膜厚測定方法を用いてもよい。このとき、半導体装置の製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
ステップ31:シリコン基板等の基板上にLaを含む膜を形成する、
ステップ32:ステップ31で得られたLaを含む膜の膜厚を測定する、および
ステップ33:膜厚測定用標準試料100中のLa含有膜103の膜厚を測定し、得られた測定値に基づいて、ステップ32で得られたLaを含む膜の膜厚の測定値を補正する。
【0043】
膜厚測定用標準試料100は、Laを含む膜を有する種々の半導体装置の製造プロセスに用いることができる。Laを含む膜として、La膜およびLa化合物膜が挙げられ、La化合物膜の具体例として、Laの酸化膜が挙げられる。
たとえば、上述した半導体装置の製造方法は、トランジスタを製造する工程を含んでもよく、ステップ31の前に高誘電率膜を形成する工程と、ステップ31の後にゲート電極として機能する金属膜を形成する工程と、をさらに含んでもよい。高誘電率膜には、たとえば、Ta25、HfO2およびZrO2等がある。このとき、Laを含む膜を高誘電率膜とゲート電極の仕事関数を制御するために用いてもよい。
【0044】
膜厚測定用標準試料100を用いることにより、半導体装置を製造する際にLaを含む膜の膜厚の制御性を向上させることができる。また、半導体製造プロセスにおいてLaまたはLa化合物薄膜の膜厚管理が可能になる。また、LaまたはLa化合物薄膜の膜厚測定用標準試料の長期使用が可能になるため、標準試料交換頻度が減少し、製造コストの削減に寄与する。
【0045】
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
100 膜厚測定用標準試料
101 シリコン基板
103 La含有膜
105 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた、ランタン(La)を含む膜と、
Laを含む前記膜の上部に設けられて前記膜を覆うとともに、金属窒化物を含む保護膜と、
を含む、膜厚測定用標準試料。
【請求項2】
請求項1に記載の膜厚測定用標準試料において、
Laを含む前記膜が、La膜またはLa23膜である、膜厚測定用標準試料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜厚測定用標準試料において、
前記保護膜が、Ti、AlおよびSiからなる群から選択される一種以上の金属元素を含む、膜厚測定用標準試料。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項に記載の膜厚測定用標準試料において、
前記保護膜が、TiN、AlNおよびSi34からなる群から選択される一種以上の前記金属窒化物を含む、膜厚測定用標準試料。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の膜厚測定用標準試料において、前記基板がシリコン基板である、膜厚測定用標準試料。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の膜厚測定用標準試料において、前記保護膜の厚さが1nm以上20nm以下である、膜厚測定用標準試料。
【請求項7】
基板上に、Laを含む膜を形成する工程と、
Laを含む前記膜の表面に、前記膜を覆うとともに金属窒化物を含む保護膜を形成する工程と、
を含み、
Laを含む膜を形成する前記工程および保護膜を形成する前記工程を、真空中で連続しておこなうとともに、大気中に曝すことなくおこなう、膜厚測定用標準試料の製造方法。
【請求項8】
X線光電子分光法を用いて試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する方法であって、
請求項1乃至6いずれかに記載の膜厚測定用標準試料中のLaを含む前記膜の膜厚を測定するステップと、
前記試料中のLaを含む膜の膜厚を測定するステップと、
膜厚測定用標準試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する前記ステップで得られた測定値に基づいて、試料中のLaを含む膜の膜厚を測定する前記ステップで得られた前記試料中のLaを含む膜の測定値を補正するステップと、
を含む、膜厚測定方法。
【請求項9】
Laを含む膜を有する半導体装置の製造方法であって、
基板上にLaを含む前記膜を形成する第1工程と、
Laを含む膜を形成する前記工程で得られた前記膜の膜厚を測定する第2工程と、
請求項1乃至6いずれかに記載の膜厚測定用標準試料中のLaを含む前記膜の膜厚を測定し、得られた測定値に基づいて、前記第2工程で得られた前記膜の膜厚の測定値を補正する第3工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、基板上に、高誘電率膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜を形成する工程と、をさらに含む、半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−198996(P2011−198996A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64008(P2010−64008)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】