説明

膜厚測定装置

【課題】光学系の収差の影響を排除して薄膜の膜厚の測定精度を向上させる。
【解決手段】光検出器7は、試料1である薄膜にスポット光を照射したときにおける該薄膜からの反射光の輝度を、対物レンズ2を介して検出する。リファレンスメモリ16には、対物レンズ2からの光軸方向の距離と該距離の位置より対物レンズ2へ向かう光の光検出器7により検出される輝度との関係を示す基準データが格納される。顕微鏡制御部11は、該薄膜の対物レンズ2からの距離を光軸方向に変化させて、該距離と光検出器7で検出される輝度との関係を示す測定データを取得する。膜位置検出部17は、基準データ及び測定データに基づいて、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの対物レンズ2からの距離を特定する。フィッティング計測部18は、膜位置検出部17により特定された距離に基づいて、該薄膜の膜厚を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡技術に関し、特に、試料である薄膜の膜厚を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ走査型共焦点顕微鏡を使用して試料である薄膜の厚み(膜厚)を測定する技術が従来より提案されている。
例えば、特許文献1には、共焦点光学系の焦点位置にイメージセンサを配置し、試料ステージを対物レンズに対して相対的に上下動させたときのイメージセンサの受光光量における2つのピーク位置に基づいて、膜厚を求めるという技術が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、積層されている薄膜における低反射率の膜面についてもピーク位置を確実に検出できるようにする技術として、試料と対物レンズとの相対的移動位置と、輝度データとの関係に対しフィッティング処理を実行し、当該処理後における当該相対的移動位置と当該輝度データとの関係から、当該輝度データのピーク位置を特定するという技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−210818号公報
【特許文献2】特開2002−39721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の技術では、対物レンズの有している収差が、膜面の実際の位置と受光光量(輝度データ)のピーク位置との関係に影響を及ぼして、本来は存在することがない擬似的なピークを生じさせるために、膜厚の測定結果の精度を低下させてしまうことがある。
【0005】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、光学系の収差の影響を排除して薄膜の膜厚の測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様のひとつである膜厚測定装置は、試料である薄膜にスポット光を照射したときにおける該薄膜からの反射光の輝度を、対物レンズを介して検出する光検出手段と、該対物レンズからの光軸方向の距離と該距離の位置より該対物レンズへ向かう光の該光検出手段により検出される輝度との関係を示す基準データが格納される基準データ格納手段と、該薄膜の該対物レンズからの距離を該光軸方向に変化させて、該距離と該光検出手段で検出される輝度との関係を示す測定データを取得する測定データ取得手段と、該基準データ及び該測定データに基づいて、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離を特定する輝度極大距離特定手段と、該極大距離特定手段により特定された距離に基づいて、該薄膜の膜厚を取得する膜厚取得手段と、を有するものである。
【0007】
なお、この膜厚測定装置において、該輝度極大距離特定手段は、該基準データと該測定データとの相関係数を、該基準データにおける該対物レンズからの距離を一様に変化させながら順次算出し、該相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離に基づいて、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離を特定するように構成することができる。
【0008】
なお、このとき、該輝度極大距離特定手段は、該相関係数における極大を、平滑化微分処理により特定するように構成するこができる。
また、このとき、該輝度極大距離特定手段は、該相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離の近傍の区間内において、最高の輝度を該測定データが呈しているときの該対物レンズからの距離を、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離として特定し、該近傍の区間は、所定値以上の輝度を該測定データが呈しているときの該対物レンズからの距離の区間のうち、該相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離を含む区間である、ように構成することができる。
【0009】
なお、このとき、該測定データに対しフィッティング処理を行って該測定データを近似する関数を求めるフィッティング処理手段を更に有し、該輝度極大距離特定手段は、該近傍の区間内において、最高の輝度を該関数が呈しているときの該対物レンズからの距離を、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離として特定する、ように構成することができる。
【0010】
また、このとき、該輝度極大距離特定手段は、該相関係数が極大の相関の強さを示す該対物レンズからの距離が1つのみの場合には、該距離の近傍の区間内において、極大の輝度の高さを該測定データが呈しているときの該対物レンズからの距離を、該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離として特定し、該近傍の区間は、所定値以上の相関の強さを該相関係数が呈しているときの該対物レンズからの距離の区間のうち、該相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離を含む区間である、ように構成することができる。
【0011】
また、この膜厚測定装置において、該基準データは、均一な光反射率を有する鏡面試料の該対物レンズからの距離と、該鏡面試料にスポット光を照射したときに該光検出手段により該対物レンズを介して検出される該鏡面試料からの反射光の輝度との関係を示すデータであるように構成することができる。
【0012】
また、この膜厚測定装置において、該基準データ格納手段には、該対物レンズの倍率に応じた複数の該基準データが格納されており、該輝度極大距離特定手段は、複数の該基準データのうち、該光検出手段による該輝度の検出時に用いていた該対物レンズの倍率についてのものに基づいて、該薄膜からの反射光の輝度が極大となるときの該対物レンズからの距離を特定する、ように構成することができる。
【0013】
また、この膜厚測定装置において、該基準データ格納手段には、該対物レンズの視野における該膜厚取得手段が該膜厚の取得対象とする位置に応じた複数の該基準データが格納されており、該輝度極大距離特定手段は、複数の該基準データのうち、該膜厚取得手段が取得する該膜厚の該対物レンズの視野における位置についてのものに基づいて、該薄膜からの反射光の輝度が極大となるときの該対物レンズからの距離を特定する、ように構成することができる。
【0014】
また、この膜厚測定装置において、該測定データに基づいて該薄膜の該光軸方向の断面画像を生成する断面画像生成手段と、所定の指示に応じて、該光軸方向にのみ拡大した該断面画像を生成する拡大断面画像生成手段と、該断面画像生成手段若しくは該拡大断面画像生成手段により生成された断面画像を表示する表示手段と、該表示手段に表示された断面画像に対して指定される該光軸方向の範囲を取得する範囲指定取得手段と、を更に有し、該膜厚取得手段は、該範囲指定取得手段が取得した範囲内で該薄膜の膜厚を取得する、ように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以上のように構成することにより、光学系の収差の影響が排除されて薄膜の膜厚の測定精度が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず図1について説明する。図1は本発明を実施する膜厚測定装置の構成を示している。
【0017】
図1において、対物レンズ2、対物レンズ切替部3、Z位置検出部4、Z位置制御部5、ハーフミラー6、光検出器7、ミラー8、レーザ光源9、レーザ光源制御部10、顕微鏡制御部11、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と略す)12、及びモニタ13により、走査型レーザ共焦点顕微鏡が構成されている。
【0018】
レーザ光源9より発せられるレーザ光はミラー8で反射した後、対物レンズ2を介し、薄膜である試料1へ、スポット光として照射される。
レーザ光源9にはレーザ光源制御部10が接続されている。レーザ光源制御部10はレーザ光源9を制御してレーザ光の強度を変化させることができ、また、ミラー8を二次元に振る制御を行うことでレーザ光源9から発せられるレーザ光を試料1上で二次元走査させる。
【0019】
このレーザ光を照射したときの試料1からの反射光は、対物レンズ2を介した後、ハーフミラー6で反射して光検出器7で集光される。この集光位置にはピンホール(不図示)が配されており、光検出器7が、このピンホールの通過した反射光の強度を輝度として検出する。
【0020】
対物レンズ切替部3には対物レンズ2が複数種類装着されており、レーザ光の光路に挿入される対物レンズ2を切り替えることができる。
Z位置検出器4は、Z軸方向(対物レンズ2の光軸方向)における試料1に対する対物レンズ2の相対的な位置(Z位置)を検出する。Z位置制御部5は、Z位置の検出結果を取得すると共に、対物レンズ2をZ軸方向に上下動させてZ位置の制御を行う。
【0021】
顕微鏡制御部11は、試料1である薄膜の対物レンズ2からの距離を光軸方向に変化させて当該距離と光検出器7で検出される輝度との関係を示す測定データ(IZデータ)を取得し、PC12へと転送する。更に、顕微鏡制御部11は、PC12からの指示に応じてレーザ光源制御部10、光検出器7、Z位置制御部5等の動作を制御して各種の情報の授受を行う。
【0022】
PC12は、ごく標準的な構成を有するコンピュータであり、全体の動作制御を行うMPUと、基本制御プログラムが格納されているROMと、MPUが制御プログラムを実行する際にワークメモリとして使用するRAMと、MPUによって実行される各種の制御プログラムや各種のデータを格納しておくハードディスク装置等の記憶部と、例えばキーボードとマウス等のポインティングデバイスとからなり、本装置の使用者(ユーザ)による操作に基づいて使用者からの各種の指示を取得する入力部と、当該入力部、モニタ13、顕微鏡制御部11、断面画像メモリ15、リファレンスメモリ16、及びZ位置メモリ14との間での各種のデータの授受を管理するインタフェース部とを有している。PC12は、記憶部に格納されている制御プログラムをMPUが読み込んで実行することにより、後述の膜厚測定処理を構成する各処理を実現し、IZデータに基づいて試料1である薄膜の光軸方向の断面画像を生成する断面画像生成部として、また、所定の指示に応じて光軸方向に拡大した当該断面画像を生成する拡大断面画像生成部として、更には、モニタ13に表示された断面画像に対して指定される光軸方向の範囲を取得する範囲指定取得部として、それぞれ機能する。更に、PC12は、記憶部に格納されている制御プログラムをMPUが読み込んで実行することにより、光検出器7からの信号から画像を生成する処理を行うと共に、画像データの保存、再生、編集などといった各種の処理を担う。
【0023】
モニタ13は、PC12の画像表示端末であり、試料1の断層画像や後述のIZカーブなどの各種画像の表示や必要な各種情報の表示等に使用される。
Z位置メモリ14は、顕微鏡制御部11からPC12へと送られてきたIZデータを格納しておくメモリである。
【0024】
断面画像メモリ15は、PC12により生成された断面画像の画像データを格納しておくメモリである。
リファレンスメモリ16は、後述するリファレンスデータを格納しておくメモリである。
【0025】
膜位置検出部17は、PC12により生成された断面画像に対して指定される光軸方向の範囲内のIZデータとリファレンスメモリ15に格納しておいたリファレンスデータとに基づいて、当該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの対物レンズ2からの距離を特定し、当該距離の位置を試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。
【0026】
フィッティング計測部18は、IZデータに対しフィッティング処理を行ってIZデータを近似する関数を求め、膜位置検出部17による特定結果により定まる後述の所定の区間内において最高の輝度を当該関数が呈しているときの対物レンズ2からの距離を、当該薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの対物レンズ2からの距離として特定して、当該距離の位置を試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。そして、この特定された距離に基づいて当該薄膜の膜厚を取得する。また、フィッティング計測部18は、フィッティング処理を行わない場合には、膜位置検出部17により特定された距離に基づいて当該薄膜の膜厚を取得する。
【0027】
IZカーブ作成部19は、PC12により生成された断面画像に対して指定される光軸方向の範囲内のIZデータに基づいて、当該薄膜の対物レンズ2からの距離と光検出器7により検出される輝度との関係を示すグラフ(IZカーブ)を作成する。
【0028】
本発明を実施する膜厚測定装置は、以上の構成を有している。
次に、この膜厚測定装置により行われる試料1である薄膜の膜厚の測定手法について説明する。
【0029】
まず、膜厚の測定を行う前に、リファレンスデータの取得を行う。
リファレンスデータは、対物レンズ2からの光軸上の距離と当該距離の位置より対物レンズ2へ向かう光の光検出器7により検出される輝度との関係を示す基準データである。
【0030】
リファレンスデータを取得するには、図1の膜厚測定装置において、例えば試料1としてミラー(均一な光反射率を有する鏡面試料)を載置した上でユーザがPC12の入力部を操作して顕微鏡制御部11へ指示を与え、レーザ光源制御部10及びZ位置制御部5を制御させて、レーザ光源9から発せられるレーザ光を試料1であるミラー上で二次元走査させながら、対物レンズ2をZ軸方向に上下動させる。そして、このときに光検出器7で検出される当該ミラーからの反射光の輝度を顕微鏡制御部11に取得させ、対物レンズ2から試料1であるミラーまでの距離(Z位置)と当該ミラーから対物レンズ2へ向かう反射光の光検出器7により検出される輝度Iとの関係を示すデータを、リファレンスデータとしてPC12へ転送させる。PC12は、受け取ったリファレンスデータを、リファレンスメモリ16に格納しておく。
【0031】
リファレンスデータのデータ例を図2に示す。同図は、リファレンスデータをIZ座標上に表したものである。ここで、横軸はZ位置、すなわち対物レンズ2から試料1であるミラーまでの距離を示しており、縦軸は輝度I、すなわち、光検出器7により検出された、当該ミラーから対物レンズ2へ向かう反射光の輝度である。
【0032】
図2に示した曲線を参照すると、幾つかのピーク(ミラーからの反射光の輝度が極大の高さとなる点)を見つけることができる。一般に、このピークのうちの最大のもの(ミラーからの反射光の輝度が最高となる点)のZ位置が、対物レンズ2から試料1であるミラーまでの真の距離を示している。なお、この他のピークは、対物レンズ2の有している収差が生じさせている擬似的なピークである。以降、この擬似的なピークを「擬似ピーク」と称することとする。
【0033】
なお、対物レンズ2の収差の影響は対物レンズの種類(例えば、倍率等)により異なるので、リファレンスメモリ16には、対物レンズ2の種類(例えば、倍率等)に応じた複数のリファレンスデータを格納しておくようにする。また、対物レンズ2の収差の影響は、X方向(対物レンズ光軸方向に垂直な方向)の位置(X位置)や、Y方向(対物レンズ光軸方向に垂直な方向)の位置(Y位置)によっても異なるので、リファレンスメモリ16には、対物レンズ2の視野において試料1である薄膜の膜厚の取得対象とする位置に応じた複数のリファレンスデータを格納しておくようにする。なお、本実施形態では、X位置に応じ、1つの対物レンズ2に対し、視野の中央部と、視野の両端部とで計3種類のリファレンスデータを、リファレンスメモリ16に格納しておくようにしているが、Y位置に応じ、1つの対物レンズ2に対し、視野の中心部と、視野の両端部とで計3種類のリファレンスデータを、リファレンスメモリ16に格納しても良いし、また、リファレンスデータの種類は、3種類よりも少なくても、多くても良い。
【0034】
以上のようにしてリファレンスデータの取得が完了すると、次に、図1の膜厚測定装置において、膜厚測定の対象である薄膜を試料1として載置し、ユーザがPC12の入力部を操作して顕微鏡制御部11へ指示を与え、レーザ光源制御部10及びZ位置制御部5を制御させて、レーザ光源9から発せられるレーザ光を試料1上で二次元走査させながら、対物レンズ2をZ軸方向に上下動させる。そして、このときに光検出器7で検出される試料1からの反射光の輝度を顕微鏡制御部11に取得させ、対物レンズ2から試料1までの距離(Z位置)と試料1から対物レンズ2へ向かう反射光の光検出器7により検出される輝度Iとの関係を示すデータを、IZデータとしてPC12へ転送させる。PC12は、受け取ったIZデータを、Z位置メモリ14に格納しておく。
【0035】
次に、PC12は、膜厚測定の対象とする薄膜の位置をユーザに指定させる際に利用されるXZ画像をIZデータに基づいて生成する。
XZ画像は、薄膜のZ方向の断面画像である。従って、顕微鏡制御部11は、対物レンズ2の視野内におけるX方向の各位置について、当該位置毎のIZデータを取得しておくようにし、PC12は、X位置及びZ位置で特定されるXZ座標上の点に、IZデータにおいてX位置及びZ位置に対応付けられている輝度の画素を配置することで、XZ画像を生成する。なお、本実施形態では、XZ画像を生成するようにしたが、対物レンズ2の視野内におけるY方向の各位置について、当該位置毎のIZデータを取得しておくようにし、PC12は、Y位置及びZ位置で特定されるYZ座標上の点に、IZデータにおいてY位置及びZ位置に対応付けられている輝度の画素を配置することで、YZ画像を生成するようにしても良い。
【0036】
PC12は、生成されたXZ画像をモニタ13に表示すると共に、このXZ画像の画像データを断面画像メモリ15に格納する。
ユーザは、入力部を操作して、モニタ13に表示されているXZ画像に対し、膜厚測定の対象とする薄膜のX位置を指定する。すると、PC12は、このX位置のIZデータと、このX位置での膜厚測定に使用するリファレンスデータとを膜位置検出部17に与える。
【0037】
膜位置検出部17は、薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの対物レンズ2からの距離を特定するために、まず、与えられたリファレンスデータとIZデータとの相関係数を、リファレンスデータにおける対物レンズ2からの距離を一様に変化させながら順次算出する。図3は、この相関係数の算出の様子を示したものである。
【0038】
図3において、IZ座標上に示されている実線の曲線は、膜位置検出部17に与えられたIZデータについてのIZカーブ(Z位置と光検出器7により検出される輝度Iとの関係を示すデータを示す曲線)であり、点線の曲線は、リファレンスデータを示している。
【0039】
膜位置検出部17は、図3に矢印で示されているように、リファレンスデータを図中のAの位置からBの位置へと、その曲線形状を維持したままで移動させながら(すなわち、リファレンスデータにおける対物レンズ2からの距離を一様に変化させながら)、リファレンスデータとIZカーブとの相関係数値を各Z位置において算出する。図3に示されている破線の曲線は、このようにして算出された相関係数値とZ位置との関係をグラフ化したものである。
【0040】
相関係数ρx,yの算出は、下記の式を計算することにより行われる。
【0041】
【数1】

但し、上記[数1]式において、
【0042】
【数2】

である。ここで、xj及びyjは、それぞれZ位置がj(但し、j=1、…、n)であるときのIZデータ及び移動時のリファレンスデータであり、μx及びμyは、それぞれxj及びyjの平均値である。なお、相関係数ρx,yは正規化されており、
【0043】
【数3】

が成立する。
【0044】
次に、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置、すなわち、相関係数が極大の相関の強さを示したときのZ位置を検出する。このZ位置の検出は、相関係数値の曲線に含まれるノイズの影響を軽減するために、平滑化微分法を採用する。
【0045】
平滑化微分法は、曲線のピークの判定対象点を中心として対称となる前後の点で値の差を求め、その差に重み付けを与えて積算することで、その判定対象点の微分値を求めるというものである。
【0046】
今、判定対象点I(=1、2、3、…)における相関係数値をD(I)とすると、判定対象点Iにおける平滑化微分法による微分値P(I)は、下記の式を計算することにより求まる。
【0047】
【数4】

なお、上記[数4]式において、Jは平滑化区間である。
【0048】
図4は、例えばJ=5としたときの平滑化における重みを図示したものである。
膜位置検出部17は、Iの増加に対し、以上のようして求めた微分値P(I)の値の符号が正から負へと変化したときのIのZ位置を、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置として検出する。
【0049】
次に、膜位置検出部17は、以上のようにして求めた、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置に基づいて、試料1である薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの対物レンズ2から当該薄膜までの距離を特定する。このために、膜位置検出部17は、当該Z位置の近傍の区間内において、最高の輝度をIZデータが呈しているときの対物レンズ2からの距離を、反射光の輝度が極大の高さ(ピーク)となるときの距離として特定する。この膜位置検出部17の動作について、図5を用いて説明する。
【0050】
図5は、膜位置検出部17に与えられたIZデータを表すIZカーブ例と、このIZデータ及び図2に例示したリファレンスデータに基づいて算出された相関係数値の曲線とを示したものである。ここで、実線の曲線がIZカーブであり、破線の曲線が相関係数値の曲線である。
【0051】
この図5の例では、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置の近傍の区間内において、最高の輝度をIZデータが呈しているときのZ位置として、「115」及び「210」の2つの位置を、反射光の輝度がピークとなるときの距離として特定し、この位置を、試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。
【0052】
以上のようにして膜位置検出部17が反射光の輝度がピークとなるときの距離を特定する一方で、フィッティング計測部18は、膜位置検出部17に与えられたIZデータに対しフィッティング処理を行ってIZデータを近似する関数を求める。
【0053】
本実施形態においては、理想曲線としてガウス曲線を使用する。フィッティング計測部18は、フィッティング処理として、このガウス曲線とIZデータである輝度値との誤差距離が最小になるように曲線近似を行うことで、この近似した曲線を表す関数を数学的に求めることで、IZデータを近似する関数を求める。
【0054】
フィッティング計測部18は、以上のようにしてIZデータを近似する関数を求めたときには、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置の近傍の区間内において、最高の輝度をその関数が呈しているときのZ位置を、反射光の輝度がピークとなるときの距離として特定し、この位置を、試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。このように、試料1である薄膜のZ方向位置の検出にフィッティング処理を用いることにより、離散データであるIZデータからZ位置を特定する場合よりも、反射光の輝度がピークとなるときのZ位置を特定するときの精度の向上が期待できる。
【0055】
なお、膜位置検出部17及びフィッティング計測部18は、所定値以上の輝度をIZデータが呈しているときのZ位置の区間のうち、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置を含む区間を、当該ピークのZ位置の近傍の区間とする。
【0056】
その後、フィッティング計測部18は、以上のようにして特定されたZ位置の値の差を算出する。こうして得られた差の値が、試料1である薄膜の測定対象位置の膜厚の測定結果となる。なお、ここで、フィッティング計測部18は、ユーザからの指示によりフィッティング処理を行わない場合には、膜位置検出部17により特定されたZ位置を膜位置検出部17から取得し、取得したZ位置の値の差を算出して、試料1である薄膜の測定対象位置の膜厚の測定結果を求める。求められた膜厚の測定結果はPC12へと送られ、PC12はこの測定結果の値をモニタ13に表示する。
【0057】
図1の膜厚測定装置による膜厚の測定は、以上のようにして行われる。
なお、図5に例示した相関係数値の曲線では、2つのピークが明確に現れているが、例えば試料1である薄膜における測定対象部位の膜厚が極めて薄い場合には、この2つのピークが近づくために、相関係数値の曲線にピークが1つしか現れない場合がある。この場合には、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線における唯一のピークのZ位置の近傍の区間内で、IZデータにおいて輝度がピークを呈しているときのZ位置を、反射光の輝度がピークとなるときの距離として特定し、この位置を、試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。この膜位置検出部17の動作について、図6を用いて説明する。
【0058】
図6は、図5と同様、膜位置検出部17に与えられたIZデータを表すIZカーブ例と、このIZデータ及び図2に例示したリファレンスデータに基づいて算出された相関係数値の曲線とを示したものである。ここで、実線の曲線がIZカーブであり、破線の曲線が相関係数値の曲線である。
【0059】
この図5の例では、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線における唯一のピークのZ位置の近傍の区間内において、IZデータにおいて輝度がピークを呈しているときのZ位置として、「145」及び「177」の2つの位置を、反射光の輝度がピークとなるときの距離として特定し、この位置を、試料1である薄膜のZ方向位置として検出する。
【0060】
なお、膜位置検出部17は、所定値以上の相関の強さを相関係数が呈しているときのZ位置の区間のうち、相関係数値の曲線における唯一のピークのZ位置を含む区間を、当該ピークのZ位置の近傍の区間とする。
【0061】
次に、図1に示した膜厚測定装置により行われる膜厚測定処理について説明する。
なお、以下の説明では、対物レンズ2の倍率と対物レンズ2の視野における膜厚の取得対象位置とに応じた全てのリファレンスデータが、既にリファレンスメモリ15に格納されているものとする。
【0062】
まず、膜厚測定の開始に先立ち、ユーザがPC12の入力部を操作して膜厚測定のための設定要求を指示すると、PC12は、図7に例示したパラメータ設定画面をモニタ13に表示させる。ユーザは、入力部を操作してこのパラメータ設定画面に示されている各パラメータの値を変更した後に、「設定」ボタンアイコンを押下する操作を行うと、PC12は、当該変更後の値を各パラメータの値として設定する。
【0063】
ここで、パラメータ設定画面に示されている各パラメータについて、画面の上部に配置されているものから順に説明する。
「平均回数」パラメータは、前述した平滑化微分法による微分値P(I)の算出のときの平滑化区間を設定するためのものである。
【0064】
「最小相関係数」パラメータは、膜位置検出部17が、相関係数値の曲線からピークのZ位置を検出する際の検出範囲を設定するためのパラメータである。ここで、「最小相関係数」パラメータにより、相関係数値の曲線における検出範囲とする相関係数の下限値が設定される。つまり、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線において、相関係数値が「最小相関係数」パラメータの値以上である範囲から、当該曲線におけるピークのZ位置を検出する。
【0065】
「最小輝度値」パラメータは、膜位置検出部17が、反射光の輝度がピークとなるときのZ位置を、IZデータから検出する際の検出範囲とする輝度の下限値が設定される。つまり、膜位置検出部17は、IZデータにおいて、反射光の輝度が「最小輝度値」パラメータの値以上である区間のうち、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置を含む区間を、上記の「近傍の区間」として設定する。
【0066】
「輝度ピークサーチ」における「最小相関係数」パラメータは、相関係数値の曲線にピークが1つしか現れない場合に、膜位置検出部17が、IZデータから反射光の輝度がピークとなるときのZ位置を検出する際の検出範囲である、相関係数値の曲線におけるピークのZ位置の近傍の区間を設定するためのパラメータである。ここで、この「最小相関関数」パラメータにより、検出範囲とする相関係数の下限値が設定される。つまり、膜位置検出部17は、相関係数値の曲線において、相関係数値がこの「最小相関係数」パラメータの値以上である区間のうち、当該曲線における唯一のピークのZ位置を含む区間を、上記の「近傍の区間」として設定する。
【0067】
「輝度ピークサーチ」における「最小輝度値」パラメータは、相関係数値の曲線にピークが1つしか現れない場合に、膜位置検出部17が上記の「近傍の区間」から検出した反射光の輝度がピークとなるZ位置を、試料1である薄膜のZ位置として認めるか否かを膜位置検出部17が決定する基準を設定するためのパラメータである。この「最小輝度値」パラメータには、薄膜のZ位置として認める輝度値の下限値が設定される。つまり、膜位置検出部17は、「近傍の区間」から検出した反射光の輝度のピーク値が、この「最小輝度値」パラメータの値以上であれば、このピークを呈するZ位置を、薄膜のZ位置として認める。
【0068】
以上の各パラメータの設定完了後、ユーザがPC12の入力部を操作して膜厚測定の開始を指示すると、図1に示した膜厚測定装置は、膜厚測定処理を開始する。図8A、図8B、及び図8Cは、この膜厚測定処理の処理内容をフローチャートで示したものである。
【0069】
膜厚測定処理が開始されると、まず、図8AのS101において、ユーザがPC12の入力部を操作して行う、IZデータを取得するZ位置の範囲(Z位置制御部5が対物レンズ2を上下動させるときの開始位置及び終了位置)の指示を取得する処理をPC12が行う。
【0070】
次に、S102では、PC12からの指示に応じ、膜位置検出部17が、光路に現在挿入されている対物レンズ2の倍率に応じた全てのリファレンスデータをリファレンスメモリ16から読み出す処理を行う。
【0071】
次に、S103では、顕微鏡制御部11に指示を与え、Z位置制御部5を制御させて試料1である薄膜の対物レンズ2からの距離を光軸方向に変化させて、対物レンズ2の視野内における各X位置についてのIZデータを取得させてPC12へ転送させる処理をPC12が行う。これと共に、送られてきたIZデータをZ位置メモリ14に記憶させる処理をPC12が行う。
【0072】
次に、S104では、Z位置メモリ14に記憶されているIZデータを読み出し、読み出したIZデータに基づいて、試料1である薄膜のXZ画像(光軸方向の断面画像)を前述したようにして作成する処理をPC12が行う。
【0073】
次に、S105では、ユーザがPC12の入力部を操作して行う、XZ画像のZ軸方向(光軸方向)への拡大指示を取得しているか否かを判定する処理をPC12が行う。
このS105の判定処理において、当該指示を取得していると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S106に処理を進めて、S104の処理により作成したXZ画像を光軸方向(Z軸方向)にのみ所定倍拡大する処理をPC12が行い、続くS107において、拡大したXZ画像をモニタ13に表示させる処理をPC12が行う。一方、S105の判定処理において、当該指示を取得していないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S106の処理を行うことなくS107に処理を進めて、S104の処理により作成したXZ画像をモニタ13に表示させる処理をPC12が行う。
【0074】
ここで図9A及び図9Bについて説明する。図9A及び図9Bは、膜厚測定処理によりモニタ13に表示される画面例を示している。ここで、図9Aは、XZ画像のZ軸方向への拡大指示がない場合の画面例であり、図9Bは、当該拡大指示がある場合の画面例である。
【0075】
図9Aにおいて、薄膜の光軸方向の断面画像であるXZ画像21aは、Z軸方向への拡大を行っていない。これに対し、図9Bに示すXZ画像21bは、XZ画像21aをZ軸方向にのみ拡大したものである。なお、図9AにおけるIZカーブ表示22aは、XZ画像21aに対し指定されている計測位置(X方向の位置)におけるIZデータについてのIZカーブであり、図9BにおけるIZカーブ表示22bは、XZ画像21bに対し指定されている計測位置におけるIZデータについてのIZカーブである。
【0076】
このように、試料1である薄膜の断面画像を拡大して表示することにより、例えば試料1である薄膜における測定対象部位の膜厚が極めて薄い場合でも、その膜の境界位置をユーザが容易に視認することができる。また、試料1である薄膜の断面画像を光軸方向にのみ拡大し、他の方向には拡大しないで表示することで、X方向上で行う当該薄膜における膜厚計測位置(IZカーブの描画位置)の設定のための入力操作量を、当該断面画像を拡大しないで表示する場合から増加させてしまう(例えば計測位置を表示させるための拡大断面画像のX方向へのスクロール操作など)ことが無い。
【0077】
図8Aの説明へ戻る。
S107の処理に続くS108では、ユーザがPC12の入力部を操作して行う、表示中のXZ画像に対し指定されるIZカーブの描画位置(図9A及び図9Bにおける「計測位置」)の指示を取得する処理をPC12が行う。
【0078】
次に、S109では、IZカーブの描画位置の指示を取得したか否かを判定する処理をPC12が行う。ここで、当該指示を取得したと判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS110(図8B)に処理を進める。一方、当該指示を取得していないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS108へ処理を戻し、当該指示の取得処理を繰り返す。
【0079】
処理は図8Bに移り、S110では、S108の処理により取得した指示に係るIZカーブの描画位置のIZデータをZ位置メモリ14から読み出し、読み出したIZデータに基づいてIZカーブを作成する処理をIZカーブ作成部19が行い、作成されたIZカーブのデータを受け取って、図9A及び図9Bに例示したIZカーブ表示22a及び22bのようにモニタ13に当該IZカーブを表示する処理をPC12が行う。
【0080】
次に、S111では、S102(図8A)の処理により読み出していた、光路に現在挿入されている対物レンズ2の倍率に応じたリファレンスデータから、S108の処理によりPC12が取得した指示に係るIZカーブの描画位置に対応するX位置についてのものを選択する処理を、膜位置検出部17が行う。
【0081】
次に、S112では、リファレンスデータにおける対物レンズ2からの距離を一様に変化させながら、リファレンスデータとIZカーブとの相関係数値を各Z位置において算出する処理を膜位置検出部17が前述したようにして行う。
【0082】
次に、S113では、相関係数値の曲線におけるピーク(極大の相関の強さ)のZ位置を検出する処理を、膜位置検出部17が、前述したように平滑化微分法を用いて行う。なお、この処理において、図7に例示したパラメータ設定画面を利用して設定した「平均回数」パラメータの設定値が用いられる。
【0083】
次に、S114では、S113の処理により検出されたピークのZ位置の近傍の区間内において、最高の輝度をIZデータが呈しているときのZ位置をIZデータから抽出する処理を、膜位置検出部17が行う。なお、このときの「近傍の区間」は、図7に例示したパラメータ設定画面を利用して設定した「最小輝度値」パラメータ(図7の画面で上の方に配置されているもの)の値に基づき、前述したようにして設定される。
【0084】
次に、S115では、S113のピーク検出処理において、相関係数値の曲線におけるピークが2つ以上検出されていたか否かを判定する処理を膜位置検出部17が行う。ここで、ピークが2つ以上検出されていたと判定したとき(判定結果Yesのとき)にはS118に処理を進める。一方、ピークが1つのみ検出されていたと判定したとき(判定結果Noのとき)にはS116に処理を進める。
【0085】
S116では、唯1つである相関係数値の曲線のピークのZ位置の近傍の区間、すなわち、当該ピークのZ位置を含み、相関係数値が、図7に例示したパラメータ設定画面を利用して設定した、「輝度ピークサーチ」における「最小相関係数」パラメータの値以上である区間を決定する処理を膜位置検出部17が行う。
【0086】
S117では、S116の処理によって決定された近傍の区間内で、IZデータにおいて輝度がピーク(極大の高さ)を呈しているときのZ位置を、IZデータから抽出する処理を、膜位置検出部17が行う。
【0087】
S118では、S114及びS117の処理により抽出された全てのZ位置(すなわち、膜の位置を示すZ位置)の情報を膜位置検出部17から受け取り、モニタ13に表示中のIZカーブに当該Z位置を全て表示させる処理をPC12が行う。
【0088】
このS118の処理による、IZカーブ上での膜位置の表示例を図10に示す。この表示例では、膜位置を示しているZ位置を、直線によりIZカーブ上に表示している。
なお、図10の表示例では、ユーザがPC12の入力部を操作して、モニタ13の表示画面上で当該直線にカーソルを近づけると、PC12が、この直線で示されているZ位置における相関係数値と、IZデータにおける輝度値とを、ツールチップで表示する処理を行う例を示している。
【0089】
処理は図8Cへ進み、S119では、ユーザがPC12の入力部を操作して行う、IZカーブ上に表示中のZ位置(膜位置)より、膜厚測定の対象とするZ位置の選択を示す指示を取得する処理をPC12が行う。
【0090】
次に、S120では、膜厚測定の対象とするZ位置の選択の指示を取得したか否かを判定する処理をPC12が行う。ここで、当該指示を取得したと判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS121に処理を進める。一方、当該指示を取得していないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS119へ処理を戻し、当該指示の取得処理を繰り返す。
【0091】
次に、S121では、ユーザがPC12の入力部を操作して事前に行う、フィッティング処理の実行指示を受けていたか否かを判定する処理をPC12が行う。ここで、当該実行指示を受けていたと判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS122に処理を進める。一方、当該実行指示を受けていたと判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS123に処理を進める。
【0092】
次に、S122では、膜位置検出部17に与えられたIZデータを近似する関数を求めるフィッティング処理をフィッティング計測部18が前述したようにして行う。そして、S119の処理により取得した指示に係る膜厚測定の対象とするZ位置を、フィッティング処理により得られた関数に基づいて得られるZ位置に変更する処理をフィッティング計測部18が行う。
【0093】
次に、S123では、S119の処理により取得した指示に係る膜厚測定の対象とするZ位置の差、若しくは、S122の処理による変更後のZ位置の値の差を計算することで、膜厚測定対象の膜厚を算出する処理をフィッティング計測部18が行う。
【0094】
次に、S124では、S123の算出結果を、測定対象であるZ位置の膜厚の測定結果として、モニタ13に表示する処理をPC12が行い、その後は、この膜厚測定処理を終了する。
【0095】
以上の膜厚測定処理を図1の膜厚測定装置が行うことにより、試料1である薄膜の膜厚が測定される。
以上のように、本実施形態に係る膜厚測定装置によれば、光学系の収差の影響が排除されるので、薄膜の膜厚の測定精度が向上する。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明を実施する膜厚測定装置の構成を示す図である。
【図2】リファレンスデータのデータ例を示す図である。
【図3】相関係数の算出の様子を示した図である。
【図4】平滑化における重みを示す図である。
【図5】IZカーブと相関係数値の曲線との第一の例を示した図である。
【図6】IZカーブと相関係数値の曲線との第二の例を示した図である。
【図7】パラメータ設定画面の例を示す図である。
【図8A】膜厚測定処理の処理内容をフローチャートで示した図(その1)である。
【図8B】膜厚測定処理の処理内容をフローチャートで示した図(その2)である。
【図8C】膜厚測定処理の処理内容をフローチャートで示した図(その3)である。
【図9A】膜厚測定処理によりモニタに表示される画面の第一の例を示す図である。
【図9B】膜厚測定処理によりモニタに表示される画面の第二の例を示す図である。
【図10】IZカーブ上での膜位置の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 試料
2 対物レンズ
3 対物レンズ切替部
4 Z位置検出部
5 Z位置制御部
6 ハーフミラー
7 光検出器
8 ミラー
9 レーザ光源
10 レーザ光源制御部
11 顕微鏡制御部
12 パーソナルコンピュータ
13 モニタ
14 Z位置メモリ
15 断面画像メモリ
16 リファレンスメモリ
17 膜位置検出部
18 フィッティング計測部
19 IZカーブ作成部
21a、21b XZ画像
22a、22b IZカーブ表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料である薄膜にスポット光を照射したときにおける該薄膜からの反射光の輝度を、対物レンズを介して検出する光検出手段と、
前記対物レンズからの光軸方向の距離と該距離の位置より該対物レンズへ向かう光の前記光検出手段により検出される輝度との関係を示す基準データが格納される基準データ格納手段と、
前記薄膜の前記対物レンズからの距離を前記光軸方向に変化させて、該距離と前記光検出手段で検出される輝度との関係を示す測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記基準データ及び前記測定データに基づいて、前記薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの前記対物レンズからの距離を特定する輝度極大距離特定手段と、
前記極大距離特定手段により特定された距離に基づいて、前記薄膜の膜厚を取得する膜厚取得手段と、
を有することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項2】
前記輝度極大距離特定手段は、前記基準データと前記測定データとの相関係数を、該基準データにおける前記対物レンズからの距離を一様に変化させながら順次算出し、該相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離に基づいて、前記薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの該対物レンズからの距離を特定することを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
前記輝度極大距離特定手段は、前記相関係数における極大を、平滑化微分処理により特定することを特徴とする請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
前記輝度極大距離特定手段は、前記相関係数が極大の相関の強さを示したときの前記対物レンズからの距離の近傍の区間内において、最高の輝度を前記測定データが呈しているときの該対物レンズからの距離を、前記薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの前記対物レンズからの距離として特定し、
前記近傍の区間は、所定値以上の輝度を前記測定データが呈しているときの前記対物レンズからの距離の区間のうち、前記相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離を含む区間である、
ことを特徴とする請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
前記測定データに対しフィッティング処理を行って該測定データを近似する関数を求めるフィッティング処理手段を更に有し、
前記輝度極大距離特定手段は、前記近傍の区間内において、最高の輝度を前記関数が呈しているときの該対物レンズからの距離を、前記薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの前記対物レンズからの距離として特定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
前記輝度極大距離特定手段は、前記相関係数が極大の相関の強さを示す前記対物レンズからの距離が1つのみの場合には、該距離の近傍の区間内において、極大の輝度の高さを前記測定データが呈しているときの該対物レンズからの距離を、前記薄膜からの反射光の輝度が極大の高さとなるときの前記対物レンズからの距離として特定し、
前記近傍の区間は、所定値以上の相関の強さを前記相関係数が呈しているときの前記対物レンズからの距離の区間のうち、前記相関係数が極大の相関の強さを示したときの該対物レンズからの距離を含む区間である、
ことを特徴とする請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項7】
前記基準データは、均一な光反射率を有する鏡面試料の前記対物レンズからの距離と、該鏡面試料にスポット光を照射したときに前記光検出手段により該対物レンズを介して検出される該鏡面試料からの反射光の輝度との関係を示すデータであることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項8】
前記基準データ格納手段には、前記対物レンズの倍率に応じた複数の前記基準データが格納されており、
前記輝度極大距離特定手段は、複数の前記基準データのうち、前記光検出手段による前記輝度の検出時に用いていた前記対物レンズの倍率についてのものに基づいて、前記薄膜からの反射光の輝度が極大となるときの該対物レンズからの距離を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項9】
前記基準データ格納手段には、前記対物レンズの視野における前記膜厚取得手段が前記膜厚の取得対象とする位置に応じた複数の前記基準データが格納されており、
前記輝度極大距離特定手段は、複数の前記基準データのうち、前記膜厚取得手段が取得する前記膜厚の前記対物レンズの視野における位置についてのものに基づいて、前記薄膜からの反射光の輝度が極大となるときの該対物レンズからの距離を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項10】
前記測定データに基づいて前記薄膜の前記光軸方向の断面画像を生成する断面画像生成手段と、
所定の指示に応じて、前記光軸方向にのみ拡大した前記断面画像を生成する拡大断面画像生成手段と、
前記断面画像生成手段若しくは前記拡大断面画像生成手段により生成された断面画像を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された断面画像に対して指定される前記光軸方向の範囲を取得する範囲指定取得手段と、
を更に有し、
前記膜厚取得手段は、前記範囲指定取得手段が取得した範囲内で前記薄膜の膜厚を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定装置。

【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9B】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9A】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−133744(P2009−133744A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310606(P2007−310606)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】