説明

自動整合装置及びプラズマ処理装置

【課題】オートマッチング動作において不必要な速度低下やハンチングを招くことなく短時間で効率よく実質的な整合状態を確立できるようにする。
【解決手段】第2の整合アルゴリズムでは、インピーダンス座標上で、第1または第2基準線C1S,C2Sと直交する第3の基準線TC1SまたはTC2Sを動作点移動制御の目標にして、C1座標軸またはC2座標軸上で動作点ZpをたとえばZp(7)→Zp(8)→Zp(9)と移動させる。動作点Zp(9)の座標位置は原点O(整合点ZS)に非常に近い実現可能なベストの擬似的整合点ZBであり、この位置で動作点Zpの移動を止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源と負荷との間で自動的にインピーダンスの整合をとる自動整合装置およびそれを用いるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスには、プラズマを利用してエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理を行うプラズマ処理装置が多く使われている。プラズマ処理装置において、プラズマの生成に高周波を用いる場合は、チャンバの中または外に高周波電極(またはアンテナ)を配置して、高周波給電部より該高周波電極に一定周波数(通常13.56MHz以上)の高周波を給電するようにしている。また、プラズマから被処理基板に入射するイオンのエネルギーを自在に制御する場合は、基板を支持する載置台に高周波電極を使用し、高周波給電部より該高周波電極に一定周波数(通常13.56MHz以下)の高周波を給電するようにしている。
【0003】
この種の高周波給電部には、高周波を出力する高周波電源だけでなく、高周波電源側のインピーダンスと負荷側(電極、プラズマ、チャンバ)のインピーダンスとの間で整合(マッチング)をとるための整合装置も用いられる。高周波電源および伝送ケーブルは通常50Ωの純抵抗出力になるように設計されるため、整合回路も含めた負荷側のインピーダンスが50Ωになるように、つまり反射波の電力が最小となるように、整合装置内のインピーダンスが設定または調節される。
【0004】
一般に、プラズマ処理装置に用いられる整合装置は、複数の可変リアクタンス素子を含み、ステッピングモータ等により可変リアクタンス素子の値またはインピーダンス・ポジションを選択することにより、負荷側インピーダンスを可変制御できる自動整合装置として構成されている。
【0005】
この種の自動整合装置は、プラズマ処理中に圧力変動などによってプラズマ負荷のインピーダンスが変わると、それら可変リアクタンス素子のインピーダンス・ポジションを可変調整して自動的に負荷側インピーダンスを補正して整合ポイント(50Ω)に合わせるようになっている。このオートマッチングを行うため、自動整合装置は、負荷側インピーダンスを測定する回路や、負荷側インピーダンスの測定値を整合ポイント(50Ω)に一致させるようにステッピングモータを通じて各可変リアクタンス素子のインピーダンス・ポジションを可変制御するコントローラ等を備えている。
【0006】
一般的に、この種の自動整合装置は、整合回路内に、可変リアクタンス素子として、高周波電源に対して負荷と並列および直列にそれぞれ接続される2つの可変コンデンサを備える。ここで、負荷と並列に接続される第1可変コンデンサの静電容量は、負荷側インピーダンスの絶対値を可変調整するのに支配的に作用する。一方、負荷と直列に接続される第2可変コンデンサの静電容量は、負荷側インピーダンスの位相(RF電圧とRF電流の位相差)を可変調整するのに支配的に作用する。
【0007】
典型的な従来の自動整合装置は、インピーダンス測定回路より得られる負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値を整合ポイントの値つまり絶対値基準値および位相基準値とそれぞれ比較して絶対値誤差および位相誤差を求め、絶対値誤差を零に近づけるように第1可変コンデンサの静電容量(容量ポジション)を可変し、位相誤差を零に近づけるように第2の可変コンデンサの静電容量(容量ポジション)を可変するようにしている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−209789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プラズマ処理装置においては、チャンバ内の圧力変動などによってプラズマ負荷のインピーダンスが動的かつ不定に変化しやすい。このため、自動整合装置は、負荷側インピーダンスの変化に迅速かつ正確に追従できるオートマッチング動作を求められている。
【0010】
その点、上記のような従来の自動整合装置のように、インピーダンスの絶対値誤差および位相誤差を演算してそれらを零に近づけるように第1および第2可変コンデンサを直交的に役割分担させて可変制御するオートマッチング方式は、負荷側インピーダンスの調整における両可変コンデンサの作用の実態から大きくかけ離れているため、整合ポイント近傍への収束を短時間で確実に行うことは難しい。
【0011】
すなわち、実際には、第1可変コンデンサは負荷側インピーダンスの絶対値だけでなく位相にも作用し、第2可変コンデンサは負荷側インピーダンスの位相だけでなく絶対値にも作用する。したがって、絶対値誤差を零に近づけるように第1の可変コンデンサの容量ポジションを可変すると、負荷側インピーダンスの動作点は絶対値的には整合ポイントに近づくが、位相的には整合ポイントから離れることがある。一方で、位相誤差を零に近づけるように第2可変コンデンサの容量ポジションを可変すると、負荷側インピーダンスの動作点は位相的には整合ポイントに近づくが、絶対値的には整合ポイントから離れることがある。上記のような直交型のオートマッチング方式は、両可変コンデンサの作用の実態に則しておらず、しかも動作点を整合ポイント近傍に常時安定に収束させる確かなアルゴリズムをもたないため、ハンチングを起こしたり、整合がとれるまでに多くの時間を費やしている。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、オートマッチング動作において不必要な速度低下やハンチングを招くことなく短時間で効率よく実質的な整合状態を確立できるようにした自動整合装置およびそれを用いるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点における自動整合装置は、一定周波数の高周波を出力する高周波電源と前記高周波の供給を受ける負荷との間で自動的にインピーダンスの整合をとる自動整合装置であって、前記高周波電源に対して前記負荷と並列に接続される第1の可変コンデンサと、前記第1の可変コンデンサの静電容量を可変するための第1のステップ型容量可変機構と、前記高周波電源に対して前記負荷と直列に接続される第2の可変コンデンサと、前記第2の可変コンデンサの静電容量を可変するための第2のステップ型容量可変機構と、前記高周波電源の出力端子から見た負荷側のインピーダンスについてその絶対値および位相を測定するインピーダンス測定部と、前記インピーダンス測定部より得られる前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値に応じて、前記絶対値測定値および前記位相測定値をそれぞれ所定の絶対値基準値および位相基準値に可及的に近づけるように、前記第1および第2のステップ型容量可変機構を介して前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量を可変制御するコントローラとを具備する。そして、前記コントローラが、前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相を互いに直交する2つの座標軸とするインピーダンス座標上で、前記第1の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第1の傾きを有し、かつ前記絶対値基準値および前記位相基準値の座標位置で表わされる整合点を通る第1の基準線を目標にして、または前記第2の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第2の傾きを有し、かつ前記整合点を通る第2の基準線を目標にして、前記絶対値測定値および前記位相測定値の座標位置で表わされる動作点を前記整合点に対して第1の近接範囲内に近づけるように、前記第1および第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第1のマッチング制御部と、前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第1の近接範囲内に入った後に、前記第1または第2の基準線と直交し、かつ前記整合点を通る第3の基準線を目標として、前記動作点を前記整合点に対して第2の近接範囲内に近づけるように、前記第1または第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第2のマッチング制御部とを有する。
【0014】
上記第1の観点における自動整合装置では、インピーダンス座標上で、動作点が上記第1の近接範囲の外にあるときは、第1のマッチング制御部により動作点を整合点に向けて比較的大きな歩幅でステップ移動させる。そして、動作点が上記第1の近接範囲の中に入っているときは、第2のマッチング制御部を用いて、動作点を整合点に向けて比較的小さな歩幅でステップ移動させ、上記第2の近接範囲内に収束させる。
【0015】
本発明の第2の観点における自動整合装置は、一定周波数の高周波を出力する高周波電源と前記高周波の供給を受ける負荷との間で自動的にインピーダンスの整合をとる自動整合装置であって、前記高周波電源に対して前記負荷と並列に接続される第1の可変コンデンサと、前記第1の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第1のステップ型容量可変機構と、前記高周波電源に対して前記負荷と直列に接続される第2の可変コンデンサと、前記第2の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第2のステップ型容量可変機構と、前記高周波電源の出力端子から見た負荷側のインピーダンスについてその絶対値および位相を測定するインピーダンス測定部と、前記インピーダンス測定部より得られる前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値に応じて、前記絶対値測定値および前記位相測定値をそれぞれ所定の絶対値基準値および位相基準値に可及的に近づけるように、前記第1および第2のステップ型容量可変機構を介して前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量を可変制御するコントローラとを具備する。そして、前記コントローラが、前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相を互いに直交する2つの座標軸とするインピーダンス座標上で、前記第1の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第1の傾きを有し、かつ前記絶対値基準値および前記位相基準値の座標位置で表わされる整合点を通る第1の基準線を目標にして、または前記第2の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第2の傾きを有し、かつ前記整合点を通る第2の基準線を目標にして、前記絶対値測定値および前記位相測定値の座標位置で表わされる動作点を前記第1または第2の基準線に対して可及的に近づけるように、前記第1および第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第1のマッチング制御部と、前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第1または第2の基準線に対して可及的に近づいた後に、前記第1または第2の基準線と直交し、かつ前記整合点を通る第3の基準線を目標として、前記動作点を前記第3の基準線に可及的に近づけるように、前記第1または第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第2のマッチング制御部とを有する。
【0016】
上記第2の観点における自動整合装置では、インピーダンス座標上で、動作点が上記第1または第2の基準線から遠く離れているときは、第1のマッチング制御部により動作点を上記第1または第2の基準線に向けて比較的大きな歩幅でステップ移動させる。そして、動作点が上記第1または第2の基準線に可及的に近い位置まできたら、その後は、第2のマッチング制御部を用いて、動作点を整合点に向けて比較的小さな歩幅でステップ移動させ、上記第3の基準線に可及的に近づく位置に収束させる。
【0017】
本発明の第1の観点におけるプラズマ処理装置は、被処理基板を出し入れ可能に収容する真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器内で高周波放電により前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記高周波放電に用いられる一定周波数の高周波を出力する高周波電源と、前記高周波電源と前記プラズマ生成部との間に接続される本発明の自動整合装置とを有する。
【0018】
本発明の第2の観点におけるプラズマ処理装置は、被処理基板を出し入れ可能に収容する真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記処理容器内で前記基板を載置して保持する電極と、前記プラズマから前記電極上の前記基板に入射するイオンのエネルギーを制御するのに用いられる一定周波数の高周波を出力する高周波電源と、前記高周波電源と前記電極との間に接続される本発明の自動整合装置とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自動整合装置によれば、上記のような構成および作用により、オートマッチング動作において不必要な速度低下やハンチングを招くことなく短時間で効率よく実質的な整合状態を確立することができる。
【0020】
本発明のプラズマ処理装置によれば、本発明の自動整合装置を備えることにより、高周波を利用するプラズマ生成あるいはイオン引き込み制御の機能を向上させ、ひいては装置性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】上記プラズマ処理装置に適用した本発明の一実施形態における自動整合装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図3】上記自動整合装置のオートマッチング動作におけるコントローラの制御アルゴリズムの手順を示すフローチャートである。
【図4A】第1の整合アルゴリズムにおいて、動作点を動かすために可能な1番目の基本移動パターンを示す図である。
【図4B】第1の整合アルゴリズムにおいて、動作点を動かすために可能な2番目の基本移動パターンを示す図である。
【図4C】第1の整合アルゴリズムにおいて、動作点を動かすために可能な3番目の基本移動パターンを示す図である。
【図4D】第1の整合アルゴリズムにおいて、動作点を動かすために可能な4番目の基本移動パターンを示す図である。
【図5】第1の整合アルゴリズムの手法を模式的に示す図である。
【図6A】第1の整合アルゴリズムで用いる制御ロジックを図解で説明するための図である。
【図6B】第1の整合アルゴリズムで用いる制御ロジックを図解で説明するための図である。
【図7】具体例に則して第1の整合アルゴリズムの作用を説明するための図である。
【図8】第1の整合アルゴリズムを不要に使い続けた場合の問題点を説明するためのす図である。
【図9A】第2の整合アルゴリズムで用いる制御ロジックを図解で説明するための図である。
【図9B】第2の整合アルゴリズムで用いる制御ロジックを図解で説明するための図である。
【図10】第2の整合アルゴリズムの作用を説明するための図である。
【図11】第2の整合アルゴリズムの作用(一変形例)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0023】
図1に、本発明の自動整合装置を好適に適用できる一例としてのプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、RF下部2周波印加方式の容量結合型プラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0024】
チャンバ10内には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状の下部電極またはサセプタ12が設けられている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介してチャンバ10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、サセプタ12の上面を環状に囲むたとえば石英やシリコンからなるフォーカスリング18が配置されている。
【0025】
チャンバ10の側壁と筒状支持部16との間には排気路20が形成され、この排気路20の入口または途中に環状のバッフル板22が取り付けられるとともに底部に排気口24が設けられている。この排気口24に排気管26を介して排気装置28が接続されている。排気装置28は、真空ポンプを有しており、チャンバ10内の処理空間を所定の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0026】
サセプタ12には、プラズマ生成用の第1高周波電源32が第1整合器34および給電棒36を介して電気的に接続されている。この第1高周波電源32は、容量結合型プラズマの生成に適した所定の周波数たとえば40MHzの第1高周波RFHを出力する。第1整合器34は、第1高周波電源32と負荷(主にサセプタ、プラズマ、チャンバ)との間でインピーダンスの整合をとる。なお、チャンバ10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。したがって、第1高周波電源32からの第1の高周波はサセプタ12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0027】
また、サセプタ12には、イオン引き込み用の第2高周波電源70が第2整合器72および給電棒36を介して電気的に接続されている。この第2高周波電源70は、サセプタ12上の半導体ウエハWに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した所定の周波数たとえば3.2MHzの第2高周波RFLを出力する。第2整合器72は、第2高周波電源70と負荷(主にサセプタ、プラズマ、チャンバ)との間でインピーダンスの整合をとる。
【0028】
サセプタ12の上面には半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。この静電チャック40は導電膜からなる電極40aを一対の絶縁膜40b,40cの間に挟み込んだものであり、電極40aには直流電源42がスイッチ43を介して電気的に接続されている。直流電源42からの直流電圧により、静電気力で半導体ウエハWをチャック上に吸着保持することができる。
【0029】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延在する冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット46より配管48、50を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック40上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部52からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン54を介して静電チャック40の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0030】
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する下面の電極板56と、この電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部にバッファ室60が設けられ、このバッファ室60のガス導入口60aには処理ガス供給部62からのガス供給配管64が接続されている。
【0031】
主制御部68は、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置28、第1高周波電源32、第1整合器34、静電チャック用のスイッチ43、チラーユニット46、伝熱ガス供給部52、処理ガス供給部62、第2高周波電源70および第2整合器72等の動作を統括して制御する。
【0032】
このプラズマエッチング装置において、エッチングを行うには、先ずゲートバルブ30を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック40の上に載置する。そして、処理ガス供給部62よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置28によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、第1高周波電源32より所定のパワーで出力される第1高周波RFHを第1整合器34を介してサセプタ12に供給すると同時に、第2高周波電源70より所定のパワーで出力される第2高周波RFLを第2整合器72を介してサセプタ12に供給する。また、伝熱ガス供給部52より静電チャック40と半導体ウエハWとの間の接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、スイッチ43をオンにして直流電源42より高圧の直流電圧を静電チャック40の電極40aに印加して、静電チャック40の静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。シャワーヘッド38より吐出されたエッチングガスは両電極12,38間の高周波放電によってプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの主面がエッチングされる。
【0033】
このプラズマエッチング装置においては、プラズマ生成用の高周波給電部に含まれる第1整合器34およびイオン引き込み用の高周波給電部に含まれる第2整合器72のいずれにも本発明の自動整合装置を適用することができる。
【0034】
したがって、この実施形態のプラズマエッチング装置は、第1整合器34に本発明の自動整合装置を用いることにより高速かつ精確なオートマッチングでプラズマ生成を安定かつ効率的に行えるとともに、第2整合器72に本発明の自動整合装置を用いることにより高速かつ精確なオートマッチングでイオン引き込み制御を安定かつ効率的に行うことができる。
【0035】
以下、図2〜図11を参照して、このプラズマエッチング装置の第1整合器34または第2整合器72に適用した本発明の自動整合装置を説明する。
【0036】
図2に、本発明の一実施形態における自動整合装置34(72)の主要な構成を示す。この自動整合装置34(72)は、整合回路内の可変リアクタンス素子として2つの可変コンデンサ80,82を有する。ここで、第1および第2可変コンデンサ80,82は、高周波電源32(70)に対して、チャンバ10側のプラズマ負荷とそれぞれ並列および直列に接続される。なお、整合回路内には、両可変コンデンサ80,82以外のインピーダンス素子、たとえばインダクタンスコイル(図示せず)が含まれてもよい。
【0037】
この自動整合装置34(72)は、オートマッチング動作を行えるように、インピーダンス測定部84、第1および第2ステッピングモータ86,88およびコントローラ90を備えている。
【0038】
インピーダンス測定部84は、整合回路の前段に設けられ、高周波電源32(70)からプラズマ負荷に給電されるRF電圧およびRF電流を測定し、RF電圧測定値とRF電流測定値とから整合回路を含む負荷側のインピーダンスZの絶対値および位相(RF電圧とRF電流の位相差)の測定値ZMm,Zθmを演算する。
【0039】
コントローラ90は、インピーダンス測定部84より得られる負荷側インピーダンスZの絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmに応じて、絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmをそれぞれ所定の絶対値基準値ZMsおよび位相基準値Zθsに可及的または一定範囲内に近づけるように、ステップ型容量可変機構としての第1および第2ステッピングモータ86,88を介して第1および第2可変コンデンサ80,82の静電容量(容量ポジション)をステップ的に可変制御するようになっている。
【0040】
この自動整合装置34(72)における整合ポイントZsは高周波電源32(70)の出力インピーダンスに等しい純抵抗値の50Ω(Zs=50+j0)に設定される。したがって、ZMs=50、Zθs=0である。
【0041】
コントローラ90は、マイクロコンピュータからなり、オートマッチング動作の制御全般を司っており、主制御部68(図1)とも所要の制御信号およびデータをやりとりするようになっている。この実施形態における自動整合装置34(72)の主たる特徴は、オートマッチング動作におけるコントローラ90の機能(特に制御アルゴリズム)にある。
【0042】
図3に、オートマッチング動作におけるコントローラ90の制御アルゴリズムの手順を示す。この自動整合装置34(72)によるオートマッチング動作は、チャンバ10内の処理対象または半導体ウエハWに対してプラズマプロセスが開始されるのと同時に開始されるのはもちろんのこと、プロセスの最中にも、いったん実質的な整合状態になって第1および第2可変コンデンサ80,82の容量ポジションを固定した後も圧力変動や外乱等によって整合が外れた時は直ちに開始または再開されるようになっている。
【0043】
コントローラ90は、主制御部68からの指令によって自動整合装置34(72)が稼働している間は、常に一定のサイクル毎にインピーダンス測定部84を通じて負荷側インピーダンスの絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmを取得する(ステップS1)。
【0044】
コントローラ90は、ソフトウェア的に、負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθを互いに直交する2つの座標軸とするインピーダンス座標系を構築することが可能であり、このインピーダンス座標上で、絶対値基準値ZMsおよび位相基準値Zθsの座標位置で表わされる整合点Zsと、絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmの座標位置で表わされる動作点Zpとを随時認識し把握することができる。ここで、動作点Zpは、第1および第2可変コンデンサ80,82の現時の静電容量(容量ポジション)C1,C2にも対応している。
【0045】
コントローラ90は、上記のように一定サイクル毎に取得した負荷側インピーダンスZの絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmを基に、オートマッチング動作を開始または継続させる(つまり動作点Zpを移動させる)べきか、それとも終了させる(つまり動作点Zpを現在の位置に固定する)べきかの判定を行う(ステップS2)。具体的には、動作点Zpが予め整合点Zsの周りに設定された所定の内側近接範囲の中に入っているときは、動作点Zpを現在の位置に固定しておく(ステップS3→S4)。しかし、動作点Zpが上記内側近接範囲の外にあるときは、動作点Zpを移動させる処理に入る(ステップS3→S5)。
【0046】
動作点Zpを移動させる場合は、それに先だって動作点移動制御のアルゴリズムを選定または決定する(ステップS6)。この実施形態において、コントローラ90は、2種類の整合アルゴリズムを用意しており、動作点Zpが予め整合点Zsの周りに設定された所定の外側近接範囲の中に入っているか否かに応じてそれらを使い分けるようにしている(ステップS7)。
【0047】
すなわち、コントローラ90は、動作点Zpが外側近接範囲の外にあるときは、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)を用いて、動作点Zpを整合点Zsに向けて比較的大きな歩幅でステップ移動させる(ステップS8)。そして、動作点Zpが外側近接範囲の中に入っているときは、第2の整合アルゴリズム(第2のマッチング制御部)を用いて、動作点Zpを整合点Zsに向けて比較的小さな歩幅でステップ移動させる(ステップS9)。
【0048】
図4および図5につき、この実施形態における第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)の機能を説明する。
【0049】
先ず、インピーダンス座標上で動作点Zpを動かす基本操作を説明する。この実施形態では、第1および第2可変コンデンサ80,82の容量ポジションC1,C2の各々を可変すると、それによって負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの双方が変化する実際の現象を整合アルゴリズムにできるだけ忠実に盛り込むようにしている。そのための好適な一実施例として、第1可変コンデンサ80の容量ポジションC1を1ステップ可変したときの負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの変化量δZM1,δZθ1を設定するとともに、第2可変コンデンサ82の容量ポジションC2を1ステップ可変したときの負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの変化量δZM2,δZθ2を設定する。
【0050】
そうすると、インピーダンス座標上で、第1可変コンデンサ80の容量ポジションC1を任意に可変すると、動作点Zpは第1の傾きR1(R1=δZθ1/δZM1)の直線上を移動し、第2可変コンデンサ82の容量ポジションC2を任意に可変すると、動作点Zpは第2の傾きR2(R2=δZθ2/δZM2)の直線上を移動することになる。
【0051】
ここで、第1および第2可変コンデンサ80,82の容量ポジションC1,C2をそれぞれ1ステップ可変する場合に、インピーダンス座標上で動作点Zpを動かす方向性のロジックとして、図4A〜図4Bに示すような4通りのパターンが可能である。なお、C1,C2に対する負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの変化率は負であるとする。すなわち、C1,C2の各々を正方向に1ステップ(+1)可変すると、絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmのいずれも減少する方向に動作点Zpが移動し、C1,C2の各々を負方向に1ステップ(−1)可変すると、絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmのいずれも増大する方向に動作点Zpが移動するものとする。また、C1を先に1ステップ可変し、C2を後に1ステップ可変するものとする。
【0052】
図4Aは、C1を+1可変し、C2を+1可変した場合である(ΔC1=+1,ΔC2=+1)。この場合、C1の+1可変によりC2座標軸はC2(j)から左上のC2(j+1)へ1ピッチ移動するとともに、C2の+1可変によりC1座標軸はC1(i)から右下のC1(i+1)へ1ピッチ移動し、動作点はC1(i)とC2(j)との交点Zp(k)からC1(i+1)とC2(j+1)との交点Zp(k+1)へ移動する。
【0053】
図4Bは、C1を+1可変し、C2を−1可変した場合である(ΔC1=+1,ΔC2=−1)。この場合、C1の+1可変によりC2座標軸はC2(j)から左上のC2(j+1)へ1ピッチ移動するとともに、C2の−1可変によりC1座標軸はC1(i)から左上のC1(i+1)へ1ピッチ移動し、動作点はC1(i)とC2(j)との交点Zp(k)からC1(i+1)とC2(j+1)との交点Zp(k+1)へ移動する。
【0054】
図4Cは、C1を−1可変し、C2を+1可変した場合である(ΔC1=−1,ΔC2=+1)。この場合、C1の−1可変によりC2座標軸はC2(j)から右下のC2(j+1)へ1ピッチ移動するとともに、C2の+1可変によりC1座標軸はC1(i)から右下のC1(i+1)へ1ピッチ移動し、動作点はC1(i)とC2(j)との交点Zp(k)からC1(i+1)とC2(j+1)との交点Zp(k+1)へ移動する。
【0055】
図4Dは、C1を−1可変し、C2を−1可変した場合である(ΔC1=−1,ΔC2=−1)。この場合、C1の−1可変によりC2座標軸はC2(j)から右下のC2(j+1)へ1ピッチ移動するとともに、C2の−1可変によりC1座標軸はC1(i)から左上のC1(i+1)へ1ピッチ移動し、動作点はC1(i)とC2(j)との交点Zp(k)からC1(i+1)とC2(j+1)との交点Zp(k+1)へ移動する。
【0056】
この実施形態における第1の整合アルゴリズムは、上記のような動作点Zpを動かす4通りの基本移動パターン(図4A〜図4D)の中で2番目(図4B)を用いる。すなわち、図5に示すように、理想的には、C1座標軸およびC2座標軸が共に原点O(整合点Zs)通るときに、動作点Zpが整合点Zsに一致し、完全に整合がとれた状態になる。この観点から、第1の整合アルゴリズムでは、原点O(整合点Zs)を通るC1座標軸およびC2座標軸をそれぞれ第1および第2基準線C1S,C2Sとし、一定のサイクル毎に現時のC1座標軸C1(i) (ひいては動作点Zp)を第1基準線C1Sに近づける方向にC2を1ステップ可変し、一定のサイクル毎に現時のC2座標軸C2(j) ひいては動作点Zp)を第2基準線C2Sに近づける方向にC1を1ステップ可変するようにしており、そのためには2番目(図4B)の基本移動パターン(ΔC1=+1,ΔC2=−1)を採択すればよい。
【0057】
この基本移動パターン(ΔC1=+1,ΔC2=−1)は、制御ロジックとして次の演算式(1),(2)を用いる。
ΔC1=[R2・ZM−Zθ]=±1 ・・・(1)
ΔC2=[−R1・ZM+Zθ]=±1 ・・・(2)
【0058】
ここで、上記の演算式(1)は、R2・ZM−Zθの値が正のときはΔC1=+1となり、R2・ZM−Zθの値が負のときはΔC1=−1となることを意味する。つまり、図6Aに示すように、インピーダンス座標上で第2基準線C2Sにより分割される2つの領域(無地領域/斜線領域)のうち、動作点Zpが右側の無地領域内に位置しているときは、R2・ZM−Zθの値が正であり、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が選択され、動作点Zpが左側の斜線領域内に位置しているときは、R2・ZM−Zθの値が負であり、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が選択される。どちらの場合でも、ΔC1の1ステップ可変制御により、現時のC2座標軸C2(j)は第2基準線C2Sに近づく方向に1ピッチ移動することになる。
【0059】
また、上記の演算式(2)は、−R1・ZM+Zθの値が正のときはΔC2=+1となり、−R1・ZM+Zθの値が負のときはΔC2=−1となることを意味する。つまり、図6Bに示すように、インピーダンス座標上で第1基準線C1Sにより分割される2つの領域(無地領域/斜線領域)のうち、動作点Zpが右側の無地領域内に位置しているときは、−R1・ZM+Zθの値が負で、ΔC2=−1の1ステップ可変制御が選択され、動作点Zpが左側の斜線領域内に位置しているときは、−R1・ZM+Zθの値が正で、ΔC2=+1の1ステップ可変制御が選択される。どちらの場合でも、ΔC2の1ステップ可変制御によって、現時のC1座標軸C1(i)は第1基準線C1Sに近づく方向に1ピッチ移動することになる。
【0060】
第1の整合アルゴリズムにおいて重要なことは、演算式(1),(2)が非常に簡単であり、しかもテーブルを用いないため、演算処理ひいては動作点移動処理(ステップS8)を短時間で高速に行えるということである。
【0061】
また、上記の例(図4A〜図4D)では、一見すると、図4Bの基本移動パターンを用いるよりは図4Aの基本移動パターン(ΔC1=+1,ΔC2=+1)を用いた方が動作点Zpを原点O(整合点Zs)に近づけられるようにも思われる。しかし、局所的な場面ではそうであっても、図4Aの基本移動パターンを使用すると、C1座標軸C1(i)が第1基準線C1Sから離れる方向(右下)に移動するので、結果的に整合点への収束は望めない。
【0062】
図7につき、具体例を用いて、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)による動作点移動処理(ステップS8)の作用をより詳細に説明する。
【0063】
この例では、第1可変コンデンサ80の容量ポジションC1を1ステップ可変したときの負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの変化量δZM1,δZθ1を−1,−2に設定し、C1座標軸の傾き(第1の傾き)R1を2としている。また、第2可変コンデンサ82の容量ポジションC2を1ステップ可変したときの負荷側インピーダンスZの絶対値ZMおよび位相Zθの変化量δZM2,δZθ2を−2,−6に設定し、C2座標軸の傾き(第2の傾き)R2を3としている。
【0064】
この場合、C1座標軸C1(i),C1(i+1),・・の絶対値ZM軸上の間隔は1で、位相Zθ軸上の間隔は2である。一方、C2座標軸C2(j),C1(j+1),・・の絶対値ZM軸上の間隔は1/3で、位相Zθ軸上の間隔は1である。また、上記演算式(1),(2)は次のようになる。
ΔC1=[3ZM−Zθ]=±1 ・・・(1)'
ΔC2=[−2ZM+Zθ]=±1 ・・・(2)'
【0065】
また、この具体例では、ΔC1の感度(ゲイン)とΔC2の感度(ゲイン)との間でバランスをとるために、比較的小さい間隔のC2座標軸を移動させる方のC1を1サイクル毎に1ステップ可変し、比較的大きい間隔のC2座標軸を移動させる方のC2を2サイクル毎に1ステップ可変するようにしている。
【0066】
図7において、第1の動作点Zp(1)がC1座標軸C1(3)とC2座標軸C2(6)との交点にあり、その座標位置(ZMm,Zθm)が(1.5,−2)であるとする。
【0067】
(1) この場合、第1サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×1.5−(−2)]=[6.5]>0⇒+1
ΔC2=[−2×1.5+(−2)]=[−5]<0⇒−1
【0068】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御とΔC2=−1の1ステップ可変制御とが実行される。その結果、C2座標軸はC2(6)から左上に1ピッチ隣のC2(7)へ移動するとともに、C1座標軸はC1(3)から左上に1ピッチ隣のC1(4)へ移動し、動作点ZpはC1(4)とC2(7)との交点Zp(2)へ移動する。この移動先の動作点Zp(2)の座標位置(ZMm,Zθm)は(2.5,2)である。
【0069】
(2) 直後の第2サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×2.5−2]=[5.5]>0⇒+1
【0070】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、C2座標軸はC2(7)から左上に1ピッチ隣のC2(8)へ移動し、動作点ZpはC1(4)とC2(8)との交点Zp(3)へ移動する。この移動先の動作点Zp(3)の座標位置(ZMm,Zθm)は(1.5,0)である。
【0071】
(3) 直後の第3サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×1.5−0]=[4.5]>0⇒+1
ΔC2=[−2×1.5+0]=[−3]<0⇒−1
【0072】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御とΔC2=−1の1ステップ可変制御とが実行される。その結果、C2座標軸はC2(8)から左上に1ピッチ隣のC2(9)へ移動するとともに、C1座標軸はC1(4)から左上に1ピッチ隣のC1(5)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(9)との交点Zp(4)へ移動する。この移動先の動作点Zp(4)の座標位置(ZMm,Zθm)は(2.5,4)である。
【0073】
(4) 直後の第4サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×2.5−4]=[3.5]>0⇒+1
【0074】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、C2座標軸はC2(9)から左上に1ピッチ隣のC2(10)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(10)との交点Zp(5)へ移動する。この移動先の動作点Zp(5)の座標位置(ZMm,Zθm)は(1.5,2)である。
【0075】
(5) 直後の第5サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×1.5−2]=[2.5]>0⇒+1
ΔC2=[−2×1.5+2]=[−1]<0⇒−1
【0076】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御とΔC2=−1の1ステップ可変制御とが実行される。その結果、C2座標軸はC2(10)から左上に1ピッチ隣のC2(11)へ移動するとともに、C1座標軸はC1(5)から左上に1ピッチ隣のC1(6)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(11)との交点Zp(6)へ移動する。この移動先の動作点Zp(6)の座標位置(ZMm,Zθm)は(2.5,6)である。
【0077】
(6) 直後の第6サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×2.5−6]=[1.5]>0⇒+1
【0078】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、C2座標軸はC2(11)から左上に1ピッチ隣のC2(12)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(12)との交点Zp(7)へ移動する。この移動先の動作点Zp(7)の座標位置(ZMm,Zθm)は(1.5,4)である。
【0079】
上記のように、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)による動作点移動処理(ステップS8)を一定サイクルで繰り返し実行することにより、C1座標軸をC1(3)→C1(4)→C1(5) →C1(6)と第1基準線C1Sに近づけるとともに、C2座標軸をC2(6)→C2(7)→C2(8) →C2(9)→C2(10) →C2(11) →C2(12)と第2基準線C2Sに近づけ、ひいては動作点ZpをZp(1)→Zp(2)→Zp(3) →Zp(4)→Zp(5)→Zp(6) →Zp(7)と蛇行させながらも着実に原点O(整合点ZS)に近づけることができる。
【0080】
しかしながら、この先も第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)を使い続けると、図8に示すように、動作点Zpは原点O(整合点ZS)の近傍に収束させることはできなくなる。
【0081】
(7) すなわち、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)にしたがえば、次の第7サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×1.5−4]=[0.5]>0⇒+1
ΔC2=[−2×1.5+4]=[1]>0⇒+1
【0082】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御とΔC2=+1の1ステップ可変制御とが実行される。その結果、C2座標軸はC2(12)から左上に1ピッチ隣のC2(13)へ移動するとともに、C1座標軸はC1(6)から右下に1ピッチ隣のC1(5)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(13)との交点Zp(8)へ移動する。この移動先の動作点Zp(8)の座標位置(ZMm,Zθm)は(−1.5,−4)である。
【0083】
(8) そして、直後の第8サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×(−1.5)−(−4)]=[−0.5]<0⇒−1
【0084】
この演算結果にしたがって、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、C2座標軸はC2(13)から右下に1ピッチ隣のC2(12)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(12)との交点Zp(9)へ移動する。この移動先の動作点Zp(9)の座標位置(ZMm,Zθm)は(−0.5,−2)である。
【0085】
(9) さらに、直後の第9サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×(−0.5)−(−2)]=[0.5]>0⇒+1
ΔC2=[−2×(−0.5)+(−2)]=[−1]<0⇒−1
【0086】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御とΔC2=−1の1ステップ可変制御とが実行される。その結果、C2座標軸はC2(12)から左上に1ピッチ隣のC2(13)へ移動するとともに、C1座標軸はC1(5)から左上に1ピッチ隣のC1(6)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(13)との交点Zp(10)へ移動する。この移動先の動作点Zp(10)の座標位置(ZMm,Zθm)は(0.5,2)である。
【0087】
(10) さらに、直後の第10サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[3×0.5−2]=[−0.5]<0⇒−1
【0088】
この演算結果にしたがって、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、C2座標軸はC2(13)から右下に1ピッチ隣のC2(12)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(12)との交点Zp(11)へ移動する。この移動先の動作点Zp(11)の座標位置(ZMm,Zθm)は(1.5,4)であり、第6サイクルで移動した時の動作点Zp(7)の位置に戻ることになる。
【0089】
こうして、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)を使い続けたならば、動作点ZpはZp(7)→Zp(8) →Zp(9)→Zp(10)→Zp(11)のルートを延々と循環移動するだけであり、原点O(整合点ZS)にそれ以上近づくことは決してできない。
【0090】
この具体例の場合、C2のステップ可変に応じて移動するC1座標軸およびC1のステップ可変に応じて移動するC2座標軸はいずれも原点O(整合点ZS)を跨ぎ、それぞれ第1および第2基準線C1S,C2Sと重なることはないので、動作点Zpを原点O(整合点ZS)に正確に一致させることはできない。つまり、完全な整合状態は元々望めない。
【0091】
しかし、C1座標軸のC1(5)とC2座標軸のC2(11)との交点ZA(0.5,0)およびC1座標軸のC1(6)とC2座標軸のC2(14)との交点ZB(−0.5,0)が原点O(整合点ZS)のごく近傍に位置している。動作点Zpをこれらの交点ZA,ZBのどちらかに収束させることは可能であり(この自動整合装置の実力範囲内であり)、それによって完全整合状態と実用的に等価な状態(実質的な整合状態)を得ることができる。すなわち、この具体例において、動作点Zpを原点O(整合点ZS)に可及的または所定の内側近接範囲内に近づけるということは、動作点ZpをZA,ZBのどちらかに着かせることに他ならない。
【0092】
この実施形態において、コントローラ90は、動作点Zpが上記循環ルートに入ると、整合アルゴリズム選定処理(ステップS6)により、そのことを検出し、動作点Zpが予め設定した外側近接範囲内に入ったものと判定して(ステップS7)、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)から第2の整合アルゴリズム(第2のマッチング制御部)に切り換える(ステップS7→S9)。
【0093】
以下、図9および図10につき、この実施形態における第2の整合アルゴリズム(第2のマッチング制御部)の機能を説明する。
【0094】
この第2の整合アルゴリズムでは、インピーダンス座標上で、第1および第2基準線C1S,C2Sとそれぞれ直交する第3の基準線TC1S,TC2Sを定義し、基準線TC1SまたはTC2Sを動作点移動制御の目標にして、C1座標軸またはC2座標軸上で動作点Zpを移動させる。
【0095】
たとえば、基準線TC1Sを目標にして、C1座標軸上で動作点Zpを移動させる場合は、次の演算式(3)を用いる。
ΔC1=[ZM+R1・Zθ]=±1 ・・・(3)
【0096】
ここで、上記の演算式(3)は、ZM+R1・Zθの値が正のときはΔC1=+1となり、ZM+R1・Zθの値が負のときはΔC1=−1となることを意味する。つまり、図9Aに示すように、インピーダンス座標上で基準線TC1Sにより分割される2つの領域(無地領域/斜線領域)のうち、動作点Zpが右側の斜線領域内に位置しているときは、ZM+R1・Zθの値が正で、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が選択され、動作点Zpが左側の無地領域内に位置しているときは、ZM+R1・Zθの値が負で、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が選択される。
【0097】
また、基準線TC2Sを目標にして、C2座標軸上で動作点Zpを移動させる場合は、次の演算式(4)を用いる。
ΔC2=[ZM+R2・Zθ]=±1 ・・・(4)
【0098】
ここで、上記の演算式(4)は、ZM+R2・Zθの値が正のときはΔC2=+1となり、ZM+R2・Zθの値が負のときはΔC2=−1となることを意味する。つまり、図9Bに示すように、インピーダンス座標上で基準線TC2Sにより分割される2つの領域(無地領域/斜線領域)のうち、動作点Zpが右側の斜線領域内に位置しているときは、ZM+R2・Zθの値が正で、ΔC2=+1の1ステップ可変制御が選択され、動作点Zpが左側の無地領域内に位置しているときは、ZM+R2・Zθの値が負で、ΔC2=−1の1ステップ可変制御が選択される。
【0099】
上記の例(図7)の場合は、1ステップ当たりの動作点Zpの移動距離は、C2座標軸上よりもC1座標軸上の方が小さいので、C1座標軸と直交する基準線TC1Sを移動目標とするロジックを用いるのが好ましい。
【0100】
そうすると、動作点ZpがC1(6)とC2(12)との交点Zp(7) へ移動した直後の第7サイクルでは、第2の整合アルゴリズムの下で、次のような演算結果が得られる。なお、上記したように動作点Zp(7)の座標位置(ZMm,Zθm)は(1.5,4)である。
ΔC1=[1.5+2×4]=[9.5]>0⇒+1
【0101】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、図10に示すように、C2座標軸はC2(12)から左上に1ピッチ隣のC2(13)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(13)との交点Zp(8)へ移動する。この移動先の動作点Zp(8)の座標位置(ZMm,Zθm)は(0.5,2)である。
【0102】
さらに、第8サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[0.5+2×2]=[4.5]>0⇒+1
【0103】
この演算結果にしたがって、ΔC1=+1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、図10に示すように、C2座標軸はC2(13)から左上に1ピッチ隣のC2(14)へ移動し、動作点ZpはC1(6)とC2(14)との交点Zp(9)へ移動する。この移動先の動作点Zp(9)の座標位置(ZMm,Zθm)は(−0.5,0)である。すなわち、原点O(整合点ZS)に非常に近い実現可能なベストの擬似的整合点ZBに辿り着いたことになる。
【0104】
第2の整合アルゴリズムにおいても、演算式(3),(4)が非常に簡単であり、しかもテーブルを用いないため、演算処理ひいては動作点移動処理(ステップS9)を短時間で高速に行うことができる。
【0105】
この実施形態において、コントローラ90は、上記のようにして動作点Zpが収束点ZBに辿り着くと、整合動作終了判定処理(ステップS2)により、そのことを検出し、動作点Zpが予め設定した内側近接範囲内に入ったものと判定して(ステップS3)、第2の整合アルゴリズム(第2のマッチング制御部)の動作を停止させて、動作点Zpを収束点ZBで落ち着かせる(ステップS3→S4)。こうして、今回のオートマッチング動作がいったん終了する。
【0106】
コントローラ90は、その後も、インピーダンス測定部84より一定サイクル毎に負荷側インピーダンスZの絶対値測定値ZMmおよび位相測定値Zθmを取得して、整合点Zsに対する動作点Zpの相対的な位置関係または距離関係を継続的に監視し続ける。
【0107】
実際、チャンバ10内の圧力変動や何らかの外因等によってプラズマ負荷のインピーダンスが変化すると、動作点Zpに対してインピーダンス座標系そのものが相対的に動いて、オートマッチングが停止しているにも関わらずインピーダンス座標上で動作点Zpが一瞬にして整合点Zsから遠い位置へ移動し、整合が外れた状態になる。
【0108】
コントローラ90は、そのような事態によって整合が外れたことを検出すると、オートマッチング動作を再開する(ステップS3→S5)。そして、上記と同様にして、第1の整合アルゴリズム(第1のマッチング制御部)および第2の整合アルゴリズム(第2のマッチング制御部)を順次働かせ、最終的には動作点Zpを所定の内側近接範囲内に収束させて、実質的な整合状態を短時間で確立することができる。
【0109】
図10の例では第2の整合アルゴリズムにおいてC1座標軸と直交する基準線TC1Sを移動目標にして演算式(3)を用いたが、所定の条件またはその時の状況に応じてC2座標軸と直交する基準線TC2Sを移動目標にして演算式(4)を用いることも可能である。
【0110】
また、第2の整合アルゴリズムを終止させるための内側近接範囲は、オートマッチングの所要速度および精度や可変コンデンサ80,82のステップ幅、設定変化率等を勘案して任意に設定してよい。たとえば、C1座標軸あるいはC2座標軸のピッチ幅またはZM座標軸もしくはZθ座標軸上の間隔を基準値とし、その基準値に所定の係数を乗じた値の半径(または直径)を有し、原点O(整合点Zp)を中心とする円を内側近接範囲とすることも可能である。
【0111】
あるいは、第2の整合アルゴリズムの下で動作点Zpを移動させる際に、各移動先の座標位置(ZMm,Zθm)と原点O(整合点Zp)との離間距離を演算する。そうすると、動作点Zpがステップ移動する度毎にその離間距離は次第に短くなるが、どこかで離間距離が増大に転じるので、その1つ手前の座標位置を収束点に決めて、そこに動作点Zpを戻すようにしてもよい。この場合は、該収束点の座標位置をもって内側近接範囲内とみなすことができる。
【0112】
あるいは、第2の整合アルゴリズムの下で動作点Zpを移動させる際に、動作点Zpと基準線TC1S(TC2S)との距離間隔を演算し、基準線TC1S(TC2S)との距離間隔が極小になる動作点Zpの座標位置(ZMm,Zθm)を収束点とすることも可能である。
【0113】
同様に、第1の整合アルゴリズムを終止させるための外側近接範囲も、オートマッチングの所要速度および精度や可変コンデンサ80,82のステップ幅、設定変化率等を勘案して任意に設定してよい。本発明においては、第1の整合アルゴリズムと第2の整合アルゴリズムとを段階的に切り換えて使用することが最も重要であり、第1の整合アルゴリズムから第2の整合アルゴリズムへ切り換えるタイミングはさほど重要ではない。
【0114】
上記の例(図7)においては、動作点Zpが上記循環ルート(Zp(7)→Zp(8) →Zp(9)→Zp(10)→Zp(11))上に入れば、その中の任意の動作点位置から第2の整合アルゴリズムの下で実質的な擬似的整合点ZA,ZBに辿り着くことができる。
【0115】
たとえば、図11に示すように、第1の整合アルゴリズムの下で動作点ZpがC1(5)とC2(13)との交点Zp(8)へ移動したところで、第2の整合アルゴリズムに切り換えると、直後の第8のサイクルでは、次のような演算結果が得られる。なお、上記したように動作点Zp(8)の座標位置(ZMm,Zθm)は(−1.5,−4)である。
ΔC1=[−1.5+2×(−4)]=[−9.5]<0⇒−1
【0116】
この演算結果にしたがって、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、図11に示すように、C2座標軸はC2(13)から右下に1ピッチ隣のC2(12)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(12)との交点Zp(9)へ移動する。この移動先の動作点Zp(9)の座標位置(ZMm,Zθm)は(−0.5,−2)である。
【0117】
さらに、直後の第9サイクルでは、次のような演算結果が得られる。
ΔC1=[−0.5+2×(−2)]=[−4.5]<0⇒−1
【0118】
この演算結果にしたがって、ΔC1=−1の1ステップ可変制御が実行される。その結果、図11に示すように、C2座標軸はC2(12)から右下に1ピッチ隣のC2(11)へ移動し、動作点ZpはC1(5)とC2(11)との交点Zp(10)へ移動する。この移動先の動作点Zp(10)の座標位置(ZMm,Zθm)は(0.5,0)であり、原点O(整合点ZS)に最も近い実現可能なベストの収束点ZBに辿りつく。
【0119】
動作点Zpが外側近接範囲内に入ったか否かの判定も、種種の判断基準を用いることができる。原点O(整合点ZS)と動作点Zpとの距離間隔に基づいてもよいが、基準線C1S(C2S)と動作点Zpとの位置関係または距離間隔に基づいて、動作点Zpが外側近接範囲内に入ったか否かを判定することも可能である。たとえば、上記の例(図7)においては、上記循環ルート上の外であっても、基準線C1Sに隣接するC1座標軸C1(5),C1(6)上に動作点Zpが乗ったところで、外側近接範囲内に入ったものとみなすことも可能である。その場合は、動作点ZpがZp(4),Zp(5)またはZp(6)に着いたところで、第1の整合アルゴリズムから第2の整合アルゴリズムに切り換えることができる。もしくは、C1座標軸とC2座標軸における1ステップ当たりの移動距離の差が既知の場合、図10および図11の手法で用いた手段のように、移動距離が小さい方のみ第2のアルゴリズムへの切り換えを行い、相対的に頻繁に移動させることで、外側近接範囲をラフに設定することができる。
【0120】
また、図示省略するが、第1および第2可変コンデンサ80,82の容量ポジョンC1,C2をコントローラ90にフィードバックする手段を備え、コントローラ90が容量ポジョンC1,C2に応じて第1および第2の傾きR1,R2、内側近接範囲、外側近接範囲を可変することも可能である。
【0121】
上記実施形態におけるプラズマ処理装置は、主としてプラズマ生成用の第1の高周波と主としてイオン引き込み用の第2の高周波とをサセプタ12に印加するRF下部二周波印加型であった。しかし、別の実施形態として、図示省略するが、下部電極にプラズマ生成用の高周波を1つ印加するタイプの装置であってもよい。また、図示省略するが、プラズマ生成用の高周波を上部電極に印加するタイプの装置であってもよい。その場合、イオン引き込み用の高周波を下部電極に印加してもよい。
【0122】
また、上記実施形態は、チャンバ内で平行平板電極間の高周波放電によってプラズマを生成する容量結合型プラズマ処理装置に係るものであった。しかし、本発明は、チャンバの上面または周囲にアンテナを配置して誘電磁界の下でプラズマを生成する誘導結合型プラズマ処理装置や、マイクロ波のパワーを用いてプラズマを生成するマイクロ波プラズマ処理装置等にも適用可能である。
【0123】
本発明は、プラズマエッチング装置に限定されず、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマ処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 チャンバ
12 サセプタ
32,70 高周波電源
34,72 整合器
62 処理ガス供給部
80 第1可変コンデンサ
82 第2可変コンデンサ
84 インピーダンス測定部
86 第1ステッピングモータ
88 第2ステッピングモータ
90 コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周波数の高周波を出力する高周波電源と前記高周波の供給を受ける負荷との間で自動的にインピーダンスの整合をとる自動整合装置であって、
前記高周波電源に対して前記負荷と並列に接続される第1の可変コンデンサと、
前記第1の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第1のステップ型容量可変機構と、
前記高周波電源に対して前記負荷と直列に接続される第2の可変コンデンサと、
前記第2の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第2のステップ型容量可変機構と、
前記高周波電源の出力端子から見た負荷側のインピーダンスについてその絶対値および位相を測定するインピーダンス測定部と、
前記インピーダンス測定部より得られる前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値に応じて、前記絶対値測定値および前記位相測定値をそれぞれ所定の絶対値基準値および位相基準値に可及的に近づけるように、前記第1および第2のステップ型容量可変機構を介して前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量を可変制御するコントローラと
を具備し、
前記コントローラが、
前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相を互いに直交する2つの座標軸とするインピーダンス座標上で、前記第1の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第1の傾きを有し、かつ前記絶対値基準値および前記位相基準値の座標位置で表わされる整合点を通る第1の基準線を目標にして、または前記第2の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第2の傾きを有し、かつ前記整合点を通る第2の基準線を目標にして、前記絶対値測定値および前記位相測定値の座標位置で表わされる動作点を前記整合点に対して第1の近接範囲内に近づけるように、前記第1および第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第1のマッチング制御部と、
前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第1の近接範囲内に入った後に、前記第1または第2の基準線と直交し、かつ前記整合点を通る第3の基準線を目標として、前記動作点を前記整合点に対して第2の近接範囲内に近づけるように、前記第1または第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第2のマッチング制御部と
を有する自動整合装置。
【請求項2】
所定の条件に応じて前記第1および第2の近接範囲の少なくとも一方を可変する、請求項1に記載の自動整合装置。
【請求項3】
前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量の値に応じて前記第1および第2の近接範囲の少なくとも一方を可変する、請求項2に記載の自動整合装置。
【請求項4】
一定周波数の高周波を出力する高周波電源と前記高周波の供給を受ける負荷との間で自動的にインピーダンスの整合をとる自動整合装置であって、
前記高周波電源に対して前記負荷と並列に接続される第1の可変コンデンサと、
前記第1の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第1のステップ型容量可変機構と、
前記高周波電源に対して前記負荷と直列に接続される第2の可変コンデンサと、
前記第2の可変コンデンサの静電容量をステップ的に可変するための第2のステップ型容量可変機構と、
前記高周波電源の出力端子から見た負荷側のインピーダンスについてその絶対値および位相を測定するインピーダンス測定部と、
前記インピーダンス測定部より得られる前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値に応じて、前記絶対値測定値および前記位相測定値をそれぞれ所定の絶対値基準値および位相基準値に可及的に近づけるように、前記第1および第2のステップ型容量可変機構を介して前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量を可変制御するコントローラと
を具備し、
前記コントローラが、
前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相を互いに直交する2つの座標軸とするインピーダンス座標上で、前記第1の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第1の傾きを有し、かつ前記絶対値基準値および前記位相基準値の座標位置で表わされる整合点を通る第1の基準線を目標として、または前記第2の可変コンデンサの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率に対応した第2の傾きを有し、かつ前記整合点を通る第2の基準線を目標として、前記絶対値測定値および前記位相測定値の座標位置で表わされる動作点を前記第1または第2の基準線に対して可及的に近づけるように、前記第1および第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第1のマッチング制御部と、
前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第1または第2の基準線に対して可及的に近づいた後に、前記第1または第2の基準線と直交し、かつ前記整合点を通る第3の基準線を目標として、前記動作点を前記第3の基準線に可及的に近づけるように、前記第1または第2の可変コンデンサの少なくとも一方の静電容量を可変制御する第2のマッチング制御部と
を有する自動整合装置。
【請求項5】
前記第1のマッチング制御部は、第1のサイクル毎に、前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第1の基準線により分割される2つの領域のどちらに位置しているかを判定し、その判定結果に応じて前記第2の可変コンデンサの静電容量を1ステップ増加もしくは減少させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項6】
前記第1のマッチング制御部は、第2のサイクル毎に、前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第2の基準線により分割される2つの領域のどちらに位置しているかを判定し、その判定結果に応じて前記第1の可変コンデンサの静電容量を1ステップ増加もしくは減少させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項7】
前記第2のマッチング制御部は、第3のサイクル毎に、前記インピーダンス座標上で、前記動作点が前記第3の基準線により分割される2つの領域のどちらに位置しているかを判定し、その判定結果に応じて前記第1または第2の可変コンデンサの静電容量を1ステップ増加もしくは減少させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1および第2の可変コンデンサの静電容量の値に応じて、それらの静電容量に対する前記負荷側インピーダンスの絶対値および位相の設定変化率を可変する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項9】
前記コントローラは、実質的な整合状態が確立されていったん前記第1および第2のマッチング制御部の動作を停止させた後も継続的に前記インピーダンス座標上で前記動作点の位置を監視し、整合が外れたときは直ちに前記第1のマッチング制御部および/または前記第2のマッチング制御部の動作を再開させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項10】
前記第1および第2のステップ型容量可変機構はそれぞれ第1および第2ステッピングモータを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項11】
前記インピーダンス測定部は、所定のサイクル毎に前記絶対値測定値および前記位相測定値を演算する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動整合装置。
【請求項12】
被処理基板を出し入れ可能に収容する真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内で高周波放電により前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記高周波放電に用いられる一定周波数の高周波を出力する高周波電源と、
前記高周波電源と前記プラズマ生成部との間に接続される請求項1〜11のいずれか一項に記載の自動整合装置と
を有するプラズマ処理装置。
【請求項13】
被処理基板を出し入れ可能に収容する真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記処理容器内で前記基板を載置して保持する電極と、
前記プラズマから前記電極上の前記基板に入射するイオンのエネルギーを制御するのに用いられる一定周波数の高周波を出力する高周波電源と、
前記高周波電源と前記電極との間に接続される請求項1〜11のいずれか一項に記載の自動整合装置と
を有するプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−182046(P2011−182046A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42049(P2010−42049)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】