説明

自動走行車両および追尾システム

【課題】安定した隊列走行を実現すること。
【解決手段】先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、前方車両との車間距離に応じて走行速度を制御する制御装置を具備する自動走行車両を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾システムおよび追尾システムに適用される自動走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転手により運転される先導車両と、該先導車両に自動追従して縦列走行する複数の後続車両とからなる自動追従走行システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、先導車両の走行軌跡情報と操舵量やスロットル開度等の運転操作量とを後続車両に送信し、後続車両において、先導車両からの軌跡情報を参照しながら、自己の位置情報と対となる操作量を抽出し、抽出した操作量をフィードフォワード制御量として後続車両の運転を行うことが開示されている。
【特許文献1】特開2000−113399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の発明では、先導車両の操作量をそのまま用いて後続車両の走行を制御しているため、以下のような種々の問題があった。
先導車両に続いて複数の後続車両が隊列走行する場合に、後続車両の一台が停止した場合、その後続車両の後を走行している後続車両が衝突してしまう可能性がある。
先導車両が通過した後に、路面の状況等が変化した場合、安定した走行を行うことが困難となる。
先導車両と後続車両との車種が異なる場合等、車輌特性が異なる場合に、安定した走行が実現できない。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、安定した隊列走行を実現することの可能な自動走行車両および追尾システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、前方車両との車間距離を計測する距離計測手段と、前記前方車両との車間距離に応じて走行速度を制御する制御手段とを具備する自動走行車両を提供する。
【0006】
このような構成によれば、前方車両との車間距離に応じて走行速度が制御されるので、例えば、車間距離が狭くなった場合には、走行を停止する制御を行うことにより前方車両との衝突を避けることが可能となる。これにより、安定した追尾走行を実現することが可能となる。
ここで、上記前方車両とは、自動走行車両の直前を走行している車両のことであり、例えば、複数の自動走行車両が縦列走行を行っている場合には、先頭の自動走行車両に対する前方車両は先導車両となり、それ以外の自動走行車両に対する前方車両は一つ前を走行している自動走行車両となる。
【0007】
上記自動走行車両において、前記制御手段は、前記前方車両との車間距離が予め設定されている第1の閾値未満となった場合に減速し、該車間距離が前記第1の閾値よりも小さい値である第2の閾値未満となった場合に走行を停止し、該距離が前記第2の閾値以上第1の閾値未満である第3の閾値以上となった場合に走行を開始または再開することとしてもよい。
【0008】
このような構成によれば、前方車両との衝突を確実に回避し、安全な距離を保って停止することが可能となる。また、停止している場合において、車間距離が第3の閾値以上となった場合には、走行を開始または再開するので、安定した自律走行を実現することができる。
【0009】
上記自動走行車両において、前記制御手段は、前記前方車両との車間距離が第2の閾値以上第1の閾値未満の場合に、該車間距離に比例した速度を目標速度として設定することとしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、前方車両に近づいたときは、車間距離に応じた速度で走行することとなるので、車両の停止および走行開始を円滑に行うことができる。
【0011】
本発明は、先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、前記先導車両の走行軌跡上に存在する悪路を検出する悪路検出手段と、悪路検出手段により悪路が検出された場合に、減速する制御手段とを具備する自動走行車両を提供する。
【0012】
このような構成によれば、先導車両の走行軌跡上に悪路が検出された場合に減速するので、安定した走行を実現することができる。
【0013】
上記自動走行車両は、加速度を検出する加速度センサを備え、前記悪路検出部は、前記加速度センサにより検出された加速度が予め設定されている閾値を超えた場合に悪路であると判断することとしてもよい。
【0014】
上記自動走行車両は、位置検出手段と、車速センサとを更に備え、前記悪路検出手段は、前記車速センサから出力される車速パルスに基づいて見かけ上の移動量を算出するとともに、前記位置検出手段からの情報に基づいて実際の移動量を算出し、見かけ上の移動量と実際の移動量との差分が予め設定された閾値以上であった場合に、悪路であると判断することとしてもよい。
【0015】
上記自動走行車両は、前記先導車両により撮影された路面の画像を受信する通信手段と、前方近傍の路面を画像として取得する画像取得手段とを更に備え、前記悪路検出手段は、前記画像取得手段により取得された路面の画像に基づいて路面の凹凸状態を検出し、該凹凸状態が、前記先導車両から受信した同位置における路面の画像に基づいて検出した路面の凹凸状態よりも悪化していた場合に、悪路であると判断することとしてもよい。
【0016】
本発明は、先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、加速度を検出する加速度手段と、前記加速度手段により検出された加速度に基づいて走行方向に直交する方向の加速度を求め、該加速度が予め設定されている第4の閾値以上となった場合に減速し、該加速度が予め設定されている第5の閾値以下となった場合に加速する自動走行車両を提供する。
【0017】
このような構成によれば、幅方向における加速度を求め、この加速度に応じて減速、加速を行うので、先導車両と車種が異なることにより、カーブにおける遠心力や走行軌跡が先導車両とは異なる場合でも、安定した走行を実現することができる。
【0018】
本発明は、先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、前記先導車両から走行軌跡と操作量に関する情報とを受信する通信手段と、前記通信手段により受信された前記先導車両の走行軌跡からカーブにおける旋回半径を検出するとともに、該走行軌跡及び前記操作量から自己が走行しようとするカーブの旋回半径を求め、自己が走行しようとするカーブの旋回半径が前記先導車両の旋回半径よりも小さい場合に減速する制御手段とを具備する自動走行車両を提供する。
【0019】
このように、カーブを走行するときの旋回半径と同カーブを走行したときの先導車両の旋回半径とを比較し、この比較結果に応じて走行速度の制御を行うので、先導車両と車種が異なり、カーブにおける遠心力や走行軌跡が先導車両とは異なってしまう場合でも、安定した走行を実現することができる。
【0020】
本発明は、先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、前記先導車両の位置情報を受信する通信手段と、走行方向近傍の環境を認識する環境認識手段と、前記通信手段により取得された前記先導車両の位置情報と、前記環境認識手段により取得された走行方向近傍の環境とに基づいて近傍の空間領域をマップイメージに展開し、該マップイメージに基づいて障害物の有無を判定し、該判定結果に応じて走行制御を行う制御手段とを具備する自動走行車両を提供する。
【0021】
このような構成によれば、先導車両の走行軌跡上に進入してきた障害物を認識することが可能となる。これにより、安定した自動走行を実現することが可能となる。
【0022】
上記自動走行車両において、前記制御手段により減速が行われた場合に、その旨を他の車両に通知することとしてもよい。
【0023】
減速が行われた旨が他の車両に通知されることにより、減速に応じた柔軟な走行制御を他の車両においても行うことが可能となる。
また、上記態様は、可能な範囲で組み合わせて利用することができるものである。
【0024】
本発明は、先導車両と、上述の自動走行車両とを具備する追尾システムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定した隊列走行を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る追尾システムおよび自動走行車両の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の一実施形態に係る追尾システムの概略構成が示されている。
図1に示されるように、本実施形態に係る自動追尾走行システム10は、運転手により運転される先導車両1と、先導車両1に追従して走行する後続車両2a,2bとを備えている。
後続車両2a,2bは、縦列状態、換言すると、隊列をなして、先導車両1に自動追従する自動走行車両である。ここでは、2台の後続車両2a,2bを示しているが、縦列する後続車両の台数については限定されない。
【0027】
図2には、先導車両1の概略構成が示されている。
図2に示されるように、先導車両1は、現在位置を検出する位置検出部11、車両の姿勢を検出するためのIMU(慣性測定装置)12、車速センサ13、ステアリング駆動用のステアリングアクチュエータ14、アクセル・ブレーキ操作用のアクセル・ブレーキアクチュエータ15、後続車両2との間で通信を行うための通信装置16、制御装置17等を備えている。
上記位置検出部11は、例えば、GPSアンテナ、およびGPSアンテナにより受信された情報から位置を検出する処理装置を備えている。
【0028】
先導車両1では、ステアリング、アクセル、ブレーキ等が人によって操作されるので、この操作に応じたステアリングアクチュエータ14およびアクセル・ブレーキアクチュエータ15の操作量が制御装置17に入力され、これにより先導車両1の走行状態が検出されるようになっている。
【0029】
具体的には、制御装置17には、位置検出部11、IMU12、および車速センサ13から各種検出情報が、また、ステアリングアクチュエータ14、アクセル・ブレーキアクチュエータ15から操作量が入力されるようになっている。制御装置17は、これらの入力情報をカルマンフィルタで処理し、処理後の情報、つまり、先導車両1の位置、姿勢、速度、ステアリング角度に基づいて自己位置を求め、その軌跡から走行軌跡を作成する。更に、制御装置17は、走行軌跡上の各地点とアクセル・ブレーキ、ステアリング等の各種操作量とを対応付けることにより操作量テーブルを作成する。
制御装置17により作成された走行軌跡と操作量テーブルとは、通信装置18を介して後続車両2に送信される。
【0030】
図3には、後続車両2a,2bの概略構成が示されている。
図3に示されるように、後続車両2a,2bは、現在位置を検出する位置検出部21、周辺状況を検出するためのカメラ22およびLRF(レーザレンジファインダ)23、車速を検出する車速センサ24、車両の姿勢を検出するIMU(慣性測定装置)25、自律走行を実現するための走行駆動機構としてのステアリング駆動用のステアリングアクチュエータ26、アクセル・ブレーキ操作用のアクセル・ブレーキアクチュエータ27、各部を制御するための制御装置(制御手段)28、先導車両1との間で通信を行うための通信装置(通信手段)29等を備えている。
【0031】
上記位置検出部21、カメラ22、LRF23、車速センサ24、IMU25等の各種センサにより検出された情報は、制御装置28に入力されるようになっている。制御装置28は、これらセンサからの情報や上記先導車両1から送られてきた走行軌跡および操作量テーブルに基づいてステアリングアクチュエータ26およびアクセル・ブレーキアクチュエータ27を駆動制御することにより、後続車両2a,2bの安定した走行を実現させる。
【0032】
ここで、制御装置28は、例えば、カメラ22およびLRF23から入力される情報に基づいて前方車両との距離を計測し、この距離に応じて走行速度を制御する。具体的には、制御装置28は、図4に示すような速度テーブルに従って走行速度の制御を行う。図4において、横軸は前方車両との車間距離ΔL、縦軸は後続車両2a,2bの目標速度である。
ここで、前方車両とは、一つ前を走行する車両のことであり、後続車両2aに対する前方車両は先導車両1、後続車両2bに対する前方車両は後続車両2aとなる。
以下、説明を簡潔にするために、後続車両2bにおける走行速度の制御を例に挙げて説明する。
【0033】
図4に示される速度テーブルからわかるように、前方車両である後続車両2aとの車間距離ΔLが危険距離L2(第2の閾値)未満の場合には、後続車両2bの制御装置28は走行を停止する。また、車間距離ΔLが危険距離L2以上警告距離(第1の閾値)L1未満である場合には、制御装置28は、以下の(1)式で表される速度を目標速度Vとして定め、この目標速度となるようにフィードバック制御を行う。
V=k(ΔL−L2) (1)
上記(1)式において、kは任意の定数である。
【0034】
また、車間距離ΔLが警告距離L1以上の場合には、制御装置28は、先導車両1から受信した走行軌跡および操作量テーブルに基づいて目標速度Vを設定する。具体的には、位置検出部21により検出される自己位置に対応する操作量を操作量テーブルから抽出し、抽出した操作量に基づいて目標速度を設定する。なお、この目標速度の設定方法については、例えば、特開2000−113399号公報に記載されている方法等を採用することが可能である。
【0035】
より具体的には、後続車両2bの制御装置28は、図5に示す処理を所定のタイミングで実施することにより、目標速度Vの設定を行う。
まず、制御装置28は、後続車両2aとの車間距離ΔLが警告距離L1以上であるか否かを判定する。この結果、車間距離ΔLが警告距離L1以上である場合には(ステップSA1において「YES」)、現在位置に対応する先導車両1の操作量を操作量テーブルから抽出し、抽出した操作量に基づいて目標速度Vを設定し、この目標速度Vでの走行を行う(ステップSA2)。
一方、ステップSA1において、車間距離ΔLが警告距離L1以上でない場合には、ステップSA3に移行し、車間距離ΔLが危険距離L2以上警告距離L1未満であるかを判定する。この結果、車間距離ΔLが危険距離L2以上警告距離L1未満であった場合には(ステップSA3において「YES」)、目標速度V=k(ΔL−L2)に設定し、この目標速度Vでの走行を行う(ステップSA3)。
また、ステップSA3において、車間距離ΔLが危険距離L2以上警告距離L1未満でなかった場合(ステップSA3において「NO」)、つまり、車間距離ΔLが危険距離L2未満であった場合には、ステップSA5に移行し、後続車両2bを停止させる。そして、前方車両である後続車両2aが走行を再開することにより、車間距離ΔLが危険距離L2以上となった場合には(ステップSA6において「YES」)、ステップSA7に移行し、目標速度V=k(ΔL−L2)による走行を開始する。
【0036】
次に、本実施形態に係る追尾システム10の作用について説明する。
まず、先導車両1において、人の運転により走行が開始されると、先導車両1の制御装置17には、位置検出部11、IMU12、車速センサ13から各種検出情報が入力されるとともに、ステアリングアクチュエータ14、アクセル・ブレーキアクチュエータ15から操作量が入力される。
【0037】
これにより、制御装置17においては、位置検出部11からの入力情報等に基づいて現在位置が検出され、この現在位置の軌跡を取ることにより走行軌跡が作成される。また、所定の距離間隔で操作量が記録され、その操作量と位置情報とが対応付けられることにより操作量テーブルが作成される。例えば、操作量テーブルは、走行軌跡上に設定された各地点A,B,C,D・・・と該地点A,B,C,D・・・をそれぞれ通過したときの操作量が対応付けられている。
【0038】
制御装置17により作成された走行軌跡および操作量テーブルは、所定のタイミング、例えば、所定の時間間隔、或いは、所定の距離間隔で通信装置16を介して後続車両2a,2bに送信される。なお、ここでの情報の送信タイミングについては、任意に設定可能である。例えば、後続車両2a,2bが既に走行を開始している場合には、所定の時間間隔で定期的に送信する必要があるし、また、先導車両1が走行を終了した後に、後続車両2が走行を開始するような場合には、先導車両1の走行が終了してから一括してこれらデータを後続車両2に送信することとしてもよい。
【0039】
後続車両2a,2bは、先導車両1からの走行軌跡および操作量テーブルを受信すると、これらの情報に基づく先導車両1の追尾走行を行う。
後続車両2a,2bにおいては、位置検出部21からの入力情報等に基づいて制御装置28により現在位置が検出され、また、カメラ22およびLRF23からの情報に基づいて周辺の状況が3次元モデルとして得られる。そして、これらの情報に基づいて自己の目標走行経路を設定することで、先導車両1が通過した走行軌跡に沿って走行を行うとともに、操作量テーブルおよび前方車両との車間距離ΔLに基づいて決定される操作量をステアリングアクチュエータ26およびアクセル・ブレーキアクチュエータ27に与えることにより、上述したような目標速度Vに基づく走行速度での自動追尾走行が実現される。
【0040】
次に、後続車両2a,2bにおいて実施される走行速度の制御について具体的に説明する。ここでは、説明を簡潔にするために、後続車両2bが行う走行速度の制御について図6を参照して説明する。
例えば、図6に示されるように、時刻t0において、前方車両である後続車両2aとの車間距離ΔLは警告距離L1以上であるので、後続車両2bの制御装置28は、先導車両1から受信した操作量テーブルから現在位置に対応する操作量を取得し、取得した操作量に応じた目標速度Vを設定することにより、走行速度の制御を行う。
これにより、図6における時刻t0からt1の期間においては、先導車両1が各地点A,Bを通過したときの速度で後続車両2bも地点A,Bを走行することとなる。
【0041】
次に、前方車両である後続車両2aが何らかの原因で停止あるいは減速するなどして、車間距離ΔLが徐々に減少し、時刻t1において、車間距離ΔLが警告距離L1未満となると、後続車両2bの制御装置28は、目標速度Vにk(ΔL−L2)を設定することにより、減速する。これにより、図6における時刻t1からt2の期間において、車間距離ΔLに応じた目標速度Vでの走行が行われる。
【0042】
また、更に前方車両の後続車両2aが停止してしまうことにより、時刻t2において車間距離ΔLが危険距離L2未満となると、後続車両2bの制御装置28は、目標速度Vにゼロを設定することにより、後続車両2bの走行を停止させる。これにより、図6の時刻t2から時刻t3の期間において、後続車両2bは停止した状態となる。
【0043】
そして、前方車両である後続車両2aが運転を再開することにより、時刻t3において、車間距離ΔLが危険距離L2以上となると、後続車両2bの制御装置28は、目標速度Vにk(ΔL−L2)を設定することにより、車間距離ΔLに応じた走行速度の制御を行う。これにより、図6における時刻t3からt4の期間において、車間距離ΔLに応じた目標速度Vでの走行が行われる。
【0044】
そして、時刻t4において、車間距離ΔLが警告距離L1以上となると、後続車両2bの制御装置28は、先導車両1から受信した操作量テーブルから現在位置に対応する操作量を取得し、取得した操作量に応じた目標速度Vを設定することにより、走行速度の制御を行う。これにより、時刻t4からは、先導車両1が各地点C,Dを通過したときの速度で後続車両2bも地点C,Dを通過することとなる。
【0045】
以上説明してきたように、本実施形態に係る追尾システム10および自動走行車両2a,2bによれば、前方車両との車間距離ΔLに応じて走行速度が制御されるので、例えば、車間距離ΔLが狭くなった場合には、走行を停止する制御を行うことにより前方車両との衝突を避けることが可能となる。これにより、安定した追尾走行を実現することが可能となる。
また、車間距離ΔLが危険距離L2以上警告距離L1未満の場合には、車間距離ΔLに応じた目標速度V=k(ΔL−L2)で走行することとなるので、車両の停止および走行開始を円滑に行うことができる。
【0046】
なお、上述した実施形態においては、後続車両の停止中において、車間距離ΔLが危険距離L2以上となった場合に走行を開始または再開していたが、走行を停止する閾値と走行を開始する閾値とにヒステリシスを持たせることとしてもよい。例えば、走行を開始する閾値を、危険距離L2以上警告距離L1未満の値をとる第3の閾値に設定することで、停止と走行の再開をより円滑に行うことが可能となる。
また、上述した実施形態においては、前方車両との車間距離ΔLをカメラ21およびLRF22により取得される情報に基づいて求めていたが、これに代えて、距離を計測する距離計測センサ等を設けることにより、車間距離ΔLを検出することとしてもよい。
【0047】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る追尾システムについて説明する。
例えば、先導車両1の後を複数台の後続車両2a,2bが隊列走行する場合、複数台の車両が同じ経路を通過することにより土壌等の路面状態が変わるおそれがある。これにより、先導車両1が通過したときの路面状態と最後尾の後続車両が通過するときの路面状態に差異が生じ、後続車両が安定した隊列走行を行うことが困難となる。
このような問題を解消すべく、本実施形態では、以下のような構成を設けている。なお、本実施形態に係る追尾システムは、上述した第1の実施形態と略同様の構成を有している。以下、異なる点について主に説明する。
【0048】
まず、本実施形態に係る追尾システムにおいて、後続車両2a,2bの制御装置28は、悪路を検出する悪路検出機能(悪路検出手段)を備えており、悪路が検出された場合に走行速度を減速または走行を停止させる。ここで、悪路とは、例えば、ぬかるみ等など路面状態が悪い道をいう。
【0049】
〔悪路検出方法1〕
制御装置28は、例えば、加速度の変化に基づいて悪路を検出する。例えば、後続車両2a,2bに、加速度センサ(図示略)を設け、制御装置28が加速度センサにより検出された加速度が予め設定されている閾値を超えている場合に、路面状況が悪化していると判断する。
【0050】
〔悪路検出方法2〕
路面状態が悪い場合、車両がスリップすることが考えられる。従って、制御装置28は、車体のスリップ状態を検出することにより、悪路の検出を行う。具体的には、後続車両2a,2bの制御装置28は、位置検出部21により検出される現在位置に基づく実際の移動量と、車速センサ24からの車速パルスに基づいて計算される見かけ上の移動量とを比較し、これらの移動量の差が予め設定されている閾値を超えた場合に、スリップ状態であると判断する。つまり、路面状況が悪化していると判断する。
なお、上記方法に代えて、例えば、カメラ22により取得される周辺画像の動きから実際の移動量を求め、この実際の移動量と車速パルスに基づいて計算される見かけ上の移動量とを比較し、これらの差分が予め設定されている閾値を超えた場合に、スリップ状態である、つまり、路面状況が悪化していると判断してもよい。
【0051】
〔悪路検出方法3〕
先導車両1にカメラを設け、このカメラにより先導車両1が通過する路面の状態を画像情報として取得する。そして、この画像情報を位置検出部11により検出される位置情報と対応付けて後続車両2a,2bに送信する。
後続車両2a,2bの制御装置28は、自己が有するカメラ22等により取得される走行方向における路面の画像情報と、先導車両1のカメラにより取得された同じ位置の路面の画像情報とを比較し、路面の凹凸状態が悪化していた場合に、悪路であると判断する。
【0052】
以上説明してきたように本実施形態に係る追尾システムおよび自動走行車両によれば、隊列を編成して走行する複数台の後続車両が同じ経路を通過することにより、先導車両が通過したときの路面状態と後続車両が通過するときの路面状態に差異が生じたとしても、後続車両は安定した隊列走行を行うことが可能となる。
【0053】
なお、上述した実施形態において、悪路が検出されることにより減速または走行を停止した場合には、その後続車両の制御装置は、その旨を他の後続車両および先導車両に送信することとしてもよい。
このように、悪路により減速または走行を停止した旨を他の車両に通知することにより、先導車両においては、悪路によって減速または走行停止した後続車両に合わせた速度、例えば、走行速度を遅くする或いは走行を停止することにより、隊列状態を維持することが可能となる。また、悪路によって減速または走行の停止を行った後続車両に追尾して走行している後続車両については、路面状況が悪化している旨およびその位置情報を通知することにより、例えば、悪路を回避する走行を示唆することが可能となる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る追尾システムおよび自動走行車両について説明する。
先導車両の車種と後続車両の車種とが異なる場合、先導車両から受信した操作量をそのまま用いてしまうと走行に支障が生ずる。
例えば、異種車両の場合、車両重量、車輪サスペンションの設計等が異なる場合がある。この場合、先導車両から受信する操作量に従って走行を行うと、カーブなどにおいて遠心力、走行軌跡等が異なることとなり、安定した走行が困難となるおそれがある。
このような問題を解消すべく、本実施形態では、以下のような構成を設けている。なお、本実施形態に係る追尾システムは、上述した第1の実施形態と略同様の構成を有している。以下、異なる点について主に説明する。
【0055】
本実施形態では、後続車両2a,2bに、加速度を検出する加速度センサを設け、制御装置28は、加速度センサの検出結果から幅方向(走行方向に直交する方向)の加速度(遠心力)を求め、この加速度が予め設定されている第4の閾値を超えた場合に減速し、また、該加速度が予め設定されている第4の閾値よりも小さい第5の閾値を下回った場合に、加速する(図7参照)。
【0056】
以上説明してきたように、本実施形態に係る追尾システム及び自動走行車両によれば、後続車両の幅方向における加速度を検出し、この加速度に応じて減速、加速を行うので、先導車両と後続車両との車種が異なり、カーブにおける遠心力や走行軌跡が異なる場合でも安定した走行を実現することができる。
【0057】
なお、上記幅方向における加速度は、加速度を用いて計測する方法に代えて、例えば、サスペンション変位量を計測するセンサを設け、この車輪のサスペンションの変位量から車体の傾き量を演算することにより、幅方向の加速度を求めることとしてもよい。
また、上述した車種の差異による減速を行った場合には、当該後続車両が他の後続車両及び先導車両にその旨の情報を送信することとしてもよい。これにより、隊列走行を行っている全車両の速度を柔軟に変更することができる。
【0058】
また、上記幅方向の加速度に基づいて走行速度を制御する場合に代えて、例えば、図7に示すように、後続車両の制御装置が、先導車両1から受信した走行軌跡から導き出されるカーブの旋回半径Rと、先導車両1から受信した操作量に基づいてカーブを走行するときの目標旋回半径rとを比較し、先導車両1の旋回半径Rよりも自己の目標旋回半径rが小さい場合に、減速を行うこととしてもよい。
このように、カーブを走行するときの走行軌跡の差異から走行速度の制御を行うことによっても、先導車両と後続車両との車種の異なりに起因する隊列走行の問題を解消することが可能である。
【0059】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る追尾システムおよび自動走行車両について説明する。
上述したように、本発明の追尾システムは、後続車両が先導車両から受信した走行軌跡および操作量テーブル等に従って自律走行を行うものであるが、先導車両が通過した後に、その走行軌跡上に動的に障害物が進入した場合、後続車両はこの障害物を先導車両と区別することができない。
例えば、図3に示される後続車両2a,2bが搭載しているカメラ22およびLRF23のような環境認識センサ(環境認識手段)では、先導車両と障害物とを区別することが難しい。
【0060】
この場合、例えば、故障などによって先導車両が停止した場合には、当該先導車両を障害物と誤認識して先導車両を回避するような走行を後続車両が行い、隊列編成が乱れる可能性がある。また、環境認識センサによる障害物検知を行わなかった場合には、障害物を検出することができずに、最悪の場合、障害物に衝突する可能性がある。
【0061】
このような問題を解消すべく、本実施形態では、以下のような構成を設けている。なお、本実施形態に係る追尾システムおよび自動走行車両は、上述した第1の実施形態と略同様の構成を有している。以下、異なる点について主に説明する。
【0062】
まず、本実施形態に係る追尾システムにおいて、先導車両1は、定期的に現在位置を後続車両に送信する。後続車両2a,2bの制御装置28は、自己が備えるカメラ12、LRF13からの検出情報に基づいて周囲の2次元または3次元のマップイメージを作成し、この2次元または3次元のマップイメージ上に、先導車両から受信した現在位置に基づいて、先導車両を書き込む。このとき、図8に示すように、マップイメージ上に、先導車両と異なる位置に異物が検出されていた場合には、この異物を障害物として認識し、該障害物を回避する走行軌跡を設定する。また、マップイメージ上に書き込まれた先導車両と同じ位置に検出された異物は、先導車両として認識する。
【0063】
以上説明してきたように、本実施形態に係る追尾システムおよび自動走行車両によれば、先導車両の走行軌跡上に障害物が進入してきた場合でも、後続車両は障害物回避、停止などの判断を行うことが可能となる。これにより、隊列状態を維持しながら安定した走行を実現することが可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述した各実施形態は、可能な範囲で任意に組み合わせ可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る追尾システムの概略構成を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る先導車両の概略構成を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る後続車両の概略構成を示した図である。
【図4】図3に示した後続車両の制御装置が参照する速度テーブルの一例を示した図である。
【図5】図3に示した後続車両の制御装置により実行される走行速度制御のフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る後続車両の制御装置により実行される走行速度制御の具体例について示した図である。
【図7】先導車両と後続車両との車種が異なる場合におけるカーブの旋回半径の違いについて説明するための図である。
【図8】マップイメージの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0066】
1 先導車両
2a,2b 後続車両
10 追尾システム
21 位置検出部
22 カメラ
23 LRF(レーザレンジファインダ)
24 車速センサ
25 IMU
26 ステアリングアクチュエータ
27 アクセル・ブレーキアクチュエータ
28 制御装置
29 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、
前方車両との車間距離を計測する距離計測手段と、
前記前方車両との車間距離に応じて走行速度を制御する制御手段と
を具備する自動走行車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記前方車両との車間距離が予め設定されている第1の閾値未満となった場合に減速し、該車間距離が前記第1の閾値よりも小さい値である第2の閾値未満となった場合に走行を停止し、該距離が前記第2の閾値以上第1の閾値未満である第3の閾値以上となった場合に走行を開始または再開する請求項1に記載の自動走行車両。
【請求項3】
前記制御手段は、前記前方車両との車間距離が第2の閾値以上第1の閾値未満の場合に、該車間距離に比例した速度を目標速度として設定する請求項1または請求項2に記載の自動走行車両。
【請求項4】
先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、
前記先導車両の走行軌跡上に存在する悪路を検出する悪路検出手段と、
悪路検出手段により悪路が検出された場合に、減速する制御手段と
を具備する自動走行車両。
【請求項5】
加速度を検出する加速度センサを備え、
前記悪路検出部は、前記加速度センサにより検出された加速度が予め設定されている閾値を超えた場合に悪路であると判断する請求項4に記載の自動走行車両。
【請求項6】
位置検出手段と、
車速センサと
を更に備え、
前記悪路検出手段は、前記車速センサから出力される車速パルスに基づいて見かけ上の移動量を算出するとともに、前記位置検出手段からの情報に基づいて実際の移動量を算出し、見かけ上の移動量と実際の移動量との差分が予め設定された閾値以上であった場合に、悪路であると判断する請求項4に記載の自動走行車両。
【請求項7】
前記先導車両により撮影された路面の画像を受信する通信手段と、
前方近傍の路面を画像として取得する画像取得手段と
を更に備え、
前記悪路検出手段は、前記画像取得手段により取得された路面の画像に基づいて路面の凹凸状態を検出し、該凹凸状態が、前記先導車両から受信した同位置における路面の画像に基づいて検出した路面の凹凸状態よりも悪化していた場合に、悪路であると判断する請求項4に記載の自動走行車両。
【請求項8】
先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、
加速度を検出する加速度手段と、
前記加速度手段により検出された加速度に基づいて走行方向に直交する方向の加速度を求め、該加速度が予め設定されている第4の閾値以上となった場合に減速し、該加速度が予め設定されている第5の閾値以下となった場合に加速する自動走行車両。
【請求項9】
先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、
前記先導車両から走行軌跡と操作量に関する情報とを受信する通信手段と、
前記通信手段により受信された前記先導車両の走行軌跡からカーブにおける旋回半径を検出するとともに、該走行軌跡及び前記操作量から自己が走行しようとするカーブの旋回半径を求め、自己が走行しようとするカーブの旋回半径が前記先導車両の旋回半径よりも小さい場合に減速する制御手段と
を具備する自動走行車両。
【請求項10】
先導車両に追従して自動走行する自動走行車両であって、
前記先導車両の位置情報を受信する通信手段と、
走行方向近傍の環境を認識する環境認識手段と、
前記通信手段により取得された前記先導車両の位置情報と、前記環境認識手段により取得された走行方向近傍の環境とに基づいて近傍の空間領域をマップイメージに展開し、該マップイメージに基づいて障害物の有無を判定し、該判定結果に応じて走行制御を行う制御手段と
を具備する自動走行車両。
【請求項11】
前記制御手段により減速が行われた場合に、その旨を他の車両に通知する請求項1から請求項10のいずれかに記載の自動走行車両。
【請求項12】
先導車両と、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の自動走行車両と
を具備する追尾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−207729(P2008−207729A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47624(P2007−47624)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】