説明

自動車の倍力油圧ブレーキシステムを駆動するための方法、および自動車の倍力油圧ブレーキシステム用の制御機構

本発明は、自動車の倍力油圧ブレーキシステムを駆動するための方法に関するものであり、それが、ブレーキシステムの油圧ブレーキパワーに加えて、少なくとも一つのホイール(60)に作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーの増加または減少に関する情報を求めるステップ、ブレーキ入力要素(56)と一緒にパワー結合要素に結合されたブレーキ倍力装置(58)により供給される補助パワーを、情報を考慮してパワー差だけ変更することにより、追加ブレーキパワーの増加または減少に対応して、油圧ブレーキパワーを変更するステップ、そして求めた情報を考慮して、少なくとも一つのプランジャ(88a,88a’,88b,90)および/または少なくとも一つの二室シリンダの少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間で、ブレーキシステムのブレーキ媒体の体積量を移動することにより、パワー差に対応するバランスパワーをブレーキ入力要素(56)に作用させるステップを有している。更に本発明は、自動車の倍力油圧ブレーキシステム用の制御機構(25)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の倍力油圧ブレーキシステムを駆動するための方法に関するものである。更に本発明は、自動車の倍力油圧ブレーキシステム用の制御機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばブレーキペダルのようなブレーキシステムのブレーキ入力要素を、自動車の運転者が快適に操作することを可能にするために、ブレーキシステムは通常、ブレーキ倍力装置を有している。ブレーキ倍力装置を備えたブレーキシステムは、しばしば倍力ブレーキシステムと呼ばれる。
【0003】
ブレーキ倍力装置は、運転者がブレーキ入力要素に作用する運転者ブレーキパワーに加えて、少なくとも一つのホイールにブレーキをかけることを起こす補助パワーを供給するように設計されている。適切なブレーキ倍力装置は、例えば特許文献1、2、3に記載されている。
【0004】
図1Aおよび1Bは、従来のブレーキ倍力装置の機能方法を説明するための概略図を示している。
【0005】
図1Aにおいて一部を概略記載しているブレーキシステムは、例えばブレーキペダルとして構成されているブレーキ入力要素10を有している。運転者はブレーキ入力要素10の操作を介して、運転者ブレーキパワーFfおよび第一変位ストロークs1を、更に続くブレーキシステムの部品、例えば入口側ピストン12に作用させることができる(図1Bの補充回路図を参照)。加えて運転者ブレーキパワーFfは、(図示していない)ブレーキ入力要素センサ系を介して検知できる。ブレーキ入力要素センサ系に含まれるのは、例えば運転者ブレーキパワーFfを測定するためのパワーセンサおよび/または、ブレーキ入力要素10の変位可能部品の第一変位ストロークs1を検知するためのストロークセンサである。
【0006】
ブレーキシステムは更に、ブレーキ倍力装置14を有している。そのブレーキ倍力装置14が、補助パワーFuを供給するように設計されており、それにより運転者は、自分の自動車にブレーキをかけるために必要なパワーを、完全に運転者ブレーキパワーFfとしてかける必要がない。ブレーキ倍力装置14により供給される補助パワーFuは、例えば運転者ブレーキパワーFfの関数とされていることがある。
【0007】
ブレーキ入力要素10およびブレーキ倍力装置14は、少なくとも運転者ブレーキパワーFfおよび補助パワーFuで全ブレーキパワーFgを生じるように、ブレーキシステムに配設されている。しかしながら全ブレーキパワーFgに、更に少なくとも一つの別のパワーを含んでいることもある。ブレーキ倍力装置14は例えば、図示の応答ディスク18のようなパワー結合要素に入口側ピストン12と共に結合された補助ピストン16に、補助パワーFuおよび第二変位ストロークs2を伝達する。図1Bの補充回路図では、入口側ピストン12が応答ディスク18の第一ポイントP1に、そして補助ピストン16が第二ポイントP2に作用している。専門家であれば分かるように、P1およびP2が面に相当することがある。例えばパイプ形状の補助ピストン16の場合には、ポイントP2がリング面である。
【0008】
以上のようにして全ブレーキパワーFgおよび第三変位ストロークs3を、パワー結合要素の出口側に配設された部品、例えば出口側ピストン20に伝達することができる。そこで出口側ピストン20は、第三ポイントP3ないし相当する面で応答ディスク18に接触している。
【0009】
指数xは、ポイントP2とP3間の第一間隔およびポイントP3とP1間の第二間隔の割合で決まる。弾性体の応答ディスク18の場合には、運転者ブレーキパワーFf≠0および/または補助パワーFu≠0の時に変形する(図1Bでは図示していない)。応答ディスク18の撓みは、弾性eとして規定することがある。
【0010】
出口側ピストン20は、主ブレーキシリンダ22の変位可能な部品21に結合されている。少なくとも一つのホイールブレーキシリンダを有すると共にブレーキ媒体を満たした(図示していない)ブレーキ回路が、主ブレーキシリンダ22に接続されている。少なくとも一つのホイールブレーキシリンダ内のブレーキ圧力を変えることにより、関連配置された少なくとも一つのホイールに、全ブレーキパワーFgに相当する油圧ブレーキモーメントないし、相当する油圧ブレーキパワーを作用させることができる。
【0011】
更に特許文献4には、ジェネレータを備えた自動車用ブレーキシステムおよび、ジェネレータを備えたブレーキシステムを駆動するための該当方法が記載されている。油圧ブレーキモーメントに加えて、ジェネレータブレーキモーメントが少なくとも一つのホイールに作用すると、シミュレーションユニットが制御されることになり、それによりジェネレータブレーキモーメントに相当する油圧流体量がブレーキシステムから取り出され、そしてシミュレーションユニットの少なくとも一つの貯油室に中間保管されて、ジェネレータブレーキモーメント分の油圧ブレーキモーメントを低減する。ジェネレータブレーキモーメントが働かない時には対応して油圧流体量が、油圧ブレーキモーメントを増加するために油圧ブレーキシステムに逆移動されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE 10 2005 024 577 A1号公報
【特許文献2】DE 10057 557 A1号公報
【特許文献3】DE 103 27 553 A1号公報
【特許文献4】DE 10 2007 030 441 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明により、自動車の倍力油圧ブレーキシステムを駆動するための請求項1の特徴を有する方法、および自動車の倍力油圧ブレーキシステム用の請求項4の特徴を有する制御機構を得る。
【0014】
本方法および制御機構の利点ある実施形態は、従属請求項に記載している。
【発明の効果】
【0015】
本発明により可能になることは、自動車の少なくとも一つのホイールに作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーにブレーキ倍力装置の補助パワーを適合させること、利点のある実施形態では特に、適合した補助パワーを使って少なくとも一つの追加ブレーキパワーを相殺する、および/または分からないようにすることである。同じく、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムで貯油室外部の容積との間における体積量の移動を介して、従来技術と違い運転者が操作するブレーキ入力要素で最適化された位置/応答性能を、補助パワーの変化にも拘わらず実現することができる。このことにより、自動車で求められる目標全ブレーキモーメントを与えるブレーキ入力要素の操作時に、運転者には改善された操作快適性が保証される。
【0016】
本発明による方法および対応する制御機構は、簡単な構造のコスト的に有利なブレーキシステムに適用することができる。本方法を実施するために、そして制御機構を使用するために、ブレーキシステムに対して高価なセンサ系を特に必要としない。
【0017】
少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダを使用することにより、ブレーキ媒体を少なくとも一つの貯油室空間の中に満たす、又は中から取り出すことが、運転者の認識できる騒音および/または運転者が気付くブレーキ入力要素の変位(振動)と結びつかない。このことが、ブレーキシステムのNVH値(ノイズ・振動・ハーシュネス)の顕著な改善と結びついている。特に少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダが、少なくとも一つの貯油室容積の中へ又は中からブレーキ媒体体積量を“ソフトに”移動することを可能にする。この“ソフトな”移動は、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダと主ブレーキシリンダ間で必要な分離バルブを閉じなくても、運転者が聞き取りできず気付くこともないという利点がある。このことは特に、この種の分離バルブをブレーキシステムに装着することを廃止するために使用できる。
【0018】
例えば、以下の実施形態を使って詳細に説明するように、作用する少なくとも一つの追加パワーを、本発明を使って分からないようにすることができ、例えばブレーキ入力要素の“引きずり”または“引き込み”のような逆作用を介して運転者が気付くことがない。同時に運転者は、本発明による技術が働いている間に、能動的且つ直接、ブレーキシステムの少なくとも一つのホイールブレーキシリンダに“割り込んでブレーキをかける”ことができる。運転者が例えば、本発明による技術を遂行している間に後から踏み込むと、追加的に高い油圧ブレーキモーメントを迅速に構築するために、ブレーキ倍力装置のフル補助パワーを利用することができる。
【0019】
特に特許文献4と較べて本発明は、主ブレーキシリンダの変位可能部品に全ブレーキパワーが作用する前に既に、追加のジェネレータブレーキモーメントを分からないようにすることが行われるという利点を有している。ブレーキ倍力装置における補助パワーが対応して減少することにより、前圧力ないし主ブレーキシリンダから移動される体積量が減少する。以上により、少なくとも一つの貯油室空間に移動するべき体積量も低減することができる。このことにより、特許文献4の技術を実施するために必要な従来の貯油室空間と較べて、貯油室空間の大きさを減少することが可能になる。構造空間が切り詰められることにより、より簡単に追加の部品を自動車に取り付けることができる。同時に、少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素、例えばプランジャの電動モータが遂行する出力を低減することができる。従って、よりコストの安いポンプ、バルブ、プランジャ、および/または二室シリンダを使用することができる。少なくとも一つの貯油室空間から体積量を迅速に逆移送すること、それは明らかに大きなモータ出力に結びつくが、高い油圧ブレーキモーメントを迅速に構築するために、それが不可欠とはならない。
【0020】
少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダを使用することにより、圧力センサを使用する代替として追加的に、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの制御信号および、場合により測定信号を使って、圧力査定/圧力計算が可能である。適切な制御信号および/または測定信号とは例えば、制御電流および/または、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの変位可能要素におけるストローク測定信号である。
【0021】
本発明の更なる特徴および利点を、図面を使って以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】従来のブレーキ倍力装置の機能方法を説明するための概略図。
【図1B】従来のブレーキ倍力装置の機能方法を説明するための概略図。
【図2】本方法の第一実施形態を説明するためのフローダイアグラム。
【図3】制御機構の実施形態の概略図。
【図4】倍力油圧ブレーキシステムの第一実施形態の概略図。
【図5】油圧ブレーキシステムのプランジャに対する第一構成例の概略図。
【図6】油圧ブレーキシステムのプランジャに対する第二実施例の概略図。
【図7】倍力油圧ブレーキシステムの第二実施形態の概略図。
【図8A】本方法の第二実施形態を説明するための、ブレーキシステムの結合メカニズムの概略図。
【図8B】本方法の第二実施形態を説明するための、ブレーキシステムの結合メカニズムの概略図。
【図8C】本方法の第二実施形態を説明するための、ブレーキシステムの結合メカニズムの概略図。
【図8D】本方法の第二実施形態を説明するための、ブレーキシステムの結合メカニズムの概略図。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
特許請求の範囲に記載されている手段を採っている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、本方法の第一実施形態を説明するためのフローダイアグラムを示している。
【0025】
方法ステップS1においては、ブレーキシステムの油圧ブレーキパワーに加えて、少なくとも一つの自動車ホイールに作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーの、増加または減少に関する情報を求める。その情報には大きさ、信号、および/または測定値を含んでいることがあり、それらはブレーキシステムの油圧ブレーキモーメントに加えて、少なくとも一つ追加パワーが少なくとも一つのホイールに作用することを示すものである。情報として求めることがあるのは、例えばジェネレータブレーキモーメント、摩擦力、および/または重力斜面方向成分の少なくとも増加または減少に関する情報である。この種の情報は、自動車固有のジェネレータブレーキモーメント、極端な摩擦力、および/または重力斜面方向成分が、少なくとも一つのホイールにゼロではなく作用するかどうか、および/またはその増加または減少が、規定の最小差異より大きいかどうかを説明することができる。しかしながら、規定された最小差異がゼロに等しいこともある。それに対する代替又は補完として、情報を求める時に自動車が静止状態にあるかどうかを調べることもある。
【0026】
方法ステップS2においては、増加または減少が規定の最小量より大きい場合に、ブレーキ入力要素と共にパワー結合要素に結合されたブレーキ倍力装置が供給する補助パワーを、パワー差だけ変更する。求めた情報を考慮して補助パワーの変更を行い、追加ブレーキパワーの増加または減少に対応して油圧ブレーキパワーを変更する。
【0027】
例えば情報としてジェネレータブレーキモーメント、摩擦力、および/または重力斜面方向成分の少なくとも一つの増加または減少に関する情報を求める時には、ジェネレータブレーキモーメント、摩擦力、および/または重力斜面方向成分の増加または減少を相殺するパワー差だけ、補助パワーを変更することがある。以上のようにして特に、油圧ブレーキモーメントとジェネレータブレーキモーメントの合計が、目標の全ブレーキモーメントに等しくなるように、ブレーキ倍力装置の補助パワーを変えることができる。同じく、例えばアイスバーン上の走行時のような極端に低い摩擦力にも拘わらず、油圧ブレーキモーメントを適合させることにより目標の全ブレーキモーメントを保証できるように、補助パワーを新しく決定することもある。それに対する代替または補完として、特に傾斜面におけるブレーキ時に極度の重力斜面方向成分にも拘わらず補助パワーを、極度に大きな重力斜面方向成分にも拘わらず運転者が望む自動車の減速を維持するように決定することがある。
【0028】
更に、少なくとも一つ追加ブレーキパワーとして作用する固着摩擦力で、自動車が静止状態にあることが情報として求められると、補助パワーに等しいパワー差だけ補助パワーを低減することがある。そのようにすることで自動車の静止時に、ブレーキ倍力装置のエネルギー消費を低減することができる。
【0029】
引き続き方法ステップS3においては、パワー差に相当するバランスパワーがブレーキ入力要素に働くように、求めた情報を考慮してブレーキシステムのブレーキ媒体の体積量を、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間で移動する。求めた情報を考慮することが、求めた情報から導き出した大きさを考慮することを意味することもある。ブレーキシステムの貯油室外部の容積とは、ブレーキシステムで少なくとも一つの貯油室空間外部にある少なくとも一つの部分範囲の容積と解釈することができ、それが貯油室空間と接続していることにより、貯油室空間を満たす又は空にすることで、貯油室外部の容積における圧力減少または圧力増加となる。貯油室外部の容積を、ブレーキシステムの貯油室外部の残余容積と呼ぶこともあり、それが貯油室空間とのブレーキ媒体の入れ替えを行うことができる。
【0030】
本方法の好ましい実施形態では目標体積移動量の決定を、補助パワーのパワー差から生じてブレーキ入力要素に作用する変位パワーをバランスパワーが相殺するように行う。方法ステップS1〜S3を実施するための簡単に実施できる方法に関しては、以下において詳細に取り扱う。
【0031】
上記の段落で説明した方法は、例えば回生ブレーキシステムにおいて、時間的に変化するジェネレータブレーキモーメントを分からないようにするために適用できる。ここで説明した方法は同じく、自動車の静止状態ではブレーキ倍力装置により作用する補助パワーを低減し、それによりエネルギーを節約するために使用することができる。しかしながら、ここで説明している方法を適用する可能性が、列挙した例に限定されるものではない。
【0032】
図3は、制御機構の実施形態の概略図を示している。
【0033】
図3において概略的に図示している制御機構25は、入力装置26を有しており、それが、ブレーキシステムの油圧ブレーキパワーに加えて自動車の少なくとも一つのホイールに作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーの、増加または減少に関する情報27を受信するように設計されている。入力装置26は更に、追加ブレーキパワーの増加または減少が規定の最小差異より大きいと、その情報に対応する少なくとも一つの受信信号28を発信するように設計されている。
【0034】
制御機構25の第一評価装置29は、ブレーキ入力要素と共にパワー結合要素に結合されたブレーキ倍力装置により供給可能な補助パワーの目標変更に関して、少なくとも一つの受信信号28を考慮して目標パワー変更量を決定するように設計されている。第一評価装置29により目標パワー変更量を適切に決定するための利点ある可能性に関しては、上記および以下に記載している例を参照されたい。引き続いて第一評価装置29は、決定された目標パワー変更量に対応する第一評価信号30を、制御機構の第一制御装置31に出力する。
【0035】
第一制御装置31は、決定された目標パワー変化量に対応する第一制御信号32を、(図示していない)ブレーキ倍力装置に出力するように設計されている。第一制御装置31を使ったブレーキ倍力装置の制御に関しては、以下において更に詳細に取り扱う。以上のようにして、決定された目標パワー変化量に対応するパワー差だけ補助パワーを、そして追加ブレーキパワーの増加または減少に対応して油圧ブレーキパワーを変えることが実現できる。
【0036】
図示している実施形態においては第一評価装置29が更に、第二評価信号33を制御機構25の第二評価装置34に発信するように設計されている。第二評価信号33には、受信情報27の少なくとも一部および/または決定された目標パワー変化量を含んでいることがある。第二評価装置34は、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間におけるブレーキシステムのブレーキ媒体の目標体積移動に関して、第二評価信号33を考慮しながら、即ち、少なくとも一つの受信信号28を間接的に考慮しながら、目標体積移動量を決定するように設計されている。運転者がブレーキ入力要素の位置/機能方法の変化を感知しないように、補助パワー、従って全ブレーキパワーの変化を相殺する目標体積移動量を決定するための利点ある方法は、以下に記載している。
【0037】
目標体積移動量を決定した後に第二評価装置34は、第三評価信号35を制御機構25の第二制御装置36に出力する。第二制御装置36は、第三評価信号35により起動可能であり、決定された目標体積移動量に対応する第二制御信号37を、ブレーキシステムの少なくとも一つの(図示していない)ブレーキ媒体移送要素に出力する。少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素は、目標体積移動量に対応するブレーキ媒体体積を少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間で、ブレーキ媒体移送要素を使って移動可能であるように、第二制御信号37を使って制御できると好ましい。
【0038】
以上のようにすることにより、決定された目標体積移動量に対応してブレーキ媒体の体積量を、少なくとも一つの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間で移動可能であり、そしてパワー差に対応するバランスパワーを、ブレーキ入力要素に作用させることが可能になることが保証されている。ブレーキ媒体体積量を移動することにより特に、少なくとも補助パワーと運転者ブレーキパワーで構成されていると共に主ブレーキシリンダの変位可能部品に作用する全ブレーキパワーの、第一制御信号32を介して制御された変化を相殺することができる。この場合には移動するブレーキ媒体体積量が、ブレーキ入力要素に対して新しく決定された全ブレーキパワーの作用を相殺するバランスパワーを生じることができる。
【0039】
利点ある実施形態においては第二制御装置36が例えば、少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素としての少なくとも一つのプランジャモータを、第二制御信号37を使って制御するように設計されていることがある。それに対する代替または補完として第二制御装置36が、少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素としての少なくとも一つのポンプおよび/または少なくとも一つのバルブを、決定された目標体積移動量を考慮しながら、第二制御信号37を使って制御するように設計されていることもある。このことを、少なくとも一つの二室シリンダの第一空間の容積増加を介して目標体積移動量に相当する体積を、少なくとも一つの二室シリンダの第二空間から貯油室外部の容積に移動できるように行うと好ましい。対応して、制御されたバルブを通って第一空間からブレーキ媒体が流出することを介した第一空間の容積減少が、貯油室外部の容積から第二空間への目標体積移動量に対応するブレーキ媒体移動を引き起こすように、第二制御装置36を使ってバルブを制御できるようにしていることもある。第二制御信号37を使い対応して制御可能なプランジャおよび/または二室シリンダに対する利点ある実施形態に関しては、以下で更に詳細に取り扱う。
【0040】
【実施例1】
【0041】
図4は、倍力油圧ブレーキシステムの第一実施形態の概略図を示している。
図4において概略的に図示している自動車用油圧ブレーキシステムには、主ブレーキシリンダ50を含み、それが少なくとも一つの接続導管54を介してブレーキ媒体タンク52と接続している。例えばブレーキペダルとして構成されたブレーキ入力要素56は、主ブレーキシリンダ50に結合されており、それを使って油圧ブレーキシステムを備えた自動車の運転者が、ブレーキ入力要素56の操作を介して主ブレーキシリンダ50内で圧力変化を起こすことができる。運転者を補助するためにブレーキ倍力装置58が、主ブレーキシリンダ50に結合されており、それにより運転者によるブレーキ入力要素56の操作時に、少なくともブレーキ入力要素56に作用する運転者ブレーキパワーおよびブレーキ倍力装置58により供給される補助パワーで構成される全ブレーキパワーが、主ブレーキシリンダ50内の圧力変化を起こすことができる。従って、自動車の少なくとも一つのホイール60にブレーキをかけるための、運転者が負荷する運転者ブレーキパワーを低減することができる。ブレーキ倍力装置58は、例えばメカトロニクスによるブレーキ倍力装置(iブースタ)として、又は油圧のブレーキ倍力装置として構成されていることがある。ブレーキ倍力装置58は、制御/調整可能なブレーキ倍力装置として構成されていると好ましく、それによりブレーキ倍力装置58の更に別の利用が可能になる。
【0042】
主ブレーキシリンダ50には、少なくとも一つのブレーキ回路62aと62bが接続されており、それによりブレーキ媒体が、主ブレーキシリンダ50と少なくとも一つのブレーキ回路62aと62bの間を流れることができる。このような形式のブレーキ回路62aと62bには、少なくとも一つのホイールブレーキシリンダ64a〜64dを含んでいる。図示しているブレーキ回路は、それぞれ二つのホイールブレーキシリンダ64a〜64dを備えた二つのブレーキ回路62aと62bを有している。しかしながら、ここで記載している油圧ブレーキシステムの実現性が、固定して規定された数のホイールブレーキシリンダ64a〜64dを備えた特定数のブレーキ回路62aと62bに限定されないことを指摘しておきたい。同様に、自動車の少なくとも4つホイール60にブレーキシステムのブレーキ回路62aと62bを、軸方向、ホイール個別、あるいは対角に割り当てることも任意である。別の実施形態では油圧ブレーキシステムが、X−ブレーキ回路配分のために3つのブレーキ回路を有していることもある。
【0043】
図4において図示しているブレーキシステムでは、二つのブレーキ回路62aと62bが同一で実施されている。しかしながらブレーキシステムは、そのブレーキ回路62aと62bが同一構成されていることに限定されるものではない。図示しているブレーキ回路62aと62bの構成、即ち、各1つの高圧スイッチバルブ66aと66b、並列配設された逆スイッチバルブ70aと70bを備えた各1つの切替バルブ68aと68b、並列配設された逆止バルブ74aと74bを備えたそれぞれ一つのホイールインレットバルブ72a〜76d、ホイールブレーキシリンダ64a〜64dあたり1つのホイールアウトレットバルブ76a〜76d、およびポンプ78aまたは78bを備え、そこで二つのポンプ78aと78bがモータ80の共通軸上にあるという構成は、例示としてのみ図示している。ここで記載しているブレーキシステムは、部品72a〜78bを備えたブレーキ回路62aと62bの構成、ないしここで図示している互いの接続に限定されるものではない。各一つの別の逆止バルブ82aまたは82bおよび、ポンプ78aまたは78bの吸入側と付属するホイールアウトレットバルブ76a〜76dの間に配設した貯油室空間84aと84bを備えている各ブレーキ回路62aと62bの構成も、例示的なものとして解釈すべきである。図示している圧力センサ86についても同様に、ブレーキ回路62aと62bあたりのその全体数およびその配設を、それを装備せねばならないことはないので、オプションとして解釈するべきである。その少なくとも一つの圧力センサ86は、例えばHz圧力センサおよび/または回路圧力センサとすることがある。
【0044】
図示しているブレーキ回路62aと62bのそれぞれは、自己のプランジャ88aまたは88bを有しており、それが、関連配置されたポンプ78aと78bの送出側に隣接して配設されている。別のプランジャ90は、二つのブレーキ回路62aと62bで主ブレーキシリンダ50に結合する二つの供給配管92aと92bに対して、それぞれ一つの貫流開口を有している。ここで記載しているブレーキシステムの構成が、特定数のプランジャ88a、88b、90に、または少なくとも一つのブレーキ回路62aまたは62bに接する配置又はその中における配置に限定されないことを指摘しておきたい。プランジャ88a,88b,90のそれぞれは、ブレーキシステムの独自に設けられた貯油室容積を備えたブレーキ媒体移送要素と見なすことができ、それを使うことにより、プランジャ88a,88b、または90の少なくとも一つの貯油室容積と関連配置された少なくとも一つのブレーキ回路62aと62bの貯油室外部の容積間で、ブレーキ媒体体積量を移動することができる。プランジャ88a,88b,90のための利点ある二つの実施例を、以下において説明する。
【0045】
図5は、油圧ブレーキシステムのプランジャに対する第一構成例の概略図を示している。
【0046】
図5において概略的に図示しているプランジャ88aは、プランジャ貯油室空間100および、結合部材106を使ってプランジャ貯油室空間100の変位可能な隔壁部品102に結合されたプランジャモータ104を有している。プランジャモータ104と変位可能な隔壁部品102の間にある結合部材106により、プランジャ貯油室空間100の容積ないし、プランジャ貯油室空間100に満たされるブレーキ媒体量を制御することができる。
【0047】
プランジャ貯油室空間100とブレーキ回路62aの貯油室外部の(概略的に一部のみを図示している)容積間でブレーキ媒体の流れを追加的に制御するために、バルブユニット108がプランジャ88aの入口側に配設されている。バルブユニット108は、例えば逆止バルブ、スイッチバルブ、あるいは調整バルブとして構成されていることがある。プランジャ88aおよびバルブユニット108が、一体構成されていることもある。プランジャ88aおよびバルブユニット108の制御に関しては、以下で詳細に取り扱う。
【0048】
以上により、主ブレーキシリンダ50内の油圧(前圧)および/または主ブレーキシリンダ50の変位可能部品21の位置が、少なくとも運転者ブレーキパワーFfおよび/またはブレーキ倍力装置の補助パワーFuから得られる全ブレーキパワーFgを介してだけでなく、プランジャモータ104およびバルブユニット108の操作を介しても制御可能である。従って、運転者が負荷する運転者ブレーキパワーFfおよび/またはブレーキ倍力装置が供給する補助パワーFuとは関係なく、主ブレーキシリンダ50内の油圧(前圧)および/または主ブレーキシリンダ50の変位可能部品21の変位を変える可能性がある。それから得られるメリットに関しては、以下で詳細に取り扱う。
【0049】
図6は、油圧ブレーキシステムのプランジャに対する第二実施例の概略図を示している。
【0050】
プランジャ88a’は、プランジャ貯油室空間100の変位可能隔壁部品102へのプランジャモータ104のセルフロッキング結合部材110により、ブレーキシステムからプランジャ貯油室空間への必要としない充満ないし、少なくとも著しい圧力までの意図しないプランジャ88’aの逆移動が阻止されるように構成されている。このことを、プランジャ88’aがセルフロッキング構成されていると表すこともできる。この種のプランジャ88’aも同じく、詳細に記載している利点を保証する。
【0051】
上記の例の代わりに又は追加として、プランジャに対する別の実施例、例えば歯車装置を追加して使用することもできる。
【0052】
ここでプランジャ88aと88a’に対して記載した例は、図4に図示しているブレーキシステムに簡単な方法で一体化できる。このような形式の倍力油圧ブレーキシステムは更に、ABS装置、ESP装置、EHBシステム、および/または異なった構成のブレーキコントロールシステムと一緒で構成することがある。以下で詳細に説明するように、少なくとも一つのプランジャ88a,88b、および/または90と主ブレーキシリンダ50間が油圧接続していることにより、運転者にとってブレーキ入力要素56の操作快適性を向上するためにプランジャを使用することがある。
【0053】
図4の油圧ブレーキシステムは、上記で既に説明した制御機構25も有している。ブレーキ倍力装置58が、第一制御信号32を使って制御することにより、ブレーキシステムの油圧ブレーキモーメントに加えて少なくとも一つのホイール60に作用する追加ブレーキパワーに関する情報を受信した時に、ブレーキ倍力装置56により供給される補助パワーを、比較量を介して変更することができ、それにより、少なくとも補助パワーと運転者ブレーキパワーで構成される全ブレーキパワーが、少なくとも一つのホイールブレーキシリンダ64〜64dにおいて、追加ブレーキパワーと合わせて好ましい目標全ブレーキトルクとなる油圧ブレーキモーメントに変更されると好ましい。そのために例えばブレーキ入力要素56に、運転者ブレーキ意図信号を制御機構25に追加して供給するパワーセンサおよび/または変位センサを配設していることがある。この場合には制御機構25は更に、目標パワー変更量を決定する時に同じく運転者ブレーキ意図信号を考慮し、そしてブレーキ入力要素56の操作に合わせた第一制御信号32をブレーキ倍力装置58に出力するように設計されている。
【0054】
プランジャ88a,88b,90は、補助パワーの著しい変化にも拘わらずブレーキ入力要素56が好ましい位置に留まることになる圧力変化が主ブレーキシリンダ50内で構築されるように、第二制御信号37を介して制御することができる。第二制御信号37を介したプランジャ88a,88b,90の制御は、ブレーキ回路62aと62bの圧力・体積特性曲線を考慮して、そしてブレーキ倍力装置58および主ブレーキシリンダへのブレーキ入力要素56の結合に関係する量を更に考慮して行う(以下を参照)。
【0055】
従来の方法ではブレーキ倍力装置58により供給される補助パワーの変化が、時にはブレーキ入力要素56、例えばブレーキペダルの“引きずり”に結びついている。このことは、運転者がブレーキを踏み込む時に、しばしば惑わすものとして受け取られるが、それはブレーキ入力要素の特性が対応して変化したからである。この場合に運転者は、例えばブレーキペダルに触れた時に、予期しないブレーキペダル位置に気付く。しかしながら、ここで説明する本発明の技術では、以下で詳細に説明するプランジャ88a,88b,90のバランス機能を介してバランスパワーが供給され、それにより補助パワーの変化にも拘わらず、ブレーキ入力要素56を好ましい(標準的な)位置に留まるようにすることができる。
【0056】
図4のブレーキシステムの本発明による技術を、以下において回復(回生)ブレーキ動作を分からないようにするための適用例を使って説明する。しかしながら本発明による技術は対応して、ホイール60の少なくとも一つでの低摩擦、極端に大きな重力斜面方向成分、および/または自動車の実際の静止状態に、油圧ブレーキモーメントを適合させるためにも可能であることを指摘しておきたい。
【0057】
ここで説明している適用例では、ジェネレータがホイール60の少なくとも一つに、好ましくは自動車のアクスルに追加のジェネレータブレーキモーメントを作用させる。ジェネレータブレーキモーメントは、例えば自動車の実際速度との関係および/またはジェネレータを介して充電可能な自動車バッテリの充電状態との関係により、時間的に変化することがある。実際の自動車減速は、ブレーキ倍力油圧ブレーキシステムの油圧ブレーキモーメントおよびジェネレータブレーキモーメントで生じるものと、簡単化して仮定することがある。
【0058】
ブレーキ倍力装置58の補助パワーは、検知可能な運転者ブレーキ意図に自動車の減速が対応するように、制御機構25の第一制御信号32を介して適合させることができる。そのために、例えばジェネレータブレーキモーメントの増加時、特にジェネレータが働き始める時に、ブレーキ倍力装置58の補助パワーを減少して、それにより運転者によるブレーキ入力要素56の操作が均等である時に、自動車の減速が一定のままであるようにする。対応してジェネレータブレーキモーメントが減少する時、例えばジェネレータの働きが止まる時には、ブレーキ倍力装置58の補助パワーを大きくすることにより、特にブレーキ入力要素56を一定で操作する時に、意図する自動車減速が維持される。対応して、運転者によるブレーキ入力要素56の操作が不均等な時も、検知可能な運転者ブレーキ意図に実際の自動車減速が対応するように、ブレーキ倍力装置の補助パワーをジェネレータブレーキモーメントに適合させることができる。
【0059】
しかしながら、例えばジェネレータが働き始める時にブレーキ倍力装置58の補助パワーが減少すると、主ブレーキシリンダ50および二つのブレーキ回路62aと62b内の圧力が小さくなるが、このことは運転者が、ブレーキ入力要素56にパワーが作用することにより想定すると思われる。また、ホイールブレーキシリンダ64a〜64dのホイールブレーキキャリパに移動される体積量は、この場合に全ブレーキパワーが減少することにより小さい。移動される体積量の偏差は、ホイールブレーキシリンダ64a〜64dのpV特性曲線に相当する。このことが意味していることは、従来は運転者ブレーキパワーに比較して大きな体積量が主ブレーキシリンダ50に残り、従って主ブレーキシリンダ50によりブレーキ入力要素56に作用する逆作用パワーにより、ペダルストロークが短いことである。これを運転者はしばしば、ブレーキ入力要素が異常に突出した位置にあるように感じる。
【0060】
しかしながら、第二制御信号37を使ったプランジャ88a,88b,90の制御により、追加のブレーキ媒体体積量をプランジャ88a,88b,90の貯油室空間に移動することができる。このことが、ブレーキ入力要素56の“引き込み”または“落ち込み”を起こす。従ってペダルストロークが、運転者ブレーキパワーに適合する。このようにペダルストロークおよびブレーキ入力要素56の位置の適合することが、運転者にとって追加の操作快適性に結びついている。
【0061】
上記二つの段落で説明した方法ステップは、ジェネレータブレーキモーメントの減少により起きるブレーキ倍力装置58の補助パワーの増加にも、対応して適用可能である。制御信号32と37の対応した一致、即ち、補助パワーの変化および少なくとも一つの貯油室空間と貯油室外部の容積間でのブレーキ媒体体積の移動が対応して一致する時には、ブレーキシステムにおける油圧ブレーキモーメント/油圧ブレーキ圧力が変化するにも拘わらず、運転者にとって中立的なブレーキ入力要素56のパワー・ストローク挙動を設定することができる。
【0062】
少なくとも一つのプランジャ88a,88b,90を使用することにより、そこで行われるブレーキ媒体移動が最小のノイズ負荷と結び付いている。従って、特にブレーキ媒体の“ソフトな”移動が可能であり、それを運転者は、ブレーキ入力要素56の“震動”を介しても“反動”を介しても気づかない。従って、時間的に変化するジェネレータブレーキモーメントを分からないようにすることが、運転者にとってブレーキ入力要素56の操作快適性に影響を及ぼさない。
【0063】
少なくとも一つのプランジャ88a,88b,90が、前に接続されたバルブを有する時には、これが逆止バルブを使って、バルブの閉じた主位置でもブレーキ回路62aと62bへプランジャ体積量を移送できるように構成されていると利点がある。従って、例えば閉止により起きる連続フロー欠陥に基づくバルブの故障時にも、あるいはバルブの詰まり時にも、その体積量を尚、少なくとも一つのプランジャ88a,88b,90から付属のブレーキ回路62aと62bに逆送することができる。従って、“不足する”体積量による潜在的なアンダーブレーキは回避可能である。
【0064】
【実施例2】
【0065】
図7は、倍力油圧ブレーキシステムの第二実施形態の概略図を示している。
図7において概略的に記載しているブレーキシステムは、既に説明した部品50〜86および92aと92bを有している。しかしながら、第二ブレーキ回路62bはプランジャの代わりに、二室シリンダ150を装備している。図示しているブレーキシステムの別の構成では第一ブレーキ回路62aも、当該形式の二室シリンダを装備していることがある。
【0066】
二室シリンダ150には、第一空間152および第二空間154がある。二つの空間152と154間の隔壁には移動可能な分離要素153があり、それにより二つの空間152と154の一つが拡大/縮小する時に、二つの空間152と154の全容積は一定のままである。第一空間152は、第二ブレーキ回路62bのポンプ78bの送出側に向けられている。従ってポンプ78bの運転を介してブレーキ媒体体積量を、二室シリンダ150の第一空間152に送ることができる。更に第一空間152の開口が、バルブ156を介してタンク配管158と繋がっており、それがブレーキ媒体タンク52に合流する。従ってバルブ156が開いた状態の時には、ブレーキ媒体体積量が第一空間152からタンク配管158を介して、ブレーキ媒体タンク52に流れることができる。
【0067】
二室シリンダ150の第二空間154は、中間配管160を介して配管162に繋がっており、それが切替バルブ68bを介して、ホイールインレットバルブ72cと72dを供給配管92bと接続している。従って、切替バルブ68bが開きホイールインレットバルブ72cと72dが閉じている時に、ブレーキ媒体体積量を二室シリンダ150の第二空間154と主ブレーキシリンダ50の間で移動することができる。
【0068】
以下において、時間的に変化するジェネレータブレーキモーメントを分からないようにするための、制御機構25、二室シリンダ150、バルブ156、ポンプ78bの利点ある相互作用を説明する。勿論、部品25,78b,150,156を、ホイール60の少なくとも一つに対する低い摩擦力、極端な重力斜面方向成分を相殺するために、および/または自動車の静止時にブレーキ倍力装置58のエネルギー消費を低減するために使用することもできる。
【0069】
ジェネレータブレーキモーメントが減少する場合には、大きな補助パワーを供給するように第一制御信号32を介してブレーキ倍力装置58を制御することにより、運転者が規定する目標全ブレーキモーメントを遵守することができる。従って、運転者がブレーキ入力要素56を一定で操作する時でも、補助パワーと運転者ブレーキパワーで構成される全ブレーキパワーが増加する。全ブレーキパワーが大きくなることにより、主ブレーキシリンダ50内で大きな圧力が構築される。この大きな圧力が、ブレーキ入力要素56に高い反力を起こす。これを避けるために体積量の収容を介して、主ブレーキシリンダ内での圧力除去を行うことがある。そのためにバルブ156を開いて、ブレーキ媒体タンク52と二室シリンダ150の第一空間152間の油圧接続を開くことがある。従って、開かれた油圧接続を介してブレーキ媒体が、第一空間152からブレーキ媒体タンク52へ流れることができる。第一空間152で圧力低下が発生することにより、二つの空間152と154間にある分離要素153の移動が行われる。従って第二空間が、第二ブレーキ回路62bの貯油室外部の容積から一定のブレーキ媒体体積量を収容する。
【0070】
ジェネレータブレーキモーメントの減少時に対応して、第一制御信号32を使って補助パワーを増加することができる。ブレーキシステムにおける追加の圧力または体積量の構築を、第二制御信号37を介して実現したい場合には、対応してポンプ78bに出力される第二制御信号37を介して、ブレーキ媒体タンク53から体積量を吸引することができる。以上のようにブレーキ媒体タンク52から体積量を吸引することは特に、対応する(図示していない)第二制御信号37が、開放のために高圧スイッチバルブにも出力される場合に保証されている。ブレーキ媒体タンク52から体積量を収容する代替として、貯油室空間84bからの体積量の収容も実現可能である。
【0071】
ブレーキ媒体体積量を第一空間152へ送ることにより、この中での圧力が対応して上昇する。生じた圧力上昇により、空間152と154間の分離要素153、例えばピストンが移動する。それにより第二空間154の中に圧力構築が発生し、それが第二空間154から貯油室外部の容積への体積量移動を起こす。
【0072】
ここで説明している本発明による技術の本質的な利点は、ダンパーとして機能する二室シリンダ150によりポンプの脈動が低減/最小化されることである。圧力構築原動力のために主としてブレーキ倍力装置58、特に調整または制御可能なブレーキ倍力装置58を使用するので、この用途方法には二室シリンダ150の原動力で十分である。
【0073】
図8A〜8Dは、本方法の第二実施形態を説明するための、ブレーキシステムの結合メカニズムの概略図を示している。
【0074】
プランジャおよび/または二室シリンダの油圧空間と繋がるブレーキ倍力装置14を有する油圧ブレーキシステムにおいて、油圧ブレーキパワーを変更するための詳細に説明した方法により、付属するブレーキシステムの少なくとも一つのブレーキ入力要素で良好な操作快適性を保証しながら、追加のブレーキモーメントをパワーやストロークに関係なく分からなくする、および/または相殺することが可能である。
【0075】
図示している結合メカニズムには、既に説明した部品10〜22を含んでいる。しかしながら本方法の実施性が、この形式の結合メカニズムに限定されないことを指摘しておきたい。例えば、運転者ブレーキパワーFfと補助パワーFuを全ブレーキパワーFgとして合体するために、応答ディスク18の代わりに別のパワー結合要素を使用することもできる。そのとき全ブレーキパワーFgに、更に少なくとも一つの追加パワーを含むことがあるが、それについては以下で取り扱わない。本方法の実施性は更に、ブレーキ気体またはブレーキ液体を満たしたブレーキ回路の特定実施形態に限定されない。例えばブレーキシステムにおける体積量処理に関して、色々な代替の可能性を考えることができる。
【0076】
ブレーキ倍力装置14は、例えばメカトロ式ブレーキ倍力装置、真空ブレーキ倍力装置、および/または油圧ブレーキ倍力装置とすることができる。勿論、補助パワーFuを供給するために、複数のブレーキ倍力装置14を使用することもできる。ブレーキ倍力装置14が、設定/調整可能でブレーキパワー補助するように設計されていると好ましい。ブレーキ倍力装置14が、運転者ブレーキパワーFfおよび/または第一変位ストロークs1の関数として、補助パワーFuを決定するように設計されていると更に好ましい。従って専門家には直ぐに、本方法の実施性がブレーキ倍力装置14の特定タイプに限定されないことに思い至ることになる。
【0077】
図3Aは、運転者ブレーキパワーFf≠0および補助パワー≠0の時の、応答ディスク18の変形を説明するための補充モデルを示している。ポイントP1〜P3は、応答ディスク上の面に相当する。ポイントP1がポイントP3に対して、応答ディスク18の撓み量Δだけ変位する場合に、
(Gl.1) s1=s3+Δ
が当て嵌まる。
【0078】
従って、出口側ピストン20が第三変位ストロークs3だけ変位することは、通常、入口側ピストン12およびブレーキ入力要素10が第一変位ストロークs1だけ変位することにより生じる。
【0079】
反応ディスク18におけるモーメントバランスから、
(Gl.2) Δ*e=Ff−x*Fu
が得られる。
【0080】
よって、式(Gl.2)を式(Gl.1)に代入することにより
(Gl.3) s1=s3+(Ff−x*Fu)/e
が得られる。
【0081】
ブレーキ入力要素10の第一変位ストロークs1と出口側ピストン20の第三変位ストロークs3間の式(Gl.3)に相当する関係が、従来の方法では多くの場合、ブレーキ入力要素10の操作快適性を損なうことになっている。以上の関係により例えば、主ブレーキシリンダ22および/またはブレーキ回路における圧力変化が、運転者を惑わすブレーキ入力要素10の動きに至ることがある。以下に説明する方法を介して、この欠点を除くことができる。
【0082】
ここで説明する方法を、ジェネレータブレーキモーメントを分からないようにするために使用することは、例示として仮定する必要がある。しかしながら本方法の適用は、この実施例に限定されるものではない。
【0083】
図8Bは、部品10〜22を有する結合メカニズムを、本方法開始前の時点t=t0で示している。よく分かるようにするために以下においては、運転者が時点t0および方法全体に亘ってブレーキ入力要素10に、時間的に一定の運転者ブレーキパワーFfおよび時間的に一定の第一変位ストロークs1を作用させることを前提とする。対応して時点t0にブレーキ倍力装置14により、時間的に一定の補助パワーFuおよび時間的に一定の第二変位ストロークs2が供給される。(ブレーキ倍力装置14により供給される補助パワーFuは、測定ステップを追加的に実施することなく一般的に既知である。)しかしながら詳細に説明する本方法は、運転者によるブレーキ入力要素10の時間的に一定の操作に限定されるものではない。
【0084】
従って、ブレーキ回路に関連配置された少なくとも一つのホイールに、全ブレーキパワーFgに比例する一定の油圧ブレーキモーメントMhが生じ、そのとき油圧ブレーキモーメントMhは、(全ブレーキパワーFgに相当する)ブレーキ圧力pおよび定数Cから得られる:
(Gl.4) Mh=C*p
【0085】
t>t0の時点に追加ブレーキモーメントMzが働く。追加ブレーキモーメントMzは、例えばジェネレータブレーキモーメントである。しかしながら、ジェネレータブレーキモーメントの代わりに別の追加ブレーキモーメントMzを、記載の方法を介して分からないようにすることもできる。
【0086】
従って、全ブレーキモーメントMg(t>t0)は、油圧ブレーキモーメントMh(t>t0)および追加ブレーキモーメントMz(t>t0)が合成されたものである:
(Gl.5) Mg(t>t0)=Mh(t>t0)+Mz(t>t0)
【0087】
詳細に説明している本方法は、例えばジェネレータブレーキモーメントが減少し、Mz(t>t0)がマイナスである場合にも実施可能である。
【0088】
追加ブレーキモーメントMz(t>t0)≠0であっても、運転者がブレーキ入力要素10を一定で操作する時に、全ブレーキモーメントMg(t>t0)=Mg(t0)を遵守することが望ましい。そのために、上記で既に説明している方法ステップS1〜S3を実施する。
【0089】
一定の全ブレーキモーメントMg(t>t0)=Mg(t0)を遵守するために、例えば方法ステップS2において直接的または間接的に、ホイールブレーキシリンダ内のブレーキ圧力pが変化する可能性のある圧力差Δpを求める。例えば、圧力差Δpに対して
(Gl.6) Δp=Mz(t>t0)/C
を適用できる。
【0090】
求められるように一定の全ブレーキモーメントMg(t>t0)を遵守することは、主ブレーキシリンダ22における前圧力を介してブレーキ圧力pを、圧力差Δpだけ変える場合に保証される。そこで、Aが主ブレーキシリンダ22の面積に相当していると、
(Gl.7) ΔFg=A*Mz(t>t0)/C
を使って前圧力を、全ブレーキパワーFgの変更を介して、目標ブレーキパワー変更量ΔFgだけ変えると利点がある。
【0091】
目標ブレーキパワー変更量ΔFgを得るために、運転者ブレーキパワーFfを変更することは望ましくないので、ブレーキ倍力装置14により供給される補助パワーFuを、目標ブレーキパワー変更量ΔFgに対応して変更する。従って、目標補助パワー変更量ΔFuに対して、
(Gl.8) ΔFu=A×Mz(t>t0)/C
が当て嵌まる。
【0092】
図8Cは、方法ステップS1およびS2を行った後、時点t1>t0の結合メカニズムを示している。従って、時点t1で少なくとも一つのホイールにかかっている全ブレーキモーメントMg(t1)が時点t0での全ブレーキモーメントMg(t0)に相当する、即ち、Mg(t1)=Mg(t0)が当て嵌まるように、t1の時点でブレーキ圧力pが設定されていると好ましい。
【0093】
時間的に一定の運転者ブレーキパワーFfに対応しながら、自動車に均等にブレーキをかけることを守る。時点t1の補助パワーFu(t1)は、時点t0の補助パワーFu(t0)と目標補助パワー変更量ΔFuの差異に相当する。前圧力の降下により自動的に、ブレーキシステムのホイールブレーキシリンダ全てでブレーキ圧力pが減少する。従って前圧力の降下が、ジェネレータに繋がっていないホイールにも現れる。以上により、より大きなジェネレータモーメントを分からないようにすることができる。
【0094】
上記の説明で明らかなように、油圧ブレーキ圧力/油圧ブレーキパワーの調整は、ブレーキ倍力装置14を使うことにより簡単に実施できる。しかしながら図8Cを見て明らかなように、油圧ブレーキ圧力/油圧ブレーキパワーのこの種の変更は、従来の方法では、主ブレーキシリンダ22の容積変更および/または応答ディスク18の撓みとも関連している。(良く分かるようにするために、時点t0の応答ディスク18の“形状”を、図8Cと8Dの補充モデルに鎖線24として記入している。別の方法ステップで、この効果も考慮すると利点がある。)しかしながら、第一変位ストロークs1、従ってブレーキ入力要素10の位置が変化しないままであるためには、
(Gl.9) s1(t2)=s1(t0)
が当て嵌まると利点がある。
【0095】
このことは方法ステップS4とS5において、以下で説明するブレーキシステムでの体積量調整を介して実施でき、それはプランジャおよび/または二室シリンダにより実現できる。以上のようにして例えば、ブレーキ入力要素10の反動を抑制することができる。
【0096】
主ブレーキシリンダ22内の体積変化は、圧力・体積特性曲線、所謂ホイールのpV特性曲線を介して簡単に読み取り/計算することができる。(個々のホイールのpV特性曲線は、上手く査定することもできる。)それにより、主ブレーキシリンダ22の体積量変化V(t0→t1)と変位可能部品の移動量Δs3間の関係(図8Cを参照)を導き出すことが可能であり、そのとき
(Gl.10) Δs3=V(t0→t1)/A
が当て嵌まる。
【0097】
しかしながら、ここで説明している方法の利点ある実施例では、体積量変化V(t0→t1)により生じるこの出口側ピストン20の移動量Δs3にも拘わらず、ブレーキ入力要素10の第一変位ストロークs1を一定で保持することができる。このことは、上記で既に導き出した式(Gl.3)を考慮して行う。方法ステップS3において例えば目標体積移動量として、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの少なくとも一つの貯油室空間と貯油室外部の容積の間の、ブレーキ媒体の目標体積変化量/目標体積移動量を決定する。目標体積変化量ΔVは、先に記載の式(Gl.1)〜(Gl.3)を使って、
(Gl.11) ΔV=A×(Δs3+x×ΔFu/C)
が当て嵌まるように決定すると好ましい。
【0098】
従って目標体積変更量ΔVの決定時に、目標補助パワー変更量ΔFuに相当する補助パワーの変更が、V(t0→t1)またはΔs3のブレーキシステムの体積収容量の変更を生じ、そして(応答ディスク18の弾性eにより)応答ディスク18の変形を引き起こすことを考慮できると利点がある。二つの効果は相反するものであり、よって例えばプラスのΔs3は、マイナス項(x×ΔFu/C)になる。
【0099】
式(Gl.9)を遵守するために方法ステップS3において、式(Gl.11)で導き出された目標体積変更ΔVを、ブレーキシステムの少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素の適切な制御を介して実施する。例えば、減速だけでなく同じ運転者ブレーキパワーFfの時のペダルストロークも保持するために、式(Gl.11)で決定された目標体積変更量ΔVを、少なくとも一つのプランジャおよび/または少なくとも一つの二室シリンダの貯油室空間とブレーキシステムの貯油室外部の容積間で移動する。
【0100】
図8Dは、ブレーキ回路でブレーキ媒体を配分変更するために適切なブレーキシステム部品により、目標体積変更ΔVを実施した後の時点t2の結合メカニズムを示している。そのとき、時点t2の変位ストロークS1(t2)が、時点t0に規定された変位ストロークs1(t0)に相当している、即ち、s1(t2)=s1(t0)が当て嵌まると好ましい。
【0101】
専門家であれば分かるように、上記の段落で説明している方法ステップは、時点t0〜t2間の時間インターバルがほぼゼロとなるように迅速に実施することができる。それにより第一変位ストロークs1は、時間的に一定のままである。従って、時間的に一定の運転者ブレーキパワーFfの時に追加ブレーキモーメントMzがゼロに等しくないにも拘わらず、説明している方法の実施を介して、時間的に一定の第一変位ストロークs1が保証されている。従って運転者は、追加ブレーキモーメントMzが働いていることに気付かない。従って上記段落で説明している方法は、運転者にとって改善された走行快適性を保証する。
【0102】
また、ここで説明している方法では自動車減速の一定保持および第一変位ストロークs1の一定保持が切り離され、そして互いとは関係なく実施される。
上記で説明している方法を使って可能な回生性能の割合は、ブレーキ倍力装置14の倍力係数yから得られる。最大の回生性能は、補助パワーFuがゼロに等しくなり、そして運転者ブレーキパワーFfのみが全ブレーキパワーFgとして主ブレーキシリンダ22に入る時に達する。従って全ブレーキパワーFgを、最大で係数y/(y+1)だけ低減することができる。ブレーキ倍力装置が例えば最大y=4倍倍力すると、最大可能回生性能の割合は80%である。
【0103】
100%回生のために方法を拡大するオプションを、以下において説明する:
リミット回生度として表すことのできる回生度、即ち補助パワーがゼロになると共に、運転者ブレーキパワーFfのみが油圧ブレーキモーメントを負荷する回生度に達すると、ホイールでの油圧ブレーキ圧力低減は、例えばABS/ESP装置で使用されるような調整装置を使って設定することができる。これは、インレットバルブを閉じて、アウトレットバルブを介してホイール圧力を解くことにより行い、そこで例えばABS/ESPシステムの貯油室空間が満たされる。インレットバルブが閉じていると、ブレーキシステムにおける容積はインレットバルブと主ブレーキシリンダ22間で変化しない。よって、主ブレーキシリンダ22で現れる圧力は一定のままである。従って、第一変位ストロークs1の変化にも至らない。それにより運転者は、ブレーキ入力要素での逆作用に関して、以下で説明する方法ステップについて何も気付かない。勿論、この段落で説明する方法ステップは、リミット回生度に到達する前、特にリミット回生度にほぼ達した時に実施することができる。例えばインレットバルブを閉じることを、リミット回生度に達する前に既に行うことができ、それによりブレーキ倍力装置の残留パワーを更に作用させる。
【0104】
インレットバルブを閉じる代替として、リミット回生度でのこのハードな移行の代わりに、ソフトな移行を実施することもある。この場合にはインレットバルブを、Δp調整として公知である調整運転モードで、既にリミット回生度に達する前に起動する。この運転モードでは特に、差圧ないし体積流を快適に調整/制御することが可能である。従って、ペダルまたはノイズを介した運転者への逆作用を著しく低減することができる。この場合にはリミット回生度に達して初めて、少なくとも一つのインレットバルブが完全に閉じられ、それにより第一変位ストロークs1が一定で保持される。
【0105】
インレットバルブが閉じている時に圧力を構築するために、以下の方法ステップを実施することがある:最初は特定体積量が特定の圧力下で、主ブレーキシリンダ22とインレットバルブ間に閉じこめられている。例えば、別のジェネレータブレーキモーメントを分からないようにするために、インレットバルブが閉じた後にホイール圧力を更に減少すると、主ブレーキシリンダとインレットバルブ間に閉じ込められた圧力は、ホイール圧力より大きい。この場合に、主ブレーキシリンダからインレットバルブまでの体積量が変化しないように、システムを制御/調整すると利点があるが、その理由は、この場合にはペダルストロークへの逆作用が抑えられているからである。これが意味することは、逆移送ポンプおよび/またはインレットとアウトレットバルブを、引き続く圧力構築時に制御することにより、移動された体積量がホイールにおける圧力構築のためにのみ寄与することである。このことは、圧力構築がジェネレータモーメントの低減に相当するように行う。このことは、主ブレーキシリンダ22とインレットバルブ間で閉じ込められた圧力がホイール圧力より大きいことで容易になり、従ってインレットバルブを介して、ないしΔp調整を使って体積量を簡単にホイールブレーキシリンダに移動できる。
【0106】
この出願で挙げているブレーキ倍力装置14ない58は、制御および/または調整可能なブレーキ倍力装置であると好ましい。従ってブレーキ倍力装置の補助パワーは、運転者ブレーキパワーと関係してでも、運転者ブレーキパワーとは無関係でも設定することができる。ブレーキ倍力装置を入口側ピストン12と一緒にパワー結合要素、例えば図示している応答ディスク18に結合することで、パワー結合要素が一つのパワーで作用することを考えている。パワー結合要素をブレーキ倍力装置および入口側ピストン12と接続するという意味で、必ずしも機械的な結合を必要とするものではない。また、例えばパワー結合要素と入口側ピストン12の間に、特にブレーキペダル操作の始めに、空ストロークを備えていることもある。
【符号の説明】
【0107】
10 ブレーキ入力要素
12 入口側ピストン
14 ブレーキ倍力装置
16 補助ピストン
18 応答ディスク
20 出口側ピストン
21 変位可能部品
22 主ブレーキシリンダ
25 制御機構
26 入力装置
27 情報
28 受信信号
29 第一評価装置
30 第一評価信号
31 第一制御装置
32 第一制御信号
33 第二評価信号
34 第二評価装置
35 第三評価信号
36 第二制御装置
37 第二制御信号
50 主ブレーキシリンダ
52 ブレーキ媒体タンク
54 接続導管
56 ブレーキ入力要素
58 ブレーキ倍力装置
60 ホイール
62 ブレーキ回路
64 ホイールブレーキシリンダ
66 高圧スイッチバルブ
68 切替バルブ
70 逆スイッチバルブ
72 ホイールインレットバルブ
74 逆止バルブ
76 ホイールアウトレットバルブ
78 ポンプ
80 モータ
82 逆止バルブ
84 貯油室空間
86 圧力センサ
88 プランジャ
90 プランジャ
92 供給配管
100 プランジャ貯油室空間
102 隔壁部品
104 プランジャモータ
106 結合部材
108 バルブユニット
110 結合部材
150 二室シリンダ
152 第一空間
153 分離要素
154 第二空間
156 バルブ
158 タンク配管
160 中間配管
162 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の倍力油圧ブレーキシステムを駆動するための方法において、ステップとして:
ブレーキシステムの油圧ブレーキパワーに加えて、自動車の少なくとも一つのホイール(60)に作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーの、増加または減少に関する情報(27)を求める;
求めた情報(27)を考慮してパワー差だけ、ブレーキ倍力装置(14,58)により供給される補助パワー(Fu)を変更し、それにより、追加ブレーキパワーの増加または減少に対応して油圧ブレーキパワーを変更する(S2);そして
求めた情報(27)を考慮して、少なくとも一つの貯油室空間(100,154)とブレーキシステムの少なくとも一つの貯油室外部の容積間で、ブレーキシステムのブレーキ媒体の体積量を移動し、それによりブレーキ倍力装置(14,58)のブレーキ入力要素(10,56)に、パワー差に対応するバランスパワーを作用させ(S3)、そのとき特に貯油室空間(100,154)が、少なくとも一つのプランジャ(88a,88a’,88b,90)および/または少なくとも一つの二室シリンダ(150)である
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
情報(27)として、ジェネレータブレーキモーメント、摩擦力、および/または重力斜面方向成分の少なくとも一つの増加または減少に関する情報(27)を求める、および
ジェネレータブレーキモーメント、摩擦力、および/または重力斜面方向成分の増加または減少を埋め合わせるパワー差だけ、補助パワー(Fu)を変更する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
自動車が静止状態にあるかどうかを情報(27)として求める、および
少なくとも一つの追加ブレーキパワーとして作用する重力斜面方向成分により、自動車が静止状態にある場合には、補助力(Fu)を補助力(Fu)に等しいパワー差だけ減少する
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
自動車の倍力油圧ブレーキシステム用の制御機構(25)において、備えているのが:
入力装置(26)であり、それが、ブレーキシステムの油圧ブレーキパワーに加えて自動車の少なくとも一つのホイール(60)に作用する少なくとも一つの追加ブレーキパワーの、増加または減少に関する情報(27)を受信して、情報(27)に対応する少なくとも一つの受信信号(28)を発信するように設計されており;
第一評価装置(29)であり、それが、ブレーキ倍力装置(14,58)により供給できる補助パワー(Fu)の目標変更に関して、少なくとも一つの受信信号(28)を考慮して目標パワー変更量を決定するように設計されており;
第一制御装置(31)であり、それが、決定された目標パワー変更量に対応する第一制御信号(32)をブレーキ倍力装置(14,58)に出力することにより、決定された目標パワー変更量に対応するパワー差だけ補助パワー(Fu)を、そして追加ブレーキパワーの増加または減少に対応して油圧ブレーキパワーを変更するように設計されており;
第二評価装置(34)であり、それが、少なくとも一つの貯油室空間(100,154)とブレーキシステムの貯油室外部の容積間におけるブレーキシステムのブレーキ媒体の目標体積移動に関して、少なくとも一つの受信信号(28)を考慮して目標体積移動量を決定し、そのとき特に貯油室空間(100,154)が、少なくとも一つのプランジャ(88a,88a’,88b,90)および/または少なくとも一つの二室シリンダ(150)の貯油室であるように設計されており;および
第二制御装置(36)であり、それが、決定された目標体積移動量に対応する第二制御信号(37)を、ブレーキシステムの少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素(104,78b,156)に出力し、それにより、少なくとも一つの貯油室空間(100,154)とブレーキシステムの貯油室外部の容積の間で、決定された目標体積移動量に対応してブレーキ媒体の体積を移動でき、そしてパワー差に対応するバランスパワーをブレーキ入力要素(16,56)に作用させることができるように設計されている
ことを特徴とする制御機構。
【請求項5】
請求項4に記載の制御機構(25)において、
第二制御装置(36)が、少なくとも一つブレーキ媒体移送要素(104)としての少なくとも一つのプランジャモータ(104)を、第二制御信号(37)を使って制御するように設計されている
ことを特徴とする制御機構。
【請求項6】
請求項4または5に記載の制御機構(25)において、
第二制御装置(36)が、少なくとも一つのブレーキ媒体移送要素(78b,156)としての少なくとも一つのポンプ(78b)および/または少なくとも一つのバルブ(156)を、決定された目標体積移動量を考慮し第二制御信号(37)を使って制御するように設計されている
ことを特徴とする制御機構。
【請求項7】
倍力油圧ブレーキシステムにおいて、備えているのが:
パワー結合要素(18)に補助パワー(Fu)を加えるブレーキ倍力装置(14,58);
少なくとも一つのプランジャ(88a,88a’,88b,90)および/または少なくとも一つの二室シリンダ(150);および
請求項4〜6のいずれかに記載の制御機構(25)
であることを特徴とする倍力油圧ブレーキシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の倍力油圧ブレーキシステムにおいて、
少なくとも一つのプランジャ(88a’)が、プランジャモータ(104)へのプランジャ貯油室空間(100)の変位可能な隔壁部品(102)のセルフロッキング結合部材(110)を含む
ことを特徴とする倍力油圧ブレーキシステム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の倍力油圧ブレーキシステムにおいて、
ブレーキシステムが、少なくとも一つのプランジャ(88a)で入口側に配設されたバルブユニット(108)を含む
ことを特徴とする倍力油圧ブレーキシステム。
【請求項10】
請求項7に記載の倍力油圧ブレーキシステムにおいて、
ブレーキ倍力装置(14,58)が、制御可能および/または調整可能なブレーキ倍力装置(14,58)であり、特にブレーキ倍力装置が、その補助パワーを運転者パワーと関係なく設定できる
ことを特徴とする倍力油圧ブレーキシステム。
【請求項11】
請求項4〜6のいずれかに記載の制御機構、および/または請求項7〜10のいずれかに記載の倍力油圧ブレーキシステムを備えた自動車。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2013−519579(P2013−519579A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553199(P2012−553199)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069692
【国際公開番号】WO2011/098175
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】