説明

自動車用内装部品の製造方法及び自動車用内装材

【課題】良好な初期付着性を保持しているだけでなく、パネル表面の温度変化が激しい環境下においてもその付着性を保持する自動車用内装部品の製造方法及び自動車用内装材。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂からなる芯材に、火炎処理を施す工程と、
該火炎処理された芯材表面に、結合剤と両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールとを含有する接着剤を塗布する工程と、
該接着剤を塗布した芯材を、金型内に配置し、無発泡ウレタン反応液を前記接着剤を塗布した面側に射出して金型内反応させて前記芯材と一体に成形する工程と、
を有することを特徴とする自動車用内装部品の製造方法及び該製造方法による自動車用内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と表面層の接着性に優れた、自動車用内装部品の製造方法及び自動車用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車においては、乗員の安全確保の観点から、エアバッグ装置が組み込まれており、その配設箇所も運転席用のステアリングホイール、助手席用のインストルメントパネルだけでなく、乗員を側面部の衝撃から保護する側部用エアバッグも配設されるに至っている。
【0003】
エアバッグ装置は、通常、内装の美感性を確保するために、内装パネルの内側に配設されており、自動車が衝撃を受けたときに、その衝撃を感知してエアバッグを膨張、展開させて乗員との間に介在させ、これによって乗員を保護するという方法がとられている。即ち、エアバッグは、通常は内装パネルによって外観から隠れた状態にあり、衝撃を感知した際にはエアバッグ膨張時に当該内装パネルを破断させる必要がある。
【0004】
このため、内装パネルについては、従来から必要とされていた美感性、触感性を確保するとともに、エアバッグ作動時における確実な破断性を確保する必要が生じてきた。
【0005】
これらを両立させる方法としては、様々な検討がなされてきている。引用文献1は、エアバッグを組み込むことを目的としたパネルの製造方法を示す一例であり、内装材の基材に対して接着剤を塗布し、ポリウレタン成形材料を用いて形成させる方法に関して開示している。
【特許文献1】特開2005−104319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記技術を実施した場合においても、自動車を屋外に放置した場合において、特に夏期においては、車内の温度が極端に上昇する。このような温度の上昇は、基材に付着させているウレタン表皮の付着性を低下させることとなる。更には、内装材の基材としてポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等を用いた場合には、初期においては付着性が確保できるものの、このような高温にさらされた場合においては、付着性が低下することがあった。そのため、付着性が低下しないように製造工程における管理を厳しく行っていた。その結果として、生産性が悪く、製造コストがかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、特定配合の接着剤を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち本発明に従って、ポリオレフィン樹脂からなる芯材に、火炎処理を施す工程と、
該火炎処理された芯材表面に、結合剤と両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールとを含有する接着剤を塗布する工程と、
該接着剤を塗布した芯材を、金型内に配置し、無発泡ウレタン反応液を前記接着剤を塗布した面側に射出して金型内反応させて前記芯材と一体に成形する工程と、
を有することを特徴とする自動車用内装部品の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明に従って、ポリオレフィン樹脂からなるエアバッグ膨出用扉予定部を有する芯材と、
無発泡ウレタンからなる表皮材と、
これら該芯材と該表皮材との間にあって結合剤と両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールとを含有する接着剤層と、
からなることを特徴とする自動車用内装材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することにより得られる内装材は、良好な初期付着性を保持しているだけでなく、パネル表面の温度変化が激しい環境下においてもその付着性を保持することが可能である。従って、内装パネルが約−40℃の低温環境下や、約80℃の高温環境下におかれた場合にも、良好な付着性を保つことが可能となる。
【0011】
また、本発明においては、意匠性、触感性に優れた内装材を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る内装材の製造方法は、ポリオレフィン樹脂からなる芯材に対して火炎処理を施す工程、次いで、前記火炎処理を施した芯材表面に、アクリル系接着剤を塗布する工程、次いで、前記接着剤を塗布した芯材を、金型に入れて、無発泡ウレタンを射出成形する工程、からなることを特徴としている。
【0013】
前記芯材を得る工程としては、ポリオレフィン系樹脂をインジェクション成形により、射出成形することで得ることができる。使用するポリオレフィン樹脂については後述する。使用する金型等についても、射出成形で通常使用されている金型のいずれも使用することができ、必要とする内装材の形状等により、その形態を適宜変更することができる。尚、金型内部に突起を設け、芯材の厚みを一部分薄くすることで、エアバッグ膨出用扉予定部分を設けることが出来る。このように、芯材の厚みを一部薄くすることで、エアバッグ膨張時に、当該薄い部分が開裂し、当該開裂した部分からエアバッグが膨出する。
【0014】
前記成形によって得られた芯材表面に対して、火炎処理を施す。火炎処理は、ポリオレフィン系樹脂を活性な状態とし、後に塗布する接着剤との付着力を向上させるために行う。火炎処理は、ポリオレフィン系樹脂芯材の表面張力が、36〜60mN/mとなるまで行うことが好ましく、40〜50mN/mとなるまで行うことが更に好ましい。表面張力が上記範囲内にあることで、良好な付着性と、基材表面に対する接着剤の濡れ性を確保することが可能となる。尚、表面張力が前記範囲となるようにするためには、燃焼させるガスの種類、ガスの流量、炎の吹き出し口から芯材表面までの距離、及び処理時間等により適宜調整することが可能である。また、前記表面張力の測定値は、JIS K 6768(ぬれ張力試験方法)に準拠して測定した値である。
【0015】
前記火炎処理を施した芯材表面に対して、後述する接着剤を塗布する。塗布の方法としては、スプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーターによる塗装、ロールコーターによる塗装、刷毛塗り、ディップ塗装等の方法を用いることができ、これら塗装方法は、芯材の形状等により適宜選択することが可能である。本発明においては、自動車内装部品は、複雑な形状を有していることがほとんどであるため、これら複雑な形状に対応できる塗装方法として、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装により塗布する方法が特に適している。
【0016】
接着剤の塗布量については、乾燥重量で4〜60g/mであることが好ましく、9〜50g/mであることが更に好ましい。4g/mより少ないと、塗装した接着剤の付着効果が発揮できず、内装材の温度上昇時における付着性が確保できなくなる傾向にある。一方、60g/mより多いと、これ以上の接着効果の向上が望めず、経済的に不利となる傾向にあり、また接着剤の硬化収縮による応力によって塗膜の凝集剥離を起こす傾向にある。
【0017】
接着剤を塗装してから、接着剤の表面を乾かし、後に行うウレタン材料の射出が可能となる程度まで、接着剤表面を乾燥させる。乾燥させる方法としては、常温乾燥や強制乾燥等の方法を用いることができる。本発明においては、生産効率の観点から、特に強制乾燥を用いることが好ましく、その際の乾燥条件としては、60〜90℃の温度範囲にて30〜60分の間で行うことが望ましい。なお、接着剤は、完全に乾燥していない状態で次工程に移ることも、完全に乾燥した状態で次工程に移ることも可能である。
【0018】
乾燥させた接着剤面を有する芯材を、金型に入れて、無発泡ウレタンを射出成形し、ウレタン表皮を形成する。射出成形の方法としては、RIM成形を採用する。前記成形において使用する金型は、従来から用いられてきた金型のいずれも使用することが可能であり、必要とする内装材の形状等により、その形態を適宜変更することができる。また、無発泡ウレタンを成形する際には、金型内部に剥離剤を予め塗装しておくことで、成形後、型から取り出す際にスムーズに取り出すことができる。これら剥離剤としては、従来から金型内成形を行う際に使用されているいずれの剥離剤も使用することが可能であり、これらの代表的なものとしては、シリコーンやワックス等が挙げられる。剥離剤の塗布量としては、100〜160g/mの範囲であることが好ましい。無発泡ウレタンの射出量としては、芯材表面から0.5〜3.0mmの範囲となる厚さになるような量であることが好ましく、1.0〜1.5mmの範囲であることが更に好ましい。無発泡ウレタンの厚さが0.5mmより薄い場合では、内装部品の意匠性が低下する傾向にある。一方3.0mmより厚い場合では、エアバッグの膨張時において、内装部品表面の破断を阻害する傾向にあり、また触感的な機能についてはこれ以上の向上が望めず、経済的に不利となる傾向にある。
【0019】
また、本発明においては、上記得られた無発泡ウレタンの表面に対して、塗料を塗装し、内装部品の美感性、触感性等を向上させることが可能である。これら塗料の塗装方法としては、スプレー塗装等の塗料を塗装する際に使用される通常の方法のいずれも採用することが可能である。当該塗料の塗布量については、使用する塗料配合、求められる性能等により適宜変更することができる。
【0020】
更に、塗料を塗装する方法としては、前記無発泡ウレタンを成形する金型内部に剥離剤を塗布した後、金型内に塗料をスプレー塗装し、塗料の付着した金型内で無発泡ウレタンの成形を行う、いわゆるインモールドコートの方法により、無発泡ウレタンの成形と、表面の着色を同時に行うことができる。
【0021】
本発明においてRIM成形の際の条件としては、金型の型締めを10〜40kg/cm、金型内の加熱温度を40〜70℃としておくことが、芯材に対する無発泡ウレタンの接着性を確保する点で特に好ましい。
【0022】
続いて、本発明で使用する芯材の樹脂、接着剤、無発泡ウレタン、内装材の表面に塗布する塗料について、以下に説明する。
【0023】
「本発明で使用する新剤の材質、接着剤等」
「芯材の材質」
本発明における芯材の材質は、耐久性や強度等の観点から、ポリオレフィン系の樹脂を用いる。これらポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、又はポリブタジエン、もしくはこれらの塩素化物の内の1種、もしくは2種以上を組み合わせて使用することが可能であり、またこれらとエチレンプロピレンゴム(EPM)や、EPMに少量の第三成分を添加したエチレンプロピレンゴム(EPDM)を併用することも可能である。
【0024】
「接着剤の配合」
本発明における前記接着剤は、結合剤及び特定のポリエステルポリオールを含有し、必要に応じてその他溶媒、添加剤等からなる。
【0025】
前記結合剤としては、接着剤用途で用いられているいずれの樹脂も結合剤として使用することが可能であり、芯材の材質、要求性能等に応じて適宜変化させることが可能である。これら樹脂の代表的なものとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、無機系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂の1種、若しくは2種以上を組み合わせて使用することが可能である。本発明においては特に、アクリル樹脂を用いることで、芯材と無発泡ウレタンの接着力を確保することができるようになる。
【0026】
前記アクリル樹脂としては、接着剤や塗料にて通常使用されているいずれのアクリル樹脂も用いることができる。これらアクリル樹脂は、重合性モノマーを公知の方法で重合することにより得ることができる。前記モノマーの代表的なものとしては、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等のカルボキシル基含有単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の光安定性単量体;2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性単量体;その他N−メチロール基を有したN−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等が挙げられ、これらを単体、もしくは2種以上組み合わせて併用することが可能である。
【0027】
前記重合により得られたアクリル樹脂の数平均分子量は、1000〜15000の範囲であることが好ましく、1500〜10000の範囲であることが更に好ましい。分子量が1000より小さいと接着剤の粘度の低下が著しく、塗装時においてタレ、ワキ等を発生し、最終的に得られる内装材の意匠性を低下させたり、部分的に無発泡ウレタンの付着性が低下する傾向にある。一方分子量が15000より大きくなると、接着剤の粘度上昇が著しく、接着剤を塗装する際に良好な吐着状態を確保することが困難となり、部分的に無発泡ウレタンの付着性が低下する傾向にある。これらアクリル樹脂の代表的なものとしては、例えばユーダブル3300(日本触媒社製、分子量Mn9900、水酸基価30)や、アクリセット4230(日本触媒社製、分子量Mn1600、水酸基価116)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
アクリル樹脂の配合量は、接着剤の全固形分に対して、80〜95質量%配合されていることが好ましく、85〜95質量%配合されていることが更に好ましい。アクリル樹脂の配合量が80質量%より少ないと、接着剤の接着効果が弱まり、無発泡ウレタンの付着不良が生じる傾向にある。一方95質量%より多いと、接着剤を塗布する際の塗布効率が悪くなり、無発泡ウレタンが部分的に付着不良を起こす傾向にある。
【0029】
前記結合剤としては、アクリル樹脂の他に、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を使用することが可能であり、その種類、添加量等については、適宜変化させることができる。
【0030】
前記特定構造のポリエステルポリオールとは、両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールのことを指す。当該ポリエステルポリオールは、両端に水酸基を有していることから、水素結合の効果により、芯材であるポリオレフィン系樹脂及び無発泡ウレタンに対する付着力を更に高め、低温又は高温環境下における付着性を確保することが可能となる。また、前記ポリエステルポリオールの内、脂肪族環を有するジアルコールと直鎖状ジカルボン酸を反応させて得たものを使用することが更に好ましい。このようなものを用いることで、接着剤の付着力を更に高めることができる。前記脂肪族環を有するジアルコールとしては、例えば、1,4,−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記直鎖状ジカルボン酸としては、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、セバシン酸及びダイマー酸等が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記ポリエステルポリオールを製造する方法は、従来からポリエステルを製造する方法のいずれも用いることが可能である。
【0031】
前記ポリエステルポリオールは、数平均分子量が400〜700であることが必須で、400〜500の範囲にあることが好ましい。数平均分子量は、一般的な方法で測定でき、GPC等を用いる方法が挙げられる。平均分子量が400より小さいのものは、樹脂として得ることが、困難である。一方分子量が700より大きくなると、接着膜の可撓性が低下し、温度変化等により芯材に応力が生じた場合、芯材と無発泡ウレタンの密着不良が生じる傾向にある。これらポリエステルポリオールの代表的なものとしては、例えばFLEXOREZ188(KING INDUSTRY社製、分子量Mn460)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、芯材及び無発泡ウレタンへの付着性の観点から、前記ポリエステルポリオールの配合比率はアクリル樹脂:ポリエステルポリオール=95:5〜85:15の範囲にあることが好ましい。上記範囲を超えてウレタン樹脂の添加量が少なくなると、ポリエステルポリオールを添加することによる効果が望めなくなる傾向にある。一方上記範囲を超えてポリエステルポリオールの添加量が多くなると、芯材と発泡ウレタンの密着性が低下する傾向にある。
【0032】
前記溶媒としては、接着剤又は塗料において使用されている、いずれの溶媒も使用することが可能であり、例えば、トルエンやキシレン等の芳香族系炭化水素類:酢酸エチルや酢酸ブチル等の酢酸エステル類:メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類:イソプロピルアルコールやブチルアルコール等のアルコール類:更には各種の脂肪族炭化水素類、グリコールエーテル類、水等から選択される1種、又は2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0033】
前記添加剤としては、接着剤又は塗料において使用されている、いずれの溶媒も使用することが可能であり、例えば消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、光安定化剤、抗菌剤、架橋促進剤、分散剤、沈殿防止剤、インク溶媒に対する濡れ助成剤等を必要に応じて配合することが可能であり、使用する結合材、着色顔料、体質顔料、吸水性充填剤、溶媒等により、添加剤の種類、添加量を変化させることができる。
【0034】
アクリル樹脂を用いる場合には、イソシアネート樹脂やエポキシ樹脂等を硬化剤として使用することができる。これら硬化剤を配合する場合においては、例えばイソシアネート類を硬化剤として用いる場合には、OH/NCO=0.5〜1.5当量の範囲で混合することが好ましい。
【0035】
「無発泡ウレタン」
本発明で使用する無発泡ウレタンは、上述の通りRIM成形で行うことから、必要とされるウレタン表皮の性状に応じて、ポリオールとイソシアネートの種類を組み合わせて使用することが可能である。本発明に用いることができるポリオールとしては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及び蔗糖等の水酸基含有化合物あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエン等のアミノ基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した分子中に2〜6個の水酸基を含有し、平均水酸基当量が100〜3000のポリエーテルポリオールあるいはこれらのポリエーテルポリオールにビニル化合物を付加重合したポリマーポリオール等が代表的なものとして挙げられる。また、ポリカルボン酸と低分子量の水酸基含有化合物を得られるポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合して得たポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をアミノ化し、あるいはポリエーテルポリオールのイソシアネートプレポリマーを加水分解して得られるポリエーテルポリアミンであって、平均活性水素当量が100〜3000のものも併用できる。
【0036】
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのポリイソシアネートをウレタン変性したり、アロファネート変性、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性した変性ポリイソシアネート、これらの混合物等が代表的なものとして挙げられる。
【0037】
本発明においては、上述のように最終的に得られる自動車内装部品の性能に応じて、上記のポリオールとイソシアネートを組み合わせて使用することが可能であるが、これらの組み合わせとしては、最終的に得られる無発泡ウレタン表皮の引っ張り強度が、15〜45kgf/cmの範囲にあることが好ましい。引っ張り強度が15kgf/cmより小さいと、ウレタン表皮が所定箇所以外で開裂し、エアバッグの展開が困難となる傾向にある。一方45kgf/cmより高いと、エアバッグの展開を阻害する傾向にある。尚、前記引っ張り強度は、JIS K6301(引っ張り試験)に準拠して測定した際の数値を指す。尚、上記数値は、試験片を2号型のものを用いて、標線間距離を20mmとし、引っ張り速度を500mm/minとしたときの測定値である。
【0038】
「塗料」
本発明で使用する前記塗料は、自動車内装部品の上塗として使用されている塗料のいずれも用いることが可能である。塗料に使用されている樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂等の1種又は2種以上を、内装部品に求められる性能等に基づいて、適宜選択することが可能である。溶剤、添加剤、顔料等についても、塗料一般で使用されているものを特に制限無く使用することが可能であり、その種類の選択・添加量等については、内装部品に求められる性能等に基づいて、適宜選択することが可能である。
【0039】
上塗塗料を前記インモールドコートで塗装する場合においては、前記塗料には溶媒が含まれていないことが好ましい。溶媒が含まれていると、型締めの圧力と、金型にかけた熱によって溶媒が急速に蒸発し、塗膜表面にワキ等の塗膜不良を生じ、最終的に得られる内装部品の意匠性が低下する傾向にある。
【0040】
「自動車内装部品」
前記説明したような方法により得られた自動車内装部品は、エアバッグ装置を製造するために用いることができる。即ち、前記ウレタン表皮を形成した後、或いは当該ウレタン表皮に対して塗装を行い、表面に塗膜を形成した自動車内装部品を、エアバッグ装置のアウターとし、これにインナーを組み込む。次いで、インナーを組み込んだアウターを上下に配置した振動溶着治具に固定し、面同士を合わせた樹脂の片方をマグネットの作用で100〜250Hzの範囲で振動させ、当該振動によってインナーとアウターの接触部分に生じる摩擦熱により、インナーとアウターを溶着した後に、エアバッグを組み込み、エアバッグ装置が完成する。上記操作は、例えばブランソン社製824H振動溶着機等を用いて行うことができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。尚、以下の実施例が、本発明の範囲を何ら限定するものでないことは言うまでもない。
【0042】
本実施例に用いた、芯材、接着剤、無発泡ウレタン及び上塗塗料は、以下の用にして得た。また本実施例で用いた樹脂の分子量は、下記の測定機器を用いて行った。
・メーカー名:東ソー
・機種:HLC−8220GPC
・カラム:TSKgel G5000〜2000
・溶離液:THF
・流量:1ml/min
【0043】
「芯材」
ポリプロピレンにタルク等の添加剤を加えた複合材(PP−C)(商品名:MRC314、日本ポリプロ社製)を材料とし、インストルメントパネルを製造するための金型(中央部にエアバッグ膨出扉予定部分を形成するための突起が設けてある)にインジェクション成形(成形温度35℃、樹脂温度230℃、成形圧力80kg/cm、射出時間8〜10秒)とすることによって、芯材を得た。
【0044】
「接着剤」
(接着剤1)
アクリル樹脂(商品名:アクリセット4230、日本触媒社製、分子量Mn1600、NV72%、水酸基価116)40.6質量部、アクリル樹脂(商品名:ユーダブル3300、日本触媒社製、分子量Mn9900、NV47%、水酸基価30)41.4質量部、レベリング剤(商品名:ディスパロンLC−915、楠本化成社製)1.0質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:サンドバーS3212、クラリアント社製)2.0質量部、酢酸ブチル5.0質量部、3−酢酸メトキシブチル7.0質量部、キシレン3.0質量部、上記各成分を卓上ディスパーにて混合して、接着剤1を調製し、接着剤を塗布する際には前記接着剤1:100質量部に対してイソシアネート(商品名:ディスモジュールN75、住友バイエル社製、NCO%17)を26質量部配合、混合した後、塗布に用いた(OH/NCO=1.0)。
【0045】
(接着剤2)
前記接着剤1、95.0質量部に対して、両端に水酸基を有するポリエステルポリオール(商品名:FREXOREZ188、KING INDUSTRY社製、数平均分子量Mn460、NV100%、水酸基価230)5.0質量部を添加して接着剤2を調製し、接着剤を塗布する際には前記接着剤2:100質量部に対してイソシアネート(商品名:ディスモジュールN75、住友バイエル社製、NCO%17)を30質量部配合、混合した後、塗布に用いた(OH/NCO=1.0)。
【0046】
(接着剤3)
前記接着剤1、95.0質量部に対して、ポリエステルポリオール(商品名:FREXOREZ171−90、KING INDUSTRY社製、数平均分子量Mn1000,NV90%、水酸基価122)5.6質量部を添加して接着剤3を調製し、接着剤を塗布する際には前記接着剤3:100質量部に対してイソシアネート(商品名:ディスモジュールN75、住友バイエル社製、NV75%、NCO%17)を28.0質量部配合、混合した後、塗布に用いた(OH/NCO=1.0)。
【0047】
(接着剤4)
前記接着剤1、95.0質量部に対して、ポリエステルポリオール(商品名:バーノックJ505、大日本インキ社製、数平均分子量Mn1000、NV100%、水酸基価55)5.0質量部を添加して接着剤4を調製し、接着剤を塗布する際には前記接着剤4:100質量部に対してイソシアネート(商品名:ディスモジュールN75、住友バイエル社製、NV75%、NCO%17)を26.0質量部配合、混合した後、塗布に用いた(OH/NCO=1.0)。
【0048】
「無発泡ウレタン」
ポリオール(商品名:SBUポリオールW305、住化バイエルウレタン社製)とイソシアネート(商品名:SBUイソシアネート0418、住化バイエルウレタン社製)を使用した。
【0049】
「上塗塗料」
アクリルウレタン系塗料(商品名:プラニットIMC−NI、大日本塗料社製)を使用した。
【0050】
(自動車内装部品の製造)
上記製造した芯材を用いて、以下の条件にて自動車内装部品を製造し、本発明の効果を確認した。尚、各操作は以下の方法にて実施した。
【0051】
(火炎処理)
LPガスを、炎の吹き出し口から芯材までの距離を100mmの状態で、30秒間処理することにより、芯材の火炎処理を行った。尚、火炎処理を行った基材の5箇所の表面張力をJIS K 6768準拠の方法で行い測定した平均値を示した。なお、火炎処理を行っていない比較例1の表面張力は33mN/mであった。結果を表1に示す。
【0052】
(接着剤の塗布)
下記表に基づき、火炎処理を行った芯材もしくは火炎処理を行っていない芯材に対して、接着剤を塗布した。下記表に基づき、各接着剤をエアースプレー塗装機にて、乾燥重量が28g/mとなるように塗布し、接着剤を塗布した後に、80℃×30分間強制乾燥を行った。
【0053】
(無発泡ウレタンのRIM成形)
下記表に基づき、接着剤面を施した芯材、もしくは接着剤を施していない芯材に対して、予め剥離剤としてフッソ系離型剤を、150g/m塗布した金型を用いて、前記ポリオールとイソシアネートの混合割合を100:20として、RIM成形を行った。RIM成形の条件としては、射出圧力は150kg/cm、型締め圧力10kg/cm、型温度は60℃である。また、前記条件にて作製した無発泡ウレタンの引っ張り強度を、前述の方法にて測定した結果25kgf/cm以上であった。
【0054】
(上塗塗料の塗装)
上記無発泡ウレタンをRIM成形した後に、前記上塗塗料をエアースプレー塗装機にて、乾燥質量が20g/mとなるように塗布し、金型成形を行った。
【0055】
(自動車内装部品に対するエアバッグの組み込み製造)
上記上塗塗料を塗装した部材をアウターとして、インナーを組み込んだアウターを上下に配置した振動溶着治具(前記ブランソン社製)に固定し、加圧条件5.4MPaにてインナーとアウターを融着した後、エアバッグを組み込み、エアバッグ装置を製造した。
【0056】
<評価試験>
上記製造した自動車内装部品に対して、以下の評価試験を行った。尚、各評価試験の結果は、以下の表1に示すとおりである。
【0057】
<密着性>
密着性の試験をJIS K6829(引っ張り試験)に準拠の方法にて行った。
【0058】
<初期密着性>
上記方法により製造した自動車内装部品のアウターの初期密着性を測定した。
【0059】
<高温時における密着性>
上記製造した自動車内装部品を、80℃×4時間の環境下において保持し、左記熱処理を行った直後に密着性を測定した。
【0060】
<低温時における密着性>
上記製造した自動車内装部品を、−40℃×4時間の環境下において保持し、左記低温処理を行った直後に密着性を測定した。
【0061】
上記JIS K6829に準拠して測定し、ポリオレフィン樹脂芯材と無発泡ウレタンとの密着性において、無発泡ウレタンが破断するまでの密着強度を目視により観察した。評価基準は以下の通りである。
【0062】
○:無発泡ウレタンが破断した状態
×:ポリオレフィン樹脂芯材と接着剤との界面における剥離、又は接着剤と無発泡ウレタンとの界面における剥離、又は接着剤が凝集剥離を起こした状態
【0063】
<エアバッグ開裂性>
上記製造したエアバッグを組み込んだ自動車内装部品のエアバッグを実際に作動させ、アウターの開裂状態を目視により観察した。評価基準は以下の通りである。
【0064】
○:無発泡ウレタンの剥離等不具合の発生無く、エアバッグの作動にも支障がない
△:エアバッグの開裂箇所において、無発泡ウレタンの部分的な剥離が生じているが、エアバッグの作動には支障なく、実用上問題が無い状態
×:エアバッグの開裂箇所以外の箇所、もしくは開裂箇所を中心として無発泡ウレタンの剥離が大幅に生じており、実用上問題ある状態
【0065】
【表1】

【0066】
上記検討の結果、本発明の範囲内である実施例1については、初期密着性及び高温時、低温時における密着性共に良好であり、エアバッグの開裂性についても良好な結果を示している。
【0067】
これに対して、本発明の範囲外である、比較例1〜5においては、密着性及びエアバッグの開裂性において、実施例と比較してその性能が発揮されていないことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による自動車内装部品は、上記のようにエアバッグ装置の製造に用いることができ、その機能としては高温又は低温環境下においても、安定的にエアバッグの展開を行うことができることから、乗員の安全性確保に寄与する。また、表面に施したウレタン表皮、又は着色塗膜層により触感と意匠性に優れた内装材としての機能を併せ持つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂からなる芯材に、火炎処理を施す工程と、
該火炎処理された芯材表面に、結合剤と両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールとを含有する接着剤を塗布する工程と、
該接着剤を塗布した芯材を、金型内に配置し、無発泡ウレタン反応液を前記接着剤を塗布した面側に射出して金型内反応させて前記芯材と一体に成形する工程と、
を有することを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項2】
前記火炎処理によりポリオレフィン樹脂を含有する芯材の表面張力が36〜60mN/mとなる請求項1に記載の自動車用内装部品の製造方法。
【請求項3】
前記結合剤がアクリル樹脂である請求項1又は2に記載の自動車用内装部品の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂からなるエアバッグ膨出用扉予定部を有する芯材と、
無発泡ウレタンからなる表皮材と、
これら該芯材と該表皮材との間にあって結合剤と両端に水酸基を有する数平均分子量400〜700のポリエステルポリオールとを含有する接着剤層と、
からなることを特徴とする自動車用内装材。
【請求項5】
前記結合剤がアクリル樹脂である請求項4に記載の自動車用内装材。

【公開番号】特開2007−130936(P2007−130936A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327757(P2005−327757)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】