説明

船舶用盗難抑止装置およびそれを備えた船舶

【課題】非常時におけるエンジン始動を可能としつつも、盗難抑止効果を有する船舶用盗難抑止装置およびそれを備えた船舶を提供する。
【解決手段】イモビライザ10のコンピュータ50は、定周期データ生成ユニット55および通信ユニット56としての機能を有し、定周期データを周期的に船内LAN20に送出する。船外機ECU30のコンピュータ40は、運転制御ユニット43および故障検出ユニット44としての機能を有する。コンピュータ40は、定周期データが所定時間以上途絶すると、イモビライザ10に故障が発生したと判定する。運転制御ユニット43は、イモビライザ10に故障が発生すると、船外機3の運転モードを非常運転モードとする。非常運転モードでは、通常運転モードに比較して、エンジン回転速度の上限値が低く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、推進機を備えた船舶のための盗難抑止装置およびそれを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の盗難防止装置の一つにイモビライザがある。イモビライザは、キーに内蔵されたトランスポンダから送出されるIDコードと、車両側に登録したIDコードとを照合する。これらのIDコードが一致すると、イモビライザは、エンジン始動を許容する。したがって、正規のキーを用いなければ、エンジンを始動することができない。
このようなイモビライザを船舶に適用して、その盗難防止を図ることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−146148号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特許文献1の構成は、沿岸で使用されたり、沖にでるときには他の船舶の同伴が義務づけられたりするような船舶(たとえば、PWC(Personal Water vehicle))への適用を前提としている。もしも、単独で沖合へと向かう船舶に特許文献1の構成を適用すると、イモビライザ故障時には、推進機を始動することができないので、帰港できなくなるおそれがある。また、専用のキーを水中に落としてしまうことも考えられ、この場合にも推進機を始動できないから、帰港できなくなるおそれがある。
【0004】
一方、船舶には複数の推進機が備えられる場合がある。たとえば、推進機の一例である船外機を船体に複数機に装着する場合が該当する。このような構成では、個々の推進機に個別にイモビライザを備えることで、前述の問題が緩和される。すなわち、複数の推進機のイモビライザが同時に故障する可能性は極めて低いから、いずれかの推進機のイモビライザが故障しても、他の推進機を始動できる。また、いずれかの推進機に対応したキーを紛失しても、他の推進機のキーで当該他の推進機を始動できる。
【0005】
しかし、このような構成では、推進機の数だけキーを保持しておかなければならないから、その管理が面倒である。のみならず、個々の推進機に対してロック操作およびアンロック操作を行わなければならないから、乗船時および下船時の操作が煩雑であるという問題もある。
さらには、複数の推進機が備えられた船舶において、イモビライザを用いた盗難抑止システムを構築しようとすると、複数の認証ユニット(イモビライザユニット)を設置する必要がある。そのため、設置に膨大な手間がかかり、それに応じて、作業ミスも増えるので、結果としてシステムの信頼性が低くなるおそれがある。
【0006】
これらの問題は、複数の推進機に対してただ一つの認証ユニット(イモビライザ)を対応付け、多対一対応とすることによって解決できる。ところが、この場合には、認証ユニットが故障すると、いずれの推進機のエンジンも始動できなくなる。したがって、沖合での故障発生時や、沖合でのキー紛失時には、船舶が帰港することができなくなるおそれがある。
【0007】
むろん、沖合でロック操作をせず、アンロック状態に保持しておけば、前述の問題はいずれも生じない。しかし、使用者が沖合で不用意にロック操作を行ってしまう事態を完全に回避することはできない。
そこで、この発明の目的は、非常時におけるエンジン始動を可能としつつも、盗難抑止効果を有する船舶用盗難抑止装置およびそれを備えた船舶を提供することである。
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、推進機を備えた船舶のための盗難抑止装置であって、認証ユニットと、前記認証ユニットの故障を検出する故障検出ユニットと、前記認証ユニットによる認証成功を条件に前記推進機の運転モードを通常運転モードに設定し、前記認証ユニットによる認証が成功しなければ前記推進機の運転を禁止し、前記故障検出ユニットが前記認証ユニットの故障を検出したときには前記推進機の運転モードを前記通常運転モードに対して所定の制限を加えた非常運転モードに設定する運転制御ユニットとを含む、船舶用盗難抑止装置である。
【0009】
この構成によれば、認証ユニットによる認証に成功すると推進機を通常運転モードで運転することができ、認証が失敗であれば推進機の運転が禁止される。これにより、盗難抑止効果が得られる。また、認証ユニットの故障時には、非常運転モードで推進機を運転させることができる。したがって、非常運転モードで推進機を運転させることで、船舶に推進力を与えることができるから、沖合での故障時にも、帰港が可能になる。非常運転モードは、通常運転モードに対して制限を加えた運転モードである。
【0010】
船舶または推進機の窃取を目的とした窃盗犯は、認証ユニットを不動作状態(すなわち、故障状態)として、その目的を達しようとするかもしれない。しかし、認証ユニットが故障状態のときには、非常運転モードでの運転が許容されるにすぎないから、船舶または推進機の経済的価値は低く、転売によって利益を得ることは困難である。したがって、窃取対象とする利益がないので、結果として、盗難抑止効果が得られる。
【0011】
非常運転モードは、たとえば、通常運転モード時に許容される最大出力よりも低い上限出力以下の範囲で推進機の運転が可能なモードであってもよい。たとえば、推進機は、エンジンを動力源とするものであってもよい。この場合には、非常運転モードにおけるエンジン回転速度が、通常運転モード時の最大エンジン回転速度よりも低い上限エンジン回転速度以下の範囲に制限されるようにすればよい。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記認証ユニットは、前記故障検出ユニットに対して所定周期で信号を送信する信号送信ユニットを含み、前記故障検出ユニットは、前記信号送信ユニットからの信号が前記所定周期よりも長い所定時間に渡って途絶したときに、前記認証ユニットに故障が生じたと判定するものである、請求項1記載の船舶用盗難抑止装置である。
【0013】
この構成によれば、認証ユニットから定期的に送出される信号(定周期データ)が所定時間以上途絶えると、故障発生と判定される。したがって、簡単な構成で故障の有無を判定できる。
むろん、故障検出ユニットは、別の構成とすることもできる。たとえば、認証ユニットの電源電圧を監視し、その異常を検出したときに、故障発生と判定することができる。また、同じ処理を実行する一対のコンピュータを認証ユニットに備えて二重系としてもよい。この場合、故障検出ユニットは、それら一対のコンピュータの動作を監視し、動作の不一致が検出されたときに、故障発生と判定してもよい。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記信号送信ユニットによる信号送信を停止させる送信停止ユニットをさらに含む、請求項2記載の船舶用盗難抑止装置である。この構成によれば、送信停止ユニットによって、信号の周期的な送信を停止させることができる。これにより、故障検出ユニットが故障発生を検出するから、推進機を非常運転モードで運転させることができる。
【0015】
たとえば、認証ユニットによる認証のために必要なキーを失った場合に、使用者は、送信停止ユニットによって、周期的な信号送信を停止させる。これにより、非常運転モードでの推進機の運転が可能になる。これにより、制限された運転モードではあるが、推進機を作動させることができるから、船舶を帰港させることができる。
請求項4記載の発明は、前記運転制御ユニットは、前記推進機の運転中は、その運転モードを保持するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置である。この構成によれば、推進機の運転中には運転モードが変化しないので、運転モードの変化に伴う違和感を回避できる。とくに、非常運転モードが通常運転モードに比較して推進機出力を制限した運転モードである場合に、推進機出力の急変に伴う違和感を回避できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記認証ユニットが、複数の推進機に対応付けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置である。
この構成によれば、1つの認証ユニットによる認証結果を複数の推進機に対して適用することができる。これにより、乗船時および下船時における認証操作(アンロック操作およびロック操作)が簡単になるから、利便性を向上できる。また、認証ユニットの設置の手間が軽減できる。しかも、設置作業手順が少なくなるので、作業ミスを少なくすることができる。そして、認証ユニットが故障しても非常運転モードで推進機を運転することができるから、船舶の帰港に支障が生じることもない。
【0017】
請求項6記載の発明は、船体と、この船体に装着された推進機と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置とを含む、船舶である。
この構成によれば、認証ユニットによる認証に失敗すると推進機の始動が禁止されるので、盗難抑止効果が得られる。また、認証ユニットの故障時には、非常運転モードで推進機を運転させることができるから、沖合での故障時にも、帰港が可能になる。さらに、認証ユニットを不動作状態とすると、非常運転モードでしか推進機を運転させることができなくなるので、経済的価値が減殺される。このような船舶は、窃取対象とする利益がないので、盗難抑止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための斜視図である。船舶1は、船体2と、推進機としての船外機3とを備えている。船外機3は、複数個(この実施形態では3機)備えられている。これらの船外機3は、船体2の船尾に並べて取り付けられている。3機の船外機を区別するときには、右舷に配置されたものを「右舷船外機3S」、中央に配置されたものを「中央船外機3C」、左舷に配置されたものを「左舷船外機3P」ということにする。これらの船外機3は、それぞれエンジンを備えており、このエンジンの駆動力によって回転されるスクリューによって推進力を発生する。
【0019】
船体2の前方部(船首側)には、操船席5が設けられている。操船席5には、ハンドル装置6と、リモコン7と、キースイッチ4と、ゲージ9とが備えられている。
ハンドル装置6は、操船者によって回転操作されるステアリングハンドル6aを備えている。このステアリングハンドル6aの操作が、ケーブル(図示せず)によって、船尾に設けられた舵取り機構(図示せず)に機械的に伝達されるようになっている。この舵取り機構は、3機の船外機3を連動させて、それらの方向を変化させる。これにより、推進力の方向が変化し、それに応じて船舶1の進行方向を変更できる。
【0020】
リモコン7は、3機の船外機3に対応して3個備えられている。これらを区別するときには、右舷船外機3Sに対応するものを「右舷リモコン7S」といい、中央船外機3Cに対応するものを「中央リモコン7C」といい、左舷船外機3Pに対応するものを「左舷リモコン7P」という。リモコン7は、前後に傾倒可能なレバー7aを備え、このレバー7aの操作が、ケーブル(図示せず)を介して対応する船外機3に伝達されるようになっている。レバー7aを所定の中立位置から前方に傾倒させることによって、船外機3のシフト位置が前進位置となり、当該船外機3から前進方向の推進力が発生される。レバー7aを前記中立位置から後方に傾倒させることによって、船外機3のシフト位置が後退位置となり、当該船外機3から後退方向の推進力が発生される。レバー7aが前記中立位置にあれば、船外機3のシフト位置が中立位置となり、船外機3は推進力を発生しない。また、レバー7aの傾倒量に応じて、船外機3の出力、すなわち、船外機3に備えられたエンジンの回転速度を変化させることができる。
【0021】
キースイッチ4は、3個の船外機3の電源を個別にオン/オフし、かつ、3個の船外機3のエンジンを個別に始動/停止するためのものである。
ゲージ9は、3機の船外機3に対応して3個備えられている。これらを区別するときには、右舷船外機3Sに対応するものを「右舷ゲージ9S」といい、中央船外機3Cに対応するものを「中央ゲージ9C」といい、左舷船外機3Pに対応するものを「左舷ゲージ9P」という。これらのゲージ9は、対応する船外機3の状態を表示する。より具体的には、対応する船外機3の電源のオン/オフ、エンジン回転速度その他必要な情報を表示する。
【0022】
操船席5には、さらに、イモビライザ10(受信機)が備えられている。イモビライザ10は、船舶1の使用者によって携帯されるキーユニット11からの信号を受信し、正当使用者のみに船舶1の通常の使用を許容する装置である。キーユニット11は、ロックボタン12およびアンロックボタン13を備えている。ロックボタン12は、イモビライザ10をロック状態に設定するために操作されるボタンである。このロックボタン12の操作によって、ロック信号がキーユニット11から送出される。イモビライザ10がロック状態に設定されると、船舶1の通常の使用が禁止される状態となる。アンロックボタン13は、ロック状態を解除して、イモビライザ10をアンロック状態に設定し、船舶1の通常の使用を開始するために操作されるボタンである。このアンロックボタン13の操作によって、アンロック信号がキーユニット11から送出される。キーユニット11は、ロック信号およびアンロック信号とともに、使用者認証コードを送出する。
【0023】
イモビライザ10は、キーユニット11からの使用者認証コードを受信して使用者認証処理を実行する。すなわち、イモビライザ10は、予め登録されている照合元データとの一致/不一致を確認する。使用者認証処理に成功すると、イモビライザ10は、キーユニット11からのロック信号およびアンロック信号を受け付ける。使用者認証処理に失敗すると、イモビライザ10は、当該キーユニット11からのロック信号およびアンロック信号に対して無応答となる。
【0024】
図2は、船舶1の電気的構成を説明するための図である。キースイッチ4は、3個のキースイッチ4S,4C,4Pを含む。すなわち、キースイッチ4Sが右舷船外機3Sに対応し、キースイッチ4Cが中央船外機3Cに対応し、キースイッチ4Pが左舷船外機3Pに対応している。キースイッチ4は、たとえば、使用者によって携帯されるキーが挿入されるキーシリンダを備えている。正規のキーをキーシリンダに挿入すると、キーの回動操作が可能になる。これにより、キーをオフ位置(電源遮断位置)からオン位置(電源投入位置)まで回動して、対応する船外機3の電源を投入できる。さらに、オン位置を超えてスタート位置(始動位置)までキーを回動することによって、当該船外機3のエンジンをクランキングすることができる。3個のキースイッチ4S,4C,4Pを個別に操作することで、船外機3に対する電源投入/電源遮断およびエンジンの始動を個別に行うことができる。エンジン運転中には、キースイッチ4をオフ位置まで回動操作して船外機3への電源を遮断することによって、3機の船外機3のエンジンを個別に停止できる。
【0025】
3機の船外機3にそれぞれ対応して3個のバッテリ15が設けられている。すなわち、右舷船外機3Sに対応するバッテリ15Sと、中央船外機3Cに対応するバッテリ15Cと、左舷船外機3Pに対応するバッテリ15Pとが備えられている。これらのバッテリ15S,15C,15Pは、それぞれ、船外機3S,3C,3Pに電源ケーブル16S,16C,16Pを介して接続されている。バッテリ15は必ずしも船外機3の近くに配置されるわけではなく、ボートビルダの設計に従って船体2の適所に配置される。
【0026】
さらに、電源ケーブル16S,16C,16Pは、船外機3S,3C,3Pからキースイッチ4S,4C,4Pまでそれぞれ引き回されている。つまり、電源ケーブル16S,16C,16Pには、キースイッチ4S,4C,4Pがそれぞれ介装されている。さらに、特定の一つの船外機3(たとえば、左舷船外機3P)に対応するバッテリ15(たとえばバッテリ15P)からの電源ケーブル16(たとえば電源ケーブル16P)からは、電源線17が分岐している。この電源線17は、イモビライザ10に接続されている。つまり、イモビライザ10は、常時、バッテリ15からの電源供給を受けている。
【0027】
船外機3S,3C,3Pには、制御信号線18S,18C,18Pがそれぞれ接続されている。この制御信号線18S,18C,18Pには、それぞれリモコン7S,7C,7Pが接続されている。リモコン7S,7C,7Pは、リモコン認証コードを生成して制御信号線18S,18C,18Pに送出する。船外機3は、予め登録されたリモコン認証コードが受信されなければ、動作不能状態となる。さらに、制御信号線18S,18C,18Pには、キースイッチ4S,4C,4Pからの始動信号線19S,19C,19Pがそれぞれ接続されている。始動信号線19S,19C,19Pに始動指令が導出されると、それに応答して、対応する船外機3のスタータが作動し、エンジンが始動される。
【0028】
一方、船体2内には、船内LAN(ローカルエリアネットワーク)20が構築されている。具体的には、船外機3、イモビライザ10およびゲージ9が船内LAN20に接続されて、データおよび制御信号を授受できるようになっている。さらに具体的には、操船席5の近くに船首側ハブ21が備えられ、船尾側には船尾側ハブ22が備えられていて、これらはLANケーブル23によって互いに接続されている。船首側ハブ21には、ゲージ9がLANケーブル24を介して接続されており、イモビライザ10がLANケーブル25を介して接続されている。また、船尾側ハブ22には、LANケーブル26を介して船外機3が接続されている。船首側ハブ21には、システム電源回路80から、船内LAN20のためのシステム電源がシステム電源線28を介して供給されている。
【0029】
システム電源回路80は、キースイッチ4S,4C,4Pとそれぞれ連動する3つの切替回路72S,72C,72Pを備えている。これらの切替回路72S,72C,72Pは、システム電源回路80と左舷船外機3Pに対応した電源ケーブル16Pとの間に並列に接続されている。切替回路72S,72C,72Pは、たとえば、キースイッチ4S,4C,4Pがオン状態のときにそれぞれ導通状態となるリレーで構成されている。したがって、キースイッチ4S,4C,4Pのうちの少なくとも1つがオン状態であれば、システム電源線28への電源供給が継続される。
【0030】
LANケーブル23〜26は、電源線と信号線とを結束して構成されている。これにより、LANケーブル23〜26は、電源線を介してシステム電源線28からの電力を送電できるとともに、信号線を介して各機器間の通信信号を伝送できる。とくに、ゲージ9への電源供給は、システム電源線28、船首側ハブ21およびLANケーブル24を介して達成されるようになっている。
【0031】
図3は、前記船舶1の電気的な構成をさらに詳しく説明するためのブロック図である。船外機3は、それぞれ、船外機ECU(電子制御ユニット)30と、エンジン31と、スタータ32と、エンジン回転速度センサ33と、発電機36とを備えている。エンジン31は、燃料供給部34と、点火プラグ35とを備えている。燃料供給部34は、たとえば、エンジン31の吸気経路に燃料を噴射するインジェクタからなる。点火プラグ35は、エンジン31の燃焼室内で放電して、燃焼室内の混合気に点火する。燃料供給部34および点火プラグ35の動作は、船外機ECU30によって制御される。スタータ32は、バッテリ15からの給電を受けて回転し、その回転力でエンジン31のクランキングを行うための装置である。エンジン回転速度センサ33は、エンジン31の回転速度、より具体的には、クランク軸の回転速度を検出する。発電機36は、エンジン31の駆動力によって回転するロータを有し、このロータの回転によって電力を発生するものである。この電力によって、対応するバッテリ15が充電される。
【0032】
船外機ECU30は、コンピュータ40(マイクロコンピュータ)と、燃料供給部34および点火プラグ35などを駆動する駆動回路(図示せず)とを含み、船内LAN20に接続されている。コンピュータ40は、CPU、ROMおよびRAMその他必要なメモリならびにインタフェースを含む。とくに、後述するように、イモビライザ10の認証元データ、およびリモコン7の認証元データなどを記憶するための不揮発性メモリ40M(たとえばEEPROMのような書き換え可能なもの)を備えている。
【0033】
コンピュータ40は、ROMに格納された所定の動作プログラムをCPUが実行することにより、複数の機能処理部としての働きを有することになる。この複数の機能処理部は、ユニット認証ユニット41と、リモコン認証ユニット42と、運転制御ユニット43と、故障検出ユニット44と、故障検出制御ユニット45と、通信ユニット47とを含む。
コンピュータ40のユニット認証ユニット41としての機能は、イモビライザ10が送出するユニット認証コードの認証である。より具体的には、コンピュータ40は、イモビライザ10に対してユニット認証コードの送出を要求する。これに応答して、イモビライザ10から、船内LAN20を介して、ユニット認証コードが送出されてくる。このユニット認証コードがコンピュータ40によって受信される。コンピュータ40は、受信したユニット認証コードと不揮発性メモリ40Mに予め登録されている認証元データ(正規のユニット認証コード)とを照合し、その照合結果(成功または失敗)を生成する。
【0034】
コンピュータ40のリモコン認証ユニット42としての機能は、リモコン7が送出するリモコン認証コードの認証である。より具体的には、コンピュータ40は、リモコン7から、制御信号線18を介して、リモコン認証コードを受信する。さらに、コンピュータ40は、受信したリモコン認証コードと不揮発性メモリ40Mに予め登録されている認証元データ(正規のリモコン認証コード)とを照合し、その照合結果(成功または失敗)を生成する。
【0035】
コンピュータ40の運転制御ユニット43としての機能は、船外機3の運転許可(始動許可)および運転禁止(始動禁止)を含む。具体的には、コンピュータ40は、イモビライザ10から、船内LAN20を介して、イモビライザ10がロック状態かアンロック状態かを表すデータを受信する。コンピュータ40は、イモビライザ10がアンロック状態であり、かつ、ユニット認証結果およびリモコン認証結果がいずれも「成功」であれば、船外機3の運転を許容する。
【0036】
さらに、コンピュータ40の運転制御ユニット43としての機能には、船外機3の運転モードを設定する運転モード設定ユニット43Aとしての機能が含まれている。船外機3の運転モードは、通常運転モードと、非常運転モードとを含む。通常運転モードとは、イモビライザ10がアンロック状態であり、かつ、ユニット認証およびリモコン認証がいずれも成功した場合に選択される運転モードである。たとえば、通常運転モードでは、エンジン31のエンジン回転速度が最高速度(たとえば、6000rpm)まで許容される。非常運転モードとは、イモビライザ10の故障が検出されたときに選択される運転モードである。非常運転モードは、通常運転モードに比較して、制限が加えられた運転モードである。具体的には、エンジン31のエンジン回転速度の上限が、前記最高速度よりも低い制限速度(たとえば、2000rpm)に制限される。
【0037】
コンピュータ40の運転制御ユニット43としての機能は、さらに、キースイッチ4S,4C,4Pから制御信号線18を介して与えられる始動指令に応答して、スタータ32を作動させることを含む。これにより、エンジン31が始動される。また、コンピュータ40の運転制御ユニット43としての機能は、さらに、必要に応じて、エンジン31を停止させる制御を含む。具体的には、燃料供給部34による燃料供給の停止、および点火プラグ35による点火動作の停止によって、エンジン31が停止する。
【0038】
コンピュータ40の故障検出ユニット44としての機能は、イモビライザ10の故障を検出することである。イモビライザ10は、船内LAN20に、一定の周期で所定のデータ(定周期データ)を送出する。コンピュータ40は、定周期データを監視し、前記周期よりも長い所定時間に渡って定周期データが途絶すると、イモビライザ10に故障が生じたと判断する。こうしてイモビライザ10の故障が検出されると、前述の非常運転モードが選択されることになる。定周期データの途絶によって検出することができるイモビライザ10の故障には、電源ショート、電源断線、アース断線、マイクロコンピュータ故障などがある。
【0039】
コンピュータ40の故障検出制御ユニット45としての機能は、故障検出ユニット44による故障検出動作を制御することである。前述のとおり、イモビライザ10には、左舷船外機3Pに対応したバッテリ15Pからの電力が、電源ケーブル16Pおよび電源線17を介して供給される。しかし、バッテリ15の配置は、ボートビルダが任意に選択するので、電源ケーブル16が船体2内で長く引き回され、場合によっては、その全長は10メートルを超える。そのため、バッテリ15Pの残容量が少なく、その電圧が低いときには、電源ケーブル16Pにおける電圧降下のために、イモビライザ10を正常動作させることができないおそれがある。とくに、左舷船外機3Pのエンジン31を始動するためにスタータ32を駆動するときには、電源ケーブル16Pに大電流が流れるので、電圧降下が著しくなる。このような場合に、イモビライザ10は定周期データを送出することができなくなり、コンピュータ40がイモビライザ10の故障を検出するおそれがある。すると、運転モードが非常運転モードとなってしまう。
【0040】
そこで、コンピュータ40は、エンジン停止中にイモビライザ10からの定周期データが途絶えると、故障発生の仮判定を行う。そして、その後にエンジン31が始動され、発電機36が電力を発生する状態に至った後に、再度故障検出を行う。エンジン31が始動してもなお定周期データが受信されないときには、故障発生の本判定を行う。このように、故障検出機能が制御される。
【0041】
コンピュータ40の通信ユニット47としての機能は、船内LAN20に接続された他の機器との通信である。この通信によって、イモビライザ10からロック/アンロックの状態データを取得したり、ゲージ9に対して表示指令を与えたりすることができる。
イモビライザ10は、受信機49と、コンピュータ50(マイクロコンピュータ)とを含む。受信機49は、キーユニット11からの信号を受信してコンピュータ50に受け渡す。コンピュータ50は、CPU、ROMおよびRAMその他必要なメモリを含む。とくに、コンピュータ50は、不揮発性メモリ50M(たとえばEEPROM等の書き込み可能なもの)を備えている。この不揮発性メモリ50Mには、キーユニット11が生成する使用者識別コードを照合するための照合元データ(正規の使用者識別コード)が予め登録されている。
【0042】
コンピュータ50は、ROMに記憶された所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部としての機能を達成する。この複数の機能処理部は、使用者認証ユニット51と、ユニットコード生成ユニット52と、運転判定ユニット54と、定周期データ生成ユニット55と、通信ユニット56とを含む。
コンピュータ50の使用者認証ユニット51としての機能は、キーユニット11から送信される使用者識別コードを不揮発性メモリ50Mに予め登録された照合元データと照合することである。より具体的には、コンピュータ50は、受信機49によって受信された使用者識別コードを取得する。さらに、コンピュータ50は、取得した使用者認証コードと不揮発性メモリ50Mに予め登録されている認証元データと照合し、その照合結果(成功または失敗)を生成する。
【0043】
コンピュータ50のユニットコード生成ユニット52としての機能は、船外機ECU30からの要求に応じて、ユニット認証コードを生成することである。すなわち、船外機ECU30は、ユニット認証コード要求をイモビライザ10に与える。これに応答して、ユニットコード生成ユニット52は、ユニット認証コードを船内LAN20に送出する。ユニット認証コードは、当該イモビライザ10にユニークな認証コードである。このユニット認証コードに対する認証は、船外機ECU30において行われる(ユニット認証ユニット41の機能)。ユニット認証コードは暗号化されてやり取りされてもよい。この場合、船外機ECU30は、暗号化キー(たとえば乱数)を含むユニット認証コード要求をイモビライザ10に与える。これに応答して、ユニットコード生成ユニット52は、当該暗号化キーを用いて暗号化したユニット認証コードを船内LAN20に送出する。船外機ECU30では、暗号化されたユニット認証コードが復号化され、その復号化されたユニット認証コードと認証元データとが照合される。
【0044】
コンピュータ50の運転判定ユニット54としての機能は、各船外機3の運転状態を判定することである。コンピュータ50は、船内LAN20を介して各船外機ECU30からエンジン回転速度情報を取得し、各船外機3のエンジン31が運転中かどうかを判定する。
コンピュータ50の定周期データ生成ユニット55としての機能は、一定の周期で定周期データを生成することである。コンピュータ50は、電源が供給されて動作している期間中、終始、定周期データを生成する。この定周期データは、イモビライザ10がロック状態であるかアンロック状態であるかを表す状態データを含む。この状態データは、したがって、イモビライザ10のロック状態を解除するためのアンロック操作に対する使用者認証結果(成功または失敗)を表すことになる。定周期データは、次に説明する通信ユニット56の機能によって、前記一定の周期で船内LAN20に送出される。この定周期データは、船外機ECU30において、イモビライザ10の故障検出のために用いられる(故障検出ユニット44の機能)。
【0045】
コンピュータ50の通信ユニット56としての機能は、船内LAN20に各種の信号を送出し、かつ、船内LAN20から各種の信号を取得することである。より具体的には、コンピュータ50は、ユニット認証コードおよび定周期データを船内LAN20に送出する。一方、コンピュータ50は、船内LAN20を介して各船外機3のエンジン31の回転速度情報を取得する。
【0046】
イモビライザ10には、通信ユニット56による通信機能を停止させるための通信遮断ユニット57が備えられている。通信遮断ユニット57は、たとえば、イモビライザ10から引き出された一対のリード線58a,58bを含む。これらのリード線58a,58bの先端には互いに結合可能な端子部材59a,59bが結合されている。端子部材59a,59bは、たとえばギボシ端子であってもよい。これらの端子部材59a,59bを結合してリード線58a,58bを電気的に接続して回路を形成することができる。この回路が形成されると、通信ユニット56による通信機能が無効化される。
【0047】
通信ユニット56の通信機能が無効化されると、定周期データが送出されないので、船外機ECU30は、イモビライザ10に故障が発生したと判定する。これにより、船外機3の運転モードが非常運転モードに設定される。使用者は、キーユニット11を使用できない場合に、リード線58a,58bを直結する。これにより、非常運転モードで船外機3を作動させることができるので、帰港するために必要な最低限の推進力を確保できる。キーユニット11を使用できない場合とは、キーユニット11を水中に落とすなどして無くしてしまったり、キーユニット11のバッテリが切れてしまったりしたような場合である。
【0048】
キーユニット11は、前述のように、ロックボタン12およびアンロックボタン13を備えている。キーユニット11は、さらに、使用者認証コードを生成する使用者認証コード生成部60と、送信機61とを備えている。送信機61は、ロックボタン12が操作されると、ロック信号をイモビライザ10に向けて送信し、アンロックボタン13が操作されると、アンロック信号をイモビライザ10に向けて送信する。さらに、送信機61は、これらの信号を送出するときに、使用者認証コードを併せてイモビライザ10に向けて送信する。
【0049】
リモコン7は、リモコン認証コード生成部65を備えている。このリモコン認証コード生成部65が生成するリモコン認証コードが、制御信号線18を介して、対応する船外機3の船外機ECU30に送信されるようになっている。このリモコン認証コードに対する認証処理が、船外機ECU30のコンピュータ40によって行われる(リモコン認証ユニット42としての機能)。
【0050】
ゲージ9は、液晶表示パネル等からなる表示部67と、ゲージ番号設定部68とを備えている。ゲージ番号設定部68は、たとえば、設定スイッチを備えている。この設定スイッチの操作によって、予め定めた複数のゲージ番号のうちのいずれか一つを選択して設定できるようになっている。船外機ECU30は、自己の機番に対応するゲージ番号を有するゲージ9を宛先として、船内LAN20に運転状態データを送出する。この運転状態データを受信したゲージ9において、当該船外機3の運転状態が、表示部67に表示される。表示される運転状態は、たとえば、エンジン31が運転中かどうかを表す情報、およびエンジン回転速度情報を含む。
【0051】
図4は、イモビライザ10のコンピュータ50によって所定の制御周期(たとえば、10ミリ秒)で繰り返し実行される処理を説明するためのフローチャートである。コンピュータ50は、内部のメモリに、アンロック状態かロック状態かを表す状態データを記憶している。状態データの初期値はロック状態である。この状態データを参照することにより、コンピュータ50は、イモビライザ10がアンロック状態かどうかを判断する(ステップS31)。
【0052】
ロック状態であれば、(ステップS31:NO)、コンピュータ50は、アンロック信号が受信されたかどうかを判断する(ステップS32)。アンロック信号が受信されると(ステップS32:YES)、コンピュータ50は、使用者認証処理を実行する(ステップS33)。具体的には、コンピュータ50は、アンロック信号とともにキーユニット11から送出されてくる使用者認証コードを、メモリ50Mに予め登録されている認証元データ(正規の使用者認証コード)と照合する。使用者認証コードと認証元データとが適合すれば、認証成功となり(ステップS34:YES)、コンピュータ50は、内部メモリの状態データをアンロック状態に書き換える(ステップS35)。
【0053】
アンロック信号が受信されなければ(ステップS32:NO)、コンピュータ50は、ステップS33〜S35の処理を省く。つまり、ロック/アンロック状態は、現状維持となる。アンロック信号が受信されても、認証失敗のときには(ステップS34:NO)、コンピュータ50は、ステップS35の処理を省く。つまり、ロック/アンロック状態は、現状維持となる。また、アンロック状態のときには(ステップS31)、ステップS32〜S35の処理が省かれる。
【0054】
コンピュータ50は、一定時間間隔(たとえば、200ミリ秒間隔)で、定周期データを船内LAN20に送出する(ステップS36,S38)。定周期データは、イモビライザ10がアンロック状態かロック状態かを表す前述の状態データを含む。この定周期データは、この実施形態では、船外機ECU30において、イモビライザ10の故障検出のために用いられる。
【0055】
コンピュータ50は、また、キーユニット11からロック信号が受信されたかどうかを判断する(ステップS39)。ロック信号が受信されると(ステップS39:YES)、当該ロック信号とともに送られてくる使用者認証コードをメモリ50Mに登録されている認証元コードと照合する(ステップS40)。ロック信号が受信されなければ、コンピュータ50は、当該制御周期の処理を終える。つまり、ロック/アンロック状態は、現状維持となる。
【0056】
一方、使用者認証処理に成功すれば(ステップS41:YES)、コンピュータ50は、一定条件下で、ロック状態を表す状態データを内部メモリに書き込む(ステップS42)。前記一定条件とは、全ての船外機3においてエンジン31が停止状態であることを含む。すなわち、いずれかの船外機3のエンジン31が運転中であれば、キーユニット11からのロック信号は無視されて、アンロック状態に保持される。使用者認証処理に失敗したときは(ステップS41:NO)、コンピュータ50は、当該制御周期の処理を終える。つまり、ロック/アンロック状態は、現状維持となる。
【0057】
コンピュータ50は、また、船外機ECU30からの要求に応じて、ユニット認証コードを生成し、このユニット認証コードを、船内LAN20を介して、船外機ECU30に向けて送出する。船外機ECU30のコンピュータ40は、船外機3の電源が投入されると、イモビライザ10に対して、ユニット認証コードの送出を要求する。イモビライザ10は、アンロック状態のときには、ユニット認証コードを含む適正な応答信号を送出する。これにより、船外機ECU30におけるユニット認証処理が成功する。イモビライザ10は、ユニット認証コードの送出要求を受けたときにロック状態であれば、不正な応答信号を送出する。これにより、ユニット認証処理は失敗となる。その後、イモビライザ10の状態がアンロック状態に遷移し、定周期データ中の状態データが「アンロック」を表すデータに変化すると、これに応答して、船外機ECU30のコンピュータ40は、再び、ユニット認証コードの送出を要求する。このときには、イモビライザ10はユニット認証コードを含む適正な応答信号を送出する。これにより、船外機ECU30におけるユニット認証処理が成功することになる。
【0058】
図5は、船外機ECU30のコンピュータ40が所定の制御周期(たとえば、10ミリ秒)で繰り返し実行する処理の内容を説明するためのフローチャートである。コンピュータ40は、イモビライザ10から船内LAN20を介して送られてくる定周期データを監視する(ステップS51)。定周期データを受信すると(ステップS51:YES)、内部のメモリに「未認証」を表す認証状態データが記憶されているかどうかを判断する(ステップS52)。「未認証」とは、イモビライザ10の認証処理が未了であることを表す。イモビライザ10の認証処理に成功すると、コンピュータ40は、内部メモリの認証状態データを「認証」に書き換える。以下、コンピュータ40の内部のメモリに格納された認証状態データの値が「未認証」である状態を未認証状態といい、当該認証状態データの値が「認証」である状態を認証状態という。認証状態データの初期値は、「未認証」である。すなわち、船外機ECU30への電源投入直後には、認証状態データは「未認証」となっている。
【0059】
未認証状態のとき(ステップS52:YES)、コンピュータ40は、イモビライザ10がアンロック状態であることを確認(ステップS53)した後、ユニット認証処理を実行する(ステップS54。ユニット認証ユニット41としての機能)。ユニット認証処理とは、イモビライザ10から送られてくるユニット認証コードを、メモリ40Mに格納されている認証元データ(正規のユニット認証コード)と照合する処理である。より具体的には、コンピュータ40は、イモビライザ10に対してユニット認証コードの送出を要求する。これに応答して、イモビライザ10からユニット認証コードが送出される。このユニット認証コードが認証元データと照合される。ユニット認証処理に成功すれば(ステップS55:YES)、コンピュータ40は、内部メモリの認証状態データを「認証」に書き換える(ステップS56)。これにより、エンジン31の始動が許可され、コンピュータ40は、当該船外機3の運転モードを「通常運転モード」に設定する(ステップS59)。ユニット認証処理が失敗であれば(ステップS55:NO)、未認証状態が保持され、エンジン31の始動が禁止される(ステップS58)。
【0060】
イモビライザ10がロック状態であれば(ステップS53:NO)、エンジン31の始動は禁止される。また、内部メモリの認証状態データが「認証」であれば(ステップS52:NO)、ステップS53〜S56の処理が省かれ、通常運転モード(ステップS59)が維持される。
定周期データが受信されないときは(ステップS51:NO)、コンピュータ40は、前回定周期データを受信してからの経過時間が、定周期データの送信周期よりも長い所定時間(たとえば、1秒)に達したかどうかを判断する(ステップS60)。当該経過時間が所定時間に達していなければ(ステップS60:NO)、ステップS51からの処理を繰り返す。当該経過時間が所定時間に達すると、コンピュータ40は、故障が発生したと判定する(ステップS61:故障検出ユニット44としての機能)。そして、コンピュータ40は、内部メモリに記憶されている故障判定データを参照して、後述する「故障仮判定」がなされているかどうかを判断する(ステップS62)。
【0061】
「故障仮判定」がされていなければ(ステップS62:NO)、コンピュータ40は、「故障仮判定」を表す故障判定データを内部のメモリに書き込む(ステップS63)。さらに、コンピュータ40は、当該船外機3のエンジン31が運転状態かどうかを判断する(ステップS64)。この判断は、エンジン回転速度が所定の閾値以上かどうかを調べることによって行える。この閾値は、エンジン31が完爆状態であるときの最低回転速度以上の値とされる。エンジン31が運転状態であれば(ステップS64:YES)、コンピュータ40は、当該船外機3の運転モードを「通常運転モード」に設定(維持)して(ステップS65。運転モード設定ユニット43Aとしての機能)、当該制御周期の処理を終了する。エンジン31が運転状態でなければ(ステップS64:NO)、コンピュータ40は、当該船外機3の運転モードを「非常運転モード」に設定して(ステップS66。運転モード設定ユニット43Aとしての機能)、当該制御周期の処理を終了する。つまり、船外機3のエンジン31が運転中であれば、故障が検出されたときでも、船外機3の運転モードは、そのときの運転モードに保持され、通常運転モードから非常運転モードへと切り換わることはない。
【0062】
一方、故障仮判定がすでにされている場合には(ステップS62:YES)、故障本判定が行われる。すなわち、コンピュータ40は、「故障本判定」を表す故障判定データを内部のメモリに書き込む(ステップS67)。さらに、コンピュータ40は、当該船外機3のエンジン31が運転状態かどうかを判断する(ステップS68)。エンジン31が運転状態であれば(ステップS68:YES)、コンピュータ40は、当該船外機3の運転モードをそのときの運転モードに維持して(ステップS69。運転モード設定ユニット43Aとしての機能)、当該制御周期の処理を終了する。つまり、船外機3のエンジン31が運転中であれば、船外機3の運転モードは、そのときの運転モードに保持され、通常運転モードと非常運転モードとの間で切り換わることはない。
【0063】
エンジン31が運転状態でなければ(ステップS68:NO)、コンピュータ40は、当該船外機3の運転モードを「非常運転モード」に設定する(ステップS70。運転モード設定ユニット43Aとしての機能)。さらに、コンピュータ40は、定周期データの受信があるかどうかを監視する(ステップS71)。定周期データを受信できない状態が前記所定時間継続すると(ステップS72:YES)、ステップS70に戻る。定周期データが受信される状態となったときには(ステップS71:YES)、コンピュータ40は、故障判定データをクリアして故障判定を取り消し(ステップS73)、引き続き、非常運転モードを維持する。したがって、エンジン31が停止している状態で、故障本判定がされて非常運転モードとなると、当該船外機3の電源が遮断されないかぎり、非常運転モードが維持される。
【0064】
一旦、電源が遮断された後に、電源が再投入され、このときに定周期データが受信されれば(ステップS51:YES)、通常運転モードが設定されるときに(ステップS59)、故障判定データがクリアされる。したがって、故障本判定がされて非常運転モードとなったときには、一旦電源を遮断しないかぎり、通常運転モードへと復帰させることはできない。
【0065】
「故障仮判定」とは、定周期データが前記所定時間に渡って途絶することによって最初に故障が検出されたときの故障判定結果である。これに対して、「故障本判定」とは、故障仮判定がされた後に、再び定周期データが前記所定時間にわたって途絶することによって故障が再度検出されたときの故障判定結果である。
たとえば、スタータ32を始動するときに流れる大電流によって電源ケーブル16Pで大きな電圧降下が生じると、イモビライザ10の動作が一時的に不安定になるおそれがある。この場合、イモビライザ10から、一時的に定周期データが送出されなくなるおそれがある。このような状況において、「故障仮判定」(ステップS63)がなされ、非常運転モードが設定される(ステップS66)。その後、エンジン31が始動完了して運転状態となり、スタータ32への通電が停止されるとともに、発電機36による発電が開始されると、電源ケーブル16Pに現れる電圧が安定(回復)する。したがって、故障本判定(ステップS67)がされるよりも早く、イモビライザ10が定周期データの送出を再開する(ステップS51:YES)。すると、船外機ECU30のコンピュータ40は、「故障仮判定」を取り消して、運転モードを通常運転モードに設定する(ステップS59)。
【0066】
一方、エンジン31が始動完了して運転状態となり、スタータ32への通電が停止されるとともに、発電機36によって発電が開始されてもなお定周期データが受信されなければ、「故障本判定」がなされる(ステップS67)。これにより、船外機3の運転モードは非常運転モードに保持される。
ケーブルの断線故障や短絡故障等のためにイモビライザ10から定周期データが送出されないときには、船外機ECU30は、故障仮判定(ステップS63)を行い、その後に、故障本判定(ステップS67)を行うことになる。エンジン31の運転中に故障が検出されれば、通常運転モードを維持しつつ(ステップS65,S69)、故障仮判定および故障本判定が行われる。
【0067】
エンジン31が運転状態でないときに故障が検出されれば、故障仮判定または故障本判定がなされることで、船外機3の運転モードは非常運転モードに設定される(ステップS66,S70)。したがって、その後にエンジン31を始動すれば、たとえ、故障判定が取り消されたとしても(ステップS73)、船外機3の運転モードは非常運転モードである。
【0068】
また、エンジン31の始動が完了するよりも前に故障仮判定がなされて非常運転モードが設定されたとき、エンジン31の始動が完了した後に故障判定が取り消されると、船外機3の運転モードは通常運転モードとなる(ステップS59)。エンジン31の始動が完了するよりも前に故障仮判定がなされ、エンジン31の始動完了後に故障本判定がなされたときは、船外機3の運転モードは非常運転モードとなる(ステップS69)。
【0069】
図6A、図6Bおよび図6Cは故障判定処理を説明するための図であり、船外機に供給される電源電圧Vおよびエンジン回転速度Nの時間変化の例が示されている。図6Aはイモビライザ10がアンロック状態のときの動作例を示し、図6Bイモビライザ10がロック状態のときの動作例を示し、図6Cは故障が生じているときの動作例を示す。いずれも、クランキング時における電源ケーブル16Sでの電圧降下のために、イモビライザ10が一時的に定周期データを送出できなくなる場合の動作を示す。
【0070】
キースイッチ4Pの操作によって左舷船外機3Pに電源が投入されると、電源電圧Vが立ち上がる。さらに、キースイッチ4Pがスタート位置まで操作されることにより、スタータ32が作動して、左舷船外機3Pにおいてエンジン31のクランキングが始まる。これにより、エンジン回転速度Nが立ち上がる。また、電源ケーブル16Pを介してスタータ32に大電流が供給されることによって、電源電圧Vが降下する。これにより、イモビライザ10が一時的に定周期データを送出できなくなると、「故障仮判定」が行われる。これにより、船外機3は非常運転モードとなる。
【0071】
その後、初爆によって、エンジン回転速度Nが上昇し、発電機36による発電が始まると、電源電圧Vが回復する。これにより、イモビライザ10は、定周期データを送出できる状態となる。その結果、「故障仮判定」が取り消され、船外機3は通常運転モードとなる。そして、定周期データがイモビライザ10のアンロック状態を表す状態データを含んでいれば、通常運転モードでの運転が継続される(図6A参照)。
【0072】
定周期データがイモビライザ10のロック状態を表す状態データを含んでいれば、エンジン31の運転が禁止される。すなわち、船外機ECU30は、燃料供給制御および点火制御を停止して、エンジン31を停止させる(図6B参照)。
一方、エンジン31が運転されているにもかかわらず、定周期データが受信されないときには、船外機ECU30のコンピュータ40は、「故障本判定」を行い、非常運転モードを維持する(図6C参照)。
【0073】
図7は、船外機3の運転モードの状態遷移を表す図である。キースイッチ4を操作して電源を投入すると、船外機3は、初期状態101を経て、イモビライザ10からの定周期データを監視するモード判定状態102となる。定周期データが検出されると、通常運転モード103となる。モード判定状態102で定周期データが所定時間以上受信されなければ、「故障仮判定」がなされ、非常運転モード仮判定状態104となる。また、通常運転モード103のときに、定周期データが所定時間以上途絶すると、エンジン31が運転状態でないことを条件に、非常運転モード仮判定状態104に遷移する。そして、非常運転モード仮判定状態104において、定周期データが受信されるに至ると、通常運転モード103に復帰する。
【0074】
一方、非常運転モード仮判定状態104において、所定時間以上に渡って定周期データが受信できない場合には、「故障本判定」がなされ、非常運転モード本判定状態105に遷移する。キースイッチ4を操作して電源を遮断すると、初期状態101に戻る。キースイッチ4によって電源を遮断し、エンジン31を停止しない限り、非常運転モード本判定状態105から通常運転モード103に状態遷移することはない。
【0075】
図8は、故障判定の状態遷移を説明するための図であり、主として、故障状態の表示のために使用される状態遷移を示す。キースイッチ4を操作して電源を投入すると、初期状態111を経て、正常状態112となる。そして、所定時間以上に渡って定周期データが途絶することによって、前記非常運転モード仮判定状態104に対応する故障仮判定状態113となる。さらに、故障仮判定状態113から、故障本判定がされると、第1故障本判定状態114に遷移する。この故障本判定状態114では、船外機ECU30のコンピュータ40は、対応するゲージ9に故障発生を表示する。それとともに、コンピュータ40は、その故障の履歴を不揮発性メモリ40Mに書き込む。
【0076】
故障仮判定状態113において、定周期データの受信が再開されれば、正常状態112に復帰する。故障仮判定状態113および正常状態112では、ゲージ9に対する故障表示や、不揮発性メモリ40Mに対する故障履歴の書き込みは行われない。
第1故障本判定状態114において、定周期データの受信が再開されると、第2故障本判定状態115に遷移する。第2故障本判定状態115では、故障本判定状態を維持しつつ、ゲージ9における故障表示が消去される。また、第2故障本判定状態115において、所定時間以上にわたって定周期データが途絶すると、第1故障本判定状態114に遷移し、ゲージ9に対する故障表示が再開される。第1故障本判定状態114または第2故障本判定状態115となると、一旦、電源を遮断しない限り、正常状態112へは復帰しない。
【0077】
以上のように、この実施形態によれば、1つのイモビライザ10に対して複数の船外機3を対応付けている。これにより、各船外機に対して個別のイモビライザを設ける場合に比較して、構成が簡単であり、かつ、使用者によるロック/アンロックの操作も簡単になる。イモビライザ10に故障が生じたときでも、船外機3は非常運転モードで運転することができる。そのため、沖合でイモビライザ10の故障が発生しても、船舶1を帰港させるために必要な最低限の推進力を確保できる。
【0078】
また、イモビライザ10がロック状態のときにキーユニット11を紛失したり、キーユニット11がバッテリ切れになったりした場合には、通信遮断ユニット57を用いて擬似的な故障状態とすることができる。これにより、船外機3を非常運転モードで運転することができるので、船舶1の移動に必要な最低限の推進力を確保できる。
非常運転モードは、通常運転モードに比較してエンジン出力が制限された運転モードである。そのため、非常運転モードのみが可能な船外機3や船舶1には、実質的な経済的価値はないので、イモビライザ10による盗難抑止効果が失われることはない。
【0079】
また、複数の船外機3に対して1つのイモビライザ10を備えることで盗難抑止システムを構築できる。そのため、盗難抑止機能を付加するための作業量が少ない。これにより、作業ミスも低減できるから、結果として、信頼性の高い盗難抑止システムを提供できる。
さらに、この実施形態では、エンジン31の運転中(故障仮判定が起こりうるクランキング中を除く。)は、通常運転モードと非常運転モードとの間での切換えが生じないようになっている。そのため、運転中にエンジン出力が急変することがないから、故障判定に起因して乗員に違和感を与えることがない。
【0080】
さらにまた、この実施形態では、エンジンの始動完了前に故障仮判定がされると、エンジン始動完了後に、再度、故障検出処理が行われる。これにより、始動時の一時的な電圧低下のためにイモビライザ10が故障状態と判断されることを防ぐことができる。したがって、イモビライザ10に実質的な不具合が生じていないときに、通常運転モードによる運転が妨げられることを抑制または防止できる。こうして、故障検出の信頼性を高めることができ、船外機3の運転モードが適切に選択される。
【0081】
図9は、この発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートであり、図5に示す処理に代えて適用可能な運転制御の例を示す。図9において、前述の図5に示された各ステップと同様の処理が行われるステップは同一符号で示す。
この実施形態では、故障仮判定に関する処理が省かれている。すなわち、前述の実施形態におけるステップS62〜S66の処理が省かれ、エンジン31が運転中であれば、運転モードの変更は一切行われない。エンジン31が停止状態であるときには、通常運転モードから非常運転モードへの運転モードの変更が許容される。定周期データが所定時間以上途絶すると、故障本判定となる。そして、エンジン31が停止中であれば非常運転モードが設定され、エンジン31が運転中であれば、従前の運転モードが維持される。
【0082】
図10は、前記第2の実施形態における船外機3の運転モードの状態遷移を表す図である。この図10において、前述の図7に示された状態に対応する状態には、図7の場合と同一符号を付してある。この実施形態では、故障仮判定がされないので、非常運転モード仮判定状態104が存在しない。したがって、通常運転モード103から非常運転モード本判定状態105へと直接遷移する。非常運転モード本判定状態105においては、キースイッチ4を操作して電源を遮断し、エンジン31を停止しないかぎり、通常運転モード103には遷移しない。
【0083】
図11は、前記第2の実施形態における状態遷移を説明するための図であり、主として、故障状態の表示のために使用される状態遷移を示す。この図11において、前述の図8に示された状態に対応する状態には、図8の場合と同一符号を付してある。この実施形態では、故障仮判定がされないので、故障仮判定状態113が存在しない。したがって、正常状態112から第1故障本判定状態114へと直接遷移し、ゲージ9において故障表示が行われる。第1故障本判定状態114において、定周期データの受信が再開されると、第2故障本判定状態へと遷移し、故障表示が消去される。第1または故障本判定状態114,115から正常状態112へと遷移しない点は、前述の第1の実施形態の場合と同様である。
【0084】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、レバー7aの操作がケーブルによって船外機3に機械的に伝達される機械式のリモコン7が用いられているが、電気式のリモコンを代わりに用いてもよい。電気式のリモコンとは、レバーの位置を検出する位置センサを備え、この位置センサの出力信号を船外機ECUに送出するものである。船外機ECUは、位置センサからの信号に応じて、船外機のシフト位置およびエンジン回転速度を制御する。このような場合には、リモコンにECU(リモコンECU)が備えられるので、イモビライザ10が送出するユニット認証コードを認証するためのユニット認証処理をリモコンECUで行う構成とすることもできる。したがって、船外機ECUは、イモビライザ10での使用者認証によるアンロックの成功、リモコンECUでのユニット認証の成功、および船外機ECUでのリモコン認証の成功を条件に、船外機3を動作させることになる。
【0085】
また、前述の実施形態では、通信遮断ユニット57は、イモビライザ10から引き出された一対のリード線58a,58bを端子部材59a,59bで直結することによって定周期データの送信を強制途絶させることができる。しかし、同様の機能は、他の構成によっても実現できる。たとえば、イモビライザ10への電源供給を遮断するスイッチを設けてもよい。
【0086】
また、前述の実施形態では、推進機として船外機(アウトボードモータ)を例にとったが、他の形態の推進機を備えた船舶用推進システムにもこの発明の適用が可能である。推進機の他の例としては、船内外機(スターンドライブ。インボードモータ・アウトボードドライブ)、船内機(インボードモータ)、ウォータージェットドライブを挙げることができる。船外機は、原動機および推進力発生部材(プロペラ)を含む推進ユニットを船外に有し、さらに、推進ユニット全体を船体に対して水平方向に回動させる舵取り機構が付設されたものである。これに対して、船内外機は、原動機が船内に配置され、推進力発生部材および舵切り機構を含むドライブユニットが船外に配置されたものである。船内機は、原動機およびドライブユニットがいずれも船体に内蔵され、ドライブユニットからプロペラシャフトが船外に延び出た形態を有する。この場合、舵取り機構は別途設けられる。ウォータージェットドライブは、船底から吸い込んだ水をポンプで加速し、船尾の噴射ノズルから噴射することで推進力を得るものである。この場合、舵取り機構は、噴射ノズルと、この噴射ノズルを水平面に沿って回動させる機構とで構成される。
【0087】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との対応関係を示す。
推進機:船外機3
認証ユニット:イモビライザ10
故障検出ユニット:故障検出ユニット44、ステップS51,S63,S64
運転制御ユニット:運転制御ユニット43、ステップS56〜S61,S66〜S69
信号送信ユニット:定周期データ生成ユニット55、通信ユニット56、ステップS36,S38
送信停止ユニット:通信遮断ユニット57
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための斜視図である。
【図2】船舶の電気的構成を説明するための図である。
【図3】前記船舶の電気的な構成をさらに詳しく説明するためのブロック図である。
【図4】イモビライザのコンピュータによって実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】船外機ECUのコンピュータが実行する処理の内容を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6A、図6Bおよび図6Cは故障判定処理を説明するための図であり、船外機に供給される電源電圧およびエンジン回転速度の時間変化の例が示されている。
【図7】船外機の運転モードの状態遷移を表す図である。
【図8】故障判定の状態遷移を説明するための図であり、主として、故障状態の表示のために使用される状態遷移を示す。
【図9】この発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートであり、図5に示す処理に代えて適用可能な運転制御の例を示す。
【図10】前記第2の実施形態における船外機3の運転モードの状態遷移を表す図である。
【図11】前記第2の実施形態における状態遷移を説明するための図であり、主として、故障状態の表示のために使用される状態遷移を示す。
【符号の説明】
【0089】
1 船舶
2 船体
3 船外機
3S 右舷船外機
3C 中央船外機
3P 左舷船外機
4S,4C,4P キースイッチ
5 操船席
6 ハンドル装置
6a ステアリングハンドル
7 リモコン
7a レバー
7S 右舷リモコン
7C 中央リモコン
7P 左舷リモコン
9 ゲージ
9S 右舷ゲージ
9C 中央ゲージ
9P 左舷ゲージ
10 イモビライザ
11 キーユニット
12 ロックボタン
13 アンロックボタン
15C,15P,15S バッテリ
16S,16C,16P 電源ケーブル
17 電源線
18S,18C,18P 制御信号線
19S,19C,19P 始動信号線
20 船内LAN
21 船首側ハブ
22 船尾側ハブ
23〜26 LANケーブル
28 システム電源線
30 船外機ECU
31 エンジン
32 スタータ
33 エンジン回転速度センサ
34 燃料供給部
35 点火プラグ
36 発電機
40 コンピュータ
40M 不揮発性メモリ
41 ユニット認証ユニット
42 リモコン認証ユニット
43 運転制御ユニット
43A 運転モード設定ユニット
44 故障検出ユニット
45 故障検出制御ユニット
47 通信ユニット
49 受信機
50 コンピュータ
50M 不揮発性メモリ
51 使用者認証ユニット
52 ユニットコード生成ユニット
54 運転判定ユニット
55 定周期データ生成ユニット
56 通信ユニット
57 通信遮断ユニット
58a,58b リード線
59a,59b 端子部材
60 使用者認証コード生成部
61 送信機
65 リモコン認証コード生成部
67 表示部
68 ゲージ番号設定部
72S,72C,72P 切替回路
80 システム電源回路
101 初期状態
102 モード判定状態
103 通常運転モード
104 非常運転モード仮判定状態
105 非常運転モード本判定状態
111 初期状態
112 正常状態
113 故障仮判定状態
114 第1故障本判定状態
115 第2故障本判定状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進機を備えた船舶のための盗難抑止装置であって、
認証ユニットと、
前記認証ユニットの故障を検出する故障検出ユニットと、
前記認証ユニットによる認証成功を条件に前記推進機の運転モードを通常運転モードに設定し、前記認証ユニットによる認証が成功しなければ前記推進機の運転を禁止し、前記故障検出ユニットが前記認証ユニットの故障を検出したときには前記推進機の運転モードを前記通常運転モードに対して所定の制限を加えた非常運転モードに設定する運転制御ユニットとを含む、船舶用盗難抑止装置。
【請求項2】
前記認証ユニットは、前記故障検出ユニットに対して所定周期で信号を送信する信号送信ユニットを含み、
前記故障検出ユニットは、前記信号送信ユニットからの信号が前記所定周期よりも長い所定時間に渡って途絶したときに、前記認証ユニットに故障が生じたと判定するものである、請求項1記載の船舶用盗難抑止装置。
【請求項3】
前記信号送信ユニットによる信号送信を停止させる送信停止ユニットをさらに含む、請求項2記載の船舶用盗難抑止装置。
【請求項4】
前記運転制御ユニットは、前記推進機の運転中は、その運転モードを保持するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置。
【請求項5】
前記認証ユニットが、複数の推進機に対応付けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置。
【請求項6】
船体と、
この船体に装着された推進機と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の船舶用盗難抑止装置とを含む、船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−48200(P2010−48200A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214381(P2008−214381)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】