説明

薄板の搬送面接触状態検出方法

【課題】事前の煩雑な準備を必要とせずに、搬送面から浮上させて搬送方向に搬送される薄板の搬送状態を、インラインにより検出する。
【解決手段】浮上搬送装置により搬送される薄板Wの搬送面Sを、搬送方向の全体に亘って複数のカメラ3により撮影する。薄板Wの載置位置に載置されたターゲットTの搬送面Sに対する相対位置を、カメラ3で撮影した薄板Wの写った画像の画像データから検出し、検出した相対位置から、ターゲットTの載置位置における薄板Wの搬送面Sに対する接触状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面から浮上させて搬送方向に搬送される半導体基板や液晶基板等の薄板の搬送面に対する接触状態を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体基板や液晶基板に用いられるガラス製の薄板は、搬送中に傷が付くのを防ぐために、搬送面から下面に吹き付けられるエアにより搬送面から浮上させて搬送される。したがって、薄板の浮上搬送を行う設備の運用を開始する場合には、搬送後の薄板に搬送面との接触による傷が実際に付かないことを、事前に確認しておくことが肝要である。
【0003】
搬送後の薄板に傷が付いていないことの確認は、勿論、搬送後の薄板を直接チェックすることでも実施できる。しかし、それでは自動化によるインライン化が難しい。また、視覚的に傷の有無を確認する作業は、人的なものにせよ、画像処理的なものにせよ、多大な労力を必要とする。
【0004】
この労力を削減できるものとして、薄板の搬送面に対する接触を電気的に検出する提案がある。この提案では、搬送面とこれに対向する薄板の下面とにそれぞれ導電性皮膜を形成し、両面の接触による両皮膜間の電気的導通を検出する。なお、薄板の下面の導電性皮膜を複数に分割することで、搬送面に接触した薄板の箇所を特定することもできる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−768336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の提案では、搬送面と薄板の下面とにそれぞれ導電性皮膜を形成する必要があることから、事前の準備(前処理)にかなりの労力を必要とし、未だ改善の余地を残している。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、事前の煩雑な準備を必要とせずに、搬送面から浮上させて搬送方向に搬送される薄板の搬送面に対する接触状態を検出することができる、自動化によるインライン化に適した薄板の搬送面接触状態検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法は、搬送面から浮上させて搬送方向に搬送される薄板の前記搬送面に対する接触状態を検出する方法であって、前記搬送面と前記薄板の搬送経路とを、前記搬送面から前記搬送方向と交わる幅方向に離間して配置されたカメラにより撮影し、前記カメラにより撮影された前記搬送経路を通過する前記薄板及び前記搬送面の画像の画像データに基づいて、前記薄板の少なくとも一部に設定された複数のポイントの、前記搬送面に対する高さ方向の相対位置をそれぞれ検出し、前記各ポイントについてそれぞれ検出した、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する前記高さ方向の相対位置に基づいて、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触部分の位置を検出し、検出した前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触部分の位置に基づいて、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触状態を検出することを特徴とする。なお、複数のポイントは、ある程度均一な密度で分布していればランダムな配置で設定してもよく、積極的に等間隔のマトリクス状の配置で設定してもよい。
【0008】
請求項1に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法によれば、搬送面から浮上させた搬送中の薄板が搬送面と接触すると、カメラで撮影された画像中に写る搬送中の薄板のうち、搬送面との接触箇所に設定されたポイントの位置が、本来の位置よりも低い位置に変位する。
【0009】
したがって、カメラで撮影された画像の画像データを解析して薄板の各ポイントの搬送面に対する相対位置を検出することで、薄板の搬送面に接触した部分の有無とその具体的な位置とを特定して、浮上搬送される薄板の搬送面に対する接触状態が良好な状態にあるか否かを、自動的にインラインで判断することができる。
【0010】
また、請求項2に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法は、請求項1に記載した本発明の薄板の搬送状態検出方法において、前記ポイントにターゲットを載置して前記薄板を前記搬送方向に搬送させ、前記カメラにより撮影された前記搬送経路を通過する前記薄板及び前記搬送面の画像の画像データに基づいて前記ターゲットの位置を検出し、検出した前記ターゲットの位置に基づいて、搬送中の前記薄板の前記搬送面に対する高さ方向の相対位置を前記各ポイントについてそれぞれ検出することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法によれば、請求項1に記載した本発明の薄板の搬送状態検出方法において、搬送面から浮上させた搬送中の薄板が搬送面と接触すると、カメラで撮影された画像中に写る搬送中の薄板のうち、搬送面との接触箇所に設定されたポイントに載置されたターゲットの位置が、本来の位置よりも低い位置に変位する。
【0012】
したがって、カメラで撮影された画像の画像データを解析してターゲットの位置を検出することで、そのターゲットが載置された薄板のポイントの搬送面に対する相対位置を検出することができる。このため、薄板が例えば無色透明のガラス板である場合のように、薄板の各ポイントの搬送面に対する高さ方向の相対位置を、カメラにより撮影された画像の画像データから直接検出することができない場合であっても、ターゲットの位置を通じて各ポイントの搬送面に対する高さ方向の相対位置を検出することができる。
【0013】
さらに、請求項3に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法は、請求項2に記載した本発明の薄板の搬送状態検出方法において、前記幅方向における前記カメラから前記各ポイントまでの距離に応じて高さが異なる既知の高さのターゲットを前記各ポイントにそれぞれ載置した前記薄板の搬送中に、前記カメラにより前記搬送面と前記搬送経路とを撮影することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法によれば、請求項2に記載した本発明の薄板の搬送状態検出方法において、カメラで撮影した画像中のターゲットの高さの違いによって、薄板の幅方向におけるカメラからポイントまでの距離の遠近を、画像データに基づいて判別できる。
【0015】
このため、薄板の全ポイントにそれぞれターゲットを載置した薄板を一度搬送させるだけで、カメラで撮影された画像に写る搬送中の薄板上の各ターゲットの位置を画像データから検出することができる。
【0016】
また、請求項4に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法は、請求項2に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法において、所定高さの前記ターゲットの載置箇所を前記各ポイントの中で順次変えつつ前記薄板を繰り返し搬送させ、該薄板を繰り返し搬送する毎に、前記カメラにより前記搬送面と前記搬送経路とを撮影することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法によれば、請求項2に記載した本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法において、カメラからの視野上で後ろのターゲットが前のターゲットに重なって隠れてしまうようなポイントが薄板に存在する場合に有利である。そのような場合にも、それぞれのポイントにターゲットを載置する薄板の搬送時を異ならせることで、それぞれのポイントに載置したターゲットの位置を、他のポイントに載置されたターゲットによって妨げられることなく、カメラで撮影された画像の画像データから検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄板の搬送面接触状態検出方法によれば、カメラで撮影された画像の画像データを解析して薄板の各ポイントの搬送面に対する相対位置を検出することで、搬送面から浮上させて搬送方向に搬送された薄板の搬送面に接触した部分の有無とその具体的な位置とを特定して、浮上搬送される薄板の搬送面に対する接触状態が良好な状態にあるか否かを、自動的にインラインで判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による薄板の搬送面接触状態検出方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
まず、本実施形態による薄板の搬送面接触状態検出方法によって接触状態を検出する対象の薄板を浮上搬送する装置の概略構成について、図8の要部平面図、図9の側面図、及び、図10の要部拡大側面図を参照して簡単に説明する。
【0021】
図8中引用符号10で示す浮上搬送装置は、半導体基板や液晶基板に用いられるガラス製の薄板Wを浮上させて搬送方向Xに搬送するためのものである。この浮上搬送装置10は、支持台Bと、支持台B上にマトリクス状に配置された複数のチャンバ21と、各チャンバ21にそれぞれ立設されてマトリクス状に配置された複数の浮上ユニット25と、支持台B上の幅方向Yにおける両側部にチャンバ21及び浮上ユニット25を避けて配置された薄板Wの搬送ユニット11とを有している。
【0022】
搬送ユニット11は、支持台Bの幅方向Yにおける一方の側部に配置された駆動機構31Gと他方の側部に配置された従動機構43Gとを有している。
【0023】
駆動機構31Gは、搬送方向Xに等間隔で配置された複数の搬送ローラ31を有している。各搬送ローラ31は、図10に示すローラ支持部材29によって、高さ方向Zに延在する回転軸の周りにそれぞれ回転可能に支持されている。各搬送ローラ31には、搬送モータ33との間に設けられたベルトプーリ機構34の主動プーリ35、タイミングベルト37、及び、複数の従動プーリ39を介して、搬送モータ33の動力が伝達される。なお、これら搬送モータ33及びベルトプーリ機構34は、搬送ローラ31と共に駆動機構31Gを構成する。
【0024】
従動機構43Gは、図8に示すように、搬送方向Xに等間隔で配置された複数のフリーローラ43を有している。各フリーローラ43は、支持台Bに取り付けられた図9の対応するローラ支持部材41によって、高さ方向Zに延在する回転軸の周りに回転可能に支持されている。なお、各フリーローラ43は、不図示の付勢機構によって、幅方向Yにおいて搬送ローラ31側に近づく方向に付勢されている。
【0025】
図8に示すように、上述した搬送ローラ31とフリーローラ43とは、浮上搬送装置10によって搬送方向Xに搬送する薄板Wを幅方向Yにおいて挟持する。駆動機構31Gの搬送モータ33が駆動されると、ベルトプーリ機構34によって伝達された搬送モータ33の動力で各搬送ローラ31が、薄板Wを搬送方向Xの上流側から下流側に繰り出す方向にそれぞれ回転する。これにより、各搬送ローラ31と各フリーローラ43とに挟持された薄板Wが、図10に示すように、各浮上ユニット25の上面による薄板Wの搬送面Sよりも若干上方の位置で搬送方向Xに搬送される。
【0026】
図8に示す各チャンバ21は中空に形成されており、各チャンバ21の下方にはそれぞれ、図10に示すファン・フィルタユニット23が取り付けられている。各ファン・フィルタユニット23は、対応するチャンバ21に空気を送り込むファンと塵埃除去用のフィルタとを有している。このファン・フィルタユニット23によって対応するチャンバ21に送り込まれた空気は、チャンバ21に連通する複数の浮上ユニット25の上面に形成されたスロット27から、各搬送ローラ31と各フリーローラ43とに挟持された薄板Wの下面に向けて噴出される。
【0027】
したがって、上述した各搬送ユニット11によって搬送方向Xに搬送される薄板Wは、各浮上ユニット25から上方に噴出された空気によって、薄板Wの搬送面Sから浮上した状態に維持される。これにより、薄板Wは、幅方向Yの中央が自重によって下方に撓むことなく、搬送ユニット11によって効率良く搬送方向Xに搬送される。
【0028】
次に、上述した浮上搬送装置10によって浮上搬送される薄板Wの搬送面Sに対する接触状態を検出する、本発明の一実施形態に係る薄板の搬送面接触状態検出装置について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る搬送面接触状態検出装置の概略構成を模式的に示す説明図、図2は図1の搬送面接触状態検出装置の要部拡大側面図、図3は図1の搬送面接触状態検出装置によって搬送面に対する接触状態を検出する際に使用するターゲットの薄板に対する載置位置を示す説明図、図4は図1の搬送面接触状態検出装置の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【0029】
図1中引用符号1で示す本実施形態の搬送面接触状態検出装置は、浮上搬送装置10の支持台Bの薄板Wの幅方向Yにおける両側にそれぞれ等間隔で交互に配置された複数のカメラ3と、各カメラ3に接続されたコントローラ5(図4参照)とを有している。
【0030】
各カメラ3の画角は、図2に示すように、薄板Wの搬送方向Xにおいて互いに隣接する。したがって、全てのカメラ3,3,…によって、搬送面Sと薄板Wの搬送経路とが搬送方向Xの全体に亘って撮影されることになる。
【0031】
上述した各カメラ3によって撮影した画像の画像データをコントローラ5で解析して薄板Wの搬送面Sに対する接触状態を検出する場合には、薄板Wが透明なガラス製の基板であることから、コントローラ5における画像処理を容易にするために、図3に示すように、薄板Wの上にターゲットTが載置される。
【0032】
薄板WのターゲットTを載置する位置は、薄板Wの搬送方向Xや幅方向Yに等しい間隔をおいたマトリクス状の複数箇所に予め設定される。図3の引用符号tで示す位置が、本実施形態におけるターゲットTの載置位置である。そして、薄板Wの搬送面Sに対する接触状態を検出する場合には、1つのターゲットTを各載置位置tに順次載置して、その都度薄板Wを浮上搬送装置10によって搬送する。ターゲットTの載置位置tが搬送面Sに接触していると、ターゲットTが通常の位置よりも下方に移動する。このため、各カメラ3で撮影される画像に写るターゲットTの位置も、ターゲットTの載置位置tが搬送面Sに接触していないときの位置よりも下方に移動する。
【0033】
搬送面接触状態検出装置1の構成に話を戻して、図4に示すように、コントローラ5は、CPU5a、RAM5b、及び、ROM5cを有している。CPU5aには、RAM5b及びROM5cの他、各カメラ3が接続されている。RAM5bは、各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有している。ROM5cには、CPU5aに各種処理動作を行わせるための制御プログラムが格納されている。そして、CPU5aは、ROM5cに格納された制御プログラムにしたがって、各カメラ3からの画像データを解析する。
【0034】
次に、コントローラ5のCPU5aがROM5cに格納されたプログラムにしたがって実行する、各カメラ3からの画像データの解析によって搬送中の薄板Wの搬送面Sに対する接触状態を検出する処理の概略を、図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
電源の投入によりコントローラ5が起動されると、CPU5aは、図5のフローチャートに示すように、各カメラ3からの画像データの取込処理(ステップS1)と、取り込んだ画像データの解析処理(ステップS3)と、解析結果に基づいた搬送面Sに対する薄板Wの接触位置検出処理(ステップS5)と、検出した薄板Wの接触位置に基づいた薄板Wの接触状態検出処理(ステップS7)とを、周期的に実行する。
【0036】
このうち、ステップS1の画像データの取込処理では、CPU5aは、各カメラ3からの画像データを、各カメラ3に対応してRAM5bにそれぞれ確保されたフレームメモリ領域に書き込む。ステップS3の解析処理では、CPU5aは、ステップS1においてフレームメモリ領域に書き込まれた画像データに対する解析処理を行う。
【0037】
図6は、図5のステップS3において実行される解析処理の詳細な内容を示すフローチャートである。この解析処理において、CPU5aは、まず、各カメラ3の画像のうち薄板Wが写っている画像に存在するターゲットTを、対応する画像データの解析により抽出する(ステップS31)。画像中のターゲットTは、エッジ抽出法やパターン認識法等の公知の画像処理ロジックを画像データに対して実行することで抽出することができる。次に、CPU5aは、抽出したターゲットTに対応する画像中の画素の位置を特定し(ステップS33)、特定した画像中のターゲットTの画素位置から、ターゲットTの位置を検出する(ステップS35)。そして、検出したターゲットTの位置から、ターゲットTが載置された薄板Wの載置位置tを検出する(ステップS37)。さらに、検出した載置位置tから、その載置位置tの搬送面Sに対する相対位置を検出する(ステップS39)。その後、CPU5aは、解析処理を終了する。
【0038】
なお、ターゲットTの高さは既知である。したがって、ステップS37では、ステップS35で検出したターゲットTの位置からそのターゲットTの既知の高さ分を差し引くことで、ターゲットTが載置された薄板Wの載置位置tを検出することができる。
【0039】
また、各カメラ3の搬送面Sに対する相対位置は固定である。したがって、各カメラ3による撮影対象の搬送面Sに対する相対位置も固定である。そのため、カメラ3の画像からターゲットTの載置位置tが検出されれば、そのカメラ3の搬送面Sに対する相対位置関係に基づいて、ターゲットTの載置位置tの搬送面Sに対する相対位置を検出することができる。
【0040】
また、図5のステップS5の薄板Wの接触位置検出処理では、CPU5aは、ステップS3の解析処理によって検出したターゲットTの載置位置tの搬送面Sに対する相対位置を用いて、薄板Wの搬送面Sに対する接触箇所の有無を判定することで、接触の有無と接触位置の検出とを行う。
【0041】
続いて、CPU5aは、ステップS5で検出した薄板Wの搬送面Sに対する接触の有無及び接触位置を用いて、ステップS7の薄板Wの接触状態検出処理を行う。この接触状態検出処理では、ステップS5で検出した結果を接触状態の情報として出力する。この出力は、CPU5aに接続したコントローラ5の不図示のモニタディスプレイに対して行ってもよく、コントローラ5に接続された不図示の外部の機器に対して行ってもよい。
【0042】
このように構成された本実施形態の搬送面接触状態検出装置1では、1又は複数の載置位置tにターゲットTを載置した薄板Wを浮上搬送装置10によって搬送方向Xに搬送させる。そして、搬送中の薄板Wがカメラ3によって撮影されると、ターゲットTの存在を手掛かりに行われる画像解析によって、ターゲットTの載置位置tの搬送面Sに対する相対位置が検出される。この相対位置に差がないと、その載置位置tにおいて薄板Wの下面が搬送面Sに接触していることになる。
【0043】
以上の手順を、ターゲットTを載置する載置位置tを順次変えながら、全ての載置位置tにターゲットTを載置し終えるまで繰り返して行う。それにより、全ての載置位置tについて搬送面Sに対する相対位置が検出され、ひいては、全ての載置位置tについて、搬送面Sに対する接触の有無が検出されることになる。
【0044】
したがって、本実施形態の搬送面接触状態検出装置1によれば、搬送面Sのどこかで薄板Wが接触しているか否かや接触している箇所を検出し、その状態をコントローラ5のモニタディスプレイや外部機器に対して出力することができる。
【0045】
このため、浮上させて搬送されている薄板Wが搬送面Sに接触している場合に、その場所を特定して、搬送面Sへの接触を解消するためのメンテナンス(例えば、各チャンバ21単位での浮上ユニット25からの空気の噴出量調整)に役立てることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、ターゲットTを載置する載置位置tを順次変えながら薄板Wを繰り返し搬送させ、その度に各カメラ3で撮影された画像中のターゲットTを画像データから抽出し、搬送面Sに対する相対位置を検出することで、全ての載置位置tに関するターゲットTの搬送面Sに対する相対位置を検出するものとした。しかし、全ての載置位置tにターゲットTを載置して薄板Wを搬送させることで、全ての載置位置tに関するターゲットTの搬送面Sに対する相対位置を、薄板Wの搬送回数を減らして検出するようにすることもできる。
【0047】
そのためには、図7に示すように、薄板Wの幅方向Yにおけるカメラ3からの距離が遠い載置位置tほど、載置するターゲットTの高さを高くすればよい。これにより、ターゲットTの載置位置tを変える度に薄板Wを搬送方向Xに搬送させる必要がなくなる。上述した実施形態の場合は、薄板Wの幅方向Yにおける搬送面Sの両脇にカメラ3がそれぞれ配置されていることから、幅方向Yにおける搬送面Sの一方側のカメラ3に近い載置位置tほど低いターゲットTを載置して薄板Wを一度搬送させ、次に、幅方向Yにおける搬送面Sの他方側ほど低いターゲットTを載置して薄板Wをもう一度搬送させるだけでよい。カメラ3の配置を薄板Wの幅方向Yにおける搬送面Sのどちらか片方側だけにすることができれば、薄板Wの搬送回数を1回に減らすこともできる。その場合は、幅方向Yにおける搬送面Sの片方側に近い載置位置tほど低いターゲットTを載置して薄板Wを一度搬送させればよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、複数のカメラ3によって、搬送面Sや薄板Wの搬送経路を、搬送方向Xにおける全体に亘って撮影する構成とした。しかし、レイアウト上の制約等の問題がなければ、単一のカメラ3によって、搬送面Sや薄板Wの搬送経路を、搬送方向Xにおける全体に亘って撮影する構成としてもよい。
【0049】
さらに、単一又は複数のカメラ3による搬送面Sや薄板Wの搬送経路の撮影対象領域は、搬送方向Xにおける全体でなくてもよい。例えば、構造上の理由等によって、薄板Wの搬送面Sに対する接触が搬送方向Xにおける一部の区間でしか発生し得ない場合等には、カメラ3による搬送面Sや薄板Wの搬送経路の撮影対象領域は、搬送方向Xにおける一部の部分のみであってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、薄板Wの上面の全体に亘ってターゲットTの載置位置tを設定した。しかし、浮上搬送装置10による搬送中の薄板Wの姿勢に規則性が認められる、つまり、薄板Wの一部の領域の姿勢がその周辺の領域においても繰り返される場合は、薄板Wの一部の領域のみにターゲットTの載置位置tを設定するようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施形態では、浮上搬送装置10が搬送ユニット11により薄板Wを搬送方向Xに搬送する構成である場合について説明したが、浮上搬送装置10における薄板Wを搬送方向Xに搬送するための構成は、本実施形態で説明した構成に限らず、他の構成によるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送面接触状態検出装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図2】図1の搬送面接触状態検出装置の要部拡大側面図である。
【図3】図1の搬送面接触状態検出装置によって搬送面に対する接触状態を検出する際に使用するターゲットの薄板に対する載置位置を示す説明図である。
【図4】図1の搬送面接触状態検出装置の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4のコントローラのCPUがROMに格納された制御プログラムにしたがって実行する処理の概略を示すフローチャートである。
【図6】図4のコントローラのCPUがROMに格納された制御プログラムにしたがって実行する処理の概略を示すフローチャートである。
【図7】図1の搬送面接触状態検出装置によって搬送面に対する接触状態を検出する際に使用するターゲットの薄板に対する載置位置を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る薄板の搬送面接触状態検出装置が使用される浮上搬送装置の概略構成を示す要部平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る薄板の搬送面接触状態検出装置が使用される浮上搬送装置の概略構成を示す側面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る薄板の搬送面接触状態検出装置が使用される浮上搬送装置の概略構成を示す要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送面接触状態検出装置
3 カメラ
5 コントローラ
5a CPU
5b RAM
5c ROM
10 浮上搬送装置
11 搬送ユニット
21 チャンバ
23 ファン・フィルタユニット
25 浮上ユニット
27 スロット
29 ローラ支持部材
31 搬送ローラ
31G 駆動機構
33 搬送モータ
34 ベルトプーリ機構
35 主動プーリ
37 タイミングベルト
39 従動プーリ
41 ローラ支持部材
43 フリーローラ
43G 従動機構
B 支持台
S 搬送面
T ターゲット
W 薄板
X 搬送方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
t 載置位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面から浮上させて搬送方向に搬送される薄板の前記搬送面に対する接触状態を検出する方法であって、
前記搬送面と前記薄板の搬送経路とを、前記搬送面から前記搬送方向と交わる幅方向に離間して配置されたカメラにより撮影し、
前記カメラにより撮影された前記搬送経路を通過する前記薄板及び前記搬送面の画像の画像データに基づいて、前記薄板の少なくとも一部に設定された複数のポイントの、前記搬送面に対する高さ方向の相対位置をそれぞれ検出し、
前記各ポイントについてそれぞれ検出した、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する前記高さ方向の相対位置に基づいて、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触部分の位置を検出し、
検出した前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触部分の位置に基づいて、前記搬送中の薄板の前記搬送面に対する接触状態を検出する、
ことを特徴とする薄板の搬送面接触状態検出方法。
【請求項2】
前記ポイントにターゲットを載置して前記薄板を前記搬送方向に搬送させ、前記カメラにより撮影された前記搬送経路を通過する前記薄板及び前記搬送面の画像の画像データに基づいて前記ターゲットの位置を検出し、検出した前記ターゲットの位置に基づいて、搬送中の前記薄板の前記搬送面に対する高さ方向の相対位置を前記各ポイントについてそれぞれ検出することを特徴とする請求項1記載の薄板の搬送面接触状態検出方法。
【請求項3】
前記幅方向における前記カメラから前記各ポイントまでの距離に応じて高さが異なる既知の高さのターゲットを前記各ポイントにそれぞれ載置した前記薄板の搬送中に、前記カメラにより前記搬送面と前記搬送経路とを撮影することを特徴とする請求項2記載の薄板の搬送面接触状態検出方法。
【請求項4】
所定高さの前記ターゲットの載置箇所を前記各ポイントの中で順次変えつつ前記薄板を繰り返し搬送させ、該薄板を繰り返し搬送する毎に、前記カメラにより前記搬送面と前記搬送経路とを撮影することを特徴とする請求項2記載の薄板の搬送面接触状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145237(P2010−145237A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322556(P2008−322556)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】