説明

薄板樹脂製パネルおよびその製造方法

【課題】発泡樹脂製芯材シートと表皮材シートとの接着性を確保するとともに、金属製補強板の厚み方向の固定を可能とする薄板樹脂製パネルおよびその製造方法の提供。
【解決手段】内表面120同士を合わせることにより内部空間を形成する複数の発泡樹脂製芯材シート122と、該複数の発泡樹脂製芯材シート122それぞれの外表面123全体に接着された表皮材シート124と、内部空間に保持された金属製補強板125とを有し、複数の発泡樹脂製芯材シート122の一方は、内表面120に凸部130を有し、複数の発泡樹脂製芯材シート122の他方は、内表面120に、凸部130と相補形状の凹部131を有し、凸部130が凹部131に嵌合することにより、複数の発泡樹脂製芯材シート122により金属製補強板125を挟み込み、厚み方向に固定することを特徴とする薄板樹脂製パネル100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板樹脂製パネルおよびその製造方法に関し、より詳細には、発泡樹脂製芯材と表皮材シートとの接着性を確保するとともに、金属製補強板の厚み方向の固定を可能とする薄板樹脂製パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車、その他車両、航空機の内装材や電子機器・精密機器の筐体、建材、物流・包装材として、積層板からなる樹脂製パネルが用いられている。
車両用の内装品としては、車室内の種々の車両パネルに装着することにより、フロアパネル、デッキボード等凹部をカバーしたり、蓋をしたりする用途、テーブル、トノボード等仕切りとしての用途、コンソールボックス等ケーシングとしての用途、その他座席シート等多種の用途に用いられる。
【0003】
いずれの用途であれ、樹脂製パネルは、外観上の美観が重視されるとともに、それぞれの用途に応じて、重量物が積載される場合には、圧縮あるいは曲げ強度が要求され、荷重が負荷されない用途の場合であっても、たとえば、樹脂製パネルに振動が伝達され、それにより内装品が波打つような変形が生じないように、内装品自身の外形を維持するに十分な強度が要求される。
このような樹脂製パネルは、芯材と芯材の上下面それぞれに接着固定された表皮材とを有する3層のサンドイッチ構造をなし、剛性、特に曲げ剛性を確保する観点から、金属製あるいは硬質の樹脂からなる補強材を芯材の内部にインサートしている。
【0004】
特許文献1は、このような積層板として車両用デッキボードを開示する。この車両用デッキボードは、熱可塑性樹脂製のおもて面側シートと、熱可塑性樹脂製の裏面側シートと、両シートとの間に介在する発泡樹脂および金属製補強部材とを有し、両シートの周端部同士が溶着されている。発泡樹脂および金属製補強部材は、互いに別々に両シートにより形成される密閉中空部内に配置されている。
【0005】
このような車両用デッキボードによれば、金属製補強部材を密閉中空部内に配置することにより、車両用デッキボードの剛性を高めることが可能であるが、車両用デッキボードを成形する際、発泡樹脂および金属製補強部材を互いに別々に金型に配置することに起因して、車両用デッキボードの成形時に、以下のような問題点が存する。
【0006】
すなわち、このような車両用デッキボードは、加熱軟化させた2枚の熱可塑性樹脂製シートのうち一方を、上下に配置した一対の金型の下方の金型により真空賦形し、賦形された一方の熱可塑性樹脂製シートの所定位置に、発泡樹脂および金属製補強部材を配置し、加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂製シートを発泡樹脂および金属製補強部材の上に配置し、一対の金型を型締めすることにより、2枚の熱可塑性樹脂製シートの周縁部同士を溶着するとともに、2枚の熱可塑性樹脂製シートと発泡樹脂とを溶着することにより製造される。
【0007】
その際、発泡樹脂および金属製補強部材をそれぞれ個別に、賦形された一方の熱可塑性樹脂製シートの所定位置に配置するのは、煩雑であり、特に成形後におもて面側シートおよび裏面側シートが成形収縮することにより、両シートに溶着される発泡樹脂が移動することを考慮して、発泡樹脂と金属製補強部材との間に適宜のクリアランスを設定する必要があり、発泡樹脂および金属製補強部材それぞれの位置決めは余計に困難である。
ここに、成形収縮とは、金型のキャビティ内部に充填された溶融樹脂が冷却されて固化する際に、体積が収縮する現象をいい、成形材料の種類、キャビティの表面温度、成形品の肉厚等によって影響を受ける。
この点、特許文献2は、このような技術的問題点を解決した樹脂製パネルを開示する。
【0008】
この樹脂製パネルは、表壁と裏壁および表壁および裏壁を繋ぐ周囲壁からなり、内部に中空部を有する中空二重壁構造であり、中空部内に発泡体が内装され、発泡体は表壁および裏壁それぞれの内壁面に溶着され、複数の金属製の棒状の補強材それぞれが、適宜の間隔を隔ててほぼ平行に、発泡体に設けられた細長貫通孔の収容部に保持されている。棒状の補強材は、その側面が収容部を構成する発泡体の側面により支持されるようにしている。
【0009】
このような樹脂製パネルによれば、成形の際、発泡体の収容部に棒状の補強体をインサートした状態で、金型に容易に配置することが可能である一方、成形後の表壁および裏壁の成形収縮に伴う、発泡体の移動については、棒状の補強体の各端と周囲壁との間に介在する発泡体が成形収縮の吸収代として機能するようにしている。
【0010】
このような樹脂製パネルにおいて、パネルの厚みに対してパネルの平面部の面積が大きく、パネルが薄板状からなる場合、薄板の長辺に沿って複数の補強材を互いに間隔を隔てて略平行に配置する場合には、樹脂製パネルの剛性に方向性が生じ、棒状の補強材の延び方向に剛性を向上することが可能であるが、延び方向に交差する方向には、さほどの剛性の向上は達成できない。
かといって、たとえばグリッド状の単一の補強材を芯材に配置することにより、樹脂製パネルの剛性の方向性を防止することが可能であるが、このような補強材をインサートするために、芯材にはグリッド状の収容部を設ける必要があり、全体の製造効率の低下が引き起こされる。
そこで、このような薄板樹脂製パネルの場合において、効率的に剛性を確保する観点から、棒状の補強材を複数インサートするのではなく、金属製補強板を挿入することが想定される。
しかしながら、従来の棒状の補強材をインサートする場合と異なり、以下のような技術的問題点が引き起こされる。
第1に、単に発泡体の収容部に金属製補強板を保持させた場合にあっては、金属製補強板の固定、特に厚み方向の固定が不十分となり、発泡体内でがたつきを生じる点である。
【0011】
より詳細には、従来の棒状の補強材の場合は、発泡体に、補強材より若干小さめの細長貫通孔を設けて、細長貫通孔を構成する側面に対して補強材の側面を押し当てることにより、固定することが可能であるが、補強板の場合は、厚みに比べて平面部の面積が広いことから、側面からの支持だけでは不十分であり、厚み方向からの支持が必要である。
第2に、表皮材の発泡体に対する融着面積の確保が不十分となり、時間経過とともに表皮材が発泡体から剥離する等美観が損なわれる点である。
より詳細には、発泡体の表面において収容部の開口面積の分だけ表皮材の発泡体との融着面積が失われるところ、従来のように棒状の補強体をインサートする場合ならまだしも、平面部の面積が大きい薄板状の補強板を保持する場合には、このような融着面積の確保が不十分となる。
第3に、補強板を発泡体内に保持させることに起因して、薄板樹脂製パネルの成形の際、成形不良を引き起こす点である。
【0012】
より詳細には、熱可塑性樹脂製シートを再加熱しようとすれば、外部加熱であることにより、裏面側あるいはおもて面側シートを構成する熱可塑性樹脂製シートと発泡樹脂との良好な接着性が損なわれることから、その代替として、特許文献2に開示のように、2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製のパリソンを利用して成形する場合、このようなパリソンを鉛直下方に垂下させて、分割金型の間に供給し、2条の溶融状態のパリソンの間に金属製補強板がインサートされた発泡体を配置する際、成形後の裏面側あるいはおもて面側シートの成形収縮に伴い、これらシートに溶着する発泡体が移動することから、薄板樹脂製パネルの厚み方向とほぼ直交する放射方向に金属製補強板と、収容部を構成する発泡体の側面との間に所定のクリアランスを設定しておく必要がある。
【0013】
その場合、収容部と放射方向にクリアランスを設けた状態で金属製補強板を収容部内に鉛直向きに位置決めしておくのは困難であり、だからといってこのようなクリアランスを設けないと、裏面側あるいはおもて面側シートの成形収縮により、収容部を構成する発泡体の側面が収縮の生じない金属製補強板に当たり、場合により金属製補強板が発泡体の側面を変形させ、または突き抜けて、成形不良を引き起こす。
【特許文献1】特開2008−247003
【特許文献2】特開2006−334801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、発泡樹脂製芯材シートと表皮材シートとの接着性を確保するとともに、金属製補強板の厚み方向の固定を可能とする薄板樹脂製パネルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明の薄板樹脂製パネルは、
内表面同士を合わせることにより内部保持空間を形成する複数の発泡樹脂製芯材と、該複数の発泡樹脂製芯材それぞれの外表面全体に接着された表皮材シートと、前記内部保持空間に保持された金属製補強板とを有し、
前記複数の発泡樹脂製芯材の一方は、内表面に凸部を有し、前記複数の発泡樹脂製芯材の他方は、内表面に、前記凸部と相補形状の凹部を有し、前記凸部が前記凹部に嵌合することにより、前記複数の発泡樹脂製芯材により前記金属製補強板を挟み込み、厚み方向に固定する構成としている。

以上の構成を有する薄板樹脂製パネルによれば、金属製補強板を内部に有する複数の発泡樹脂製芯材を採用することにより、薄板状でありながら、剛性、特に曲げ剛性をパネル全体に一様に向上することが可能である。
【0016】
その際、複数の発泡樹脂製芯材の内表面同士を突き合わせることにより内部に形成された発泡樹脂製芯材同士の隙間に金属製補強板を保持することにより、金属製補強板の外表面が露出して発泡樹脂製芯材それぞれと対応する表皮材シートとの融着面積を低減させるような事態を生じることなく、発泡樹脂製芯材と表皮材シートとの接着性を確保することが可能であり、他方、複数の発泡樹脂製芯材同士を嵌合して、複数の発泡樹脂製芯材により金属製補強板を挟み込むことにより、金属製補強板と表皮材シートとの間に薄板樹脂製パネルの厚み方向に存在する発泡樹脂製芯材の部分において、発泡樹脂に生じる反発力を利用して、金属製補強板を厚み方向に固定し、発泡樹脂製芯材同士の隙間でがたつきが生じるのを防止することが可能である。

さらに、前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面には、凹部が形成され、前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面は、平面状であり、前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面が該凹部を閉鎖することにより、前記内部保持空間が形成されるのがよい。
さらにまた、前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面には、凹部が形成され、前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面は、平面状であり、前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面が該凹部を閉鎖することにより、前記内部保持空間が形成されるのがよい。
加えて、前記複数の発泡樹脂製芯材それぞれの前記内表面には、凹部が形成され、両方の凹部の開口部を突き合わせることにより前記内部保持空間が形成されるのがよい。
さらに、前記凸部は、突起体からなり、該突起体の頂面は、前記他方の発泡樹脂製芯材の外表面に固着された表皮材シートの内表面まで及び、該頂面は前記内表面に溶着されるのがよい。
さらにまた、前記突起体は、前記内部保持空間を延び、前記金属製補強板には、前記突起体が貫通する貫通穴が設けられるのがよい。
加えて、2枚の表皮材シートそれぞれの周縁部には、一方の側に湾曲したへりが形成され、該へりの端周面同士が突き合わせられて、周壁を構成するのがよい。
さらに、前記金属製補強板には、その厚み方向に延びるネジ穴が設けられ、前記薄板樹脂製パネルは、該ネジ穴を利用して付属品として固定されるのがよい。
さらにまた、前記ネジ穴は、前記薄板樹脂製パネルの長辺の方向に沿って、前記金属製補強板に複数整列して設けられるのでもよい。

上記課題を達成するために、本発明の薄板樹脂製パネルの製造方法は、
一方は、内表面に凸部を有し、他方は、内表面に前記凸部と相補形状の凹部を有する2枚の発泡樹脂製芯材を予め成形するとともに、金属製補強板を準備する段階と、
【0017】
発泡樹脂製芯材の内表面同士を突き合わせることにより形成した内部保持空間に金属製補強板を保持するとともに、一方の発泡樹脂製芯材の前記凸部を他方の発泡樹脂製芯材の前記凹部に嵌合させることにより、2枚の発泡樹脂製芯材により金属製補強板を挟み込み、2枚の発泡樹脂製芯材および金属製補強板を内装体として一体化する段階と、
分割金型の間に2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを配置する段階と、
2条の熱可塑性樹脂製シートそれぞれと対応する分割金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
それぞれの密閉空間内の空気を対応する分割金型の側から吸引することにより、対応する熱可塑性樹脂製シートを対応するキャビティに対して押し付けて、熱可塑性樹脂製シートを賦形する段階と、
前記内装体を一方の熱可塑性樹脂製シートに対して押し付けることにより、前記内装体を保持する段階と、
分割金型を型締することにより、2条の熱可塑性樹脂製シートの周縁部同士を溶着するとともに、2条の熱可塑性樹脂製シートそれぞれに対して、前記内装体を溶着する段階とを、有する構成としている。
さらに、前記金属製補強板を内部保持空間に保持する段階は、薄板樹脂製パネルの厚み方向とほぼ直交する放射方向に金属製補強板の周縁と内部保持空間を構成する発泡樹脂製芯材との間にクリアランスを設ける段階を有し、
前記2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを配置する段階は、2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを鉛直下方に垂下形態で供給して、キャビティが鉛直方向に沿って設けられた分割金型の間に配置する段階を有し、
前記内装体の配置段階は、金属製補強板を厚み方向に固定することにより、前記クリアランスを保持しつつ、金属製補強板を鉛直向きに内部保持空間内に位置決めする段階を有するのがよい。

【0018】
以上の構成を有する薄板樹脂製パネルの製造方法によれば、薄板樹脂製パネルの厚み方向には、鉛直方向に比べて熱可塑性樹脂製シートの成形収縮量が格段に小さいことを利用して、2枚の発泡樹脂製芯材により、発泡樹脂の反発力を利用して金属製補強板を厚み方向に挟み込んで、金属製補強板を厚み方向に固定することにより、厚み方向とほぼ直交する向きの放射方向に、金属製補強板の周縁と内部保持空間を構成する発泡体の側面との間に所定のクリアランスを設けつつ、金属製補強板を内部保持空間内でがたつきを生じることなく位置決めすることが可能であり、それにより、表皮材シートと芯材シートとの良好な接着性を確保しつつ成形不良を生じることなく薄板樹脂製パネルを製造することが可能である。

さらに、前記密閉空間の形成段階は、金型の周縁部に対して溶融状態の熱可塑性樹脂製シートに向かって移動自在に外嵌する外枠部材を熱可塑性樹脂製シートに当接させて、金型のキャビティと、外枠部材の内周面と、熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面とにより密閉空間を形成するのがよい。
さらにまた、前記内装体の保持段階は、前記内装体の前記一方の熱可塑性樹脂製シートに対する溶着を兼ねるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る薄板樹脂製パネル100の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1および図2(A)に示すように、薄板樹脂製パネル100は、内表面120同士を合わせることにより密閉中空部121を形成する2枚の発泡樹脂製芯材シート122(発泡樹脂製芯材シート122Aおよび発泡樹脂製芯材シート122B)と、2枚の発泡樹脂製芯材シート122それぞれの外表面123全体に融着された表皮材シート124(上面側表皮材シート124Aおよび下面側表皮材シート124B)と、密閉中空部121に保持された金属製補強板125とを有する。
【0020】
2枚の表皮材シート124それぞれの周縁部には、一方の側に湾曲したへり127が形成され、へり127の端周面128同士が突き合わせられて、周壁129を構成する。2枚の発泡樹脂製芯材シート122の一方122Bは、内表面120に凸部130を有し、2枚の発泡樹脂製芯材シート122の他方122Aは、内表面120に、凸部130と相補形状の凹部131を有し、凸部130が凹部131に嵌合することにより、2枚の発泡樹脂製芯材シート122により金属製補強板125を挟み込み、厚み方向に固定する構成としている。凸部130は、突起体からなり、突起体の頂面133は、他方の発泡樹脂製芯材シート122Aの外表面123に固着された表皮材シート124Aの内表面まで及び、頂面133は内表面に溶着される。
【0021】
図2(A)に示すように、2枚の発泡樹脂製芯材シート122それぞれの内表面120には、凹部139が形成され、両方の凹部139の開口部を突き合わせることにより密閉中空部121が形成され、密閉中空部121内に金属製補強板125を配置するようにしている。密閉中空部121の形状は、金属製補強板125の形状に応じて定めればよいが、後に説明するように、金属製補強板125の周側面と密閉中空部121を構成する発泡樹脂製芯材シートの周側面との間には所定のクリアランスを設けるようにしている。このクリアランスの大きさは、薄板樹脂製パネル100を一体成形により製造する際、表皮材シート124が成形収縮し、表皮材シート124に溶着される発泡樹脂製芯材シート122がそれに応じて密閉中空部121を小さくする向きに強制的に変形させられる場合にも、金属製補強板125の周側面が密閉中空部121を構成する発泡樹脂製芯材シート122の周側面に当たり、変形等を生じない観点から定めればよい。
【0022】
発泡樹脂製芯材シート122は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの混合物、さらにフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂を用いることができる。発泡樹脂製芯材シート122A,Bそれぞれの発泡倍率あるいはその厚みは、2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bにより金属製補強板125を挟み込む際、発泡樹脂の反発力を利用して、金属製補強板125を薄板樹脂製パネル100の厚み方向に固定する観点から定めればよく、たとえば発泡倍率は、15倍前後で、厚み5mmである。
発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤およびその混合物のいずれを用いてもよい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。
【0023】
一方、上面側表皮材シート124Aおよび下面側表皮材シート124Bの材料は、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、後に説明するように、薄板樹脂製パネル100を一体成形により製造する観点から、上面側表皮材シート124Aおよび下面側表皮材シート124Bそれぞれは、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2を垂下させて成形させることから、熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0024】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0025】
また、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
【0026】
さらに、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
金属製補強板125は、発泡樹脂製芯材シート122より高剛性の金属である限り、任意のものでよく、たとえ鋼製のものでよい。金属製補強板125の厚みおよび面積は、薄板樹脂製パネル100に要求される剛性、特に曲げ剛性、および薄板樹脂製パネル100に許容される重量の観点から適宜定めればよい。
【0027】
さらに、金属製補強板125には、その厚み方向に延びるネジ穴135が設けられ、薄板樹脂製パネル100は、ネジ穴135を利用して付属品として固定される。図8に関連して後に説明するように、薄板樹脂製パネル100を付属テーブルとして本体に固定する場合、薄板樹脂製パネル100の広さに応じて、金属製補強板125に固定用のネジ穴135を複数設ける必要があり、この場合には、ネジ穴135は、薄板樹脂製パネル100の長辺の方向に沿って、金属製補強板125に複数整列して設けられるのでもよく、この観点から金属製補強板125の面積を確保する必要もある。

【0028】
変形例として、図2(B)に示すように、発泡樹脂製芯材シート122Bの内表面120Bには、凹部139Bが形成され、発泡樹脂製芯材シート122Aの内表面120Aは、平面状であり、発泡樹脂製芯材シート122Aの内表面120Aが凹部139Bを閉鎖することにより、密閉中空部121が形成されるのでもよい。あるいは、発泡樹脂製芯材シート122Aの内表面120Aには、凹部139Aが形成され、発泡樹脂製芯材シート122Bの内表面120Bは、平面状であり、発泡樹脂製芯材シート122Bの内表面120Bが凹部139Aを閉鎖することにより、密閉中空部121が形成されるのでもよい。
さらなる変形例として、図2(C)に示すように、発泡樹脂製芯材シート122A,Bそれぞれに凹部139を設けるのは図2(A)と共通であるが、凸部130の突起体が、密閉中空部121を延び、金属製補強板125には、突起体が貫通する貫通穴143が設けられるのでもよい。
次に、本実施形態に係る薄板樹脂製パネル100の製造方法について、以下に詳細に説明する。まず、薄板樹脂製パネル100の製造装置について、以下に説明する。
【0029】
図3に示すように、薄板樹脂製パネル100の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを成形するようにして、表皮材シート124を作る。ここに、2枚の熱可塑性樹脂それぞれを押し出して、型締装置14まで送るまでの装置は、同様であるので、一方のみ説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。
【0030】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22内に設けられたプランジャー24とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室22に移送されて一定量貯留され、プランジャー24の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0031】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm以上、より好ましくは150kg/時cm以上である。
【0032】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0033】
図3に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された連続熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、連続熱可塑性樹脂製シートPの厚みを変更することが可能である。
【0034】
一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図3に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。
【0035】
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0036】
図3に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸119が設けられる。
【0037】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2の周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着される。
【0038】
金型32Aの外周部には、型枠33Aが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Aが、金型32Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能である。金型32Bについても同様に、型枠33Bが設けられている。
【0039】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、2枚の溶融状態の連続熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置、すなわち、ピンチオフ部118同士が互いに当接する位置は、2枚の溶融状態の連続熱可塑性樹脂製シートP1、P2間で、両熱可塑性樹脂製シートP1、P2から等距離の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
なお、一方の連続熱可塑性樹脂製シートP1用の押出装置および一対のローラーと、他方の一方の連続熱可塑性樹脂製シートP2用の押出装置および一対のローラーとは、この閉位置に関して対称に配置されている。
【0040】
図5に示すように、分割金型32Aの内部には、真空吸引室80が設けられ、真空吸引室80は吸引穴82を介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって熱可塑性樹脂製シートP1を吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。より詳細には、キャビティ116Aの外表面123に設けた凹凸119により、下面側表皮材シート124Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117を賦形するようにしている。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に賦形するようにしている。
一方、分割金型32Bには、金型32A、Bを型締したときに両金型により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
以上の構成を有する薄板樹脂製パネル100の成形装置10を利用した薄板樹脂製パネル100の製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
まず、一方は、内表面120に凸部130を有し、他方は、内表面120に凸部130と相補形状の凹部131を有する2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bを予め成形するとともに、金属製補強板125を準備する。
【0041】
より詳細には、発泡樹脂製芯材シート122の製造について説明すれば、たとえばポリオレフィン系樹脂を押出機(図示せず)に供給し、加熱溶融しつつ混練してから所定量の発泡剤を添加し、押出機内で更に混練して発泡製溶融樹脂とし、発泡製溶融樹脂を発泡に適した樹脂温度および発泡製溶融樹脂が発泡を開始しない圧力下に維持しながらアキュームレータ(図示せず)に充填する。次いで、押出ヘッドのダイ先端のゲートを開いた状態で、アキュームレータのラム(図示せず)を押すことにより、発泡製溶融樹脂が低圧域に開放されて、発泡製の筒状パリソンPが形成される。この筒状パリソンPをたとえば、一対の金型の間に配置し、一対の金型を型締して、内部から加圧することにより、発泡樹脂製芯材シート122を成形することができる。このような方法により、2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bそれぞれを成形する。
尚、発泡樹脂製芯材シート122はポリスチレン製発泡ビーズを用いた既知の製法により成形されたものを用いてもよい。
【0042】
次いで、発泡樹脂製芯材シート122A,Bの内表面同士を突き合わせることにより形成した密閉中空部121内に金属製補強板125を保持するとともに、一方の発泡樹脂製芯材シート122Aの凸部130を他方の発泡樹脂製芯材シート122Bの凹部131に嵌合させることにより、2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bにより金属製補強板125を挟み込み、2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bおよび金属製補強板125を内装体140として一体化する。
金属製補強板125を密閉中空部121に保持する際、薄板樹脂製パネル100の厚み方向とほぼ直交する放射方向に金属製補強板125の周縁と密閉中空部121を構成する発泡樹脂製芯材シート122との間に所定のクリアランスを設ける。
この場合、2枚の発泡樹脂製芯材シート122A,Bにより、発泡樹脂の反発力を利用して金属製補強板125を厚み方向に挟み込んで、金属製補強板125を厚み方向に固定することにより、金属製補強板125を密閉中空部121内でがたつきを生じることなく位置決めすることが可能である。
【0043】
次いで、図3において、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ22内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0044】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。
次いで、図3に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32A,B間に配置する。これにより、熱可塑性樹脂製シートPは、ピンチオフ部118のまわりにはみ出す形態で位置決めされる。
以上の工程を、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれについて行い、上面側表皮材シート124Aの材料である熱可塑性樹脂製シートP2と、下面側表皮材シート124Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1とを互いに間隔を隔てた状態で、分割金型32A,B間に配置する。
この場合、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2はそれぞれ、互いに独立に、押し出しスリット34の間隔、あるいは一対のローラ30の回転速度を調整することにより、分割金型32A,B間に配置される際の厚みを調整可能である。
【0045】
次いで、図4に示すように、型枠33Aを金型32Aに対して、下面側表皮材シート124Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1に向かって、金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当たるまで移動させる。なお、型枠33Bについても同様に、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面117に当たるまで移動させる。
【0046】
次いで、図4および図5に示すように、金型32Aのキャビティ116A、型枠33Aの内周面102、および金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117により構成された第1密閉空間84を通じて、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートP1をキャビティ116Aに対して押し付けて、キャビティ116Aの凹凸表面に沿った形状に熱可塑性樹脂製シートP1を賦形する。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に吸引して、賦形する。
次いで、図5に示すように、予め成形した内装体140を分割金型32の間に配置し、熱可塑性樹脂製シートP1に対して押し付けて、溶着させる。この場合、金属製補強板125を厚み方向に固定することにより、クリアランスを保持しつつ、金属製補強板125を鉛直向きに密閉中空部内121に位置決めする。
内装体140は、たとえば既知の吸着式マニュプレータを用いて、内装体140の側面を吸着保持しながら分割金型32の間に配置し、熱可塑性樹脂製シートP1に対して溶着させることにより、吸着式マニュプレータを内装体140から脱着して、分割金型32の間から引っ込めればよい。
【0047】
次いで、図6に示すように、熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれの外表面117に当接する型枠33A、33Bをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP1、P2を吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部118A,B同士が当接するまで両金型32A,Bを互いに近づく向きに移動させる。この場合、ピンチオフ部118A,B同士の型締方向の当接位置は、互いに離間する2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2の間となるところ、図6に示すように、ピンチオフ部118A,B同士が当接することにより、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2は互いの周縁部126同士が溶着固定され、内部に内装体140を配置した状態で、熱可塑性樹脂製シートの周縁によって密閉された周壁129を形成するとともに、下面側表皮材シート124Bおよび上面側表皮材シート124Aそれぞれが、内装体140と溶着される。
次いで、金型32Aと金型32Bとにより内部に形成された第2密閉空間86を通じて熱可塑性樹脂製シートP1,P2を加圧するとともに、第1密閉空間84を通じて金型32Aの側から熱可塑性樹脂製シートP1を引き続き吸引する。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に引き続き吸引する。
次いで、図7に示すように、分割金型32A,Bを型開きして、成形された薄板樹脂製パネル100を取り出し、ピンチオフ部118A,Bの外側のバリ部分Bを切断し、これで成形が完了する。
【0048】
以上のように、一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の薄板樹脂製パネル100を次々に成形することが可能であり、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出された熱可塑性樹脂製シートPを金型を用いて成形することが可能である。
【0049】
図8は、新幹線や飛行機の座席裏面、超音波診断装置、ベビーシート、洗面カウンター等において、このように製造された薄板樹脂パネル100を付属テーブルとして用いるために、たとえば、超音波診断装置の本体134の背面に固定している状態を示す。より詳細には、断面L字形の取り付け具136を用いて、取り付け具136の鉛直面137を装置本体134の背面に、たとえばネジ止めにより固定し、一方取り付け具136の水平面138を薄板樹脂パネル100の下面に、たとえばネジ止めにより固定している。
【0050】
より具体的には、薄板樹脂製パネル100の金属製補強板125に設けたネジ穴135を利用することにより、薄板樹脂製パネル100の樹脂部にネジ穴を設ける場合に比べて、取り付け具136の水平面138を薄板樹脂パネル100の下面に対して強固に固定することが可能である。特に、薄板樹脂製パネル100の平面部の面積が広く、それに応じて取り付け具136の幅が大きい場合に、金属製補強板125に薄板樹脂製パネル100の長辺に沿って複数のネジ穴135を整列して設けることにより、取り付け具136を介して薄板樹脂製パネル100を装置本体134の背面に強固に固定し、薄板樹脂製パネル100を付属テーブルとして、薄板樹脂製パネル100に撓みを生じることなく平面性を保持した状態で、上面に超音波診断に用いる備品等を安定して載置することが可能である。

以上の構成を有する薄板樹脂製パネル100によれば、金属製補強板125を内部に有する複数の発泡樹脂製芯材シート122を採用することにより、薄板状でありながら、剛性、特に曲げ剛性をパネル100全体に一様に向上することが可能である。
【0051】
その際、複数の発泡樹脂製芯材シート122の内表面120同士を突き合わせることにより内部に形成された発泡樹脂製芯材シート122同士の隙間に金属製補強板125を保持することにより、金属製補強板125の外表面123が露出して発泡樹脂製芯材シート122それぞれと対応する表皮材シート124との融着面積を低減させるような事態を生じることなく、発泡樹脂製芯材シート122と表皮材シート124との接着性を確保することが可能であり、他方、複数の発泡樹脂製芯材シート122同士を嵌合して、複数の発泡樹脂製芯材シート122により金属製補強板125を挟み込むことにより、金属製補強板125と表皮材シート124との間に薄板樹脂製パネル100の厚み方向に存在する発泡樹脂製芯材シート122の部分において、発泡樹脂に生じる反発力を利用して、金属製補強板125を厚み方向に固定し、発泡樹脂製芯材シート122同士の隙間でがたつきが生じるのを防止することが可能である。
【0052】
以上の構成を有する薄板樹脂製パネル100の製造方法によれば、薄板樹脂製パネル100の厚み方向には、鉛直方向に比べて熱可塑性樹脂製シートの成形収縮量が格段に小さいことを利用して、2枚の発泡樹脂製芯材シート122により、発泡樹脂の反発力を利用して金属製補強板125を厚み方向に挟み込んで、金属製補強板125を厚み方向に固定することにより、厚み方向とほぼ直交する向きの放射方向に、金属製補強板125の周縁と密閉中空部121を構成する発泡体の側面との間に所定のクリアランスを設けつつ、金属製補強板125を密閉中空部121内でがたつきを生じることなく位置決めすることが可能であり、それにより、表皮材シート124と芯材122シートとの良好な接着性を確保しつつ成形不良を生じることなく薄板樹脂製パネル100を製造することが可能である。
【0053】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。たとえば、本実施形態においては、発泡樹脂製芯材を重ね合わせることにより、密閉中空部を形成し、この密閉中空部内に金属製補強板を配置するものとして説明したが、それに限定されることなく、金属製補強板を2枚の発泡樹脂製芯材により挟み込むことにより安定して位置決め可能である限り、金属製補強板の4側面が発泡樹脂製芯材により取り囲まれることなく、4側面のいずれか、あるいはすべてが外部に露出していてもよい。
また、本実施形態においては、発泡樹脂製芯材として薄板平面状の芯材シートとして説明したが、それに限定されることなく、曲面を含む立体形状のものでもよい。
さらにまた、本実施形態においては、2枚の発泡樹脂製芯材シートを採用するものとして説明したが、それに限定されることなく、一方あるいは両方の発泡樹脂製芯材シートを分割形態で採用し、2枚より多い枚数の発泡樹脂製芯材シートを採用してもよい。
加えて、本実施形態においては、単一の金属製補強板を用いる場合を説明したが、それに限定されることなく、薄板樹脂製パネルの大きさに応じて、複数の金属製補強板を用意し、互いに間隔を隔ててそれぞれの金属製補強板を発泡樹脂製芯材に形成した対応する中空部に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る薄板樹脂製パネルの斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る成形装置とともに、溶融樹脂シートが分割金型の間に配置された状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の外枠を溶融樹脂シートの側面に当接させている状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形装置において、溶融樹脂シートを賦形している状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型締めした状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る薄板樹脂製パネルを付属テーブルとして、本体に固定している状況を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
P 熱可塑性樹脂製シート
PL パーティングライン
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
20 油圧モーター
22 アキュムレータ
24 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
33 型枠
34 押出スリット
80 真空吸引室
82 真空吸引穴
84 第1密閉空間
86 第2密閉空間
100 薄板樹脂製パネル
102 内周面
116 キャビティ
117 外表面
118 ピンチオフ部
119 突起体
120 内表面
121 密閉中空部
122 発泡樹脂製芯材シート
123 外表面
124 表皮材シート
125 金属製補強板
126 周縁部
127 へり
128 端周面
129 周壁
130 凸部
131 凹部
132 開口部
133 頂面
134 本体
135 ネジ穴
136 取り付け具
137 鉛直面
138 水平面
139 凹部
140 内装体
143 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内表面同士を合わせることにより内部保持空間を形成する複数の発泡樹脂製芯材と、該複数の発泡樹脂製芯材それぞれの外表面全体に接着された表皮材シートと、前記内部保持空間に保持された金属製補強板とを有し、
前記複数の発泡樹脂製芯材の一方は、内表面に凸部を有し、前記複数の発泡樹脂製芯材の他方は、内表面に、前記凸部と相補形状の凹部を有し、前記凸部が前記凹部に嵌合することにより、前記複数の発泡樹脂製芯材により前記金属製補強板を挟み込み、厚み方向に固定することを特徴とする薄板樹脂製パネル。
【請求項2】
前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面には、凹部が形成され、前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面は、平面状であり、前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面が該凹部を閉鎖することにより、前記内部保持空間が形成される、請求項1に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項3】
前記発泡樹脂製芯材の他方の前記内表面には、凹部が形成され、前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面は、平面状であり、前記発泡樹脂製芯材の一方の前記内表面が該凹部を閉鎖することにより、前記内部保持空間が形成される、請求項1に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項4】
前記複数の発泡樹脂製芯材それぞれの前記内表面には、凹部が形成され、両方の凹部の開口部を突き合わせることにより前記内部保持空間が形成される、請求項1に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項5】
前記凸部は、突起体からなり、該突起体の頂面は、前記他方の発泡樹脂製芯材の外表面に固着された表皮材シートの内表面まで及び、該頂面は前記内表面に溶着される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項6】
前記突起体は、前記内部保持空間を延び、前記金属製補強板には、前記突起体が貫通する貫通穴が設けられる、請求項5に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項7】
2枚の表皮材シートそれぞれの周縁部には、一方の側に湾曲したへりが形成され、該へりの端周面同士が突き合わせられて、周壁を構成する、請求項1に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項8】
一方は、内表面に凸部を有し、他方は、内表面に前記凸部と相補形状の凹部を有する2枚の発泡樹脂製芯材を予め成形するとともに、金属製補強板を準備する段階と、
発泡樹脂製芯材の内表面同士を突き合わせることにより形成した内部保持空間に金属製補強板を保持するとともに、一方の発泡樹脂製芯材の前記凸部を他方の発泡樹脂製芯材の前記凹部に嵌合させることにより、2枚の発泡樹脂製芯材により金属製補強板を挟み込み、2枚の発泡樹脂製芯材および金属製補強板を内装体として一体化する段階と、
分割金型の間に2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを配置する段階と、
2条の熱可塑性樹脂製シートそれぞれと対応する分割金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
それぞれの密閉空間内の空気を対応する分割金型の側から吸引することにより、対応する熱可塑性樹脂製シートを対応するキャビティに対して押し付けて、熱可塑性樹脂製シートを賦形する段階と、
前記内装体を一方の熱可塑性樹脂製シートに対して押し付けることにより、前記内装体を保持する段階と、
分割金型を型締することにより、2条の熱可塑性樹脂製シートの周縁部同士を溶着するとともに、2条の熱可塑性樹脂製シートそれぞれに対して、前記内装体を溶着する段階とを、有することを特徴とする薄板樹脂製パネルの製造方法。
【請求項9】
前記金属製補強板を内部保持空間に保持する段階は、薄板樹脂製パネルの厚み方向とほぼ直交する放射方向に金属製補強板の周縁と内部保持空間を構成する発泡樹脂製芯材との間にクリアランスを設ける段階を有し、
前記2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを配置する段階は、2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを鉛直下方に垂下形態で供給して、キャビティが鉛直方向に沿って設けられた分割金型の間に配置する段階を有し、
前記内装体の配置段階は、金属製補強板を厚み方向に固定することにより、前記クリアランスを保持しつつ、金属製補強板を鉛直向きに内部保持空間内に位置決めする段階を有する、請求項8に記載の薄板樹脂製パネルの製造方法。
【請求項10】
前記密閉空間の形成段階は、金型の周縁部に対して溶融状態の熱可塑性樹脂製シートに向かって移動自在に外嵌する外枠部材を熱可塑性樹脂製シートに当接させて、金型のキャビティと、外枠部材の内周面と、熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面とにより密閉空間を形成する、請求項8に記載の薄板樹脂製パネルの製造方法。
【請求項11】
前記内装体の保持段階は、前記内装体の前記一方の熱可塑性樹脂製シートに対する溶着を兼ねる、請求項8に記載の薄板樹脂製パネルの製造方法。
【請求項12】
前記金属製補強板には、その厚み方向に延びるネジ穴が設けられ、前記薄板樹脂製パネルは、該ネジ穴を利用して付属品として固定される、請求項1に記載の薄板樹脂製パネル。
【請求項13】
前記ネジ穴は、前記薄板樹脂製パネルの長辺の方向に沿って、前記金属製補強板に複数整列して設けられる請求項12に記載の薄板樹脂製パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−235447(P2011−235447A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105964(P2010−105964)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】