説明

薄膜の作製方法、並びに微粒子の堆積方法

【課題】 プロセス全体に要するコストや時間を軽減させ、微粒子をナノオーダで選択的に堆積させつつ、高精度なパターニングを実現する。
【解決手段】 少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、ナノメータサイズの核をいわゆる起点として照射される光により微粒子の堆積が誘起されることに着目し、ナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射させ、この照射する光の波長を制御することにより微粒子を選択的に堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法並びに、その微粒子の堆積方法に関し、特に微粒子をナノオーダで選択的に堆積させることに好適な薄膜の作製方法、並びに微粒子の堆積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の情報を高速に伝送し処理する各種のシステムを形成するために不可欠とされる集積回路部品では、特にその集積度を向上させるために配線等のパターンをより微細化することが求められている。
【0003】
微粒子を基板表面に堆積させて微細なパターンを形成するために開発されている種々のプロセス技術は、いずれも材料を任意の平面形状に堆積する技術と、同様に除去する技術とを組み合わされて実現されるものである。具体的には、リソグラフィ技術によりマスクパターンを作成した後に、リフトオフ法により材料を選択的に成長または除去させる2段階からなるプロセスである。
【0004】
ところが、上記のプロセス技術には、加工損傷、寸法精度の低下、プロセスの複雑化などの問題があった。そこで、これらの問題を生じることなく光の波長以下のサイズまで及ぶ微細なパターンを形成できるプロセス技術として、光を利用する化学気相成長法(光CVD法)が検討されている。この光CVD法では、所望のパターンが形成されたマスクを通して光を基板に照射し、かかる光が照射された部分でのみガス分子を解離させることにより、当該基板上に上記マスクのパターンに応じて微粒子を選択的に堆積させることができる。
【0005】
また近年において、パターニングのさらなる微細化の要求に応じるべく、近接場光を利用した近接場光CVD法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
図10(a)は、近接場光CVDを利用した近接場光CVD装置8の構成図である。この近接場光CVD装置8は、チャンバ81内に近接場光プローブ82と、基板83と、上記基板83を載置するためのステージ84とを配設して構成され、また光源85から供給される光を反射してチャンバ81の方向へ導くための反射部材86と、反射部材86を介して供給される光を近接場光プローブ82内を伝搬する光に変換する変換部87とを備え、さらに、チャンバ81内へ雰囲気を注入するためのガス供給部88を備えている。
【0007】
近接場光プローブ82は、図10(b)に示すように光導波部91と、突出部92とを備えている。光導波部91は、コア93の周囲にクラッド94が設けられた光ファイバより構成される。突出部92は、光導波部91の一端においてクラッド94から突出させたコア93を先鋭化させることにより構成されている。この突出部92は、先端部に至るまで徐々に先細になるような円錐形状として構成される。ちなみにこの突出部92は、根元径がコア93の径より短くなるように形成されている。
【0008】
このような近接場光CVD装置8において、ステージ84上に基板83を載置してチャンバ81内にガスを充填させ、光源85から反射部材86、変換部87を介して近接場光プローブ82へ光を供給することにより、近接場光プローブ82の突出部92から近接場光を発生させることができる。この近接場光のエネルギーによって基板83付近に存在する微細な領域に局在するガスを分解することができ、当該ガスの分解生成物を基板83上に堆積させることができるため、超微細なパターンを作製することも可能となる。
【0009】
【非特許文献1】Y.Yamamoto, M.Kourogi, M.Ohtsu, V.Polonski, and G.H.Lee, Appl.Phys.Lett., 76, 2173(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の光CVD法や近接場光CVD法では、微細なパターンが描かれたマスクへ光を集光させ、この集光させた光をナノオーダで走査する必要があるため、より精密な光学系や制御系を構築しなければならず、膨大な費用を必要とし、プロセス全体に要する時間が増大するという問題点がある。
【0011】
またこのような精密な光学系等は、振動を防止するための防振台上に通常搭載させるが、既存の防振台ではナノオーダの微細なズレを抑制することは困難であり、特に100nm以下に及ぶ微細なパターニングを高精度に実現することができないという問題点もある。
【0012】
さらに、基板表面へ堆積させる微粒子の堆積方向、微粒子のサイズ、形状、材質等につきナノオーダで容易にコントロールできる微粒子の堆積方法や、凹凸形状や球面形状を有する基板に対してもナノオーダでパターニングを実現できる微粒子の堆積方法が従来より望まれている。
【0013】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、プロセス全体に要するコストや時間を軽減させ、微粒子をナノオーダで選択的に堆積させつつ、高精度なパターニングを実現可能な薄膜の作製方法、並びに微粒子の堆積方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した課題を解決するために、少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、ナノメータサイズの核をいわゆる起点として照射される光により微粒子の堆積が誘起されることに着目し、ナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射させ、この照射する光を制御することにより微粒子を選択的に堆積させる堆積工程を有する薄膜の作製方法を発明し、また基板表面にナノメータサイズの核を形成する核形成工程をさらに有する微粒子の堆積方法を発明した。
【0015】
即ち、本発明を適用した薄膜の作製方法では、 少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、ナノメータサイズの凹凸部又は不純物層が予め形成された基板表面へ上記微粒子を堆積させると共に光を照射する堆積工程を有し、上記堆積工程では、所定のサイズを有する上記微粒子にのみ共鳴する波長の光を照射することにより、上記サイズを有する上記微粒子のみを消失させ、上記サイズ以外の上記微粒子を堆積させて、堆積する微粒子のサイズを制御する。
【0016】
また、本発明を適用した微粒子の堆積方法では、基板表面にナノメータサイズの凹凸部又は不純物層を形成する核形成工程と、上記凹凸部又は不純物層が形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射する堆積工程とを有し、上記堆積工程では、所定のサイズを有する上記微粒子にのみ共鳴する波長の光を照射することにより、上記サイズを有する上記微粒子のみを消失させ、上記サイズ以外の上記微粒子を堆積させて、堆積する微粒子のサイズを制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薄膜の作製方法並びに微粒子の堆積方法では、ナノメータサイズの核をいわゆる起点として照射される光により微粒子の堆積が誘起されることに着目し、ナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射させ、この照射する光を制御することにより微粒子を選択的に堆積させる。
【0018】
これにより、本発明では、起点となる核のみをナノメータサイズで高精度に作製することにより、微粒子の堆積と同時に光を照射するのみで、所望の形状からなるパターンを選択的に形成させることができる。特に照射する光の偏光成分、波長、パルス幅、光強度、入射角の各パラメータを単独に、或いはそれらを自在に組み合わせることにより、基板上に形成される微粒子の堆積方向、微粒子のサイズ、形状、材質等をナノオーダでより高精度に制御することも可能となり、特に100nm以下に及ぶ微細なパターニングを高精度に実現することができる。
【0019】
また、微細なパターンが描かれたマスクへ光を集光させる必要がなくなり、この集光させた光をナノオーダで走査する必要性もなくなるため、より精密な光学系や制御系の構築する労力、費用を極力抑えることができ、さらにはウェハプロセス全体に要する時間を削減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態として、本発明を適用した薄膜の作製方法、並びに微粒子の堆積方法を図1に示したCVD(Chemical Vapor Deposition)装置1を用いて実現する例につき説明する。
【0021】
CVD装置1は、チャンバ11内に、基板13と、上記基板13を載置するためのステージ14とを配設して構成され、またこのチャンバ11の外部において基板13表面に対向する側に配設された光発振器16と、光発振器16により発振された光の偏光方向を変えて、これを基板13へ照射する波長板17と、例えばZn微粒子を堆積させる場合にジエチル亜鉛(DEZn)雰囲気をチャンバ11へ注入するためのガス供給部18を備えて構成されている。
【0022】
チャンバ11は、充填するガスの濃度等を均一化するために設けられたものである。なお、チャンバ11内のガスの濃度を均一化させることにより、ガス分子と光の波長との関係において基板13への吸着状態を制御すべく、チャンバ11には、ガスの濃度を制御するための図示しない調整弁が付設されている。またこのチャンバ11には、内部の圧力を制御するための図示しない圧力弁が付設され、減圧下で成膜するCVDプロセスに鑑みてチャンバ11内の圧力は、例えばDEZn雰囲気において例えば5mTorr程度となるように制御される。このチャンバ11には、基板13表面に対向する面において窓11aがさらに配設されており、この窓11aを介して光発振器16から光を入射させることができる。
【0023】
基板13は、例えば透明なガラス基板等の絶縁材料により構成される。ちなみに、この基板13として、ガラス以外に、シリコン、GaAs、GaN、ZnO等、光によって電子を誘起可能な物質を用いてもよいことは勿論である。
【0024】
ちなみに本発明を適用した薄膜の作製方法では、基板13として表面に1μm以下のいわゆるナノメータサイズの核が予め形成されているものを用いる。このナノメータサイズの核は、例えば図2に示すような基板13の表面にナノオーダで形成された亀裂等である。この亀裂の長手方向の長さは約50nm、幅は約10nmである。なお、この核は、この図2に示す亀裂のような形状に限定されるものではなく、ナノメータサイズの凹凸であればいかなるものであってもよい。またこの核は、形状に起因するものに限定されることなく、例えばナノメータサイズで形成された基板13と異なる材質からなる不純物層であってもよい。ちなみに、この基板13表面は、平滑である必要はなく不規則な凹凸が存在していてもよい。
【0025】
ステージ14は、基板13を載置するための図示しない載置部や、基板13を加熱するための図示しない加熱機構が設けられており、CVDによりラジカル化させたガス分子の成膜状況をコントロールすることができる。
【0026】
光発振器16は、図示しない電源装置を介して受給した駆動電源に基づき光発振し、例えば、Nd:YAG等の固体レーザ、GaAs等の半導体レーザ、ArF等のガスレーザ等の各種レーザ、さらには、LEDもしくはキセノンランプ等の光を出射する光源である。この光発振器16から出射される光の波長の詳細については後述する。
【0027】
波長板17は、光発振器16からの光の偏光方向を任意に回転させて、これを窓11aを介して基板13へ照射する。この波長板17は、回転機構が装着され、回転機構を駆動させることにより、光発振器16からの偏光方向を図中矢印方向へ回転させることが可能となる。このため、波長板17の回転角を制御することにより、基板13へ照射する光の偏光方向を自在に調節することができ、さらには円偏光、ランダム偏光、さらには電場ベクトルが中心から放射状に進む偏光等に変換することも可能となる。なお、波長板17の代替として、偏光方向を回転させることができるスリットを用いてもよい。
【0028】
このようなCVD装置1において、ステージ14上に基板13を載置して、ガス供給部18からチャンバ11内へガスを充填させる。そして、充填させたガスに対してエネルギーを与えることで化学反応を起こさせ、ガス分子を分解させる。そしてこの分解により得られる分解生成物としての微粒子を基板13上に堆積させて薄膜を作製する。ちなみに熱CVD法に基づき成膜する場合において、この充填させたガスに与えるエネルギーは熱である。また光CVD法に基づき成膜する場合において、この充填させたガスに与えるエネルギーは光である。
【0029】
また本発明では、ナノメータサイズの核が形成された基板13に対して、上述したCVD装置1により微粒子を堆積させると共に、この核が形成されている領域について光発振器16から発振された光を照射する。これにより、核をいわゆる起点として微粒子の堆積傾向が照射される光により誘起されることになり、ひいては堆積させる微粒子の成長方向、サイズ、微粒子の種類、さらには堆積させる微粒子の形状等が制御されることになる。
【0030】
さらに本発明では、光を発振する光発振器16をコントロールすることにより、基板13へ照射する光の波長、パルス幅、強度を制御する。またこのCVD装置1では、光発振器16から発振される光につき、波長板17の回転角を調整することにより、基板13へ照射する光の偏光成分を制御する。さらに、このCVD装置1では、光発振器16から発振される光の伝搬方向を図示しない反射板等で調整することにより、基板13へ照射する光の入射角を制御する。即ち、上述したこの光の偏光成分、波長、パルス幅、強度、入射角の5つのパラメータを自在に組み合わせて選択し、またこれらを制御することにより、微粒子を選択的に堆積させる。
【0031】
先ず、照射する光の偏光成分を制御することにより、微粒子の堆積方向を調整する場合につき図3を用いて説明をする。
【0032】
例えばこの図3に示すように、基板13に照射する直線偏光の方向Eが核の長手方向aと同一方向となるように波長板17を調整する。その結果、基板13上に堆積される微粒子は、この核の長手方向aに沿って順に配列することになる。
【0033】
即ち、ナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に、直線偏光方向Eの光を照射することにより、かかる方向Eに沿って微粒子を選択的に堆積させることができる。このため、例えば図4(a)に示すように、波長板17を連続的に回転させることにより、基板13に照射される直線偏光の偏光方向を連続的に回転させることで、微粒子を渦巻き状に堆積させることができる。
【0034】
また、1μm間隔で基板13上に形成されてなる直径約50nmの核に対して、直線偏光方向Eを一定にした光を照射することにより、図4(b)に示すようなグレーディングを形成させることもできる。また、図4(c)に示すように核に対して直線偏光の方向Eを90°ずつに変更することにより、微粒子を折れ線状に堆積させることもできる。
【0035】
さらには、照射する光の偏光成分を、円偏光、ランダム偏光、さらには電場ベクトルが中心から放射状に進む偏光等に変換することにより、例えば図4(d)に示すように球面状の基板13に対しても微粒子の堆積方向を自在にコントロールすることができる。同様に不規則な凹凸が存在する基板13に対しても微粒子を選択的に堆積させることが可能となる。
【0036】
次に、照射する光の波長を制御することにより、堆積させる微粒子のサイズをコントロールする場合につき説明をする。
【0037】
基板上に実際に堆積される微粒子のサイズは多岐に亘り、各サイズの微粒子における基底準位と励起準位のエネルギーギャップは、相互に異なる。このため、照射する光の波長に共鳴する微粒子は、基底準位にある励起子が励起準位へ励起して温度が上昇して融点を超える結果、そのまま蒸発して消失することになる。一方、照射する光の波長に共鳴しない微粒子は、基底準位にある励起子が励起しないため、消失せずにそのまま残存することになる。
【0038】
ちなみに、この照射する光に共鳴する微粒子のサイズと波長の関係は、光を照射することによる微粒子の電場強度の増大により説明することもできる。横方向a、縦方向bのサイズで構成される微粒子に照射される光の波長をλとし、また基板13上の電場Eに対して微粒子の電場をETipとし、基板13上の誘電率をεとし、微粒子の誘電率をεとしたとき、微粒子の電場強度比ETip/Eは、G.T.Boydによって提案されている式(1)で表すことができる(例えば、G.T.Boyd et al., PRB 30, 519(1984)参照。)。
【0039】
【数1】

【0040】
この式(1)で示されるように、微粒子の電場強度比ETip/Eは、照射する光の波長λと、微粒子の楕円比m(=b/a)に支配される。換言すれば、電場が増強される波長は、微粒子の楕円比mに依存することになる。
【0041】
図5は、この式(1)に基づいて計算した微粒子の横方向のサイズaに対する電場強度比ETip/Eの関係を示している。ちなみに、この計算では、微粒子の誘電率εとして亜鉛の誘電率を用いており、また楕円比mを1.01と仮定している。この図5に示すように、照射する波長に応じて、電場強度比ETip/Eが増大するサイズaは異なる。各微粒子が、ある一定の電場強度比に到達したときに蒸発して消失するとすれば、各波長間において消失する微粒子のサイズが互いに異なることになる。
【0042】
このため、照射する光の波長を制御することにより、電場強度比が増大するサイズaからなる微粒子のみ選択的に励起させて消失させることができ、ひいては、基板13上に堆積される微粒子のサイズをコントロールすることが可能になる。ちなみに、近接場光プローブ(例えば、特開平10−082792号公報参照。)を用いて、局所領域に発生させる近接場光の波長を制御することにより、当該局所領域において堆積される微粒子のサイズを選択することも可能となる。
【0043】
また本発明では、この照射する光の波長を制御することにより、さらに堆積させる微粒子の形状を選択することもできる。図6は、微粒子の楕円比mに対する電場強度比ETip/Eの関係を示している。この図6に示すように、楕円比mに応じて、電場強度比ETip/Eが増大するサイズaは異なる。即ち、微粒子の形状が円から扁平な楕円に近づくにつれて、電場強度比ETip/Eが増大するサイズaはより小さくなる。
【0044】
このため、照射する光の波長を制御することにより、電場強度比が増大する形状からなる微粒子につき選択的に励起させて消失させることができ、ひいては、基板13に堆積させる微粒子の形状をコントロールすることが可能になる。特に照射する光の偏光成分も同時に制御することにより、所望の堆積方向へ所望の形状の微粒子をナノオーダで順次堆積させることも可能となる。
【0045】
図7は、照射する光の波長を制御することにより、基板13上に堆積させる微粒子の形状を制御した結果を示す図である。基板13において堆積されていた六角形状の微粒子を消失させて、微小な円形状の微粒子のみ選択的に堆積させることもできる。
【0046】
また、本発明では、この照射する光の波長を制御することにより、さらに堆積させる微粒子の材質を選択することもできる。図8(a)は、Alからなる微粒子の横方向のサイズaに対する電場強度比ETip/Eの関係を、また図8(b)は、Auからなる微粒子の横方向のサイズaに対する電場強度比ETip/Eの関係を示している。この図8に示すように、微粒子の材質に応じて、電場強度比ETip/Eが増大するサイズaは各波長毎に異なる。
【0047】
このため、照射する光の波長を制御することにより、所望の材質からなる微粒子につき選択的に励起させて消失させることができ、ひいては、基板13に堆積させる微粒子の材質をコントロールすることが可能になる。
【0048】
また、本発明では、照射する光の偏光成分や波長に加えて、さらにパルス幅や光強度をそれぞれ制御することにより、堆積させる微粒子のサイズ、形状、材質等を選択することができる。この照射する光のパルス幅や強度は、それぞれ単独に制御するようにしてもよいし、照射する光の偏光成分及び/又は波長と連関させて制御するようにしてもよい。
【0049】
なお、本発明を適用した薄膜の作製方法、並びに微粒子の堆積方法をCVD装置1を用いて実現する例を挙げて説明をしたが、かかる実施例に限定されるものではなく、例えば図9に示すようなスパッタリング装置3を用いて実現するようにしてもよい。
【0050】
このスパッタリング装置3は、チャンバ31内に基板13と、上記基板13を載置するためのステージ32と、基板13に対向する側に配設されたターゲット34と、このターゲット34が装着される電極35とを配設して構成され、またこのチャンバ31の外部において、電極35と接続されて配設されるRF又はDC電源36と、チャンバ31の側面等に配される光発振器37と、光発振器37から出射される光を窓31aを介して基板13上へ導くための反射板38と、さらにはこの基板13へ導く光の偏光成分を制御するための波長板39とを備えて構成される。
【0051】
このスパッタリング装置3では、チャンバ31内を約10−2Torrまで排気した後に、Ar等の不活性ガスを導入し、さらにRF又はDC電源36により電極に対してRF又はDCを印加し放電させる。これにより、ターゲット34表面近傍において、プラズマ状態を作り出すことができる。この生成されたプラズマの電位は、通常ターゲット34表面より高くなるため、プラズマとターゲット34との間で直流的な電界が生じることになる。不活性ガス中のAr等の正イオンは、この生じた電界により加速されて、ターゲット34表面に衝突し、その結果スパッタリングが起こるため、ターゲット34上の微粒子が順次放出される。ちなみに、この放出された微粒子は、不活性ガスの分子と衝突することなく、基板13上に堆積されることになる。
【0052】
また、このスパッタリング装置3においても同様に、ナノメータサイズの核が形成された基板13に対して、上述した微粒子を堆積させると共に、この核が形成されている領域について光発振器37から発振された光を照射する。これにより、核をいわゆる起点として照射される光により微粒子の堆積が誘起されることになり、上述した光CVD装置1と同様に、堆積させる微粒子の成長方向、サイズ、微粒子の種類、さらには堆積させる微粒子の形状等を制御することができる。
【0053】
なお、このスパッタリング装置3において、光発振器37の配設位置や、反射板38の角度等を制御することにより、基板13に照射される光の入射角を制御することができる。また、この光の入射角を上述した偏光成分、波長、パルス幅、強度等の各パラメータを自在に組み合わせて選択し、またこれらを制御することにより、微粒子を選択的に堆積させることも可能となる。
【0054】
ちなみに、本発明では、基板13上にナノメータサイズの核を形成する工程を別途設けてもよい。即ち、この形成された核が微粒子の堆積における起点となるため、核の形成領域を制御することにより、微粒子全体の堆積傾向をも選択することができる。
【0055】
また、本発明では、基板13上において微粒子が堆積される領域につき、常に光が照射されることは条件とならない。これは、たとえ光を照射する領域外においても、基板13上において起点となる核を中心に堆積された微粒子に基づき、新たな微粒子が順次堆積されてゆくためである。
【0056】
以上詳細に説明したように、本発明を適用した薄膜の作製方法並びに微粒子の堆積方法では、少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、微粒子の堆積が、ナノメータサイズの核をいわゆる起点として照射される光により誘起されることに着目し、ナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射させ、この照射する光を制御することにより微粒子を選択的に堆積させる。
【0057】
これにより、本発明では、起点となる核のみをナノメータサイズで高精度に作製することにより、微粒子の堆積と同時に光を照射するのみで、所望の形状からなるパターンを選択的に形成させることができる。特に照射する光の偏光成分、波長、パルス幅、光強度、入射角の各パラメータを単独に、或いはそれらを自在に組み合わせることにより、基板13上に形成される微粒子の堆積方向、微粒子のサイズ、形状、材質等をナノオーダでより高精度に制御することも可能となり、例えば100nm以下の量子細線やグレーティング、光メモリ用メディアの原盤作製を一括して作製することが可能となる。
【0058】
また、微細なパターンが描かれたマスクへ光を集光させる必要がなくなり、この集光させた光をナノオーダで走査する必要性もなくなるため、より精密な光学系や制御系の構築する労力、費用を極力抑えることができ、さらにはウェハプロセス全体に要する時間を削減させることができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、気相における微粒子の堆積方法として、MBE(molecular beam epitaxial)法、ボート加熱蒸着、E-beam蒸着、イオンプレーティング等を用いてもよく、また、固相における微粒子の堆積方法として、光を照射すると互いに異なる成分に分離する相変化材料(光メモリ)等を用いてもよく、さらに液層における微粒子の堆積方法として、メッキ等を用いてもよい。
【0060】
また、上述したナノメータサイズの核が予め形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射する堆積工程を有するいかなる薄膜の作製方法並びに微粒子の堆積方法に適用してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用した薄膜の作製方法並びに微粒子の堆積方法を実現するためのCVD装置の構成を示す図である。
【図2】ナノメータサイズの核の例を示す図である。
【図3】照射する光の偏光成分を制御することにより、微粒子の堆積方向を調整する場合につき説明するための図である。
【図4】偏光方向を制御することにより、微粒子の堆積方向を選択する場合につき説明するための図である。
【図5】微粒子の横方向のサイズaに対する電場強度比ETip/Eの関係を示す図である。
【図6】微粒子の楕円比mに対する電場強度比ETip/Eの関係を示す図である。
【図7】照射する光の波長を制御することにより、基板上に堆積させる微粒子の形状を制御した結果を示す図である。
【図8】照射する光の波長を制御することにより、さらに堆積させる微粒子の材質を選択する場合につき説明するための図である。
【図9】本発明を適用した薄膜の作製方法並びに微粒子の堆積方法を実現するためのスパッタリング装置の構成を示す図である。
【図10】近接場光CVDを利用した近接場光CVD装置の構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 CVD装置、3 スパッタリング装置、11 チャンバ、13 基板、14 ステージ、16 光発振器、17 波長板、18 ガス供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも微粒子を基板表面に堆積させて構成した薄膜の作製方法において、
ナノメータサイズの凹凸部又は不純物層が予め形成された基板表面へ上記微粒子を堆積させると共に光を照射する堆積工程を有し、
上記堆積工程では、所定のサイズを有する上記微粒子にのみ共鳴する波長の光を照射することにより、上記サイズを有する上記微粒子のみを消失させ、上記サイズ以外の上記微粒子を堆積させて、堆積する微粒子のサイズを制御すること
を特徴とする薄膜の作製方法。
【請求項2】
上記堆積工程では、上記照射する光のパルス幅及び/又は強度を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の薄膜の作製方法。
【請求項3】
上記堆積工程では、上記照射する光の上記基板表面に対する入射角を制御すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜の作製方法。
【請求項4】
上記堆積工程では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法に基づき上記微粒子を堆積させること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の薄膜の作製方法。
【請求項5】
基板表面にナノメータサイズの凹凸部又は不純物層を形成する核形成工程と、
上記凹凸部又は不純物層が形成された基板表面へ微粒子を堆積させると共に光を照射する堆積工程とを有し、
上記堆積工程では、所定のサイズを有する上記微粒子にのみ共鳴する波長の光を照射することにより、上記サイズを有する上記微粒子のみを消失させ、上記サイズ以外の上記微粒子を堆積させて、堆積する微粒子のサイズを制御すること
を特徴とする微粒子の堆積方法。
【請求項6】
上記堆積工程では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法に基づき上記微粒子を堆積させること
を特徴とする請求項5に記載の微粒子の堆積方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−44871(P2007−44871A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259090(P2006−259090)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2003−70723(P2003−70723)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】