説明

薄膜形成方法

【課題】反応室内部の温度をその場で測定して精度良く反応室内の堆積物量を推定し得る薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】サセプタ2および断熱材3を備えた反応室内の温度を監視して反応室内部の堆積・付着による堆積物量を推定する薄膜形成の装置洗浄システムにおいて、装置内加熱装置5の出力値測定用の熱電対温度計6の測定値と、反応室内の雰囲気温度測定手段用放射温度計7の測定値との相関を用いて堆積物量を推定する薄膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規な薄膜形成方法に関し、さらに詳しくは半導体素子などの薄膜を形成するための製膜装置における装置内加熱装置の出力値と反応室内の温度測定手段の測定値との相関を用いる新規な監視方法による薄膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーエレクトロニクス分野における低損失化や小型化の実現に向けて、従来のSi半導体素子に比べて大幅な性能向上が期待できるSiC単結晶半導体素子が有望視されている。SiC単結晶半導体素子の実用化には高品位単結晶を低コストで得る結晶成長技術が不可欠である。
【0003】
一方、従来、半導体素子はCVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの製膜装置を用いて半導体基板上への薄膜の形成によって得られている。
このCVD装置によれば、サセプタおよび断熱材を備えた反応室に原料ガスをキャリアガスで供給し目的とする単結晶薄膜をエピタキシャル結晶成長によって形成することができる。しかし、製膜装置を起源とするハイドロカーボン・不純物の発生があり、その発生量や種類の制御が困難なため、SiCの成長条件の精密な制御が困難である。また、装置ごとにハイドロカーボンの発生量が異なるため、成長条件の一般化が難しい。
【0004】
このため、サセプタ表面をSiCでコートすることで上記の問題点を解決する試みが提案されているが、コート膜の品質が低下したこと、ピンホール等の破損が生じたことをその場(in-situ)で知る方法がない。
そして、高温、例えば1000℃程度以上の温度に昇温時あるいは高温での反応時に反応室内部にC(炭素)などの堆積・付着による堆積物が形成されると、キャリアガスによってこの堆積物がガス化されるため原料組成が当初の組成とは変化し、目的とする高品位単結晶の形成が不可能となることが指摘されている。
【0005】
このため、エピタキシャル結晶成長によって高品位単結晶を得るために堆積物の形成を早期且つ正確に判断することが必要となり、サセプタおよび断熱材を備えた反応室内の温度を監視して反応室内部の堆積・付着による堆積物量を検出する薄膜形成の装置洗浄システムに関していくつかの改良技術が提案されている(特許文献1〜3)。さらに、堆積物層を除去するためのいくつかの改良技術が提案されている(特許文献4〜5)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−233391号公報
【特許文献2】特開2002−294461号公報
【特許文献3】特開2004−39743号公報
【特許文献4】特開平8−97185号公報
【特許文献5】特開平9−36052号公報
【0007】
上記の特許文献1には、チャンバー内に光、X線、電子線を含む電磁波を入射させ、チャンバー内の堆積物を通過した電磁波をチャンバー外部に取り出し、電磁波の堆積物への吸収を検知することでチャンバー内の堆積物の状態を監視するチャンバー内の堆積物の監視方法、プラズマ加工方法、ドライクリーニング方法が記載されている。そして、炭素実施形態を示す図面によれば、チャンバー内の測定可能な堆積物は入射電磁波(例えば、赤外線)と通過電磁波とを直接測定できる範囲内の堆積物であり、入射電磁波と堆積物と通過電磁波との間に堆積物以外の原子間結合を有する物質が介在する場合、例えばサセプタや断熱材近傍の堆積物の状態を監視する方法については示されていない。
【0008】
上記の特許文献2には、CVD装置を用いて反応炉内の基板上に薄膜を形成する際に、反応炉からの放射光を反応炉外で測定し、放射光の放射率の変化と薄膜の膜厚変化との関係を予め求めておき、前記装置を用いて薄膜を形成する際に放射率の変化を測定し、予め求めておいた放射率の変化と薄膜の膜厚変化との関係から形成された薄膜の膜厚を推定する、薄膜の膜厚モニタリング方法が記載されている。しかし、薄膜の膜厚変化を実質的にもたらさないが微量の堆積・付着により悪影響がある場合の堆積物量を推定する方法については記載されていない。
【0009】
上記の特許文献3には、所定部位の温度を監視する温度測定手段と、温度情報に基づき反応室内に付着した堆積物の膜厚を検出する制御部とを備え、得られた膜厚を膜厚量の限界値と比較し、膜厚量が膜厚量の限界値に到達した時点を反応室のクリーニング時期とすることで、クリーニング時期の検出を容易且つ的確に行う基板処理法および基板処理装置が記載されている。そして、前記の所定部位の温度として反応室壁温度が示されている。
【0010】
上記の特許文献4には、サセプタを備えた反応室内にCVD成膜法で堆積した炭素膜を除去するためのクリーニングガスとしてOガス、Oガスなどの炭素膜を酸化反応させるガスで炭素膜を酸化反応して除去する半導体装置の製造方法が記載されている。
【0011】
上記の特許文献5には、反応容器内に被成膜基板を収容し基板上に成膜する成膜装置であって、容器の周囲に配置されたヒータと、この加熱手段の加熱出力を制御する電源と、反応装置内の温度を検出する熱電対を備え、基板に成膜終了後、反応容器内にエッチングガスを導入して堆積膜を除去する際、洗浄の終了を反応容器がエッチングガスと反応しはじめ反応容器内の温度を検出する熱電対の測定値が一定値を示すことを確認し、そして反応容器のヒータの加熱出力が一定値となることを確認して行う、成膜装置及びこの装置における堆積膜除去方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、公知文献に記載の方法は、いずれも反応室内部の温度をその場で測定することによって精度良く反応室内の堆積物量を推定することができるものではなかった。
従って、この発明の目的は、反応室内部の温度をその場で測定して精度良く反応室内の堆積物量を推定し得る薄膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、従来の薄膜形成方法における製膜装置を起源とするハイドロカーボン・不純物の発生は、1)サセプタに使用されるグラファイトが高温、例えば1200℃以上でハイドロカーボンが発生し、それに伴いグラファイト中の不純物が製膜ガス中へ放出されること、および2)断熱材に使用されるグラファイトからのハイドロカーボンの発生およびグラファイト中の不純物の放出が起きることが原因であることを見出し、さらに検討した結果、この発明を完成した。
この発明は、サセプタおよび断熱材を備えた反応室内の温度を監視して反応室内部の堆積・付着による堆積物量を推定する薄膜形成において、装置内加熱装置の出力値と反応室内の雰囲気温度測定手段の測定値との相関を用いる薄膜形成方法に関する。
【0014】
また、この発明は、下記の工程:
1)サセプタおよび断熱材を備えた反応室を昇温し、熱電対温度又は電源出力と放射温度計の相関を評価して反応室内部の堆積・付着による炭素堆積物量を推定し、
2)堆積物のC汚染がなければ下記の工程4)に進み、C汚染がある場合は下記の工程3)に進み、
3)基板を取り出し、付着炭素の除去を行うか又は炭素非付着部品に変更し、
4)設定温度でSiC結晶を成長させ、
5)成長したSiC結晶素子を反応室から取り出した後、1)の工程を続ける、
からなる薄膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、反応室内部の温度をその場で測定することによって精度良く反応室内の堆積物量を推定して薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明における好適な態様を次に示す。
1)装置内加熱装置の出力値がサセプタに設置した熱電対で測定した温度又は高周波加熱装置の出力値であり、反応室内の温度測定手段の測定値が放射温度計で測定した温度である前記の薄膜形成方法。
2)サセプタが、SiC又はSiCコートグラファイトで構成される前記の薄膜形成方法。
3)断熱材が、SiC又はSiCコートグラファイトで構成される前記の薄膜形成方法。
4)サセプタおよび/又は断熱材の放射率を監視してC汚染を検出する前記の薄膜形成方法。
5)前記の工程3)における付着炭素の除去が、雰囲気ガスを酸素又は酸素含有の混合ガスに切替え、昇温し、付着炭素を除去する工程を含む前記の薄膜形成方法。
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の薄膜形成方法に用いる薄膜形成装置の1実施態様の概略図である。
図1において、薄膜形成装置10は、反応室1内にサセプタ2および断熱材3を備え、サセプタ2上の基板4に薄膜を形成するための反応室1、例えば、石英製チャンバーを有する装置であり、反応室1外に装置内加熱装置5、例えば、高周波電源と装置内加熱装置の出力値測定用の熱電対温度計6と反応室内の温度測定手段用の放射温度計7と、ガス、例えば原料ガス、キャリアガス、クリーニングガスの供給配管(図示せず)、排気管(図示せず)および形成された薄膜を取り出す薄膜取り出し装置(図示せず)を備えている。図1において、熱電対温度計6はサセプタ2に取り付けられているが、断熱材3に取り付けられていてもよく、放射温度計7はサセプタ2の放射率(放射温度)を監視する例が示されているが、断熱材3を含む反応容器の任意の部位の放射率を監視することもできる。
【0018】
図1における熱電対温度計6は、図1に示すように外部から反応室内部に設置されたサセプタ2内に挿入して設置される。又は、外部から反応室内部に設置された断熱材3内に挿入して設置される。サセプタ2内あるいは断熱材3内に熱電対温度計を挿入して設置するには、それ自体公知の手段によって、例えば金属製保護管やセラミックス製保護管をサセプタあるいは断熱材の内部に電気的に確実に接触するようにして設置する。また、熱電対本体を保護する金属保護管やセラミックス製保護管と熱電対本体とは保護管の大半の部分で絶縁物で絶縁されていることが好ましい。
【0019】
また、図1における放射温度計7は、図1に示すように外部から反応室内部に設置されたサセプタの放射線、例えば赤外線が入射するように設置される。また、放射温度計7は、図1に示されるサセプタに代えて断熱材を照準するように設置してもよい。放射温度計7を用いた温度測定方法は、例えば処理中のサセプタ(又は、断熱材)から放射される赤外線のうち1波長もしくは波長の異なる複数種の赤外線の強度を選択的に測定し、この測定結果からサセプタ(又は、断熱材等)の温度を算出することによって、サセプタ(又は、断熱材等)の正確な温度を測定することが可能となる。
【0020】
また、この発明について、前記の薄膜形成装置を用いて放射温度計で測定されるサセプタ表面温度(℃)と熱電対温度計で測定されるサセプタ内部温度(℃)又は高周波電源の高周波出力(W)との関係を概略的に示すグラフである図2を用いて説明する。
図2において、高周波電源によって1500〜1800℃に加熱される時に、堆積物がない場合つまりC(炭素)非付着時に、反応室内部の放射温度計で測定される温度が1400〜1700℃の範囲内のTであったものが、堆積物が形成されるC付着時に放射温度計で測定される温度がTとなり、熱電対温度計で測定される温度(℃)(TTC)又は高周波電源の高周波出力(W)に対応する放射温度のTに比べて数十℃以上温度上昇することが示されている。
【0021】
この堆積物が形成された時の温度上昇(T−T)は、例えば堆積物がCである場合に、反応室内を加熱時の温度TTCにおける堆積物Cによる放射率(輻射率ともいう)がサセプタ(又は断熱材)の放射率より高くなることによる。例えば、サセプタおよび断熱材が炭化珪素(SiC)であるか炭化珪素でコートされている場合、サセプタおよび断熱材のSiCの放射率0.9から堆積物Cの放射率1に変化し、この堆積物C汚染による放射率の変化によりC堆積物の測定物の放射率0.9と設定した放射温度計が表示する温度がSiCの放射温度よりも数十℃以上高くなり、この加熱時の温度TTCにおける見かけ上の温度上昇が放射温度計で測定されるのである。サセプタおよび断熱材がSiC以外の物質からなる場合であっても、サセプタおよび断熱材を構成する物質と堆積物の物質が異なりそれらの放射率に差があれば放射温度計の表示する温度の変化を測定することができる。この放射率の変化、従って放射温度計の表示する温度の変化を監視することによって、堆積物による汚染が形成されたことを迅速に判断することが出来るのである。
【0022】
図2において、堆積物がない場合の反応室内部の高周波電源によって加熱されて熱電対温度計で測定される温度(℃):1500〜1800℃又は高周波電源の高周波出力(W)と、反応室内部の放射温度計で測定される温度:1400〜1700℃との関係は、堆積物が形成されない条件で予め作成しておくことができる。
この発明の方法によれば、例えば図2における1500〜1800℃の熱電対温度又は高周波電源の高周波出力(W)の設定条件(例えば、TTC又はWHF)に対応する放射温度計(例えば、T)の温度を監視し、放射温度計で数十℃以上高い測定温度(例えば、T)になった時に反応室内部に堆積・付着による検出可能な堆積物量を推定することができる。
【0023】
さらに、この発明について、薄膜形成装置を加熱時の放射温度計で測定される温度(℃)の変化を示すグラフである図3を用いて説明する。
図3は、高周波電源によってサセプタ内が1750℃に加熱されて、SiCエピタキシャル結晶成長の工程を数回行って放射温度計表示温度が平均約1640℃であったものが約1700℃に上昇し、堆積物が形成されたことを示す。以後、実験回数を増やしても放射温度計表示温度は高いままであり、この発明の方法によれば温度上昇をいち早く把握することができることを示す。
【0024】
この発明の薄膜形成方法が適用される薄膜としては、SiC、GaN、SiGe、AlN、AlGaN、GaAsSbNなど、好適には耐熱性及び機械的強度に優れ、物理的および化学的に安定なSiCおよびGaN、特にSiCを挙げることができる。また、前記の薄膜は単一層であってもよく2種以上の多層であってもよい。例えば、SiCのみからなる薄膜の場合、p型およびn型の単結晶が相互に接合されて構成されていてもよい。また、異種の結晶からなる薄膜が相互に接合されて構成されていてもよい。
【0025】
以下、この発明の薄膜形成方法について、薄膜としてSiCを用いる実施態様によって説明する。
この発明の実施態様において、SiCをエピタキシャル結晶成長させるために原料ガスとしては、シリコン源としてSiHやジクロルシランなどを挙げることができ、カーボン源としてメタン、プロパン、アセチレンなどのハイドロカーボンを使用することができる。
また、これらの原料ガスはキャリアガス、通常は水素をキャリアガスとして用いて反応室内に搬送される。
さらに、反応室内の温度(サセプタの熱電伝対温度)は1000℃以上2000℃未満、特に1500〜1800℃の範囲内の温度であることが好ましく、圧力は1torr〜1atm特に2torr〜100torr程度、反応時間(素子1枚ごとの成長時間)は厚みによって異なるが5〜10μmの場合には通常1〜2時間程度であることが好ましい。
【0026】
この発明において、サセプタおよび断熱材としては、従来一般的に使用されてきたグラファイトサセプタおよびグラファイト断熱材であってもよいが、好適にはSiCサセプタあるいはSiCコートグラファイトサセプタおよびSiC断熱材あるいはSiCコートグラファイト断熱材を挙げることができる。
前記の各サセプタおよび断熱材のうちどれを組み合わせて使用するかによって、原料のシリコン源およびカーボン源の割合を変えることが好ましい。
例えば、SiCサセプタおよびSiC断熱材の場合、SiCエピタキシャル結晶成長時の適切な原料供給比:C/Si=6であり、装置依存性がない。
【0027】
また、SiCコートグラファイトサセプタおよびSiC断熱材の場合、SiCエピタキシャル結晶成長時の適切な原料供給比:C/Si=6であるが、数μm(例えば、4μm)の薄膜を10回程度成長後は、成長条件が変動しC/Si=3となり安定しない傾向がある。
さらに、グラファイトサセプタおよびSiC断熱材の場合、SiCエピタキシャル結晶成長時の適切な原料供給比:C/Si=1であり、装置依存性がある。
このように、サセプタおよび断熱材の種類によって供給原料の組成を変えることが必要である。
【0028】
前記のSiCコートグラファイトサセプタおよびSiCコートグラファイト断熱材を使用してC堆積物が形成され、これがエピタキシャル結晶成長に影響を与える原因は、例えば以下のように考えることができる。
1)先ず最適なSi/Cでエピタキシャル結晶成長中に、サセプタのSiCコート層が高温での反応中に剥がれてピンホールが形成される。
2)ピンホールから反応室内にCが飛び出る。
3)Cが堆積物を形成する。
4)C堆積物がキャリアガスの大量の水素と反応してCHとなる。
5)CHが反応原料となるため、最適なSi/Cが狂ってくる。
6)当初に目的としたエピタキシャル結晶が得られなくなる。
【0029】
この発明の薄膜形成方法の1実施態様によって、半導体素子を得る方法について説明する。
1)サセプタおよび断熱材を備えた反応室を昇温し、熱電対温度又は電源出力と放射温度計の相関を評価して反応室内部の堆積・付着による炭素堆積物量を推定し、
2)堆積物のC汚染がなければ下記の工程4)に進み、C汚染がある場合は下記の工程3)に進み、
3)基板を取り出し、付着Cの除去を行うか又はC非付着部品に変更し、
4)設定温度でSiC結晶を成長させ、
5)成長したSiC結晶素子を反応室から取り出し、前記の1)の工程を続ける、
ことによって、薄膜を形成することができる。
【0030】
前記の付着Cの除去は、好適には雰囲気ガスを酸素又はHを含まない酸素含有の混合ガスに切替え、例えば1000℃以上の温度で数分〜数時間、好適には5分〜5時間程度加熱処理を行って、付着炭素を除去する工程によって行うことができる。
上記の付着炭素の除去工程において、放射率が正常値になるまで処理を行うことが必要である。
【実施例】
【0031】
以下にこの発明の実施例を示すが、この発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
実施例1に示すCVD薄膜製造装置を用いて、下記の工程でSiC薄膜形成の実験を行った。
1)SiCサセプタおよびSiC断熱材、さらに0.3〜0.5mm厚みのSiC基板を備えた反応室に2torrの圧力、水素ガス流通下にコールドウォール型高周波電源を用いてサセプタ内に設置した熱電対温度で1750℃まで加熱した。
2)キャリアガスとして水素を、Si(シリコン)源としてSiHを、C(カーボン)源としてアセチレンをSi/C=6の割合で用いて、設定温度として熱電対温度で1750℃にてSiC結晶を成長させた。
3)サセプタ内に設置した熱電対温度とサセプタの放射率を測定する放射温度計の相関を評価して、サセプタ表面の堆積・付着によるC堆積物量を継続的に推定した。
4)放射温度が1660℃未満であれば堆積物のC汚染がないと判断し、下記の工程6)に進み、放射温度が1660℃に達したらC汚染があると判断し、下記の工程5)に進んだ。
【0032】
5)装置の加熱を止めて冷却し、基板を取り出した。そして、雰囲気ガスを酸素に切替えて1000℃以上の温度で約1時間程度加熱処理を行って、付着Cを除去した。次いで、工程1)に戻った。
6)設定温度でSiC結晶を成長させ、
7)成長した用途によって厚み5〜10μmあるいは50〜100μmのSiC結晶素子薄膜を反応室から取り出し、前記の2)の工程を続けた。
これらの工程によって、SiCサセプタに形成されたピンホールによるC汚染を精度高く推定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、この発明の薄膜形成方法に用いる薄膜形成装置の1実施態様の概略図である。
【図2】図2は、放射温度計で測定される温度(℃)と熱電対温度計で測定される温度(℃)又は高周波電源の高周波出力(W)との関係を概略的に示すグラフである。
【図3】図3は、薄膜形成装置を加熱時の放射温度計で測定される温度(℃)の変化を示すグラフである。
【図4】図4は、この発明によりSiC結晶を成長させる工程表の概略を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 反応室
2 サセプタ
3 断熱材
4 基板
5 装置内加熱装置
6 熱電対温度計
7 放射温度計
10 薄膜形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタおよび断熱材を備えた反応室内の温度を監視して反応室内部の堆積・付着による堆積物量を推定する薄膜形成において、装置内加熱装置の出力値と反応室内の温度測定手段の測定値との相関を用いる薄膜形成方法。
【請求項2】
装置内加熱装置の出力値がサセプタに設置した熱電対で測定した温度又は高周波加熱装置の出力値であり、反応室内の温度測定手段の測定値が放射温度計で測定した温度である請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
サセプタが、SiC又はSiCコートグラファイトで構成される請求項1又は2に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
断熱材が、SiC又はSiCコートグラファイトで構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
サセプタおよび/又は断熱材の放射率を監視してC汚染を検出する請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【請求項6】
さらに、酸素を導入して堆積物のC汚染層を除去する請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【請求項7】
下記の工程:
1)サセプタおよび断熱材を備えた反応室を昇温し、熱電対温度又は電源出力と放射温度計の相関を評価して反応室内部の堆積・付着による炭素堆積物量を推定し、
2)堆積物のC汚染がなければ下記の工程4)に進み、C汚染がある場合は下記の工程3)に進み、
3)基板を取り出し、付着炭素の除去を行うか又は炭素非付着部品に変更し、
4)設定温度でSiC結晶を成長させ、
5)成長したSiC結晶素子を反応室から取り出した後、1)の工程を続ける、
からなる薄膜形成方法。
【請求項8】
前記の工程3)における付着炭素の除去が、雰囲気ガスを酸素又は酸素含有の混合ガスに切替え、昇温し、付着炭素を除去する工程を含む請求項7に記載の薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−185365(P2009−185365A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28844(P2008−28844)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】