説明

薄膜形成方法

【課題】ウエハ上に膜厚及び膜質が均一な薄膜を形成できる方法を提供する。
【解決手段】平行平板電極を構成するサセプタ26にウエハWを載置し、シャワーヘッド9に高周波を供給してサセプタ26との間にプラズマを生成し、ウエハWに薄膜を形成する際に、シャワーヘッド9を内側電極部91と外側電極部92に分割するとともに、シャワーヘッド9全体に一応に同じレベルの電圧を供給して薄膜を形成したときに、ウエハWの周縁部の膜厚が、周縁部よりも内側部分の膜厚よりも薄くなる場合には、内側電極部91に供給される高周波電力よりも大きな高周波電力を外側電極部92に供給してウエハW上に薄膜を形成し、ウエハWの周縁部の膜厚が、周縁部よりも内側部分の膜厚よりも厚くなる場合には、内側電極部91に供給される高周波電力よりも小さな高周波電力を外側電極部92に供給してウエハW上に薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で用いて好適な薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、被処理基板となる半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と略称)に絶縁膜等の薄膜を形成するにあたって、平行平板型のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が用いられている。この種のプラズマCVD装置では、上部電極となるシャワーヘッドと下部電極となるサセプタとを真空チャンバ内で対向させて平行平板電極を構成している。そして実際の成膜処理では、ウエハをサセプタに載置して、シャワーヘッドに高周波電力を供給することにより、ウエハの近傍でプラズマを生成し、この状態で真空チャンバ内に材料ガスを導入することにより、ウエハ上に薄膜を形成している。
【0003】
このようなプラズマCVD装置を用いてウエハに薄膜を形成する場合、従来では、ウエハ面内で膜厚や膜質などの成膜状態が均一になるように成膜条件を調整している。また、下記特許文献1には、サセプタの周縁部に絶縁リングを埋設することで膜の均一性を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−309115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプラズマCVD装置においては、例えば、材料ガスの流量や排気量、高周波電力などの成膜条件を調整しても、上部電極と下部電極との間に形成されるプラズマの密度分布やそこに供給される材料ガスの流れ方などの影響で、ウエハ上に形成される薄膜に膜厚や膜質などのばらつきが生じることがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、被処理基板上に膜厚及び膜質が均一な薄膜を形成することができる薄膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薄膜形成方法は、平行平板電極を構成する上部電極と下部電極のうち、下部電極に被処理基板を載置するとともに、上部電極に高周波電力を供給して下部電極との間にプラズマを生成し、被処理基板上に薄膜を形成するものであって、上部電極を、下部電極に対向する部位が、下部電極に載置される被処理基板の周縁部に対応する外側電極部と、被処理基板の周縁部よりも内側に対応する内側電極部とに分割し、上部電極全体に一応に同じレベルの電圧を供給して、被処理基板に薄膜を形成したときに、被処理基板の周縁部の膜厚が、周縁部よりも内側部分の膜厚よりも薄くなってしまう場合には、内側電極部に供給される高周波電力よりも大きな高周波電力を外側電極部に供給して、被処理基板上に薄膜を形成し、上部電極全体に一応に同じレベルの電圧を供給して、被処理基板に薄膜を形成したときに、被処理基板の周縁部の膜厚が、周縁部よりも内側部分の膜厚よりも厚くなってしまう場合には、内側電極部に供給される高周波電力よりも小さな高周波電力を外側電極部に供給して、被処理基板上に薄膜を形成するものである。
【0008】
本発明に係る薄膜形成方法においては、平行平板電極を構成する上部電極及び下部電極のうち、下部電極に対向する部位で上部電極を外側電極部と内側電極部に分割し、それら外側電極部と内側電極部にそれぞれ異なる高周波電力を供給することにより、上部電極と下部電極との間に生成されるプラズマの密度分布を、各々の電極部に供給される高周波電力に応じて変化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下部電極に対向する部位で上部電極を外側電極部と内側電極部に分割して、外側電極部と内側電極部にそれぞれ異なる高周波電力を供給することにより、上部電極と下部電極との間に生成されるプラズマの密度分布を変化させて、被処理基板上に膜厚及び膜質が均一な薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が適用される平行平板型のプラズマCVD装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプラズマCVD装置の主要部の構成を示す図である。
【図3】高周波電力と成膜速度・膜厚面内均一性の相関を示す図である。
【図4】高周波電力と成膜速度・屈折率面内平均の相関を示す図である。
【図5】高周波電力と成膜速度・誘電率面内平均の相関を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラズマCVD装置の主要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明が適用される平行平板型のプラズマCVD装置の概略構成を示す側断面図である。図示したプラズマCVD装置1は、セラミックス等からなる反応容器本体2と、この反応容器本体2の上部に設けられた開口を閉塞する蓋体3とを備え、これらの反応容器本体2と蓋体3により真空チャンバ4と当該真空チャンバ4に連通するガス排気部5とを形成している。ガス排気部5には配管6が接続されている。また、配管6の終端部には真空ポンプ7が接続され、配管6の途中には調整弁8が設けられている。そして、これらの真空ポンプ7と調整弁8により、真空チャンバ4内の圧力を任意に調整可能となっている。
【0013】
一方、蓋体3には平面視円形の開口3aが形成され、この開口3aに嵌合するかたちで蓋体3にシャワーヘッド9と環状の絶縁体10が取り付けられている。シャワーヘッド9は、真空チャンバー4内に材料ガスを導入するためのものである。シャワーヘッド9の底面には多数の小さなガス流通孔9aが所定の間隔で形成され、これらのガス流通孔9aを通して真空チャンバ4内に材料ガスを導入し得る構成となっている。絶縁体10は、例えばセラミックス等からなるもので、シャワーヘッド9と蓋体3との間に介在するように取り付けられている。
【0014】
シャワーヘッド9の上部にはガス取込用のアダプタ部材11が取り付けられている。アダプタ部材11は円板形に形成されたもので、その中心部にガス取込口11aが形成されている。また、アダプタ部材11の下面側には分散プレート12が取り付けられている。分散プレート12は、ガス取込口11aを通して取り込まれた材料ガスをシャワーヘッド9全体に均一に分散させるためのものである。
【0015】
アダプタ部材11のガス取込口11aには材料ガス供給用の主配管13が接続されている。主配管13の途中にはSiH4ガスの供給源となる第1のガス供給源14と、この第1のガス供給源14から供給されるSiH4ガスの供給量を調整する調整弁15が接続されている。また、主配管13から延びる副配管16には第1の分岐配管17が接続されている。第1の分岐配管17にはN2ガスの供給源となる第2のガス供給源18が接続されている。また、副配管16には第2の分岐配管19が接続されている。第2の分岐配管19にはNH3ガスの供給源となる第3のガス供給源20が接続されている。さらに、副配管16には第3の分岐配管21が接続されている。第3の分岐配管21にはHeガスの供給源となる第4のガス供給源22が接続されている。
【0016】
また、第1の分岐配管17には、第2のガス供給源18から供給されるN2ガスの供給量を調整する調整弁23が接続されている。同様に、第2の分岐配管19には、第3のガス供給源20から供給されるNH3ガスの供給量を調整する調整弁24が接続され、第3の分岐配管21には、第4のガス供給源22から供給されるHeガスの供給量を調整する調整弁25が接続されている。なお、SiH4ガス、N2ガス、NH3ガスは、ウエハW上に薄膜を形成するための材料ガスとなるもので、Heガスは添加ガスとなるものである。
【0017】
一方、真空チャンバー4内には、上述したシャワーヘッド9の下面(ガス流通孔9aの形成面)に対向する状態でサセプタ26が設けられている。シャワーヘッド9及びサセプタ26は、いずれもアルミニウム等の金属材料(導電性材料)によって形成されるものである。これにより、シャワーヘッド9を上部電極、サセプタ26を下部電極とした平行平板電極が構成されている。サセプタ26は、被処理基板となるウエハWを載置状態に支持するための支持面26aを有するもので、電気的にはグランド電位に接地(アース)されている。また、サセプタ26は、真空チャンバ4内でシャワーヘッド9とサセプタ26(ウエハW)間の対向距離(電極間距離)を任意に調整し得るように、図示しない昇降機構により上下方向に移動可能に支持されている。さらに、サセプタ26には、ウエハWを所定の温度に加熱するためのヒーター(不図示)が内蔵されている。
【0018】
上記構成からなるプラズマCVD装置を用いてウエハWの表面(上面)に薄膜を形成する場合は、調整弁8を開いて真空ポンプ7を作動させることにより、真空チャンバ4内を大気圧よりも低い所定の圧力まで減圧する。次に、図示しない高周波電力供給手段を作動してシャワーヘッド9に高周波電力を供給することにより、シャワーヘッド9とサセプタ26との間に高周波電圧を印加する。これにより、シャワーヘッド9とサセプタ26との間にプラズマが生成される。このとき、サセプタ26に載置されているウエハWの温度は、サセプタ26に内蔵されたヒーターの作動によって所定の加熱温度に保持される。
【0019】
続いて、調整弁15,23,24をそれぞれ開くことにより、第1のガス供給源14からSiH4ガスを、第2のガス供給源18からN2ガスを、第3のガス供給源20からNH3ガスをそれぞれ主配管13に流入し、それらのガスをアダプタ部材11のガス取込口11aを通してシャワーヘッド9の内部に取り込む。こうして取り込まれた各々のガスは、シャワーヘッド9の内部で混合されるとともに、この混合ガスが分散プレート12で分散されて各々のガス流通孔9aから真空チャンバ4内に導入される。これにより、シャワーヘッド9とサセプタ26との間に形成されたプラズマ中で材料ガスが活性化されてラジカルを発生し、このラジカルがウエハWに堆積することにより、ウエハW上にSiNからなる薄膜(絶縁膜)が形成される。
【0020】
図2(A)は本発明の第1実施形態に係るプラズマCVD装置の主要部の構成を示す側断面図であり、図2(B)は当該プラズマCVD装置が備えるシャワーヘッド9の底面図である。図においては、上部電極となるシャワーヘッド9が、下部電極となるサセプタ26に対向する部位で、径方向に2つに分割されている。このうちの1つは、上述した複数のガス流通孔9aを有する内側電極部91であり、他の1つは、内側電極部91の外側に位置する外側電極部92である。これら内側電極部91と外側電極部92の間には、例えばセラミックス等からなる絶縁部材93が介在しており、この絶縁部材93によって内側電極部91と外側電極部92が電気的に絶縁されている。また、シャワーヘッド9を構成する内側電極部91、外側電極部92及び絶縁部材93は、それぞれ同心円状に配置されている。
【0021】
外側電極部92は、サセプタ26に載置されるウエハWの周縁部に対応して設けられている。ウエハWの周縁部とは、ウエハWの最外周を規定する円からウエハ中心に向かって20mm程度(最大で30mm)までの部分をいう。このウエハWの周縁部と対応するように、サセプタ26との対向部位で外側電極部92が当該ウェハ周縁部とほぼ同じ位置か、それよりも若干外側(大径側)の位置に配置されている。
【0022】
また、高周波電力供給手段として、内側電極部91には高周波電源27が電気的に接続され、外側電極部91にはそれと別の高周波電源28が電気的に接続されている。これにより、内側電極部91と外側電極部92に対しては、それぞれに対応する高周波電源27,28から個別に高周波電力が供給される構成となっている。
【0023】
ここで、高周波電源27の角周波数をω1、高周波電源27から内側電極部91に供給される電流をI1、内側電極部91とサセプタ26との間の容量をC1、内側電極部91とサセプタ26との間のインピーダンスをZ1とすると、内側電極部91とサセプタ26との間に印加される高周波電圧V1は、次の(1)式で表される。
1=I11≒I1/jω11…(1)
【0024】
また、高周波電源28の角周波数をω2、高周波電源28から外側電極部92に供給される電流をI2、外側電極部92とサセプタ26との間の容量をC2、外側電極部92とサセプタ26との間のインピーダンスをZ2とすると、外側電極部92とサセプタ26との間に印加される高周波電圧V2は、次の(2)式で表される。
2=I22≒I2/jω22…(2)
【0025】
上記構成からなるプラズマCVD装置においては、高周波電源27から供給される高周波電力を大きくすると、内側電極部91とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度が高くなり、反対に、高周波電源27から供給される高周波電力を小さくすると、内側電極部91とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度が低くなる。同様に、高周波電源28から供給される高周波電力を大きくすると、外側電極部92とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度が高くなり、反対に、高周波電源28から供給される高周波電力を小さくすると、外側電極部92とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度が低くなる。
【0026】
したがって、高周波電源27から内側電極部91に供給される高周波電力と、高周波電源28から外側電極部92に供給される高周波電力とを個別に調整することにより、シャワーヘッド9とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度を、内側電極部91に対応する部分と外側電極部92に対応する部分で独立に制御することが可能となる。また、ウエハW上に薄膜を形成する際の成膜速度は、シャワーヘッド9に供給される高周波電力にほぼ比例したものとなる。したがって、内側電極部91に対応する部分と外側電極部92に対応する部分で、ウエハW上での成膜速度を個別に制御することが可能となる。
【0027】
具体例として、シャワーヘッド9全体に一様に同じレベルの高周波電力を供給してウエハW上に薄膜を形成したときに、ウエハWの周縁部の膜厚が、ウエハ周縁部よりも内側部分(ウエハ中心寄り)の膜厚よりも薄くなってしまう場合は、高周波電源27から内側電極部91に供給される高周波電力よりも大きな高周波電力を、高周波電源28から外側電極部92に供給してウエハW上に薄膜を形成する。これにより、外側電極部92とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度を相対的に上げて成膜速度を速めることができる。したがって、ウエハWの周縁部で膜厚を相対的に厚くして、ウエハ面内での膜厚の均一性を改善することができる。
【0028】
また、シャワーヘッド9全体に一様に同じレベルの高周波電力を供給してウエハW上に薄膜を形成したときに、ウエハWの周縁部の膜厚が、ウエハ周縁部よりも内側(ウエハ中心寄り)の膜厚よりも厚くなってしまう場合は、高周波電源27から内側電極部91に供給される高周波電力よりも小さな高周波電力を、高周波電源28から外側電極部92に供給してウエハW上に薄膜を形成する。これにより、外側電極部92とサセプタ26との間に形成されるプラズマの密度を相対的に下げて成膜速度を遅らせることができる。したがって、ウエハWの周縁部で膜厚を相対的に薄くして、ウエハ面内での膜厚の均一性を改善することができる。
【0029】
特に、ウエハ面内ではウエハWの周縁部とそれよりも内側部分で、膜厚及び膜質などの成膜状態に差が生じやすいため、これに対応して上述のようにシャワーヘッド9を内側電極部91と外側電極部92に分割することにより、ウエハ面内での均一性改善に大きく寄与することができる。
【0030】
また一般に、シャワーヘッド9全体に同一レベルの高周波電力を供給してウエハW上に薄膜を形成すると、プラズマの密度分布や材料ガスの流れ方などの影響で、ウエハWの周縁部の膜厚が、ウエハ周縁部よりも内側部分の膜厚よりも薄くなる場合が多い。したがって、その場合は、図3に示すように、高周波電源28から外側電極部92に供給される高周波電力を上昇させて成膜速度を速めることにより、ウエハ面内での膜厚の均一性を改善することができる。
【0031】
また、ウエハW上での成膜速度は、図4及び図5に示すように膜の屈折率や誘電率にも大きな影響を与えるため、上述のように高周波電力を調整することにより、ウエハ面内で屈折率や誘電率の均一性を改善することもできる。
【0032】
また、高周波電源27から内側電極部91に供給される高周波電力と、高周波電源28から外側電極部91に供給される高周波電力とを適宜調整することにより、ウエハWの周縁部とそれよりも内側部分で、薄膜の成膜状態(膜厚、膜質など)を個別に調整することもできる。
【0033】
さらに、ウエハW上に薄膜を形成するにあたって、例えば、高周波電源27の作動を停止して内側電極部91に高周波電力を供給せず、高周波電源28からのみ外側電極部92に高周波電力を供給することにより、ウエハWの周縁部だけに薄膜を形成することが可能となる。また、これと反対に、高周波電源28の作動を停止して外側電極部92に高周波電力を供給せず、高周波電源27からのみ内側電極部91に高周波電力を供給することにより、ウエハWの周縁部を除く内側部分だけに薄膜を形成することが可能となる。
【0034】
図6は本発明の第2実施形態に係るプラズマCVD装置の主要部の構成を示す側断面図である。この第2実施形態に係るプラズマCVD装置では、上記第1実施形態と比較して、特に高周波電力供給手段の構成が異なるものとなっている。すなわち、図6においては、上述のように分割されたシャワーヘッド9の内側電極部91及び外側電極部92に対して高周波電力を供給するために、共通(単一)の高周波電源29を備えたものとなっている。
【0035】
また、高周波電源29の出力端子から延びる電気配線は途中で二股状に分岐している。そして、一方の分岐配線はそのまま内側電極部91に電気的に接続され、他方の分岐配線は可変抵抗30を介して外側電極部92に電気的に接続されている。可変抵抗30は、高周波電源30から内側電極部91及び外側電極部92に供給される高周波電力を可変調整する調整手段に相当するものである。
【0036】
ここで、高周波電源29の角周波数をω、この高周波電源29から供給される電流I(I=I1+I2)のうち、内側電極部91に供給される電流をI1、外側電極部92に供給される電流をI2、内側電極部91とサセプタ26との間の容量をC1、外側電極部92とサセプタ26との間の容量をC2、内側電極部91とサセプタ26との間のインピーダンスをZ1、可変抵抗30を含めて外側電極部92とサセプタ26との間のインピーダンスをZ2、可変抵抗30の抵抗値をRとすると、内側電極部91とサセプタ26との間に印加される高周波電圧V1は次の(3)式で表され、外側電極部92とサセプタ26との間に印加される高周波電圧V2は次の(4)式で表される。
1=I11≒I1/jωC1…(3)
2=I22≒I2R+I2/jωC2…(4)
但し、V1=V2
【0037】
これにより、外側電極部92とサセプタ26との間に印加される高周波電圧V2は、可変抵抗30の抵抗値Rを大きくすると、これにしたがって大きくなり、逆に可変抵抗30の抵抗値Rを小さくすると、これにしたがって小さくなる。よって、外側電極部92に供給される高周波電力P2は、可変抵抗30の抵抗値を変化させることによって任意に調整可能となる。この場合の高周波電力P2と可変抵抗30の抵抗値の関係は、次の(5)式で表される。
2=I22=I2・I22≒I2・I2R+I2・I2/jωC2…(5)
【0038】
また、可変抵抗30の抵抗値を変化させると、内側電極部91に供給される高周波電力P1は、次の(6)式にしたがって変化する。
1=I11=I1・I11≒I1・I1/jωC1…(6)
【0039】
上記構成からなるプラズマCVD装置においては、可変抵抗30の抵抗値を適宜設定することにより、共通の高周波電源29を用いて、内側電極部91と外側電極部92にそれぞれ異なる高周波電力を供給することができる。したがって、シャワーヘッド9を複数の電極部に分割した場合に、各々の電極部ごとに高周波電源を用意しなくても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、サセプタ26に対向するシャワーヘッド9の電極部分を、径方向で内側、外側の2つに分割するものとしたが、これを3つ又はそれ以上の個数で分割してもよい。また、分割する方向も径方向に限らず、任意の方向(例えば、円周方向など)で分割することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…プラズマCVD装置、9…シャワーヘッド(上部電極)、26…サセプタ(下部電極)、27,28,29…高周波電源、30…可変抵抗、91…内側電極部、92…外側電極部、93…絶縁部材、W…ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行平板電極を構成する上部電極と下部電極のうち、前記下部電極に被処理基板を載置するとともに、前記上部電極に高周波電力を供給して前記下部電極との間にプラズマを生成し、前記被処理基板上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
前記上部電極を、前記下部電極に対向する部位が、前記下部電極に載置される前記被処理基板の周縁部に対応する外側電極部と、前記被処理基板の前記周縁部よりも内側に対応する内側電極部とに分割し、
前記上部電極全体に一応に同じレベルの電圧を供給して、前記被処理基板に薄膜を形成したときに、前記被処理基板の前記周縁部の膜厚が、前記周縁部よりも内側部分の膜厚よりも薄くなってしまう場合には、前記内側電極部に供給される高周波電力よりも大きな高周波電力を前記外側電極部に供給して、前記被処理基板上に薄膜を形成し、
前記上部電極全体に一応に同じレベルの電圧を供給して、前記被処理基板に薄膜を形成したときに、前記被処理基板の前記周縁部の膜厚が、前記周縁部よりも内側部分の膜厚よりも厚くなってしまう場合には、前記内側電極部に供給される高周波電力よりも小さな高周波電力を前記外側電極部に供給して、前記被処理基板上に薄膜を形成する
薄膜形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−151504(P2012−151504A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88111(P2012−88111)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2005−199679(P2005−199679)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】