説明

血漿カリクレインの阻害薬

本発明は、血漿カリクレイン(PK)の活性を阻害する化合物、ならびにPK依存性の疾患または状態の最中または後の、例えば線維素溶解治療後の、トロンビンの形成を予防および治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年3月20日に提出された米国仮特許出願第60/919,031号および2006年7月31日に提出された米国仮特許出願第60/834,377号の優先権を主張し、それらはすべての目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の援助を得た研究または開発の下で行われた発明に対する権利に関する申立
該当なし。
【0003】
コンパクトディスクにより提出した「配列表」、表またはコンピュータプログラムリスト出力の添付物の参照
該当なし。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
血栓形成は、失血を防止して、止血として知られる過程である損傷血管の修復を可能にするために必須ではあるものの、血栓は血管を閉塞させて組織から酸素を奪うならば病的となる恐れもある。血栓による動脈の閉塞である動脈血栓症は、破裂またはびらんを来した動脈硬化性プラークの部位で起こることが最も多い(Kou, V. et al., (2006) Mt. Sinai J. Med. 73: 449-468)。冠動脈の特異的な閉塞は、不安定狭心症および心筋梗塞(MI)を含む急性冠症候群をもたらす。
【0005】
フィブリン塊は、1つの共通の凝固経路に収束する内因性経路および外因性経路という2つの異なる経路のうち一方の惹起によって生じうる(Macfarlane, R.G. (1964) Nature 202: 498-9;Davie, E.W. et al. (1964) Science 145: 1310-12;Joseph, K. et al. (2005) Advances Immunology 86: 159-208)。実験データにより、PK欠損個体およびFXII欠損個体はいずれも、出血性表現型は有しないものの、内因性経路を介した血餅形成に重大な障害を有することが示唆されている(Ratnoff, O.D. et al. (1955) J. Clin. Invest. 34: 602-613;Colman, R.W. (2001) In Hemostasis and Thrombosis: Basic principles and clinical practice. R. W. Colman et al eds. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA. 103-122;Rosen, E.D. et al. (1997) Nature 390: 290-294;Hathaway, W.E., et al. (1965) Blood 26:521-32;Lawrie, A.S. et al (1998) Clin. Lab. Haematol. 20: 179-86;およびBates, et al., (2005) Circulation 112: 53-60)。内因性経路では、表面に対する結合により、少量の第XII因子(FXII)が活性化され(FXIIa)、次にそれがタンパク質分解を通じて血漿カリクレイン(PK)を活性化する。重要なこととして、PKは続いてフィードバックループ内でさらにFXIIaを生成させ、次にそれが第XI因子(FXI)をFXIaに活性化して、共通経路と結びつける。内因性経路の初期活性化は、少量のPKを活性化する少量のFXIIaを通じたものではあるが、内因性経路の活性化の程度を制御するのは、その後のPKによるFXIIのフィードバック活性化であり、それ故に凝固系下流(downstream coagulation)である(Hathaway, W.E., et al. (1965) Blood 26: 521-32)。
【0006】
院内環境での急性MIまたは虚血性脳卒中に対する現在の治療は、閉塞性の血栓を溶解させて再灌流(血流の回復)を可能にするための救急措置を必要とする。これを行う一般的なやり方の1つは、プラスミノーゲンからの活性プラスミンの生成を導く薬剤である組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)またはストレプトキナーゼなどの線維素溶解薬を患者に投与することによる。プラスミンは血栓のフィブリン網を切断し、その結果として血餅溶解を導く。そのような線維素溶解薬は世界中で再灌流のために最も高い頻度で用いられている治療薬である。しかし、線維素溶解には血栓症再発も高度に伴ってみられ、その後の再閉塞率は研究によっては最大で50%にも上る(Zijlstra, F. et al (1993) N. Engl. J. Med. 328: 680-4;Brodie, B.R. et al. (1994) Circulation 90: 156-62;Stone, G.W. et al (1999) Circulation 99: 1548-54;Tamai, H. et al, MAJIC Investigators (2004) Am. Heart J. 147: E9;Verheugt, F.W. et al(1996) J. Am. Coll. Cardiol. 27: 766-73)。
【0007】
急性MIを起こした患者は、凝固能亢進(凝血促進)状態にあることの臨床的証拠を示す。この凝固能亢進は、線溶療法を受けている者では逆説的なことにさらに悪化する。そのような治療を受けている患者では、ヘパリンのみを投与されている者で観察される既に高いレベルと比較して最大で2倍の高さのトロンビン-抗トロンビンIII(TAT)レベルからも評価されるように、トロンビン生成の増加が観察される(Hoffmeister, H.M. et al (1998) Circulation 98: 2527-33)。トロンビンの増加は、プラスミンを介した内因性経路の活性化に起因すると提唱されている。プラスミンを介した内因性経路系の活性化が血液中で起こることが知られており(Ewald, G.A. et al. (1995) Circulation 91: 28-36)、これはプラスミンによるFXIIの直接的な活性化の結果として起こることが示唆されている。
【0008】
再閉塞率の上昇を導くのは線維素溶解で誘導される凝固能亢進だけではなく、それはおそらく少なくとも一部には、血餅の完全な線維素溶解を達成できないという線溶療法の主な弱点も一因であると思われる(Keeley, E.C. et al. (2003) Lancet 361: 13-20)。線溶療法のもう1つの問題は、それに伴って頭蓋内出血(ICH)のリスクが3倍に増大することである(Menon, V. et al (2004) 126: 549S-575S;Fibrinolytic Therapy Trialists' Collaborative Group (1994) Lancet 343: 311-322)。このため、出血のリスクを増大させないが新たなトロンビンの形成は阻害する補助的な抗凝固療法は非常に有益であると考えられる。
【0009】
野生型マウスに対するFXIIの非可逆的阻害薬の投与は閉塞血管の減少および虚血性皮質障害の低下を導くことが見いだされており、FXIIの阻害は急性MIまたは血栓性脳卒中の際に起こるもののような動脈血栓症に対して保護的であると考えられる(WO/2006 066878 A1)。しかし、ペプチド医薬には、半減期の短さを理由とする急性試験に対する適用の限界、医学的インターベンションを要する静脈内投与、および治療を受けている患者による抗ペプチド抗体の発生を含む、数多くの弱点がある。
【0010】
このため、これらの限界を克服すると考えられるPKの低分子阻害薬を開発する必要がある。特に、閉塞性血栓の箇所での線維素溶解/血栓形成のバランスを溶解側に推し進めることのできる阻害薬は、再灌流を促すとともに凝固能亢進状態をも弱め、それ故に血栓が再形成して血管を再閉塞させることを防ぐ。本発明は上記および他の必要を満たす。
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩を提供する:

式中、Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環であり;添字mは0から5までの整数であり;各Raはシクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルであり;Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;Qa、QbおよびQcは、N、S、OおよびC(Rq)からなる群よりそれぞれ独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より独立に選択され、Qa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環であり;YはCおよびNからなる群より選択されるメンバーであり;Arが結合である場合にはmは1であり;Arが芳香環である場合にはmは0〜5の整数である。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩を提供する:

式中、添字mは0から5までの整数であり;添字nは0から4までの整数であり;添字qは0から1までの整数であり;Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2は独立にアルキルであり;qが0である場合にはZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルであり;qが1である場合にはZはNである。
【0013】
さらにもう1つの局面において、本発明は薬学的組成物を提供する。本組成物は、式IまたはIIの化合物を、薬学的に許容される添加剤と組み合わせて含む。
【0014】
なおもう1つの局面において、本発明は、それを必要とする対象における血栓症を治療する方法を提供する。本方法は、対象に、式IもしくはIIの化合物またはPK特異的モノクローナル抗体を投与する段階を含む。
【0015】
1つのさらなる局面において、本発明は、それを必要とする対象における血漿カリクレイン依存性の疾患または状態を治療する方法を提供する。本方法は、対象に、式IもしくはIIの化合物またはPK特異的モノクローナル抗体を投与する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アクチンFS添加後のPK欠損性血漿と正常血漿との凝固時間の比較を図示している。
【図2】さまざまな濃度のASP-440またはASP-465の添加による正常血漿の凝固時間延長の用量依存性、およびPK欠損性血漿の血液凝固時間を図示している。
【図3】50%血漿-6.25%アクチンFSのインキュベーション混合物に対する100または200nMの外因性プラスミンの添加が、凝固までの時間の用量依存的な短縮をもたらしたこと、例えば相対凝固時間が1.00から0.74〜0.65に低下することを図示している。
【図4】PK特異的阻害薬が血漿中でのプラスミンを介した血栓形成効果を効果的に阻害しうること、およびプラスミンが血漿中でその血栓形成効果を発揮するためにはPKの存在が必要なことを図示している。
【図5】血漿が50%アクチンFSを用いて活性化される時に、モノクローナル抗体(MAB)13G11が凝固時間を100%延長させることを図示している。
【図6】血漿が200nMプラスミンおよび6.25%アクチンFSを用いて活性化される時に、MAB 13G11が凝固時間を32%延長させることを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
I.定義
別に指定する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において用いられる以下の用語は、以下に提示する意味を有する。
【0018】
「アルキル」という用語は、単独で、または別の置換基の一部として、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1-8は1〜8個の炭素を意味する)、直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基のことを意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが含まれる。本明細書における定義のそれぞれに関して(例えば、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキレン、ハロアルキル)、アルキル部分における主鎖炭素原子の数を示す接頭辞が含まれない場合には、基またはその部分は12個またはそれ未満の主鎖炭素原子を有する。
【0019】
「アルキレン」という用語は、単独で、または別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるようなアルカンに由来する二価基のことを意味する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1個から24個までの炭素原子を有すると考えられ、10個またはそれ未満の炭素原子を有するそのような基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、一般に4個またはそれ未満の炭素原子を有する、より短鎖のアルキルまたはアルキレン基のことである。
【0020】
「シクロアルキル」という用語は、指示された数の環原子(例えば、C3-6シクロアルキル)を有し、かつ完全に飽和しているか環の頂点間に1つを超えない二重結合を有する炭化水素環のことを指す。1個または2個のC原子がカルボニルによって置換されてもよい。「シクロアルキル」は、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなどの、二環式および多環式の炭化水素環も指すものとする。シクロアルキルにおける環炭素原子の数を示す接頭辞が含まれない場合には、基またはその部分は8個またはそれ未満の環炭素原子を有する。
【0021】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基またはイオウ原子を介して、分子の残りの部分と結びついたアルキル基のことを指す。さらに、ジアルキルアミノ基に関しては、アルキル部分は同じでも異なってもよく、それぞれに結びついた窒素原子と3〜7員環を形成するように組み合わされてもよい。したがって、-NRaRbとして表される基には、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、アゼチジニルなども含まれるものとする。
【0022】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、別に指定する場合を除き、単独で、または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子のことを意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むものとする。例えば、「C1-4ハロアルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むものとする。
【0023】
「アリール」という用語は、5〜14個の環原子を有する一価の単環式、二環式または多環式の芳香族炭化水素基のことを意味し、これは置換されていないか、またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、COR(ここでRは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル切断物(cycloalkyl-alkyl cut)、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、-(CR'R'')n-COOR(ここでnは0から5までの整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、もしくは-(CR'R'')n-CONRaRb(ここでnは0から5までの整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、およびRaおよびRbは互いに独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールもしくはアリールアルキルである)から選択される1〜4個の置換基、好ましくは1個、2個もしくは3個の置換基によって独立に置換されている。より具体的には、アリールという用語には、フェニル、ビフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、ならびにそれらの置換形態が非限定的に含まれる。同様に、「ヘテロアリール」という用語は、例えばピリジル、キノリニル、キナゾリニル、チエニルなどのように、1〜5個のヘテロ原子またはヘテロ原子官能基が、芳香族特性を保ちながら環炭素を置換しているアリール基のことを指す。ヘテロ原子はN、OおよびSから選択され、ここで窒素およびイオウ原子は酸化されてもよく、窒素原子は四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の残りの部分と結びつくことができる。アリール基の非限定的な例にはフェニル、ナフチルおよびビフェニルが含まれ、ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル(phthalaziniyl)、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル、チエニルなどが含まれる。簡略化のために、アリールという用語は、他の基(例えば、アリールオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて用いられる場合には、上記のようなアリール基およびヘテロアリール基の両方を含むものとする。
【0024】
アリール基に対する置換基はさまざまであり、一般に、ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、,-NR'-C(O)NR''R''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-N3、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシおよびパーフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され、その数はゼロから芳香環系の開放原子価(open valence)の総数までの範囲にわたる;かつ、R'、R''およびR'''は、水素、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)-C1-4アルキル、ならびに非置換アリールオキシ-C1-4アルキルから独立に選択される。
【0025】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基によって置換されてもよく、式中、TおよびUは独立に-NH-、-O-、-CH2-または単結合であり、qは0から2までの整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-A-(CH2)r-B-の置換基によって置換されてもよく、式中、AおよびBは独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1から3までの整数である。そのようにして形成された新たな環の単結合の1つは二重結合によって置換されてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基によって置換されてもよく、式中、sおよびtは独立に0から3までの整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR'-である。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は水素または非置換C1-6アルキルから選択される。
【0026】
本明細書で用いる場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むものとする。
【0027】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載した化合物上に見いだされる具体的な置換基に依存して比較的無毒性である酸または塩基とともに調製される活性化合物の塩を含むものとする。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を含む場合には、中性型のそのような化合物を、溶媒を加えていない、または適した不活性溶媒中にある十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩の例には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、置換アミン、環状アミン、天然アミンなどを含む第一級、第二級および第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラヂン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を含む場合には、天然型のそのような化合物を、溶媒を加えていない、または適した不活性溶媒中にある十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogen carbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogen phosphoric)、二水素リン酸(dihydrogen phosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogen sulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。同じく含まれるものには、アルギネート(arginate)などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩がある(例えば、Berge, S.M., et al, “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明のある種の化合物は、化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれに変換されることも可能にする、塩基性および酸性の官能性の両方を含む。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤または添加剤が、製剤の他の成分と適合性であって、かつそのレシピエントに対して有害でない必要があることを意味する。
【0028】
本明細書で用いる「組成物」という用語は、指定された成分を指定された量で含む製造物、ならびに、指定された量の指定された成分の組み合わせを直接的または間接的に結果としてもたらす任意の製造物を包含することを意図している。
【0029】
本明細書で用いる「対象」という用語は、霊長動物(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを非限定的に含む哺乳動物などの動物を含むものとする。
【0030】
II.概論
本発明は、血漿カリクレイン(PK)の活性を阻害するための化合物、ならびに血栓症およびPK依存性の疾患および状態といった血液凝固の予防および治療のために化合物および薬学的組成物を用いる方法に関する。例えば、これらの化合物は、内因性経路によるトロンビンの形成を阻害し、それ故に新たな病原性血栓形成(再閉塞)のリスクを低下させるとともに、線維素溶解レジメンとの補助療法として投与された場合には線維素溶解で誘導される再灌流も改善する。
【0031】
本発明にはいくつかの利点がある。第1に、PK欠損個体ではいかなる表現型も観察されていないことに基づき、PK活性の高レベルの阻害には不都合な影響は全くないと考えられる。第2に、急性心筋梗塞(MI)、虚血性脳卒中または深部静脈血栓症(DVT)の後のPK阻害には、正常な止血に影響を及ぼさず、それ故にそのような患者において既に高くなっている出血リスクを増大させないという点で、ヘパリン(LMWHを含む)または臨床的に開発中の直接的なトロンビンおよびFXaの阻害薬といった他の抗凝固薬を上回る強力なさらなる利点がある。第3に、線溶療法時に同時発生的に生成されるトロンビンの量を減少させることにより、PK阻害薬は、線維素溶解治療時の再灌流の臨床経過を改善し、結果としてそのような治療のより有効な転帰をもたらし、より低用量の線維素溶解薬の適用により、ICHのリスクを低下させながら治療効果を得ることを可能にする。第4に、本発明の化合物および方法は、急性試験にとって安定かつ長い半減期を有し、患者が薬物耐性を生じる可能性が低く、他の医学的インターベンションを必要としない。
【0032】
III.化合物
1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物を提供する。

【0033】
Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環である。Arが結合である場合には、mは1である。Arが芳香環である場合には、mは0〜5の整数である。1つの態様において、Arはベンゼンまたはピリジンである。もう1つの態様において、Arは結合である。
【0034】
添字mは0から5までの整数である。1つの態様において、mは0である。
【0035】
各Raは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルである。1つの態様において、R1はC1-C8アルキルである。もう1つの態様において、R1はフェニルもしくはピリジルなどの非置換アリール、または置換フェニルもしくは置換ピリジルなどの置換アリールである。
【0036】
1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、アリール、アリール(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-CN、-C(=O)(C1-C8アルキル)、-(C=O)NH2、-(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-C(=O)N(C1-C8アルキル)2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)O(C1-C8アルキル)、-O(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-SO2(C1-C8アルキル)、-NHSO2(C1-C8アルキル)および-SO2NH(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)、-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、フェノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH-アリール、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-COO-アリール、-OC(O)-アリール、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)などからなる群より独立に選択される。例えば、RaはCl、BrまたはIなどのハロゲンである。
【0037】
Lは、結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基である。
【0038】
Qa、QbおよびQcはそれぞれ、N、S、OおよびC(Rq)からなる群より独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より独立に選択され、Qa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環である。
【0039】
第1の群の態様において、QaはNであり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から独立に選択される。ある特定の場合には、QaはNであり、QcおよびQbはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。他のある特定の場合には、QaはNであり、QcおよびQbはそれぞれC(Rq)およびOから選択される。さらに他のある特定の場合において、QaはNであり、QcはNおよびOから選択されるメンバーであり、QbはNおよびOから選択される他方のメンバーである。
【0040】
第2の群の態様において、QaはOであり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される。ある特定の場合には、QaはOであり、QcおよびQbはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。
【0041】
第3の群の態様において、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される。ある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれNおよびOから独立に選択される。他のある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。さらに他のある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれOおよびC(Rq)から独立に選択される。1つの発現(occurrence)において、QaはC(Rq)であり、QbはOであり、Qcは(CRq)である。
【0042】
Yは、CおよびNからなる群より選択されるメンバーである。1つの態様において、YはCであり、QaはSであり、Arはフェニルまたはピリジルから選択される。もう1つの態様において、YはNであり、Qa、QbおよびQcはそれぞれ独立にC(Rq)であり、ここでRqはHまたはC1-8アルキルである。1つの場合には、YはNであり、QaおよびQcはC(Rq)であり、QbはCHである。好ましい態様において、YはNである。
【0043】
1つの態様において、Lは結合であり、YはNである。もう1つの態様において、Lは結合であり、YはNであり、Arはベンゼン環である。さらにもう1つの態様において、LはCH2であり、YはNである。なおもう1つの態様において、Lは結合であり、YはCである。さらなる態様において、LはSO2であり、YはNである。
【0044】
1つの好ましい態様において、Qa、QbおよびQcはそれぞれ独立にCRqである。もう1つの好ましい態様において、Lは結合またはCH2である。さらにもう1つの好ましい態様において、Arはベンゼンである。なおもう1つの好ましい態様において、Raは-HおよびC1-C8アルキルである。
【0045】
1つの態様において、本発明は、以下の表1に示された式を有する式Iの化合物を提供する。
【0046】
(表1)

【0047】
もう1つの態様において、式Iの化合物は、以下の部分式(subformula)Iaを有する。

RqおよびLは以上に定義した通りである。1つの場合には、Rqは独立に-HまたはC1-8アルキルであり、Lは結合または-CH2-である。もう1つの場合には、Raはハロ-(C1-C8アルキル)である。例えば、Raは-CF3、CH2CF3である。
【0048】
1つの態様において、式Iの化合物は、以下の部分式Ibを有する:

式中、Arは芳香環である。1つの場合には、各Rqは独立にH、C1-C8アルキルまたはハロゲンである。もう1つの場合には、Lは結合またはCH2である。さらにもう1つの場合には、Arはベンゼンである。なおもう1つの場合には、mは0である。1つの発現では、各RqはHであり、LはCH2であり、Arはベンゼンであり、mは0である。もう1つの発現では、各RqはHであり、Lは結合であり、Arはベンゼンであり、mは0である。
【0049】
もう1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物を提供する。

【0050】
添字mは0から5までの整数である。添字nは0から4までの整数である。添字qは0から1までの整数である。1つの態様において、添字mは0である。もう1つの態様において、添字nは0から2までの整数である。さらにもう1つの態様において、添字qは0である。なおもう1つの態様において、添字qは1である。
【0051】
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基である。1つの態様において、LはCH2またはSO2である。
【0052】
RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2は独立にアルキルである。1つの態様において、R2はC1-C8アルキルである。もう1つの態様において、R2はフェニルもしくはピリジルなどの非置換アリール、または置換フェニルもしくは置換ピリジルなどの置換アリールである。
【0053】
1つの態様において、RbおよびRcのそれぞれは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、アリール、アリール(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-CN、-C(=O)(C1-C8アルキル)、-(C=O)NH2、-(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-C(=O)N(C1-C8アルキル)2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)O(C1-C8アルキル)、-O(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-SO2(C1-C8アルキル)、-NHSO2(C1-C8アルキル)および-SO2NH(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)、-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、フェノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH-アリール、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-COO-アリール、-OC(O)-アリール、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)などからなる群より独立に選択される。
【0054】
qが0である場合には、ZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルである。qが1である場合には、ZはNである。1つの態様において、添字qは0であり、ZはO、SおよびNHからなる群より選択される。1つの場合には、添字nは0、1または2である。1つの発現では、ZはOまたはSである。もう1つの態様において、添字qは1である。1つの場合には、LはCH2またはSO2である。
【0055】
1つの態様において、本発明は、以下の表2に示された式を有する式Iの化合物を提供する。
【0056】
(表2)

【0057】
1つの態様において、式Iの化合物は、以下の部分式IIaを有する。

置換基RbおよびRcならびに添字mは以上に定義した通りである。1つの場合には、LはCH2である。もう1つの場合には、LはSO2である。さらにもう1つの場合には、mは0である。なおもう1つの場合には、nは0である。
【0058】
もう1つの態様において、式Iの化合物は、以下の部分式IIa-1を有する。

【0059】
表3は、PK阻害薬の化合物およびそれらの阻害活性を提示している。化合物番号は表1および2における番号と対応する。
【0060】
(表3)




【0061】
化合物の調製
以下の例に示されている通り、当業者が本発明の化合物および中間体を調製することのできる、さまざまな合成経路がある。以下のスキームは、本発明のある特定の化合物を入手するためにたどることのできる合成経路を提示している。他の経路または示された経路の改変物は当業者には直ちに明らかと考えられ、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0062】
以下のスキーム1は、本発明のPK-阻害薬に対する1つの合成アプローチを示している。

スキーム1では、さまざまなR基を有するカルボン酸を、カルボジイミド、HOBtおよびDIPEAの存在下でアミジノベンジルアミンと反応させて、カルボン酸4-カルバムイミドイル-ベンジルアミド誘導体を形成させる。アミジノベンジルアミンはAstatech、Bristol、Pennsylvaniaから購入した。具体的な反応条件の選択は当業者の能力の範囲内にある。
【0063】
IV.薬学的組成物
以上に提示した式IおよびIIの化合物に加えて、ヒトおよび動物における血栓症の予防および治療のための組成物は、典型的には薬学的担体、添加剤および希釈剤を含む。
【0064】
本発明の化合物の投与のための薬学的組成物は、単位用量形態(unit dosage form)として都合良く提供することができ、薬学および薬物送達の技術分野で周知である方法のいずれかによって調製しうる。いずれの方法も、活性成分を、1つまたは複数の補助成分から構成される担体と一緒に合わせる段階を含む。一般に、組成物は、有効成分を、液体担体、微細化された固体担体またはその両方と均一かつ密接に合わせた上で、必要に応じて生成物を成形して所望の製剤にすることによって調製される。薬学的組成物中に、活性目標化合物は、疾患の過程または状態に対して所望の効果を生じさせるのに十分な量で含められる。
【0065】
有効成分を含む薬学的組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性または油性の懸濁剤、分散性の散剤または顆粒剤、乳剤および米国特許出願第2002-0012680号に記載されているような自己乳化剤、硬カプセル剤または軟カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、液剤、口腔内パッチ(buccal patch)、経口ゲル、チューインガム、チュアブル錠、発泡散剤および発泡錠として、経口用途のために適した形態にあってよい。経口用途を意図する組成物は、薬学的組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練された風味の良い調製物を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤、抗酸化剤および保存料からなる群より選択される1つまたは複数の作用物質を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容される添加剤と混合された有効成分を含む。これらの添加剤は、不活性希釈剤、例えばセルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど;粒状化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸など;結合剤、例えばPVP、セルロース、PEG、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど;ならびに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどでありうる。これらの錠剤はコーティングされていなくても、または、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続的作用を与えるための公知の手法によって、腸溶性または別の様式でコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延性材料を用いてもよい。米国特許第4,256,108号;第4,166,452号および第4,265,874号に記載された手法によってそれらをコーティングして、制御放出のための浸透圧治療錠剤(osmotic therapeutic tablet)を形成することもできる。
【0066】
経口用途のための製剤はまた、有効成分が不活性の固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどと混合されている硬ゼラチンカプセル、または有効成分が水もしくは油性媒質、例えば落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油などと混合されている軟ゼラチンカプセルとして提示されてもよい。さらに、乳剤は非水性の混和性成分、例えば油などとともに調製し、モノジグリセリド、PEGエステルなどの表面活性剤によって安定化することができる。
【0067】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造のために適した添加剤と混合された活性材料を含む。そのような添加剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなど;分散剤または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えばヘプタデカエチルエノキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでありうる。水性懸濁剤はまた、1つまたは複数の保存料、例えばエチルもしくはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味剤、およびスクロースもしくはサッカリンなどの1つまたは複数の甘味剤も含みうる。
【0068】
油性懸濁剤は、有効成分を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁化することによって製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含みうる。風味の良い経口用調製物を得るために、上に示したもののような甘味剤、および香味剤を添加することもできる。これらの組成物を、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存することもできる。
【0069】
水の添加による水性懸濁剤の調製のために適した分散性の散剤または顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つもしくは複数の保存料と混合された有効成分を与える。適した分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤は、既に上述したものによって例示される。そのほかの添加剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在してよい。
【0070】
本発明の薬学的組成物が、水中油型乳剤の形態にあってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適した乳化剤は、天然ゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えばダイズ、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。乳剤はまた、甘味剤および香味剤も含みうる。
【0071】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースとともに製剤化することができる。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存料、ならびに香味剤および着色剤も含みうる。経口用液剤は、例えばシクロデキストリン、PEGおよび表面活性剤と組み合わせて調製することができる。
【0072】
薬学的組成物が、滅菌注射用の水性または油脂性の懸濁剤の形態にあってもよい。この懸濁剤は、公知の技術に従って、上述した適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化することができる。滅菌注射用の調製物は、無毒性の非経口に許容される希釈剤または溶媒中にある、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としての、滅菌注射用の溶液または懸濁液であってもよい。用いうる許容される媒体および溶媒には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油も溶媒または懸濁化媒質として慣例的に用いられる。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いうる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の調製に用いられる。
【0073】
本発明の化合物を、薬物の直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、そのため直腸内で融解して薬物を放出すると考えられる適した非刺激性添加剤と混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコールが含まれる。さらに、化合物を、液剤または軟膏による眼への送達を介して投与することもできる。さらになお、対象化合物の経皮的送達を、イオン導入パッチ(iontophoretic patch)によって達成することもできる。局所用途のためには、本発明の化合物を含む、クリーム剤、軟膏、ゼリー剤、液剤または懸濁剤などが用いられる。本明細書で用いる場合、局所適用は、含嗽剤およびうがい薬の使用も含むものとする。
【0074】
本発明の化合物を、体腔内に配置したり永続的に植え込むことのできる、さまざまな従来のグラフト、ステントグラフトを含むステント、カテーテル、バルーン、バスケットまたは他のデバイスのうち任意のものが含まれうる、医用デバイス中に付着させるために製剤化することもできる。1つの特定の例としては、本発明の化合物を、インターベンション手法によって治療された身体領域に送達することのできるデバイスおよび方法があれば望ましいと考えられる。
【0075】
例示的な態様において、本発明の阻害薬は、ステントなどの医用デバイスの内部に付着させて、身体の一部分の治療のために治療部位に対して到達することができる。
【0076】
ステントは、治療薬(すなわち、薬物)の送達媒体として用いられている。静脈内ステントは一般に、冠血管または末梢血管内に永続的に植え込まれる。ステンドのデザインには、米国特許第4,733,655号(Palmaz)、第4,800,882号(Gianturco)または第4,886,062号(Wiktor)のものが含まれる。そのようなデザインには、金属製およびポリマー製のステントの両方、ならびに自己拡張性およびバルーン拡張式ステントが含まれる。また、例えば、米国特許第5,102,417号(Palmaz)に、ならびに国際特許出願第WO 91/12779号(Medtronic, Inc.)および第WO 90/13332号(Cedars-Sanai Medical Center)、米国特許第5,419,760号(Narciso, Jr.)および米国特許第5,429,634号(Narciso, Jr.)に開示されているように、ステントを血管構造との接触部位で薬物を送達するために用いることもできる。ステントはまた、1996年11月8日に提出された米国特許出願第08/746,404号(Donovan et al.)に開示されているように、遺伝子送達のために内腔壁にウイルスを送達するためにも用いられている。
【0077】
「付着した(deposited)」という用語は、阻害薬が、当技術分野で公知の方法によってデバイス内にコーティングされる、吸着される、位置される、または別の様式で組み入れられることを意味する。例えば、阻害薬を、医用デバイスを覆うかその範囲に広がっているポリマー材料の中に埋め込んでその内部から放出させる(「マトリックス型」)か、それに周りを囲ませてそこを通して放出させる(「リザーバー型」)ことができる。後者の例では、当技術分野で公知のそのような材料を生成させるための方法の1つまたは複数を用いて、阻害薬をポリマー材料の内部に捕捉すること、またはポリマー材料とカップリングさせることができる。他の製剤においては、阻害薬は、分離可能な結合および経時的な放出によってコーティングの必要なしに医用デバイスの表面に連結させてもよく、能動的な力学的もしくは化学的過程によって除去することもでき、または植え込み部位で阻害薬を提示する永続的に固定化された形態にある。
【0078】
1つの態様において、阻害薬は、ステントなどの医用デバイスに対する生体適合性コーティングの形成時にポリマー組成物とともに組み入れられる。これらの構成要素から生じるコーティングは典型的には均質であり、植え込み用に設計された多数のデバイスのコーティングのために有用である。
【0079】
ポリマーは、所望の放出速度または所望のポリマー安定性の度合いに応じて生体安定性(biostable)または生体吸収性ポリマーのいずれであってもよいが、この態様に関しては生体吸収性ポリマーが好ましく、その理由は、生体安定性ポリマーとは異なり、それは植え込み後に長くは存在しないため、任意の有害で慢性的な局所反応を引き起こさないと考えられるためである。用いうると考えられる生体吸収性ポリマーには、ポリ(L-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル-エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ならびにフィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸などの生体分子、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、ヒドロゲルの架橋性または両親媒性のブロックコポリマー、ならびに当技術分野で公知のその他の適した生体吸収性ポリマーが非限定的に含まれる。また、例えばポリウレタン、シリコンおよびポリエステルのように慢性的組織反応性が比較的低い生体安定性ポリマーを用いることもでき、それらが溶解して医用デバイス上で硬化または重合することができるならば、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィンコポリマー;アクリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、例えばポリ塩化ビニルなど;ポリビニルピロリドン;ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテルなど;ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなど;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族、例えばポリスチレン、ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル;ビニルモノマーとそれ同士およびオレフィンとのコポリマー、例えばエチレン-メタクリレート酸メチルコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ABS樹脂およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなど;ピランコポリマー;ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール;ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノール;パルミトイル残基によって置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジン;ポリアミド、例えばナイロン66(Nylon 66)およびポリカプロラクタムなど;アルキド樹脂、ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン-トリアセテート;セルロース、酢酸セルロース、セルロースブチレート;酢酸セルロースブチレート;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;ならびにカルボキシメチルセルロースなどの他のポリマーを用いることもできると考えられる。
【0080】
ポリマーおよび半透性ポリマーマトリックスを、弁、ステント、チューブ、装具のような造形品として形成することもできる。
【0081】
本発明の1つの態様において、本発明の阻害薬は、ステントまたはステント-グラフトデバイスとして形成されたポリマーまたは半透性ポリマーマトリックスにカップリングされる。
【0082】
典型的には、ポリマーは、植え込み型デバイスの表面に対してスピンコーティング、浸漬または吹き付けによって塗布される。当技術分野で公知のそのほかの方法を、この目的のために利用することもできる。吹き付けの方法には、慣習的な方法、ならびにインクジェット型のディスペンサーを用いるマイクロデポジション法が含まれる。さらに、ポリマーをデバイスの特定の部分のみに配置するために光パターン形成を用いて、ポリマーを植え込み型デバイス上に付着させることもできる。デバイスのこのコーティングは、デバイスの周りに均一な層を与え、それはデバイスのコーティングを通してのさまざまな分析物の拡散の改善を可能にする。
【0083】
本発明の好ましい態様において、阻害薬は、医用デバイスが配置される環境中へのポリマーコーティングからの放出のために製剤化される。好ましくは、阻害薬は、溶出を制御するためのポリマー担体または層を伴ういくつかの周知の手法のうち少なくとも1つを用いて、長期的な時間枠(例えば、数カ月)にわたって、制御された様式で放出される。これらの手法のいくつかは、以前に米国特許出願第20040243225A1号に記載されており、その開示内容はすべてその全体が組み入れられる。
【0084】
さらに、例えば、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,770,729号に記載されているように、試薬およびポリマー組成物の反応条件を、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出が制御可能になるように操作することもできる。例えば、1つまたは複数のポリマーコーティングの拡散係数を、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出を制御するために調節することができる。この主題の1つの変形物においては、医用デバイスが配置される環境に存在する分析物(例えば、ポリマーのある部分の崩壊または加水分解を促進する分析物)が、ポリマー組成物の内部の1つまたは複数の構成要素に接近する能力(そして例えば、それによってポリマーコーティングからの阻害薬の放出を調節する能力)を調節するために、1つまたは複数のポリマーコーティングの拡散係数を制御することができる。本発明のさらにもう1つの態様は、それぞれが複数の拡散係数を有する複数のポリマーコーティングを有するデバイスを含む。本発明のそのような態様において、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出は、その複数のポリマーコーティングによって調節することができる。
【0085】
さらにもう1つの態様において、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出は、1つまたは複数の内因性もしくは外因性化合物の存在、またはポリマー組成物のpHといった、ポリマー組成物の特性の1つまたは複数を調節することによって制御される。例えば、ポリマー組成物のpHの低下に応じて阻害薬を放出するように、ある種のポリマー組成物を設計することができる。または、過酸化水素の存在に応じて阻害薬を放出するように、ある種のポリマー組成物を設計することもできる。
【0086】
V.血栓症ならびにPK依存性の状態および疾患を治療する方法
さらにもう1つの局面において、本発明は、それを必要とする対象における血栓症を治療する方法を提供する。1つの態様において、本方法は、PK酵素を式IまたはIIの化合物と接触させることによってPKの活性を阻害する段階を含む。もう1つの態様において、本方法は、対象に式IまたはIIの化合物を投与する段階を含む。対象はヒトまたは哺乳動物でありうる。さらにもう1つの態様において、本方法は、対象に式IまたはIIの化合物の治療的有効量を投与する段階を含む。1つの態様において、投与は心筋梗塞(MI)または虚血性脳卒中の後の臨床的状況下にある患者に対して行われる。1つの場合には、本方法は、線維素溶解薬による治療後にPK阻害薬を投与する段階を含む。
【0087】
効率的なFXII活性化のためにはPK活性が必要であるため、PKが完全に欠損している個体は、内因性経路を介したインビトロ凝固の障害を呈する。1つの態様において、本発明の化合物は、PKを活性を阻害するために用いうるPKの阻害薬である。もう1つの態様においては、MAB 13G11などの抗PKモノクローナル抗体(MAB)が、内因性経路を介した凝固を阻害するために用いられる。一般に、こうした方法は、PKを、本明細書において提供されるような1つまたは複数のPK阻害薬またはPK特異的MABの十分でしかも有効な量と、水溶液中にあるPK酵素の存在下、および通常であればリガンドとPKとの結合に適する条件下で接触させる段階を含む。PKは懸濁液中に存在してもよく(例えば、単離された膜または細胞調製物中)または培養もしくは単離された細胞内に存在してもよい。
【0088】
好ましくは、酵素と接触されるPK阻害薬の量は、例えば比色アッセイまたは蛍光基質切断アッセイなどを用いて測定されるインビトロでのPK活性を阻害するのに十分であるべきである。
【0089】
なおもう1つの局面において、本発明は、それを必要とする対象におけるPK依存性の疾患または状態を治療する方法を提供する。本方法は、対象に式IまたはIIの化合物を投与する段階を含む。
【0090】
1つのさらなる局面において、本発明は、それを必要とする対象における血栓症を治療する方法を提供する。本方法は、対象に、血漿カリクレイン特異的モノクローナル抗体(MAB)、例えばMAB 13G11を投与する段階を含む。
【0091】
PK阻害薬によって治療しうる状態:
本発明は、内因性経路によるトロンビンの形成を阻害し、それ故に新たな病原性血栓形成(再閉塞)のリスクを低下させるとともに、線維素溶解レジメンとの補助療法として投与された場合には線維素溶解で誘導される再灌流も改善する、阻害薬を提供する。本発明の化合物を用いて治療しうる疾病状態には、虚血性脳卒中、脳卒中、炎症、疼痛、急性心筋梗塞(MI)、深部静脈血栓症(DVT)、線維素溶解治療(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ)後の状態からの凝固、狭心症、血管性浮腫、敗血症、関節炎、心肺バイパス術中の失血、炎症性腸疾患、糖尿病およびその合併症ならびに網膜症が非限定的に含まれる。
【0092】
例えば、血管性浮腫状態の患者において、低分子ポリペプチドPK阻害薬(DX-88)(エカランチド)は、HAEの患者における浮腫を緩和する(Williams, A. et al. (2003) Transfus. Apher. Sci. 29: 255-258;Schneider, L. et al. Immunol. June 6, 2007 [出版前の電子出版];およびLevy, J.H. et al. (2006) Expert Opin. Invest. Drugs 15: 1077-1090を参照)。ブラジキニンB2受容体拮抗薬であるイカチバントも、HAEの治療に有効である(Bork, K. et al. (2007) J. Allergy Clin. Immunol. 119: 1497-1503を参照)。PKはブラジキニンを生成させるため、PKの阻害はブラジキニン産生を阻害すると考えられる。
【0093】
例えば、線維素溶解治療(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ)に起因する凝固では、線維素溶解を受けている患者においてより高レベルのPKが見いだされる(Hoffmeister, H.M. et al. (1998) J. Cardiovasc. Pharmacol. 31: 764-72)。血漿および血液中ではプラスミンで媒介される内因性経路の活性化が起こることが示されており、この活性化は内因性経路の構成要素のいずれかが欠損した個体からの血漿では顕著に減弱していた(Ewald, G.A. et al. (1995) Circulation 91: 28-36を参照)。
【0094】
急性MIを有する個体では、活性化PKおよびトロンビンのレベルの上昇が見いだされている(Hoffmeister, H.M., et al. (1998) Circulation 98: 2527-33を参照。
【0095】
DX-88は、虚血性脳卒中の動物モデルで脳浮腫、梗塞体積および神経学的欠陥を減少させている(Storini, C. et al. (2006) J. Pharm. Exp. Ther. 318: 849-854を参照)。C1-INHはMCAOのマウスモデルで梗塞サイズを減少させている(De Simoni, M.G. et al. (2004) Am. J. Pathol. 164: 1857-1863;およびAkita, N. et al. (2003) Neurosurgery 52: 395-400を参照)。B2受容体拮抗薬はMCAO動物モデルにおいて梗塞体積、脳腫脹および好中球蓄積を減少させること、ならびに神経保護的であることが見いだされている(Zausinger, S. et al. (2003) Acta Neurochir. Suppl. 86: 205-207;Lumenta, D.B. et al. (2006) Brain Res. 1069: 227-234;Ding-Zhou, L. et al. (2003) Br. J. Pharmacol. 139: 1539-1547を参照)。
【0096】
心肺バイパス術中の失血に関しては、CABG中に接触系(contact system)が活性化されること(Wachtfogel, Y.T. (1989) Blood 73: 468を参照)、およびCPB中の接触系の活性化は血漿ブラジキニンの最大20倍の上昇をもたらすことが見いだされている(Cugno, M. et al. (2006) Chest 120: 1776-1782;およびCampbell, D.J. et al. (2001) Am. J. Physiol. Reg. Integr. Comp. Physiol. 281: 1059-1070を参照)。Dyax社は、DX-88が輸血のために必要な血液の容積を減少させたことを報告している(www.dyax.comを参照)。
【0097】
PK阻害薬であるP8720およびPKSI-527も、関節炎のラットモデルにおける関節腫脹を減少させることが見いだされている(De La Cadena, R.A. et al. (1995) FASEB J. 9: 446-452;Fujimori, Y. (1993) Agents Action 39: 42-48を参照)。また、関節炎の動物モデルにおける炎症に接触系の活性化が伴うことも見いだされている(Blais, C. Jr. et al. (1997) Arthritis Rheum. 40: 1327-1333を参照)。
【0098】
さらに、血漿カリクレイン阻害薬P8720は、IBDの急性および慢性のラットモデルにおいて炎症を軽減することが見いだされている(Stadnicki, A. et al. (1998) 12: 325-333;Stadnicki, A. et al. (1996) Dig. Dis. Sci. 41: 912-920;およびDe La Cadena, R.A., et al. (1995) FASEB J. 9: 446-452)。急性および慢性の腸炎症では接触系が活性化される(Sartor, R.B. et al. (1996) Gastroenterology 110: 1467-1481を参照)。B2受容体拮抗薬、高分子量キニノーゲンまたはキニノーゲンレベルの低下は、IBDの動物モデルにおける臨床的病態を軽減させている(Sartor, R.B. et al. (1996) Gastroenterology 110: 1467-1481;Arai, Y. et al. (1999) Dig. Dis. Sci. 44: 845-851;およびKeith, J.C. et al. (2005) Arthritis Res. Therapy 7: R769-R776を参照)。
【0099】
PKおよびFXIIの阻害薬であるH-D-Pro-Phe-Arg-CMK、ならびに生理的阻害物質(C1-INH)は、複数の臓器において血管透過性を低下させ、動物でLPSまたは細菌で誘発される敗血症を軽減することが見いだされている(Liu, D. et al. (2005) Blood 105: 2350-2355;Persson, K. et al. (2000) J. Exp. Med. 192: 1415-1424)。C1-INHを投与された敗血症患者では臨床的改善が観察されている(Zeerleder, S. et al. (2003) Clin. Diagnost. Lab. Immunol. 10: 529-535;Caliezi, C., et al. (2002) Crit. Care Med. 30: 1722-8;およびMarx, G. et al. (1999) Intensive Care Med. 25: 1017-20を参照)。敗血症の致死症例では接触活性化の度合いがより高いことが見いだされている(Martinez-Brotons, F. et al. (1987) Thromb. Haemost. 58: 709-713;およびKalter, E.S. et al. (1985) J. Infect. Dis. 151: 1019-1027を参照)。
【0100】
糖尿病患者、特に増殖性網膜症を有する患者ではプレPKレベルがより高く、フルクトサミンレベルと相関することも見いだされている(Gao, B.-B., et al. (2007) Nature Med. 13: 181-188;およびKedzierska, K. et al. (2005) Archives Med. Res. 36: 539-543)。プレPkはまた、糖尿病患者で上昇しており、知覚運動性ニューロパチーを有する患者で最も高度であることも見いだされている(Christie, M. et al. (1984) Thromb. Haemostas. (Stuttgart) 52: 221-223)。プレPKレベルは糖尿病患者で上昇しており、血圧上昇と関連がある。プレPKレベルはアルブミン排泄速度と独立に相関し、マクロアルブミン尿症を有する糖尿病患者で上昇しており、このことはプレPKが進行性腎症のマーカーとなる可能性を示唆する(Jaffa, A.A. et al. (2003) Diabetes 52: 1215-1221を参照)。B1受容体拮抗薬は、ストレプトゾシンが投与されたラットにおける血漿漏出を減少させることが見いだされている(Lawson, S.R. et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 514: 69-78)。B1受容体拮抗薬はまた、ストレプトゾシン投与マウスが高血糖症および腎機能不全を発症するのも予防する(Zuccollo, A. et al. (1996) Can. J. Physiol. Pharmacol. 74: 586-589を参照)。
【0101】
本発明はまた、虚血性脳卒中の治療についての新たなパラダイムも提示する。現在の治療には大きな限界がある。慣例的に、急性虚血性脳卒中は組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)を用いて治療されている。この薬物は脳卒中に付随する悪影響のいくつかを予防することができるが、これが可能なのは、それがイベントから最初の3時間の内に静脈内投与され、しかも脳内に出血がない場合のみである。そのように治療域(therapeutic window)がわずかであるため、有効な治療を受けられるのは脳卒中患者のわずかな割合(〜3%)に過ぎない。近年、脳卒中の研究は、脳卒中による障害に対する脳の抵抗性をより高めうる化合物である神経保護薬を開発することに的を絞っている。本発明の化合物は、虚血カスケードを停止させる能力を有する。
【0102】
本明細書において提供される治療方法は一般に、本明細書において提供される1つまたは複数の化合物の有効量の、例えば経口的、経鼻的または非経口的な、患者への投与を含む。適した患者には、本明細書において特定された障害または疾患に罹患している、またはそれに対する感受性のある(すなわち、予防的治療)患者が含まれる。本明細書に記載した治療のための典型的な罹患生物には、哺乳動物、特に霊長動物、特にヒトが含まれる。他の適した罹患生物には、飼い慣らされた伴侶動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなど、または家畜、例えばウシ、ブタ、ヒツジなどが含まれる。
【0103】
一般に、本明細書において提供される治療方法は、患者に対して、本明細書において提供される1つまたは複数の化合物の有効量を投与する段階を含む。1つの好ましい態様において、本発明の化合物は、好ましくは、患者(例えば、ヒト)に対して経口投与される。有効量は、PK受容体活性を調節するのに十分な量、および/または患者が呈する症状を軽減もしくは緩和するのに十分な量であってよい。好ましくは、投与される量は、インビトロでPK受容体を検出可能に阻害するほど十分に高い血漿中濃度の化合物(または化合物がプロドラッグである場合にはその活性代謝産物)を生成するのに十分である。治療レジメンは、用いる化合物および治療しようとする個々の状態によって異なる可能性がある;ほとんどの障害の治療のためには、1日4回またはそれ未満の投与頻度が好ましい。一般に、1日2回の投薬レジメンがより好ましく、1日1回の投薬が特に好ましい。しかし、個々の患者に対する具体的な用量レベルおよび治療レジメンが、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事内容、投与時間、投与の経路、排泄速度、薬物併用(すなわち、患者に対して投与されている他の薬物)および治療を受ける個々の疾患の重症度、ならびに処方に当たる医師の判断を含む、種々の要因に依存することは理解されるであろう。一般に、有効な治療法を得るために十分な最小用量の使用が好ましい。患者は一般に、治療または予防しようとする状態に適した医学的または獣医学的な基準を用いて、治療上の有効性に関してモニターすることができる。
【0104】
本発明の化合物は、毎時間、毎日、毎週または毎月を含む、必要に応じた頻度で投与することができる。投薬の頻度は、用いる化合物および治療される個々の疾患によっても異なる。しかし、ほとんどの障害の治療のためには、1日4回、1日3回またはそれ未満の投薬レジメンが好ましく、1日1回または1日2回の投薬レジメンが特に好ましい。本発明の薬学的方法に用いられる化合物は、1日に約0.0001mg/kg〜約1000mg/kgという初回投与量で投与される。約0.01mg/kg〜約500mg/kgまたは約0.1mg/kg〜約200mg/kgまたは約1mg/kg〜約100mg/kgまたは約10mg/kg〜約50mg/kgという範囲の1日量を用いることができる。しかし、投与量は、患者の必要、治療される状態の重症度、および用いられる化合物に応じて異なりうる。例えば、投与量は、個々の患者において診断された疾患の型および病期を考慮して経験的に決定することができる。本発明の文脈において、患者に対して投与される用量は、患者において有益な治療反応を時間と共に生じさせるのに十分であるべきである。用量のサイズは、個々の患者における個々の化合物の投与に伴う有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定されると考えられる。しかし、個々の患者に対する具体的な用量レベルが、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事内容、投与時間、投与の経路、排泄速度、薬物併用(すなわち、患者に対して投与されている他の薬物)および治療を受ける個々の疾患の重症度、ならびに処方に当たる医師の判断を含む、種々の要因に依存することは理解されるであろう。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、医師の技術の範囲内である。一般に、治療は、化合物の至適用量よりも少ない、より低用量で開始される。その後に、投与量を、状況下での至適効果に達するまで少しずつ増量していく。必要であれば、便利なように、1日の総投与量を分割して1日のうちに一部ずつ投与してもよい。投薬は、治療に当たる医師の決定により、毎日または隔日に行うことができる。また、投薬を、皮下のカプセル、サシェ剤もしくはデポー剤の使用を通じて、またはパッチを介して、より長い期間(数週、数カ月または数年)にわたって定期的または連続的に行うこともできる。
【0105】
薬学的組成物は、患者に対して、局所的、非経口的、静脈内、皮内、筋肉内、結腸内、直腸内または腹腔内を含む、さまざまなやり方で投与することができる。好ましくは、薬学的組成物は非経口的、局所的、静脈内、筋肉内または経口的に投与される。
【0106】
また、式IまたはIIの化合物を、別の治療薬または診断薬と併用して投与することもできる。
【0107】
VI.実施例
以下の略語は、実施例において、さらには本発明の説明全体を通じて用いられる。
HOBt:N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DMSO:ジメチルスルホキシド
AmBZ:アミジノベンジルアミン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
【0108】
実施例1
PK特異的阻害薬の合成
本発明の化合物の合成は、PS-カルボジイミド(Biotage, Inc., Charlottesville, Virginiaより入手)およびBiotage社により供給された合成プロトコールを用いた、市販のカルボン酸(ASDI, Inc.またはEnamine, Inc., Kiev, Ukraineのいずれかより入手)と4-アミジノ-ベンジルアミン(4-AmBz、Astatech, Inc., Bristol, Pennsylvaniaより入手)との間の単一のアミド結合の形成によって行った(図面の図1を参照)。各合成に関しては、フリット入り(fritted)の共栓付きポリプロピレン製反応容器内で、100μmolのPS-カルボジイミドを、個別のカルボン酸(75μmol)、4-AmBz.2HCl(75μmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt;75μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;75μmol)と、4mlの40%ジメチルスルホキシド(DMSO)/60%ジクロロメタン(DCM)中で混合し、Adams Nutatorにて室温で48〜72時間混合する。濾過して、その後にDCMを気化によって除去することによって生成物を入手する。残った非カップリング性4-AmBZの残存量を、ニンヒドリンを用いたその遊離アミン官能性の定量によって測定することによって判定されるように、カルボン酸と4-AmBzとの95%を上回るカップリングがこれらの条件下で起こる。続いて、本発明の化合物を、Waters WCXカートリッジを用いて精製し、およそ50μmolの化合物を、4mlの50% DMSO-50%水中にて、250mgのWaters WCXカートリッジ(5mlずつの、MeOH、続いて水で予洗)に適用する。続いてカートリッジを20mlの5% MeOH-95%水で、その後に5mlのMeOHで洗浄する。続いてカラムを10mlの5% HCOOH-95% MeOHで溶出させる。Savant SpeedVac内での気化の後に、95%を上回る純度で化合物が得られる。生成物の完全性は、Shimadzu VP HPLCシステムによる分離後に、Applied Biosystems/MDS SCIEX Q-STAR質量分析計を用いた生成物の質量の分析用LC-MS/MS測定によって判定する。
【0109】
この手順を用いて調製および精製された特定の化合物を、表1および2に列記している。
【0110】
実施例2
PK阻害薬の阻害試験
ヒト血漿カリクレイン(PK)は、Haemtech Technologies(Essex Junction, Vermont)から入手した。PKの酵素活性は、合成ペプチド基質H-D-Pro-Phe-Arg-pNA(Bachem, Inc., Switzerland)を用いて、酵素で基質を切断し、その結果起こるA405の増加をMolecular Devices Vmax Kinetic Microplate Readerを用いて測定することでアッセイした。PKの阻害されていない(対照)活性は、190μlのPK溶液(1nM、0.05 M HEPES、pH 7.5、0.01% Triton X-100中)を、個々のマイクロタイタープレートウェル内にある10μlのH-D-Pro-Phe-Arg-pNA(2mM、DMSO中)に添加し、振盪によって直ちに混合して、A405の増加の速度を120〜180秒かけて決定することによって決定した。並行して、本発明の化合物を、最終的に200μlの反応混合物中にて0.01〜10μMの間の最終濃度が達成されるように別のウェル内で合成基質と混合して、190μlのPK溶液の添加によって反応を開始させる。化合物の存在下での切断速度の低下によってPK活性の阻害が表され、相互作用の見かけの阻害定数は以下の式を用いることによって決定することができる‐
Ki,app=[I]/(PKControl/PKI-1)
式中、[I]は阻害性化合物の濃度であり、PKControlは阻害されていないPKによる基質切断の速度であり、PKIは阻害性化合物の存在下でのPKによる基質切断の速度である。
【0111】
相互作用の補正Kiは、算出されたKi,appから、以下の通りに得ることができる‐
Ki=Ki,app/([S]/Km+1)
式中、[S]は合成基質の濃度であり、KmはPKに対する合成基質のミカエリス定数であり、この場合にはこれらの条件下で0.15mMであることが実験的に決定されている。
【0112】
表4は、以下の式を有する特定の化合物に関する阻害定数を列記している。

【0113】
(表4)阻害定数

*=4-アミジノベンジルアミド部分に対する結合箇所
【0114】
ASP-440およびASP-465の阻害効果
精製されたヒトPK、ならびに内因性および外因性の両方の凝固経路内の他の酵素に対するASP-440およびASP-465の阻害効果が表5に示されている。数値は、適した合成基質(S-2302またはChromozym TH)に対する所与の酵素のアミド分解活性に対する阻害があればその程度を、種々の量のASP-440またはASP-465の存在下で決定することで得られた、Ki値(μM)として表されている。試験したいずれの化合物の最高濃度も10μMであった。表5に示された結果は、ASP-440およびASP-465がPKの強力な阻害薬であり、ASP-465がASP-440よりも3倍強力であることを実証している。さらに、ASP-440は試験した他の酵素のすべてに対して100倍を上回る選択性を示し、ASP-440は試験した他の酵素のすべてに対して300倍を上回る選択性を示す。
【0115】
(表5)PK阻害薬の特異性プロファイル(Ki値)

【0116】
実施例3
PK阻害薬の抗凝固活性の決定
内因性経路の活性化に即したトロンビン生成、フィブリン切断およびその結果として起こるフィブリン塊形成に対するPKの役割を明らかにするために、市販のアクチンFS試薬(Dade-Behring)を用いて、内因性経路の接触活性化を惹起させた。透明ポリスチレン製96ウェルマイクロプレートの個々のウェル内で、ヒト血漿(50μl)を、15mM CaCl2を加えたアクチンFS(50μl)と混合し、フィブリン切断および血餅形成の時間的推移および程度を、kinetic microplate reader(Molecular Devices Vmax)においてA405を時間の関数としてモニターすることによって決定した。血餅形成は、A405の見かけの増加としての濁度記録をもたらした。これは各実験の終了時に視覚的に検証した。凝固までの時間は、ΔA405の1/2最大に達するまでの時間と定義した。データ点はすべて、3回ずつの決定(n=3)の平均±SDとしてプロットされている。
【0117】
これらの条件下で、PK欠損性血漿(PKレベルがGeorge King Biomedical, Overland Park, Kansasから得られた正常値の1%未満)は、アクチンFS添加後に凝固し、血液凝固時間は正常血漿でみられたものの3倍より長かった(図1)。このため、これはPK阻害によって達成しうる、ヒト血漿中にて接触で活性化される凝固の最大阻害量を指し示している。続いて、本発明の化合物が接触で活性化された凝固を阻害する能力を、血漿-アクチンFS混合物に化合物をさまざまな濃度(0.1〜10μM)で添加して凝固時間を決定し、化合物を10μMで達成された接触で活性化された凝固の阻害の程度によってランク付けすることによって測定することができる。例えば、正常血漿に対するASP-440またはASP-465の1.1μM、3.3μMまたは10μMでの添加は、凝固までの時間を用量依存的に16〜134%延長させ、各濃度でASP-465は凝固までの時間をASP-440よりも延長させた(図2)。
【0118】
実施例4
プラスミンの血栓形成効果は内因性経路によって媒介され、血漿カリクレイン(PK)を必要とする。
実施例3で用いた血液凝固のパラダイムでは、血漿を市販の配合アクチンFSと1:1に混合する。したがって、血漿の量をインキュベーション混合物の50%に一定に保ちながら添加しうるアクチベーターの最大量は50%(v/v)アクチンFSである。正常血漿における血液凝固時間はインキュベーション混合物中に存在するアクチンFSの量に依存するため、これらの条件は定義上、このパラダイムにおいて内因性経路によって媒介される最短の凝固時間につながると考えられる。接触アクチベーターの量を減らすことは、活性化されるPKの量の減少を導き、それ故に生成されるトロンビンの量を減少させ、凝固までの時間を遅くする(非提示データ)。このため、外因性プラスミンの添加(線維素溶解状況を模倣)が凝固までの時間を短縮しうるか否かを明らかにするために、血漿(最終的なインキュベーション混合物の50%に一定に保たれる)に添加するアクチンFS試薬の量を、6.25%(最終的なv/v)に到達するように減らした。このレベルは対照凝固時間を有意に延長させ、それ故により短い凝固時間を測定するための実験的ウィンドウを与えた。
【0119】
50%血漿-6.25%アクチンFSインキュベーション混合物に対する100または200nMでの外因性プラスミンの添加は、凝固までの時間の用量依存的な短縮をもたらした(相対凝固時間は1.00から0.74〜0.65に低下した、図3参照)。アクチンFSの非存在下で血漿に200nMで添加したプラスミンでは、4.0という極めて遅い相対凝固時間が示され(非提示データ)、このことはプラスミンが意味のある血栓形成効果を及ぼすには接触アクチベーターの存在が必要であったことを表している。これは、プラスミンが少量の接触アクチベーターの存在下で血漿に添加された時に血栓形成効果を及ぼしうることの直接的な証拠となる。
【0120】
他の点では同一な実験条件下でのPK欠損性血漿に対する200nMのプラスミンの添加は、正常血漿で認められるものよりも80%長い凝固時間をもたらし(図4)、このことはプラスミンが血漿中でその血栓形成効果を発揮するためにはPKの存在が必要なことを実証している。200nMプラスミンの存在下における正常血漿に対するASP-440(10μM)またはASP-465(3.3または10μM)の添加(図4)は、凝固までの時間を36%(ASP-440)または36〜75%(ASP-465)延長させた。したがって、PK特異的阻害薬は、血漿中にてプラスミンで媒介される血栓形成効果を効果的に阻害し、ASP-465は3.3μMでASP-440が10μMで示したのと同程度の延長を示した。表2に示されているように、PKに対するASP-465のインビトロKiはASP-440のそれのちょうど3分の1であり、これはプラスミンで活性化される凝固を阻害するその効力が3倍高いことが観察されていることに一致する。重要なことに、10μMのASP-465は(図4)、プラスミンで誘導される、PKに起因する凝固までの時間の短縮をほぼ完全にブロックしており、このことはこの臨床的に重要なパラダイムにおける低分子PK阻害薬の有用性を実証している。
【0121】
実施例5
PKに対する特異的MAbは、接触で活性化される凝固およびプラスミンで活性化される血栓形成を阻害する
以前の実施例により、接触で活性化される内因性経路を介した凝固に対して、ならびにプラスミンで活性化される血栓形成に対して、PKが決定的に重要なことが実証された。PKの役割は、PKの欠損症を評価すること、ならびにその酵素の2種類の特異的阻害薬を用いることによって確立されている。特異的モノクローナル抗体(MAb)を介してPKをブロックすることが、本明細書に記載した2つのパラダイムのいずれかにおける凝固の阻害にも有効であり、それ故に本発明のさらなる検証となるか否かを明らかにするために、PKに対して特異的であることが以前に特徴づけられているMAb 13G11(Veloso et al, (1987) Blood, 70, 1053-1062)を、実施例2および3に記載した凝固パラダイムのそれぞれにおいて調べた。MAb 13G11(GeneTex, San Antonio, Texasから入手)を、それぞれのパラダイムにおいて、50%血漿-50%アクチベーター混合物に最終濃度0.036mg/mlで添加した。これは、Veloso et al, (1987), Blood, 70, 1053-1062の文献参照によれば、血漿-アクチベーター混合物中に存在すると考えられるPKの量のおよそ2倍のモル過剰と見積もられる。対照試料は、アイソタイプを一致させた0.036mg/mlの対照IgG1(同じくGeneTexから入手)で処理した。血漿を50%アクチンFSを用いて活性化したところ(図5)、MAb 13G11は凝固までの時間を100%延長させ(PK欠損性血漿で得られた最大効果の45%)、血漿を200nMプラスミン+6.25%アクチンFSを用いて活性化した場合には(図6)、凝固までの時間を32%延長させた(PK欠損性血漿で得られた最大の効果の40%)。したがって、PKに対して高度に特異的なMAbは、接触活性化で誘発される内因性経路によって媒介される凝固をブロックするのに同等に有効であり(±プラスミン)、PKの2倍モル過剰では、高度に特異的なPK阻害薬ASP-440の10μMと同程度に有効である。
【0122】
本明細書において参照したすべての特許、特許出願、刊行物および提示物は、その全体が参照により組み入れられる。本明細書において引用した参考文献と本明細書の教示との間に対立があれば、後者を優先することで解決されるものとする。同様に、単語または語句に関して当技術分野で認識されている定義と、本明細書において提示されている単語または語句の定義との間が対立があれば、後者を優先することで解決されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩:

式中、Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環であり;
添字mは0から5までの整数であり;
各Raはシクロアルキル、(C1-C8)ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1、および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルであり;
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;
Qa、QbおよびQcはそれぞれ、N、S、OおよびC(Rq)からなる群より独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキル、ハロおよびフェニルからなる群より独立に選択され、ならびにQa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環であり;
YはCおよびNからなる群より選択されるメンバーであり;
Arが結合である場合にはmは1であり;
Arが芳香環である場合にはmは0〜5の整数である。
【請求項2】
Arがベンゼン、ピリジン、およびピリミジンからなる群より選択される芳香環である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Arが結合であり、かつmが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
以下の式Iaを有する、請求項1記載の化合物:


【請求項5】
Lが結合であり、かつYがNである、請求項2記載の化合物。
【請求項6】
Lが結合であり、YがNであり、かつArがベンゼン環である、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
Qa、Qb、およびQcがそれぞれ独立にC(Rq)である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
QbがNである、請求項6記載の化合物。
【請求項9】
YがCであり、QaがSであり、かつArがフェニルまたはピリジルから選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項10】
QcがCである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
LがCH2であり、かつYがNである、請求項2記載の化合物。
【請求項12】
QaがCである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
QbおよびQcが、NおよびC(Rq)からなる群よりそれぞれ独立に選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Arがベンゼンまたはピリジンである、請求項12記載の化合物。
【請求項15】
Lが結合であり、かつYがCである、請求項2記載の化合物。
【請求項16】
QbがOであり、かつQaおよびQcがそれぞれC(Rq)である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
LがSO2であり、かつYがNである、請求項2記載の化合物。
【請求項18】
各Raが、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、アリール、アリール(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-CN、-C(=O)(C1-C8アルキル)、-(C=O)NH2、-(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-C(=O)N(C1-C8アルキル)2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)O(C1-C8アルキル)、-O(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-SO2(C1-C8アルキル)、-NHSO2(C1-C8アルキル)、および-SO2NH(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項19】
各Raが、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)、-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
Raがハロゲンである、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
以下からなる群より選択される、請求項2記載の化合物:


【請求項22】
以下の式IIを有する化合物およびその薬学的に許容される塩:

式中、添字mは0から5までの整数であり;
添字nは0から4までの整数であり;
添字qは0から1までの整数であり;
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;
RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、(C1-C8)ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2、および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2は独立にアルキルであり;
qが0である場合にはZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルであり;
qが1である場合にはZはNである。
【請求項23】
添字qが0であり、かつZがO、S、およびNHからなる群より選択される、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
添字nが0から2までの整数である、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
ZがOまたはSである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
添字qが1である、請求項22記載の化合物。
【請求項27】
Lが-CH2-および-SO2-からなる群より選択される、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
添字mが0である、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
RbおよびRcが、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群よりそれぞれ独立に選択される、請求項22記載の化合物。
【請求項30】
以下からなる群より選択される、請求項22記載の化合物:


【請求項31】
請求項1〜30のいずれか一項記載の化合物を、薬学的に許容される添加剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項32】
対象に、請求項1〜30のいずれか一項記載の化合物を投与する段階を含む、それを必要とする対象において血栓症を治療する方法。
【請求項33】
対象に、請求項1〜30のいずれか一項記載の化合物を投与する段階を含む、それを必要とする対象において血漿カリクレイン依存性の疾患または状態を治療する方法。
【請求項34】
血漿カリクレイン依存性の疾患または状態が、脳卒中、炎症、疼痛、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症(DVT)、線維素溶解治療後の状態、狭心症、血管性浮腫、敗血症、関節炎、心肺バイパス術中の失血、炎症性腸疾患、糖尿病、およびその合併症からなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
対象に、血漿カリクレイン特異的モノクローナル抗体を投与する段階を含む、それを必要とする対象において血栓症を治療する方法。
【請求項36】
モノクローナル抗体がMAB 13G11である、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−545611(P2009−545611A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522995(P2009−522995)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/074761
【国際公開番号】WO2008/016883
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509031073)アクティベサイト ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】