説明

表面検査方法及び表面検査装置

【課題】 被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、照射された被検査面を撮像する撮像部とからなる撮像ユニット、被検査面を撮像ユニットに対して相対移動させる搬送機構、及び、得られた撮像画像に基づいて被検査面の欠陥を検知する欠陥検知手段を備えている表面検査装置を、比較的大きな寸法の欠陥でも欠陥として捕え易いように改良する。
【解決手段】 欠陥検知手段が、撮像画像における孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する孤立点抽出部を備え、検査光の所定パターンが、所定寸法の暗部Dと、暗部Dを外周から包囲する明部Lとからなる単位発光面Uを相対移動の方向と交差する方向に多数隣接配置した発光面列FRと、発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部DRとを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、前記照明部によって照射された被検査面を撮像可能な撮像部とで撮像ユニットを構成し、被検査面を前記撮像ユニットに対して相対移動させながら、得られた前記撮像画像に含まれる孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する表面検査方法、及び、同方法に用いる表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の検査方法及び装置として、自動車ボディの塗装面の検査に用いられる技術を挙げることができる。そのような表面検査にあっては、被検査面としての塗装面に存する凹凸や傷などが検査対象の欠陥となる。
そして、先行技術文献情報として下記に示す特許文献1には、検査光の特定パターンとして所定の横幅を備えたストライプ状の明暗パターンを用い、被検査面と撮像ユニットのいずれかを時間の経過と共に移動させることで塗装面の欠陥を検査する技術が記されている。この特許文献1に記された検査装置では、明のストライプ部位では暗く、暗のストライプ部位では明るく撮像される画像を欠陥画像の候補として捕え、撮像画像に存在する欠陥候補点の中から被検査面の相対移動量と比例して移動するものが欠陥と判定される。しかし、この従来技術では、検査光がストライプ状の明暗パターンであるため、照射光の回り込みは、ストライプ状の明暗パターンを横断する方向でしか発生しない。その結果、例えばこのストライプパターンのストライプ方向(ストライプの延長方向と同方向)に沿って延びた特に小さい傷などは、検査光によって十分に照射され難いため、欠陥として捕らえ難いという問題があった。
【0003】
そこで、本願の出願人は、上記の問題を解決するために、技術文献(特願2004−105450)中にて、図7に示すように、所定寸法の暗部D′と暗部D′を外周から包囲する明部L′とからなる単位発光面U′を多数隣接配置して、これを検査光の特定パターンとする技術を提案している。この技術文献に記された検査装置では、塗装面に存在する欠陥は、六角形などのリング状に連続配置された発光素子群によって外周から照射されて、撮像画像内の本来暗部である領域内に、発光素子自身の連続した高輝度像から孤立した孤立点として明るく浮かび上がる。従って、傷や凹凸部はそれら欠陥自身の延長方向と無関係に欠陥候補と捕えられ、欠陥の検出が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−145906号公報(図5、図9、図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の技術文献に記された検査装置では、LED等の発光素子によって形成される明部L′と暗部D′とからなる単位発光面U′が上下左右に連続配置されて検査光の特定パターンP′を構成しているので、図8に示すように、撮像部によって撮像された画像には、単位発光面の輪郭部の像の一部は、被検査面の相対移動方向に沿ってジグザグに画像の左端から右端まで横向きに連続的に延びた連続線Cを形成する結果となっている。従って、図8に示す欠陥F1のように単位発光面の面積に対して十分に小さい欠陥の場合は、相対移動方向に伴って必ずいずれかのタイミングで全ての検査光の高輝度像から孤立した高輝度点として現れるので、欠陥の位置と無関係に孤立点として撮像レンズ14aによって捕えられる。しかし、例えば図に示す欠陥F2のように、直径が単位発光面の二分の一前後など寸法の大きな欠陥の場合、その高輝度像が常に前記ジグザグの連続線Cの一部と接するために孤立点として捕えられ難いという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、前述の技術文献が提案している検査装置ではなお認識され難かった、形状等の異なる欠陥、例えば比較的大きな寸法の欠陥でも欠陥として捕え易い、改良された表面検査方法及び表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、前記照明部によって照射された被検査面を撮像可能な撮像部とで撮像ユニットを構成し、被検査面を前記撮像ユニットに対して相対移動させながら、得られた前記撮像画像に含まれる孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する表面検査方法であって、
検査光の前記特定パターンを、所定寸法の暗部と前記暗部を外周から包囲する明部とからなる単位発光面を前記相対移動の方向と交差する方向に複数隣接配置した発光面列と、前記発光面列と隣接した位置で前記発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部とで構成し、
前記撮像部によって撮像される前記発光面列の画像に基づいて第1の欠陥を検出し、前記撮像部によって撮像される前記列状暗部の画像に基づいて前記第1の欠陥と異なる第2の欠陥を検出するように構成した点にある。
【0008】
したがって、本発明の第1の特徴構成による表面検査方法では、最も頻繁に発生し得る小サイズの欠陥は、発光面列に位置するいずれかの単位発光面内に進入した時に高輝度の孤立点として捕えられ、他方、小サイズの欠陥とは異なり、単位発光面内では孤立点として捕えられない例えば大サイズの欠陥は、発光面列を外れ、発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部内に進入した時に、単位発光面の輪郭部を構成するいずれの光(または光源)からも離間するので、この時に高輝度の孤立点として捕えられる。これによって、第1の欠陥から、第1の欠陥とは形状または寸法が異なる第2の欠陥まで、種々の欠陥を検出可能となる。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、前記相対移動方向に沿った方向に前記発光面列が連続配置された前記特定パターンを形成可能なように、多数の発光素子を隣接配置し、前記発光素子の一部を適宜消灯操作する点にある。
したがって、本発明の第2の特徴構成による表面検査装置では、照明部の装置自身としては、前記技術文献に記載されているような、全面に発光素子が付いた従来の装置をそのまま利用することができる。さらに、この照明部の発光素子の一部を適宜消灯操作することで、単位発光面や暗部の面積及び形状を比較的自由に設定変更できて好都合である。
【0010】
また、本発明の第3の特徴構成は、被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、前記照明部によって照射された被検査面を撮像可能な撮像部とからなる撮像ユニット、前記被検査面を前記撮像ユニットに対して相対移動させる搬送機構、及び、得られた前記撮像画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検知する欠陥検知手段を備えている表面検査装置であって、
前記欠陥検知手段が、前記撮像画像における孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する孤立点抽出部を備え、
検査光の前記所定パターンが、所定寸法の暗部と前記暗部を外周から包囲する明部とからなる単位発光面を前記相対移動の方向と交差する方向に多数隣接配置した発光面列と、前記発光面列と隣接した位置で前記発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部とを有する点にある。
【0011】
したがって、本発明の第3の特徴構成による表面検査装置では、最も頻繁に発生し得る小サイズの欠陥は、発光面列に位置するいずれかの単位発光面内に進入した時に孤立点抽出部によって欠陥候補として判定され、他方、単位発光面内にある時には孤立点として捕えられない、小サイズの欠陥とは異なる例えば大サイズの欠陥は、発光面列を外れ、発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部内に進入した時に、単位発光面の輪郭部を構成するいずれの光(または光源)からも離間するので、この時に孤立点抽出部によって欠陥候補として判定される。
【0012】
尚、上記の表面検査装置において、特に、前記列状暗部が前記発光面列の等倍から2乃至3倍の幅を備えている構成とすることができる。すなわち、発光面列と少なくとも発光面列の幅を備えた列状暗部とを設けることで、発光面列ではこれまで説明してきた小サイズの欠陥を検出でき、発光面列の等倍の幅を備えた列状暗部では大サイズの欠陥を検出できるのであるが、更に、列状暗部の幅を発光面列の2乃至3倍とすることで、より大きなサイズの欠陥をもカバーできる。
【0013】
さらに、上記の表面検査装置において、前記単位発光面の前記明部は互いに隣接配置された多数の発光素子からなる構成とすることができる。このように構成すれば、基板などに多数の発光素子を、前記特定パターンが得られるように配置して固定するという簡単な手法で照明部を作製することができる。また、個々の発光素子は自由に配置できるので、複数の発光素子によって形成される特定パターンの形状も自由に選択可能となる。また、発熱量の小さな発光素子(LEDなど)を用いることで、省エネルギーに寄与すると同時に、明部に隣接した暗部を形成するための素材に余り耐熱性が要求されないため、合成樹脂を含む広範な材料から暗部用の素材を選択可能となる。
【0014】
さらに、上記の表面検査装置において、所定位置の前記発光素子を消灯制御可能に構成することができる。このように構成すれば、照明部の装置自身としては、前記技術文献に記載されているような、全面に発光素子が付いた従来の装置をそのまま利用することができる。さらに、この照明部の発光素子の一部を適宜消灯操作することで、単位発光面や暗部の面積及び形状を比較的自由に設定変更できて好都合である。
【0015】
特に、前記所定パターンは、六角形の前記単位発光面をセルとするハニカム状を呈している構成とすると良い。
このように構成すると、形状が六角形と等しく、寸法も互いに等しい単位発光面のみで発光面列を埋め尽くすことができるので、特定パターンが規則正しいものとなり、照明部の設計や製作が容易となるだけでなく、欠陥検出のためのアルゴリズムがより単純化されて都合が良い。また、特定パターンの基本をセルが六角形のハニカム状とすれば、明部を構成する水平な辺が左右に隣接する複数の発光面列にわたって連続的に延びることがないので、小さな欠陥は必ずいずれかの発光面列において確実に孤立点として検出される。
【0016】
本発明によるその他の特徴および利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明による表面検査装置の一例として、塗装工程終了後の自動車ボディ1の塗装面を検査する表面検査装置の構成を模式的に示している。この表面検査装置は、特定パターンの検査光を被検査面である自動車ボディ1の塗装面に照射する照明部3と、照明部3によって照射された被検査面を撮像可能な撮像カメラ4とからなる固定された撮像ユニットA、自動車ボディ1を撮像ユニットAに対して水平移動させるコンベア2、撮像カメラ4からの出力信号を用いた被検査面における欠陥の存在の評価やその評価欠陥の出力を行うコントローラ5、及び、コントローラ5の出力部10に接続される出力機器としてのモニタ12やプリンタ13等から構成されている。
【0018】
コントローラ5には、照明部3の制御を行う照明・撮像制御部9、撮像カメラ4からの出力信号を取り込んでデジタル画像データ(以下単に入力画像と称する)としてメモリ8に展開する画像入力部7、及び、入力画像を用いて欠陥評価を行う欠陥評価手段6が備えられている。さらにコントローラ5は、通信部11を介して、この表面検査装置の上位制御体としてのホストコンピュータ14にデータ伝送可能に接続されている。このホストコンピュータ14には、必要に応じてコントローラ5にダウンロードされる検査対象となる自動車ボディ1の情報やコンベア2の動作情報が蓄積されており、さらに、コントローラ5で生成された塗装面の欠陥情報もコントローラ5からホストコンピュータ14にアップロードされ、そこに蓄積される。また、ホストコンピュータ14にネットワーク接続された端末によって制御されるプロジェクタ15やプリンタなどが塗装面検査照合ステーションに備えられ、表面検査装置のコントローラ5からホストコンピュータ14を介して送られてくる欠陥情報に基づいて、欠陥位置などを検査員に指示するように構成されている。
【0019】
照明部3の発光面3a及び撮像カメラ4のレンズ面4aは、コンベア2によって搬送される自動車ボディ1の被検査面に対向するように配置されているか、あるいは必要に応じて、発光面3a及びレンズ面4aの鉛直線と被検査面の鉛直線ができるだけ一致又は平行となるように被検査面に対して追従制御される。
図2に示すように、照明部3には、多数のLED素子30を、被検査面に特定パターンPを持つ検査光が照射されるように配置している。この特定パターンPは、所定寸法(直径数十mm程度)の暗部Dと、暗部Dを外周から包囲する六角形の明部Lとからなる単位発光面Uを上下方向(コンベア2の移動方向と交差する方向の一例)に多数隣接配置した発光面列FRの他に、やはり上下方向に連続的に延びた列状暗部DRを備えている。列状暗部DRと発光面列FRとは左右に隣接した位置にあり、いずれも、発光面3aの下端付近から上端付近まで延びている。尚、ここでは、六角形の明部Lは多数のLED素子30を切れ目無く隣接配置して形成することで、暗部Dを全周から包囲している。
1基の撮像カメラ4が、そのレンズ面4aが発光面3a内の中央に近い暗部Dに位置するように組み込まれている。但し、照明部3の発光面3aサイズによっては複数の撮像カメラ4を設置すれば良い。
【0020】
図3に示すように、コントローラ5は、本発明に特に関係する機能部として、メモリ8に展開された入力画像を欠陥検出に適した形態に変換する前処理部60Aと、前処理された入力画像を用いて被検査面上の欠陥を検知する欠陥決定部60B(欠陥検知手段の一例)に分けることができる。尚、コントローラ5は、CPUを中核部材として、この表面検査装置の種々の動作を行うための機能部をハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方で構築している。
【0021】
前処理部60Aは、入力画像に対する輝度調整を行う輝度調整部61と輝度調整された入力画像を2値化処理する2値化処理部62からなる。この実施形態の輝度調整部61は、ガンマ調整を行うだけでなく、入力画像に含まれている明部Lの反射像の輝度レベルが、塗装色や塗装面毎の基準となる正常な被検査面によって得られるLED素子30の反射像の輝度レベルに達するように画素領域単位の輝度調整も行う。また、2値化処理部62は、入力画像の濃淡ヒストグラムから統計的手法で2値化閾値を決定する2値化閾値決定部62aやノイズ消しのために入力画像に対して平滑化フィルタをかけるとともに発光像や欠陥像の輪郭を強調するためにSobelフィルタなどのエッジ強調フィルタをかける画像特徴抽出部62bを備え、2値化閾値決定部62aによって決定された2値化閾値を用いて画像特徴抽出部62bで強調された入力画像を2値化画像にする。
【0022】
2値化処理部62によって2値化された入力画像の一例が図4に示されている。この2値化明暗画像においては、輝度の高い領域は白く表示されている。その結果、発光面列FRを形成しているLED素子30の反射像は、連続して繋がった白い輪郭線WLとして表示され、列状暗部DR及び単位発光面U内の暗部Dに対向する塗装面領域は暗領域DFとして表示される。
そして、被検査面に小さい欠陥(凹凸や傷など)が存在する場合は、欠陥が発光面列FRに進入している時に、その欠陥を外周から照射する検査光による乱反射により、暗領域に白く浮かび上がる孤立点X1として示される。また、入力画像に見られる単位発光面Uの二分の一前後を超えるような比較的大きな寸法の欠陥が存在する場合は、欠陥像が発光面列FRにある間はLED素子30の反射像と融合するために孤立点とならないが、図4に示すように、発光面列FRから出て列状暗部DRに進入した時に、その欠陥を外周から照射する検査光による乱反射により、暗領域に白く浮かび上がる孤立点X2として表示される。
すなわち、欠陥検出は、2値化画像における輝度が突出している領域(この実施形態では白い領域)であって、所定のパターンで連続していない領域、つまり孤立点を探し出せば良い。そして、所定レベルの輝度値(濃度値)を有しながら連続する画素を探したり、孤立した領域を探したりする画像処理アルゴリズム自体は良く知られたものを用いることができる。
【0023】
但し、被検査面ここでは塗装面の形状による照射光に対する反射特性の変動等によって、図5に拡大して示すように、本来は連続して繋がった線として現れるLED素子30の発光像に途切れが生じ、その途切れた部分が欠陥として誤検出される可能性がある。このような誤検出を適切に回避するために、欠陥決定部60Bは実質的にはプログラムで構成されている。欠陥決定部60Bは、例えば、図3に示すように、所定数以内の画素数から構成される非連続の独立した画素領域を孤立点として検出して欠陥候補とする欠陥候補抽出部63(孤立点抽出部の一例)と、連続配置されたLED素子30の発光像を示す領域に含まれる欠陥候補を欠陥候補から除外する欠陥候補選別部64と、この欠陥候補選別部64で欠陥候補から除外された孤立点領域及び背景などの不要画像領域を統合して欠陥判定対象外領域としてマスク処理する画像マスク生成部65と、画像マスク外に位置する複数の欠陥候補領域を識別するために異なる欠陥候補領域には異なるラベル(番号)を割り当てるラベリング処理を行うラベル設定部66と、各ラベリングされた欠陥候補領域の面積を演算する面積演算部67と、この面積演算部67からの面積情報に基づいて欠陥候補を真の欠陥と判定して欠陥マップに書き込む欠陥判定部68とで構成すれば良い。
【0024】
欠陥候補選別部64は、欠陥候補抽出部63で抽出された欠陥候補を選別するために、撮像カメラ4から順次送られてくる画像から所定回数欠陥候補として抽出されているかどうかをチェックすることで、外乱光等によって突発的に生じる明領域を欠陥候補と誤認することを防止する欠陥候補時系列判定部64a、及び、抽出された欠陥候補(孤立点)が連続している発光像の延長線上に位置(図5の例を参照)していないかチェックすることで、発光像の途切れ部を欠陥候補と誤認することを防止する発光像非連続個所探索部64bを備えている。この発光像非連続個所の探索は、連続する発光像画素を辿っていきながらその途切れ端の延長線領域に位置する暗領域を抽出する形状特徴抽出アルゴリズム等を用いて行うことが可能であり、この途切れ領域に存在する孤立点は欠陥候補から除外される。
【0025】
このように構成された欠陥評価手段6による塗装面の欠陥評価の手順を図6のフローチャートを用いて以下に説明する。
まず、撮像カメラ4から画像入力部7を介して順次送られてくるフレーム画像をメモリ8に取り込む(#01)。取り込まれた入力画像は、輝度調整部61によって輝度(濃度値)調整される(#02)。その際に入力画像の特徴量が必要となるが、その特徴量は入力画像を所定数の区画に分割し、個々の区画毎に演算された濃度平均値の最大値を特徴量とすることが好ましい。この特徴量は、次の2値化閾値の決定や撮像カメラ4のレンズ開口度の調整にも利用できる。次に、2値化閾値決定部62aで2値化閾値が決定されるとともに(#03)、画像特徴抽出部62bで画像の平滑化及びエッジ強調を行った後(#04)、この入力画像は2値化処理されて2値化画像となる(#05)。
【0026】
2値化された入力画像から、欠陥候補抽出部63によって、所定数以内(画像解像度等から予め決定される)の画素数からなる孤立した明画素領域が欠陥候補として抽出される(#06)。抽出された欠陥候補のうち外乱光等により瞬時的かつ局地的に生じる孤立点に属する欠陥候補は欠陥候補時系列判定部64aによって欠陥候補から除外され(#07)、さらに抽出された欠陥候補のうち発光像の途切れ領域に位置する孤立点に属する欠陥候補は発光像非連続個所探索部64bによって欠陥候補から除外される(#08)。
【0027】
発光像非連続個所探索部64bによって見つけ出された発光像の途切れ領域を含むその周辺領域は、ホストコンピュータ14から伝送される自動車ボディ1の形状情報やコンベア2による搬送位置情報に基づいて決定される被検査面以外の背景領域と共に、不要画素領域として画像マスク生成部65によってマスク処理される(#09)。尚、ホストコンピュータ14から得られる搬送位置情報は、実際の位置とは異なる可能性があるので、この実施形態では、レーザーセンサなどを用いてリアルタイムでの自動車ボディ1の位置ずれをチェックして、その画像マスクの位置を補正している(#10)。
【0028】
このようにして欠陥候補の選別や背景画像の除去を終えた後、残されている欠陥候補(孤立点)をラベリングし(#11)、各ラベルを割り当てられた孤立点の面積を演算し(#12)、予め設定されている面積条件(設定された閾値以上の面積を持つか)を満たしている孤立点だけを真の欠陥と判定し(#13)、その座標位置及びサイズなどを欠陥マップに書き込む(#14)。
【0029】
以上で欠陥評価手段6による塗装面の欠陥評価の手順は終了する。この手順を通じて塗装面の検査が終わると、塗装面検査照合ステーションにおいて、ホストコンピュータ14を介して表面検査装置のコントローラ5から送られてきた欠陥マップのうち、塗装面検査照合ステーションに搬入された自動車ボディのIDに一致するIDを付与されている欠陥マップを用いて、欠陥照合が行われる。その際、検査員による照合作業を容易にするため、該当する欠陥マップに基づいて欠陥箇所を指摘するようにプロジェクタ15を動作させると好都合である。もちろん、そのような欠陥マップに基づく欠陥情報を表面検査装置の出力部に接続されたプリンタ13によって紙出力し、この出力用紙を直接自動車ボディ1に貼り付けてもよい。
【0030】
〔別実施形態〕
上述した実施形態では、検査光の特定パターンが一定に固定され、列状暗部が発光面列の等倍の幅を備えている構成としたが、予測される欠陥の最大寸法に応じて列状暗部の幅を選択的に設定変更可能な構成としても良い。このような構成は、例えば、照明部3の照射面3aの全体に、多数のLED素子30を、六角形の単位発光面Uが上下左右に満遍なく連接されたハニカム状となるように配置しておき、必要な列状暗部の幅に応じて、所定の位置のLED素子30が消灯されるようにすれば実現できる。このように構成することで、より大きなサイズの欠陥の検知に適した、例えば、列状暗部が発光面列の2乃至3倍の幅を備えている特定パターンに適宜切り替えることができる。
【0031】
上述した実施形態では、検査光の特定パターンを構成する単位発光面Uが六角形を呈しているが、六角形以外の多角形を呈する形態でも良い。明部Lを作る発光素子30としてはLED素子以外を採用しても良い。また、単一または少数のハロゲンランプ等の光源と被検査面との間に、特定パターンで並ぶ貫通孔を備えた遮蔽板を設けて、これを照射部としても良い。
【0032】
さらに、撮像カメラ4をLED素子群で囲まれた暗面の中に配置する代わりに、照明部3の外側に配置しても良い。但し、この場合には、その被検査面に対する撮像カメラ4の撮影角度に基づいて入力画像をあおり補正することで、擬似的に入力画像を照明部3の照射面3aに正確に対向する画像に変換すると好都合である。
【0033】
上述した実施形態では、欠陥検出のために入力画像を2値化画像に変換していたが、本発明は入力画像の2値化に限定されているわけではなく、3値化及びそれ以上の多値化画像を用いて欠陥検出を行うことも本発明の枠内に入る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
製品の表面に存在する欠陥、例えば、自動車ボディの塗装面に存在する凹凸や傷などの欠陥を検査するための方法及び装置を、より合理的な構成に改良する技術として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による表面検査装置の模式的に示す構成図
【図2】図1の表面検査装置の照明部と撮像カメラを示す模式図
【図3】表面検査装置に実装されている欠陥評価手段の構成を示す機能ブロック図
【図4】2値化された入力画像を説明する説明図
【図5】発光像の途切れ部に存在する孤立点を説明する説明図
【図6】欠陥評価手段による被検査面の欠陥評価の手順を示すフローチャート
【図7】従来技術による表面検査装置の照明部と撮像カメラを示す模式図
【図8】従来技術による表面検査装置の2値化された入力画像を説明する説明図
【符号の説明】
【0036】
1:自動車ボディ(被検査面)
2:コンベア(搬送機構)
3:照明部(撮像ユニットA)
L:明部
D:暗部
U:単位発光面
FR:発光面列
DR:列状暗部
WL:白い輪郭線
X1,X2:孤立点(欠陥候補)
4:撮像カメラ(撮像ユニットA)
5:コントローラ
6:欠陥評価手段
30:発光素子(LED素子)
60A:前処理部
60B:欠陥決定部(欠陥検知手段)
61:輝度調整部
62:2値化処理部
63:欠陥候補抽出部(孤立点抽出部)
64:欠陥候補選別部
65:画像マスク生成部
66:ラベル設定部
67:面積演算部
68:欠陥判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、前記照明部によって照射された被検査面を撮像可能な撮像部とで撮像ユニットを構成し、被検査面を前記撮像ユニットに対して相対移動させながら、得られた前記撮像画像に含まれる孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する表面検査方法であって、
検査光の前記特定パターンを、所定寸法の暗部と前記暗部を外周から包囲する明部とからなる単位発光面を前記相対移動の方向と交差する方向に複数隣接配置した発光面列と、前記発光面列と隣接した位置で前記発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部とで構成し、
前記撮像部によって撮像される前記発光面列の画像に基づいて第1の欠陥を検出し、前記撮像部によって撮像される前記列状暗部の画像に基づいて前記第1の欠陥とは異なる第2の欠陥を検出するように構成した表面検査方法。
【請求項2】
前記相対移動方向に沿った方向に前記発光面列が連続配置された前記特定パターンを形成可能なように、多数の発光素子を隣接配置し、前記発光素子の一部を適宜消灯操作する請求項1に記載の表面検査方法。
【請求項3】
被検査面に特定パターンの検査光を照射する照明部と、前記照明部によって照射された被検査面を撮像可能な撮像部とからなる撮像ユニット、前記被検査面を前記撮像ユニットに対して相対移動させる搬送機構、及び、得られた前記撮像画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検知する欠陥検知手段を備えている表面検査装置であって、
前記欠陥検知手段が、前記撮像画像における孤立した高輝度領域を欠陥候補と判定する孤立点抽出部を備え、
検査光の前記所定パターンが、所定寸法の暗部と前記暗部を外周から包囲する明部とからなる単位発光面を前記相対移動の方向と交差する方向に多数隣接配置した発光面列と、前記発光面列と隣接した位置で前記発光面列と平行に連続的に延びた列状暗部とを有する表面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−184080(P2006−184080A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376402(P2004−376402)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】