説明

複合体、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法

【課題】 接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する複合体は、繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、硬化性樹脂組成物の硬化物の20℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には、その小型軽量化及び高機能化が一層求められている。そのため、かかる電子機器の構成部品である半導体やプリント配線基板についても、より高密度、高機能なものが要求されている。
【0003】
例えば、半導体では集積度の増大と高機能化のために狭ピッチ化、多ピン化がますます進んでおり、端子ピッチは0.3mmピッチ程度まで狭くなっている。そして、これ以上に狭ピッチ化、多ピン化が進むと、従来の半田を用いた実装方法では部品の実装が困難になるため、今後はパッケージを用いることなく半導体を基板に直接に実装するCOB技術が重要と考えられている。そのため、近年、COB技術の開発が各方面で検討されるようになってきている。
【0004】
一方、実装部品の高密度実装を可能ならしめるプリント配線基板としては、ガラス−エポキシ基板が最も一般的に知られている。ガラス−エポキシ基板は、ガラス織布に耐熱性のエポキシ樹脂を含浸させたものを絶縁基板材として用いて構成されたものである。
【0005】
このガラス−エポキシ基板の一つであるガラス−エポキシ多層基板は、現在では民生用にも広く利用されている。しかしながら、上述したような今後の更なる高密度化の要求に対しては、以下の理由から必ずしも十分であるとはいえない。
【0006】
すなわち、通常のガラス−エポキシ多層基板は、貫通スルーホールが形成されているため、より高密度に配線を形成しようとした場合、スルーホールが基板における配線スペースを阻害することから、配線を迂回させる必要が生じ、結果的に配線長が長くなってしまう。また、配線スペースが少ないため、CADによる自動配線が困難となる。さらに、より小径のスルーホールを形成するにおけるドリル加工が困難になり、今以上にドリル加工に要するコスト比率が高くなってしまう。
【0007】
また、スルーホール形成に必要な銅メッキによる電極層の形成工程は、地球の環境汚染の点で好ましいものではない。また、スルーホールの形成部には部品を実装することができない。このような問題点は多層基板にかかわらず、単一のプリプレグの上面と下面とをスルーホールにより電気的に接続して構成された両面基板においても同様である。
【0008】
このような課題に対し、完全なインナービアホール(IVH)構成を有するプリント配線基板が提案されている。IVH構造では、必要な各層間のみの接続が可能であり、基板最上層にも貫通孔がなく実装性も優れている。
【0009】
このIVH構造を有する回路基板として、例えば、シート状の有機質の不織布に熱硬化性樹脂を含浸させてなるシート基板材に、レーザー加工により貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性ペーストを充填し、シート基板材を加熱加圧することで、IVH構造を形成せしめた回路基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願平5−77840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したようなIVH構造を有するプリント配線基板は、その製造の際に基板上に打痕が発生したり、配線の断線が発生したりすることがあり、十分な信頼性を有していないものがあった。特に、高密度化を図るために各層の層厚を薄くする場合に、上記の不良が多発する傾向にあった。
【0011】
そこで、本発明者らは、上記不良の原因について詳細に検討した結果、上記のように絶縁基板として繊維シートに樹脂を含浸したシート基板材を用いた場合、絶縁基板から脱落する樹脂粉又は繊維が上記不良の大きな原因であることを見出した。また、脱落する樹脂粉又は繊維は、特にビアホールを有する絶縁基板を形成する際に多く発生することが分かった。
【0012】
ここで、絶縁基板の材料として樹脂粉又繊維の脱落を抑制することのみ考慮したものを選択しても、プリント配線基板に用いる絶縁基板が必要な接着信頼性を十分に有していなければ、結果として十分な信頼性を有するプリント配線基板が得られない。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる複合体を用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の複合体は、繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、硬化性樹脂組成物の硬化物の20℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaであることを特徴とする。
【0015】
本発明の複合体は、硬化物の貯蔵弾性率が上記の範囲となる硬化性樹脂組成物が繊維シートに含浸されていることにより、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分に抑制され、且つ、十分に優れた接着信頼性を有するものとなっている。したがって、本発明の複合体を絶縁基板の材料として用いることにより、信頼性に優れるプリント配線基板を製造することができる。
【0016】
硬化性樹脂組成物の硬化物の20℃における貯蔵弾性率が、100MPa未満であると、取扱い性及び寸法安定性が低下して、十分な接着信頼性を得ることができず、一方、2000MPaを越えると、硬化した樹脂が脆くなるために脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制することができない。
【0017】
更に、本発明の複合体において、上記硬化性樹脂組成物が粘弾性樹脂を含有することが好ましい。このような複合体は、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生がより確実に抑制され、且つ、十分優れた接着信頼性を有するものとなっている。
【0018】
また、本発明の複合体において、上記硬化性樹脂組成物は、重量平均分子量が30000以上であるアクリル重合体を含有し、このアクリル重合体はグリシジルアクリレートを重合成分として2〜20質量%含み、エポキシ価が2〜36であることが好ましい。なお、エポキシ価は、HLC測定法により求めた値を採用する。
【0019】
アクリル重合体の重量平均分子量が30000未満であると、柔軟性が低下する傾向にある。また、アクリル重合体に重合成分として含まれるグリシジルアクリレートが、2質量%未満であると、硬化物のガラス転移温度Tgが低下して耐熱性が不十分となる傾向にあり、一方、20質量%を超えると、硬化物の貯蔵弾性率が上昇して樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制できなくなる傾向にある。さらに、アクリル重合体のエポキシ価が、2未満であると、硬化物のガラス転移温度Tgが低下して耐熱性が不十分となる傾向にあり、一方、36を超えると、硬化物の貯蔵弾性率が上昇して樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制できなくなる傾向にある。
【0020】
更に、本発明の複合体において、上記繊維シートは、10〜200μmの厚みを有するガラス布であることが好ましい。かかる複合体によれば、十分な機械的強度を有するとともに、プリント配線基板の高密度化を図ることがより容易となる絶縁基板を得ることができる。
【0021】
また、本発明の複合体において、複合体の総厚さが200μm以下であることが好ましい。複合体の総厚さが、200μm以下であることにより、プリント配線基板を構成する絶縁基板として用いる場合に、高密度化を図ることがより容易となる。
【0022】
更に、本発明の複合体において、複合体が貫通孔を有することが好ましい。かかる複合体によれば、予め所定位置に貫通孔が設けられていることで貫通孔を形成する工程を省略でき、このような複合体を用いることで信頼性に優れるIVH構造のプリント配線基板を歩留まりよく製造することができる。
【0023】
また、本発明のプリプレグは、上記本発明の複合体において、硬化性樹脂組成物が半硬化されてなることを特徴とする。
【0024】
本発明のプリプレグは、上述の硬化性樹脂組成物を用いることにより、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分に抑制され、且つ、十分に優れた接着信頼性を有するものとなっている。したがって、本発明のプリプレグを用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を得ることができる。
【0025】
更に、本発明のプリプレグにおいて、貫通孔を有することが好ましい。かかるプリプレグによれば、予め所定位置に貫通孔が設けられていることで貫通孔を形成する工程を省略でき、このようなプリプレグを用いることで信頼性に優れるIVH構造のプリント配線基板をより容易に製造することができる。
【0026】
また、本発明の第1の金属箔張積層板は、貫通孔を有する本発明の複合体において、貫通孔に導電体を充填し、複合体の少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られることを特徴とする。
【0027】
かかる金属箔張積層板は、上記本発明の複合体を用いることにより、金属箔張積層板からの樹脂粉又は繊維の脱落が十分に抑制されているとともに、十分に優れた接着信頼性を有している。したがって、本発明の金属箔張積層板を用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を歩留まりよく得ることができる。
【0028】
また、本発明の第2の金属箔張積層板は、貫通孔を有する本発明のプリプレグにおいて、貫通孔に導電体を充填し、プリプレグの少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られることを特徴とする。
【0029】
かかる金属箔張積層板は、上記本発明のプリプレグを用いることにより、金属箔張積層板からの樹脂粉又は繊維の脱落が十分に抑制されているとともに、十分に優れた接着信頼性を有している。したがって、本発明の金属箔張積層板を用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を歩留まりよく得ることができる。
【0030】
本発明の第1のプリント配線基板は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体からなる複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板の厚さ方向に貫通孔が形成され、上記貫通孔に導電性樹脂組成物が充填され、上記シート基板の両面に、その少なくとも一部が上記導電性樹脂組成物に電気的に接続する配線パターンが形成されていることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の第2のプリント配線基板は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体からなる複合樹脂組成物層が形成されてなる2以上のシート基板と、2以上の電極層とを備え、上記シート基板の厚さ方向に貫通孔が形成され、上記貫通孔に導電性樹脂組成物が充填され、上記各電極層が電気的に接続された多層配線構造を有することを特徴とする。
【0032】
先に説明した従来のプリント配線基板の構成では、基板材料と銅箔との密着力が悪く、プリント配線基板形成後にこれに部品を半田付けにより実装した際、この実装強度を高く保つことができないという課題がある。
【0033】
また、導電性樹脂ペーストと銅箔との間に基板材料の含浸樹脂(熱硬化樹脂)が流入し、これが障壁となって接続不良を生じたり、さらにこの障壁により半田リフロー時などの熱衝撃により導電性ペーストと銅箔との界面で破壊が起こり、導通不良が発生するという問題点がある。
【0034】
また、不織布を補強材とする基板材料は、一般的に基板そりが大きいとされている。これは補強材である不織布が、短く裁断された繊維を紙のように抄造して得られるため、繊維の向き(繊維配向)をコントロールすることが困難となり、部分的に不揃いな繊維配向となりやすいからである。その結果、繊維配向によって基材の物性、即ち熱膨張係数や弾性率などの異方性を生じ、おのおの異方性をもった基板材料を多層積層するため、基板そり、ねじれとして表われるのである。
【0035】
これらの課題に対し、本発明の第1及び第2のプリント配線基板によれば、上述した本発明の複合体からなる複合樹脂組成物層を密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に形成してなるシート基板を用いていることにより、配線パターンが基板中の有機質不織布材に影響されず、複合樹脂組成物層に強固に密着され、しかも配線パターンと導電性樹脂組成物とが電気的かつ機械的に安定に接続されることとなり、信頼性の高いプリント配線基板を実現することができる。また、有機質不織布を補強材とする基板材料を高密度に圧縮したものを使用することで、不織布面内の弾性率の異方性が解消され、基板そり、ねじれの少ない基板を実現することができる。
【0036】
ここで、本発明の第1及び第2のプリント配線基板において、上記有機質不織布材は、耐熱性を向上させる観点から、耐熱性合成繊維であることが好ましい。また、この耐熱性合成繊維は、全芳香族ポリアミドであることが好ましく、これにより、特に優れた耐熱性を得ることができる。
【0037】
また、本発明のプリント配線基板において、上記導電性樹脂組成物は、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫及び鉛から選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子を含有していることが好ましい。これにより、導電性樹脂組成物と配線パターンとの接触抵抗が小さくなり、両者間の電子伝導性を高水準で確保することができる。更に、この金属微粒子の含有量が、上記導電性樹脂組成物全量を基準として80〜92.5質量%であることが好ましい。これにより、導電性樹脂組成物と配線パターンとの接触抵抗がより小さくなり、両者間の電子伝導性をより高水準で確保することができる。
【0038】
本発明のプリント配線基板の第1の製造方法は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、上記本発明の複合体からなり、硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、上記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、上記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、上記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、上記中間基板体の両面に金属箔を配置した状態で加熱加圧し、上記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより上記複合樹脂組成物層に上記金属箔を接着させる工程と、上記金属箔を所定のパターンにパターニングする工程と、を有することを特徴とする。
【0039】
かかる製造方法によれば、上述した信頼性の高い本発明のプリント配線基板を効率的に製造することができる。
【0040】
また、本発明のプリント配線基板の第2の製造方法は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、上記本発明の複合体からなり、硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、上記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、上記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、上記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、上記中間基板体を2つ用意し、2つの上記中間基板体の間に少なくとも2層以上の配線パターンを有する回路基板を挟持した後、その外側に金属箔をそれぞれ配置した状態で、全体を加熱加圧して上記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、上記金属箔を所定のパターンにパターニングする工程と、を有することを特徴とする。
【0041】
かかる製造方法によれば、上述した信頼性の高い本発明の多層配線構造を有する第2のプリント配線基板を効率的に製造することができる。
【0042】
更に、本発明のプリント配線基板の第3の製造方法は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、上記本発明の複合体からなり、硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、上記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、上記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、上記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、2以上の両面プリント配線基板のそれぞれの間に、上記中間基板体を配置し、全体を加熱加圧して上記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させることで、上記複数の両面プリント配線基板を上記中間基板体を介して一体的に接合する工程と、を有することを特徴とする。
【0043】
かかる製造方法によれば、上述した信頼性の高い本発明の多層配線構造を有する第2のプリント配線基板を効率的に製造することができる。
【0044】
なお、上記第1〜第3の製造方法において、硬化性樹脂組成物が「未硬化状態」であるとは、半硬化状態(Bステージ状態)も含むものである。また、硬化性樹脂組成物の硬化開始温度は、多官応性低分子化合物または初期縮合反応中間体に対する触媒(硬化剤、反応促進剤)の種類または含有量により適宜変更することができる。
【0045】
また、上記第1〜第3の製造方法において、未硬化状態の複合樹脂組成物層の厚みは、両面合わせて50〜300μmの範囲であることが好ましい。これにより、加熱加圧時に金属箔との境界部に基材中の有機質不織布材が介入することが確実に防止され、また金属箔との密着性に優れ、製造効率良く、上述した信頼性の高いプリント配線基板を製造することができる。また、基板の厚みを任意に制御できる。
【0046】
また、上記第1〜第3の製造方法において、加熱加圧する際の加熱温度は、120〜260℃の範囲であることが好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物の硬化を有効に完結させることができる。更に、加熱加圧する際の加圧力は、10〜80kg/cmの範囲であることが好ましい。これにより、金属箔と複合樹脂組成物層との間、および金属箔と導電性樹脂組成物との間の接着力を確実に高めることができ、製造効率良く、上述した信頼性の高いプリント配線板を製造できる。また、シート状基材中の空気孔を十分に減らすことができ、基板特性を向上させることができる。
【0047】
また、上記第1〜第3の製造方法において、上記導電性樹脂ペーストは、上記複合体中の硬化性樹脂組成物と実質的に同一の硬化性樹脂組成物を含有していることが好ましい。
【0048】
更に、上記第1〜第3の製造方法において、上記有機質不織布材は、耐熱性を向上させる観点から、耐熱性合成繊維であることが好ましい。また、この耐熱性合成繊維は、全芳香族ポリアミドであることが好ましく、これにより、特に優れた耐熱性を得ることができる。
【0049】
また、上記第1〜第3の製造方法において、上記導電性樹脂ペーストは、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫及び鉛から選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子を含有していることが好ましい。これにより、導電性樹脂ペーストと金属箔との接触抵抗が小さくなり、両者間の電子伝導性を高水準で確保することができる。更に、この金属微粒子の含有量が、上記導電性樹脂ペースト全量を基準として80〜92.5質量%であることが好ましい。これにより、導電性樹脂ペーストと金属箔との接触抵抗がより小さくなり、両者間の電子伝導性をより高水準で確保することができる。
【0050】
また、上記第1〜第3の製造方法において、貫通孔の加工が、ドリル加工、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、およびエキシマレーザーから選ばれる少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。これにより、貫通孔の微細化、狭ピッチ化に対応した高密度形成を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供することができる。また、本発明によれば、かかる複合体を用いたプリプレグ、金属箔付きシートを提供することができる。また、本発明によれば、複合樹脂組成物層に配線パターンが強固に密着され、配線パターンと導電性樹脂組成物とが電気的かつ機械的に安定に接続され、基板そり、ねじれの少ない、信頼性の高いプリント配線基板を提供することができる。更に、本発明によれば、上記本発明のプリント配線基板を効率良く製造することが可能なプリント配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0053】
先ず、本発明の複合体の実施形態について説明する。図1は、本発明の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。図1の複合体100は、繊維シート101に硬化性樹脂組成物102を含浸してなるものである。また、複合体100は、貫通孔103を備えている。
【0054】
繊維シート101としては、例えば、紙、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布等のガラス布、アラミド不織布等の耐熱性合成繊維が挙げられる。これらのうち、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布が好ましく、ガラス繊維織布が特に好ましい。ガラスの材質としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス等が挙げられる。また、繊維シートとして織布を用いる場合の繊維の織り方については、例えば、平織、朱子織、綾織等が挙げられる。
【0055】
繊維シートの厚みについては、繊維シートが十分な強度を有するのであれば薄い方が好ましい。具体的には、例えば、10〜200μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。また、繊維シートは、線膨張率がより小さいものが好ましい。
【0056】
硬化性樹脂組成物102としては、その硬化物の20℃における貯蔵弾性率が100〜2000MPaとなるものであればよく、例えば、硬化性樹脂とこの硬化性樹脂を硬化させる硬化剤とを含有するものが挙げられる。硬化性樹脂の樹脂成分としては、粘弾性樹脂を用いることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、SBR、NBR、CTBN、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、シリコーン変性ポリアミドイミド等が挙げられる。また、硬化剤としては、ジシアンジアミド、フェノール樹脂、イミダゾール、アミン化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0057】
また、硬化性樹脂組成物102は、所定の溶媒を含有することができる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メチルセロソルブ、ジエチレングリコール等のグリコールエーテル系溶媒;メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルグリコール系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のエーテルアルコール系溶媒等を用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
本実施形態においては、硬化性樹脂組成物として、硬化性のアクリル重合体と、このアクリル重合体を硬化させる硬化剤とを組み合わせたものを用いることが好ましい。この場合、アクリル重合体100質量部に対して、硬化剤を60〜350質量部の割合で用いることが好ましい。硬化剤が、アクリル樹脂100質量部に対して60質量部未満であると、硬化物の貯蔵弾性率が300MPaを下回る傾向にあり、取扱い性が低下するとともに、硬化物のTgが低下して高温放置時の劣化による寸法収縮、半田耐熱性の低下等の問題が生じやすくなる傾向にある。一方、硬化剤の割合が350質量部を越えると、硬化物の貯蔵弾性率が2000MPaを上回る傾向にあり、この場合、硬化物が脆くなるので樹脂粉又は繊維が脱落しやすくなる傾向にある。
【0059】
また、上記アクリル重合体は、重量平均分子量(Mw)が、30000以上であることが好ましく、更にこのアクリル重合体は、重合体中に重合成分として2〜20質量%のグリシジルアクリレートを有し、エポキシ価が2〜36であることが好ましい。
【0060】
複合体100の製造方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物を繊維シートに含浸させて乾燥した後、所定の位置に貫通孔を形成する方法が挙げられる。硬化性樹脂組成物を繊維シートに含浸させる方法としては、例えば、ウェット方式やドライ方式等の樹脂組成物溶液に繊維シートを浸漬させる方法や、繊維シートに硬化性樹脂組成物を塗工する方法等が挙げられる。
【0061】
次に、本発明のプリプレグの好適な実施形態について説明する。
【0062】
図2は、本発明のプリプレグの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示すプリプレグ200は、繊維シート201と、この繊維シート201に含浸した硬化性樹脂組成物を半硬化させた半硬化樹脂組成物層202とからなる。また、プリプレグ200は、貫通孔203を備えている。
【0063】
プリプレグ200は、上述の複合体100における硬化性樹脂組成物102を半硬化させることにより得ることができる。この場合、繊維シート201は繊維シート101と同様であり、半硬化樹脂組成物層202は硬化性樹脂組成物102を半硬化させてなるものである。また、別の方法として、プリプレグ200は、上記の硬化性樹脂組成物を上記の繊維シートに含浸させて乾燥したものを用意し、次いで、硬化性樹脂組成物を半硬化させて半硬化樹脂組成物層202を形成した後、所定の位置に貫通孔203を形成することにより得ることもできる。
【0064】
硬化性樹脂組成物を半硬化させる方法としては、加熱、紫外線照射、電子線照射等の方法が挙げられる。加熱により半硬化を行う場合の条件としては、例えば、100〜200℃、1〜30分間の条件が挙げられる。
【0065】
本実施形態のプリプレグにおいては、硬化性樹脂組成物の硬化率を10〜50%の範囲とすることが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化率が10%未満であると、金属箔と一体化した場合、一体化した金属箔表面に繊維シートの凹凸が反映されて表面平滑性が低下する傾向にあり、また、絶縁基板の厚みの制御が困難となる傾向にある。一方、硬化性樹脂組成物の硬化率が50%を越えると、金属箔と一体化する場合に樹脂成分が不足し、高速で一体化させると気泡やかすれが生じやすくなり、金属箔との接着力が不十分となる傾向にある。
【0066】
次に、本発明の金属箔張積層板の実施形態について説明する。
【0067】
図3は、本発明の金属箔張積層板の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示される金属箔張積層板300は、貫通孔303を有する絶縁基板301と、貫通孔303に充填された導電体304と、絶縁基板301上に積層された導電体層302とから構成されている。
【0068】
導電体層302としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔等の金属箔が挙げられる。本実施形態の金属箔張積層板においては、導電体層302が銅箔であることが好ましく、その厚さは1〜70μmであることが好ましい。また、銅箔は、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。なお、本実施形態の金属箔張積層板においては、導電体層302は導電性を有する膜であればよく、上記の金属箔以外に、例えば、金属、有機物及びこれらの複合物であってもよい。
【0069】
導電体304としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属若しくは金属酸化物又は有機金属化合物等を含む導電ペーストの加熱加圧されたものが挙げられる。
【0070】
貫通孔303を有する絶縁基板301は、上述した複合体100又はプリプレグ200を用いて形成されている。
【0071】
例えば、プリプレグ200を用いて金属箔張積層板300を得る場合、先ず、プリプレグ200の貫通孔203に導電ペーストを充填する。次に、プリプレグ200の表面上に導電体層としての金属箔を配し、金属箔とプリプレグとを一体化し金属箔張積層板300を製造することができる。また、プリプレグ200の代わりに複合体100を用いても同様に金属箔張積層板300を製造することができる。
【0072】
金属箔と、プリプレグ又は複合体とを一体化する方法としては、例えば、メタライズ、プレス積層方法、熱ロール連続積層法等が挙げられる。本実施形態においては、効率よく導電体層302を形成する観点から、プレス積層法を用いることが好ましい。プレス積層法により、金属箔と、プリプレグ又は複合体とを一体化する際の加熱加圧条件としては、例えば、温度120〜260℃、圧力10〜80kg/cm2、加熱時間30〜120分の範囲の条件が挙げられる。
【0073】
また、金属箔と、プリプレグ又は複合体とを連続積層する前に、金属箔の表面にプリプレグ又は複合体に含まれているものと同様の感光性樹脂組成物を塗布し、かかる樹脂組成物からなる層を形成することが好ましい。これにより、プリプレグ又は複合体に含まれる繊維シートの表面の凹凸が導電体層の表面に反映されることを更に低減することができる。
【0074】
次に、本発明のプリント配線基板及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0075】
図4(a)〜(f)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。まず、図4(a)に示すように、密度0.8g/cm以上の有機質不織布1の両面に、上述した本発明のプリプレグからなる未硬化状態の複合樹脂組成物層2を積層してなるシート基板3を準備する。
【0076】
ここで、有機質不織布1としては、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維(具体的には、例えば、デュポン社製のケブラー繊維、繊度:1.5デニール、長さ:6.7mm、目付:72g/m、密度:0.5g/cm)等の不織布を用い、超高圧力のカレンダー装置により0.8g/cm以上の密度となるように高温でカレンダー処理を行ったものを使用することができる。また、有機質不織布1の厚みは、50〜150μmであることが好ましい。なお、有機質不織布1としては、上記芳香族ポリアミド繊維以外の他の耐熱性合成繊維を用いてもよい。
【0077】
なお、有機質不織布1としては、0.8g/cm以上のものを用いることが必要であるが、例えば、0.5〜0.7g/cmの密度では、弾性率が50Kg/mm程度の強度しか得られず、結果として基板のそり、ねじれが大きいものしか得られない。また、0.75g/cmで100Kg/mm、0.8g/cm以上で200Kg/mmの弾性率が得られ、0.8g/cm以上であることにより、そり、ねじれのない良好な基板を得ることができる。
【0078】
次に、図4(b)に示すように、複合樹脂組成物層2の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム等のカバーフィルム4を、複合樹脂組成物層2中の硬化性樹脂組成物の硬化開始温度よりも低い温度で加熱加圧することでラミネートし、シート基板材料5を得る。
【0079】
次に、図4(c)に示すように、シート基板材料5の所定の箇所に、例えば、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー等を用いたレーザー加工法やドリル加工法で孔径50〜200μmの貫通孔6を形成し、この貫通孔6に導電性樹脂ペースト7を充填する。
【0080】
ここで、導電性樹脂ペースト7は、導電物質と硬化性樹脂組成物とを三本ロール等により混練することで得ることができる。導電物質としては、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫及び鉛から選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子が好ましい。この金属微粒子の平均粒子径は、1〜5μmであることが好ましい。また、硬化性樹脂組成物としては、上述した本発明の複合体に用いられる硬化性樹脂組成物と同様のものが用いられる。
【0081】
導電性樹脂ペースト7における導電物質の含有量は、上記導電性樹脂ペースト7全量を基準として80〜92.5質量%であることが好ましい。
【0082】
導電性樹脂ペースト7を貫通孔6に充填する方法としては、貫通孔6を有するシート基板材料を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性樹脂ペースト7をカバーフィルム4の上から印刷する方法が挙げられる。印刷法としては、例えば、ロール転写印刷を用いることができる。このとき、上面のカバーフィルム6は印刷マスクの役割と、複合樹脂組成物層2の表面の汚染防止の役割を果すこととなる。
【0083】
次に、図4(d)に示すように、複合樹脂組成物層2の表面からカバーフィルム4を剥離した後、複合樹脂組成物層2の外側に金属箔8を配置し、矢印A及びBの方向に加熱加圧する。
【0084】
ここで、金属箔8としては、例えば、銅箔等が用いられ、その厚さは12〜35μmであることが好ましい。
【0085】
また、加熱加圧は、複合樹脂組成物層2及び導電性樹脂ペースト7中の硬化性樹脂組成物が硬化する温度で所定の圧力を加えることで行われ(例えば、真空中、60kgf/cmの圧力を加えながら、室温から30分で180℃まで昇温し、180℃で60分間保持し、その後30分で室温まで降温)、これにより、有機質不織布1を構成する芳香族ポリアミド(アラミド)繊維によって影響を受けることなく、金属箔8を複合樹脂組成物層2に強固に接着させることができる。
【0086】
そして、上記の加熱加圧を行うことにより、図4(e)に示すように、複合樹脂組成物層2中の硬化性樹脂組成物を硬化させ、金属箔8を複合樹脂組成物層12に接着させる。
【0087】
また、導電性樹脂ペースト7中の硬化性樹脂組成物も硬化され、導電性樹脂ペースト17が形成されるが、このときに導電性樹脂ペースト中の導電物質間の結合が強固になる。
【0088】
また、加熱加圧することで有機質不織布1中の空孔を、例えば、0〜1体積%(有機質不織布1の全体積基準)程度まで十分に減らすことができ、空孔の形状も小さくすることができる。また、シート基板3中に浸透した導電性樹脂ペースト7の硬化性樹脂組成物が硬化することで、導電性樹脂ペースト7とシート基板3との界面を強固に結合することができる。
【0089】
その後、図4(f)に示すように、金属箔8をエッチングすることにより、回路パターン18を形成し、両面プリント配線基板10を得ることができる。
【0090】
以上説明した製造方法によれば、IVH構造を有し、複合樹脂組成物層に配線パターンが強固に密着され、配線パターンと導電性樹脂ペーストとが電気的かつ機械的に安定に接続され、基板そり、ねじれの少ない、信頼性の高い両面プリント配線基板を得ることができる。
【0091】
次に、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態について説明する。図5(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態を示す一連の工程図である。第2実施形態に係るプリント配線基板の製造方法においては、上記第1実施形態で示した両面プリント配線基板を用い多層プリント配線基板を作製する。
【0092】
まず、上記第1実施形態で示した両面プリント配線基板10を準備するとともに、上記第1実施形態において、図4(d)に示す状態のカバーフィルム4をシート基板3から剥離した中間基板体を準備する。これらは、上記第1実施形態に示した方法に従って作製することができる。そして、図5(a)に示すように、両面プリント配線基板10の両面に中間基板体20を配置し、更にその外側に金属箔8を配置する。この状態で矢印A及びBの方向に加熱加圧することにより、全体を一体的に接合する。
【0093】
この加熱加圧により、中間基板体20における未硬化状態の複合樹脂組成物層2及び導電性樹脂ペースト7中の硬化性樹脂組成物が硬化され、全体の接着がなされる。
【0094】
その後、金属箔8を通常のパターン形成方法によりエッチングして回路パターン18を形成する。これにより、図5(b)に示すような、4層の多層プリント配線基板を得ることができる。
【0095】
以上説明した製造方法によれば、IVH構造を有し、複合樹脂組成物層に配線パターンが強固に密着され、配線パターンと導電性樹脂ペーストとが電気的かつ機械的に安定に接続され、基板そり、ねじれの少ない、信頼性の高い多層プリント配線基板を得ることができる。
【0096】
なお、以上説明した第2実施形態に係る製造方法では、4層プリント配線基板を製造しているが、さらに高多層にする場合には、図5(a)の両面プリント配線基板10を図5(b)の多層プリント配線基板に置き換えてさらに積層することにより、6層又はそれ以上の多層プリント配線基板を得ることができる。
【0097】
次に、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態について説明する。図6(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態を示す一連の工程図である。第3実施形態に係るプリント配線基板の製造方法においては、上記第2実施形態で示した両面プリント配線基板及び中間基板体を用いて多層プリント配線基板を作製する。
【0098】
まず、上記第1実施形態で示した両面プリント配線基板10を3つ準備するとともに、上記第1実施形態において、図4(d)に示す状態のカバーフィルム4をシート基板3から剥離した中間基板体を2つ準備する。これらは、上記第1実施形態に示した方法に従って作製することができる。そして、図6(a)に示すように、両面プリント配線基板10と中間基板体20とを交互に配置する。この状態で矢印A及びBの方向に加熱加圧することにより、全体を一体的に接合する。
【0099】
この加熱加圧により、中間基板体20における未硬化状態の複合樹脂組成物層2及び導電性樹脂ペースト7中の硬化性樹脂組成物が硬化され、全体の接着がなされる。その結果、図6(b)に示すような、6層の多層プリント配線基板を得ることができる。
【0100】
以上説明した製造方法によれば、IVH構造を有し、複合樹脂組成物層に配線パターンが強固に密着され、配線パターンと導電性樹脂ペーストとが電気的かつ機械的に安定に接続され、基板そり、ねじれの少ない、信頼性の高い多層プリント配線基板を得ることができる。
【0101】
また、上記第3実施形態に係る製造方法によれば、使用する両面プリント配線基板を、例えば4層プリント配線基板に置き換えることで、より配線層数の多いプリント配線基板を一括で作製することが可能となる。また、積層条件によっては、最外層の配線パターンを加熱加圧により複合樹脂組成物層に埋没させることも可能であり、これにより最外層表面が平滑な多層プリント配線基板を得ることも可能である。
【0102】
本発明のプリント配線基板は、以上説明した本発明のプリント配線基板の製造方法によって製造されるものであり、例えば、図4(f)、図5(b)又は図6(b)に示すような構成を有するものである。
【0103】
かかる本発明のプリント配線基板は、密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に本発明の複合体からなる複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板の厚さ方向に貫通孔が形成され、該貫通孔に導電性樹脂組成物が充填され、上記シート基板の両面に、その少なくとも一部が上記導電性樹脂組成物に電気的に接続する配線パターンが形成されている構成を有しているため、複合樹脂組成物層と配線パターンとの密着力が向上するとともに、配線パターンと導電性樹脂組成物(導電性ペースト)とが電気的かつ機械的に良好に接続されたものとなる。この結果、耐久性および電気特性に優れた信頼性の高いプリント配線基板を実現することができる。また、高密度の有機質不織布を採用することで、基板そり、ねじれが小さいプリント配線基板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明のプリプレグの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の金属箔張積層板の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。
【図5】(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態を示す一連の工程図である。
【図6】(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態を示す一連の工程図である。
【符号の説明】
【0105】
100…複合体、101…繊維シート、102…硬化性樹脂組成物、103,203,303…貫通孔、200…プリプレグ、201…繊維シート、202…半硬化樹脂組成物層、300…金属箔張積層板、301…絶縁基板、302…導電体層、304…導電部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、
前記硬化性樹脂組成物の硬化物の20℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaである複合体。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物が粘弾性樹脂を含有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物は、重量平均分子量が30000以上であるアクリル重合体を含有し、該アクリル重合体はグリシジルアクリレートを重合成分として2〜20質量%含み且つエポキシ価が2〜36である、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記繊維シートが、10〜200μmの厚みを有するガラス布である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
複合体の総厚さが200μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
貫通孔を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体において、前記硬化性樹脂組成物が半硬化されてなる、プリプレグ。
【請求項8】
貫通孔を有する、請求項7記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項6に記載の複合体において、前記貫通孔に導電体を充填し、前記複合体の少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られる、金属箔張積層板。
【請求項10】
請求項8に記載のプリプレグにおいて、前記貫通孔に導電体を充填し、前記プリプレグの少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られる、金属箔張積層板。
【請求項11】
密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなる複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板の厚さ方向に貫通孔が形成され、前記貫通孔に導電性樹脂組成物が充填され、前記シート基板の両面に、その少なくとも一部が前記導電性樹脂組成物に電気的に接続する配線パターンが形成されている、プリント配線基板。
【請求項12】
密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなる複合樹脂組成物層が形成されてなる2以上のシート基板と、2以上の電極層とを備え、前記シート基板の厚さ方向に貫通孔が形成され、前記貫通孔に導電性樹脂組成物が充填され、前記各電極層が電気的に接続された多層配線構造を有する、プリント配線基板。
【請求項13】
密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなり、前記硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、
前記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、
前記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、前記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、
前記中間基板体の両面に金属箔を配置した状態で加熱加圧し、前記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより前記複合樹脂組成物層に前記金属箔を接着させる工程と、
前記金属箔を所定のパターンにパターニングする工程と、
を有する、プリント配線基板の製造方法。
【請求項14】
密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなり、前記硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、
前記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、
前記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、前記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、
前記中間基板体を2つ用意し、2つの前記中間基板体の間に少なくとも2層以上の配線パターンを有する回路基板を挟持した後、その外側に金属箔をそれぞれ配置した状態で、全体を加熱加圧して前記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、
前記金属箔を所定のパターンにパターニングする工程と、
を有する、プリント配線基板の製造方法。
【請求項15】
密度0.8g/cm以上の有機質不織布材の両面に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなり、前記硬化性樹脂組成物が未硬化状態である複合樹脂組成物層が形成されてなるシート基板を準備する工程と、
前記シート基板の両面にカバーフィルムを貼り付けてシート基板材料を得る工程と、
前記シート基板材料の厚さ方向に貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性樹脂ペーストを充填した後、前記カバーフィルムを除去して中間基板体を得る工程と、
2以上の両面プリント配線基板のそれぞれの間に、前記中間基板体を配置し、全体を加熱加圧して前記複合樹脂組成物層中の硬化性樹脂組成物を硬化させることで、前記複数の両面プリント配線基板を前記中間基板体を介して一体的に接合する工程と、
を有する、プリント配線基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−348225(P2006−348225A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178435(P2005−178435)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】