説明

複合体及びダイヤモンド薄膜の合成方法

【課題】ガラス転移点(Tg)が低い通常の多成分系ガラスであっても、高い被覆率でダイヤモンド薄膜を合成するダイヤモンド薄膜の合成方法及びガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体を提供する。
【解決手段】多成分系ガラスからなるガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体であって、ガラス基板が多成分系ガラスであり、かつダイヤモンドの被覆率が50%以上である複合体であって、上記ダイヤモンド薄膜の合成方法は、(A)内部に加熱手段を有する密閉されたチャンバ内に水素及びダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入する工程、(B)前記加熱手段にて加熱し、液体炭素源から炭素を蒸発させてガラス基板上にダイヤモンドとして析出させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体及びガラス基板にダイヤモンド薄膜を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、優れた耐摩耗性、高硬度、高熱伝導性等を有するため、各種の機能性材料として用いられている。例えば、耐摩耗性と高硬度を生かして工作工具、切削工具として使用されている。また、ダイヤモンドの高い熱伝導性を生かしてヒートシンクへ応用され、またその半導体特性を生かして電子デバイスへ応用されている。
特に近年の電子機器の小型化あるいは高性能化が進むなか、電子機器の作動時に発生する熱が電子機器の作動不良を生じさせるため、効率のよい排熱の方法を開発することが緊急の課題となっている。こうした状況下、非常に高い熱伝導性を有するダイヤモンドをヒートシンクとして応用することが求められている。
【0003】
ダイヤモンドを上述のように用途展開するにあたっては、ダイヤモンドの合成技術が不可欠である。ダイヤモンドの合成方法としては、従来、数千気圧、数千度の高温・高圧により合成する方法や化学気相蒸着法(CVD法)などによってシリコン基板上にダイヤモンド薄膜を合成する方法などが知られていたが、前者は合成条件が過酷であり、後者は基板が限定されるという不利益があった。
【0004】
上記従来法に対して、種々の提案がなされている。例えば、ガラス基板などの基体上にマイクロ波プラズマCVD法を用いて、結晶粒径が1nm以上、1000nm未満のナノクリスタルダイヤモンドを主成分として含むナノダイヤモンド薄膜を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、基体温度により、ナノダイヤモンド薄膜を構成する結晶粒子の粒径を制御することができるとしており、具体例として、厚み1.1mmのガラス基板の温度を300℃とし、該基板上にマイクロ波プラズマCVD装置を用いて、膜厚500nmのナノダイヤモンド膜を成膜したことが記載されている(特許文献1、実施例2参照)。
しかしながら、この例ではいかなる種類のガラス基板を用いたかが不明であり、また、ダイヤモンド薄膜の被覆率についての開示がない。
【0005】
また、ガラス基板などの基板表面近傍に対向配置した金属ポルフィリン錯体を加熱し蒸発させながら、高周波放電プラズマを発生させて基板表面上にダイヤモンド薄膜を合成するダイヤモンド薄膜の低温合成方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2には、ガラス基板上に合成されたダイヤモンドのSEM像が開示されており、ダイヤモンドに特徴的な八面体構造の微結晶が見られると記載されている。
しかしながら、この例ではいかなる種類のガラス基板を用いたかが不明であり、また、ダイヤモンド薄膜の被覆率についてはSEM像からかなり低いものと推定される。
【0006】
ところで、本発明者は非晶質シリカガラスなどを基板として用い、これを水素雰囲気下の密閉チャンバ内で固体炭素源から炭素を蒸発させて、基板上にダイヤモンド薄膜を合成する技術を提案した(特許文献3参照)。この技術においては、ダイヤモンド薄膜の被覆率も高く、均一な成膜が可能であったが、ガラス基板温度は750℃と高く(特許文献3、実施例1参照)、基板はシリカガラスなどガラス転移点(Tg)の高いものに限られるものであった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−176132号公報
【特許文献2】特開2006−143561号公報
【特許文献3】国際公開第01/81660号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述のような状況下、ガラス転移点(Tg)が低い通常の多成分系ガラスであっても、高い被覆率でダイヤモンド薄膜を合成するダイヤモンド薄膜の合成方法及びガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、内部に加熱手段を有する密閉されたチャンバ内に水素及びダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入し、この液体炭素源から炭素を蒸発させてガラス基板上にダイヤモンドを析出させる方法により、多成分系ガラス上にダイヤモンド薄膜を50%以上の被覆率で合成することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]ガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体であって、ガラス基板が多成分系ガラスであり、かつダイヤモンドの被覆率が50%以上であることを特徴とする複合体、
[2]前記多成分系ガラスが無アルカリガラス又はソーダライムガラスである上記[1]に記載の複合体、
[3]前記ダイヤモンドの被覆率が80%以上である上記[1]又は[2]に記載の複合体、
[4]前記ダイヤモンドの薄膜の膜厚が0.5〜10μmである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体、
[5]前記ダイヤモンドの平均粒子径が10〜5000nmである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の複合体、
[6]内部に加熱手段を有する密閉されたチャンバ内で、多成分系ガラスからなるガラス基板上にダイヤモンド薄膜を合成する方法であって、(A)該チャンバ内に水素及びダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入する工程、(B)前記加熱手段にて加熱し、液体炭素源から炭素を蒸発させてガラス基板上にダイヤモンドとして析出させる工程を有するダイヤモンド薄膜の合成方法、
[7]前記多成分系ガラスが無アルカリガラス又はソーダライムガラスである上記[6]に記載のダイヤモンド薄膜の合成方法、
[8]前記液体炭素源がアセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[6]又は[7]に記載のダイヤモンド薄膜の合成方法、
[9]前記(B)工程において、ガラス基板の温度が350〜650℃である上記[6]〜[8]のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法、
[10]前記(A)工程においてチャンバ内の水素の圧力を8〜160kPaとし、かつ液体炭素源の圧力を100〜2000Paとする上記[6]〜[9]のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法、及び
[11]前記加熱手段がフィラメントによる加熱である上記[6]〜[10]のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス転移点(Tg)が低い通常の多成分系ガラスであっても、高い被覆率でダイヤモンド薄膜を合成することができ、ガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の複合体はガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる。ここで用いるガラス基板は多成分系ガラスであり、具体的には、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリバリウムガラス、鉛ガラス等、各種の商業用ガラスが挙げられ、例えばTgが600℃以下のガラス基板であっても使用することができる。これらのうち、汎用性などを考慮すると、無アルカリガラス及びソーダライムガラスが好ましい。
【0013】
本発明の複合体を製造する方法、すなわちガラス基板にダイヤモンド薄膜を合成する方法について以下詳述する。
本発明の方法は、内部に加熱手段を有する密閉されたチャンバ内で、多成分系ガラスからなるガラス基板上にダイヤモンド薄膜を合成する方法であって、(A)該チャンバ内に水素及びダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入する工程、(B)前記加熱手段にて加熱し、液体炭素源から炭素を蒸発させてガラス基板上にダイヤモンドとして析出させる工程を有する。なお、本発明における密閉されたチャンバとは、原料気体の導入、反応気体の排気を必要としない完全閉鎖系であることを意味する。
【0014】
まず、本発明のダイヤモンド薄膜の合成方法に用いる装置について図1を用いて説明する。図1はガラス基板上にダイヤモンド薄膜を合成するための装置におけるチャンバ内の構造の一例を示したものであり、密閉可能なチャンバ内に設置されるものである。
図1に示す例では、通電端子兼用の一対の加熱手段支持部材1が立設されており、該支持部材1に加熱手段2が設置される。支持部材1を通して電源(図示せず)から給電され、加熱手段2が発熱し、高温に昇温する。
加熱手段2としては特に限定されないが、高い温度を安定して維持することができ、後に詳述する液体炭素源を効果的に蒸発させ得る点からタングステン製のフィラメント等が好ましい。図1に示す例では加熱手段2としてタングステン製フィラメントを用いている。この加熱手段2の温度は、例えば、チャンバの外方に配置された放射温度計(パイロメーター)によって、透明なシリカガラス製などのチャンバの窓部を通して検出される。
また、図1に示す例では、ガラス基板支持部材3が立設され、該支持部材間に架け渡されるようにしてガラス基板4が加熱手段2の所定距離下方に配置されている。このガラス基板4の温度は熱電対5によって検出される。なお、加熱手段2とガラス基板4の相対的な位置関係については特に限定されず、図1に示すようにそれぞれの長径軸が直交してもよいし、平行であってもよい。また、ガラス基板4はターンテーブル上に設置され、ダイヤモンド薄膜の合成中に回転できるようにしていてもよい。
【0015】
チャンバ内を所定の圧力の水素ガス雰囲気とするために、該チャンバ内に水素ガスボンベからバルブ及び配管を介して水素ガスが供給できるようになっている。また、チャンバ内から空気を排出するための排気装置が該チャンバに接続される。また、チャンバ内のガス圧の検知装置が設けられている。
【0016】
本発明の合成方法では、まずチャンバ内にガラス基板4を設置し、加熱手段2をガラス基板4の近接した上方に設置する。ガラス基板4は上述の材質からなり、また、ダイヤモンド薄膜を合成する側の表面に亀裂を設けることが好ましい。この亀裂によりダイヤモンド薄膜がより合成されやすくなる。
この亀裂は例えば、ダイヤモンドパウダー等を用い、超音波振動などにより、ガラス表面に衝突させて生じさせることが可能である。また、該亀裂の生じる部分をマスキング等によって制御することで、ダイヤモンド薄膜を任意の場所に任意の形状で合成することも可能である。
【0017】
上記加熱手段2とガラス基板4の距離は変動しないことが好ましく、例えば、図1に示すように、タングステンフィラメント(加熱手段2)と基板4との距離を一定に保つことが好ましい。また、タングステンフィラメントの形状については特に制限はないが、吊り型にすると、基板との距離を一定に保ちやすく好ましい。
加熱手段2の温度は、フィラメントの太さ、長さ、電流、電圧などの条件により制御することができるが、通常、加熱手段2の温度を2000〜2300℃程度に制御する。この温度範囲に制御することにより、ガラス基板4の温度を350〜600℃に制御することができ、ガラス基板4を軟化、溶融させることなく、基板上にダイヤモンド薄膜を効果的に合成することができる。なお、ガラス基板4は加熱手段2からの輻射熱によって主に加熱されるが、必要に応じ、ガラス基板4を加熱するための加熱ヒータ又は水冷パイプなどの冷却手段を備えていてもよい。
また、ガラス基板の裏面側に金属板などのバックアップ材を設けることにより、基板温度をより高温の650℃程度まで、加熱することが可能である。バックアップ材としては、熱伝導率の高いものが好ましく、具体的には、銅などが好適に挙げられる。
【0018】
次に、チャンバを密閉し、排気装置によってチャンバ内の空気を排出する。好ましくはチャンバ内の圧力が13Pa(0.1Torr)以下となるまで排気する。次に、水素ガスボンベから水素を導入し、また、別の配管からダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入する。
チャンバ内の水素の圧力としては8〜160kPaの範囲が好ましい。この範囲であるとガラス基板上に効率的にダイヤモンド薄膜が合成できる。以上の点から、チャンバ内の水素の圧力は70〜90kPaの範囲がさらに好ましい。
【0019】
液体炭素源としては種々の化合物が挙げられるが、蒸発が容易であり、かつ取り扱いが容易であるとの観点から、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が好ましく、特にアセトン及びエタノールが好ましい。
液体炭素源のチャンバ内での圧力については、100〜2000Paとすることがダイヤモンド薄膜を効率的に合成するとの観点から好ましく、さらには270〜800Paの範囲が好ましい。
ガラス基板上のダイヤモンド薄膜の合成に要する時間としては特に制限はなく、合成時間が長いほどダイヤモンド薄膜形成領域が広くなり、ダイヤモンド薄膜の被覆率が向上し、ダイヤモンド薄膜の膜厚が厚くなる傾向にあるが、通常5〜200分程度が好ましい。
【0020】
上述の合成方法により得られる本発明の複合体、すなわちガラス基板にダイヤモンド薄膜が積層してなる複合体は、ダイヤモンドの被覆率が50%以上であり、ダイヤモンド薄膜の合成条件を最適化することによって、該被覆率を80%以上、さらには90%以上、特には99%以上にまで高めることが可能である。
また、該ダイヤモンド薄膜の膜厚としては0.5〜10μmの範囲のものが得られる。
さらに、本発明の複合体におけるダイヤモンドの平均粒子径としては、10〜5000nmの範囲のものが得られる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
評価方法
(1)ラマン分光分析
各実施例で合成した薄膜について、ダイヤモンド薄膜が合成されているか否かを、ラマン分光分析計(日本分光(株)製「NRS−1000」)を用いて、約800〜1800cm-1の範囲で確認した。
(2)走査型電子顕微鏡による観察
各実施例で合成したダイヤモンド薄膜について、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−5200」)を用いて観察した。測定に際しての加速電圧の条件は、実施例1及び2では25kV、実施例3では15kV、実施例4では5kVとした。また、観察前にダイヤモンド薄膜上に金を蒸着して観察した。
【0022】
実施例1
基板として無アルカリガラス(NHテクノグラス(株)製、「NA35」、厚さ;1mm)を用い、密閉チャンバ内に該基板を設置した。加熱手段2としてはタングステン製のフィラメントを用い、加熱手段2とガラス基板4の距離を3mmとした。
このチャンバ内に水素ガス79.5kPa(596Torr)と液体炭素源としてのアセトンを533Pa(4Torr)導入した。フィラメントの温度をガラス基板温度が550℃で一定となるように、2200〜2300℃の範囲で制御し、反応時間を40分間とした。
実施例1で得られた薄膜について、ラマン分光分析法により測定した結果を図2に示す。図2に示すようなラマンシフトが見られ、ダイヤモンド薄膜が合成されていることが確認された。また、実施例1で得られたダイヤモンド薄膜の、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示す。平均粒子径2000nm程度のダイヤモンド粒子が、被覆率約92%の薄膜として合成されていることが確認された。
【0023】
実施例2
基板としてソーダライムガラス(日本板硝子(株)製、厚さ;1mm)を用い、密閉チャンバ内に該基板を設置した。加熱手段2としては実施例1と同様にタングステン製のフィラメントを用い、加熱手段2とガラス基板4の距離を4mmとした。
このチャンバ内に水素ガス79.5kPa(596Torr)と液体炭素源としてのアセトンを533Pa(4Torr)導入した。フィラメントの温度をガラス基板温度が440℃で一定となるように、2000℃に制御し、反応時間を40分間とした。
実施例2で得られた薄膜について、ラマン分光分析法により測定した結果を図4に示す。図4に示すようなラマンシフトが見られ、ダイヤモンド薄膜が合成されていることが確認された。また、実施例2で得られたダイヤモンド薄膜の、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図5に示す。平均粒子径1500nm程度のダイヤモンド粒子が、被覆率約60%の薄膜として合成されていることが確認された。
【0024】
実施例3
実施例1において、厚さの異なる無アルカリガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」、厚さ;0.7mm)を用い、該ガラス基板の裏面にバックアップ材として、厚さ0.7mmの銅板を設け、ガラス基板温度が約630℃で一定となるように、フィラメントの温度を2600℃に制御し、反応時間を160分間としたこと以外は実施例1と同様にしてダイヤモンド薄膜の合成を行った。該薄膜について、ラマン分光分析法により測定した結果を図6に示す。図6に示すようなラマンシフトが見られ、ダイヤモンド薄膜が合成されていることが確認された。また、該ダイヤモンド薄膜の、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図7に示す。平均粒子径3〜4μmのダイヤモンド粒子が、被覆率約99%の薄膜として合成されていることが確認された。
【0025】
実施例4
実施例2において、ガラス基板温度が450℃で一定となるように、フィラメントの温度を2200℃に制御したこと以外は実施例2と同様にしてダイヤモンド薄膜の合成を行った。該薄膜について、ラマン分光分析法により測定した結果を図8に示す。図8に示すようなラマンシフトが見られ、ダイヤモンド薄膜が合成されていることが確認された。また、該ダイヤモンド薄膜の、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図9に示す。平均粒子径1μm程度のダイヤモンド粒子が、被覆率約95%の薄膜として合成されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ガラス転移点(Tg)が低い汎用の多成分系ガラス上であっても、高い被覆率でダイヤモンド薄膜を合成することができる。従って、ガラス表面に保護剤としてダイヤモンドコーティングすることで機械的性質を向上させたり、熱的物性の向上、化学的性質の向上など種々の用途に応用展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の合成方法に用いるチャンバ内の構造を示す模式図である。
【図2】実施例1で合成されたダイヤモンド薄膜のラマンスペクトルである。
【図3】実施例1で合成されたダイヤモンド薄膜のSEM写真である。
【図4】実施例2で合成されたダイヤモンド薄膜のラマンスペクトルである。
【図5】実施例2で合成されたダイヤモンド薄膜のSEM写真である。
【図6】実施例3で合成されたダイヤモンド薄膜のラマンスペクトルである。
【図7】実施例3で合成されたダイヤモンド薄膜のSEM写真である。
【図8】実施例4で合成されたダイヤモンド薄膜のラマンスペクトルである。
【図9】実施例4で合成されたダイヤモンド薄膜のSEM写真である。
【符号の説明】
【0028】
1 加熱手段支持部
2 加熱手段
3 基板支持部材
4 基板
5 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板にダイヤモンドの薄膜が積層してなる複合体であって、ガラス基板が多成分系ガラスであり、かつダイヤモンドの被覆率が50%以上であることを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記多成分系ガラスが無アルカリガラス又はソーダライムガラスである請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ダイヤモンドの被覆率が80%以上である請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記ダイヤモンドの薄膜の膜厚が0.5〜10μmである請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
前記ダイヤモンドの平均粒子径が10〜5000nmである請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
内部に加熱手段を有する密閉されたチャンバ内で、多成分系ガラスからなるガラス基板上にダイヤモンド薄膜を合成する方法であって、(A)該チャンバ内に水素及びダイヤモンド薄膜の炭素源としての液体炭素源を導入する工程、(B)前記加熱手段にて加熱し、液体炭素源から炭素を蒸発させてガラス基板上にダイヤモンドとして析出させる工程を有するダイヤモンド薄膜の合成方法。
【請求項7】
前記多成分系ガラスが無アルカリガラス又はソーダライムガラスである請求項6に記載のダイヤモンド薄膜の合成方法。
【請求項8】
前記液体炭素源がアセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6又は7に記載のダイヤモンド薄膜の合成方法。
【請求項9】
前記(B)工程において、ガラス基板の温度が350〜650℃である請求項6〜8のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法。
【請求項10】
前記(A)工程においてチャンバ内の水素の圧力を8〜160kPaとし、かつ液体炭素源の圧力を100〜2000Paとする請求項6〜9のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法。
【請求項11】
前記加熱手段がフィラメントによる加熱である請求項6〜10のいずれかに記載のダイヤモンド薄膜の合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−150275(P2008−150275A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293438(P2007−293438)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(500185874)
【Fターム(参考)】