説明

複合材および複合材の製造方法

【課題】 電磁誘導加熱式容器の素材となる複合材に空隙部を簡単に形成できるようにする。
【解決手段】 非磁性金属板と磁性金属板の対向面の全面にそれぞれ予め接合用金属層を設けておき、ホットプレス装置の軸方向両側に対向配置される一対のプレス型の間にセットし、前記プレス型の少なくともいずれか一方に、対向する相手方のプレス型に向けて突出する段状突出部を設けておき、ホットプレス時に、前記段状突出部と相手方プレス型に挟まれる領域の金属板同士は前記接合用金属層が一体的に結合される接合部として形成する一方、前記突出段部に挟まれない領域の金属板同士は空隙部となる未接合部として形成し、部分的に空隙部を有する複合材としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板が積層された複合材および、その製造方法に関し、特に、電磁誘導加熱材として好適に用いられると共に、積層する金属板の間に空隙部を介在させて断熱性能を向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、IHジャー炊飯器の内釜等に用いられる電磁誘導加熱容器等は、磁性金属板と非磁性金属板との複合材により形成されている。例えば、発熱層となるステンレス、鉄等の磁性金属板と、伝熱層となるアルミニウム等の非磁性金属板とのクラッド材を絞りプレス加工して形成し、外面側を上記磁性金属板として誘導コイルと対向させ電磁誘導加熱するものとしている。
上記クラッド材は、上記非磁性金属板と上記磁性金属板を重ね合わせてロール圧延によりクラッド材としている場合が多い。
【0003】
また、この種の電磁誘導加熱容器に用いられる複合材では、前記金属板の間に空隙部を設けて、加熱状態を保持できる断熱性能を併せ持たせることが要求されている。
前記要求に対して、本出願人は、特開2004−9097号公報(特許文献1)において、図9に示すように、非磁性金属板1の接合面に予め接合用金属となるメッキ層2を設け、該メッキ層2の形成時にマスキングを施して非メッキ部3を設けておく一方、磁性金属板4の接合面の全面に予め接合用金属となるメッキ層5を設けておき、これら金属板1と4とをホットプレス法(熱間−軸方向加圧)で接合する時に、非メッキ部3を未接合の真空部として残存させて、真空部6を設けた複合材の製造方法を提供している。
【0004】
前記製造方法によると、互いに接合される金属板の一方の接合面、部分的に非メッキ部を設けているだけで、これら金属板同士をホットプレスとした時に、金属板同士は非メッキ部分では一体的に接合することができず、真空部6を確実に設けることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−9097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した方法によれば、一方の金属板の接合面に非メッキ部を設けていないだけで確実に真空部を形成することができるが、一方の金属板の接合面にメッキ層2と非メッキ部3とを設ける作業は非常に手間がかかり、加工コストがアップする問題がある。
即ち、まず、図10(A)に示すように、金属板1の表面にポリエチレンシート等からなる円形状で未だ露出部を設けていないマスキングシートMを貼り付けているが、メッキ層2の厚さを1〜50μm程度の非常に薄いメッキ層とする場合、マスキングシート自体も厚さ1〜50μm程度の薄いシートとなる。このように非常に薄いマスキングシートを、金属板の表面に皺等を発生させずに、びったりと貼り付ける作業は非常に困難な作業となる。また、皺があるとメッキ時に溶融金属が皺の部分に浸入してマスキング効果を得ることが困難となる。
前記マスキングシートMを金属板1の表面に張り付けた後に、図10(B)に示すように、レーザーでマスキングシートMに切れ目線Z1,Z2を入れ、その後、図10(C)に示すように、切れ目線Z1とZ2に沿って除去部分Aー1、A−2を剥離して、メッキを行う領域を露出させる。その際、除去部分Aー1、A−2の剥離作業はマスキングシートMが金属板に付着していると共にマ非常に薄いことから剥離作業が非常に困難となる。
前記剥離作業が正確に行えない場合、形成される真空部の位置が設計位置からずれることとなり、金属板の表面からマスキングシートを一旦剥がしてやり直す必要がある。
【0007】
さらに、図10(D)に示すように、マスキングシートMを金属板4に貼り付けた状態でメッキすると、メッキされる溶融金属2’により、薄いマスキングシートMは加熱されて、金属板1に溶着された状態になりやすい。
メッキ後には、図10(E)に示すように金属板1からマスキングシートMを剥離する必要があるが、マスキングシートMは非常に剥がれくく、剥離用の治具を用いてマスキングシートMの剥離を行っているが作業手数がかかる。さらに、マスキングシートMの剥離時に金属板4の表面に損傷を与える恐れがある。
【0008】
このように、金属板の表面にマスキングシートを貼り付け、レーザーで切れ目を入れ、切れ目に沿って除去部分を剥離し、その後、メッキし、メッキ後にマスキングシートMを剥離する作業が必要となる。よって、実際上において非常に作業手数がかかると共に、高度の熟練が必要となるため不良率の発生もかなり高くなる題がある。その結果、金属板の接合面に部分的に非メッキ部を設ける工程が、コストアップの大きな要因となっている。
【0009】
また、複合材の用途サイズに応じてマスキングシートが形成され、該マスキングシートで規定した位置にメッキ部と非メッキ部が設けられた複合材とされ、例えば、該複合材を電磁調理用炊飯器の内釜とする場合に、所定のサイズの内釜用に限定されたものとなる。
従って、他のサイズの内釜形成用の複合材として汎用することはできない問題もある。
【0010】
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたもので、金属板の接合面にメッキ部と非メッキ部とを設けることなく、接合される金属板の間に空隙部を形成できるようにし、前記マスキングシートを用いる作業工程を無くして生産性の向上を図り、その結果、コストの低下および使用材料の汎用化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1の発明として、
積層する複数の金属板を熱間一軸方向加圧法(ホットプレス)で接合する複合材の製造方法であって、
前記積層する複数の金属板は、非磁性金属板と磁性金属板、あるいは非磁性金属板と磁性金属板とこれら非磁性金属板と磁性金属板との間に介在される1または複数の中間金属板とし、
前記積層する複数の金属板の少なくとも1カ所の対向面の全面に、それぞれ予め接合用金属層を設けておき、
前記積層する複数の金属板を、ホットプレス装置の軸方向両側に対向配置される一対のプレス型の間にセットし、前記プレス型の少なくともいずれか一方に、対向する相手方のプレス型に向けて突出する段状突出部を設けておき、
ホットプレス時に、前記段状突出部と相手方プレス型に挟まれる領域の金属板同士は前記接合用金属層が一体的に結合される接合部として形成する一方、前記突出段部に挟まれない領域の金属板同士は空隙部となる未接合部として形成し、部分的に空隙部を有する複合材としていることを特徴とする複合材の製造方法を提供している。
【0012】
前記のように、本発明では、接合される金属板の接合面全面のいずれにもそれぞれ接合用金属層を設けていると共に、段状突出部を設けたプレス型を備えたホットプレス装置を用い、高温高圧かつ真空(あるいは減圧)下でホットプレスしている。
ホットプレス装置のプレス型には段状突出部を設けているため、対向する一対のプレス型の間隔を段状突出部を設けた領域では狭める一方、段状突出部を設けていない部分ではプレス型間の間隔を相対的に広がることになる。その結果、プレス型間の金属板に負荷される押圧力に差が生じ、段状突出部を設けて間隔を狭くした領域では接触する前記接合用金属間で金属拡散が発生し物性的にも一体的に接合する。一方、段状突出部を設けていない領域では押圧力が加わらず、対向する接合面の全面に接合用金属層を設け、これら接合用金属層が接触している場合でも、対向する接合用金属間に金属拡散が発生せず未接合な空隙部となる。
かつ、空隙部はホットプレスが真空状態あるいは減圧状態で行われることより、空隙部は略真空状態となっている。空隙部が略真空となることで、断熱効果を高めることができ、その結果、容器とした場合に保温性能を高かめることができる。
【0013】
このように、接合面の全面に接合用金属層を設けておくことができるため、特許文献1のようにマスキングシートを用いてメッキ層と非メッキ部を設ける必要を無くしている。
本発明で採用するホットプレス法は、特開平6−179083号公報、特開平9−129363号公報で開示された方法が好適に採用出来る。
【0014】
プレス型に設ける前記段状突出部は、上下プレス型のいずれか一方でも良いし、両方に対向して形成してもよい。また、段状突出部はプレス型の少なくとも外縁全周に沿って設け、複合材の外縁全周は全て金属板同士を接合し、空隙部を密封した状態で設けている。この段状突出部に囲まれた領域内において所要位置に所要の形状の段状突出部を設けることで、所要位置に所要形状の空隙部を備える複合材をホットプレスにより簡単に製造することができる。即ち、空隙部とする以外の部分に段状突出部をプレス型に設けておけばよい。
なお、プレス型を厚板として、部分的に凹部を設け、該凹部以外を段状突出部としてもよい。
前記段状突出部を設けるプレス型の材質は高温下で高圧を金属板に伝達するため,高温高圧に耐える材料とされ、鉄系耐熱合金,セラミック,カーボン等で形成することが好ましい。
このように、本発明では、複合材とする金属板の接合面に全面に亙って接着用金属層を設けておくことができ、プレス型の段状突出部の形成位置におよび形状を変えるだけで、任意の位置に任意の形状の空隙部を有する複合材とすることができ、前記接合用接着層を設けた金属板自体を汎用品とすることができる。
【0015】
前記積層する複数の金属板において、磁性金属板と中間金属板の間、中間金属板と非磁性金属板の間、複数の中間金属板を積層する場合には中間金属板の間において、複数の対向する層間で、前記接合用金属層を接合面に設けておくと、前記プレス型の段状突出段部に挟まれない領域では、異なる層間で複数の空隙部となる未接合部を形成することができる。
このように、多層の金属板間に複数の空隙部を層状に設けると、より断熱効果を図ることができ、容器とした場合に保温性能をより高めることができる。
【0016】
前記接合用金属層は、前記非磁性金属板、磁性金属板あるいは前記中間金属板の対向する接合側表面の全面に、予めメッキ、蒸着、イオン蒸着、溶融金属浸漬法あるいは溶融金属溶射法で所要の厚さで設けている。
いずれの方法で接合用金属層を設けてもよいが、コストや均一な厚さとできる点よりメッキにより接合用金属層を設けることが好ましい。
また、この各金属板の接合面側に敬せする接合用金属層は、1層のメッキ層に限らず多層メッキ層としてもよい。該接合用金属層の厚さは多層メッキとした場合においても接合用金属層の厚さは2μm以上,20μm以下、好ましくは8〜18μm程度としている。よって、対向した接合用金属層がプレスにより接合された場合には合計厚さが4μm〜40μm程度としていることが好ましい。
【0017】
電磁誘導加熱容器の素材となる複合材を製造する場合には、ホットプレスで接合する非磁性金属板としてアルミニウムまたはアルミニウム合金等が好適に用いられ、他方の磁性金属板としてはステンレス、鉄等が好適に用いられる。
【0018】
前記1枚の非磁性金属板と1枚の磁性金属板とを単位組とし(必要に応じて中間金属板を含めて1つの単位組とし)、この単位組を複数前記プレス型の間にセットして、空隙部を有する複合材を複数枚同時に製造と、生産性を高めることができる。
前記のように、複数枚の複合材を一度のホットプレスで同時に形成するためプレス型内に多数の金属板を積層する場合、対向する両方のプレス型に対向させて段状突出部を突出させてもよい。
なお、前記非磁性金属板および磁性金属板の板厚は比較的薄い場合には、一方のプレス型のみに段状突出部を設けても、確実に接合部と空隙部となる非接合部とを設けることができる。
【0019】
前記のように複数の複合材を積層してホットプレスする場合には、各組の金属板の間に、2mm以下とできるだけ薄く且つ耐久性のある分離材を介在させることが好ましい。該分離材としてはAl箔アルミナ等のセラミックシート,カーボンシートシート,ガラスクロス等の編物,布状等を採用できる。さらに、Mo(モリブデン)または,W(タングステン)または,ステンレスまたは、アルマイトまたは,アルミまたは、カーボンまたは,セラミック(アルミナ,ジルコニア,窒化珪素)からなる分離材でもよい。
【0020】
前記非磁性金属板と磁性金属板との複合材を熱間一軸方向加圧法(ホットプレス)で形成する場合には、温度180〜600℃、好ましく200℃以上450℃以下、圧力200〜1000kg/cm、加圧時間10min〜30h、好ましくは30min〜1h、減圧下または10−1torr以下の真空下とすることが好ましい。
前記した条件下でホットプレスを行うことにより、前記段状突出部を設けていない部分では、前記金属板の対向する接合面を未接合部として空隙部とすることができる。一方、段状突出部を設けている領域では、接合界面へのガス分子の介在を低減することで、接合用金属同士の金属拡散を促進することもできき、接合強度を高めることができる。なお、本発明の複合材は金属板同士の接合強度が、幅5mmの複合板の引き離し強度で,3kg以上としていることが好ましい。
金属板同士をホットプレスにより接合して複合材とすると、板厚や接合強度等を均一とすることができ、絞り加工を行った際に、割れやしわ等の発生を防止することができる。
【0021】
第2の発明として、前記方法で製造された複合材を絞りプレス加工して底壁と周壁を備えた容器の製造方法を提供している。
本方法では、前記一体的な接合部と空隙部となる未接合部を挟んで対向する金属板は、互いの引張率を相違させ、絞りプレス加工時に生じる伸び量の相違により、未接合部に形成される空隙部を拡大させるようにし、この空隙部の拡大率を対向する金属板の引張率で予め設定している。
【0022】
前記ホットプレスにより製造した複合材では、対向する接合用金属層間で金属拡散が発生して一体的に接合されている部分と、接合用金属層が未接合で空隙となる部分を形成している。この空隙となる部分の容積は比較的小さく、場合によっては物性的には未接合であるが、目視では接触状態に見える程度に空隙部が微小である。
この空隙部が微小な複合材は、絞りプレス加工で底壁と周壁を有する容器とするが、この絞りプレス加工時に、空隙部を挟む金属板の種類が相違し、金属板の引張率が相違すると、絞りプレス加工時に引張率の相違により空隙部が拡大することとなる。
即ち、引張率の大きい金属板側が引張率の小さい金属板側に対して膨らむこととなり、空隙部の容積が拡大する。
例えば、アルミニウム板とステンレス板とでは、アルミニウムの方が引張時における伸び率が大きいため、アルミニウム板がステンレス板に対して膨らむこととなり、空隙部が拡大する。
このように、ホットプレスで形成された複合材に、引張力を負荷して空隙部の拡大を図ることができる。かつ、金属板同士の引張率を差より、拡大される空隙部の容積を算出することが可能となり、言い換えれば、求める空隙部の容積に応じて所要の引張率を有する金属板を用いればよい。
【0023】
さらに、前記一体的な接合部と空隙部となる未接合部を挟んで対向する金属板は、互いの熱膨張率を相違させ、前記絞りプレス加工時あるいは絞りプレス加工後に所要温度で加熱し、
前記熱膨張率の相違により前記未接合部に形成される空隙部を拡大させ、該空隙部の熱膨張による拡大率を前記対向する金属板の熱膨張率で予め設定してもよい。
前記引張率の差を利用する場合と同様で、熱膨張率が大きい金属板は熱膨張率が小さい金属板に対して膨らむこととなり、空隙部の容積は増大する。例えば、アルミニウム板とステンレス板とでは、アルミニウムの方が加熱時における膨張率が大きいため、アルミニウム板がステンレス板に対して膨らむこととなり、空隙部が拡大する。
【0024】
前記のように、複合材を絞りプレス加工する際に空隙部が拡大され、つづいて加熱すると更に空隙部を拡大させることができ、その結果、断熱空間を増大させて、容器とした場合に保温性を高めることができる。かつ、空隙部を挟む両側の金属板の引張率、熱膨張率の差から空隙部の増大する容積を求めることが出来る。言い換えれば、増大させる容積に合わせて所要の引張率と熱膨張率を有する金属板を組み合わせればよい。
【0025】
本発明は、第3の発明として、非磁性金属板と磁性金属板とが部分的に空隙部を介在させて接合されている複合材であって、
前記非磁性金属板と磁性金属板とは、互いに対向する接合面側のそれぞれに接合用金属層が設けられ、
前記空隙部では前記接合用金属層同士が未接合で空間をあけて対向している一方、該空隙部を囲繞する部分では前記接合用金属層同士が接合していることを特徴とする複合材を提供している。
【0026】
前記複合材では、非磁性金属層と磁性金属層の間に未接合の空隙部を設けているため、この空隙部の存在により断熱性能を得ることができる。
また、空隙部の位置や形状、非磁性金属層と磁性金属層をそれぞれ形成する金属板の厚みや材質等の組み合わせを適宜変更するだけで、種々の性能の複合材を得ることができる。
従って、本発明の複合材は、断熱性能にも優れ、要求性能に応じた設計変更が容易であり、汎用性に優れ、種々の用途に用いることができる。
【0027】
非磁性金属板と磁性金属板の間に1あるいは複数の中間金属板を介在させ、前記非磁性金属板と中間金属板の対向面、中間金属層板間の対向面、中間金属板と磁性金属板の対向面のいずれか1カ所あるいは複数箇所に部分的に空隙部を介在させて接合されてもよい。
【0028】
前記した非磁性金属板と磁性金属板との間に空隙部を設けた複合材、非磁性金属板と中間金属板と磁性金属板とのいずれかの間に1または複数の空隙部を設けて複合材は、いずれも、前記第1の発明の複合材の製造方法によって製造すると、簡単に製造することができるが、この第1の発明の製造方法に限定されるものではない。
【0029】
本発明の空隙部を有する複合材は、非磁性金属板および磁性金属板(さらに、必要に応じて介在させる中間金属板)とも、それぞれ厚さが均一な金属板の接合面側の全面に接合用金属層を均一厚さで設けたものを接合して形成している。よって、空隙部を介在させた部分では、該真空層の厚さ分だけ複合材の断面板厚は、空隙部を介在させずに接合させた部分の断面板厚よりも大となっている。しかしながら、前記空隙部の厚さは、空隙部を外観上で視認させたくない場合には約1mm未満程度とすればよく、逆に、空隙部の存在を外観できるようにしたい場合には1mm以上にして段差を発生させることもできる。
さらに、空隙部の容積を増大させたい場合には、空隙部と対向する前記非極性金属板あるいは/及び磁性金属板に予め浅い凹部を設けれておいても良いが、その場合にも、接合側面の全面にわたって接合用金属層を設けているため、該凹部の内面にも接合用金属層が設けられている。このように空隙部の容積を増大させることにより、断熱性能をさらに向上させることができる。
【0030】
本発明の複合材を電磁誘導加熱式の炊飯器内釜や電磁誘導加熱式の鍋の素材とする場合、円形状のブランクとされ、絞りプレス加工で、中央部が底壁とされると共に外周部が周壁に形成され、前記空隙部は周壁となる外周部分に設けられていることが好ましい。
即ち、対向する接合面側にそれぞれ接合用金属層を設けた磁性金属板と非磁性金属板とは、いずれも円形に打ち抜かれた形状とし、この状態でホットプレス装置の一対のプレス型の間にセットして、外周部に空隙部を設けている。
この絞りプレス加工時に、空隙部を挟む両側の金属板の引張率が相違していると、前記したように、空隙部が拡大する。さらに、炊飯器内鍋に目盛りを印刷し、該印刷を定着させるため等の目的で加熱すると、該加熱で空隙を挟む両側の金属板の熱膨張率が相違していると、前記したように、さらに空隙部を増大させることができる。
【0031】
このように、電磁誘導により発熱する磁性金属板と、伝熱層となる非磁性金属板との間の空隙部が周壁となる位置に設けられることにより、電磁誘導加熱容器の断熱性を維持して保温性能を高めることができ、保温に要する電気代を大幅に低減できる。
また、本発明の複合材を絞り加工で、底部と周壁とを備えた所望形状の容器を形成できる上に、プレス加工時の引っ張り力により、空隙部の拡大できる。
【0032】
円形状のブランクとした複合材は、その外周部分に設ける空隙部を同心の円環状とし、絞りプレス加工で炊飯器内釜等に成形すると、周壁の全周に連続する空隙部となる。このように、周壁の全周に空隙部を連続して設けることにより、断熱性能を周方向に均一に高めることができ、全体的にムラのない保温を図ることができる。
なお、空隙部は周壁となる部分に並列した垂直方向、クロス方向あるいは点在するように設けることができ、その他、要求性能に応じて所望の位置及び構成に適宜設定可能である。
【0033】
前記非磁性金属層はアルミニウム、アルミニウム合金、非磁性ステンレス等からなる金属板で形成し、
前記磁性金属層はフェライト系ステンレス等の磁性ステンレス、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、コバルト、コバルト合金等からなる金属板で形成することが好ましい。
また、前記磁性金属板と非磁性金属板の接合面に設ける前記接合用金属層は、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、錫等の金属層から形成することが好ましい。
特に、接合用金属としては銅で形成すると、接合力を高めることができる。
【0034】
また、電磁誘導加熱式の炊飯器を含めた調理容器とする場合には、容器内面側に位置させる非磁性金属の表面に微細な凹凸部を設け、該凹凸部の表面にフッ素樹脂層を設けていることが好ましい。
このように、非磁性金属板の表面にエッチング等により、微細な凹凸加工面を設けることで、フッ素樹脂が表面の凹凸に入り込み、非粘着性のフッ素樹脂によるベースコートを強固に行うことができる。よって、複合材に容易に離型性を付与することができる。
【発明の効果】
【0035】
上述したように、本発明では、空隙部を形成するために、マスキングシートを用いてメッキ層と非メッキ部とを設けることなく、金属板の接合面側の全面にメッキ等を施して接合用金属層を設けることができ、ホットプレス装置のプレス型の形状を改良するだけで、ホットプレス時に任意の位置に任意の形状の空隙部を簡単に設けることができる。
よって、接合用金属層を全面に設けた金属板は、所定サイズの所定位置に空隙部を形成する用途に限定されず、他用途にも用いることができ、汎用性を付与することできる。
【0036】
また、非磁性金属板と磁性金属板とを両外側にそなえる複合材において、その内部の任意の位置に任意の形状の略真空の空隙部を設けることができるため、該複合材より形成した電磁誘導加熱式容器、例えば、IHジャー炊飯器の内釜とした場合に、保温性能を飛躍的に高めることができる。よって、保温時における電気代を節約できる炊飯器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の複合材10を示す。該複合材10は非磁性金属板と磁性金属板とを積層したもので、IHジャー炊飯器の内釜等の電磁誘導加熱容器の素材とするものである。
【0038】
複合材10は非磁性金属板としてアルミニウム板11を用いて円板形状とし、磁性金属板としてはステンレス板12を用いて円板形状としている。なお、図1中では、図示されていないが、アルミニウム板11の上面にはフッ素コートが施されている。
該複合材10は円板の中心に対して同心円となる所要幅Wとした円環形状の空隙部15をアルミニウム板11とステンレス板12の間に設けている。
【0039】
複合材10は図2(A)(B)に示すように、アルミニウム板11とステンレス板12との互いに接合する接合面11aと12aの全表面に、接合用金属層を構成する銅層16、17をメッキにより設け、これら銅層16と17とを熱間−軸方向加圧法(ホットプレス)で接合して、一体化した接合部28を設けると共に、銅層16と17とが接合されずに空隙15となる未接合部15ー1としている。
【0040】
前記非磁性金属板は熱伝導性が良好で伝熱層となるものであれば特に限定されなず、アルミニウム、アルミニウム合金、非磁性ステンレス等の材料が好適に用いられるが、本実施形態では熱伝導性や加工性が良好となる点から、アルミニウム板11を用いている。
アルミニウム板11は、強度や熱伝導性等の観点から0.5〜5.0mm(本実施形態では1.7mm)の厚みのものを使用し、後述する電磁誘導加熱容器6の略展開形状の大きさの円形に打ち抜いている。また、アルミニウム板11の接合面に設けた銅層16のメッキ厚さは1〜50μm(本実施形態では10μm)としている。
【0041】
前記磁性金属板は、高周波磁界により渦電流が流れて発熱層となるものであれば特に限定されず、磁性ステンレス、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、コバルト、コバルト合金等の材料が用いられるが、本実施形態では、前記したように磁性のステンレス板12を用いている。
ステンレス板12は、0.1〜3.0mm(本実施形態では0.5mm)の厚みのものを使用して、上記アルミニウム板11と同径となるように円形に打ち抜いており、その一面に設ける銅層16の厚さは1〜50μm(本実施形態では10μm)としている。
【0042】
前記本発明の複合材10は熱と軸方向の圧力を同時に負荷する図3および図4に示すホットプレス装置50を用いて、前記アルミニウム板11とステンレス板12の銅層16と17とをホットプレスで接合して空隙部15を有する複合材10を製造している。
【0043】
まず、ホットプレス装置50について説明すると、60は加熱炉本体,61はヒーター,62は加熱炉本体内に配置された型(臼)、63は油圧シリンダ、64は真空ポンプ、65は断熱材である。
前記型63内には、固定した下プレス型52と、油圧装置63で下降される(杵)となる上プレス型51とを備えている。上下プレス型51、52の上下面には夫々熱盤53、54を固定している。
前記型(臼)62は,型内部に積み重ねた金属板が加圧時にくずれないように,ガイドの役割を果たす。
【0044】
下側のプレス型52の上面には、外周縁に沿って環状の段状突出部52aを設けると共に、中央部に円形の段状突出部52bを突設し、これら段状突出部52aと52bを設けることで、その間を円環形状の凹部52cとしている。
該プレス型52の上面と金属板の積層セット空間Cをあけて対向する上側プレス型51の下面51aは平坦面となっている。
よって、下側のプレス型52の上面と上側プレス型51の下面とで挟まれた前記セット空間Cでは、段状突出部52aと52bとが設けられた位置では上下寸法L1が短くなり、段状突出部が設けられていない凹部52cでは上下寸法L2を長くしている。
【0045】
つぎに、前記複合材10の製造方法について詳述する。
まず、図5(A)に示すように、アルミニウム板11とステンレス板12を同一形状の円板形状に打ち抜き加工する。
次に、図5(B)に示すように、円板形状としたアルミニウム板11の接合面11aとする一面全体、ステンレス板の接合面12aとする一面全体に、夫々銅メッキを施して銅層16、17とからなる接合用金属層を形成する。
【0046】
また、前記アルミニウム板11の他面には、予めエッチング処理により表面に微細な凹凸を形成し、その上面にフッ素樹脂層18を設けている。このフッ素樹脂層18は着色されたフッ素樹脂をコーテイングして設けたベースコート層18aと、該ベースコート18aの表面に無色のフッ素樹脂をコーテイングしてトップコート層18bとからなる。
ベースコート層18aの厚さは5〜60μm(本実施形態では25μm)とし、トップコート層18bの厚さを5〜50μm(本実施形態では25μm)としている。
ベースコート層18a、トップコート18bに用いるフッ素樹脂としては、耐熱性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等を用いることが好ましい。
【0047】
上記のように、アルミニウム板11の一面全面に銅層16、他面全面にフッ素樹脂ステンレス18を設け、ステンレス板12の一面全面に銅層17を形成した後、前記ホットプレス装置50の上下方向に対向するプレス型51と52との間にセットする。其の際、アルミニウム板11とステンレス板12の銅層16と17とを対向配置させる。
【0048】
この状態で、図5(D)に示すように、熱間一軸方向加圧のホットプレスを行う。該ホットプレスは、温度200〜260℃、圧力200〜1000kg/cm、加圧時間10min〜30hの条件下で行っている。なお、接合用金属として銅を用いると、銅は低温域での拡散係数が大きいため、温度は比較的低温とし,圧力も前記範囲で低圧側としている。さらに、アルミニウム板にはフッ素樹脂18を設けているため、フッ素樹脂は260℃を越えると劣化が発生しやすいため、前記したように260℃以下としている。
雰囲気は,大気中,非酸化性ガス中(Ar,N,He,CO等)でも良いが、接合界面へのガス分子の介在を低減し,接合金属同志の拡散を促進するために,減圧または10−1torr以下の真空雰囲気としている。
【0049】
ホットプレス時に、セット空間Cでは、前記したように、段状突出部52aと52bとが設けられた位置では上下寸法L1が短くなり、段状突出部が設けられていない凹部52cでは上下寸法L2を長くしている。よって、段状突出部52a、52bを設けて上下間隔を短くした領域のアルミニウム板11とステンレス12とに負荷される押圧力は大きくなり、対向する銅層16と17とは強い力が負荷され、さらに、接合界面へのガス分子の介在が低減されているため、接合される銅同士の拡散が促進され、強固に接合される。
一方、凹部52cの上下間隔が長い領域のアルミニウム板11とステンレス12とに負荷される押圧力は小さくなり、対向する銅層16と17とは金属同士は接合されず、空隙部となる未接合部15−1が形成される。
【0050】
前記ホットプレスで形成された複合材10は、アルミニウム板11とステンレス板12の間に、銅層16と17との未接合部15−1が設けらた円板形状のブランクとなる。得られた複合材10の強度は5mm幅で6〜8kgで且つ強度のムラが少なく、均一で安定した接合強度を有する。また複合材の板厚(t)は約2.0mm程度となるが、板厚のバラツキも殆どないものである。
【0051】
該ブランクは絞りプレス加工で、図6に示すような、底部21と周壁22とを備えた電磁誘導加熱容器20として成形され、周壁22には全周に沿って連続した未接合部15−1の容積が拡大された空隙部15が位置することとなる。また、容器20の内面側にフッ素樹脂18が位置する。
なお、幅5mmの複合板の引き剥し強度は3kg以上であることが,深絞り加工時に発生する剥離などの問題が起こりにくい最低限の強度であるが、本発明のホットプレスで製造された複合材10は前記したように6〜8kgの接合強度を備えているため、深絞りプレス加工時に剥離等の問題を引き起こすことはない。
【0052】
前記絞りプレス加工時に複合材10には周壁22の上端方向への引張力が負荷され、空隙部15をは挟むアルミニウム板11の引張率とステンレス板12の引張率とは相違する。よって、この絞りプレス加工時に、アルミニウム板11の伸びは大きく、ステンレス板12の伸びは小さくなり、ミクロ的にはアルミニウム板11がステンレス板12に対して膨らむように拡大し、未接合部15−1は所要の容積の空隙部15となる。
【0053】
さらに、周壁22の内面に目盛りが印刷され、該印刷を定着するために加熱すると、アルミニウム板11とステンレス板12との熱膨張率が相違し、アルミニウム板11がステンレス板12より膨張するため、空隙部15の容積が増大し、厚さ1mm程度の空隙が形成できる。
【0054】
このように、電磁誘導により発熱する磁性金属板であるステンレス板12と、伝熱層となる非磁性金属板であるアルミニウム板11との間の空隙部15が周壁22の全周に設けられることにより、断熱性を高められる。よって、電磁誘導加熱容器の内釜20の加熱が終了した後の保温性を高めることができる。
【0055】
図7は第2実施形態を示し、1枚の複合材10を構成する1組のアルミニウム板11とステンレス板12を、分離材70を介して複数組をホットプレス装置50の上下プレス型51と52の間のセット空間Sに積層している。
第2実施形態では、上下対向するプレス型51、52に対向して段状突出部51aと52a、51bと52bを設けている。
これにより、複数組をセットしても、上下対向して段状突出部51aと52a、51bと52bとで挟まれるため、この領域の金属板は強い押圧力が負荷され、各組のアルミニウム板11とステンレス板12とが対向する接合面全面に設けた銅層16と17とを強固に接合できる。かつ、段状突出部が設けられていない部分では、アルミニウム板11とステンレス板12に負荷される押圧力が低減し、対向する銅層16と17とが接触せず空隙部15が形成される。
このように、一度に複数枚の複合材10を製造でき、複合材10の大量生産が可能となる。
【0056】
図8(A)〜(C)は第3実施形態を示し、アルミニウム板11とステンレス板12との間に銅板30を中間金属板として介在させている。
前記アルミニウム11と銅板30の一面30aとの対向する接合面にメッキした銅層16と31を設けると共に、銅板30の他面30bとステンレス板12との対向する接合面にメッキした銅層32と17とを設けている。
【0057】
前記アルミニウム板11、銅板30、ステンレス12を第1実施形態に記載したホットプレス装置50のセット空間Cに積層する。
この状態でホットプレスを行うと、図8(B)に示すように、前記接合用金属層となる銅層16と31、17と32とがプレス型の段状突出部がある領域では接合し、段状突出部がない領域ではアルミニウム板11と銅板30との間に未接合部15−1Aと、銅板30とステンレス板12との間に未接合部15−Bが形成できる。
即ち、異なる層間に2つの空隙部となる未接合部を備えた複合材100が形成できる。
【0058】
前記複合材100を第一実施形態と同様に絞りプレス加工で底壁22と周壁33を有する図8(C)に示す容器20に形成すると、周壁22にはアルミニウム板11と銅板30との間に内周側空隙部15Aが形成出来ると共に、銅板30とステンレス板12との間に外周側空隙部15Bを形成することができる。
【0059】
このように周壁22にそれぞれ密封された内周側空隙部15Aと外周側空隙部15Bとを備え、しかも、これら空隙部15Aと15Bとは略真空であることより、断熱効果を飛躍的に高めることができ、保温性を向上させることができる。
【0060】
なお、前記実施形態のいずれにおいても、非磁性金属板のアルミニウム板、磁性金属板のステンレス板を円形に打ち抜いた後に銅メッキして銅層からなる接合用金属層を形成し、ているが(第3実施形態では中間金属板の銅板の両面に銅メッキをして銅層からなる接合用金属層を形成しているが)、銅メッキの一層メッキに限定されず、多層メッキとしてもよい。しかしながら、互いに接触させて接合する最上層のメッキは同種金属とする事が好ましく、特に、実施形態に記載のように銅メッキとすることが好ましい。
また、第1〜第3実施形態とも各金属板とも円形とした後にメッキを施して接合用金属層を形成しているが、これら金属板を連続形成した状態でメッキを施した後に円形に打い抜いてもよい。
【0061】
前記のように、本発明は、熱間一軸方向加圧法(ホットプレス法)で複合材を製造し、該ホットプレス装置のプレス型の形状を改良することで、接合面の全面に接合用金属層を設けておいても、空隙部となる未接合部を形成できるようにしている。
したがって、特許文献1に記載のようにマスキングシートを用いて非メッキ部を設ける必要がなく、製造工程において、最も作業手数のかかる工程を省略でき、生産性の向上を飛躍的に図ることができる。
【0062】
また、ホットプレス法では,設備費,設備運転費が安価であり,型は繰り返し使用できると共に油圧プレスによる加圧,減圧は迅速に行えサイクルタイムの短縮化を図ることができる、特に、ホットプレスでは接合用金属同士の接触界面で金属原子の拡散が起こり,所要の接合強度をムラなく略均一に得ることができると共に、板厚の減少は殆どなく,よって板厚のばらつきが極めて小さい利点がある。
【0063】
さらに、非磁性金属板と磁性金属板の間に設ける空隙部の大きさ、形状等を任意に変更することができる。特に、IHジャー炊飯器の内釜とし、その周壁に全周に第一実施形態の空隙部を設けた場合、空隙部を設けていない場合と比較して保温性が35%程度向上したことが実証されている。この点より炊飯器を保温モードした状態で電気代の節約を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の複合材を示す斜視図である。
【図2】(A)(B)は前記複合材の断面図である。
【図3】前記複合材を製造に用いるホットプレス装置の概略断面図である。
【図4】前記ホットプレス装置のプレス型を示す断面図および平面図である。
【図5】前記実施形態の製造工程を示す図面である。
【図6】前記複合材を絞り加工して容器とした状態を示す断面図である。
【図7】第2実施形態のホットプレス時の状態を示す概略図である。
【図8】(A)(B)(C)は第3実施形態を示す図面である。
【図9】(A)(B)は従来例を示す断面図である。
【図10】(A)〜(E)は従来の問題点を示す図面である。
【符号の説明】
【0065】
10 複合材
11 アルミニウム板(非磁性金属板)
12 ステンレス板(磁性金属板)
15 空隙部
16、17 銅層(接合用金属層)
18 フッ素樹脂層
20 電磁誘導加熱容器の内釜
21 底壁
22 側壁
28 接合部
30 銅板(中間金属板)
50 ホットプレス装置
51、52 プレス型
52a、52b 段状突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層する複数の金属板を熱間一軸方向加圧法(ホットプレス)で接合する複合材の製造方法であって、
前記積層する複数の金属板は、非磁性金属板と磁性金属板、あるいは非磁性金属板と磁性金属板とこれら非磁性金属板と磁性金属板との間に介在される1または複数の中間金属板とし、
前記積層する複数の金属板の少なくとも1カ所の対向面の全面に、それぞれ予め接合用金属層を設けておき、
前記積層する複数の金属板を、ホットプレス装置の軸方向両側に対向配置される一対のプレス型の間にセットし、前記プレス型の少なくともいずれか一方に、対向する相手方のプレス型に向けて突出する段状突出部を設けておき、
ホットプレス時に、前記段状突出部と相手方プレス型に挟まれる領域の金属板同士は前記接合用金属層が一体的に結合される接合部として形成する一方、前記突出段部に挟まれない領域の金属板同士は空隙部となる未接合部として形成し、部分的に空隙部を有する複合材としていることを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項2】
前記積層する複数の金属板は、複数の層間で前記接合用金属層を対向配置し、前記突出段部に挟まれない領域では、金属板同士の複数の層間で空隙部となる未接合部を形成し、金属板の積層方向の複数箇所に部分的に空隙部を有する複合材としている請求項1に記載の複合材の製造方法。
【請求項3】
前記接合用金属層は、前記非磁性金属板、磁性金属板あるいは前記中間金属板の対向する接合側表面の全面に、予めメッキ、蒸着、イオン蒸着、溶融金属浸漬法あるいは溶融金属溶射法で設けている請求項1または請求項2に記載の複合材の製造方法。
【請求項4】
前記積層する複数の金属板を単位組として、複数の単位組を前記プレス型の間に積層してセットし、複数の複合材を同時に形成している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法で製造された複合材を絞り、プレス加工して底壁と周壁を備えた容器を製造する方法であって、
前記一体的な接合部と空隙部となる未接合部を挟んで対向する金属板は、互いの引張率を相違させ、前記絞りプレス加工時に前記引張率の相違により前記未接合部に形成される空隙部を拡大させ、該空隙部の引張による拡大率を前記対向する金属板の引張率で予め設定していることを特徴とする複合材からなる容器の製造方法。
【請求項6】
前記一体的な接合部と空隙部となる未接合部を挟んで対向する金属板は、互いの熱膨張率を相違させ、前記絞りプレス加工時あるいは絞りプレス加工後に所要温度で加熱し、
前記熱膨張率の相違により前記未接合部に形成される空隙部を拡大させ、該空隙部の熱膨張による拡大率を前記対向する金属板の熱膨張率で予め設定している請求項5に記載の複合材の製造方法。
【請求項7】
非磁性金属板と磁性金属板とが部分的に空隙部を介在させて接合されており、
前記非磁性金属板と磁性金属板とは、互いに対向する接合面側のそれぞれに接合用金属層が設けられ、
前記空隙部では前記接合用金属層同士が未接合で空間をあけて対向している一方、該空隙部を囲繞する部分では前記接合用金属層同士が接合していることを特徴とする複合材。
【請求項8】
非磁性金属板と磁性金属板の間に1あるいは複数の中間金属板が介在され、前記非磁性金属板と中間金属板の対向面、中間金属層板間の対向面、中間金属板と磁性金属板の対向面のいずれか1カ所あるいは複数箇所が、部分的に空隙部を介在させて接合されており、
前記空隙部を挟む金属板には夫々接合用金属層が設けられ、
前記空隙部では前記接合用金属層同士が未接合で空隙部をあけて対向させている一方、該空隙部を囲繞する部分では前記接合用金属層同士が接合されていることを特徴とする複合材。
【請求項9】
前記空隙部が介在された部分の複合材の断面板厚は、空隙部を介在させずに前記接合用金属層同士が接合された部分の断面板厚よりも大とされている請求項7または請求項8に記載の複合材。
【請求項10】
円形状のブランクとされ、プレス加工で中央部が底壁とされると共に外周部が周壁とされる電磁誘導式加熱容器として形成されるもので、前記空隙部は周壁となる外周部分に設けられている請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項11】
前記外周部分に設けられる真空部が同心の円環状とされ、前記周壁の全周に連続する真空部とされるものである請求項10に記載の複合材。
【請求項12】
前記非磁性金属層はアルミニウム、アルミニウム合金、非磁性ステンレスから選択され、
前記磁性金属層は磁性ステンレス、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、コバルト、コバルト合金から選択され、
前記接合用金属層は銅、アルミニウム、ニッケル、銀、錫から選択される1層または複数層の金属層からなり、対向する接合面の接合用金属は同種金属からなる請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項13】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法で製造された請求項7乃至請求項12のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項14】
請求項5又は請求項6に記載の方法で製造された電磁誘導加熱式容器。
【請求項15】
請求項7乃至請求項12のいずれか1項に記載の複合材で形成された電磁誘導加熱式容器。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の電磁誘導加熱式容器からなる調理用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−341272(P2006−341272A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168862(P2005−168862)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】