説明

複合構造を製造するプロセスおよび装置

航空機エンジンナセルコンポーネントに適した吸音外板などの有孔複合構造を製造するプロセスおよび装置。このプロセスは、少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材を成形型表面上に配置するステップであって、マット部材上に配設したピンが、この布部材を貫いて突出して布部材に穴を画定し、この布部材が、マット部材とパッド部材の間にあり、マット部材、布部材、およびパッド部材が、成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらすように配置するステップを含む。次いで、布部材は、樹脂含浸した布をもたらすように樹脂が注入され、樹脂含浸した布内の樹脂が、部分的に硬化させられ、その後、部分的に硬化した樹脂含浸した布は、成形型表面から、およびマット部材とパッド部材の間から除去される。次いで、部分的に硬化した樹脂含浸した布の後硬化を実行して、穴を備えた複合構造をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複合物品を製造する成形プロセスおよび機器に関する。より詳細には、本発明は、例として、ガスタービンエンジンのナセルコンポーネントおよび吸音パネルでの使用に適した有孔複合構造を製造する成形プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンのナセルコンポーネント、および他の航空機構造に用いる典型的な構成は、一対のより薄いシートまたは外板の間にコア材を含むサンドイッチ型層状構造である。典型的には、コア材料は、軽量素材であり、しばしば発泡またはハニカムの金属材料または複合材料である。様々な金属材料および複合材料を、外板に用いることがやはりでき、一般的な材料には、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を含浸したアルミニウム合金、ガラス繊維、および布材料(例えば、グラファイト布)が含まれる。
【0003】
複合外板を製造する従来のプロセスは、グラファイト布に樹脂を含浸し、次いで含浸した外板を前硬化させる(precure)ものである。前含浸した(pre−impregnate)外板は、典型的には、オートクレーブ内で実行されてその間に最終的な硬化が生じる加圧および加熱下で、接着剤を用いてコア材料の両面に接着される。代替の従来のプロセスは、一体硬化(co−curing)を含み、この一体硬化では、外板は、前硬化されずに、外板を接着するために接着材を硬化させるプロセスの一部として硬化される。これらプロセスに関連した不利には、長いサイクル時間、高い設備投資、および複雑な幾何形状を実現しようとすると困難であることが含まれる。層状複合構造を製造する代替のプロセスは、オートクレーブ内の硬化を用いない。例には、樹脂注入成形法(RTM)、および真空補助樹脂注入成形法(VARTM)が含まれる。
【0004】
ナセルコンポーネント(例えば、エンジン吸気口、逆噴射装置カウル、および遮蔽ドアなど)およびエンジンダクト流面を形成するために使用される外板は、多数の小さい貫通穴を形成することによって吸音処理され、この貫通穴は、音に関連した圧力波をコア内の連続気泡に伝え、この連続気泡で波エネルギーが摩擦を通じて消散し(熱に変換し)、圧力を下げ、波反射によって打ち消されることにより、雑音を抑制するのを助ける。いくつかのガスタービンエンジン応用については、孔は、直径が約0.03〜約0.06インチ(約0.75〜約1.5mm)程度であり、穴と穴の間隔が約0.06〜約0.12インチ(約1.5〜約3mm)であることが典型であり、吸音穴のパターンは、処理済み表面が、平方インチ当たり75個以上の穴(平方センチメートル当たり約20個以上の穴)を含むことになる。ナセルコンポーネントおよび吸音パネルを吸音処理するのに必要な多数の穴を与えるのであれば、穴を迅速かつ経済的に製造する方法が望まれる。
【0005】
吸音外板に吸音穴を製造するために現在用いられている一般的なプロセスには、打抜き加工(punching)、機械的ドリル加工(mechanical drilling)、およびピン成形(pin molding)が含まれる。これらプロセスのそれぞれには、限界がある。例えば、打抜き加工は、典型的には、2つ以上のプリエ(plie)の比較的薄い外板にのみ実用的であり、しばしば、ガラス繊維の吸音外板の製造に限定される。機械的ドリル加工は、グラファイト複合外板と共にしばしば用いられ、典型的には、仕上がりの幾何学的形状に硬化した外板に1つ、2つまたは4つの穴を一度に穴を開ける。機械的ドリル加工プロセスは、制限速度に加えて、曲線の付いた外板上に適切な向きで穴を設けるのに特殊な工具および機械を必要とするため、高価になりがちである。ピン成形は、典型的には、前含浸した複合外板材料を金属ピンマットまたは非金属ピンマットに押し付け、その後、外板材料がオートクレーブによる硬化を受け、その後にピンマットを除去することが必要である。そのようなプロセスは、遅く、大きな労力を要し、摩耗したピンマットを交換する必要性から大きな経常的コストが生じる。加えて、機械的ドリル加工と繊維性材料に尖ったピンを押し通すことの両方は、繊維の破損、および最適な積層外板強度の減少をもたらす。これらプロセスは、最小の機器、労力、および経常的コストを伴いつつ、比較的高速で複合外板に孔を開けるのにはどれもあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0384653号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有孔複合構造を製造するプロセスおよび装置を提供するものであり、その特定のしかし限定しない例には、エンジン吸気口、逆噴射装置カウル、および遮蔽ドアなどの航空機エンジンナセルコンポーネント、エンジンダクト吸音パネル、航空機表面外板の層流の制御に用いることが可能な表面、ならびに様々な他の有孔層状構造に適した複合吸音外板が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、プロセスは、少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材を成形型表面上に配置するステップであって、マット部材上に配設したピンが、この布部材を貫いて突出して布部材に穴を画定し、この布部材が、マット部材とパッド部材の間にあり、マット部材、布部材、およびパッド部材が、成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらすように配置するステップを含む。次いで、布部材は、樹脂含浸した布部材をもたらすように樹脂が注入され、樹脂含浸した布部材内の樹脂が、部分的に硬化させられ、部分的に硬化した樹脂含浸した布部材は、成形型表面から、およびマット部材とパッド部材の間から除去される。次いで、独立の部分的に硬化した樹脂含浸した布部材の後硬化を実行して、布部材に画定した独特の穴を含む複合構造をもたらすことができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記プロセスによって用いることができる装置である。この装置は、成形型表面上の少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材を備え、マット部材上に配設したピンが、この布部材を貫いて突出し、この布部材が、マット部材とパッド部材の間にあり、マット部材、布部材、およびパッド部材が、成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらすようになっている。この装置は、樹脂含浸した布部材をもたらすように、この布部材に樹脂を注入する手段をさらに備える。
【0010】
本発明の大きな利点は、硬化後の打抜き加工、ドリル加工、または穴を形成するための他のプロセスを必要とする代わりに、複合構造およびその孔が、実質的に単一のステップで同時に形成されるように、乾燥布部材に染み込ませることによって有孔複合構造を製造する機能である。別の利点は、マット部材のピンが布部材の中に導入されるときに布部材が樹脂を含浸されておらず、布部材の繊維性構造を貫いてピンがより簡単に滑ることが可能となり、繊維破断の危険性がなくなるか、または少なくとも大きく低減することである。他の利点は、サイクル時間の減少、および資本の設備投資の大きな減少の可能性を含むことであり、オートクレーブなしで硬化プロセスを実行する機能、低コストの成形型加工を使用することを可能にするより低い硬化温度の使用、ならびにマット部材およびパッド部材の比較的低コストの材料および構造の使用を含む。
【0011】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明からより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】航空機エンジンナセルに用いられるタイプの吸気口内側バレルの斜視図である。
【図2】図1の吸気口内側バレルの吸音複合外板を製造する成形装置および乾燥布部材を示す概略分解図である。
【図3】乾燥布材料に樹脂注入成形プロセスを実行する前の、図3の成形装置の縁部の詳細図である。
【図4】図2および図3の装置を用いて吸音複合外板を製造するために実行されるプロセスのステップを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、航空機エンジンナセルの2部品からなる吸気口内側バレル10を代表する図である。内側バレル10の各半分12についての典型的な構造は、一対の金属外板または複合外板の間に配置されるコア層を含み、1つまたは複数の追加の層があることもあり得る。本発明の好ましい一態様によれば、外板の少なくとも1つは、本発明のプロセスのステップを用いて製造できる吸音複合外板である。吸気口内側バレル10を参照して本発明を説明するが、本発明は、有孔複合コンポーネントを有することによって利益を得る可能性のある様々なコンポーネントに適用でき、限定するものではないが、他の航空機エンジンナセルコンポーネント(例えば、逆噴射装置カウル、および遮蔽ドア)、エンジンダクトの吸音パネル、および様々な他の有孔層状構造が含まれることを理解されたい。
【0014】
バレル10の各半分12のコア層は、独立気泡もしくはそれ以外の非多孔質構造、または連続気泡もしくはそれ以外の多孔質構造を有してもよい。前者の限定しない例には、木材(例えば、バルサ材)、および他のセルロース系材料、およびポリメタクリルイミドで形成され、ROHACELL(登録商標)という名でEvonik Industries(以前はDegussa)から市販の独立気泡低密度硬質発泡材料が含まれる。連続気泡コア層または多孔質コア層の限定しない例には、連続気泡セラミックフォーム材料およびハニカム型材料、連続気泡金属フォーム材料およびハニカム型材料、連続気泡炭素フォーム材料およびハニカム型材料、ならびに、例えばNOMEX(登録商標)アラミド繊維で形成される連続気泡熱可塑塑性フォーム材料およびハニカム型材料が含まれる。そうしたコア材料および構造は、当技術分野で良く知られており、したがって詳細に述べることにする。
【0015】
バレル10に用いたタイプの複合外板についての従来の最先端技術は、樹脂含浸した布である。樹脂を含浸する前、布は、「乾燥」布と呼ばれ得るものであり、典型的には、2つ以上の繊維層(プリエ)およびスクリムクロスのスタックを含む。従来の実施は、樹脂含浸した布に孔を開ける吸音処理を行う前に布を樹脂含浸していたが、本発明によって製造される複合外板は、後述のように、樹脂含浸プロセスと同時に孔開けを受ける。
【0016】
本発明で使用できる乾燥布の繊維層およびスクリムクロスは、様々な材料で形成することができ、その限定しない例には、カーボンファイバ(例えば、グラファイト)、ガラスファイバ(例えば、ガラス繊維)、ポリマーファイバ(例えば、Kevlar(登録商標))、およびセラミックファイバ(例えば、Nextel(登録商標))が含まれる。繊維層の個々の適当な厚さは、製造される複合構造の特定の用途によって決まることになる。図1の吸気口内側バレル10の場合、より薄い厚さおよびより厚い厚さも予見できるが、繊維層の典型的な個々の厚さは、約0.2〜約0.4ミリメートルであり、乾燥布スタックの典型的な厚さは、約1.3〜約2.5ミリメートルである。
【0017】
図2および図3は、本発明の吸音複合外板用の上記のタイプの乾燥布14を概略的に表しており、図4は、本発明の特定の好ましい一態様により、布14に樹脂を染み込ませている間に乾燥布14に吸音穴34を形成できる真空補助樹脂注入成形法(VARTM)プロセスの流れ図である。当技術分野で知られているように、幅広い様々な高分子材料が、乾燥布14に染み込ませるために使用される樹脂として選ぶことができる。樹脂の主要な役割は、乾燥布14内で繊維性材料のマトリックス材料を形成することであり、したがって樹脂は、乾燥布14から製造した複合外板の構造強度および他の物理的特性に寄与する。したがって、樹脂は、乾燥布14に組成的に適合すべきである。加えて、樹脂は通常、バレル10のコア層などの他の層に接触するので、樹脂は通常、コア層、もしあれば、樹脂が接触し得るバレル10の任意の追加の層の材料との組成的な適合性で選ばれることになる。また、樹脂は、乾燥布14の材料およびコア層の材料を熱的に劣化させない温度条件下、またはそれ以外に当該材料に不都合がない温度条件下で硬化できなければならない。これに基づき、特定の適当な樹脂材料は、典型的には200℃未満、例えば、約190℃の硬化温度でエポキシ樹脂を含むことが考えられる。
【0018】
図2は、布14に樹脂を染み込ませて図1の2部品からなる内側バレル10の一方の半分12用の吸音複合外板を製造するのに適した成形型20の成形型表面18上に配置したスタック16の一部として乾燥布14を概略的に表す。スタック16には、複数のピンマット22および押圧パッド24が含まれる。ピンマット22は、成形型表面18上に直接配置され、その後に乾燥布14、および次いで押圧パッド24が続くものとして表される。布14、マット22および押圧パッド24は、成形型20に配置すると、スタック16全体が成形型20の表面32に適合するように十分に柔軟である。成形装置の他の可能なコンポーネントは、乾燥布14に樹脂を染み込ませ、得られた樹脂含浸した吸音複合外板を硬化させるために使用される技法次第である。例えば、VARTMプロセスを使用する好ましい実施形態では、好ましくは、スタック16は、空気不浸透性バッグ26によって覆われて成形型表面18とバッグ26の間で真空を引くことを可能にし、それによりバッグ26が、マット22と押圧パッド24の間で布14を圧縮することができ、樹脂が、布14に引き込まれ、布14に染み込むようになっている。
【0019】
マット22は、その上面から突出するピン32を有する。ピン32は、吸音複合外板の所望の吸音穴34を形成するためのものであり、したがって、乾燥布14を完全に貫通するのに十分な長さでなければならず、押圧パッド24の中にはみ出してもよい(図3)。さらに、ピン32は、明確に定めたパターンにあり、吸音穴34の所望の直径、例えば、約0.03〜約0.06インチ(約0.75〜約1.5mm)程度、および穴と穴の間隔が約0.06〜約0.12インチ(約1.5〜約3mm)を作り出すように選んだ直径を有することが好ましい。他の穴の大きさおよび間隔も予見でき、したがって、やはり本発明の範囲内である。好ましくは、マット22およびそのピン32は、布14を貫通するために、布14に比べて比較的硬質な材料で形成されるが、マット22が、成形型表面18にある程度適合することが可能である。成形プロセスの経常的コストを最小にするため、マット22およびピン32用のある特定の適当な材料の限定しない例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、マット22およびピン32のある特定の適当な構成は、一体形成したピン32、および成形型表面18にほぼ適合する曲線の付いた形状を有するマット22をもたらす射出成形物であるが、他の材料および構成も、本発明の範囲内である。布14に樹脂を染み込ませた後にマット22を除去するのを容易にするために、および複数のピンマットが比較的硬いこと、成形型表面18との適合性を理由として、複数のピンマット22は、単一のマットより好ましいが、単一のピンマットを使用することも本発明の範囲内である。
【0020】
ピン32が押圧パッド24を簡単に貫通することを可能にするために、パッド24の適当な材料は、合成ゴムを含めたエラストマ材料を含む。押圧パッド24は、マット22のピン32に大きさおよび位置が相補的である開口36を適宜有するように前もって形成されていてもよく、ピン32および得られた吸音穴34の均一な配置をもたらすマット22の配置を確かなものとするために、開口36が、ピン32を受け取り、機械的な位置決めおよび固定機能を実現するようになっている。
【0021】
本発明の特定の態様によれば、図3に表すように、布14の少なくとも1つの縁部28、好ましくは2つ以上の縁部28が、マット22とパッド24の間からはみ出すように、布14は、押圧パッド24、およびピンマット22同士の組み合わせた大きさより大きいものであり得る。そのため、樹脂を(1つまたは複数の)露出した縁部28に施し、次いで真空の効果によって樹脂を布14に引き込むことができる。好ましくは、図3に表すように、樹脂を施す縁部28が、押圧パッド24の隣接縁部を巻いて覆い、内部を通じて真空を引く配管30および/または施される樹脂が、布14の縁部28に直接配置される。例えば、約2インチ(約5センチメートル)の布28が、押圧パッド24の縁部に覆い被さってもよい。乾燥布14に十分染み込むまで配管30を通じて樹脂が送達されたら、得られた樹脂含浸した布を、樹脂を部分的に硬化させるのに十分な温度まで、およびそれに十分な期間、成形型20上で加熱可能である。染み込み/含浸温度および硬化温度、圧力/真空レベル、ならびに染み込みおよび硬化のサイクルの他のパラメータは、使用した特定の材料に依存するものであり、日常的な実験により求めることができる。
【0022】
図4は、図2および図3の装置を用いて吸音複合外板を製造するために、VARTM技法を用いるときに実行される個々のステップをより詳細に明らかにする流れ図である。より詳細には、図4は、成形型20の表面18上にピンマット22を設置すること、マット22上に乾燥布14をレイアップすること、ならびに、図2に示すように、乾燥布14上に適宜のスクリムクロス(図示せず)および押圧パッド24を施すことを含むVARTMプロセスを表す。次いで、樹脂/真空配管30を設置し(図3)、その後、真空バッグ26をスタック16に施し、真空を引き、次いで樹脂をスタック16に送り込んで布14の染み込みを実現し、その間に、複合外板の所望の吸音穴34を、マットピン32を囲んでその場(in−situ)で成形する。その後、樹脂の染み込んだ布を、スタック16に残したまま部分的に硬化可能であり、その後、バッグ26を除去し、スタック16を成形型20から除去し、マット22および押圧パッド24を部分的に硬化した樹脂の染み込んだ布から取り除く。次いで、独立の部分的に硬化した樹脂の染み込んだ布に後硬化を実行して、吸音複合外板をもたらすことができる。図4に表すプロセスは、吸音複合外板の候補材料、および吸音複合外板の検査材料に形成した試験コンポーネントに関してうまく完成している。
【0023】
上記を考慮すると、樹脂を前含浸し、硬化させ、次いでオートクレービングの前に打抜き加工またはドリル加工またはピン付きマットへの押し付けを受ける代わりに、乾燥布14の染み込みによって複合外板およびその吸音穴34を実質的に単一のステップで同時に形成できることが理解できよう。他の処理の利点は、ピンマット22および押圧パッド24を用い、オートクレービングによる硬化ステップをなくすことで、比較的低コストの成形型加工を可能にさせることを含む。マット22およびパッド24は、必要に応じて最小限のコストで交換することができ、VARTMプロセスは、サイクル時間を減少させ、室温で簡単に流れると共に比較的低い温度で硬化する低粘性樹脂を使用することを可能にする。さらなる利点は、布14内の繊維の損傷および露出を避けること、および防湿シールを促進する樹脂をたくさん入れた穴の壁を生成することによりこの成形プロセスによって製造した吸音穴34の品質にある。
【0024】
本発明を特定の実施形態の観点から説明してきたが、他の形態も採用できることは、当業者には明らかであろう。例えば、複合外板の物理的構成は、説明した構成とは異なっていてもよく、述べたもの以外の材料およびプロセスが使用されてもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0025】
10 2部品からなる吸気口内側バレル、内側バレル、吸気口内側バレル、バレル、2部品からなる内側バレル
12 半分
14 乾燥布、布
16 スタック
18 成形型表面
20 成形型
22 ピンマット、マット
24 押圧パッド、パッド
26 空気不浸透性バッグ、バッグ、真空バッグ
28 縁部、露出した縁部、布
30 配管
32 ピン、一体形成したピン、マットピン、表面
34 吸音穴
36 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含浸した布を含む複合構造を製造するプロセスであって、
少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材を成形型表面上に配置するステップであって、前記マット部材上に配設したピンが、前記未含浸布部材を貫いて突出して前記未含浸布部材に穴を画定し、前記未含浸布部材が、前記マット部材と前記パッド部材の間にあり、前記マット部材、前記未含浸布部材、および前記パッド部材が、前記成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらすように配置するステップと、
樹脂含浸した布をもたらすように、前記未含浸布部材に樹脂を注入するステップと、
前記樹脂含浸した布内の前記樹脂を部分的に硬化させるステップと、
前記成形型表面から、および前記マット部材と前記パッド部材の間から部分的に硬化した樹脂含浸した布を除去するステップと、次いで、
前記部分的に硬化した樹脂含浸した布の後硬化を実行して、前記穴を備える前記複合構造をもたらすステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
前記配置するステップが、
前記マット部材を前記成形型表面上に配置するステップであって、前記マット部材の前記ピンが、前記成形型表面から離れて突出するように配置するステップと、
前記未含浸布部材を前記マット部材に施し、前記未含浸布部材に前記マット部材の前記ピンを押し通すステップと
を含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記マット部材が、ピンを備える複数のマットのうちの1つである、請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
前記マット部材が、高分子材料で形成される、請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
マットおよび前記マットのピンが、前記未含浸布部材より硬質である、請求項1記載のプロセス。
【請求項6】
前記パッド部材が、エラストマ材料で形成される、請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
前記パッド部材が、前記マット部材の前記ピンに大きさおよび位置が相補的である開口を内部に備える、請求項1記載のプロセス。
【請求項8】
前記配置するステップにより、前記未含浸布部材の縁部が、前記マット部材と前記パッド部材の間からはみ出すことになり、前記注入するステップが、前記未含浸布部材のはみ出している前記縁部に前記樹脂を施すステップを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
前記注入するステップが、前記未含浸布部材を通じて前記樹脂を引くように真空を適用するステップを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項10】
前記複合構造が、吸音複合外板である、請求項1記載のプロセス。
【請求項11】
航空機ナセルコンポーネントを形成するために、前記吸音複合外板と第2の外板の間にコア層を配置するステップをさらに含む、請求項12記載のプロセス。
【請求項12】
航空機ナセルコンポーネント用の吸音複合外板を製造するプロセスであって、
複数のマットを成形型表面上に配置するステップであって、各前記マット上に配設したピンが、前記成形型表面から離れて突出するように配置するステップと、
未含浸布部材を前記マットに施し、前記未含浸布部材に前記マットの前記ピンを押し通して内部に穴を画定するステップと、
パッド部材を前記未含浸布部材に施すステップであって、前記未含浸布部材が、前記マットと前記パッド部材の間にあり、前記マット、前記未含浸布部材、および前記パッド部材が、前記成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらし、前記未含浸布部材の縁部が、前記マットと前記パッド部材の間からはみ出すように施すステップと、
前記未含浸布部材のはみ出している前記縁部に樹脂を施すステップと、
前記未含浸布部材を通じて前記樹脂を引くように真空を適用し、樹脂含浸した布をもたらすステップと、
前記樹脂含浸した布内の前記樹脂を部分的に硬化させるステップと、
前記成形型表面から、および前記マットと前記パッド部材の間から部分的に硬化した前記樹脂含浸した布を除去するステップと、次いで、
部分的に硬化した前記樹脂含浸した布の後硬化を実行して、前記穴を含む前記吸音複合外板をもたらすステップと
を含むプロセス。
【請求項13】
樹脂含浸した布を含む複合構造を製造する装置であって、
成形型表面上の少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材であって、前記マット部材上に配設したピンが、前記未含浸布部材を貫いて突出して前記未含浸布部材に穴を画定し、前記未含浸布部材が、前記マット部材と前記パッド部材の間にあり、前記マット部材、前記未含浸布部材、および前記パッド部材が、前記成形型表面に適合する未含浸スタックをもたらすようになっている少なくとも1つのマット部材、未含浸布部材、およびパッド部材と、
樹脂含浸した布をもたらすように、前記未含浸布部材に樹脂を注入する手段と
を備える装置。
【請求項14】
前記マット部材が、ピンを備える複数のマットのうちの1つである、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記マット部材が、高分子材料で形成される、請求項13記載の装置。
【請求項16】
マットおよび前記マットのピンが、前記未含浸布部材より硬質である、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記パッド部材が、エラストマ材料で形成される、請求項13記載の装置。
【請求項18】
前記パッド部材が、前記マット部材の前記ピンに大きさおよび位置が相補的である開口を内部に備える、請求項13記載の装置。
【請求項19】
前記未含浸布部材の縁部が、前記未含浸布部材に前記樹脂を施すための位置を与えるように前記マット部材と前記パッド部材の間からはみ出す、請求項13記載の装置。
【請求項20】
前記未含浸布部材を通じて前記樹脂を引くように真空を適用する手段をさらに含む、請求項13記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513914(P2012−513914A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543547(P2011−543547)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066967
【国際公開番号】WO2010/077601
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(310022132)エムアールエイ・システムズ・インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】