解析装置、プローブの制御方法および解析システム
【課題】 試料から微小サンプルを切り出す作業を迅速に且つ正確に行うことができ、また、微小サンプルを試料台に配置させる作業を迅速に且つ正確に行うことができる装置及び方法を提供する。
【解決手段】 プローブに負の電圧を印加し、試料の輝度を計測する。プローブによって試料から微小サンプルを切り出す場合には、輝度が減少したときに、プローブが試料に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブが試料に接触したと判定する。プローブに接続された微小サンプルを試料台に配置する場合には、輝度が減少したときに、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接触したと判定する。
【解決手段】 プローブに負の電圧を印加し、試料の輝度を計測する。プローブによって試料から微小サンプルを切り出す場合には、輝度が減少したときに、プローブが試料に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブが試料に接触したと判定する。プローブに接続された微小サンプルを試料台に配置する場合には、輝度が減少したときに、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接触したと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電ビーム装置とプローブを有する解析装置に関し、例えば、試料より不良箇所を含む微小サンプルを切り出し、その観察像や元素分析等を行う解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造においては、良品を歩留まり良く大量に生産することが求められる。一方、半導体の製造工程は数百工程程度にもおよび、ある工程での不良発生を知らずに製造工程を進めると、不良品を大量に作り込むことになり、膨大な損失となる。これを防止する為に、ある工程毎に入念な検査が行われ早い段階で不良の原因の追及、対策を行っている。
【0003】
検査では、回路パターン寸法の計測、回路パターンの欠陥検査、異物分析等が行われ、そのために、各種の検査装置が利用される。このような検査装置として、製作パターン寸法を計測する測長用走査電子顕微鏡(critical dimension scanning electron microscope:以下、CDSEMと称する)、光学的に異物及び欠陥を検査する光学検査装置、電子ビームを利用するSEM式検査装置、回路の断線や短絡などの電気的不良を検査するナノプローバ検査装置などがある。
【0004】
特に不良個所が製品の内部に存在する場合は、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:以下、FIBと称する)装置と走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:以下、SEMと称する。)を組み合わせた微細加工観察装置が用いられる。
【0005】
特開2002−150990号公報に開示されている『微小試料加工観察方法及び装置』では、FIBにより不良箇所を含むミクロンオーダーの微小領域(以下、マイクロサンプルと称する)を切り出し、そのマイクロサンプルを針状のプローブを含むマニピュレータにより摘出する。マイクロサンプルを保持したまま、マイクロサンプルの位置と姿勢を調節し、最適形状に追加工し、観察・分析する。
【0006】
観察部位を含むミクロンオーダーサイズのマイクロサンプルを針状のプローブを含むマニピュレータにより摘出する場合、プローブをマイクロサンプルに高速に、しかも安定的に接触させる必要がある。プローブをマイクロサンプルに接触させるときに、プローブがマイクロサンプルに衝突すると、プローブ及びマイクロサンプルが損傷する。この場合、作業をやり直ししなければならず、迅速な不良箇所の分析、解析、対策のフィードッバクができない。結果的にラインの生産性低下を生じる。
【0007】
特開2002−40107号公報に開示されている『プローブ駆動方法及びプローブ装置』では、プローブを試料に接触させるために、例えばSIM画像に発生するプローブの影を検出することによってプローブの試料に対する高さを検出し、その情報をもとに迅速かつ確実にプローブの速度等を制御する。
【0008】
プローブ制御部によって、プローブを試料に接近させると、2次電子検出器から見てプローブの後方の領域から放出される2次電子、反射電子等にとって、プローブが障害となる。従って、2次電子検出器に到達する2次電子、反射電子量が減少し、プローブの影が出現する。この影の出現にてプローブの移動速度を低下させ、輝度の急激な上昇によりプローブの接触を認知するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−150990号公報
【特許文献2】特開2002−40107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
試料表面に絶縁物がある場合、絶縁物表面は集束イオンビームまたは電子ビーム等の荷電粒子ビームの照射によって正または負に帯電する場合が多い。例えば、半導体であるシリコンウエハー上に形成された絶縁物に集束イオンビームを照射すると、正に帯電する。これは、絶縁物表面にプラスの電荷が蓄積することと、2次電子放出により等価的にさらにプラスの電荷が蓄積することによる。例えば、絶縁物に、電子ビームを照射し、しかも1次電子量に対する2次電子発生量の比αが1より小さい場合に、負に帯電する。αが1より大きいと逆に絶縁物の表面は正に帯電する。αは、観察対象、入射させる1次電子ビームのエネルギー値によっても変化する。
【0011】
不良箇所を含むマイクロサンプルが正または負に帯電すると、プローブを接近させた場合、プローブが接触する位置でのプローブ近傍の輝度の変化が小さくなり、プローブの接近を認識することが困難になる。
【0012】
例えば観察位置が正に帯電している場合、2次電子は試料の正の電界によって、試料側に押し戻され、電子検出器に入射する2次電子量が低下する。従って、SIM画像は全体的に暗くなる。この状態でアース電位を印加されたプローブを接近させると、プローブ近傍の輝度はプローブが電子検出器から見て障害物となり2次電子等の信号量がさらに低下し輝度が低下する。従って輝度の変化によってプローブの接近を検出することは困難となる。
【0013】
コントラスト及びブライトネスを調整し、プローブの接近前のSIM画像の明るさを調整することは可能であるが、プローブの接近による輝度変化が不十分で、試料へのプローブの接近が認識しづらい。
【0014】
また、自動制御でプローブをマイクロサンプルに接触させる場合では、プローブ先端画像を登録し、プローブ接近時のプローブ位置を認識して、登録ずみの接触完了時の画像比較よりプローブの位置ずれを認識し位置補正を行い、接触を行う。しかしながら、プローブとマイクロサンプルを含む試料とのコントラストが不十分でプローブ先端を認識できない場合には、プローブがマイクロサンプルに衝突し、プローブ損傷、マイクロサンプルの損傷等の不良が発生することがある。
【0015】
また、不良箇所が負に帯電している場合、2次電子は試料の負の電界によって、2次電子検出器側に加速され、また放出量も増加するため、2次電子量が増加するためSIM画像全体の輝度は大きくなり、明るくなる。アース電位を印加されたプローブの接近によりプローブ近傍の輝度は低下するが、その変化分は小さく、プローブの接近を目視にて認識することが困難である。この現象は目視による画像のコントラスト及びブライトネス調整を行っても同様である。
【0016】
また、帯電状況が時間により変化し、絶縁物表面で蓄電とアース電位部との放電を繰り返す場合、SIM画像全体が明るくなったり暗くなったりすることがある。即ち、試料に正の帯電がなくなると2次電子検出器に入射する2次電子が増加するため、像が明るくなり、試料に正の帯電量が増加すると2次電子検出器に入射する2次電子が減少するため、像が暗くなる。このような状態で、プローブを試料に接近させる作業を行うと、プローブの影の輝度が大きく変化し、プローブの試料に対する接近を目視ですら認識することが、かなり困難となる。
【0017】
同様な問題は、マイクロサンプルを試料台に搭載する場合にも生ずる。プローブにデポジション膜(以下、デポ膜という)等によってプローブにメカ的に接着したマイクロサンプルを試料台に接近させるとき、接近を認識することができないため、マイクロサンプルが試料台に衝突する。それによって、プローブ及びマイクロサンプルが破損し、試料台に対して、マイクロサンプルを所定の角度に正確に接着できない等の不具合が発生する。
【0018】
このような不具合が起きると、プローブの付け替え作業が発生することや、サンプリング作業のやり直しが必要になり、多大な時間を消費することになる。より高分解能な分析を行うため装置外にマイクロサンプルを試料台と一緒に取り出し、STEM(走査型透過電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)等で分析する場合、STEM,TEM装置の待ち時間が発生し、一連の分析、解析作業にさらに多大な影響を与える。このような状況になると、不良解析の一連の流れが変更となり製造工程にも影響を与え、不良のフィードバックが出来ないので、一時製造工程が停止する可能も出てくる。
【0019】
本発明の目的は、試料から微小サンプルを切り出す作業を迅速に且つ正確に行うことができ、また、微小サンプルを試料台に配置させる作業を迅速に且つ正確に行うことができる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は荷電粒子ビーム装置とプローブを有する解析装置に関する。プローブに負の電圧を印加し、試料の輝度を計測する。プローブによって試料から微小サンプルを切り出す場合には、輝度が減少したときに、プローブが試料に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブが試料に接触したと判定する。こうして、プローブが試料に衝突することなく、プローブを試料に迅速に接触させることができる。
【0021】
プローブに接続された微小サンプルを試料台に配置する場合には、試料台の輝度を計測し、輝度が減少したときに、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接触したと判定する。こうして、プローブに接続された微小サンプルが試料台に衝突することなく、微小サンプルを試料台に迅速に配置させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、試料から微小サンプルを切り出す作業を迅速に且つ正確に行うことができる。また、微小サンプルを試料台に配置させる作業を迅速に且つ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照して本発明による解析装置の例を説明する。解析装置は、集束イオンビーム装置7(FIB装置と以下略する)と走査型電子顕微鏡装置18(以下、SEM装置と称する)を有し、これらは、真空チャンバ23に装着されている。真空チャンバ23内は、図示されていない真空ポンプ等を有する真空排気系によって、圧力が10−6Pa台になるように排気されている。
【0024】
真空チャンバ23内には、試料20を保持する試料台21が配置されている。試料台21は、試料台制御部37によって、試料20をX軸方向(左右方向)、Y軸方向(奥行き方向)、Z軸方向(天地方向)、R軸方向(回転方向)、及び、傾斜軸方向の5軸に関して駆動可能である。
【0025】
FIB装置7は、ガリウムの液体金属イオン源1、引き出し電極2、コンデンサレンズ3、可動絞り4、偏向コイル5、対物レンズ6、及びこれらを制御するイオンビーム制御部8を含む。FIB装置7は、光軸が試料20の表面に垂直になるように、配置されている。FIB装置7によって、ビーム電流が数十ナノアンペアから0.1ピコアンペア程度であり、直径が数ナノメートルから数マイクロメートルの集束イオンビーム9が、試料20上の1辺が数ミリメートルから数マイクロメートルの照射範囲に、照射される。こうして集束イオンビーム9の照射によるスパッタリングにより、試料20上にミクロンオーダーの穴加工ができる。
【0026】
SEM装置18は、ショットキーエミッションタイプの電子チップ10、陽極11、集束レンズ12、絞り13、偏向コイル14、試料からの2次電子等を電界と磁界によって効率良く電子検出部35に入射させるE×B15、対物レンズ17、及びこれらを制御する電子ビーム制御部19を含む。SEM装置18の光軸はFIB装置7の光軸に対して傾斜している。SEM装置18によって、電子ビーム電流が数ピコアンペアから数百ピコアンペア程度であり、直径が少なくとも数ナノメートルの電子ビーム22が、試料20上の1辺が数ミリメータから数マイクロメートルの照射範囲に、照射される。
【0027】
真空チャンバ23には、更に、電子検出部35、帯電検出器25、プローブ30及びプローブ駆動部31が設けられている。
【0028】
電子検出部35は、約10kVの正の電位が付与されたシンチレータおよび光電子倍増管で構成されている。電子検出部35からの検出信号は検出電子解析部36に送られ、そこで解析される。検出電子解析部36からの信号は、集束イオンビーム9の走査に同期して、中央制御部38によって処理され、SIM画像が得られる。このSIM画像は、モニター39に表示される。
【0029】
電子検出部35の前面には、銅のメッシュで作られたエネルギーフィルタが設けられ、エネルギーフィルタには所定の電圧が印加されている。エネルギーフィルタに印加した電位より小さいエネルギーを有する2次電子は、この電界で押し返され電子検出部35に到達することができない。従って、エネルギーフィルタに印加する電圧値を変化させることによって、電子検出部35に入射する2次電子量を制御することができる。エネルギーフィルタに印加する電圧を横軸に、電子検出部35によって検出する2次電子の信号量を縦軸に、グラフを作ると、エネルギーフィルタの印加電圧を増加し、所定の境界値より大きくなると、電子検出部35によって検出する2次電子量が極端に減少することを観察することができる。この境界値は、電子検出部35に入射する2次電子のエネルギーの大きさを表している。この境界値を求めることによって、2次電子のエネルギーの大きさを検知することができる。
【0030】
試料20が正に帯電している場合、試料20から放出された2次電子が電子検出部35に到達するには、試料表面の帯電による正の電界の影響を振り切って飛び出さなければならない。従って、電子検出部35に入射する電子数は著しく小さくなる。試料20が負に帯電している場合、試料20から放出された2次電子は試料表面の帯電による負の電界によってエネルギーを得て加速される。従って、電子検出部35に入射する電子数は増加する。従って、電子検出部35によって検出される2次電子のエネルギーの増加又は減少によって、試料20の帯電状態を計測することができる。
【0031】
プローブ30は、タングステンでできた先端が数マイクロメータの先細りの針の形状を有し、プローブ制御部32によって制御されたプローブ駆動部31によって、X軸方向(左右方向)、Y軸方向(奥行き方向)、Z軸方向(天地方向)に各々数ミリメータ移動する。プローブ30の位置決め精度は数ミクロンメートルである。
【0032】
帯電検出器25、帯電計測部26、及び、プローブ電圧演算器27の動作は後に、図3を参照して説明する。
【0033】
図1には図示されていないが、真空チャンバ23には、デポガス銃が設けられている。デポガス銃は、約60℃程度に温度コントロールされたタングステンカーバイトのガス源、ガスノズル、ノズル駆動部、及び制御部を有する。デポガス銃からのガスを、試料上のターゲットに照射し、そこに数十ピコアンペアの集束イオンビーム9を走査させると、ガスが分解、反応する。それにより、数マイクロメータ角のタングステンのデポ膜が数分間で形成できる。
【0034】
以下に、試料20としてシリコンウエハを例に説明する。配線、保護膜成膜等が形成されたシリコンウエハには、異物の付着、コンタクト不良等の不良又は欠陥が含まれる。これらの不良箇所の座標位置は、光学検査装置、SEM式検査装置等によって予め検出されている。試料台21は、試料台制御部37によってサブミクロン程度の精度にて位置決めされる。従って、検査装置で検出した不良箇所の座標位置にて、集束イオンビーム9と電子ビーム22が交差するように、数ミクロンメータのオーダで試料台21の位置決めを行うことができる。
【0035】
図2を参照して、プローブ30の駆動方法を説明する。図2は、試料20表面にマイクロサンプル40が形成された状態を示す。不良箇所を含む、長辺が10マイクロメートル、短辺が5マイクロメートルの矩形の周囲に、集束イオンビーム9を照射することにより、スパッタリングにより、深さが5マイクロメートルの溝43を形成する。長辺側の溝は傾斜するように形成する。それによって、楔形断面のマイクロサンプル40が形成される。斜めの溝加工は試料台21を傾斜させることで行う。本例の場合、試料台21を45°傾斜させている。
【0036】
尚、溝を形成しただけでは、マイクロサンプル40の下端部42は未だ試料20に接続されている。従って、マイクロサンプル40を試料より完全に分離する必要がある。最初に、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させ、その先端をマイクロサンプル40に接触させる。次に、タングステンデポ膜を生成することにより、プローブ30の先端とマイクロサンプル40の表面を接着する。最後に、マイクロサンプル40の下端部42を切り離す。こうして切り離されたマイクロサンプル40を高分解能のSTEM、又はTEMの試料台に搬送する方法は、後に、図12を参照して説明する。
【0037】
プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接触させるとき、プローブ30の駆動速度が大きいと、プローブ30の慣性力によって、プローブ30を所望の位置にて停止させることができない。プローブ30の先端がマイクロサンプル40に衝突し、プローブ30及びマイクロサンプル40が損傷される。従って、以下に説明するように、プローブ30がマイクロサンプル40に接近したとき、及び、接触したときを、正確に検出し、それに基づいてプローブ30の移動を制御する必要がある。
【0038】
マイクロサンプル40の表面に数マイクロメータ角の計測領域41を設定する。帯電検出器25は、計測領域41を集束イオンビーム9が走査する時に発生する2次電子、反射電子のエネルギをエネルギーフィルタを介して検出する。
【0039】
帯電計測部26は、帯電検出器25からの検出信号より、この計測領域41の帯電電位を求める。プローブ電圧演算器27は、帯電電位に基づいて最適なプローブ電圧値を演算し、演算結果をプローブ電圧制御部28に送る。プローブ電圧制御部28は、プローブ電圧演算器27からのプローブ電圧値に基づいて、プローブ電圧を生成し、それをプローブ30に印加する。プローブ電圧演算器27の動作は、図3の参照して説明する。
【0040】
マイクロサンプル40の帯電電位を計測する方法として、ここで説明した方法のほか、静電誘導を利用した表面電位計を用いる方法、電気光学結晶体に光ビームを照射し、その偏光、位相、屈折率の変化により帯電電位を計測する方法等がある。
【0041】
図3を参照して、本発明による解析装置のプローブ電圧演算器27の動作を説明する。図3は、計測領域41での帯電電位とプローブ電圧値との関係を示す。横軸は帯電電位、縦軸はプローブ電圧値である。図3Aは連続的に1次式でプローブ電圧を変化させる場合を示し、図3Bは、階段状に印加電圧を変化させる場合を示す。上述のように、計測領域41の帯電電位は、帯電計測部26によって計測される。プローブ電圧演算器27は、計測領域41での帯電電位が得られると、図3のグラフを用いてプローブ電圧値を演算する。
【0042】
本発明によると、プローブ30に負の電圧を印加する。帯電電位の絶対値が小さい場合には、負のプローブ電圧値を小さくし、帯電電位の絶対値が大きい場合には、負のプローブ電圧値を大きくする。こうして、プローブ30に負の電圧を印加し、帯電電位の絶対値が大きいときにプローブ30に印加する負の電圧値を大きくすることによって、SIM像の輝度の変化が顕著になり、プローブ30がマイクロサンプル40に接近したとき、及び、接触したときを、正確に検出することができるが、詳細は、以下に説明する。
【0043】
図4は、試料20が正に帯電している場合において、マイクロサンプル40を含む試料40の一部のSIM画像の模式図である。マイクロサンプル40の周囲には、図2に示したように加工溝43が形成されているが、図が複雑になることを避けるために、ここでは、省略している。図1に示したように、FIB装置7は、光軸が試料20に垂直になるように配置されているため、SIM画像は、試料20の表面を垂直上方から観察した像となって現れる。
【0044】
図4A〜図4Dは、プローブ電圧が0の場合、図4E〜図4Hは、プローブ電圧が−2Vの場合、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させたときのSIM画像を示す画面500である。図4A、及び、図4EのSIM画像では、プローブ30の像530の一部が現れ、図4B、及び、図4FのSIM画像では、プローブ30の像530の先端がマイクロサンプル40の像540に接近している。図4C、及び、図4GのSIM画像では、プローブ30の像530の先端が画面500中心にある。
【0045】
図示のように、プローブ30の像530の両側にプローブの影の像545が現れる。プローブ30が試料20に接近し、両者の間の距離が数十マイクロメートルより小さくなると、影の像545が出現する。この影の像545は、電子検出部35から見てプローブ30の背後の領域から放出される2次電子、反射電子等はプローブ30によって妨害され、電子検出部35に到達することが妨げられること、また、この領域では、電子検出部35による正の電界が到達しないため、この領域から放出される2次電子、反射電子等が電子検出部35に到達することが困難となることによる。プローブの影の像545は、プローブ30の像と共に大きくなる。プローブの影の像545は計測領域の像541に近づき、計測領域の像541と重なり、計測領域の像541より離れる。
【0046】
図4D、及び、図4HのSIM画像は、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触した状態を示す。図4DのSIM画像では、試料20表面の荷電電子がプローブ30に流れるため、SIM画像は全体的に明るくなる。プローブの影の像545も僅かであるが小さくなる。
【0047】
図5は、試料20が正に帯電している場合において、マイクロサンプル40の計測領域41におけるSIM画像の輝度の変化を示す。縦軸は、計測領域41におけるSIM画像の輝度、横軸は時間を表す。図5Aの曲線51は、図4A〜図4Dに対応し、プローブ電圧が0の場合の輝度の変化を示し、図5Bの曲線52は、図4E〜図4Hに対応し、プローブ電圧が−2Vの場合の輝度の変化を示す。輝度の計測方法は既知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0048】
図4A及び図4Bと図4E及び図4Fに示すSIM画像では、輝度は変化しない。これは、プローブ30とマイクロサンプル40の距離が十分離れており、プローブの影の像545が計測領域41内に入っていないためである。図4Cと図4Gに示すSIM画像では、プローブ30とマイクロサンプル40の距離が近づき、プローブの影の像545が計測領域41内に入るため、輝度は減少する。図4Dと図4Hに示すSIM画像では、計測領域41内に入っているプローブの影の像545が小さくなり、且つ、画面500全体の輝度が高くなるため、計測領域41における輝度は高くなる。
【0049】
プローブ30を損傷させることなくマイクロサンプル40に接触させるには、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置にて、プローブ30を停止又は減速させる必要がある。プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前に、プローブ30を停止又は減速させると、プローブ30の慣性力によって停止予定位置がずれ、プローブ30がマイクロサンプル40に衝突する。
【0050】
図5Aの曲線51と図5Bの曲線52に示すように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2に、輝度は最低値となる。従って、輝度の値が所定の閾値より小さくなったら、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置であると判定することができる。
【0051】
図5Aの曲線51と図5Bの曲線52を比較すると明らかなように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接近したとき、プローブ電圧が0の場合では、輝度の減少は緩やかであるが、プローブ電圧が−2Vの場合では、輝度の減少は急激である。図5Aの曲線51の場合、曲線51の傾斜が緩いから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは困難である。図5Bの曲線52の場合、曲線52の傾斜が急であるから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは容易である。
【0052】
そこで、本例では、図5Bに示すように、所定の閾値を設定することにより、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2より所定の時間だけ手前の時刻t1を検出することができる。
【0053】
図6は、試料20が負に帯電している場合において、マイクロサンプル40を含む試料40の一部のSEM像の模式図である。マイクロサンプル40の周囲には、図2に示したように加工溝43が形成されているが、図が複雑になることを避けるために、ここでは、省略している。図1に示したSEM装置18は、光軸が試料20に傾斜するように、配置されているため、SEM像は、試料20の表面を傾斜した方向から観察した立体像となって現れるはずであるが、ここでは、説明の都合上、SEM装置18は、光軸が試料20に垂直になるように、配置され、試料20の表面に垂直な方向から観察した平面像として示した。
【0054】
図6A〜図6Dは、プローブ電圧が0の場合、図6E〜図6Hは、プローブ電圧が−2Vの場合、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させたときのSEM像を示す画面600である。図6A、及び、図6EのSEM像では、プローブ30の像630の一部が現れ、図6B、及び、図6FのSEM像では、プローブ30の像630の先端がマイクロサンプル40の像640に接近している。図6C、及び、図6GのSEM像では、プローブ30の像630の先端が画面600中心にある。
【0055】
図示のように、プローブ30の像630の両側にプローブの影の像645が現れる。プローブの影の像645は、プローブ30の像と共に大きくなる。プローブの影の像645は計測領域の像641に近づき、計測領域の像641と重なり、計測領域の像641より離れる。
【0056】
図6D、及び、図6HのSEM像は、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触した状態を示す。試料20表面の荷電電子がプローブ30に流れるため、SEM像は全体的に明るくなる。プローブの影の像645も僅かであるが小さくなる。
【0057】
本例の場合、図4と比較すると、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触していないとき、SEM像を示す画面の輝度が全体的に高い。それ以外は、図4と同様である。
【0058】
図7は、試料20が負に帯電している場合において、マイクロサンプル40の計測領域41におけるSEM像の輝度の変化を示す。縦軸は、計測領域41におけるSEM像の輝度、横軸は時間を表す。図7Aの曲線53は、図6A〜図6Dに対応し、プローブ電圧が0の場合の輝度の変化を示し、図7Bの曲線54は、図6E〜図6Hに対応し、プローブ電圧が−2Vの場合の輝度の変化を示す。
【0059】
試料20がSiO2の場合、試料20は、電子ビーム22の照射によって負に帯電し、試料表面に負の電界を生成する。試料20から放出される2次電子は、負の電界によって、エネルギーを得て試料と反対側に押し出される。従って、放出される2次電子量も増加する。このためSEM像は一般的に明るくなる。
【0060】
図6A及び図6Bと図6E及び図6Fに示すSEM像では、プローブの影の像645が計測領域41内に入っていないため、輝度は変化しない。図6Cと図6Gに示すSEM像では、プローブの影の像645が計測領域41内に入るため、輝度は減少する。図6Dと図6Hに示すSEM像では、計測領域41内に入っているプローブの影の像645が小さくなり、且つ、画面600全体の輝度が高くなるため、計測領域41における輝度は高くなる。
【0061】
図7Aの曲線53と図7Bの曲線54に示すように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2に、輝度は最低値となる。従って、輝度の値が所定の閾値より小さくなったら、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置であると判定することができる。
【0062】
図7Aの曲線53と図7Bの曲線54を比較すると明らかなように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接近したとき、プローブ電圧が0の場合では、輝度の減少は緩やかであるが、プローブ電圧が−2Vの場合では、輝度の減少は急激である。図7Aの曲線53の場合、曲線53の傾斜が緩いから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは困難である。図7Bの曲線54の場合、曲線54の傾斜が急であるから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは容易である。
【0063】
そこで、本例では、図7Bに示すように、所定の閾値を設定することにより、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2より所定の時間だけ手前の時刻t1を検出することができる。
【0064】
図8を参照して、プローブ30に印加する電圧について説明する。ここでは、図3に示したように、プローブ30に負電圧を印加する理由と、試料20の表面の帯電電位の絶対値が増加するとプローブの負電圧を増加させる理由を説明する。
【0065】
先ず、プローブ30に負電圧を印加する理由を説明する。図8Aは、試料20の表面が正に帯電している場合、図8Bは、試料20の表面が負に帯電している場合を示す。プローブ30には、1メガオームの抵抗81を介して数十ボルトまで可変な電源82が接続されている。プローブ30に印加された正又は負の電圧によって正又は負の電界が形成される。
【0066】
電子検出部35によって正の電界が生成される。点線83は、正の電界を示す等電位面を表す。集束イオンビーム9の電流値は10pA、倍率は3000倍である。集束イオンビーム9の照射によって試料20から放出される2次電子85、86、87は所定のエネルギー幅を有し、その平均値は、例えば、数エレクトロンボルトである。
【0067】
プローブ30と試料20の間の距離が数百ミクロンメートルより大きい場合には、プローブ30の電界は試料20から放出される2次電子85、86、87に影響を与えない。従って、プローブ電圧が0Vの場合と同一である。試料20から放出される2次電子85、86、87は、プローブ30によって妨害されることなく、電子検出部35による正の電界によって捕捉される。
【0068】
プローブ30が試料20に接近すると、プローブ30の電界が、試料20から放出される2次電子85、86、87に影響を与える。
【0069】
図示のように、プローブ30に負の電圧を印加し、負の電界を形成する場合、2次電子85、86、87のうちの一部87はプローブ30の負の電界によって、試料20側に押し戻される。電子検出部35による正の電界は、プローブ30によって遮られ、試料20から放出される2次電子85、86、87の一部87を捕捉することができない。
【0070】
従って、電子検出部35によって検出される2次電子等が減少し、SIM画像は全体的に暗くなると共に、プローブの影の像545の輝度が低下する。こうして、プローブ30に負電圧を印加することによって、計測領域41の輝度の変化量が大きくなり、プローブ30の接近を確実に認識することができる。
【0071】
プローブ30に正の電圧を印加し、正の電界を形成する場合、2次電子85、86、87はプローブ30の正の電界によって引き出され、電子検出部35による正の電界によって補足される。従って、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させても、計測領域41の輝度の変化量は大きくならず、プローブ30の接近を確実に認識することは困難となる。
【0072】
ここでは、試料20が正に帯電している場合を説明したが、図8Bに示すように、試料20が負に帯電している場合でも、上述の議論は同様に成り立つ。
【0073】
次に、試料20の表面の帯電電位の絶対値が増加するとプローブの負電圧を増加させる理由を説明する。試料20の表面の帯電電位が大きくなると、プローブ30の負の電界の影響力が相対的に低下する。従って、計測領域41の輝度の変化量が小さくなり、プローブ30の接近を確実に認識することが困難になる。この場合には、プローブ30に印加する負の電圧値を大きくすればよい。それによって、プローブ30の負の電界の影響力が高くなり、計測領域41の輝度の変化量が大きくなる。それにより、プローブ30の接近を確実に認識することができる。
【0074】
尚、試料20が正に帯電しており且つその帯電電位が高い場合、試料20の表面の正の電界によって、試料20から放出される2次電子のうち電子検出部35に到達する2次電子が少なくなり、電子検出部35は、主として比較的にエネルギーの高い2次電子を検出する。従って、SIM画像が全体的に暗くなる。この場合には、SIM画像のコントラストを大きくし、SIM画像の全体を明るくする操作を行う。従って、この場合にも、負のプローブ電圧を増加させればよい。それによって、プローブ30が試料20に接近したとき、2次電子が試料20側に引き戻され、プローブ接近による輝度の変化量が大きくなる。
【0075】
試料20が負に帯電している場合には、上述にように、試料20から放出される2次電子は、試料20による負の電界によって、エネルギーを得るから、放出される2次電子量も増加する。しかしながら、帯電電位が高い場合、プローブ接近による輝度の変化量は小さくなるため、プローブ30に印加する負の電圧値を大きくする必要がある。
【0076】
図9、図10及び図11を参照して、自動的にプローブ30をマイクロサンプル40に接触させる手順を説明する。図9は、プローブ30をマイクロサンプル40に接触させる手順の流れ図である。
【0077】
ステップS1にて、プローブ30が試料に接触する前のSIM画像、接触後のSIM画像およびプローブ先端のSIM画像を中央制御部38に登録する。これらのSIM画像は、実際に自動でマイクロサンプリング作業を行うときと同一の条件、即ち同一のビーム電流、同一の倍率で撮像しておくと、プローブ制御が容易となる。
【0078】
図10Aは、プローブ30が試料に接触する前のSIM画像511を示す。このSIM画像511は、マイクロサンプル40の像540、その周囲の溝43の像543、及び、その外側の試料20の像520を含む。図10Bは、プローブ30が試料に接触した後のSIM画像512を示す。プローブ30が試料に接触すると、試料20の帯電電荷がプローブ30に流れるから、SIM画像512の輝度は、SIM画像511の輝度より高くなる。
【0079】
尚、プローブ30が試料に接触した後のSIM画像512の代わりに、プローブ30が試料に接触する直前のSIM画像を登録してもよい。この場合、SIM画像全体の輝度は低いが、プローブ先端の位置が十分認識できるように、プローブと下地との間に十分なコントラストが有ればよい。プローブと下地との間のコントラストを大きくするには、プローブ30の負の電圧値を大きくすればよい。
【0080】
プローブ30は最初、退避位置にあるのでSIM画像には現れない。プローブ30が試料20に十分に接近すると、プローブ30の像がSIM画像に現れる。図10Cは、プローブ30の先端の像530が現れたSIM画像513を示す。
【0081】
ステップS2にて、不良箇所を集束イオンビーム9の照射領域、即ち、試料20と集束イオンビーム9の交点に移動させる。光学検査装置、SEM式検査装置等によって検出した異物、コンタクト不良などの不良箇所の座標値をFIB装置及びSEM装置との座標系リンケージによって、数ミクロンメータのオーダで位置決めする。
【0082】
ステップS3にて、集束イオンビーム9の照射条件を決め、集束イオンビーム9を照射する。照射条件は、ビーム電流、照射面積、走査周期、照射間隔、ビーム滞在時間等を含む。集束イオンビーム9は、マイクロサンプル40を含む観察領域に照射される。
【0083】
ステップS4にて、マイクロサンプル40上に設定された計測領域41における帯電電位を計測する。
【0084】
ステップS5にて、計測領域41の帯電電位が0V(アース電位)である否かを判定する。計測領域41の帯電電位が0Vの場合には、ステップS6にて、プローブ電圧を0Vにする。計測領域41の帯電電位が0Vでない場合には、即ち、正又は負に帯電している場合には、ステップS7にて、プローブに所定の負の電位v1を印加する。
【0085】
ステップS8にて、プローブの先端の位置を画像認識することができるか否かを判定する。画像認識できない場合には、ステップS9にて、プローブの負の電圧値を増加し、再度、ステップS8に戻って、プローブの先端位置を画像認識することができるか否かを判定する。こうして、プローブの先端の位置を画像認識することができるようになるまで、プローブの負電圧値を増加させる。
【0086】
図11Aはプローブ電圧が0VのときのSIM画像を示し、図11Bはプローブ電圧が−5VのときのSIM画像を示す。自動制御によりプローブの移動を行う場合には、画像認識によってプローブの先端の位置を検出する。図11Aに示すように、プローブ電圧が0Vのとき、プローブの先端の位置を画像認識するが困難な場合には、図11Bに示すように、プローブ電圧を−5Vにすることによって、プローブ30とマイクロサンプル40を含む試料20とのコントラストが大きくなり、プローブの先端位置を画像認識することができる。
【0087】
画像認識によってプローブの先端位置を検出することができるようになると、ステップS10にて、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させる。図11Bに示すSIM画像515のプローブ30の先端と、図10Bに示す登録SIM画像512におけるプローブ30の先端の画像531を比較する。比較により、両画像におけるプローブ30の先端の位置の間の偏差を検出し、この偏差に基づいて、プローブ30の位置補正を行い、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させる。
【0088】
ステップS11にて、プローブ負の電位を元の値v1を戻す。ステップS12にて、計測領域の輝度を計測する。ステップS13にて、計測領域の輝度が閾値1より小さくなったか否かを判定する。計測領域の輝度が閾値1より小さくなっていないときは、ステップS8に戻る。計測領域の輝度が閾値1より小さくなったとき、ステップS14に進み、プローブの駆動速度を減速させる。
【0089】
ステップS15にて、プローブの移動中にプローブの先端の位置を画像認識することができるか否かを判定する。プローブの移動中に画像認識によってプローブの先端の位置を検出するが、下地が複雑な形状の場合、プローブの先端の輪郭を下地の形状の模様から識別することが困難になる。画像認識できない場合には、ステップS16にて、プローブの負の電圧値を増加し、再度、ステップS15に戻って、プローブの先端位置を画像認識することができるか否かを判定する。こうして、プローブの先端の位置を画像認識することができるようになるまで、プローブの負電圧値を増加させる。
【0090】
画像認識によってプローブの先端位置を検出することができるようになると、ステップS17にて、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させる。ステップS17は、ステップS10と同様である。
【0091】
ステップS18にて、プローブ負の電位を元の値v1を戻す。ステップS19にて、計測領域の輝度を計測する。ステップS20にて、計測領域の輝度が急激に大きくなったか否かを判定する。計測領域の輝度が急激に大きくなるまで、ステップS20を繰り返す。計測領域の輝度が急激に大きくなったとき、ステップS21に進み、プローブの駆動速度をゼロにする。それによって、ステップS22にて、プローブの先端はマイクロサンプル40に接触する。
【0092】
本例では、プローブの駆動速度は、ステップS13までは、300マイクロメートル/秒であったが、ステップS14では、20マイクロメートル/秒となった。即ち、プローブの駆動速度は15分の1にまで減速した。従って、ステップS21にて、プローブの駆動速度をゼロにすると、慣性によりプローブがマイクロサンプル40の表面に食い込むことが阻止される。従って、プローブの先端及びみマイクロサンプル40表面が損傷を受けることを防止することができる。
【0093】
図12を参照して、マイクロサンプル40を高分解能のSTEM、又はTEMの試料台48に搭載させる方法を説明する。試料台48は、モリブデンのメッシュによって形成され、幅500マイクロメータで直径がφ4ミリメートルで半円状である。
【0094】
マイクロサンプル40は、プローブ30に接続されている。即ち、1μm角、厚み0.5μmのタングステンデポ膜44によってマイクロサンプル40はプローブ30に接続されている。マイクロサンプル40を試料台48上に配置し、タングステンデポ膜44を切断することにより、マイクロサンプル40はプローブ30から切り離され、試料台48上に搭載される。
【0095】
図示していないが、試料台48には、この試料台48をカートリッジに搭載するための突起部を有する。従って、この試料台48をピンセットでカートリッジに配置し、固定することができる。カートリッジは、直径が約8mm、長さ約40mmの円筒形状を有する。カートリッジは回転機構を有しており、試料台48に搭載したマイクロサンプル40を集束イオンビーム9および電子ビーム22に直角に移動できる。また、数百ピコアンペアの電子ビーム22を高電圧で加速し、マイクロサンプル40に照射し、放出されるX線から微小領域での元素分析も可能である。カートリッジは試料ホルダーに搭載されており、カートリッジはウエハーを取り出す際にウエハー搬送系とは別のカートリッジ搬送系によって、ウエハーホルダーより脱着し、装置外に取り出す。このカートリッジを共通カートリッジホルダーに装着し、FIB装置でのマイクロサンプル40の薄膜化、及びSTEM、TEMによる高分解能な分析、解析を行う。
【0096】
マイクロサンプル40を試料台48に接近させ、試料台48上に配置するには、上述したプローブ30の先端を試料40の表面に接近させ、試料40に接触させる動作と同様な方法を用いることができる。試料台48に計測領域49を設定し、計測領域49における輝度を計測する。試料台48が正または負に帯電している場合、マイクロサンプル40を試料台48に接近させても、計測領域49での輝度変化が小さく、接近を検知することが困難である。そこで、計測領域49の帯電状態をモニターし、その電位によってプローブ30に印加する負の電位を変化させる。それにより、マイクロサンプルの接近による輝度変化が大きくなり、マイクロサンプル40を試料台48に接近したこと、及び、接触したことを検出することができる。従って、マイクロサンプル40を高速に接近させても、マイクロサンプル40が試料台48に衝突することなく試料台48上に配置させることができる。
【0097】
マイクロサンプル40は、タングステンデポ膜44を介して、プローブ30に接続されているから、マイクロサンプル40とプローブ30に同一電位を印加することが可能である。
【0098】
図13は、モニター39に表示される画面の1例を示す。画面上には計測領域での帯電電位モニター値60、プローブ電圧値モニター値62、輝度モニター値62、輝度変化グラフ63、ビームモード、ビーム電流値などを示す表示部64、プローブ座標、試料台座標、画面コントラスト、ブライトネスのモニター値、調整バーなどの表示部65、グラフィックスユーザインターフェイスのナビゲーションを示す表示部66、SIM画像を表示する画面500が表示されている。画像500には、図10に示したように、プローブの像530、マイクロサンプルの像540、溝の像543、計測領域の像541が表示されている。
【0099】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明による解析装置の1例を示す図である。
【図2】プローブの移動方法を説明するための図である。
【図3】マイクロサンプルの表面の計測領域における帯電電位とプローブ電圧の関係を示す図である。
【図4】試料が正に帯電している場合のSIM画像を示す図である。
【図5】試料が正に帯電している場合の輝度変化を示す図である。
【図6】試料が負に帯電している場合のSEM画像を示す図である。
【図7】試料が負に帯電している場合の輝度変化を示す図である。
【図8】試料が帯電している場合にプローブに負の電圧を印加する理由を説明するための図である。
【図9】プローブを自動制御によって試料に接近させ、接触させる手順を説明する図である。
【図10】プローブを自動制御によって試料に接触させるとき、予め登録するSIMが像の例を説明する図である。
【図11】プローブの印加電圧によってSIM画像のコントラストが変化することを説明する図である。
【図12】切り出したマイクロサンプルを試料台に配置させる方法を説明するための図である
【図13】モニターの画面の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0101】
1…イオン源、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、4…絞り、5…偏向コイル、6…対物レンズ、7…集束イオンビーム装置(FIB装置)、8…集束イオンビーム制御部、9…集束イオンビーム、10…電子チップ、11…陽極、12…集束レンズ、13…絞り、14…偏向コイル、15…E×B、16…2次電子検出器、17…対物レンズ、18…走査型電子顕微鏡装置(SEM装置)、19…電子ビーム制御部、20…試料、21…試料台、22…電子ビーム、23…真空チャンバ、25…帯電検出器、26…帯電計測部、27…プローブ電圧演算器、28…プローブ電圧制御部、30…プローブ、31…プローブ駆動部、32…プローブ制御部、35…電子検出部、36…検出電子解析部、37…試料台制御部、38…中央制御部、39…モニター、40…マイクロサンプル、41…計測領域、42…下端部、43…溝、44…タングステンデポ膜、48…試料台、49…計測領域、60…帯電電位モニター値、61…プローブ電圧モニター値、62…輝度モニター値、63…輝度変化モニター図、64、65、66…各パラメータ表示部、81…抵抗、82…可変電源、83…等電位面
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電ビーム装置とプローブを有する解析装置に関し、例えば、試料より不良箇所を含む微小サンプルを切り出し、その観察像や元素分析等を行う解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造においては、良品を歩留まり良く大量に生産することが求められる。一方、半導体の製造工程は数百工程程度にもおよび、ある工程での不良発生を知らずに製造工程を進めると、不良品を大量に作り込むことになり、膨大な損失となる。これを防止する為に、ある工程毎に入念な検査が行われ早い段階で不良の原因の追及、対策を行っている。
【0003】
検査では、回路パターン寸法の計測、回路パターンの欠陥検査、異物分析等が行われ、そのために、各種の検査装置が利用される。このような検査装置として、製作パターン寸法を計測する測長用走査電子顕微鏡(critical dimension scanning electron microscope:以下、CDSEMと称する)、光学的に異物及び欠陥を検査する光学検査装置、電子ビームを利用するSEM式検査装置、回路の断線や短絡などの電気的不良を検査するナノプローバ検査装置などがある。
【0004】
特に不良個所が製品の内部に存在する場合は、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:以下、FIBと称する)装置と走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:以下、SEMと称する。)を組み合わせた微細加工観察装置が用いられる。
【0005】
特開2002−150990号公報に開示されている『微小試料加工観察方法及び装置』では、FIBにより不良箇所を含むミクロンオーダーの微小領域(以下、マイクロサンプルと称する)を切り出し、そのマイクロサンプルを針状のプローブを含むマニピュレータにより摘出する。マイクロサンプルを保持したまま、マイクロサンプルの位置と姿勢を調節し、最適形状に追加工し、観察・分析する。
【0006】
観察部位を含むミクロンオーダーサイズのマイクロサンプルを針状のプローブを含むマニピュレータにより摘出する場合、プローブをマイクロサンプルに高速に、しかも安定的に接触させる必要がある。プローブをマイクロサンプルに接触させるときに、プローブがマイクロサンプルに衝突すると、プローブ及びマイクロサンプルが損傷する。この場合、作業をやり直ししなければならず、迅速な不良箇所の分析、解析、対策のフィードッバクができない。結果的にラインの生産性低下を生じる。
【0007】
特開2002−40107号公報に開示されている『プローブ駆動方法及びプローブ装置』では、プローブを試料に接触させるために、例えばSIM画像に発生するプローブの影を検出することによってプローブの試料に対する高さを検出し、その情報をもとに迅速かつ確実にプローブの速度等を制御する。
【0008】
プローブ制御部によって、プローブを試料に接近させると、2次電子検出器から見てプローブの後方の領域から放出される2次電子、反射電子等にとって、プローブが障害となる。従って、2次電子検出器に到達する2次電子、反射電子量が減少し、プローブの影が出現する。この影の出現にてプローブの移動速度を低下させ、輝度の急激な上昇によりプローブの接触を認知するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−150990号公報
【特許文献2】特開2002−40107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
試料表面に絶縁物がある場合、絶縁物表面は集束イオンビームまたは電子ビーム等の荷電粒子ビームの照射によって正または負に帯電する場合が多い。例えば、半導体であるシリコンウエハー上に形成された絶縁物に集束イオンビームを照射すると、正に帯電する。これは、絶縁物表面にプラスの電荷が蓄積することと、2次電子放出により等価的にさらにプラスの電荷が蓄積することによる。例えば、絶縁物に、電子ビームを照射し、しかも1次電子量に対する2次電子発生量の比αが1より小さい場合に、負に帯電する。αが1より大きいと逆に絶縁物の表面は正に帯電する。αは、観察対象、入射させる1次電子ビームのエネルギー値によっても変化する。
【0011】
不良箇所を含むマイクロサンプルが正または負に帯電すると、プローブを接近させた場合、プローブが接触する位置でのプローブ近傍の輝度の変化が小さくなり、プローブの接近を認識することが困難になる。
【0012】
例えば観察位置が正に帯電している場合、2次電子は試料の正の電界によって、試料側に押し戻され、電子検出器に入射する2次電子量が低下する。従って、SIM画像は全体的に暗くなる。この状態でアース電位を印加されたプローブを接近させると、プローブ近傍の輝度はプローブが電子検出器から見て障害物となり2次電子等の信号量がさらに低下し輝度が低下する。従って輝度の変化によってプローブの接近を検出することは困難となる。
【0013】
コントラスト及びブライトネスを調整し、プローブの接近前のSIM画像の明るさを調整することは可能であるが、プローブの接近による輝度変化が不十分で、試料へのプローブの接近が認識しづらい。
【0014】
また、自動制御でプローブをマイクロサンプルに接触させる場合では、プローブ先端画像を登録し、プローブ接近時のプローブ位置を認識して、登録ずみの接触完了時の画像比較よりプローブの位置ずれを認識し位置補正を行い、接触を行う。しかしながら、プローブとマイクロサンプルを含む試料とのコントラストが不十分でプローブ先端を認識できない場合には、プローブがマイクロサンプルに衝突し、プローブ損傷、マイクロサンプルの損傷等の不良が発生することがある。
【0015】
また、不良箇所が負に帯電している場合、2次電子は試料の負の電界によって、2次電子検出器側に加速され、また放出量も増加するため、2次電子量が増加するためSIM画像全体の輝度は大きくなり、明るくなる。アース電位を印加されたプローブの接近によりプローブ近傍の輝度は低下するが、その変化分は小さく、プローブの接近を目視にて認識することが困難である。この現象は目視による画像のコントラスト及びブライトネス調整を行っても同様である。
【0016】
また、帯電状況が時間により変化し、絶縁物表面で蓄電とアース電位部との放電を繰り返す場合、SIM画像全体が明るくなったり暗くなったりすることがある。即ち、試料に正の帯電がなくなると2次電子検出器に入射する2次電子が増加するため、像が明るくなり、試料に正の帯電量が増加すると2次電子検出器に入射する2次電子が減少するため、像が暗くなる。このような状態で、プローブを試料に接近させる作業を行うと、プローブの影の輝度が大きく変化し、プローブの試料に対する接近を目視ですら認識することが、かなり困難となる。
【0017】
同様な問題は、マイクロサンプルを試料台に搭載する場合にも生ずる。プローブにデポジション膜(以下、デポ膜という)等によってプローブにメカ的に接着したマイクロサンプルを試料台に接近させるとき、接近を認識することができないため、マイクロサンプルが試料台に衝突する。それによって、プローブ及びマイクロサンプルが破損し、試料台に対して、マイクロサンプルを所定の角度に正確に接着できない等の不具合が発生する。
【0018】
このような不具合が起きると、プローブの付け替え作業が発生することや、サンプリング作業のやり直しが必要になり、多大な時間を消費することになる。より高分解能な分析を行うため装置外にマイクロサンプルを試料台と一緒に取り出し、STEM(走査型透過電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)等で分析する場合、STEM,TEM装置の待ち時間が発生し、一連の分析、解析作業にさらに多大な影響を与える。このような状況になると、不良解析の一連の流れが変更となり製造工程にも影響を与え、不良のフィードバックが出来ないので、一時製造工程が停止する可能も出てくる。
【0019】
本発明の目的は、試料から微小サンプルを切り出す作業を迅速に且つ正確に行うことができ、また、微小サンプルを試料台に配置させる作業を迅速に且つ正確に行うことができる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は荷電粒子ビーム装置とプローブを有する解析装置に関する。プローブに負の電圧を印加し、試料の輝度を計測する。プローブによって試料から微小サンプルを切り出す場合には、輝度が減少したときに、プローブが試料に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブが試料に接触したと判定する。こうして、プローブが試料に衝突することなく、プローブを試料に迅速に接触させることができる。
【0021】
プローブに接続された微小サンプルを試料台に配置する場合には、試料台の輝度を計測し、輝度が減少したときに、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接近したと判定し、輝度が更に減少した後に急激に増加したとき、プローブに接続された微小サンプルが試料台に接触したと判定する。こうして、プローブに接続された微小サンプルが試料台に衝突することなく、微小サンプルを試料台に迅速に配置させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、試料から微小サンプルを切り出す作業を迅速に且つ正確に行うことができる。また、微小サンプルを試料台に配置させる作業を迅速に且つ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照して本発明による解析装置の例を説明する。解析装置は、集束イオンビーム装置7(FIB装置と以下略する)と走査型電子顕微鏡装置18(以下、SEM装置と称する)を有し、これらは、真空チャンバ23に装着されている。真空チャンバ23内は、図示されていない真空ポンプ等を有する真空排気系によって、圧力が10−6Pa台になるように排気されている。
【0024】
真空チャンバ23内には、試料20を保持する試料台21が配置されている。試料台21は、試料台制御部37によって、試料20をX軸方向(左右方向)、Y軸方向(奥行き方向)、Z軸方向(天地方向)、R軸方向(回転方向)、及び、傾斜軸方向の5軸に関して駆動可能である。
【0025】
FIB装置7は、ガリウムの液体金属イオン源1、引き出し電極2、コンデンサレンズ3、可動絞り4、偏向コイル5、対物レンズ6、及びこれらを制御するイオンビーム制御部8を含む。FIB装置7は、光軸が試料20の表面に垂直になるように、配置されている。FIB装置7によって、ビーム電流が数十ナノアンペアから0.1ピコアンペア程度であり、直径が数ナノメートルから数マイクロメートルの集束イオンビーム9が、試料20上の1辺が数ミリメートルから数マイクロメートルの照射範囲に、照射される。こうして集束イオンビーム9の照射によるスパッタリングにより、試料20上にミクロンオーダーの穴加工ができる。
【0026】
SEM装置18は、ショットキーエミッションタイプの電子チップ10、陽極11、集束レンズ12、絞り13、偏向コイル14、試料からの2次電子等を電界と磁界によって効率良く電子検出部35に入射させるE×B15、対物レンズ17、及びこれらを制御する電子ビーム制御部19を含む。SEM装置18の光軸はFIB装置7の光軸に対して傾斜している。SEM装置18によって、電子ビーム電流が数ピコアンペアから数百ピコアンペア程度であり、直径が少なくとも数ナノメートルの電子ビーム22が、試料20上の1辺が数ミリメータから数マイクロメートルの照射範囲に、照射される。
【0027】
真空チャンバ23には、更に、電子検出部35、帯電検出器25、プローブ30及びプローブ駆動部31が設けられている。
【0028】
電子検出部35は、約10kVの正の電位が付与されたシンチレータおよび光電子倍増管で構成されている。電子検出部35からの検出信号は検出電子解析部36に送られ、そこで解析される。検出電子解析部36からの信号は、集束イオンビーム9の走査に同期して、中央制御部38によって処理され、SIM画像が得られる。このSIM画像は、モニター39に表示される。
【0029】
電子検出部35の前面には、銅のメッシュで作られたエネルギーフィルタが設けられ、エネルギーフィルタには所定の電圧が印加されている。エネルギーフィルタに印加した電位より小さいエネルギーを有する2次電子は、この電界で押し返され電子検出部35に到達することができない。従って、エネルギーフィルタに印加する電圧値を変化させることによって、電子検出部35に入射する2次電子量を制御することができる。エネルギーフィルタに印加する電圧を横軸に、電子検出部35によって検出する2次電子の信号量を縦軸に、グラフを作ると、エネルギーフィルタの印加電圧を増加し、所定の境界値より大きくなると、電子検出部35によって検出する2次電子量が極端に減少することを観察することができる。この境界値は、電子検出部35に入射する2次電子のエネルギーの大きさを表している。この境界値を求めることによって、2次電子のエネルギーの大きさを検知することができる。
【0030】
試料20が正に帯電している場合、試料20から放出された2次電子が電子検出部35に到達するには、試料表面の帯電による正の電界の影響を振り切って飛び出さなければならない。従って、電子検出部35に入射する電子数は著しく小さくなる。試料20が負に帯電している場合、試料20から放出された2次電子は試料表面の帯電による負の電界によってエネルギーを得て加速される。従って、電子検出部35に入射する電子数は増加する。従って、電子検出部35によって検出される2次電子のエネルギーの増加又は減少によって、試料20の帯電状態を計測することができる。
【0031】
プローブ30は、タングステンでできた先端が数マイクロメータの先細りの針の形状を有し、プローブ制御部32によって制御されたプローブ駆動部31によって、X軸方向(左右方向)、Y軸方向(奥行き方向)、Z軸方向(天地方向)に各々数ミリメータ移動する。プローブ30の位置決め精度は数ミクロンメートルである。
【0032】
帯電検出器25、帯電計測部26、及び、プローブ電圧演算器27の動作は後に、図3を参照して説明する。
【0033】
図1には図示されていないが、真空チャンバ23には、デポガス銃が設けられている。デポガス銃は、約60℃程度に温度コントロールされたタングステンカーバイトのガス源、ガスノズル、ノズル駆動部、及び制御部を有する。デポガス銃からのガスを、試料上のターゲットに照射し、そこに数十ピコアンペアの集束イオンビーム9を走査させると、ガスが分解、反応する。それにより、数マイクロメータ角のタングステンのデポ膜が数分間で形成できる。
【0034】
以下に、試料20としてシリコンウエハを例に説明する。配線、保護膜成膜等が形成されたシリコンウエハには、異物の付着、コンタクト不良等の不良又は欠陥が含まれる。これらの不良箇所の座標位置は、光学検査装置、SEM式検査装置等によって予め検出されている。試料台21は、試料台制御部37によってサブミクロン程度の精度にて位置決めされる。従って、検査装置で検出した不良箇所の座標位置にて、集束イオンビーム9と電子ビーム22が交差するように、数ミクロンメータのオーダで試料台21の位置決めを行うことができる。
【0035】
図2を参照して、プローブ30の駆動方法を説明する。図2は、試料20表面にマイクロサンプル40が形成された状態を示す。不良箇所を含む、長辺が10マイクロメートル、短辺が5マイクロメートルの矩形の周囲に、集束イオンビーム9を照射することにより、スパッタリングにより、深さが5マイクロメートルの溝43を形成する。長辺側の溝は傾斜するように形成する。それによって、楔形断面のマイクロサンプル40が形成される。斜めの溝加工は試料台21を傾斜させることで行う。本例の場合、試料台21を45°傾斜させている。
【0036】
尚、溝を形成しただけでは、マイクロサンプル40の下端部42は未だ試料20に接続されている。従って、マイクロサンプル40を試料より完全に分離する必要がある。最初に、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させ、その先端をマイクロサンプル40に接触させる。次に、タングステンデポ膜を生成することにより、プローブ30の先端とマイクロサンプル40の表面を接着する。最後に、マイクロサンプル40の下端部42を切り離す。こうして切り離されたマイクロサンプル40を高分解能のSTEM、又はTEMの試料台に搬送する方法は、後に、図12を参照して説明する。
【0037】
プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接触させるとき、プローブ30の駆動速度が大きいと、プローブ30の慣性力によって、プローブ30を所望の位置にて停止させることができない。プローブ30の先端がマイクロサンプル40に衝突し、プローブ30及びマイクロサンプル40が損傷される。従って、以下に説明するように、プローブ30がマイクロサンプル40に接近したとき、及び、接触したときを、正確に検出し、それに基づいてプローブ30の移動を制御する必要がある。
【0038】
マイクロサンプル40の表面に数マイクロメータ角の計測領域41を設定する。帯電検出器25は、計測領域41を集束イオンビーム9が走査する時に発生する2次電子、反射電子のエネルギをエネルギーフィルタを介して検出する。
【0039】
帯電計測部26は、帯電検出器25からの検出信号より、この計測領域41の帯電電位を求める。プローブ電圧演算器27は、帯電電位に基づいて最適なプローブ電圧値を演算し、演算結果をプローブ電圧制御部28に送る。プローブ電圧制御部28は、プローブ電圧演算器27からのプローブ電圧値に基づいて、プローブ電圧を生成し、それをプローブ30に印加する。プローブ電圧演算器27の動作は、図3の参照して説明する。
【0040】
マイクロサンプル40の帯電電位を計測する方法として、ここで説明した方法のほか、静電誘導を利用した表面電位計を用いる方法、電気光学結晶体に光ビームを照射し、その偏光、位相、屈折率の変化により帯電電位を計測する方法等がある。
【0041】
図3を参照して、本発明による解析装置のプローブ電圧演算器27の動作を説明する。図3は、計測領域41での帯電電位とプローブ電圧値との関係を示す。横軸は帯電電位、縦軸はプローブ電圧値である。図3Aは連続的に1次式でプローブ電圧を変化させる場合を示し、図3Bは、階段状に印加電圧を変化させる場合を示す。上述のように、計測領域41の帯電電位は、帯電計測部26によって計測される。プローブ電圧演算器27は、計測領域41での帯電電位が得られると、図3のグラフを用いてプローブ電圧値を演算する。
【0042】
本発明によると、プローブ30に負の電圧を印加する。帯電電位の絶対値が小さい場合には、負のプローブ電圧値を小さくし、帯電電位の絶対値が大きい場合には、負のプローブ電圧値を大きくする。こうして、プローブ30に負の電圧を印加し、帯電電位の絶対値が大きいときにプローブ30に印加する負の電圧値を大きくすることによって、SIM像の輝度の変化が顕著になり、プローブ30がマイクロサンプル40に接近したとき、及び、接触したときを、正確に検出することができるが、詳細は、以下に説明する。
【0043】
図4は、試料20が正に帯電している場合において、マイクロサンプル40を含む試料40の一部のSIM画像の模式図である。マイクロサンプル40の周囲には、図2に示したように加工溝43が形成されているが、図が複雑になることを避けるために、ここでは、省略している。図1に示したように、FIB装置7は、光軸が試料20に垂直になるように配置されているため、SIM画像は、試料20の表面を垂直上方から観察した像となって現れる。
【0044】
図4A〜図4Dは、プローブ電圧が0の場合、図4E〜図4Hは、プローブ電圧が−2Vの場合、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させたときのSIM画像を示す画面500である。図4A、及び、図4EのSIM画像では、プローブ30の像530の一部が現れ、図4B、及び、図4FのSIM画像では、プローブ30の像530の先端がマイクロサンプル40の像540に接近している。図4C、及び、図4GのSIM画像では、プローブ30の像530の先端が画面500中心にある。
【0045】
図示のように、プローブ30の像530の両側にプローブの影の像545が現れる。プローブ30が試料20に接近し、両者の間の距離が数十マイクロメートルより小さくなると、影の像545が出現する。この影の像545は、電子検出部35から見てプローブ30の背後の領域から放出される2次電子、反射電子等はプローブ30によって妨害され、電子検出部35に到達することが妨げられること、また、この領域では、電子検出部35による正の電界が到達しないため、この領域から放出される2次電子、反射電子等が電子検出部35に到達することが困難となることによる。プローブの影の像545は、プローブ30の像と共に大きくなる。プローブの影の像545は計測領域の像541に近づき、計測領域の像541と重なり、計測領域の像541より離れる。
【0046】
図4D、及び、図4HのSIM画像は、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触した状態を示す。図4DのSIM画像では、試料20表面の荷電電子がプローブ30に流れるため、SIM画像は全体的に明るくなる。プローブの影の像545も僅かであるが小さくなる。
【0047】
図5は、試料20が正に帯電している場合において、マイクロサンプル40の計測領域41におけるSIM画像の輝度の変化を示す。縦軸は、計測領域41におけるSIM画像の輝度、横軸は時間を表す。図5Aの曲線51は、図4A〜図4Dに対応し、プローブ電圧が0の場合の輝度の変化を示し、図5Bの曲線52は、図4E〜図4Hに対応し、プローブ電圧が−2Vの場合の輝度の変化を示す。輝度の計測方法は既知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0048】
図4A及び図4Bと図4E及び図4Fに示すSIM画像では、輝度は変化しない。これは、プローブ30とマイクロサンプル40の距離が十分離れており、プローブの影の像545が計測領域41内に入っていないためである。図4Cと図4Gに示すSIM画像では、プローブ30とマイクロサンプル40の距離が近づき、プローブの影の像545が計測領域41内に入るため、輝度は減少する。図4Dと図4Hに示すSIM画像では、計測領域41内に入っているプローブの影の像545が小さくなり、且つ、画面500全体の輝度が高くなるため、計測領域41における輝度は高くなる。
【0049】
プローブ30を損傷させることなくマイクロサンプル40に接触させるには、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置にて、プローブ30を停止又は減速させる必要がある。プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前に、プローブ30を停止又は減速させると、プローブ30の慣性力によって停止予定位置がずれ、プローブ30がマイクロサンプル40に衝突する。
【0050】
図5Aの曲線51と図5Bの曲線52に示すように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2に、輝度は最低値となる。従って、輝度の値が所定の閾値より小さくなったら、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置であると判定することができる。
【0051】
図5Aの曲線51と図5Bの曲線52を比較すると明らかなように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接近したとき、プローブ電圧が0の場合では、輝度の減少は緩やかであるが、プローブ電圧が−2Vの場合では、輝度の減少は急激である。図5Aの曲線51の場合、曲線51の傾斜が緩いから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは困難である。図5Bの曲線52の場合、曲線52の傾斜が急であるから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは容易である。
【0052】
そこで、本例では、図5Bに示すように、所定の閾値を設定することにより、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2より所定の時間だけ手前の時刻t1を検出することができる。
【0053】
図6は、試料20が負に帯電している場合において、マイクロサンプル40を含む試料40の一部のSEM像の模式図である。マイクロサンプル40の周囲には、図2に示したように加工溝43が形成されているが、図が複雑になることを避けるために、ここでは、省略している。図1に示したSEM装置18は、光軸が試料20に傾斜するように、配置されているため、SEM像は、試料20の表面を傾斜した方向から観察した立体像となって現れるはずであるが、ここでは、説明の都合上、SEM装置18は、光軸が試料20に垂直になるように、配置され、試料20の表面に垂直な方向から観察した平面像として示した。
【0054】
図6A〜図6Dは、プローブ電圧が0の場合、図6E〜図6Hは、プローブ電圧が−2Vの場合、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させたときのSEM像を示す画面600である。図6A、及び、図6EのSEM像では、プローブ30の像630の一部が現れ、図6B、及び、図6FのSEM像では、プローブ30の像630の先端がマイクロサンプル40の像640に接近している。図6C、及び、図6GのSEM像では、プローブ30の像630の先端が画面600中心にある。
【0055】
図示のように、プローブ30の像630の両側にプローブの影の像645が現れる。プローブの影の像645は、プローブ30の像と共に大きくなる。プローブの影の像645は計測領域の像641に近づき、計測領域の像641と重なり、計測領域の像641より離れる。
【0056】
図6D、及び、図6HのSEM像は、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触した状態を示す。試料20表面の荷電電子がプローブ30に流れるため、SEM像は全体的に明るくなる。プローブの影の像645も僅かであるが小さくなる。
【0057】
本例の場合、図4と比較すると、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触していないとき、SEM像を示す画面の輝度が全体的に高い。それ以外は、図4と同様である。
【0058】
図7は、試料20が負に帯電している場合において、マイクロサンプル40の計測領域41におけるSEM像の輝度の変化を示す。縦軸は、計測領域41におけるSEM像の輝度、横軸は時間を表す。図7Aの曲線53は、図6A〜図6Dに対応し、プローブ電圧が0の場合の輝度の変化を示し、図7Bの曲線54は、図6E〜図6Hに対応し、プローブ電圧が−2Vの場合の輝度の変化を示す。
【0059】
試料20がSiO2の場合、試料20は、電子ビーム22の照射によって負に帯電し、試料表面に負の電界を生成する。試料20から放出される2次電子は、負の電界によって、エネルギーを得て試料と反対側に押し出される。従って、放出される2次電子量も増加する。このためSEM像は一般的に明るくなる。
【0060】
図6A及び図6Bと図6E及び図6Fに示すSEM像では、プローブの影の像645が計測領域41内に入っていないため、輝度は変化しない。図6Cと図6Gに示すSEM像では、プローブの影の像645が計測領域41内に入るため、輝度は減少する。図6Dと図6Hに示すSEM像では、計測領域41内に入っているプローブの影の像645が小さくなり、且つ、画面600全体の輝度が高くなるため、計測領域41における輝度は高くなる。
【0061】
図7Aの曲線53と図7Bの曲線54に示すように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2に、輝度は最低値となる。従って、輝度の値が所定の閾値より小さくなったら、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する位置より所定の距離だけ手前の位置であると判定することができる。
【0062】
図7Aの曲線53と図7Bの曲線54を比較すると明らかなように、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接近したとき、プローブ電圧が0の場合では、輝度の減少は緩やかであるが、プローブ電圧が−2Vの場合では、輝度の減少は急激である。図7Aの曲線53の場合、曲線53の傾斜が緩いから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは困難である。図7Bの曲線54の場合、曲線54の傾斜が急であるから、プローブ30の先端が所望の位置に到達したことを検出することができるように閾値を設定するのは容易である。
【0063】
そこで、本例では、図7Bに示すように、所定の閾値を設定することにより、プローブ30の先端がマイクロサンプル40に接触する直前t2より所定の時間だけ手前の時刻t1を検出することができる。
【0064】
図8を参照して、プローブ30に印加する電圧について説明する。ここでは、図3に示したように、プローブ30に負電圧を印加する理由と、試料20の表面の帯電電位の絶対値が増加するとプローブの負電圧を増加させる理由を説明する。
【0065】
先ず、プローブ30に負電圧を印加する理由を説明する。図8Aは、試料20の表面が正に帯電している場合、図8Bは、試料20の表面が負に帯電している場合を示す。プローブ30には、1メガオームの抵抗81を介して数十ボルトまで可変な電源82が接続されている。プローブ30に印加された正又は負の電圧によって正又は負の電界が形成される。
【0066】
電子検出部35によって正の電界が生成される。点線83は、正の電界を示す等電位面を表す。集束イオンビーム9の電流値は10pA、倍率は3000倍である。集束イオンビーム9の照射によって試料20から放出される2次電子85、86、87は所定のエネルギー幅を有し、その平均値は、例えば、数エレクトロンボルトである。
【0067】
プローブ30と試料20の間の距離が数百ミクロンメートルより大きい場合には、プローブ30の電界は試料20から放出される2次電子85、86、87に影響を与えない。従って、プローブ電圧が0Vの場合と同一である。試料20から放出される2次電子85、86、87は、プローブ30によって妨害されることなく、電子検出部35による正の電界によって捕捉される。
【0068】
プローブ30が試料20に接近すると、プローブ30の電界が、試料20から放出される2次電子85、86、87に影響を与える。
【0069】
図示のように、プローブ30に負の電圧を印加し、負の電界を形成する場合、2次電子85、86、87のうちの一部87はプローブ30の負の電界によって、試料20側に押し戻される。電子検出部35による正の電界は、プローブ30によって遮られ、試料20から放出される2次電子85、86、87の一部87を捕捉することができない。
【0070】
従って、電子検出部35によって検出される2次電子等が減少し、SIM画像は全体的に暗くなると共に、プローブの影の像545の輝度が低下する。こうして、プローブ30に負電圧を印加することによって、計測領域41の輝度の変化量が大きくなり、プローブ30の接近を確実に認識することができる。
【0071】
プローブ30に正の電圧を印加し、正の電界を形成する場合、2次電子85、86、87はプローブ30の正の電界によって引き出され、電子検出部35による正の電界によって補足される。従って、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させても、計測領域41の輝度の変化量は大きくならず、プローブ30の接近を確実に認識することは困難となる。
【0072】
ここでは、試料20が正に帯電している場合を説明したが、図8Bに示すように、試料20が負に帯電している場合でも、上述の議論は同様に成り立つ。
【0073】
次に、試料20の表面の帯電電位の絶対値が増加するとプローブの負電圧を増加させる理由を説明する。試料20の表面の帯電電位が大きくなると、プローブ30の負の電界の影響力が相対的に低下する。従って、計測領域41の輝度の変化量が小さくなり、プローブ30の接近を確実に認識することが困難になる。この場合には、プローブ30に印加する負の電圧値を大きくすればよい。それによって、プローブ30の負の電界の影響力が高くなり、計測領域41の輝度の変化量が大きくなる。それにより、プローブ30の接近を確実に認識することができる。
【0074】
尚、試料20が正に帯電しており且つその帯電電位が高い場合、試料20の表面の正の電界によって、試料20から放出される2次電子のうち電子検出部35に到達する2次電子が少なくなり、電子検出部35は、主として比較的にエネルギーの高い2次電子を検出する。従って、SIM画像が全体的に暗くなる。この場合には、SIM画像のコントラストを大きくし、SIM画像の全体を明るくする操作を行う。従って、この場合にも、負のプローブ電圧を増加させればよい。それによって、プローブ30が試料20に接近したとき、2次電子が試料20側に引き戻され、プローブ接近による輝度の変化量が大きくなる。
【0075】
試料20が負に帯電している場合には、上述にように、試料20から放出される2次電子は、試料20による負の電界によって、エネルギーを得るから、放出される2次電子量も増加する。しかしながら、帯電電位が高い場合、プローブ接近による輝度の変化量は小さくなるため、プローブ30に印加する負の電圧値を大きくする必要がある。
【0076】
図9、図10及び図11を参照して、自動的にプローブ30をマイクロサンプル40に接触させる手順を説明する。図9は、プローブ30をマイクロサンプル40に接触させる手順の流れ図である。
【0077】
ステップS1にて、プローブ30が試料に接触する前のSIM画像、接触後のSIM画像およびプローブ先端のSIM画像を中央制御部38に登録する。これらのSIM画像は、実際に自動でマイクロサンプリング作業を行うときと同一の条件、即ち同一のビーム電流、同一の倍率で撮像しておくと、プローブ制御が容易となる。
【0078】
図10Aは、プローブ30が試料に接触する前のSIM画像511を示す。このSIM画像511は、マイクロサンプル40の像540、その周囲の溝43の像543、及び、その外側の試料20の像520を含む。図10Bは、プローブ30が試料に接触した後のSIM画像512を示す。プローブ30が試料に接触すると、試料20の帯電電荷がプローブ30に流れるから、SIM画像512の輝度は、SIM画像511の輝度より高くなる。
【0079】
尚、プローブ30が試料に接触した後のSIM画像512の代わりに、プローブ30が試料に接触する直前のSIM画像を登録してもよい。この場合、SIM画像全体の輝度は低いが、プローブ先端の位置が十分認識できるように、プローブと下地との間に十分なコントラストが有ればよい。プローブと下地との間のコントラストを大きくするには、プローブ30の負の電圧値を大きくすればよい。
【0080】
プローブ30は最初、退避位置にあるのでSIM画像には現れない。プローブ30が試料20に十分に接近すると、プローブ30の像がSIM画像に現れる。図10Cは、プローブ30の先端の像530が現れたSIM画像513を示す。
【0081】
ステップS2にて、不良箇所を集束イオンビーム9の照射領域、即ち、試料20と集束イオンビーム9の交点に移動させる。光学検査装置、SEM式検査装置等によって検出した異物、コンタクト不良などの不良箇所の座標値をFIB装置及びSEM装置との座標系リンケージによって、数ミクロンメータのオーダで位置決めする。
【0082】
ステップS3にて、集束イオンビーム9の照射条件を決め、集束イオンビーム9を照射する。照射条件は、ビーム電流、照射面積、走査周期、照射間隔、ビーム滞在時間等を含む。集束イオンビーム9は、マイクロサンプル40を含む観察領域に照射される。
【0083】
ステップS4にて、マイクロサンプル40上に設定された計測領域41における帯電電位を計測する。
【0084】
ステップS5にて、計測領域41の帯電電位が0V(アース電位)である否かを判定する。計測領域41の帯電電位が0Vの場合には、ステップS6にて、プローブ電圧を0Vにする。計測領域41の帯電電位が0Vでない場合には、即ち、正又は負に帯電している場合には、ステップS7にて、プローブに所定の負の電位v1を印加する。
【0085】
ステップS8にて、プローブの先端の位置を画像認識することができるか否かを判定する。画像認識できない場合には、ステップS9にて、プローブの負の電圧値を増加し、再度、ステップS8に戻って、プローブの先端位置を画像認識することができるか否かを判定する。こうして、プローブの先端の位置を画像認識することができるようになるまで、プローブの負電圧値を増加させる。
【0086】
図11Aはプローブ電圧が0VのときのSIM画像を示し、図11Bはプローブ電圧が−5VのときのSIM画像を示す。自動制御によりプローブの移動を行う場合には、画像認識によってプローブの先端の位置を検出する。図11Aに示すように、プローブ電圧が0Vのとき、プローブの先端の位置を画像認識するが困難な場合には、図11Bに示すように、プローブ電圧を−5Vにすることによって、プローブ30とマイクロサンプル40を含む試料20とのコントラストが大きくなり、プローブの先端位置を画像認識することができる。
【0087】
画像認識によってプローブの先端位置を検出することができるようになると、ステップS10にて、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させる。図11Bに示すSIM画像515のプローブ30の先端と、図10Bに示す登録SIM画像512におけるプローブ30の先端の画像531を比較する。比較により、両画像におけるプローブ30の先端の位置の間の偏差を検出し、この偏差に基づいて、プローブ30の位置補正を行い、プローブ30をマイクロサンプル40に接近させる。
【0088】
ステップS11にて、プローブ負の電位を元の値v1を戻す。ステップS12にて、計測領域の輝度を計測する。ステップS13にて、計測領域の輝度が閾値1より小さくなったか否かを判定する。計測領域の輝度が閾値1より小さくなっていないときは、ステップS8に戻る。計測領域の輝度が閾値1より小さくなったとき、ステップS14に進み、プローブの駆動速度を減速させる。
【0089】
ステップS15にて、プローブの移動中にプローブの先端の位置を画像認識することができるか否かを判定する。プローブの移動中に画像認識によってプローブの先端の位置を検出するが、下地が複雑な形状の場合、プローブの先端の輪郭を下地の形状の模様から識別することが困難になる。画像認識できない場合には、ステップS16にて、プローブの負の電圧値を増加し、再度、ステップS15に戻って、プローブの先端位置を画像認識することができるか否かを判定する。こうして、プローブの先端の位置を画像認識することができるようになるまで、プローブの負電圧値を増加させる。
【0090】
画像認識によってプローブの先端位置を検出することができるようになると、ステップS17にて、プローブ30の先端をマイクロサンプル40に接近させる。ステップS17は、ステップS10と同様である。
【0091】
ステップS18にて、プローブ負の電位を元の値v1を戻す。ステップS19にて、計測領域の輝度を計測する。ステップS20にて、計測領域の輝度が急激に大きくなったか否かを判定する。計測領域の輝度が急激に大きくなるまで、ステップS20を繰り返す。計測領域の輝度が急激に大きくなったとき、ステップS21に進み、プローブの駆動速度をゼロにする。それによって、ステップS22にて、プローブの先端はマイクロサンプル40に接触する。
【0092】
本例では、プローブの駆動速度は、ステップS13までは、300マイクロメートル/秒であったが、ステップS14では、20マイクロメートル/秒となった。即ち、プローブの駆動速度は15分の1にまで減速した。従って、ステップS21にて、プローブの駆動速度をゼロにすると、慣性によりプローブがマイクロサンプル40の表面に食い込むことが阻止される。従って、プローブの先端及びみマイクロサンプル40表面が損傷を受けることを防止することができる。
【0093】
図12を参照して、マイクロサンプル40を高分解能のSTEM、又はTEMの試料台48に搭載させる方法を説明する。試料台48は、モリブデンのメッシュによって形成され、幅500マイクロメータで直径がφ4ミリメートルで半円状である。
【0094】
マイクロサンプル40は、プローブ30に接続されている。即ち、1μm角、厚み0.5μmのタングステンデポ膜44によってマイクロサンプル40はプローブ30に接続されている。マイクロサンプル40を試料台48上に配置し、タングステンデポ膜44を切断することにより、マイクロサンプル40はプローブ30から切り離され、試料台48上に搭載される。
【0095】
図示していないが、試料台48には、この試料台48をカートリッジに搭載するための突起部を有する。従って、この試料台48をピンセットでカートリッジに配置し、固定することができる。カートリッジは、直径が約8mm、長さ約40mmの円筒形状を有する。カートリッジは回転機構を有しており、試料台48に搭載したマイクロサンプル40を集束イオンビーム9および電子ビーム22に直角に移動できる。また、数百ピコアンペアの電子ビーム22を高電圧で加速し、マイクロサンプル40に照射し、放出されるX線から微小領域での元素分析も可能である。カートリッジは試料ホルダーに搭載されており、カートリッジはウエハーを取り出す際にウエハー搬送系とは別のカートリッジ搬送系によって、ウエハーホルダーより脱着し、装置外に取り出す。このカートリッジを共通カートリッジホルダーに装着し、FIB装置でのマイクロサンプル40の薄膜化、及びSTEM、TEMによる高分解能な分析、解析を行う。
【0096】
マイクロサンプル40を試料台48に接近させ、試料台48上に配置するには、上述したプローブ30の先端を試料40の表面に接近させ、試料40に接触させる動作と同様な方法を用いることができる。試料台48に計測領域49を設定し、計測領域49における輝度を計測する。試料台48が正または負に帯電している場合、マイクロサンプル40を試料台48に接近させても、計測領域49での輝度変化が小さく、接近を検知することが困難である。そこで、計測領域49の帯電状態をモニターし、その電位によってプローブ30に印加する負の電位を変化させる。それにより、マイクロサンプルの接近による輝度変化が大きくなり、マイクロサンプル40を試料台48に接近したこと、及び、接触したことを検出することができる。従って、マイクロサンプル40を高速に接近させても、マイクロサンプル40が試料台48に衝突することなく試料台48上に配置させることができる。
【0097】
マイクロサンプル40は、タングステンデポ膜44を介して、プローブ30に接続されているから、マイクロサンプル40とプローブ30に同一電位を印加することが可能である。
【0098】
図13は、モニター39に表示される画面の1例を示す。画面上には計測領域での帯電電位モニター値60、プローブ電圧値モニター値62、輝度モニター値62、輝度変化グラフ63、ビームモード、ビーム電流値などを示す表示部64、プローブ座標、試料台座標、画面コントラスト、ブライトネスのモニター値、調整バーなどの表示部65、グラフィックスユーザインターフェイスのナビゲーションを示す表示部66、SIM画像を表示する画面500が表示されている。画像500には、図10に示したように、プローブの像530、マイクロサンプルの像540、溝の像543、計測領域の像541が表示されている。
【0099】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明による解析装置の1例を示す図である。
【図2】プローブの移動方法を説明するための図である。
【図3】マイクロサンプルの表面の計測領域における帯電電位とプローブ電圧の関係を示す図である。
【図4】試料が正に帯電している場合のSIM画像を示す図である。
【図5】試料が正に帯電している場合の輝度変化を示す図である。
【図6】試料が負に帯電している場合のSEM画像を示す図である。
【図7】試料が負に帯電している場合の輝度変化を示す図である。
【図8】試料が帯電している場合にプローブに負の電圧を印加する理由を説明するための図である。
【図9】プローブを自動制御によって試料に接近させ、接触させる手順を説明する図である。
【図10】プローブを自動制御によって試料に接触させるとき、予め登録するSIMが像の例を説明する図である。
【図11】プローブの印加電圧によってSIM画像のコントラストが変化することを説明する図である。
【図12】切り出したマイクロサンプルを試料台に配置させる方法を説明するための図である
【図13】モニターの画面の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0101】
1…イオン源、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、4…絞り、5…偏向コイル、6…対物レンズ、7…集束イオンビーム装置(FIB装置)、8…集束イオンビーム制御部、9…集束イオンビーム、10…電子チップ、11…陽極、12…集束レンズ、13…絞り、14…偏向コイル、15…E×B、16…2次電子検出器、17…対物レンズ、18…走査型電子顕微鏡装置(SEM装置)、19…電子ビーム制御部、20…試料、21…試料台、22…電子ビーム、23…真空チャンバ、25…帯電検出器、26…帯電計測部、27…プローブ電圧演算器、28…プローブ電圧制御部、30…プローブ、31…プローブ駆動部、32…プローブ制御部、35…電子検出部、36…検出電子解析部、37…試料台制御部、38…中央制御部、39…モニター、40…マイクロサンプル、41…計測領域、42…下端部、43…溝、44…タングステンデポ膜、48…試料台、49…計測領域、60…帯電電位モニター値、61…プローブ電圧モニター値、62…輝度モニター値、63…輝度変化モニター図、64、65、66…各パラメータ表示部、81…抵抗、82…可変電源、83…等電位面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを観察対象に照射する荷電粒子ビーム部と、荷電粒子ビームの照射領域から放出される電子を検出する電子検出部と、該電子検出部からの検出信号に基づいて観察対象の像を得る制御部と、観察対象に対して相対的に移動でき、負の電圧が印加されることができるプローブと、を有する解析装置。
【請求項2】
請求項1記載の解析装置において、観測対象における輝度を計測し、その輝度が減少した時にプローブが観察対象に接近したと判定し、プローブの移動速度を低下させ、その後に輝度が急激に大きくなった時にプローブが観察対象に接触したと判定し、プローブの移動を停止させることを特徴とする解析装置。
【請求項3】
請求項2記載の解析装置において、プローブが観察対象に接近したときに上記電子検出部から見てプローブの背後の位置に計測領域を設定し、該計測領域における輝度を測定することを特徴とする解析装置。
【請求項4】
請求項1記載の解析装置において、観測対象における帯電状態を検出する帯電計測部を設け、該帯電計測部によって検出された帯電状態に基づいて、プローブに印加する負の電圧値を設定することを特徴とする解析装置。
【請求項5】
請求項4記載の解析装置において、上記帯電電位の絶対値が大きい場合には、プローブに印加する負の電圧値を大きくし、帯電電位の絶対値が小さい場合には、プローブに印加する負の電圧値を小さくすることを特徴とする解析装置。
【請求項6】
請求項4載の解析装置において、上記帯電電位とプローブに印加する負の電圧値の関係を示すテーブルに基づいて、プローブに印加する負の電圧値を設定することを特徴とする解析装置。
【請求項7】
請求項1記載の解析装置において、プローブに印加する負の電圧値の絶対値は5V以下であることを特徴とする解析装置。
【請求項8】
請求項1記載の解析装置において、上記制御部は、上記観察対象の像を画像処理することによってプローブの先端の位置を検出するように構成されており、上記画像処理によってプローブの先端の位置を検出することができない場合には、プローブに印加する負の電圧値を増加させることを特徴とする解析装置。
【請求項9】
請求項1記載の解析装置において、上記プローブにマイクロサンプルが物理的に接続されているとき、該プローブに接続されたマイクロサンプルを上記観察対象である試料台に自動的に接触させるための制御機構が設けられていることを特徴とする解析装置。
【請求項10】
請求項1記載の解析装置において、上記観察対象の像を表示するモニターが設けられ、該モニターの表示画面には、上記観察対象の像、上記観察対象の帯電状態、上記プローブの負の電圧値、上記観察対象の輝度を表示することを特徴とする解析装置。
【請求項11】
試料の帯電状態を検出することと、該試料が正又は負に帯電している場合にはプローブに負の初期電圧を印加することと、試料の輝度を計測することと、試料の輝度が所定の値より小さくなったら観察対象に対するプローブの相対的な移動速度を低下させることと、試料の輝度が更に減少してから急激に増加したときプローブの相対的な移動を停止させることと、を含むプローブの制御方法。
【請求項12】
請求項11記載のプローブの制御方法において、上記試料の帯電電圧の絶対値が大きいときはプローブに印加する負の初期電圧値を大きくし、上記試料の帯電電圧の絶対値が小さいときはプローブに印加する負の初期電圧値を小さくすることを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項13】
請求項11記載のプローブの制御方法において、上記試料が帯電していない場合にはプローブの電圧をアース電圧に設定することを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項14】
請求項11記載のプローブの制御方法において、プローブの移動中に画像認識によってプローブの先端の位置を検出することと、該プローブの先端の位置を検出することが困難な場合に、プローブに印加する負の電圧値を上記初期電圧より増加させることと、を含むプローブの制御方法。
【請求項15】
請求項14記載のプローブの制御方法において、プローブに印加する負の電圧値を増加させることによって該プローブの先端の位置を検出することができた場合には、プローブに印加する負の電圧値を上記初期電圧に戻すことを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項16】
試料に荷電粒子ビームを照射して試料の像を生成する荷電粒子ビーム装置と、観察対象に対して相対的に移動でき、負の電圧を印加されることができるプローブと、上記荷電粒子ビーム装置によって生成された観察画像を表示するモニター手段と、を有し、該モニター手段は、試料に接近したプローブの先端の像、試料の帯電状態、試料の輝度、プローブに印加された負の電圧値を表示することを特徴とする解析システム。
【請求項17】
請求項16記載の解析システムにおいて、画像処理によって上記プローブの先端の位置を検出する画像処理部を有し、上記プローブが移動中に上記画像処理部によって上記プローブの先端の位置を検出することができないとき、上記プローブに印加された電圧を増加させることを特徴とする解析システム。
【請求項18】
請求項16記載の解析システムにおいて、上記モニター手段は、プローブが試料に接近したときの試料の輝度の変化を示すグラフを表示することを特徴とする解析システム。
【請求項19】
請求項17記載の解析システムにおいて、画像処理部は、プローブが試料に接触する前の試料の像、及び、プローブが試料に接触した後の試料の像、を有し、上記プローブが移動中の試料の像と、画像処理部に格納された試料の像を比較することによって、プローブの先端の位置を検出することを特徴とする解析システム。
【請求項1】
荷電粒子ビームを観察対象に照射する荷電粒子ビーム部と、荷電粒子ビームの照射領域から放出される電子を検出する電子検出部と、該電子検出部からの検出信号に基づいて観察対象の像を得る制御部と、観察対象に対して相対的に移動でき、負の電圧が印加されることができるプローブと、を有する解析装置。
【請求項2】
請求項1記載の解析装置において、観測対象における輝度を計測し、その輝度が減少した時にプローブが観察対象に接近したと判定し、プローブの移動速度を低下させ、その後に輝度が急激に大きくなった時にプローブが観察対象に接触したと判定し、プローブの移動を停止させることを特徴とする解析装置。
【請求項3】
請求項2記載の解析装置において、プローブが観察対象に接近したときに上記電子検出部から見てプローブの背後の位置に計測領域を設定し、該計測領域における輝度を測定することを特徴とする解析装置。
【請求項4】
請求項1記載の解析装置において、観測対象における帯電状態を検出する帯電計測部を設け、該帯電計測部によって検出された帯電状態に基づいて、プローブに印加する負の電圧値を設定することを特徴とする解析装置。
【請求項5】
請求項4記載の解析装置において、上記帯電電位の絶対値が大きい場合には、プローブに印加する負の電圧値を大きくし、帯電電位の絶対値が小さい場合には、プローブに印加する負の電圧値を小さくすることを特徴とする解析装置。
【請求項6】
請求項4載の解析装置において、上記帯電電位とプローブに印加する負の電圧値の関係を示すテーブルに基づいて、プローブに印加する負の電圧値を設定することを特徴とする解析装置。
【請求項7】
請求項1記載の解析装置において、プローブに印加する負の電圧値の絶対値は5V以下であることを特徴とする解析装置。
【請求項8】
請求項1記載の解析装置において、上記制御部は、上記観察対象の像を画像処理することによってプローブの先端の位置を検出するように構成されており、上記画像処理によってプローブの先端の位置を検出することができない場合には、プローブに印加する負の電圧値を増加させることを特徴とする解析装置。
【請求項9】
請求項1記載の解析装置において、上記プローブにマイクロサンプルが物理的に接続されているとき、該プローブに接続されたマイクロサンプルを上記観察対象である試料台に自動的に接触させるための制御機構が設けられていることを特徴とする解析装置。
【請求項10】
請求項1記載の解析装置において、上記観察対象の像を表示するモニターが設けられ、該モニターの表示画面には、上記観察対象の像、上記観察対象の帯電状態、上記プローブの負の電圧値、上記観察対象の輝度を表示することを特徴とする解析装置。
【請求項11】
試料の帯電状態を検出することと、該試料が正又は負に帯電している場合にはプローブに負の初期電圧を印加することと、試料の輝度を計測することと、試料の輝度が所定の値より小さくなったら観察対象に対するプローブの相対的な移動速度を低下させることと、試料の輝度が更に減少してから急激に増加したときプローブの相対的な移動を停止させることと、を含むプローブの制御方法。
【請求項12】
請求項11記載のプローブの制御方法において、上記試料の帯電電圧の絶対値が大きいときはプローブに印加する負の初期電圧値を大きくし、上記試料の帯電電圧の絶対値が小さいときはプローブに印加する負の初期電圧値を小さくすることを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項13】
請求項11記載のプローブの制御方法において、上記試料が帯電していない場合にはプローブの電圧をアース電圧に設定することを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項14】
請求項11記載のプローブの制御方法において、プローブの移動中に画像認識によってプローブの先端の位置を検出することと、該プローブの先端の位置を検出することが困難な場合に、プローブに印加する負の電圧値を上記初期電圧より増加させることと、を含むプローブの制御方法。
【請求項15】
請求項14記載のプローブの制御方法において、プローブに印加する負の電圧値を増加させることによって該プローブの先端の位置を検出することができた場合には、プローブに印加する負の電圧値を上記初期電圧に戻すことを特徴とするプローブの制御方法。
【請求項16】
試料に荷電粒子ビームを照射して試料の像を生成する荷電粒子ビーム装置と、観察対象に対して相対的に移動でき、負の電圧を印加されることができるプローブと、上記荷電粒子ビーム装置によって生成された観察画像を表示するモニター手段と、を有し、該モニター手段は、試料に接近したプローブの先端の像、試料の帯電状態、試料の輝度、プローブに印加された負の電圧値を表示することを特徴とする解析システム。
【請求項17】
請求項16記載の解析システムにおいて、画像処理によって上記プローブの先端の位置を検出する画像処理部を有し、上記プローブが移動中に上記画像処理部によって上記プローブの先端の位置を検出することができないとき、上記プローブに印加された電圧を増加させることを特徴とする解析システム。
【請求項18】
請求項16記載の解析システムにおいて、上記モニター手段は、プローブが試料に接近したときの試料の輝度の変化を示すグラフを表示することを特徴とする解析システム。
【請求項19】
請求項17記載の解析システムにおいて、画像処理部は、プローブが試料に接触する前の試料の像、及び、プローブが試料に接触した後の試料の像、を有し、上記プローブが移動中の試料の像と、画像処理部に格納された試料の像を比較することによって、プローブの先端の位置を検出することを特徴とする解析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−343283(P2006−343283A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171223(P2005−171223)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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