説明

設計支援プログラム、設計支援装置、および設計支援方法

【課題】局所的に高温となる領域の温度を低下させること。
【解決手段】
設計支援装置は、設計対象回路のレイアウトデータ100内で所定温度以上となる領域1を有する熱解析結果と、当該レイアウトデータ100内のパスに関する解析結果とを取得する。そして、領域1内に配置されているセルの中から非クリティカルパス上の任意のセルを領域1の温度を低下させる対象セルに決定し、決定結果を出力する。つぎに、決定された対象セルに対して温度を低下させる処理を実施する。対象セルの出力に抵抗素子を接続させる。または、対象セルの配置位置を領域1の外に再配置させるか、対象セルのセルタイプを消費電力値の低いセルタイプに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のレイアウト設計を支援する設計支援プログラム、設計支援装置、および設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、設計対象回路のレイアウト後、予め利用者(設計者または検証者)が決定した温度条件に基づいてパワー解析やタイミング解析が実施されていた。パワー解析では、消費電力値の解析や、電源配線の電圧降下に関する解析や、電流が過度に流れることで配線が劣化する現象の解析(以下、エレクトロマイグレーション解析)を実施していた。そして、タイミング解析では、タイミングの制約に違反しているか否かの解析を実施していた。
【0003】
さらに、近年では、設計対象回路のレイアウトデータ内の各セルの温度を解析し、レイアウトデータ内で所定温度以上となる領域を特定する熱解析が実施されていた。そして、熱解析結果である各セルの温度に基づいて、各セルの遅延時間を決定してタイミング解析を実施する技術(従来技術1)が知られている(下記特許文献1,2参照)。さらに、クリティカルパス上のセルと非クリティカルパス上のセルとで、異なる遅延時間を設定してタイミングの解析を実施する技術(従来技術2)が知られている(下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−168200号公報
【特許文献2】特開平9−26983号公報
【特許文献3】特開平10−134093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、局所的に温度が高くなることに起因する不良が増加するという問題点があった。たとえば、局所的に温度が高くなることで、タイミングの不良やエレクトロマイグレーションによる配線不良など、設計対象回路に対して予め規定されている電圧や温度の動作条件にて動作しないマージン不良が発生していた。従来技術1および2では、セルの温度に応じて精度の高いタイミング解析を実施することができるが、タイミング以外の特性に関する不良を抑制することができないという問題点があった。
【0006】
そして、タイミングおよびタイミング以外の特性に関する不良を抑制するために局所的に高温となる領域の温度を低下させるには、利用者が、領域内の消費電力値を低下させるなどの処理を手動でおこなわなければならなかった。さらに、領域内には、複数のセルが配置されているため、いずれのセルに対して消費電力値を低下させる処理を適用すればよいのかを判断するのが困難であるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、設計対象回路の回路情報内で所定温度以上となる領域の情報を有する熱解析結果と前記回路情報のパスに関する解析結果とを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、前記取得手段により取得された解析結果に基づいて非クリティカルパス上の任意のセルを前記領域の温度を低下させる対象セルに決定する決定手段と、前記決定手段により決定された決定結果を出力する出力手段と、を備える設計支援装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の設計支援プログラム、設計支援装置、および設計支援方法によれば、最適なセルを用いてパスの特性に影響を及ぼすことなく設計対象回路内で高温となる領域の温度を下げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例を示す説明図である。
【図2−1】設計対象回路のレイアウトデータの一例を示す説明図である。
【図2−2】レイアウトデータ200内の各セルの詳細の一例を示す説明図である。
【図3】各セルの温度の一例を示す説明図である。
【図4】設計支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】設計支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】抵抗素子が接続された後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。
【図7】接続後の各セルの温度の一例を示す説明図である。
【図8】設計支援装置による設計支援処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図8で示した温度低下処理(ステップS806)の詳細な処理を示すフローチャートである。
【図10】決定結果の出力例を示す説明図である。
【図11】対象セルが再配置配線された後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。
【図12】再配置配線後の各セルの温度を示す説明図である。
【図13】図8で示した温度低下処理(ステップS807)の詳細な説明を示すフローチャートである。
【図14】セルの消費電力値に関するライブラリの一例を示す説明図である。
【図15】消費電力値の最も高いセルが対象セルに決定される例を示す説明図である。
【図16−1】変換後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。
【図16−2】レイアウトデータ1600内の各セルの詳細の一例を示す説明図である。
【図17】変換後の各セルの温度の一例を示す説明図である。
【図18】図8で示した温度低下処理(ステップS808)の詳細な説明を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明による設計支援プログラム、設計支援装置、および設計支援方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例を示す説明図である。まず、設計支援装置は、設計対象回路のレイアウトデータ100内で所定温度以上となる複数の領域(丸印の箇所)を有する熱解析結果と、パスに関する解析結果とを取得する。ここでは、複数の領域の1つである領域1について説明する。領域1内のパスがP1〜P3である。P1およびP3が非クリティカルパスであり、P2がクリティカルパスである。そして、設計支援装置は、領域1内に配置されているセルの中から非クリティカルパス上の任意のセルを領域1の温度を低下させる対象セルに決定する。なお、レイアウトデータ100では、理解の容易さのため各素子を回路記号で示している。
【0012】
また、実施の形態では、対象セルが下記の様に決定される例を示す。まず、1つ目の例では、設計支援装置が、領域1内に配置され、所定温度以上であり、かつクリティカルパス上のセルから領域1内に配置されている非クリティカルパス上の各セルまでの距離を算出する。そして、各距離に基づいて対象セルを決定する。つぎに、2つ目の例では、設計支援装置が、消費電力値に基づいて対象セルを決定する。
【0013】
さらに、実施の形態では、対象セルを用いて領域1の温度を低下させる例を示す。まず、1つ目の例では、設計支援装置が、対象セルの配置位置を変更する。つぎに、2つ目の例では、設計支援装置が、対象セルの出力に抵抗値を接続する。最後に、3つ目の例では、設計支援装置が、対象セルのセルタイプを変換する。
【0014】
ここで、上述した対象セルが決定される例と、当該対象セルを用いて所定温度以上の領域の温度が低下される例とを実施の形態1〜3を用いて詳細に説明する。まず、実施の形態1では、領域1内に配置されている非クリティカルパス上の任意の対象セルの出力に抵抗値が接続される例を示す。
【0015】
つぎに、実施の形態2では、領域内に配置され、所定温度以上であり、かつクリティカルパス上のセルから領域1内に配置されている非クリティカルパス上の各セルまでの距離に基づいて対象セルを決定し、当該対象セルの配置位置を変更する例を示す。最後に、実施の形態3では、消費電力値に基づいて対象セルが選択され、対象セルのセルタイプを変換する例を示す。
【0016】
(実施の形態1)
実施の形態1では、図1を用いて説明したように対象セルを決定し、対象セルの出力に抵抗素子を挿入することを指定する。つぎに、配置配線を自動で実行可能なツールへ当該レイアウトデータと指定結果を与える。そして、対象セルの出力に抵抗が接続されているレイアウトデータを当該ツールから取得する。これにより、タイミング(またはエレクトロマイグレーション)への影響を最小限に抑え、所定温度以上の領域の温度を低下させることができる。
【0017】
(設計対象回路のレイアウトデータ)
図2−1は、設計対象回路のレイアウトデータの一例を示す説明図である。レイアウトデータ200は、タイミング解析およびパワー解析が実施され、タイミングの制約およびパワーの解析に関する制約を遵守しているレイアウトデータである。レイアウトデータ200では、パス201上にINST01〜INST06と、パス202上にINST07〜INST11と、パス203上にINST12〜INST16と、パス204上にINST17〜INST21とを有している。INST1〜INST21は、レイアウトデータ200内の各セルを特定するために付されているインスタンス名である。そして、パス202が、クリティカルパスであり、パス201とパス203とパス204とが、非クリティカルパスである。
【0018】
ここで、クリティカルパスについて説明する。通常では、クリティカルパスとは、レイアウトデータ内でタイミングの最も厳しいパスを示している。本実施の形態1〜3では、クリティカルパスとは、レイアウトデータ内でタイミングの最も厳しいパスの他に、レイアウトデータ内でエレクトロマイグレーションの最も厳しいパスも「クリティカルパス」として定義する。タイミングの最も厳しいパスについては、タイミングに関するクリティカルパスと称し、エレクトロマイグレーションの最も厳しいパスについては、エレクトロマイグレーションに関するクリティカルパスと称する。
【0019】
エレクトロマイグレーションの最も厳しいパスとは、上述したようにエレクトロマイグレーション解析により当該解析の制約を遵守しているが、制約に対して余裕のないパスなどの着目すべきパスを示している。
【0020】
実施の形態1〜3では、パス202をタイミングに関するクリティカルパスとして説明するが、エレクトロマイグレーションに関するクリティカルパスであっても、後述する各機能に変化はない。そして、タイミングに関するクリティカルパスであるか否かを示すパスのタイミングに関する解析結果は、タイミング解析ツールによりタイミングを解析することで得られる。実施の形態1〜3では、当該解析結果は、レイアウトデータ200に付されていることとする。
【0021】
なお、エレクトロマイグレーションに関するクリティカルパスであるか否かを示すパスのエレクトロマイグレーションに関する解析結果は、エレクトロマイグレーション解析ツールを用いてレイアウトデータ200を解析することで得られる。
【0022】
つぎに、領域Aが、熱解析により得られる所定温度以上の領域である。ここで、所定温度以上の領域について説明する。具体的に所定温度以上の領域とは、たとえば、配置されているセルの温度の平均値が所定温度よりも高い領域や、領域A内に1つでも所定温度以上のセルが配置されている領域を示している。
【0023】
領域に関する情報は、既存のレイアウトデータ内の熱を自動で解析するツールから出力される情報である。また、レイアウトデータ内の熱を自動で解析するツールから出力される各セルの温度に関する情報に基づいて利用者が、所定温度以上の領域を作成してもよい。そして、実施の形態1〜3では、設計対象回路の動作温度範囲を―40〜125℃とし、所定温度を126℃とする。実施の形態1〜3では、所定温度以上の領域とは、領域内に126℃以上のセルが1つでも存在する場合を示す。よって、領域A内には、少なくとも126℃以上のセルが1つ含まれている。
【0024】
なお、レイアウトデータ200では、理解の容易さのため各素子を回路記号で示している。そして、レイアウトデータ200は、コンピュータがアクセス可能な記憶装置に記憶されている。つぎに、図2−2にてレイアウトデータ200内の各セルの詳細を説明する。
【0025】
図2−2は、レイアウトデータ200内の各セルの詳細の一例を示す説明図である。テーブル205では、レイアウトデータ200内の各セルのセル名を示している。本発明の詳細な説明では、セル名がセルタイプを示している。テーブル205は、インスタンス名206とセル名207を有している。インスタンス名206は、上述したレイアウトデータ200内の各セルのインスタンス名が記述されている。
【0026】
まず、インスタンス名206がINST01の場合を例に挙げると、セル名207がFF(Flip Flop)1である。よって、INST01が、フリップフロップであることを示している。つぎに、インスタンス名206がINST02の場合を例に挙げると、セル名207がCLKBUF1である。よって、INST02が、クロックバッファであることを示している。
【0027】
さらに、インスタンス名206がINST03の場合を例に挙げると、セル名207がCLKBUF2である。よって、INST03が、クロックバッファであることを示している。INST02およびINST03は、いずれもクロックバッファであるが、セルタイプが異なる。セルタイプが異なるとは、同一機能であっても駆動能力、サイズ、消費電力値などが異なることを示している。レイアウトデータ200から分かるように、INST02とINST03では、INST3の方がセルのサイズが大きい。よって、CLKBUF2の方が、CLKBUF1と比較してサイズが大きいため、駆動能力が大きく、消費電力値が高い。
【0028】
そして、セル名207が、BUF1およびBUF4の場合、バッファを示し、BUF1とBUF4とは、セルタイプが異なることを示している。そして、インスタンス名206がINST10の場合、セル名207がBUF1であり、インスタンス名206がINST15の場合、セル名207がBUF4である。レイアウトデータ200から分かるようにINST15は、INST10と比較してセルのサイズが大きい、よって、BUF4の方が、BUF1と比較してサイズが大きいため、駆動能力が大きく、消費電力値が高い。そして、インスタンス名206がINST20の場合は、セル名207がINV1であり、インバーターを示している。
【0029】
実施の形態1〜3では、「CLKBUF」がクロックバッファを示し、「BUF」がバッファを示し、「FF」がフリップフロップを示し、「INV」がインバーターを示していることとする。そして、同一機能であっても、番号が大きい方が、サイズが大きく、駆動能力が大きく、かつ消費電力値が高いこととする。各セルタイプの消費電力については、後述する実施の形態3にて説明する。
【0030】
(各セルの温度)
図3は、各セルの温度の一例を示す説明図である。テーブル300では、レイアウトデータ200内の各セルの温度を示している。テーブル300は、インスタンス名206と温度301を有している。インスタンス名206がINST02の場合を例に挙げると、温度301が、110[℃]である。
【0031】
そして、インスタンス名206がINST09の場合を例に挙げると、温度301が、130[℃]である。INST09が、所定温度(上述したように126[℃])以上のセルである。したがって、実施の形態1〜3では、INST09を126[℃]未満まで低下させ、かつ領域A内に配置されている他のセルがすべて126[℃]未満となるまで、後述する設計支援装置の処理を繰り返す。なお、点線の四角で囲われている箇所が、領域A内に配置されているセルである。
【0032】
(設計支援装置のハードウェア構成)
図4は、設計支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図4において、設計支援装置は、CPU(Central Processing Unit)401と、ROM(Read‐Only Memory)402と、RAM(Random Access Memory)403と、磁気ディスクドライブ404と、磁気ディスク405と、光ディスクドライブ406と、光ディスク407と、ディスプレイ408と、I/F(Interface)409と、キーボード410と、マウス411と、スキャナ412と、プリンタ413と、を備えている。また、各構成部はバス400によってそれぞれ接続されている。
【0033】
ここで、CPU401は、設計支援装置の全体の制御を司る。ROM402は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。磁気ディスクドライブ404は、CPU401の制御にしたがって磁気ディスク405に対するデータのリード/ライトを制御する。磁気ディスク405は、磁気ディスクドライブ404の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0034】
光ディスクドライブ406は、CPU401の制御にしたがって光ディスク407に対するデータのリード/ライトを制御する。光ディスク407は、光ディスクドライブ406の制御で書き込まれたデータを記憶したり、光ディスク407に記憶されたデータをコンピュータに読み取らせたりする。
【0035】
ディスプレイ408は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ408は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0036】
I/F409は、通信回線を通じてLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワーク414に接続され、当該ネットワーク414を介して他の装置に接続される。そして、I/F409は、ネットワーク414と内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。I/F409には、たとえばモデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0037】
キーボード410は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス411は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0038】
スキャナ412は、画像を光学的に読み取り、設計支援装置内に画像データを取り込む。なお、スキャナ412は、OCR(Optical Character Reader)機能を持たせてもよい。また、プリンタ413は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ413には、たとえば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0039】
(設計支援装置の機能的構成)
図5は、設計支援装置の機能的構成を示すブロック図である。設計支援装置500は、取得部501と、選択部502と、算出部503と、決定部504と、指定部505と、接続部506と、変換部507と、出力部508を含む構成である。各機能(取得部501〜出力部508)は、具体的には、たとえば、図4に示したROM402、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶されたプログラムをCPU401に実行させることにより、または、I/F409により、各機能を実現する。
【0040】
まず、実施の形態1では、取得部501と、決定部504と、接続部506と、出力部508との具体的な機能について説明する。つぎに、実施の形態2では、取得部501と、選択部502と、算出部503と、決定部504と、指定部505と、出力部508との具体的な機能について説明する。最後に、実施の形態3では、取得部501と、決定部504と、変換部507と、出力部508との具体的な機能について説明する。
【0041】
まず、取得部501は、設計対象回路のレイアウトデータ内で所定温度以上となる領域の情報を有する熱解析結果と、レイアウトデータのパスに関する解析結果とを取得する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、熱解析ツールから、領域Aなどの所定温度以上となる領域が付与されているレイアウトデータ200とテーブル300を取得する。そして、自動でタイミングを解析するツールからレイアウトデータ200のタイミング解析結果を取得する。本発明の詳細な説明では、タイミング解析結果は、レイアウトデータ200に付与されている。
【0042】
つぎに、決定部504は、取得部501により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、取得部501により取得された解析結果に基づいてタイミングに関する非クリティカルパス上の任意のセルを対象セルに決定する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、領域Bに配置されているINST02〜INST04と、INST08〜INST10と、INST13〜INST15の中から、タイミングに関する非クリティカルパス上の任意のセルを対象セルに決定する。タイミングに関する非クリティカルパス上のセルは、INST02〜INST04とINST13〜INST15であり、ここでは、INST14が対象セルに決定される。
【0043】
これにより、どのセルが、タイミングに影響を及ぼすことなく領域の温度を低下させることができるかが容易に特定できる。
【0044】
そして、出力部508は、決定部504により決定された決定結果を出力する機能を有する。出力形式としては、たとえば、ディスプレイ408への表示、プリンタ413への印刷出力、I/F409による外部装置への送信がある。また、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶することとしてもよい。
【0045】
つぎに、接続部506は、決定部504により決定された対象セルの出力に抵抗素子を接続する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、記憶装置に記憶されている抵抗素子をレイアウトデータ200内のセルおよび配線が配置されていない領域に配置する。そして、対象セルの出力先セルを特定し、抵抗素子の一方と対象セルの出力とを接続し、当該抵抗素子の他方と出力先セルの入力とを接続する。
【0046】
そして、出力部508は、接続部506により接続された後のレイアウトデータを出力する。出力形式としては、たとえば、ディスプレイ408への表示、プリンタ413への印刷出力、I/F409による外部装置への送信がある。また、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶することとしてもよい。図6に出力例を示す。
【0047】
図6は、抵抗素子が接続された後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。レイアウトデータ600では、対象セルであるINST14の出力に抵抗素子の一方が接続されている。そして、INST14の出力先であるINST15の入力に抵抗素子の他方が接続されている。これにより、INST14の消費電力値を低減させることができ、領域A内の消費電力値を低減させることができる。したがって、領域A内の温度を低下させることができる。図7にて対象セルの出力に抵抗素子が接続された接続後の各セルの温度を示す。
【0048】
図7は、接続後の各セルの温度の一例を示す説明図である。テーブル700では、対象セルの出力に抵抗素子が接続された接続後の各セルの温度を示している。点線の四角で囲われている箇所が、領域A内に配置されているセルである。領域A内に配置されているINST14を例に挙げると、対象セル(ここでは、INST14)の出力に抵抗素子が接続される前のテーブル300では、温度301が124[℃]であったが、接続後のテーブル700では、温度301が120[℃]であり温度が低下している。
【0049】
つぎに、領域A内に配置されているINST09を例に挙げると、接続前のテーブル300では、温度301が130[℃]であったが、接続後のテーブル700では、温度301が128[℃]であり温度が低下している。しかしながら、INST09は、126[℃]以上であるため、領域Aは、所定温度以上の領域である。
【0050】
つぎに、図5に戻って、設計支援装置500では、領域A内に配置されているすべてのセルが、所定温度以下となるまで、取得部501と、決定部504と、接続部506と、出力部508との処理を繰り返す。これにより、領域A内の温度を低下させることができ、局所的に温度が上昇することにより発生する不具合を防止することができる。
【0051】
(実施の形態1にかかる設計支援装置の設計支援処理手順)
つぎに、図8は、設計支援装置による設計支援処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、取得部501により、設計対象回路のレイアウトデータ内で所定温度以上の領域の情報を有する熱解析結果と、タイミング解析結果を取得する(ステップS801)。本手順では、タイミング解析結果が取得されるが、エレクトロマイグレーション解析結果が取得されてもよい。よって、本手順にてクリティカルパスとは、タイミングに関するクリティカルパスであり、非クリティカルパスとは、タイミングに関する非クリティカルパスである。
【0052】
つぎに、所定温度以上の複数の領域からタイミングに関するクリティカルパス上のセルを含む領域を検出する(ステップS802)。ここで、所定温度以上であるすべての領域を対象としてもよいが、本手順では、領域内にタイミングに関するクリティカルパス上のセルを含む領域のみを対象とする。これにより、タイミングに影響のある領域の温度を低下させることができる。
【0053】
そして、領域が検出されたか否かを判断する(ステップS803)。検出されたと判断された場合(ステップS803:Yes)、検出された領域の中で未選択の領域があるか否かを判断する(ステップS804)。そして、未選択の領域があると判断された場合(ステップS804:Yes)、未選択の領域から1つの領域を選択し(ステップS805)、温度低下処理を実施する(ステップS806(ステップS807,S808))。実施の形態1の手順では、ステップS806の温度低下処理が実施され、実施の形態2の手順ではステップS807の温度低下処理が実施され、実施の形態3の手順では、ステップS808の温度低下処理が実施される。そして、ステップS806(またはステップS807,S808)のつぎに、ステップS804へ戻る。
【0054】
一方、ステップS804において、未選択の領域がないと判断された場合(ステップS804:No)、温度低下処理後のレイアウトデータへタイミング解析ツールを用いてタイミング解析と熱解析ツールを用いて熱解析を実施する(ステップS809)。そして、ステップS801へ戻る。
【0055】
一方、ステップS803において、領域が検出されなかった場合(ステップS803:No)、出力部508により、出力処理を実施し(ステップS810)、一連の処理を終了する。
【0056】
つぎに、図9は、図8で示した温度低下処理(ステップS806)の詳細な処理を示すフローチャートである。まず、タイミングに関する非クリティカルパス上のセルを検出し(ステップS901)、検出されたか否かを判断する(ステップS902)。そして、検出されたと判断された場合(ステップS902:Yes)、検出されたセルの中から未決定のセルがあるか否かを判断する(ステップS903)。
【0057】
つぎに、未決定のセルがあると判断された場合(ステップS903:Yes)、未決定のセルから1つのセルを対象セルに決定し(ステップS904)、出力に抵抗素子が未接続か否かを判断する(ステップS905)。そして、未接続であると判断された場合(ステップS905:Yes)、対象セルの出力に抵抗素子を接続する(ステップS906)。
【0058】
つづいて、接続後のレイアウトデータを保存し(ステップS907)、ステップS804へ戻る。一方、ステップS905において、出力に抵抗素子が未接続でないと判断された場合(ステップS905:No)、ステップS903へ戻る。
【0059】
一方、検出されなかったと判断された場合(ステップS902:No)、または、未決定のセルがないと判断された場合(ステップS903:No)、領域の温度を下げられないことを出力し(ステップS908)、ステップS804へ戻る。
【0060】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2では、所定温度以上の領域内に配置され、所定温度以上であるクリティカルパス上のセルから、当該領域内に配置されている非クリティカルパス上の各セルまでの距離を算出する。そして、算出された距離に基づいて対象セルを選択し、対象セルの配置禁止領域として当該領域を指定して出力する。実施の形態2では、実施の形態1と同様にクリティカルパスを、タイミングに関するクリティカルパスとして説明するが、エレクトロマイグレーションに関するクリティカルパスであっても各機能の詳細な説明は同一である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一構成には同一符号を付し、各説明を省略する。
【0061】
図5の説明に戻って、実施の形態2では、取得部501と、選択部502と、算出部503と、決定部504と、指定部505と、出力部508とについて詳細に説明する。
【0062】
まず、取得部501が、実施の形態1と同様に熱解析結果とパスに関する解析結果を取得する。
【0063】
つぎに、選択部502が、取得部501により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、所定温度以上のセルであり、かつ取得部501により取得された解析結果に基づいてクリティカルパス上のセルを選択する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、テーブル300からレイアウトデータ200内の領域Aに配置されている126[℃]以上であるセルを検出する。そして、検出されたセルの中から、クリティカルパス上の任意のセルを選択する。ここで、INST09が、選択される。
【0064】
そして、出力部508が、選択部502により選択された選択結果を出力する機能を有する。出力部508に関する具体的な説明については、実施の形態1で説明した出力部508の機能と同一であるため説明を省略する。
【0065】
つぎに、算出部503が、選択部502により選択されたクリティカルパス上のセルから、所定温度以上の領域に配置されている非クリティカルパス上の各セルまでの距離を算出する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、領域A内に配置されている非クリティカルパス上のセルをすべて検出する。ここで、INST02〜INST04と、INST13〜INST15が検出される。そして、INST09から検出された各セルまでの距離を算出する。算出結果については、後述する図10にて説明する。
【0066】
つぎに、決定部504が、領域に配置されている非クリティカルパス上のセルの中で、算出部503により算出された算出結果に基づいてクリティカルパス上のセルから最短のセルを、領域の温度を低下させる対象セルに決定する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、INST09から最短であるセルを対象セルに決定する。これにより、パスの特性が厳しいパス上のセルの近傍に配置され、かつパスの特性に影響の少ないセルを容易に特定できる。
【0067】
そして、出力部508が、決定部504により決定された決定結果を出力する。出力部508に関する具体的な説明については、実施の形態1で説明した出力部508の機能と同一であるため説明を省略する。図10に決定結果の出力例を示す。
【0068】
図10は、決定結果の出力例を示す説明図である。まず、INST09から、領域A内に配置されている非クリティカルパス上の各セルまでの距離がd1〜d6である。INST09からINST14までの距離がd1であり、INST09からINST13までの距離がd2であり、INST09からINST02までの距離がd3であり、INST09からINST03までの距離がd4である。そして、INST09からINST04までの距離がd5であり、INST09からINST15までの距離がd6である。よって、d1が最も短いため、INST14が対象セルに決定されている。
【0069】
つぎに、指定部505が、所定温度以上の領域を、決定部504により決定された対象セルの配置禁止領域に指定する機能を有する。具体的には、たとえば、領域Aを、対象セルであるINST14の配置禁止領域に指定する。また、ここで、領域A以外の所定温度以上の領域すべてを配置禁止領域に指定してもよい。
【0070】
そして、出力部508が、指定部505により指定された指定結果を出力する機能を有する。出力形式としては、たとえば、ディスプレイ408への表示、プリンタ413への印刷出力、I/F409による外部装置への送信がある。また、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶することとしてもよい。
【0071】
そして、たとえば、出力結果に基づいて利用者が、INST14の配置を、領域Aを除く位置に再配置する。または、たとえば、CPU401が、アクセス可能な自動配置配線ツールへレイアウトデータ200と指定結果とを入力する。そして、自動配置配線ツールが、対象セルの配置位置を、領域Aを除く位置に再配置する。これにより、所定温度以上の領域でかつ所定温度以上のセルに密集して配置されているセルを容易に分散させることができ、当該領域および当該所定温度以上のセルの温度を低下させることができる。つぎに、図11に対象セルが再配置配線された後のレイアウトデータを示す。
【0072】
図11は、対象セルが再配置配線された後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。レイアウトデータ1100では、INST14が、領域Aを除く他のセルが配置されていない位置に配置されている。これにより、所定温度以上のセルであるINST09の近傍に密集して配置されているセルを分散させることができ、INST09の温度を低下でき、領域Aの温度を低下させることができる。つぎに、図12に対象セルが再配置配線された後の各セルの温度を示す。
【0073】
図12は、再配置配線後の各セルの温度を示す説明図である。テーブル1200では、対象セルが再配置配線された後のレイアウトデータ内の各セルの温度を示している。点線の四角で囲われているセルが、領域A内に配置されているセルである。テーブル1200では、INST09の温度301が127[℃]であり、再配置配線前の温度よりも低下している。
【0074】
つぎに、図5に戻って、設計支援装置500が、取得部501と、決定部504と、指定部505と、接続部506と、出力部508の処理を、領域A内に配置されているセルがすべて126[℃]未満になるまで繰り返す。これにより、領域内に密集して配置されているセルを分散させることができ、領域内の温度を容易に低下させることができる。したがって、局所的に発生する熱に起因する不具合を容易に防止することができる。
【0075】
(実施の形態2にかかる設計支援装置の設計支援処理手順)
つぎに、図13は、図8で示した温度低下処理(ステップS807)の詳細な説明を示すフローチャートである。図8において、温度低下処理(ステップS807)以外の処理については、実施の形態1と同一であるため説明を省略する。まず、領域内に配置されている所定温度以上、かつクリティカルパス上のセルを検出し(ステップS1301)、セルが検出されたか否かを判断する(ステップS1302)。
【0076】
つぎに、セルが検出されたと判断された場合(ステップS1302:Yes)、選択部502により、1つのセルを選択し(ステップS1303)、領域内に配置されている非クリティカルパス上のセルを検出する(ステップS1304)。そして、セルが検出されたか否かを判断し(ステップS1305)、検出されたと判断された場合(ステップS1305:Yes)、算出部503により、選択されたセルから検出された各セルまでの距離を算出する(ステップS1306)。決定部504により、最も距離が短いセルを対象セルに決定する(ステップS1307)。
【0077】
一方、ステップS1302において、検出されなかったと判断された場合(ステップS1302:No)、領域内に配置されている非クリティカルパス上のセルを検出し(ステップS1308)、セルが検出されたか否かを判断する(ステップS1309)。検出されたと判断された場合(ステップS1309:Yes)、決定部504により、任意のセルを対象セルに決定する(ステップS1310)。
【0078】
ステップS1307、またはステップS1310のつぎに、指定部505により、当該領域を対象セルの配置禁止領域に指定し(ステップS1311)、指定結果を配置配線ツールへ与えて配置配線を実施する(ステップS1312)。そして、出力部508により、配置配線後のレイアウトデータを保存し(ステップS1313)、ステップS804へ移行する。
【0079】
一方、検出されなかったと判断された場合(ステップS1305:No、またはS1309:No)、出力部508により、温度を下げられないことを出力し(ステップS1314)、ステップS804へ移行する。
【0080】
(実施の形態3)
最後に、実施の形態3では、所定温度以上の領域内に配置されている非クリティカルパス上の各セルの消費電力値に基づいて対象セルを決定する。そして、対象セルのセルタイプを、当該対象セルと同一機能で消費電力値の異なる複数のセルの中から、対象セルのセルタイプよりも消費電力値の低いセルタイプへ変換する。
【0081】
これにより、所定温度以上の領域内で、当該領域の温度に影響を与えるセルを自動で特定することができる。そして、当該セルを用いることで領域内の温度を低下させることができる。実施の形態3では、実施の形態1および2と同様にクリティカルパスを、タイミングに関するクリティカルパスとして説明するが、エレクトロマイグレーションに関するクリティカルパスであっても各機能の詳細な説明は同一である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一構成には同一符号を付し、各説明を省略する。
【0082】
(消費電力値に関するライブラリ)
図14は、セルの消費電力値に関するライブラリの一例を示す説明図である。ライブラリ1400は、セル名207と、消費電力値1401を有している。セル名207がCLKBUF1の場合、消費電力値1401は4である。そして、セル名207がCLKBUF2の場合、消費電力値1401は6である。なお、ライブラリ1400は、CPU401がアクセス可能なRAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶されている。
【0083】
図5の説明に戻って、実施の形態3では、取得部501と、決定部504と、変換部507と、出力部508とについて詳細に説明する。
【0084】
まず、取得部501は、実施の形態1と同様に熱解析結果とレイアウトデータ内のパスに関する解析結果とを取得する機能を有する。詳細な説明は、実施の形態1で示した機能と同一であるため省略する。
【0085】
つぎに、決定部504は、取得部501により取得された熱解析結果が有する所定以上の温度である領域に配置されているセルの中から、非クリティカルパス上であり、かつ最も消費電力値の高いセルを対象セルに決定する機能を有する。具体的には、たとえば、CPU401が、領域A内に配置されている非クリティカルパス上のセルを検出する。ここで、INST02〜INST04と、INST13〜INST15が検出される。
【0086】
つぎに、たとえば、CPU401が、記憶装置に記憶されているライブラリ1400から検出された各セルの消費電力値を検索する。そして、消費電力値の最も高いセルを、対象セルに決定する。ここで、INST15が、対象セルに決定される。これにより、パスの特性に影響を及ぼさないセルの中で、領域内の温度上昇に影響を与えているセルを容易に特定できる。
【0087】
そして、出力部508は、決定部504により決定された決定結果を出力する。出力形式としては、たとえば、ディスプレイ408への表示、プリンタ413への印刷出力、I/F409による外部装置への送信がある。また、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶することとしてもよい。図15に出力例を示す。
【0088】
図15は、消費電力値の最も高いセルが対象セルに決定される例を示す説明図である。図15では、INST15が四角い点線で囲われ、対象セルに決定されている。INST15は、上述したテーブル205から分かるようにセル名207がBUF4である。そして、BUF4の消費電力値は、ライブラリ1400から分かるように9[μW]である。
【0089】
つぎに、図5に戻って、変換部507は、決定部504により決定された対象セルを、対象セルと同一機能で消費電力値の異なるセルの中から対象セルよりも消費電力値の低いセルに変換する機能を有する。
【0090】
具体的には、たとえば、CPU401が、INST15のセル名207に基づいてライブラリ1400から同一機能のセル名207および消費電力値1401を読み出す。そして、INST15よりも消費電力値の低いセル名207を特定する。ここでは、BUF1とBUF2が特定される。複数特定された場合には、任意のセル名207を選択する。ここでは、BUF2を選択する。そして、テーブル205内のINST15のセル名207を、BUF4からBUF2に変換する。
【0091】
出力部508は、変換部507により変換された変換後のレイアウトデータを出力する。出力形式としては、たとえば、ディスプレイ408への表示、プリンタ413への印刷出力、I/F409による外部装置への送信がある。また、RAM403、磁気ディスク405、光ディスク407などの記憶装置に記憶することとしてもよい。図16−1および図16―2に出力例を示す。
【0092】
図16−1は、変換後のレイアウトデータの一例を示す説明図である。レイアウトデータ1600では、領域A内のINST15のサイズが小さくなっている。よって、INST15が、消費電力値の低いセルに変換されていることが分かる。図16−2にてレイアウトデータ1600内のセルの詳細を示す。
【0093】
図16−2は、レイアウトデータ1600内の各セルの詳細の一例を示す説明図である。テーブル1601では、INST15のセルタイプが変換後のレイアウトデータ1600内の各セルのセルタイプを示している。インスタンス名206がINST15の場合、セル名207がBUF4からBUF2に変換されている(点線の四角で囲われている箇所)。図17にてレイアウトデータ1600内の各セルの温度を示す。
【0094】
図17は、変換後の各セルの温度の一例を示す説明図である。テーブル1700では、レイアウトデータ1600内の各セルの温度を示している。テーブル1700は、インスタンス名206と温度301を有している。点線の四角で囲われている箇所が領域A内に配置されているセルである。インスタンス名206が、INST09の場合を例に挙げると、変換前のINST09の温度は、テーブル300から分かるように130[℃]であったが、変換後のINST09の温度は、テーブル1700から分かるように126[℃]である。よって、変換後のINST09の温度は低下している。これにより、対象セルの温度を低下させることができ、かつ対象セルの近傍のセルの温度を低下させることができる。したがって、領域内の温度を容易に低下させることができ、局所的に発生する熱に起因する不具合を容易に防止することができる。
【0095】
変換後のINST09の温度が、126[℃]以上であるため、設計支援装置500は、再度、取得部501と、決定部504と、変換部507と、出力部508の処理を繰り返す。
【0096】
まず、決定部504は、取得部501により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、取得部501により取得されたパスに関する解析結果に基づいて非クリティカルパス上のセルをあらたに対象セルに決定する。または、決定部504は、熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、パスに関する解析結果に基づいて非クリティカルパス上のセルのうち最も消費電力値の高いセルをあらたに対象セルに決定する。
【0097】
ここで、INST02〜INST4と、INST13〜INST15の中から、再度INST15が対象セルに決定される。そして、変換部507によりINST15のセル名207が、BUF2からBUF1に変換される。つぎに、取得部501により変換後のレイアウトデータが熱解析された熱解析結果と、タイミング解析されたタイミング解析結果が取得される。そして、決定部504は、再度、対象セルを決定し、変換部507と、取得部501の処理が繰り返される。
【0098】
また、決定部504は、対象セルと同一機能で消費電力値の異なるセルの中で、対象セルよりも消費電力値の低いセルが無く変換部507により対象セルが変換されなかった場合、すでに対象セルに選択されているセルを除くセルの中から、非クリティカルパス上でかつ消費電力値の最も高いセルを対象セルに決定する。具体的には、領域A内に配置されている非クリティカルパス上のセルの中で、消費電力値の最も高いセルであっても、変換可能なセルタイプが無い場合、当該セルにおいて消費電力値の高いセルが対象セルに決定される。
【0099】
なお、実施の形態1〜3は一例であり、たとえば、消費電力値に基づいて対象セルが選択され、当該対象セルの出力に抵抗値が接続されるなど、種々変更可能である。また、設計支援装置500が、対象セルの配置位置を変更し、かつ対象セルの出力に抵抗値を接続するなど所定温度以上の領域の温度を低下させる機能を組み合わせてもよい。
【0100】
(実施の形態3にかかる設計支援装置の設計支援処理手順)
つぎに、図18は、図8で示した温度低下処理(ステップS808)の詳細な説明を示すフローチャートである。図8にて温度低下処理(ステップS808)以外の処理については、実施の形態1と同一であるため説明を省略する。図18において、まず、領域内に配置されている非クリティカルパス上のセルを検出し(ステップS1801)、検出されたか否かを判断する(ステップS1802)。検出されたと判断された場合(ステップS1802:Yes)、検出された各セルの消費電力値を、セルタイプごとに消費電力値を有するライブラリから検索する(ステップS1803)。
【0101】
つぎに、検出されたセルの中から未決定のセルがあるか否かを判断し(ステップS1804)、未決定のセルがあると判断された場合(ステップS1804:Yes)、決定部504により、未決定のセルから消費電力値の最も高いセルを対象セルに決定する(ステップS1805)。
【0102】
そして、ライブラリから対象セルと同一機能で消費電力値の低いセルタイプを検索し(ステップS1806)、検索されたか否かを判断する(ステップS1807)。検索されたと判断された場合(ステップS1807:Yes)、変換部507により、対象セルのセルタイプを検索されたセルタイプに変換する(ステップS1808)。
【0103】
つぎに、出力部508により、変換後のレイアウトデータを保存し(ステップS1809)、ステップS804へ移行する。一方、ステップS1807において、検索されなかったと判断された場合(ステップS1807:No)、ステップS1804へ戻る。
【0104】
一方、ステップS1802において、検出されなかったと判断された場合(ステップS1802:No)、領域の温度が下げられないことを出力し(ステップS1810)、ステップS804へ移行する。また、ステップS1804において、未決定のセルがないと判断された場合(ステップS1804:No)、ステップS1810へ移行する。
【0105】
以上説明したように、設計支援プログラム、設計支援装置、および設計支援方法によれば、設計対象回路のレイアウトデータ内で所定温度以上となる領域に配置されている非クリティカルパス上のセルの中から、任意のセルを対象セルに決定する。
【0106】
これにより、領域内に配置されている複数のセルの中からどのセルを用いればパスの特性に影響を及ぼすことなく当該領域内の温度を低下させることができるかを容易に特定できる。そして、利用者の操作により対象セルの配置位置が領域外に再配置されることで、領域内の温度を低下させることができる。または、利用者の操作により対象セルの出力に抵抗素子が接続されることで、領域内の温度を低下させることができる。または、利用者の操作により対象セルのセルタイプが消費電力値の低いセルタイプに変換されることで、領域内の温度を低下させることができる。
【0107】
また、領域に配置されているセルの中から、非クリティカルパス上であり、かつ消費電力値の最も高いセルを対象セルに決定する。これにより、パスの特性に影響を及ぼさないセルの中で、領域内の温度上昇に影響を与えているセルを容易に特定できる。
【0108】
また、領域内に配置されている非クリティカルパス上のセルのうち、領域内に配置されている所定温度以上でありかつクリティカルパス上のセルから、最短距離であるセルを対象セルに決定する。これにより、パスの特性が厳しいパス上のセルの近傍に配置され、かつパスの特性に影響の少ないセルを容易に特定できる。
【0109】
また、領域を対象セルの配置禁止領域に指定することで、当該指定結果に基づいて対象セルが領域外に再配置される。これにより、領域内に密集して配置されているセルを分散させることができ、領域内の温度を容易に低下させることができる。したがって、局所的に発生する熱に起因する不具合を容易に防止することができる。
【0110】
また、対象セルのセルタイプを、消費電力値が低いセルタイプに変換することで、対象セルの消費電力値を低下させる。これにより、対象セルの温度が低下し、かつ対象セルの近傍のセルの温度が低下することで、領域内の温度を容易に低下させることができる。したがって、局所的に発生する熱に起因する不具合を容易に防止することができる。
【0111】
また、対象セルの出力に抵抗素子を接続することで、対象セルの消費電力値を容易に低下させることができる。これにより、対象セルの温度が低下し、かつ対象セルの近傍のセルの温度が低下することで、領域内の温度を容易に低下させることができる。したがって、局所的に発生する熱に起因する不具合を容易に防止することができる。
【0112】
また、パスに関する解析結果が、パスのタイミングに関する解析結果であり、タイミングに影響の小さいセルが、対象セルに自動で決定され、消費電力値が低下される。したがって、タイミングに影響を及ぼすことなく、領域内の温度を低下させることができる。
【0113】
また、パスに関する解析結果が、パスのエレクトロマイグレーションに関する解析結果であり、エレクトロマイグレーションに影響の小さいセルが、対象セルに自動で決定され、消費電力値が低下される。したがって、エレクトロマイグレーションに影響を及ぼすことなく、領域内の温度を低下させることができる。
【0114】
なお、本実施の形態で説明した設計支援方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本設計支援プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、本設計支援プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【符号の説明】
【0115】
200 レイアウトデータ
P1,P3,201,203,204 非クリティカルパス
P2,202 クリティカルパス
INST01〜INST06,INST12〜INST21 非クリティカルパス上のセル
INST07〜INST11 クリティカルパス上のセル
領域1,領域A 所定温度以上の領域
500 設計支援装置
501 取得部
502 選択部
503 算出部
504 決定部
505 指定部
506 接続部
507 変換部
508 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
設計対象回路の回路情報内で所定温度以上となる領域の情報を有する熱解析結果と、前記回路情報のパスに関する解析結果とを取得する取得手段、
前記取得手段により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、前記取得手段により取得された解析結果に基づいて非クリティカルパス上の任意のセルを前記領域の温度を低下させる対象セルに決定する決定手段、
前記決定手段により決定された決定結果を出力する出力手段、
として機能させることを特徴とする設計支援プログラム。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記領域に配置されているセルの中から、前記非クリティカルパス上であり、かつ消費電力値の最も高いセルを対象セルに決定することを特徴とする請求項1に記載の設計支援プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記取得手段により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、前記所定温度以上のセルであり、かつ前記取得手段により取得された解析結果に基づいてクリティカルパス上のセルを選択する選択手段、
前記選択手段により選択されたクリティカルパス上のセルから前記領域に配置されている前記非クリティカルパス上の各セルまでの距離を算出する算出手段、として機能させ、
前記決定手段は、
前記領域に配置されている前記非クリティカルパス上のセルのうち、前記算出手段により算出された算出結果に基づいて前記クリティカルパス上のセルから最短となるセルを、前記領域の温度を低下させる対象セルに決定し、
前記出力手段は、
前記決定手段により決定された決定結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の設計支援プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、
前記領域を、前記決定手段により決定された対象セルの配置禁止領域に指定する指定手段、として機能させ、
前記出力手段は、
前記指定手段により指定された指定結果を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の設計支援プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
前記決定手段により決定された対象セルを、前記対象セルと同一機能で前記対象セルより消費電力値の低くなるセルに変換する変換手段、として機能させ、
前記出力手段は、
前記変換手段により変換された後の回路情報を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の設計支援プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、
前記対象セルの出力に抵抗素子を接続する接続手段、として機能させ、
前記出力手段は、
前記接続手段により接続された接続後の回路情報を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の設計支援プログラム。
【請求項7】
前記解析結果が、前記回路情報内のパスのタイミングに関する解析結果であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の設計支援プログラム。
【請求項8】
前記解析結果が、前記回路情報内のパスのエレクトロマイグレーションに関する解析結果であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の設計支援プログラム。
【請求項9】
設計対象回路の回路情報内で所定温度以上となる領域の情報を有する熱解析結果と、前記回路情報のパスに関する解析結果とを取得する取得手段、
前記取得手段により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、前記取得手段により取得された解析結果に基づいて非クリティカルパス上の任意のセルを前記領域の温度を低下させる対象セルに決定する決定手段、
前記決定手段により決定された決定結果を出力する出力手段、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項10】
コンピュータが、
設計対象回路の回路情報内で所定温度以上となる領域の情報を有する熱解析結果と、前記回路情報のパスに関する解析結果とを取得する取得工程、
前記取得手段により取得された熱解析結果が有する領域に配置されているセルの中から、前記取得手段により取得された解析結果に基づいて非クリティカルパス上の任意のセルを前記領域の温度を低下させる対象セルに決定する決定工程、
前記決定手段により決定された決定結果を出力する出力工程、
を実行することを特徴とする設計支援方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16−1】
image rotate

【図16−2】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−34489(P2011−34489A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182364(P2009−182364)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】