説明

誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品

【課題】 誘電体層を薄層化した場合であっても、良好な特性を示す誘電体磁器組成物を提供すること。
【解決手段】BaTiOで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を主成分として含有し、化合物100モルに対して、各元素換算で、Mgの酸化物を0.6〜2.0モル、Mnおよび/またはCrの酸化物を0.010〜0.6モル、V、MoおよびWから選ばれる1つ以上の酸化物を0.010〜0.2モル、R1の酸化物(R1はY、Yb、ErおよびHoから選ばれる1つ以上)を0.10〜1.0モル、R2の酸化物(R2はDy、GdおよびTbから選ばれる1つ以上)を0.10〜1.0モル、Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる成分を0.2〜1.5モル、副成分として含有することを特徴とする誘電体磁器組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物および該誘電体磁器組成物が誘電体層に適用されたセラミック電子部品に関し、特に誘電体層を薄層化した場合であっても、良好な特性を示す誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、小型、高性能、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサに対する更なる小型化、高性能化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
【0003】
このような要求に対し、積層セラミックコンデンサの誘電体層の薄層化および多層化が進められている。しかしながら、誘電体層の薄層化を進めるために、誘電体粒子の粒子径を小さくすると、比誘電率が低下してしまい、所望の特性が得られないという問題があった。
【0004】
なお、特許文献1には、チタン酸バリウム結晶粒子およびチタン酸バリウムカルシウム結晶粒子から構成される誘電体層を有する積層セラミックコンデンサにおいて、チタン酸バリウム結晶粒子およびチタン酸バリウムカルシウム結晶粒子に対し、2種類の希土類元素およびその他の成分を含有させることが記載されている。そして、この積層セラミックコンデンサは、高い絶縁抵抗を有し、高温負荷試験における時間変化に伴う絶縁抵抗の低下が少ない旨が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の実施例に記載された積層セラミックコンデンサの誘電体層の厚みは2μmであり、この誘電体層をさらに薄層化した場合、上記の問題を解決できないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−135638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、誘電体層を薄層化した場合であっても、良好な特性を示す誘電体磁器組成物、および該誘電体磁器組成物が誘電体層に適用されたセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、主成分として含有し、
前記化合物100モルに対して、各元素換算で、
Mgの酸化物を0.6〜2.0モル、
Mnおよび/またはCrの酸化物を0.010〜0.6モル、
V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を0.010〜0.2モル、
R1の酸化物(R1は、Y、Yb、ErおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を0.10〜1.0モル、
R2の酸化物(R2は、Dy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を0.10〜1.0モル、
Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる成分を0.2〜1.5モル、を副成分として含有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、主成分および副成分の含有量を上記の範囲内とすることで、各副成分の金属元素(特にR1およびR2)の主成分であるABOへの固溶状態を制御することができる。その結果、誘電体層を薄層化した場合であっても、種々の特性(たとえば比誘電率、誘電損失、CR積、容量温度特性および高温負荷寿命)が良好な誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0010】
好ましくは、前記R1の酸化物のR1換算での含有量をαモル、前記R2の酸化物のR2換算での含有量をβモルとすると、0.50<β/(α+β)<0.90、0.2≦(α+β)≦1.5である関係を満足する。
【0011】
αおよびβを上記の範囲内とすることで、R1およびR2のABOへの固溶状態をより好ましいものとすることができる。その結果、上述した効果をより高めることができる。
【0012】
好ましくは、前記成分において、前記Baの含有モル比をa、前記Caの含有モル比をb、前記Siの含有モル比をcとすると、前記a、bおよびcが、a+b+c=1、a+b≦cであり、かつ0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.5≦c≦0.8である関係を満足する。
【0013】
上記のBa等を含む成分における各金属元素の比率を上記の範囲内とすることで、より特性を向上させることができる。
【0014】
好ましくは、前記成分の各金属元素換算での含有量をmモルとすると、(α+β)/m≦10.5である関係を満足する。
【0015】
R1およびR2の酸化物の含有量と、Ba等を含む成分の含有量とを上記の関係とすることで、特に焼成温度を下げることができ、低温焼成が可能となる。
【0016】
好ましくは、前記R1がY、前記R2がDyである。R1およびR2として、上記の元素を用いることで上述した効果をさらに高めることができる。
【0017】
好ましくは、前記ABOがBaTiOである。このようにすることで、大容量かつ信頼性の高い誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0018】
また、本発明に係るセラミック電子部品は、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極とを有する。セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0022】
コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、図1に示すように、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0023】
誘電体層2
誘電体層2は、本実施形態に係る誘電体磁器組成物から構成されている。本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、主成分として、一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1つである)で表される化合物を有している。また、該誘電体磁器組成物は、主成分がABOである誘電体粒子を有している。
【0024】
ABOとしては、たとえば{(Ba(1−x−y)CaSr)O}(Ti(1−z)Zrで表される化合物が例示される。なお、u,v,x,y,zは、いずれも任意の範囲であるが、以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
上記式中xは、好ましくは0≦x≦0.1、より好ましくは0≦x≦0.05である。xはCa原子数を表し、xを上記範囲とすることにより、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。xが大きすぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。本発明においては、必ずしもCaを含まなくてもよい。
【0026】
上記式中yは、好ましくは0≦y≦0.1、より好ましくは0≦y≦0.05である。yはSr原子数を表し、yを上記範囲とすることによっても容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。yが大きすぎると、比誘電率が低下したり、温度特性が悪化する傾向にある。本発明においては、必ずしもSrを含まなくてもよい。
【0027】
上記式中zは、好ましくは0≦z≦0.2、より好ましくは0≦z≦0.18である。zはZr原子数を表し、zを上記範囲とすることによっても焼結性や耐還元性を向上させることができる。zが大きすぎると、比誘電率が低下したり、温度特性が悪化する傾向にある。本発明においては、必ずしもZrを含まなくてもよい。
【0028】
本実施形態では、ABOとしては、特に、チタン酸バリウム(好ましくは、組成式BaTiで表され、u/vが0.994≦u/v≦1.002である)が好適に使用できる。
【0029】
また、ペロブスカイト型結晶構造において、c軸の格子定数とa軸の格子定数との比を示すc/aが、好ましくは1.0085以上である。c/aが小さすぎると、誘電体粒子の結晶粒子径を小さくした場合に、比誘電率の低下が顕著に現れる傾向にある。
【0030】
なお、全ての誘電体粒子のc/aが、上記の範囲を満足している必要はない。すなわち、たとえばABOの原料粉末中に、c/aが低い粒子(立方晶系)とc/aが高い粒子(正方晶系)とが共存していてもよく、原料粉末全体として、正方晶性が高く、c/aが上記の範囲にあればよい。
【0031】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、R1の酸化物(R1は、Y、Yb、ErおよびHoから選ばれる少なくとも1つである)と、R2の酸化物(R2は、Dy、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1つである)と、Mgの酸化物と、V、MoおよびWから選ばれる少なくとも1つの酸化物と、Baの酸化物および/またはCaの酸化物とSiの酸化物とからなる成分と、を含有する。
【0032】
R1の酸化物の含有量をαとすると、αは、ABO 100モルに対して、R1元素換算で、好ましくは0.10〜1.0モル、より好ましくは0.2〜0.8モルである。αが多すぎると、比誘電率が低下する傾向にある。逆に、少なすぎると、信頼性が悪化する傾向にある。R1は、Y、Yb、ErおよびHoから選ばれる少なくとも1つであり、Yであることが特に好ましい。
【0033】
R2の酸化物の含有量をβとすると、βは、ABO 100モルに対して、R2元素換算で、好ましくは0.10〜1.0モル、より好ましくは0.2〜0.8モルである。βが多すぎると、温度に対する容量変化率が大きくなる傾向にある。逆に、少なすぎると、信頼性を確保することが困難となる傾向にある。R2は、Dy、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1つであり、Dyであることが特に好ましい。
【0034】
また、αおよびβは、0.50≦β/(α+β)≦0.90、かつ0.20<(α+β)<1.5である関係を満足することが好ましい。より好ましくは、0.6≦β/(α+β)≦0.83、かつ0.5≦(α+β)≦1.2である。β/(α+β)が大きすぎると、誘電損失(tanδ)が悪化する傾向にあり、小さすぎると、寿命が劣る傾向にある。また、(α+β)が大きすぎると、所望の比誘電率が得られない傾向にあり、小さすぎると、tanδが大きくなる傾向にある。
【0035】
本実施形態では、ABOが主成分である誘電体粒子には、副成分の金属元素、たとえばR1およびR2が固溶している。なお、誘電体粒子は、部分的に固溶していてもよいし、完全固溶系構造を有していてもよい。
【0036】
誘電体粒子にR2が含有されている場合、比誘電率を良好に保ちつつ、信頼性を向上させることができるが、容量温度特性は悪化する傾向にある。しかもこの傾向は、誘電体層の薄層化が進むほど顕著になる。そこで、誘電体粒子にR1を含有させることで、信頼性を維持しつつ、容量温度特性を改善することができる。このような効果は、特にαおよびβが上記の関係を満足する場合に顕著になる。
【0037】
また、R1およびR2の固溶状態を制御することで、誘電体粒子の結晶粒子径を小さくしても、比誘電率の低下を抑制することができる。
【0038】
Mgの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、各元素換算で、好ましくは0.6〜2.0モルである。上記の酸化物の含有量が多すぎると、温度特性が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、焼結が十分に進まない傾向にある。
【0039】
Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、Mnおよび/またはCr換算で、好ましくは0.010〜0.6モル、より好ましくは0.05〜0.3モルである。Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量が多すぎると、容量変化率が大きくなる傾向にある。逆に、少なすぎると、耐還元性が十分に得られなくなり信頼性が悪化する傾向にある。本実施形態では、Mnであることが好ましい。
【0040】
V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、V、MoおよびW換算で、好ましくは0.010〜0.2モル、より好ましくは0.02〜0.15モルである。上記の酸化物の含有量が多すぎると、絶縁抵抗が劣化する傾向にある。逆に、少なすぎると、信頼性が悪化する傾向にある。本実施形態では、Vであることが好ましい。
【0041】
Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる成分は、主に焼結助剤としての役割を有している。また、該成分の含有量をmとすると、mは、ABO100モルに対して、Ba、CaおよびSi換算で、好ましくは0.2〜1.5モル、より好ましくは0.5〜1.5モルである。なお、Siの酸化物(たとえばSiO)を単独で誘電体磁器組成物に含有させた場合には、誘電体粒子が粒成長しやすいので、好ましくない。
【0042】
また、本実施形態では、該成分において、Baの含有モル比をa、Caの含有モル比をb、Siの含有モル比をcとすると、a、bおよびcが、a+b+c=1、a+b≦cであり、かつ0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.5≦c≦0.8である関係を満足することが好ましい。より好ましくは、a+b<cであり、かつ0≦a≦0.45、0≦b≦0.45、0.55≦c≦0.8である。すなわち、該成分中におけるSiの比率(たとえばSiO)が、BaおよびCaの比率(たとえばBaOおよびCaO)の和と同じかそれよりも多くなっている。このようにすることで、焼結性を向上させると共に、比誘電率を高めることができる。
【0043】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物に含まれる誘電体粒子の結晶粒子径は特に制限されないが、誘電体層の薄層化の要求に応えるため、好ましくは0.1〜0.3μmである。また、本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、さらに、所望の特性に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0044】
誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、一層あたり2.0μm以下であることが好ましい。厚さの下限は、特に限定されないが、たとえば0.4μm程度である。
【0045】
誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、たとえば2000程度である。
【0046】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2を構成する材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0047】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
【0048】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0049】
まず、原料として、誘電体磁器組成物に主成分として含まれるABOの原料粉末と、副成分として含まれる金属元素のゲル状水酸化物スラリーまたは該元素の水溶液とを準備する。
【0050】
ABOの原料粉末としては、特に制限されず、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0051】
ABOの原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
【0052】
希土類元素については、希土類元素のゲル状水酸化物スラリーを準備することが好ましく、その他の金属元素については、ゲル状水酸化物スラリーを準備してもよいし、水溶液として準備してもよい。なお、Ba等を含む成分については、該成分中の各金属元素のゲル状水酸化物スラリーまたは水溶液を準備することが好ましい。これに対し、該成分を構成する金属元素の複合酸化物の形態あるいはガラス粉末の形態で添加することは好ましくない。複合酸化物の形態での添加は分散が不十分となりやすく、上述した効果が得られない傾向にあるからである。また、ガラス粉末の形態での添加は、ガラス粉末の粒子径が大きいため、上述した効果が得られにくい傾向があるからである。
【0053】
次に、本実施形態では、ABOの原料粉末と、上記で得られた副成分の金属元素のゲル状水酸化物スラリーまたは水溶液とをビーズミル等の媒体撹拌型分散機を用いて水と共に分散し原料混合物を得る。分散する条件としては特に制限されないが、たとえばφ0.1mm以下の媒体を用いることが好ましい。なお、媒体撹拌型分散機を用いた分散の前に、予備分散を行ってもよい。
【0054】
この分散では、ABO原料粉体を解砕しつつ、ABO原料粉体と副成分(ゲル状水酸化物または水溶液中の金属元素)とを均一に分散させる。また、この分散では、親水性の分散剤を添加して、原料混合物の分散性をさらに高めることが好ましい。親水性の分散剤としては、たとえばポリカルボン酸系の分散剤が挙げられる。
【0055】
得られた原料混合物はたとえばスプレー乾燥等により乾燥される。乾燥後の原料混合物においては、ABO粒子の表面に、ゲル状水酸化物または水溶液中の副成分の金属元素が被覆された状態となっている。
【0056】
このような工程を経て、原料混合物を作製することで、後述する熱処理工程や焼成工程において、ABO粒子に対する副成分の金属元素の固溶を制御することができ、その結果、所望の特性が実現された誘電体磁器組成物を得ることができる。たとえば、希土類元素をゲル状水酸化物の形態でABO粒子に被覆することで、希土類元素が、ABO粒子に対して過剰に固溶することを抑制することができる。その結果、所望の特性が得られる。
【0057】
続いて、乾燥後の原料混合物は熱処理される。この熱処理を行うことにより、ABO粒子の表面に被覆された副成分金属元素がより強固に粒子に対して固着される。熱処理における保持温度は400〜900℃の範囲が好ましい。また、保持時間は0.1〜3.0時間が好ましい。なお、原料混合物の乾燥と熱処理とは同時に行ってもよい。
【0058】
熱処理後には、原料混合物は凝集しているため、凝集をほぐす程度に原料混合物を解砕してもよい。なお、この解砕は後述する誘電体層用ペーストを調製したあとに行ってもよい。
【0059】
熱処理後の原料混合物(誘電体原料)の粒子径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。次に、誘電体原料を塗料化して誘電体層用ペーストを調製する。誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0060】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0061】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0062】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していることが好ましい。
【0063】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0064】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0065】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0066】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷し内部電極パターンを形成した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0067】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0068】
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行う。焼成では、昇温速度を好ましくは200〜2000℃/時間とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1300℃以下、より好ましくは1100〜1250℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは2〜3時間である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、この範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0069】
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
【0070】
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。降温速度は、好ましくは50〜2000℃/時間である。
【0071】
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命(絶縁抵抗の寿命)を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0072】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
【0073】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に900〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
【0074】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜4時間、降温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0075】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0076】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0077】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0078】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0080】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示したが、このようなセラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有する電子部品であれば何でも良い。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0082】
実施例1
まず、ABOの原料粉体としてBaTiO粉末を準備した(u/v=1.000)。また、c/a=1.0095であった。副成分の原料として、YおよびDyについてはゲル状水酸化物スラリーを準備し、Mg、Mn、V、BaおよびCaについては水溶液を準備した。また、Siの原料としては、コロイダルシリカを水で分散したもの(Siの水系分散液)を準備した。なお、主成分および副成分の添加量は、表1に示す値となるように秤量した。また、Ba等を含む成分におけるa、bおよびcは、それぞれ、0.3、0.15および0.55となるように秤量した。
【0083】
次に、BaTiO粉末と副成分の原料とを、ボールミルを用いて予備分散を1時間行った。予備分散後の原料混合物を、φ0.1mmの媒体が充填されたビーズミルを用いて、48時間分散し、原料混合物を作製した。すなわち、BaTiO粉末と各元素のゲル状水酸化物または水溶液とSiの水系分散液とを分散した。また、分散剤として、ポリカルボン酸系分散剤を、BaTiO 100wt%に対して、2.0wt%添加した。
【0084】
得られた原料混合物をスプレー乾燥機にて250℃で乾燥した後、ロータリーキルンにおいて750℃で15分熱処理を行った。熱処理後の原料混合物を誘電体原料とした。
【0085】
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0086】
また、上記とは別に、Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0087】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが1.0〜1.5μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0088】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
【0089】
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
【0090】
焼成条件は、昇温速度:1000℃/時間、保持温度:1170℃とし、保持時間を1時間とした。降温速度は1000℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−12MPaとなるようにした。
【0091】
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
【0092】
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
【0093】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてCuを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、誘電体層の厚み約0.9μm、内部電極層の厚み約0.7μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は100とした。
【0094】
得られたコンデンサ試料について、比誘電率、誘電損失、CR積、容量温度特性および高温負荷寿命(HALT)の測定を、それぞれ下記に示す方法により行った。
【0095】
比誘電率ε
比誘電率εは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)0.5Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、2500以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0096】
誘電損失(tanδ)
誘電損失(tanδ)は、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)0.5Vrmsの条件下で測定した。誘電損失は低いほうが好ましく、本実施例では5.0%以下を良好とした。結果を表1に示す。
【0097】
CR積
コンデンサ試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、20℃において6.3V/μmの直流電圧を、コンデンサ試料に1分間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。CR積は、上記にて測定した静電容量C(単位はμF)と、絶縁抵抗IR(単位はMΩ)との積を求めることにより測定した。本実施例では、1000以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0098】
静電容量の温度特性(TC)
コンデンサ試料に対し、−55〜85℃における静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格のX5R特性またはB特性を満足するか否かについて評価した。すなわち、85℃における変化率ΔCが、±15%以内であるか否かを評価した。結果を表1に示す。
【0099】
高温負荷寿命(HALT)
コンデンサ試料に対し、160℃にて、9V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、本実施例では、上記の評価を20個のコンデンサ試料について行い、その平均値を高温負荷寿命とした。評価基準は20時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1より、Mg酸化物の含有量が本発明の範囲外である場合(試料番号1および5)、比誘電率、容量温度特性、高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。また、MnおよびCr酸化物の含有量が本発明の範囲外である場合(試料番号6および11)、容量温度特性や高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。さらに、V、MoおよびW酸化物の含有量が本発明の範囲外である場合には(試料番号12および18)、CR積および高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが確認できた。
【0102】
これに対し、各酸化物の含有量が本発明の範囲内である場合(試料番号2〜4、7〜10、13〜17)、良好な特性が得られることが確認できた。
【0103】
実施例2
主成分および副成分の含有量を表2に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表2に示す。なお、試料番号41については、BaOとCaOとSiOとからなるガラス粉末を用いて試料を作製した。該ガラス粉末は、BaCO,CaCOおよびSiOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で焼成し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより作製した。ガラス粉末の粒子径は0.1μmであった。
【0104】
【表2】

【0105】
表2より、R1の酸化物の含有量が本発明の範囲外である場合(試料番号21および30)には、比誘電率、容量温度特性、高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。また、R2の酸化物の含有量が本発明の範囲外である場合(試料番号31および35)には、誘電損失や高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。
【0106】
これに対し、R1およびR2酸化物の含有量が本発明の範囲内である場合(試料番号22〜29、32〜34)、良好な特性が得られることが確認できた。なお、R1としてY以外の元素、R2としてDy以外の元素を選択した場合にも(試料番号24〜28)、同様の結果が得られることが確認できた。
【0107】
Ba等を含む成分の含有量が本発明の範囲外である場合(試料番号36および40)には、比誘電率や高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。
【0108】
これに対し、該成分の含有量が本発明の範囲内である場合(試料番号37〜39)、良好な特性が得られることが確認できた。
【0109】
なお、該成分をガラス粉末の形態で添加した場合(試料番号41)、高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが確認できた。また、該成分を複合酸化物の形態で添加した場合も、試料番号41と同様に高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが本発明者等によって確認されている。
【0110】
実施例3
主成分および副成分の含有量を表2に示す量とし、R1およびR2の酸化物の含有量を変化させて、β/(α+β)および(α+β)の値を変化させた以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表3に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
表3より、β/(α+β)および(α+β)の値が本発明の好ましい範囲外の場合(試料番号51、55、56および60)、比誘電率や高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。
【0113】
実施例4
Ba等を含む成分中のBa、CaおよびSiのモル比率を表4に示す値とした以外は、実施例1の試料番号17と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表4に示す。
【0114】
【表4】

【0115】
表4より、a、bおよびcの値が本発明の好ましい範囲外の場合(試料番号74、77、78および81)、比誘電率や高温負荷寿命等が悪化する傾向にあることが確認できた。
【符号の説明】
【0116】
1… 積層セラミックコンデンサ
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… コンデンサ素子本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiOで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、主成分として含有し、
前記化合物100モルに対して、各元素換算で、
Mgの酸化物を0.6〜2.0モル、
Mnおよび/またはCrの酸化物を0.010〜0.6モル、
V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を0.010〜0.2モル、
R1の酸化物(R1は、Y、Yb、ErおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を0.10〜1.0モル、
R2の酸化物(R2は、Dy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を0.10〜1.0モル、
Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる成分を0.2〜1.5モル、を副成分として含有することを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記R1の酸化物のR1換算での含有量をαモル、前記R2の酸化物のR2換算での含有量をβモルとすると、0.50≦β/(α+β)≦0.90、0.2<(α+β)<1.5である関係を満足する請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる前記成分において、前記Baの含有モル比をa、前記Caの含有モル比をb、前記Siの含有モル比をcとすると、前記a、bおよびcが、a+b+c=1、a+b≦cであり、かつ0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.5≦c≦0.8である関係を満足する請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
前記R1の酸化物のR1換算での含有量をαモル、前記R2の酸化物のR2換算での含有量をβモルとし、
Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる前記成分の各金属元素換算での含有量をmモルとすると、
(α+β)/m≦10.5である関係を満足する請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項5】
前記R1がY、前記R2がDyである請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極とを有するセラミック電子部品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記Baの酸化物および/またはCaの酸化物と、Siの酸化物と、からなる成分の原料となる成分については、該成分を構成する金属元素の複合酸化物の形態あるいはガラス粉末の形態で添加するのではなく、該成分中の各金属元素のゲル状水酸化物スラリーまたは水溶液を準備し、
このゲル状水酸化物スラリーまたは水溶液を、前記BaTiOの原料粉末と、前記副成分の金属元素のゲル状水酸化物スラリーまたは水溶液とを水と共に分散して原料混合物を準備する工程を有する誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項8】
前記R1の酸化物およびR2の酸化物となる原料の希土類元素については、希土類元素のゲル状水酸化物スラリーとして準備される請求項7に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−232892(P2012−232892A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141898(P2012−141898)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2010−54937(P2010−54937)の分割
【原出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】