説明

赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版

【課題】画像部の耐薬品性、耐傷性に優れ、さらには、現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上する赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、下記一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体及び赤外線吸収剤を含有する下層と、ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物を含有する上層と、をこの順に有することを特徴とする。


式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはメチレンまたはエチレンを、Rは水素原子またはメチル基を、XはOまたはNHを表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版原版に関し、詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザ光を走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるレーザの発展は目覚しく、特に近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ固体レーザや半導体レーザでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザを露光光源として使用する平版印刷版原版は、バインダー樹脂と光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする平版印刷版原版である。該版印刷版原版に前記赤外線レーザを露光すると、ポジ型感光層を有する場合、未露光部(画像部)では該平版印刷版原版中のIR染料等が、前記バインダー樹脂との相互作用により該バインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、前記IR染料等が光を吸収して熱を発生するため、該IR染料等と前記バインダー樹脂との相互作用が弱くなる。したがって現像時には、前記露光部(非画像部)がアルカリ現像液に溶解し、平版印刷版が形成される。
【0003】
このような平版印刷版原版においては、種々の課題が依然あり、その中の1つに、種々の印刷薬品への耐性をいかに向上させるかということがあげられる。表面の薬品耐性が低いと、印刷時の薬品飛散、あるいは薬品使用後の拭き残しにより画像部が変質あるいは溶解することで、印刷途中でインキがつかなくなる問題が発生するため、好ましくない。またその他の課題として、表面の耐傷性をいかに向上させるかということがあげられる。耐傷性が低いと、自動で露光や現像を行う際、表面に接触する部材で擦られ傷がつくことで、本来の画像部が磨耗する問題が生じるため、これも好ましくない。
これらの課題に対し、これまで種々の検討がなされている。例えば、耐薬品性に優れたアルカリ可溶性樹脂を有する記録層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この記録層は耐薬品性の向上は見られるものの、現像前に入った僅かな傷の周辺が現像時に溶解し、画像部に白ヌケが発生するという問題があった。
また、平版印刷版の樹脂層の構造を2層以上にすることが、耐薬品性と耐傷性の両立に有用であると考えられ、例えば下層にマレイミド化合物を構成単位とする高分子化合物を使用することが提案されているが(例えば、特許文献2参照)、下層と上層の密着が必ずしも十分ではなく、更なる向上が求められてきた。
また、特許文献3〜5には、耐薬品性とバーニングでの耐傷性を向上させるものが記載されているが、更なる向上が求められてきた。
【特許文献1】特開2005−62875号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0067432号明細書
【特許文献3】米国特許第7144661号明細書
【特許文献4】米国特許第7300726号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1884359号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画像部の耐薬品性、耐傷性に優れ、さらには、現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上する赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究の結果、前記課題が、以下の赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版(以下、単に「平版印刷版原版」又は「感光性平版印刷版」とも称す)により達成されることを見出した。
即ち、本発明は、
親水性表面を有する支持体上に、下記一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体及び赤外線吸収剤を含有する下層と、ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物を含有する上層と、をこの順に有することを特徴とする赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版、である。
【0006】
【化1】

【0007】
式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはメチレンまたはエチレンを、Rは水素原子またはメチル基を、XはOまたはNHを表わす。
【0008】
本発明の平版印刷版原版を前記構成とすることにより、形成される画像部の耐薬品性、耐傷性に優れ、さらには、現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上する平版印刷版原版とすることができる。
なお、ここで「順に設けた」とは、親水性表面を有する支持体上に、少なくとも前記下層と上層とを、この順に設けたことを意味し、所望により設けられる他の層、例えば、下塗り層、保護層、バックコート層などの存在を否定するものではない。
【0009】
本発明の平版印刷版原版は、下層及び上層の各層に、それぞれ、本発明に係る特定の高分子化合物を含有することで、画像部の耐薬品性、耐傷性に優れ、さらには現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上することができる。この理由は以下のように考えられる。すなわち、重層構造を有することで耐傷性の制御が可能で、さらに下層に使用する高分子化合物が熱により架橋反応することが可能でその相手として上層に使用する高分子化合物の特定の基との架橋効率が良好なため、現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上できるものと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、画像部の耐薬品性、耐傷性に優れるだけでなく、良好な印刷物を得ることが可能であり、さらには現像後に高温で加熱処理した場合、著しく耐刷性が向上する赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版は、親水性表面を有する支持体上に、上記一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体及び赤外線吸収剤を含有する下層と、ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物を含有する上層と、をこの順に有することを特徴とする赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版、である。
以下に、本発明の平版印刷版原版の各項目について順次説明する。
【0012】
〔下層〕
〔一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体〕
本発明の平版印刷版原版の下層に含有される、一般式(I)で示される重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(I)」または「化合物(I)」とも称す)に由来する単位を少なくとも有する共重合体(以下、「共重合体(I)」とも称す)について説明する。
一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはメチレンまたはエチレンを、Rは水素原子またはメチル基を、XはOまたはNHを表わす。
は好ましくは水素原子であり、Rは好ましくはメチレンである。XはOのとき、Rは好ましくはメチル基である。
【0013】
重合性モノマー(I)の具体例としては、特に限定されないが、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシエチルアクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、メトキシメチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0014】
また、一般式(I)で示されるモノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体は、さらに上述の構成単位以外の別の構成単位を有する。共重合体(I)を構成する重合性モノマー(I)以外の共重合性分としては、モノマーであれば特に指定はなく、アクリル基やメタクリル基を持つ各種の化合物を挙げることができ、その中でも、酸基を含有するモノマーであることが好ましい。酸基をとしては、カルボン酸基、フェノール基、スルホンアミド基があげられ、カルボン酸基、フェノール基を含有するモノマーが好ましい。カルボン酸基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸が、フェノール基を含有するモノマーとしては、4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、p−ヒドロキシスチレンが好適に用いられる。
【0015】
前記共重合体(I)における構成成分の含有量(モル%)は、一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位は10〜95モル%、酸基を含有するモノマー成分に由来する単位はは5〜90モル%であることが好ましく、前者は20〜90モル%、後者は10〜80モル%がより好ましい。
更に任意の重合性モノマーを共重合させてもよい。他の構成成分としては、本発明で用いる共重合体(I)の成分と共重合しうるモノマーであれば特に指定はないが、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン系化合物、マレイミド類、を挙げることができる。
また、他の構成成分を含む場合は、5〜35モル%であることがより好ましい。
共重合体(I)の重量平均分子量としては、特に限定されないが、1,000〜150,000が好ましく、より好ましくは10,000〜60,000である。
【0016】
共重合体(I)の好ましい例としては、以下のモノマー成分からなるものを挙げることができる。
(1) N-メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル=40/30/30(モル比)、重量平均分子量6万の共重合体
(2) N-メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/ベンジルメタクリレート=50/25/25(モル比)、重量平均分子量7万の共重合体
(3) N-メトキシエチルメタクリルアミド/メタクリル酸/N−フェニルマレイミド=65/20/15(モル比)、重量平均分子量4万の共重合体
(4) N-メトキシエチルメタクリルアミド/4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル=30/25/45(モル比)、重量平均分子量5万の共重合体
(5) メトキシメチルメタアクリレート/メタクリル酸/p−ヒドロキシスチレン/アクリロニトリル=40/20/5/35(モル比)、重量平均分子量7万の共重合体
(6) メトキシメチルメタアクリレート/メタクリル酸/N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル=25/25/10/40(モル比)、重量平均分子量7万の共重合体
(7) N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/ベンジルメタクリレート=30/30/40(モル比)、重量平均分子量7万の共重合体
(8) N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/N−フェニルマレイミド=65/25/10(モル比)、重量平均分子量7万の共重合体
【0017】
本発明で用いる共重合体(I)は、下層中に10〜99質量%の割合で含まれることが耐薬品性や強度の点で好ましく、単独で用いられる場合は、50〜99質量%が特に好ましい。また、下層中に前記共重合体(I)を10〜50質量%の割合で含む場合は、前記共重合体(I)以外の他の高分子化合物を併用することが好ましい。
【0018】
〔他の高分子化合物〕
本発明における下層には、前述の共重合体(I)以外に、他の高分子化合物を併用することができ、併用する他の高分子化合物は1種類でも2種類以上でもよい。
ここでは、これらの他の高分子化合物について記載する。
本発明で用いることができる他の高分子化合物は、アルカリ性水溶液に可溶もしくは膨潤性の高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、フェノール水酸基、スルホンアミド基、カルボン酸基を側鎖中に有する高分子化合物を挙げることができる。
【0019】
フェノール水酸基を有する高分子化合物としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等が挙げられ、具体的には、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂、(1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、2,3−、2,4−、2,5−キシレノール、2,6−、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール)等のキシレノール樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。また、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた高分子化合物を挙げることもでき、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等を共重合成分とした高分子化合物が挙げられる。
【0020】
スルホンアミド基を有する高分子化合物としては、例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等の共重合体を好適に使用することができる。
カルボン酸基を有する高分子化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸の共重合体を好適に使用することができる。
高分子化合物が共重合体である場合は、共重合させる酸性基を有する化合物が共重合体中に3モル%以上含まれているものが好ましく、5モル%以上含まれているものがより好ましい。3モル%以上であれば、アルカリ性現像液への溶解性が低下することなく好ましい。
【0021】
前記酸性基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(m1)〜(m6)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m6)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0022】
本発明において他の高分子化合物は、異なる2種以上の他の高分子化合物を併用しても良い。
以上例示した他の高分子化合物のうち、下層で併用することができる他の高分子化合物としては、スルホンアミド基および/またはカルボン酸基を有する共重合体であることが好ましく、共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミドをあげることができる。
本発明において、下層に用いるフェノール性水酸基を有する前記高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等のアルデヒドを用いた共縮合型の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
下層に用いるフェノール性水酸基を有する前記高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等のアルデヒドを用いた共縮合型の樹脂以外の高分子化合物の場合は、重量平均分子量は2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
他の高分子化合物の添加量としては、30〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、特に好ましくは65〜99質量%の添加量で用いられる。高分子化合物の添加量が前記の範囲内であると下層の耐久性が高く、感度が高くなるため好ましい。
【0023】
〔赤外線吸収剤〕
本発明の平版印刷版原版は、下層の高い記録感度及び均一性・耐久性のため、下層に赤外線吸収剤を含有する。
赤外線吸収剤としては、公知の種々の顔料や染料等が好適に挙げられる。前記顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
前記顔料の種類としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
【0024】
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。
また、前記赤外光、又は近赤外光を吸収する染料としては、例えば特開昭58−125246号公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号の公報に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、前記染料としては、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載のアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、米国特許第4,327,169号記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、等は特に好ましく用いられる。
【0025】
また、前記染料として、特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料が挙げられる。
赤外線吸収剤である前記顔料又は染料の添加量としては、前記下層の全固形分に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
前記染料の場合には、0.5〜10質量%が特に好ましい。
前記顔料又は染料の添加量が前記の範囲内にあると高い記録感度が得られ、下層(感光層)の均一性、耐久性が高い点で好ましい。
【0026】
〔その他の成分〕
本発明の平版印刷版原版に設けられる下層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、前記平版印刷版原版に設けられる下層の溶解性を調節するために、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することができ、中でも、オニウム塩、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性を制御できる点で好ましい。
【0027】
本発明において用いることができるオニウム塩として、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等があげられ、オニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩及び4級アンモニウム塩が特に好ましい。特に、ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。また4級アンモニウム塩としては、特開2002−229186号公報に記載の(化1)及び(化2)中の(1)〜(10)に示される4級アンモニウム塩が好ましい。オニウム塩の添加量は固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0028】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、スルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、ラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。また、本発明の平版印刷版原版の下層には、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および可塑剤も使用することができる。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0029】
更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類、及び有機酸類の平版印刷版原版の前記下層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。前記画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。これらの染料は、前記下層の全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で下層中に添加することができる。更に、本発明の平版印刷版原版の下層には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。
【0030】
〔塗布溶剤及び塗布方法〕
本発明の平版印刷版原版は、前述の下層に含有される高分子化合物及び赤外線吸収剤等の成分を溶媒に溶かした塗布液を調製して、親水性表面を有する支持体上に下層用塗布液、上層用塗布液の順に塗布することにより、前記支持体上に下層、上層を製造形成することができる。
また、目的に応じて、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
前記塗布液中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0031】
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の固形分塗布量は、下層は0.3〜5.0g/mが好ましく、より好ましくはは0.5〜3.0g/mの範囲である。
前記上下層の各塗布液を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
【0032】
〔上層〕
〔ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物〕
本発明における上層は、ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物(以下、高分子化合物(II)とも称する)を含有することを特徴とする。以下、本発明における上層が含有する各成分について説明する。
上層に含有されるホスホン酸基または燐酸基を側鎖に有する高分子化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される重合性モノマーに由来する単位を有する共重合体が好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(2)中、R4は、水素原子、炭素数1〜4の置換もしくは無置換の短鎖アルキル基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基である。
Lは、単結合または直鎖状、分岐状または環状の結合基を表し、1以上の炭素原子及び随意にヘテロ原子からなる。好ましくは、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、メトキシメチレン基、エチレン、イソプロピレン基、n-ブチレン基など)、環状の置換または無置換のアルキレン基(例えば1,3-シクロヘキシレン基)を表す。
更に好ましくは、Lは−(OCH2CH2−、−(OCH2CHCH3nである。(nは0〜5の整数を表す。)
【0035】
一般式(2)で表される重合性モノマーの好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0036】
【化3】

【0037】
また、一般式(2)で表される重合性モノマーに由来する単位を有するの共重合体は、さらに上述の重合性モノマーに由来する構成単位以外の別の構成単位を有することができる。その共重合性分としては、これらの構成単位を形成するモノマーと共重合しうるモノマーであれば特に指定はなく、例えば、アクリル基やメタクリル基を持つ各種の化合物を挙げることができ、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルアクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチルなどのアクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類が好ましい。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、メタクリルアミド類も、好適に用いる事が出来る。
これらのホスホン酸基または燐酸基を側鎖に有する高分子化合物は、酸価が10mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g以下がより好ましく、40mgKOH/g以下がさらに好ましい。
これらのホスホン酸基または燐酸基を側鎖に有する高分子化合物は、分子量は重量平均分子量で、5,000〜300,000が好ましく、更に好ましくは10,000〜150,000である。
【0038】
高分子化合物(II)の具体例としては、以下のモノマー成分からなるものが挙げられる。
・メタクリル酸エチレングリコールリン酸/メタクリル酸メチル(酸価:37)
・リン酸ビニル/メタクリル酸メチル(酸価:30)
・メタクリル酸ポリエチレングリコールリン酸/メタクリル酸メチル(酸価:12)
・メタクリル酸エチレングリコールリン酸/メタクリル酸メチル(酸価:65)
【0039】
本発明の平版印刷版原版の上層における高分子化合物(II)の含有量としては、特に限定されないが、全固形分に対して、3〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
【0040】
〔他の水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂〕
上層には、上記ホスホン酸基または燐酸基を側鎖に有する高分子化合物以外のアルカリ可溶性樹脂が使用可能であり、これらはアルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の側鎖に酸性基を含有するモノマーから得られる共重合体であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、特に、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物が挙げられる。例えば、以下のものが例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,またはm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合とをそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0042】
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性水酸基有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。具体的にはN−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。更に、米国特許4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの共重合体を併用してもよい。
【0043】
上層が含有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうち2種類以上を重合させた高分子化合物であることが好ましい。上記重合性モノマーの共重合比、および重合性モノマーの組み合わせに制限はないが、特にフェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマー及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合重合比は50:50から5:95の範囲にあることが好ましく、40:60から10:90の範囲にあることが特に好ましい。
上層が含有するアルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
特に、上層が含有するアルカリ可溶性樹脂が、フェノールホルムアルデヒド樹脂、または、クレゾールアルデヒド樹脂等である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0044】
上層が含有するアルカリ可溶性樹脂としては、未露光部において強い水素結合性を生起し、露光部において一部の水素結合が容易に解除されるといった点から、フェノール性水酸基を有する樹脂が望ましく、フェノール性水酸基を有する樹脂の中でも特に好ましくはノボラック樹脂である。
また、本発明においては、アルカリ性水溶液に対し溶解速度の異なる2種類以上のアルカリ可溶性樹脂を混合して用いてもよく、その場合の混合比は自由である。なお、該フェノール性水酸基を有する樹脂と混合するのに好適なアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する樹脂と相溶性が低いことから、アクリル樹脂であることが好ましく、更に好ましくはスルホンアミド基を有するアクリル樹脂である。
上層の全固形分中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、記録層の感度と耐久性の観点から、50〜98質量%の範囲であることが好ましい。なお、この含有量は、アルカリ可溶性樹脂を複数種併用する場合にはその合計量を指す。
【0045】
〔赤外線吸収剤〕
上層には、赤外線吸収剤を添加することができる。赤外線吸収剤としては、波長750nmから1,400nmに吸収極大を有し、この波長の光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収性染料として知られる種々の染料を用いることができ、具体的には、前記した下層に用いられる赤外線吸収剤として挙げたものと、同様のものを用いることができる。
上層における赤外線吸収剤の含有量としては、上層の全固形分中に0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1.0〜30質量%の範囲である。上記範囲とすることで感度がより良好となり、上層(上部記録層)の均一性、耐久性がより良好となる。
【0046】
(その他の成分)
上層には、そのインヒビション(溶解抑制能)を高める目的で、現像抑制剤を含有させることが好ましい。
現像抑制剤としては、上層に含有されるアルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成し、未露光部においては該アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させ、且つ、露光部においては該相互作用が弱まり、現像液に対して可溶となり得るものであれば特に限定はされないが、特に4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール系化合物等が好ましく用いられる。なお、赤外線吸収剤として、現像抑制剤の機能を有する化合物を用いた場合には、現像抑制剤を添加する必要はない。
【0047】
4級アンモニウム塩としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアリールアンモニウム塩、ジアルキルジアリールアンモニウム塩、アルキルトリアリールアンモニウム塩、テトラアリールアンモニウム塩、環状アンモニウム塩、二環状アンモニウム塩が挙げられる。また、ポリエチレングリコール系化合物としては、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアリールエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールグリセリンエステル、ポリプロピレングリコールグリセリンエステル類、ポリエチレンソルビトールエステル類、ポリプロピレングリコールソルビトールエステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール化エチレンジアミン類、ポリプロピレングリコール化エチレンジアミン類、ポリエチレングリコール化ジエチレントリアミン類、ポリプロピレングリコール化ジエチレントリアミン類が挙げられる。
【0048】
そのほか、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性であり、且つ、分解しない状態では、アルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが画像部の現像液へのインヒビションの向上を図る点で好ましい。
本発明において用いうるオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等が挙げられ、なかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものがあげられる。
これらの添加量としては、上層の全固形分中、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
上層を形成するにあたっては、上記した成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を添加することができる。
【0049】
例えば、感度を向上させる目的で酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよく、塗布性良化や現像条件に対する処理の安定性を広げるため、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シロキサン系化合物、フッ素含有のモノマー共重合体を添加することができ、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができ、さらに塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加しても良い。
上層は、通常、上記各成分を溶剤に溶かして、塗布することにより形成することができるが、下層をできるだけ溶解しないものが好ましい。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、トルエン等を挙げることができる。これらの溶剤は単独あるいは混合して使用される。
【0050】
また、支持体上に上層用塗布液を塗布、乾燥後に得られた上層の固形分塗布量としては、0.05〜2.0g/m2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0g/m2の範囲である。
【0051】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に適用し得る支持体としては、ポリエステルフイルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
本発明に適用しうるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用い得るアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度であり、好ましくは0.12mm〜0.4mmである。
【0052】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組合せた方法も利用することができる。このうち、少なくとも塩酸電解液中で粗面化する工程を含むことが好ましい。
【0053】
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0054】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0055】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、先述したような上層及び下層を含む重層構造の記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に、更に下塗層を設けることができる。この下塗層を設けることで、支持体と記録層との間の下塗層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、アミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、フェニルリン酸などの有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩及び特開2000−241962号公報に記載の酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物等から選ばれる。下塗層の被覆量は、耐刷性能の点から、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。
【0056】
−平版印刷版原版の製版処理−
〔露光〕
本発明の平版印刷版原版は、熱により画像形成される。具体的には、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる走査露光などにより画像形成される。なお、本発明の平版印刷版原版は、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光、赤外線ランプ露光などによっても画像形成することができる。
【0057】
赤外線レーザの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましく、記録材料に照射されるエネルギーは10〜500mJ/cmであることが好ましい。
【0058】
〔現像〕
露光された平版印刷版原版は、実質的に有機溶剤を含まないpH12以上のアルカリ性水溶液で現像されることが好ましい。ここで「実質的に有機溶剤を含まない」とは、環境衛生、安全性、作業性等の観点からみて不都合を生じる程度までは有機溶剤を含有しない、の意味であるが、本発明においては現像液中の有機溶剤の割合が0.5重量%以下であることをいい、好ましくは0.3重量%以下、全く含有しないのが最も好ましい。またpHは12.0以上であるが、より好ましくは12.0〜14.0である。
【0059】
現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記のアルカリ水溶液の内、本発明による効果が発揮される現像液は、一つは塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、いわゆる「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液であり、もう一つのより好ましい現像液は、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」である。
【0060】
現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散または、印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。前記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が好ましい。更に、前記現像液及び補充液には、必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤等を加えることができる。
【0061】
現像液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版原版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
【0062】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0063】
現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
【0064】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0065】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0066】
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔上層用高分子化合物(2)の製造〕
(高分子化合物(2)−1の製造)
攪拌機と窒素注入口と濃縮機とが付いた三口丸底フラスコに、n−プロパノールを150gとメタクリル酸メチルを36.84gとメタクリル酸エチレングリコールリン酸を6.72gとを添加し、70℃で加熱した。15分間窒素で十分に洗い流し、100mlのn−プロパノールに0.66g溶解させた2‘2−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を2時間以上かけて滴下した。窒素雰囲気下、70℃で2時間、さらに反応させた。得られたコポリマーを600mlの石油エーテル(洗浄ベンジン135/180)沈殿させた。次に得られたコポリマーを濾過後、真空下、40℃で乾燥させた。得られたコポリマーの酸価は37であった。
(高分子化合物(2)−2の製造)
攪拌機と窒素注入口と濃縮機とが付いた三口丸底フラスコに、n−プロパノールを150gとメタクリル酸メチルを38.85gとメタクリル酸ポリエチレングリコールリン酸(PAM 100)を5.17gとを添加し、70℃で加熱した。15分間窒素で十分に洗い流し、100mlのn−プロパノールに0.66g溶解させた2‘2−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を2時間以上かけて滴下した。窒素雰囲気下、70℃で2時間、さらに反応させた。得られたコポリマーを600mlの石油エーテル(洗浄ベンジン135/180)沈殿させた。次に得られたコポリマーを濾過後、真空下、40℃で乾燥させた。得られたコポリマーの酸価は12であった。
【0068】
[実施例1]
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
上述のアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0069】
次に温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で450C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0070】
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0071】
次いで陽極酸化処理を行った。電解液は、硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
更にその後、0.5%のポリビニルホスホン酸水溶液を60℃に加熱した液に、陽極酸化処理したアルミニウム板を5秒間浸漬し、スプレーにて水洗した。
以上のようにして、感光性平版印刷版用の支持体を得た。
上記で得られた支持体に、下記組成の下層用塗布液Aをワイヤーバーで塗布したのち、140℃に設定した乾燥用オーブンで50秒間乾燥して下層を得た。乾燥後の塗布量は1.2g/m2であった。
【0072】
<下層用塗布液A>
・共重合体(I)(表1に記載) 0.40g
・ノボラック樹脂A(m/p−クレゾール(6/4)、 0.2g
重量平均分子量;7,000、未反応クレゾール;0.3重量%)
・シアニン染料A(下記構造) 0.134g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを
6−ヒイドロキシナフタレンスルホンに変えたもの 0.081g
・ポリマ-1(下記構造) 0.035g
・γ−ブチロラクトン 52.40g
・1−メトキシ−2−プロパノール 17.60g
【0073】
【化4】

【0074】
このようにして得られた下層の上に、下記組成の上層用塗布液Aをワイヤーバーで塗布したのち、130℃に設定した乾燥用オーブンで60秒間乾燥して上層を得た。乾燥後の塗布量は0.4g/m2であった。
【0075】
<上層用塗布液>
・ノボラック樹脂B(m/p−クレゾール(6/4)、 0.3479g
重量平均分子量;5,000、未反応クレゾール;0.8重量%)
・高分子化合物(II)(表1に記載) 0.0468g
・シアニン染料A(上記構造) 0.0192g
・ポリマー1(上記構造) 0.015g
・ポリマー2(下記構造) 0.00328g
・メチルエチルケトン 13.07g
・1−メトキシ−2−プロパノール 6.79g
【0076】
【化5】

【0077】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
実施例1で、下層の共重合体(I)及び上層の高分子化合物(II)を、それぞれ表1に記載の化合物に変更したほかは実施例1と同様にした。
【0078】
〔平版印刷版原版の評価〕
(耐刷性の評価)
実施例及び比較例の平版印刷版原版をCreo社製Trendsetterにて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)で現像した平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。枚数が多いほど耐刷性に優れるものと評価する。結果を以下の表1に示す。
【0079】
(耐薬品性の評価)
実施例及び比較例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像および印刷を行った。この際、5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム(株)製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加え、耐薬品性を評価した。枚数が多いほど耐薬品性に優れるものと評価する。結果を以下の表1に示す。
(バーニング耐刷性の評価)
実施例及び比較例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像を行なった後、富士フイルム(株)製整面液BC−7をスポンジで塗布後、富士フイルム(株)製バーニングプロセッサー;BP−1300で260℃、6分間加熱し、バーニング処理を行なった。
この平版印刷版を上記耐刷性の評価と同様に印刷して評価した。結果を以下の表1に示す。
【0080】
(耐傷性の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3の感熱性平版印刷版をロータリー・アブレーション・テスター(TOYOSEIKI社製)を用い、250gの荷重下、アブレーザーフェルトCS5で15回摩擦した。
その後、富士フイルム(株)DT−2(水で希釈して電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12sで現像した。耐傷性の評価は下記基準で行った。
【0081】
<耐傷性の評価基準>
○:摩擦した部分の感光膜の光学濃度がまったく変化しなかったもの
△:摩擦した部分の感光膜の光学濃度低下が目視でわずかに観察されたもの
×:摩擦した部分の感光膜の光学濃度が非摩擦部の2/3以下になったもの
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する支持体上に、下記一般式(I)で示される重合性モノマーに由来する単位を少なくとも有する共重合体及び赤外線吸収剤を含有する下層と、ホスホン酸基及び燐酸基から選ばれる少なくともいずれかの基を側鎖に有する高分子化合物を含有する上層と、をこの順に有することを特徴とする赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版。
【化1】

式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはメチレンまたはエチレンを、Rは水素原子またはメチル基を、XはOまたはNHを表わす。

【公開番号】特開2010−79094(P2010−79094A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249217(P2008−249217)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】