説明

超音波処理装置

【課題】簡単な構造で処理槽の中央部と壁側との超音波出力を調節可能にし、超音波振動子ごとに超音波出力を調整して音圧分布の均一化を図る超音波処理装置を提供する。
【解決手段】超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子3を処理液2で満たされた処理槽10底面の輻射板12に外側底部の設置面12bから配置させて励振させることで処理液2中の被洗浄物1を洗浄する超音波洗浄装置であって、処理槽10の輻射板12に中央の中央部A及びその周囲の壁側Bからなる設置面12bを設定し、この設置面12b内で処理槽10の洗浄状態に応じて、超音波発振器により中央部Aに低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3Aと、壁側Bに高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3Bとを各々分けて備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処理装置に係り、より詳細には、超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子を、処理液で満たされた処理槽に底部に複数配置して励振することで被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波処理装置は、超音波発振器より超音波出力を入力(印加)することが可能な超音波振動子を処理液で満たされた処理槽底面の輻射板に外側底部から配置させて励振させることで当該処理液内の被洗浄物を洗浄する底部固定型(例えば、下記特許文献1参照)と、超音波振動子を中空で箱状の内部に防水状態で収納させた投込みケースによって処理槽の処理液中に直接浸漬させて励振させることで当該処理液内の被洗浄物を洗浄する投込み型(例えば、下記特許文献2参照)との構造がよく知られている。
【特許文献1】特開平2−034923号公報
【特許文献2】特開平7−308645号公報
【0003】
前述した構造による従来の超音波処理装置の実施形態を、図29および図30を参照して説明する。図29は、従来の底部固定型による超音波処理装置の実施形態を示す図であり、図29(a)は正面から見た断面図を、図29(b)は底面図を各々示している。また、図30は、従来の投込み型による超音波処理装置の実施形態を示す図であり、図30(a)は装置の外観を示す斜視図を、図30(b)は投込みケース90の断面図を各々示している。
図29(a)に示すように、従来の底部固定型による超音波処理装置の実施形態は、処理(洗浄)液2を貯留して満たした処理槽70と、この処理槽70の外側底面に配置されて励振することで超音波振動を槽内の洗浄液2に与える複数の超音波振動子3とを備えている。そして、この超音波振動子3には、外部から図示されていない超音波発振器により超音波出力を入力されて励振するように形成されている。また、処理槽70の底面は、処理槽70の本体71に対して別体に設けられて底面全体に板状に延在して取り付けられる輻射板72を備えている。即ち、輻射板72は、図29(b)に示すように、超音波振動子3を複数配列させて取り付けて処理槽70の底面に装着することで、処理槽70底面から槽上部の処理液2全体に超音波振動を印加できるように形成されている。また、超音波振動子3は、例えば、図29に示した振動子の場合、矩形で厚みを有したプレート型のチタン酸バリウムやPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電セラミックスからなる振動子を用いている。
【0004】
一方、従来の投込み型による超音波処理装置の実施形態は、図30(a)に示すように、処理液2で満たされた処理槽80と、この処理槽80の処理液中に超音波振動子3(図30(b)参照)を中空の内部に防水状態で収納して浸漬させる投込みケース90とを有し、この処理槽80の外部から投込みケース90内の超音波振動子3に接続されて超音波出力を入力して励振させる超音波発振器(図示せず)を備えている。ここで、投込みケース90は、図30(b)に示すように、一面を開口して凹状の箱体で内部に複数の超音波振動子3を有した本体91と、この本体91の開口した一面を封止する密閉蓋92と、この本体91の側面に配線用フランジ93を介して接続されて処理槽80の外部から本体91まで防水状態で連通するように延在して超音波出入力線LとGND線L3とを各々配線する配線用管94とを備えている。そして、超音波振動子3は、例えば、上述したプレート型の圧電セラミックスからなる振動子を用いている。
【0005】
このような従来の超音波処理装置では、図29(b)に示したように、超音波振動子3を行列方向に複数配列させて配置しており、この複数の超音波振動子3に、図30(b)に示したGND線L3及び超音波出入力線Lを配線して外部の超音波発振器から超音波出力を印加することで、超音波振動子3を励振させて洗浄することができる。この際、超音波発振器から複数の超音波振動子3に全て同じ超音波出力(出力レベル)を印加しても、処理槽70(または80)の構造(槽底面が正方形、長方形)や底面の排水口の位置などの洗浄状態によって、槽内の音圧に差が生じで音圧分布が不均一になり、洗浄ムラが生じてしまう。
【0006】
そこで、従来の超音波処理装置では、図29(a)及び図30(b)に示したように、少なくとも2種類の異なる発振周波数帯域に属する超音波振動子3a、3bを有して、この超音波振動子3a、3bを、具体的には、600〜900KHzの発振周波数帯域による超音波振動子3aと、1.5〜2.0MHzの発振周波数帯域による超音波振動子3bとに分けて行または列方向に交互に配置(図29(b)参照)することで、この差によって槽内の音圧分布を均一に調節(上記特許文献1の図1及び第3頁左上段20行目〜右上段4行目参照)している。
このように、従来の超音波処理装置は、処理液2を貯留した処理槽70(または80)に複数の発振周波数帯域に属する超音波振動子3a、3bを交互に配置し、この複数の超音波振動子3a、3bへ超音波発振器から各々超音波出力(出力レベル)を変えて入力して発振(励振)させることで、処理槽70(または80)内の超音波の音圧分布が均一になるように設けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の超音波処理装置では、図29(a)及び図30(b)に示したように、底部固定型や投込み型のいずれにおいても、超音波振動子3を装着する処理槽70(または80)の輻射板72または投込みケース90の各々全周囲が、側壁(処理槽または投込みケースの側壁)によって固定されているため、この固定されている壁側近くで励振する超音波振動子3からの超音波振動が、物理的に抑制されてそこから照射される音圧が本来のものよりも低くなる。一方、壁側Bより内側中央部Aの超音波振動子3から励振する音圧は、この中央部A直下の超音波振動子3の振動に加えて、周辺(壁側B)の超音波振動子3から分散した振動応力も加わり、本来の照射音圧よりも高くなってしまう。その結果、処理槽70(または80)内の音圧分布が不均一となり、洗浄ムラが生じてしまうという不具合があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的は、簡単な構造により処理槽の中央部と壁側との超音波出力を洗浄状態に応じて調節可能にし、且つ、超音波振動子ごとに入力する超音波出力を調整して音圧分布の均一化を図る超音波処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子を処理液で満たされた処理槽底面の輻射板に外側底部の設置面から配置させて励振させることで処理液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置であって、処理槽の輻射板に中央の中央部及びその周囲の壁側からなる設置面を設定し、この設置面内で処理槽の洗浄状態に応じて、超音波発振器により中央部に低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子と、壁側に高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子とを各々分けて備える。
また、本発明の他の実施形態として、超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子を処理液で満たされた処理槽の液内底部に防水状態で浸漬させる投込みケースの中空内上面の設置面に配置させて励振させることで処理液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置であって、投込みケースの中空内上面に中央の中央部及びその周囲の壁側からなる設置面を設定し、この設置面内で処理槽の洗浄状態に応じて、超音波発振器により中央部に低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子と、壁側に高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子とを各々分けて備える。
【0010】
ここで、超音波振動子は、設置面に直接取り付けるプレート型振動子、または設置面に金属ブロックを介した圧電セラミックスをボルトで固定するランジュバン型振動子であることが好ましい。また、設置面は、処理槽底面の輻射板または投込みケース内上面の周囲壁から内側に6cm以上離した位置に設定した振動子接着エリアであることが好ましい。また、超音波発振器は、中央部と壁側との各エリアごとに1台ずつ配置され、この各1台を中央部と壁側との超音波振動子に各々接続することでお互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行うことが好ましい。また、超音波発振器の他の実施例として、1次側と2次側とに分離してなり当該2次側に超音波振動子を接続させる出力トランスと、出力トランスの1次側に接続させるスイッチング出力回路と、出力トランスの1次側または2次側いずれかに接続させる力率補正回路と、出力トランスの2次側の巻数が異なる複数の端子からそれぞれ超音波出力レベルが異なるように取り出した複数の超音波出入力線とを備え、複数の超音波出入力線を、中央部と壁側との超音波振動子に各々接続することでお互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行うことが好ましい。また、超音波発振器は、出力トランス2次側以降の回路に、ブリッジ回路により超音波振動子の振動速度を検出する検出回路を更に設けることが好ましい。また、超音波発振器の力率補正回路は、出力トランスと超音波振動子との間の2次側に介在して超音波振動子の制動電気容量より大きな電気容量を有するキャパシタを超音波振動子に対して並列に接続し、且つ、発振周波数が共振周波数となるようなインダクタンスを有するインダクタを超音波振動子に直列接続しなることが好ましい。
【0011】
また、複数の超音波振動子を装着させた輻射板の設置面には、複数の超音波振動子を全て囲む最外周枠と、この最外周枠内の複数の超音波振動子を1個または複数個の単位ごとに区画して囲む区画枠とを有し、当該最外周枠と区画枠とを凹状の溝または凸状の梁により形成され、中央部の低い超音波出力及び壁側の高い超音波出力に加えて音圧分布を均一化させる枠部を備えることが好ましい。この溝または梁の枠部は、最外周枠内の複数の超音波振動子を区画枠により1個単位で囲む場合、格子状に囲む、または個々に間隔を有して独立させて囲む、或いは格子状の1行置きの行を片側にずらして列方向でジグザグの千鳥状に配列させて囲むいずれかにより形成されることが好ましい。また、溝または梁の枠部は、最外周枠内の区画枠のうち中央の中心部にある複数個を組合わせて外周を囲んだ中央枠を更に設定または形成し、この最外周枠と中央枠とにより超音波出力レベルを変える壁側及び中央部の2つのエリアに区分させることが好ましい。また、中心部の中央枠及び壁側の最外周枠は、他の区画枠に対して深さまたは高さと、幅とのいずれか一方或いは両方を変えて形成されることが好ましい。また、溝または梁の枠部は、最外周枠内の複数の超音波振動子を区画枠により複数個の単位で囲む場合、最外周枠内の複数の超音波振動子のうち区画枠が中央の複数個を組合わせて外周を囲むことで、この外側の最外周枠と、その中央の区画枠とにより、超音波出力レベルを変える壁側及び中央部の2つのエリアに区画できるように配設されることが好ましい。また、溝または梁の枠部は、区画枠から最外周枠までの間で更に囲む枠を備えて、最外周枠内で中心から段階的に外側に向かって複数のエリアに区画できるように配設されることが好ましい。また、複数の超音波振動子には、複数区画したエリアごとに異なる種々の超音波出力レベルを印加して励振させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明による超音波洗浄装置によれば、処理槽の底部から照射する超音波振動子への超音波出力(出力レベル)を超音波発振器により中央部と壁側とで各々変えることができるため、常に処理液中に照射される超音波の音圧分布を均一にでき、洗浄ムラのない安定した洗浄が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、添付図面を参照して本発明による超音波処理装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明による超音波処理装置の第1の実施形態を示す構成図であり、図1(a)は装置全体を示す斜視図を、図1(b)は輻射板12を設置面側から見た底面図を、図1(c)は輻射板12を側面から見た側面図を各々示している。また、図2は、図1に示した超音波振動子の他の実施例を示す図であり、図2(a)は輻射板12の設置面側から見た底面図を、図2(b)は輻射板12の側面から見た側面図を各々示している。また、図3は、図1に示した超音波処理装置に用いる超音波発振器20を示す図である。また、図4は、図3に示した超音波発振器20の内部構造を示すブロック図である。また、図5は、図4に示した力率補正回路26及び超音波振動素子3の内部構造を示す回路図である。また、図6は、図3に示した超音波発振器の他の実施例を示す図である。また、図7は、図6に示した超音波発振器30の内部構造を示すブロック図である。また、図8は、図7に示した出力トランス36から中央部用入力線L1と壁側用入力線L2とを引き出す構造を示す回路図である。図9は、図8に示した中央部用入力線L1と壁側用入力線L2とを引き出す他の構造を示す回路図である。また、図10は、図6に示した超音波発振器30に振動速度検出のブリッジ回路40を備えた実施例を示すブロック図である。また、図11は、図10に示した力率補正回路35の他の実施例を示す図である。また、図12は、図10に示したブリッジ回路40を図8に示した超音波発振器に適用した実施例を示す回路図である。また、図13は、図10に示したブリッジ回路40を図9に示した超音波発振器に適用した実施例を示す回路図である。また、図14は、本発明による超音波処理装置の第2の実施形態を示す構成図であり、図14(a)は装置全体を示す斜視図を、図14(b)は投込みケース60を側面から見た側面図を、図14(c)は投込みケース60を上部から見た図を各々示している。また、図15は、図14に示した超音波振動子の他の実施例を示す図であり、図15(a)は投込みケース60を側面から見た側面図を、図15(b)は投込みケース60を上部から見た図を各々示している。また、図16は、本発明による超音波処理装置の第3の実施形態を示す図である。また、図17は、図16に示した最外周枠122aと区画枠122bとを溝に よる枠部122−1で形成した輻射板120を示す図であり、図17(a)は横から見た側面図を、図17(b)は底面全体の斜視図を各々示している。また、図18は、図17に示した溝による枠部122−1の形成有無による音圧分布を示す特性図であり、図18(a)は枠部が無い輻射板を、図18(b)は溝の枠部を設けた輻射板を各々示している。また、図19は、図16に示した最外周枠122aと区画枠122bとを梁による枠部122−2で形成した輻射板120を示す図であり、図19(a)は横か見た側面図を、図19(b)は底面全体の斜視図を各々示している。また、図20は、図19に示した梁による枠部122−2を設けた輻射板120の音圧分布を示す特性図である。また、図21は、図6に示した超音波発振器30を図17及び19の輻射板120に採用して動作させた音圧分布を示す特性図であり、図21(a)は溝の枠部を設けた輻射板を、図21(a)は梁の枠部を設けた輻射板を各々示している。また、図22は、図16に示した超音波振動子の配置を変えた他の実施例を示す図であり、図22(a)は底面から見た底面図を、図22(b)は底面全体の斜視図を各々示している。また、図23は、図16に示した枠部が格子状の輻射板と図22に示した千鳥状の輻射板との照射領域を対比した図であり、図23(a)は格子状の輻射板を、図23(b)は千鳥状の輻射板を各々示している。また、図24は、図16に示した区画枠122bが離間して独立するように形成した他の実施例を示す図である。また、図25は、図16に示した最外周枠122aの幅を変えて形成した他の実施例を示す図である。また、図26は、図25に示したE−E線の断面を示す図であり、図26(a)は溝により形成した枠部を、図26(b)は梁により形成した枠部を各々示している。また、図27は、最外周枠122aと中央の中央枠122cとの幅を変えて形成した他の実施例を示す図であり、図27(a)は図16に示した輻射板を、図27(b)は図22に示した輻射板を、図27(c)は図24に示した輻射板を各々示している。また、図28は、最外周枠122a内の超音波振動子3を複数単位で区画した他の実施例を示す図であり、図28(a)は区画枠122bによる複数単位の区画を、図28(b)は区画枠122bと更なる枠122dとによる複数単位の区画を各々示している。
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本発明による超音波処理装置の第1の実施形態は、図29に示した従来技術と同様に、超音波発振器(図3または6参照)より超音波出力を入力することが可能な複数の超音波振動子3を、処理液で満たされた処理槽10底面に設けて封止する輻射板12の液中側の照射面12aの裏面に位置するように外側底部の設置面12b(図1(c)参照)に配置させ、超音波出力の入力により励振させることで、処理液10中の被洗浄物1を洗浄できるように形成されている。また、第1の実施形態は、図29に示した周波数帯の異なる超音波振動子を交互に設ける従来技術とは異なり、処理槽10の輻射板12に中央の中央部A及びその周囲を囲む壁側Bからなる設置面12bを設定し、この設置面12b内で処理槽10の洗浄状態に応じて、超音波発振器(図3または6参照)により中央部Aに低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3A(図1(b)参照)と、壁側Bに高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3B(図1(b)参照)とを各々分けて備えることで超音波の照射エリアを中央部Aと壁側Bとで分けて設置できるようにしている。即ち、第1の実施形態では、洗浄液2を貯留した処理槽10の底面に複数の超音波振動子3を有した輻射板12を配置し、この複数の超音波振動子3に対し、超音波発振器(図3または6参照)から輻射板12の設置面12b内で中央部Aと壁側Bとに分けて各々超音波の出力レベルを変えて出力して発振させることで、処理槽10内の超音波の音圧分布が均一になるように設けたものである。尚、中央部Aの超音波振動子3Aと壁側Bの超音波振動子3Bとは、お互いに同じ振動子、または発振周波数(出力レベル)に応じて各々異なる振動子のどちらを用いても良い。
【0015】
ここで、処理槽10は、図1(a)に示すように、中空の箱状で上面及び底面が開口する矩形の筒状に形成された本体11を有し、この本体11の底面を封止するように板状に形成されて表面に複数の超音波振動子3を装着した輻射板12を配置し、本体11と輻射板12とからなる凹状内に処理液2を貯留して洗浄を行う一般的な超音波洗浄槽である。また、輻射板12を本体11の底面に装着する場合、この本体11の底面外周に沿って溶接されるフランジ13を有し、このフランジ13に輻射板12をパッキン14、15の間に挟んで設置するとともに、その下部から更なるフランジ16により支持して、この周囲を複数のボルト17で締結して本体11に溶接したフランジ13に固定される。即ち、輻射板12は、図29に示した従来技術のように、本体11の底面に直接装着されるのでなく、図1(a)に示したようにパッキン14、15を介して(挟んで)取り付けることで、処理槽10に貯留させた処理液2が漏れないように形成している。
【0016】
また、輻射板12は、図1(b)及び(c)に示すように、中央部A及び壁側Bからなる設置面12bを設定しており、この設置面12b内に複数の超音波振動子3を装着するように形成している。これは、実際に、この超音波振動子3の接着エリア内(設置面12b)での音圧分布を測定すると、処理槽10の中央部Aから壁側Bに向かって段階的に音圧が低くなることが測定できるためである。即ち、輻射板12の中央部Aは照射音圧が重畳して比較的照射音圧が高くなりやすいエリアであり、輻射板12の壁側Bは外周端の全周囲が固定されることにより超音波振動が抑制されて比較的照射音圧が低くなりやすいエリアであることが分かる。この中央部Aと壁側Bとの設置面12bは、処理槽10底面の輻射板12の周囲壁から内側に6cm以上離した位置に設定した振動子接着エリアであって、この振動子接着エリアの形状(正方形,長方形)及び輻射板12の排水口の位置などの洗浄状態に応じて前述した6cm以上の数値を適宜変えて設定している。また、第1の実施形態は、前述した洗浄状態にもよるが、例えば、同じ共振周波数の超音波振動子を中央部Aと壁側Bとに各々分けて複数装着した設置面12b(振動子接着エリア)全てを100%とした場合、超音波振動子に入力する入力電力(パワー)を概ね、中央部Aの30〜40%が低い出力となり、残り振動子接着エリアの壁側Bの70〜60%が高い出力となる割合に設定することが好ましい。但し、中央部Aエリアの中、及び壁側Bエリアの中でも、微細な音圧の差は段階的にあるが、上記割合にすることで概ね大きな影響なく洗浄することが可能である。
このように、音圧による強さを洗浄力と考えた場合、洗浄ムラをなくすためには少なくとも洗浄槽10内での中央部Aと壁側Bとの音圧分布を均一にする必要がある。故に、超音波振動子3に与える電力を調整することで、中央部Aの超音波振動子3Aと壁側Bの超音波振動子3Bとの振動速度が調整され、且つ、輻射板12から照射する超音波の音圧も調整でき、処理槽10内の音圧分布を均一化させて洗浄ムラをなく洗浄できるようにしたものである。従って、第1実施形態は、洗浄ムラをなくすため(音圧分布を均一にするため)、輻射板12に接着されている場所ごとで超音波振動子3に印加する電力を変える構造になっている。
【0017】
また、輻射板12には、図1(b)及び(c)に示すように、超音波振動子3が行列方向に複数並んで装着されている。この超音波振動子3は、図29に示した従来技術と同様に、矩形で厚みを有したプレート型のチタン酸バリウムやPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電セラミックスからなる振動子を用いている。
ここで、超音波振動子3は、前述したプレート型の振動子に限定されるものではなく、例えば、輻射板12の設置面12bに金属ブロックを介した中央に圧電セラミックスを設けてボルトにより固定するランジュバン型の振動子を用いることも可能である。
このようなランジュバン型による超音波振動子4は、図2(a)及び(b)に示すように、電圧を加えると伸縮するピエゾ(PZT)素子と呼ばれる圧電セラミック4aの一種を、金属からなる円柱状の金属ブロック4bで挟み込み、ボルトで締結して固定している。更に図示されていないが、この金属ブロック4bの下端面にあいているネジ穴を輻射板12の設置面12bに立てられたスタッドボルトにねじ込み、且つ、接着剤により固定している。このような構造による超音波振動子4は、従来、よく知られた周知技術(例えば、特開平7−313939号公報)であって、図1に示したプレート型の超音波振動子3に比べて、輻射板12に接する面が円形で複数配置することが可能なため、中央部Aと壁側Bとの割合を自由に調整でき、図2(a)に示した中央部Aのように洗浄状態に応じて複雑な形状に設定することができる。
【0018】
ところで、輻射板12の設置面12bで中央部Aと壁側Bとの超音波振動素子3(または超音波振動素子4)から各々超音波出力を出力する場合、種々の構造(回路構造)や方法で出力可能であるが、例えば、設置面12bの中央部Aと壁側Bとの各エリアごとに超音波発振器を各々1台ずつ配置する方法(図3参照)と、中央部Aと壁側Bとに対して超音波発振器を1台のみ配置する方法(図6参照)とが考えられる。尚、便宜上、以下第1の実施形態の説明において、ランジュバン型の超音波振動素子4を用いて説明するが、プレート型の超音波振動子3を用いることも可能である。
まず、前者の超音波発振器を各エリアごとに1台ずつ配置する方法は、図3に示すように、超音波発振器20を中央部Aと壁側Bとの各エリアごとに1台ずつ配置させ、この中央部Aと壁側Bとに配置された超音波振動子4A、4Bに各々接続することで、お互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行えるように形成されている。即ち、超音波出力レベルが異なる、輻射板12の設置面12bの中央部A用の超音波発振器20Aと、壁側B用の超音波発振器20Bとの2台を設け、それぞれ輻射板12の中央部Aの超音波振動子4と壁側Bの超音波振動子4とに各々接続して異なる超音波出力を各々出力することで、輻射板12からの照射音圧の音圧分布を均一化している。
【0019】
ここで、輻射板12の中央部Aと壁側Bとに各々接続する超音波発振器20A、20Bは、図4に示すように、交流電源5から交流電力を各々供給され、この各々において超音波出力レベルを決定している出力制御回路21で調整をし、その後、整流回路22で直流電力に変換するように形成している。また、この直流電力は、周波数設定するマイコン24aと、周波数信号を作り出すDDS24b(ダイレクト・デジタル・シンセサイザ)と、周波数信号を増幅するドライブ回路24cとから成る駆動周波数設定回路24から送られる発振周波数でスイッチングさせることが可能なスイッチング出力回路23を有してこれに印加する。
更に、出力トランス25で電圧を昇圧又は降圧させた超音波出力を、力率補正回路26で位相のずれを修正し、中央部Aの周波数振動子4Aと壁側Bの周波数振動子4Bとに各々入力する。尚、出力トランス25と力率補正回路26との順序が逆になっても問題なく動作させることができる。
そして、図3及び4に示したように、照射音圧が高くなりやすい輻射板12の中央部Aには、超音波出力レベルを比較的低く設定した中央部A用の超音波発振器20Aからの超音波出力をそのエリア直下の超音波振動子4Aに入力する。また、照射音圧が低くなりやすい輻射板12の壁側Bには、超音波出力レベルを比較的高く設定した壁側B用の超音波発振器20Bからの超音波出力をそのエリア直下の超音波振動子4Bに入力する。これにより、処理槽10(図1参照)内の音圧分布を均一にして、ムラのない洗浄を被洗浄物1に対して行うことができる。
【0020】
この際、図4に示した出力トランス25の2次側以降の力率補正回路26及び超音波振動素子4を含む回路構造(等価回路)について、以下、図5を参照して詳細に説明する。
力率補正回路25は、図4に示した出力トランス25と超音波振動子4との間の2次側に介在させて設けており、図5に示すように、超音波振動子4の制動電気容量用キャパシタ4eより大きな電気容量を有する力率補正用キャパシタ26aを超音波振動子4に対して並列になるように接続し、且つ、発振周波数が共振周波数となるようなインダクタンスを有する等価補正用インダクタ26bを超音波振動子4に対し直列接続している。
一方、超音波振動素子4は、前述した力率補正用キャパシタ26aと並列に接続した制動電気容量用キャパシタ4eと、この制動電気容量用キャパシタ4eに並列した直線上に等価電気抵抗4b、等価キャパシタ4c、等価インダクタ4dを各々直列接続させて発振周波数が直列共振周波数になった等価インピーダンス4aとを備えている。
ここで、発振周波数が直列共振周波数であると(である場合)、等価インピーダンス4aは、等価キャパシタ4cと等価インダクタ4dとが互いに打消しあい、等価電気抵抗4bのみとなる。即ち、超音波振動子4の機械負荷が増すと、機械負荷に比例して等価電気抵抗4bが増大する。
よって、この増大する抵抗を有した超音波振動子4に高周波出力を伝送するためには、力率補正用キャパシタ26aと力率補正用インダクタ26bとからなる力率補正回路26を設けて、直列共振周波数において制動電気容量用キャパシタ4eと共振させることで高周波出力を伝送可能にしている。尚、力率補正用キャパシタ26bの容量は、具体的に、制動電気容量用キャパシタ4eの4倍大きい容量をもたせることが好ましい。
このような力率補正回路26及び超音波振動素子4の回路構造は、図3に示した2台の超音波発振器20A、20Bを用いる方法に効果的に採用できるのは勿論のこと、後述する図6に示した超音波発振器30を1台のみ用いる方法にも採用しており、超音波振動子4に高周波出力を確実に伝送している。
【0021】
一方、前述した超音波発振器20を2台設ける構造に対し、中央部Aと壁側Bとに対して超音波発振器30を1台のみ配置する方法としては、図6に示すように、超音波発振器30内部の出力トランス36(図7参照)の2次側巻数が異なる2つの端子から、それぞれ超音波出力レベルが異なる中央部用入力線L1と壁側用入力線L2との2本の超音波出入力線L(図6参照)を取り出すことで、それぞれ中央部Aの超音波振動子4Aと壁側Bの超音波振動子4Bとに接続可能にし、輻射板12(設置面12b)からの照射音圧の音圧分布を均一化する方法を採用している。
【0022】
ここで、1台のみの超音波発振器30は、図7に示すように、1次側と2次側とに分離してなり当該2次側に超音波振動子4A、4Bを接続させる出力トランス36と、この出力トランス36の1次側に接続させるスイッチング出力回路33と、この出力トランス33の1次側または2次側いずれかに接続させる力率補正回路35と、出力トランス36の2次側の巻数が異なる複数の端子からそれぞれ超音波出力レベルが異なるように取り出した複数の超音波出入力線L(図6参照)とを備え、この複数の超音波出入力線Lを、中央部Aと壁側Bとの超音波振動子4A、4Bに各々接続することで、お互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行えるように形成している。
【0023】
このような超音波発振器30は、交流電源5から供給された交流電力を受けて、超音波出力レベルを決定している出力制御回路31で調整し、その後、整流回路32で直流電力に変換するように形成している。また、超音波発振器30は、周波数設定をするマイコン34aと、周波数信号を作り出すDDS34bと、周波数信号を増幅するドライブ回路34cとから成る駆動周波数設定回路34を有し、ここから送られる発振周波数で前述した整流回路32の直流電力をスイッチングするようにスイッチング出力回路33を有している。
そして、図7及び8に示すように、スイッチング出力回路33で生成された超音波出力を力率補正回路35で位相のずれを修正した後、出力トランス36の1次側に印加し、電圧を昇圧又は降圧させるために調整された出力トランス36の2次側の巻数が異なる2つの端子(コイル)から各々超音波出力が異なる、中央部用入力線L1と壁側用入力線L2との2本の超音波出力入力線L(図6参照)を取り出し、それぞれ輻射板12に装着した中央部Aの超音波振動子4Aと、壁側Bの超音波振動子4Bとに各々接続して、超音波出力を印加する。この際、中央部用入力線L1と壁側用入力線L2とには、各々GND線L3を対に備えており、中央部Aの超音波振動子4Aと壁側Bの超音波振動子4Bとに各々接続している。
【0024】
ここで、中央部用入力線L1と壁側用入力線L2とは、図8に示したように、出力トランス36の2次側の巻数が異なる2つ別々の端子(コイル)から取り出しているが、これに限定されるものではなく、例えば、2次側の1つの端子(コイル)から取り出すことも可能である。この1つの端子(コイル)から取り出す場合、図9に示すように、スイッチング出力回路33及び力率補正回路35を介して超音波出力が入力される出力トランス36において、1次側と2次側とで端子(コイル)が各々対称に設けられ、この2次側の端子から壁側用入力線L1とGND線L3とを取り出し、更に、この壁側用入力線L1とGND線L3と間の端子から中央部用入力線L2を取り出している。即ち、中央部用入力線L1と壁側用入力線L2とは、図9に示したように、GND線L3を共有するように設けてあり、これにより配線を減らして簡単な構造にすることで製造コストを低減することができる。
【0025】
尚、出力トランス36と力率補正回路35との順序が逆になっても問題はない。しかし、この場合、出力トランス36後の中央部用入力線L1側と壁側用入力線L2側とに各々力率補正回路36を2つ設ける必要があり、このような構造にすることで、前述した図5に示した力率補正回路と超音波振動素子との回路構造を採用することが可能になる。
【0026】
そして、輻射板12からの照射音圧が高くなりやすい中央部Aには、比較的低い超音波出力レベルが出力される出力トランス36の2次側電力の低い端子に接続されて中央部用入力線L1を介して超音波出力をそのエリア直下の超音波振動子4Aに入力する。また、照射音圧が低くなりやすい壁側Bには、比較的高い超音波出力レベルが出力されるトランス36の2次側電力の高い端子に接続されて壁側用入力線L2を介して超音波出力をそのエリア直下の超音波振動子4Bに入力する。これにより、処理槽10(図1参照)内の音圧分布を均一にして、ムラのない洗浄を被洗浄物1に対して行うことができる。
【0027】
ここで、図6に示した超音波発振器30において、超音波振動子4の振動速度を検出し、その検出信号電圧をマイコンに振動速度として与えることで、音圧分布を把握して、より効果的に超音波出力を調整できるように設けることもできる。このような超音波振動子4の振動速度を検出するブリッジ回路40を有した超音波発振器の他の実施例について、図10乃至13を参照して詳細に説明する。
このブリッジ回路40を有した超音波発振器の他の実施例は、図10に示すように、複数の超音波振動子4の各々1つに対して、各々ブリッジ回路40を設けることで超音波振動子4の振動速度を検出可能にしている。具体的には、図8または9に示した出力トランス36の2次側以降に、力率補正回路35と超音波振動子4とを備え、図10に示したように、この力率補正回路35と超音波振動子4との間にブリッジ回路40を介在させることで形成されている。ここで、ブリッジ回路40は、例えば、図8及び9に示した中央部Aと壁側Bとの超音波振動子4A、4Bを有している場合、この両方の振動子に対応させて各々形成される(図12及び13参照)。
ここで、力率補正回路35は、例えば、図8に示した中央部用入力線L1とGND線L3とのように2次側以降に平行して延在する配線に対し、図10に示したように、平行して延在する一対の線をお互いに連結するように力率補正用インダクタ35aを配置している。尚、この力率補正用インダクタ35aは、平行する線をお互いに連結することに限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、平行する片側の線のみに直列に設けた力率補正用インダクタ35bを配置して力率を補正することも可能である。この力率補正用インダクタは、図5に示した力率補正用インダクタ26bに対応するものであり、図5における説明と重複する説明は省略する。
【0028】
尚、ブリッジ回路40は、図10に示したように、ブリッジ出力検出用抵抗40aによって出力電圧、出力電流を検出する場合、一辺の超音波振動子4と、その他のブリッジ用コンデンサ40b、40c、40dとによりなる従来よく知られた周知のブリッジ構成を有しており、この超音波振動子4とブリッジ用コンデンサ40b、40c、40dとのインピーダンスの平衡が成り立つように形成されている。
具体的には、例えば、交流電源によって動作する超音波(圧電:電歪)振動子4の端子電圧をV、端子電流をI、制動アドミタンスをYd、動アドミタンスをYmとすると、次の(式1)により表すことができる。
I=(Yd+Ym)V …(式1)
また、動アドミタンスYmは、超音波振動子4の力係数をA、超音波振動子4の機械端子における振動速度をvとすると、次の(式2)により表すことができる。
Ym=A・v/V …(式2)
故に、上記(式1)のYmに、上記(式2)のYmを代入することで、超音波振動子4の端子電流Iは、次の(式3)のように求めることができる。
I=Yd・V+Ym・V=Yd・V+A・v …(式3)
このような(式3)により、動アドミタンスに流れる電流Ym・Vは、振動速度vに比例することが分かる。
ここで、インピーダンスZは、Z=1/Yで求められるため、図10に示したブリッジ回路40の各比例辺において、ブリッジ用コンデンサ40bがp/Yd(p:実数の係数)となり、ブリッジ用コンデンサ40cがp/m・Yd(p:実数の係数、m:複素数の係数)となり、ブリッジ用コンデンサ40dが1/m・Yd(m:複素数の係数)となるとともに、超音波振動子4が1/(Yd+Ym)と表すことができる。
このように、超音波振動子4を一辺としたブリッジ回路40を構成し、制動アドミタンスYdについて平衡をとり、超音波振動子4の制動時、即ち、1/Ym=0のときにブリッジ出力電圧がゼロになるようにすれば、振動時にはYm・Vに比例するブリッジ出力を得ることができる。
尚、ブリッジ回路40の電力損を少なくするために比例辺1/m・Ydとp/m・Ydとは低損失コンデンサを用い、また、平衡結線に流れる電流を振動子端子電流より十分に小さくとるためpの値は10以上を選ぶ。
そして、このような構成のブリッジ回路40は、1つの超音波振動子4における振動速度を、ブリッジ出力検出用抵抗40aによって出力電圧、出力電流として検出することができる。また、このブリッジ出力検出用抵抗40aで検出された出力電圧及び出力電流は、図10に示したブリッジ回路40に接続された出力電圧検出回路42及び出力電流検出回路44に各々入力されて更に乗算器46を介して、マイコン48に振動速度として検出信号電圧を与えられる。
【0029】
次に、前述の図10に示したブリッジ回路40による検出構造を、図8及び図9に示した超音波発振器に各々適用した場合について、図12及び図13を参照して詳細に説明する。尚、図12及び13には、図8乃至10に示した構成要素と対応する同じ構成要素には対応させて同一の符号を記載している。
まず、図10に示したブリッジ回路40の振動速度検出構造を図8に示した超音波発振器に採用した場合、図12に示すように、スイッチング出力回路33から出力トランス36を介して2次側の中央部Aの超音波振動子4Aと壁側Bの超音波振動子4Bとに対し、各々ブリッジ回路40A、40Bを各々備えており、この各ブリッジ回路40A、40Bの各々に対し、出力電圧検出回路42、出力電流検出回路44、乗算器46、及びマイコン48を接続している。ここで、マイコン48は、中央部Aの超音波振動子4Aと、壁側Bの超音波振動子4Bとに合わせて2つ設ける必要がないため、1つ設けることで共有している。また、その他の各構成要素については、既に前述しているため重複する説明は省略する。
一方、図10に示したブリッジ回路40の振動速度検出構造を図9に示した超音波発振器に採用した場合も同様に、図13に示すように、中央部Aの超音波振動子4Aと壁側Bの超音波振動子4Bとに対して各々ブリッジ回路40A、40Bを備え、ここから出力電圧検出回路42、出力電流検出回路44、及び乗算器46を介し、前述したように1つ設けて共有するマイコン48に各々接続されている。
【0030】
このような構造によるブリッジ回路40を有した超音波発振器は、超音波振動子4の振動速度により音圧分布の均一化を判断する場合、輻射板12の設置面12b上(図6参照)に装着した全ての超音波振動子4A、4Bの振動速度が、等しければ、各々の超音波振動子4から照射される音圧も等しいので、洗浄槽10内の音圧分布は均一であると判断できる。
故に、照射音圧が高くなりやすい輻射板12の中央部Aにおける振動速度検出信号電圧と、照射音圧が低くなりやすい輻射板12の壁側Bにおける振動速度検出信号電圧とが、お互いに同等となるように、超音波発振器30の超音波出力を、図7に示した出力制御回路31によって設定することで音圧分布を均一化できる。
尚、図12及び13に示した実施例では、図10に示したブリッジ回路40の振動速度検出構造を、図6に示した超音波発振器30を1台だけ設けた場合にのみ適用した実施例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に示した超音波発振器20A、20Bを2台設けた場合にも十分採用することは可能である。
【0031】
以上、説明したように本発明による超音波処理装置の第1の実施形態によると、処理槽の底部から照射する超音波振動子3(または4)への超音波出力(出力レベル)を超音波発振器20(または30)の簡単な構造により中央部Aと壁側Bとで各々変えることができるため、常に処理液中に照射される超音波の音圧分布を均一にでき、洗浄ムラのない安定した洗浄が期待できる。また、ブリッジ回路40による振動速度検出構造を備えることで、より効果的に超音波出力を調整して音圧分布を均一化できる。
【実施例2】
【0032】
次に、図14及び図15を参照して、本発明による超音波処理装置の第2の実施形態を詳細に説明する。本発明による超音波処理装置の第2の実施形態は、図14(a)および(b)に示すように、超音波振動子3を、投込みケース60の液中に浸漬させた外側上面の照射面60aに対応する裏面に位置するように防水状態の中空内上面の設置面60bに配置させて収納し、処理液2で満たされた処理槽50の液内底部に浸漬させて励振させることで処理液中の被洗浄物1を洗浄可能に設けており、これは図30に示した従来技術と同様の超音波洗浄装置である。また、図14(b)に示した投込みケース60の中空内には、配線用フランジ63を介して延在する配線用配管64から配線された超音波出入力線LとGND線L3とを引き込むことにより外部の超音波発振器(図示せず)に複数の超音波振動子3を接続させている。
また、第2の実施形態では、図30に示した従来技術とは異なり、図14(c)に示すように、投込みケース60の中空内上面に中央の中央部A及びその周囲を囲む壁側Bからなる設置面60bを設定し、この設置面60b内で処理槽50の洗浄状態に応じて、超音波発振器により中央部Aに低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3Aと、壁側Bに高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子3Bとを各々備えている。
【0033】
ここで、図14に示した超音波振動子3は、プレート型の振動子を用いているが、このプレート型に限定されるものではなく、例えば、第1実施形態で図2に示したランジュバン型の振動子を用いることも可能である。このようなランジュバン型による超音波振動子4は、図15(a)及び(b)に示すように、電圧を加えると伸縮するピエゾ(PZT)素子と呼ばれる圧電セラミック4aの一種を、金属からなる円柱状の金属ブロック4bで挟み込みボルト(図示せず)を用いて締結している。更に、投込みケース60の中空内の設置面60bに立っているスタッドボルト(図示せず)に固定する構造を備えている。このような構造による超音波振動子4は、図15(b)に示したように、投込みケース60に装着する面が円形で図14に示したプレート型の超音波振動子3に比べて複数配置することが可能なため、中央部Aと壁側Bとの割合を自由に細かく調整(設置数や設置場所によって自由に調整)でき、この中央部Aを正方形や矩形ではなく洗浄状態に応じて図15(b)に示した複雑な形状に設定することができる。
【0034】
ところで、第2の実施形態では、第1の実施形態の図1に示した輻射板12が、図14(c)及び15(b)に示した投込みケース60に変わっただけであって、基本的に中央部Aと壁側Bとに分けた設置面60bを設定して超音波振動子3A、3B(または4A、4B)を備えるため、図3乃至図13に示した超音波発振器の構造を、そのまま適用することが可能である。従って、第2の実施形態では、第1の実施形態の超音波発振器と同じものを採用できるため、ここでは前述した超音波発振器の内容と重複する説明は省略する。
【0035】
以上、説明したように本発明による超音波処理装置の第2の実施形態によると、第1の実施形態の輻射板を単に投込みケース60に変えた構造であり、中央部Aと壁側Bとに分けた設置面60bを設定することは同じであるため、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、超音波振動子3(または4)を処理槽50に予め固定する必要がなく投込みケース60により投込み式に設置できるため、処理槽50の大きさや形状などの種々の構造が変わったとしても容易に対応することができる。
【実施例3】
【0036】
次に、前述した中央部Aの超音波振動子と壁側Bの超音波振動子とに与える超音波出力レベル(電力)を各々変えることで音圧分布を均一化させる第1及び第2の実施形態とは異なり、輻射板に溝または梁を設けて音圧分布を均一化させる従来技術がある。この従来技術としては、例えば、輻射板に梁を設けて超音波振動子間の相互作用を分断して音圧分布を均一に抑える構造(実開昭56−107700号公報:以下、特許文献3と称す)や、輻射板に溝を設けて振動を抑制して音圧分布を均一に抑える構造(実開昭62−31979号公報:以下、特許文献4と称す)などが、よく知られている。
即ち、本発明による超音波処理装置の第3の実施形態は、前述の特許文献3及び4を採用することで、中央部Aと壁側Bとの音圧分布をより効果的に均一化できるように形成したものである。ここで、第2実施形態の投込みケースは、処理液中に浸漬して周囲が固定されず全体的に励振するため、中央部Aと壁側Bとの音圧分布の差は、前述した電力を変えるだけで十分に均一化できる。しかし、第1実施形態の輻射板は、槽底部の側壁に外周が確実に固定されるため、中央部Aと壁側Bとの音圧分布の差が大きく、前述した電力を変える以外に、前述した特許文献3又は4の溝や梁で音圧分布を調整しなければならい場合もある。
よって、第3の実施形態は溝または梁を輻射板に形成して音圧分布を均一化する場合を前提としており、以下、その基本構造を図16〜21を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
本発明による超音波処理装置の第3の実施形態は、図1に示したように、処理槽10の底面に取付けられて複数の超音波振動子3を装着した輻射板を有し、この輻射板の設置面に溝または梁を形成することで、音圧分布を均一化できるように形成したものである。具体的に、第3の実施形態は、図16に示すように、超音波振動子3を複数装着させた輻射板120の設置面に、この複数の超音波振動子3を全て囲む最外周枠122aと、この最外周枠122a内で複数の超音波振動子3を1個の単位ごとに区画して囲む区画枠122bとを有し、当該最外周枠122aと区画枠122bとを凹状の溝または凸状の梁により形成してなる枠部122を備えている。尚、図16では、最外周枠122aを黒く塗り潰し、区画枠122bをハッチングにより記載しているが、以下の図17及び19を参照して後述するが、お互い同じ溝または梁であって、便宜上、最外周枠122aと区画枠122bとを区別するために塗り潰し部とハッチング部とにより記載している。このように第3の実施形態は、超音波振動子3を複数装着する輻射板120の設置面に、最外周枠122aと区画枠122bとによる溝または梁を設けた簡単な構造であって、第1及び第2実施形態における中央部の低い超音波出力及び前記壁側の高い超音波出力を各々印加する技術に加えて、更に、音圧分布を均一化できる枠部122を備え、処理液中に照射される超音波の音圧分布をより均一にして洗浄ムラのない安定した洗浄を可能にしたものである。
【0038】
ここで、輻射板120は、図16に示したように、溝または梁からなる最外周枠122aにより複数の超音波振動子3を全て囲み、この最外周枠122a内の複数の超音波振動子3を更に区画枠122bにより1個の単位で格子状に囲むように形成されている。尚、輻射板120は、一般的に図1に示した処理槽10の本体11底部にボルト17で全周囲を固定させており、処理槽10の外周壁側に隣接した超音波振動子3(例えば、図16に示した最外周枠122aに接した10個の超音波振動子)は振動が抑制されて照射音圧が低くなりやすく、逆にその中央部の超音波振動子3(例えば、図16に示した中央2個の超音波振動子)は照射音圧が重畳して高くなりやすくなる。このような場合、輻射板120は、前述した溝または梁からなる最外周枠122aと区画枠122bとを設けることで、この最外周枠122aが、図1に示した処理槽10底部の外周壁に固定された外周壁と超音波振動子3との振動抑制を遮断して中央部Aと壁側Bとの照射音圧を均一にさせる役割をするとともに、区画枠122bが1個ごとの超音波振動子3に対して振動応力を分散させて照射音圧が重畳することを抑制して高くなりやすい中央部Aの音圧を低減させて初期段階での不均一な音圧分布の度合いを軽減させる役割を各々果たしている。即ち、第3の実施形態においては、輻射板120から照射される音圧分布を均一にする場合、最も重要な役割をするのが最外周枠122aであって、この最外周枠122aにより壁側Bの超音波振動子3の振動抑制を十分に遮断されないと全体の均一性が得られないため、最初に最外周枠122aを設定し、その後、最外周枠122aに対応する区画枠122bを調整することが最も好ましい。また、最外周枠122aは、好ましくは、図16に示したように、輻射板120の外周端にネジ止めされる壁から中心に向かって内側に6cm以上離した位置に形成することが望ましい。
【0039】
そして、このような輻射板120に形成される最外周枠122aと区画枠122bとからなる枠部122は、溝により形成する場合122−1と、梁により形成する場合122−2との方法があり、その各基本構造について、図17〜図20を参照して各々詳細に説明する。
まず、輻射板120の最外周枠122aと区画枠122bとが溝により形成された枠部122−1の場合、図17(a)に示すように、輻射板120の板厚に対して凹状に薄く切り欠くように溝を形成されており、この輻射板120表面で複数の超音波振動子3を1個ごと区画して囲むように形成されている。この際、溝により形成した枠部122−1は、図17(b)に示すように、輻射板120の複数の超音波振動子3が配列されているお互いの間を全て二分するように格子状に切り欠いて分けてあり、各超音波振動子3が全て同じ条件で励振するよう個々に区画されている。
【0040】
ここで、具体的に溝による枠部122−1を有した輻射板120と、枠部の無い輻射板との音圧分布を対比するため、図18を参照して詳細に説明する。尚、図18に示した音圧分布は、複数の超音波振動子3に対し、全て同じ出力レベル(電力)を印加して励振させた場合を示している。
図18(a)に示すように、枠部の無い輻射板の場合、輻射板の周囲が槽壁により固定されるため、この照射板の中央の中央部Aと、その周囲の壁側Bとでは音圧分布が均一にならない。即ち、輻射板の周端が槽壁により固定され、輻射板の表面で一列に近隣した超音波振動子3間の振動がお互い伝達されて結合されてしまい、中央の中心部A(固定した壁側Bから離れて振動し易い中心部A)になるほど強く、その周囲の壁側Bになるほど弱くなり、結果的に音圧分布が均一にならない。従って、音圧分布は、図18(a)に示したように、周囲の壁側Bが低く、中央の中心部Aが鋭利に最も高く突出した曲線になる。
これに対し、溝による枠部122−1を有した輻射板120は、図18(b)に示すように、槽壁に固定された外周端側の壁側Bで超音波振動子3の振動が抑制されることをフリーの枠部122−1により遮断される。具体的には、槽壁に固定された外周端から6cm以上離れた枠部122−1の最外周枠122a(図16参照)が、最初に固定された壁側の抑制を遮断する。その後、この内部で、枠部122−1の区画枠122b(図16参照)が超音波振動による振動応力を分散させて照射音圧が重畳することを抑制する。よって、音圧の高くなりやすい中央部Aの音圧が低減され、初期段階での不均一な音圧分布の度合いを軽減させることができる。従って、図18(a)に示した中央部Aと壁側Bとの大きな音圧の差が軽減され、図18(b)に示したように、緩やかな曲線で水平に近い(図18(a)の曲線に比べて水平に近い)音圧分布が得られることが分かる。尚、溝による枠部122−1を設けた輻射板120では、図18(b)に示したように、音圧分布が比較的高い位置に発生する。
【0041】
次に、輻射板120の最外周枠122aと区画枠122bとを梁により形成された枠部122−2の場合、図19(a)に示すように、輻射板120の板厚を切り欠くことなく、その表面から梁を凸状に突出させて一体に形成しており、複数の超音波振動子3を1個ごと囲むように区画している。この際、梁により形成した枠部122−2は、図19(b)に示すように、複数の超音波振動子3が配列されているお互いの間を全て二分するように格子状に突出させて設けてあり、各超音波振動子3が全て同じ条件で励振するよう個々に区画されている。
そして、梁による枠部122−2を設けた輻射板120は、図20に示すように、槽壁により固定された外周端側の壁側Bで超音波振動子3の振動が抑制されることを、梁により固定する枠部122−2によって遮断している。尚、図20に示した音圧分布は、前述と同様に、複数の超音波振動子3に対し、全て同じ超音波出力レベル(電力)で入力して励振させた場合を示している。また、枠部122−2は、図16に示した最外周枠122aと区画枠122bとが各々振動の抑制を遮断することは上述した溝の枠部122−1と同じであり、重複する説明は省略する。また、梁による枠部122−2を設けた輻射板120は、上述した溝による枠部と異なり、図20に示すように、音圧分布が比較的低い位置に発生することが大きく異なる。即ち、輻射板120は、音圧の高さに応じて、溝または梁いずれかの枠部を選択することができる。
【0042】
ここで、溝または梁による枠部を設けた輻射板120は、例えば、第1実施形態の図6に示した超音波発振器を採用して出力レベル(電力)を変えて動作させることで、より効果的に音圧分布を均一化できる。このような図6に示した超音波発振器を、図17及び19に示した輻射板に各々採用した動作による音圧分布を、図21を参照して詳細に説明する。
まず、溝による枠部122−1を設けた輻射板120は、図21(a)に示すように、輻射板120からの照射音圧が高くなりやすい中央部Aの超音波振動子3に対し比較的低い超音波出力レベルの電力が印加され、照射音圧が低くなりやすい壁側Bの超音波振動子3には比較的高い超音波出力レベルの電力が印加されている。このように超音波発振器(図6参照)から中央部Aと壁側Bとの超音波振動子3に各々与える電力を変えることで、図21に示すように、音圧分布が水平方向でほぼ直線になるため、十分に均一化されていることが分かる。
一方、図21(b)に示すように、梁による枠部122−2を設けた輻射板120は、前述した溝による枠部と同様に、輻射板120の中央部Aの超音波振動子3に低い超音波出力レベルの電力を印加し、壁側Bの超音波振動子3に高い超音波出力レベルの電力を印加することで、音圧分布が水平方向でほぼ直線になるため、十分に均一化されていることが分かる。
この際、図18(b)及び図20に示した音圧分布と同様に、溝の枠部122−1を設けた輻射板120の音圧分布は図21(a)に示したように比較的高い位置に発生し、梁の枠部122−2を設けた輻射板120の音圧分布は図21(b)に示すように比較的低い位置に発生する。
【0043】
このように、本発明による超音波処理装置の第3の実施形態は、溝または梁による枠部122を輻射板に形成した上で、中央部Aと壁側Bとの超音波振動子3に与える超音波出力レベルの電力を各々変えることができるため、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、この溝または梁の枠部122により、初期段階での不均一な音圧分布の度合いを軽減(微調整)することができる。
【0044】
ところで、第3の実施形態において、図16に示した溝または梁による枠部122は、超音波振動子3の周囲で矩形の格子状に囲む実施例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図16に示したプレート型の超音波振動子3をランジュバン型(図2参照)に変えることで、輻射板120に接する面が円形で複数自由に配置でき、この中央部Aと壁側Bとの割合を自由に調整し、洗浄状態に応じて複雑な配置に設定することができ、これは既に、第1及び第2の実施形態で説明している。さらに加えて、溝または梁による枠部122の形成(配置)においても種々の実施例があって、以下、図22〜28を参照して詳細に説明する。尚、以下に説明する種々の実施例では、基本的に、図16に示したプレート型の超音波振動素子3を用いた場合を例にとって説明するが、ランジュバン型の超音波振動素子に変えて採用することは当然可能である。また、最外周枠及び区画枠においても、溝または梁いずれかを適宜選択して採用することは可能である。
【0045】
まず、図22を参照して、輻射板120での超音波振動子3の配置を変えた場合について詳細に説明する。この配置を変える他の実施例は、図16に示した複数の超音波振動子3を行列方向に一列に並べて格子状に区画した実施例に対し、図22(a)に示すように、前述した格子状の状態から1行置きの行を、超音波振動子3が半個分片側にずれて列方向でジグザグの千鳥状になるように配列させている。そして、この千鳥状に配列された各超音波振動子3は、各々1個ごとに区画枠122bにより区画されるとともに、その千鳥状の外周を最外周枠122aにより囲むように枠部122を形成している。ここで、区画枠122b及び最外周枠122aは、例えば、図22(b)に示すように、輻射板120の表面に凹状の溝からなる枠部122により形成し、各超音波振動子3を全て同じ条件で振動できるように個々に囲むように形成できる。
このような超音波振動子3を千鳥状に配列させた輻射板120によると、洗浄時に照射音圧を被洗浄物に均一に照射することができ、洗浄ムラなく良好に洗浄できる。より具体的に説明すると、被洗浄物は、処理工程において外部から処理槽内に搬送されて処理が終了して取り出されるまで、図23(a)に示す搬送経路Cに沿って搬送され、処理槽内で超音波振動子3上を移動させながら処理(洗浄)する場合がある。この場合、格子状に区画した超音波振動子3では、図23(a)に示したように、搬送経路Cに対して行列方向に各々配列させて直上に照射する照射音圧が、隣合う相互間で、干渉などにより照射されない被照射領域Dが生じる場合があるため、洗浄ムラを発生させる原因になってしまう。そのような場合でも、千鳥状に配列させた輻射板120によると、図23(b)に示すように、搬送経路Cに対して最初の列で被照射領域Dが生じたとしても、その1行置きにずらして設けた次の列により被照射領域D部分を補って照射できるため、洗浄ムラなく良好に洗浄することが可能になる。
【0046】
また、図16〜23に示した輻射板120の区画枠122bは、隣合う各超音波振動子3の間を1本の溝(または梁)により共有して格子状に区画した実施例を詳細に説明したが、他の実施例として、隣合う各超音波振動子3どうしの音圧の干渉を避けるため、個々に独立して区画する方法もある。この独立して区画する輻射板120は、図24に示すように、複数の超音波振動子3を格子状に囲むのではなく、最外周枠122a内で個々に間隔を有して独立させて囲む区画枠122bを有した枠部122に形成している。これにより輻射板120では、隣合う各超音波振動子3の間を、各々独立した相互の区画枠122bにより2本で遮断することが可能になり、音圧の干渉により照射音圧が変化することを確実に防止し、所望の音圧通り照射することができる。
尚、この独立して区画する輻射板120では、各超音波振動子3どうしが離間する位置に配置されるため、図23(a)に示した被照射領域Dが生ずる可能性もあり、その場合、図23(b)に示した千鳥状に配列することで解消することも可能である。この際、格子状と千鳥状との輻射板120を両方用意し、適宜、処理槽10の本体11(図1参照)底面に付け替えることで容易に対応することができる。
【0047】
ところで、このように形成された種々の実施形態において、輻射板120から照射される音圧分布を均一にする場合、最も重要な役割を果すのが最外周枠122aであることは既に述べた通りである。とすると、最外周枠122aは、区画枠122bとは異なる役割をするため、その形状も区画枠122bとは異なるように形成されても矛盾はない。
より具体的に説明すると輻射板120には、図25に示すように、枠部122として、複数の超音波振動子3を区画する区画枠122bに対して、最外周枠122a(溝又は梁)の幅を変えて形成することができる。尚、図25では最外周枠122aの幅を変えているが、例えば、溝または梁の深さや高さも変えることができ、深さまたは高さと、幅とのいずれか一方或いは両方を変えることも可能である。例えば、区画枠122b及び最外周枠122aが溝である場合は、図26(a)に示すように、区画枠122bに比べて最外周枠122aの溝の深さと幅とのいずれか一方或いは両方を適宜変えることができるが、この図26(a)では深さを深く、幅を広くすることで両方変えて形成されている。一方、梁である場合は、図26(b)に示すように、区画枠122bに比べて最外周枠122aの梁の高さと幅とのいずれか一方或いは両方を変えることができるが、この図26(b)では高さを高く、幅を広くすることで両方変えて形成されている。
これにより最外周枠122aは、例えば、図21に示した輻射板120の槽壁により固定された壁側Bの振動抑制を遮断して防止する度合いを調整可能になり、結果的に音圧分布が均一になるように十分な役割を果すことができる。
【0048】
また、他の実施例として、前述の幅を変えた最外周枠122aに加えて、更に区画枠122b内の一部の幅を変えて形成しても良い。これは、図21に示した輻射板120の中央部Aと壁側Bとで各々音圧分布が異なるため、当然、中央部Aと壁側Bとで均一になるように溝または梁の形状を変えて調整することは可能である。また、中央部Aと壁側Bとの各超音波振動子3に印加する超音波出力レベルを変える場合は、特に、この出力レベルが異なるエリアごとに区別して区画することもできる。この場合、壁側Bは前述した最外周枠122aにより調整可能なため、その他、区画枠122b内の一部(図27に示した中央枠122c:中央部A)の幅を変える場合について詳細に説明する。尚、幅のみでなく、深さまたは高さと、幅とのいずれか一方または両方を変えても良い。
まず、図25で示したように、輻射板120に装着した全ての超音波振動子3の外側を囲む最外周枠122aの幅を区画枠122bと異なるように形成し、これと同様に、図27(a)に示すように、最外周枠122a内の区画枠122bのうち中央の中心部にある複数個(図27では2個)を組合わせて外周を囲んだ中央枠122cを更に新たに設定する。そして、この中央枠122cは、上述した最外周枠122aと同様に幅を変えて形成し、この外側の壁側Bにある最外周枠122aとにより2つのエリアに区分させる。ここで、最外周枠122aと中央枠122cとの溝または梁の形状は、処理状態に応じて同じまたは異なるように形成してもよい。
そして、この図27(a)に示した輻射板120と同様に、図22及び図24に示した輻射板120に対しても、図27(b)及び(c)に示すように、幅が異なる最外周枠122aと中央枠122cとを形成することで、区画枠122aを容易に2つのエリアに区分することができる。ここで、図27(a)及び(b)に示した中央枠122cは区画枠122bに沿って設定できるが、図27(c)に示した中央枠122cは区画枠122bが各々独立して形成されているため、区画枠122bのうち中央の中心部にある複数個を組み合わせて離れた各枠の外周を各々接続して囲んだ中央枠122cを更に形成する必要がある。例えば、図27(c)では、中央の2つの超音波振動子3を個々に囲む区画枠122bの離れた間を接続して囲む中央枠122cを有している。
これにより、図25に示した輻射板120に比べて、図21に示した中央部Aと壁側Bとの音圧の差を、より均一に調整することができる。
【0049】
さらに、前述の図16〜27に示した輻射板120では、区画枠122bが複数の超音波振動子3を必ず1個ごとの単位で区画する場合を想定している。これに対し、1個ごとに区画するのではなく、中央部Aと壁側Bとの2つのエリアに合わせて複数単位で区画することも可能である。
この超音波振動子3を複数単位で区画する輻射板120は、図28(a)に示すように、最外周枠122a内の複数の超音波振動子3のうち区画枠122bが中央の中心部にある複数個(図28(a)では2つ)を組合わせて外周を囲むことで、この中心部の区画枠122bと、その外側の壁側にある最外周枠122aとにより、2つのエリアに区画できるように配設されている。即ち、複数の超音波振動素子3を全て1ずつ囲む必要はなく、音圧分布の差が生じる中央部Aと壁側Bとの2つのエリアだけに合わせて区画することも可能である。尚、このエリア内で超音波振動素子3間の干渉(または結合)が生じる場合は、その干渉が生じる一部分だけに新たな区画枠(例えば、複数単位の区画枠)を設けてもよい。これにより区画構造が簡単な構造になり、輻射板の製造コストを低減することができる。
ここで、輻射板120には、例えば、超音波振動子3を多数配列させることで、2つ以上のエリアに区画できるように、更なる枠を複数配置させる場合もある。この場合、例えば、図28(b)に示すように、区画枠122bから最外周枠122aまでの間で、更に囲む枠として更なる枠122dを備え、最外周枠122a内で中心から段階的に外側に向かって複数のエリア(図13(b)では3エリア)に区画できるように配設させることも可能である。即ち、中央部Aと壁側Bとの2つのエリアだけでなく、多数のエリアに区画することで、状況に応じて細かい音圧分布の均一化が実現できる。
【0050】
以上、本発明による超音波処理装置の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、矩形で箱状の処理槽に合わせて四角状の設置面を設定した実施の形態を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、円柱状の処理槽で円状の設置面を設定しても良い。これは具体的に、円柱状の処理槽の外周壁から内側に6cm以上離れた位置での円状の設置面である。
また、図16〜28に示した最外周枠、区画枠、中央枠、更なる枠は、実施の形態で説明した実施例に限定されるものではなく、状況に応じて組み合わせて形成することも可能である。例えば、図28(b)に示した最外周枠122aと更なる枠122dとの間だけ(外周だけ)を、図16に示した格子状に区画してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による超音波処理装置の第1の実施形態を示す構成図。(実施例1)
【図2】図1に示した超音波振動子の他の実施例を示す図。
【図3】図1に示した超音波処理装置に用いる超音波発振器を示す図。
【図4】図3に示した超音波発振器の内部構造を示すブロック図。
【図5】図4に示した力率補正回路及び超音波振動素子の内部構造を示す回路図。
【図6】図3に示した超音波発振器の他の実施例を示す図。
【図7】図6に示した超音波発振器の内部構造を示すブロック図。
【図8】図7に示した出力トランスから中央部用入力線と壁側用入力線とを引き出す構造を示す回路図。
【図9】図8に示した中央部用入力線と壁側用入力線とを引き出す他の構造を示す回路図。
【図10】図6に示した超音波発振器に振動速度検出のブリッジ回路を備えた実施例を示すブロック図。
【図11】図10に示した力率補正回路の他の実施例を示す図。
【図12】図10に示したブリッジ回路を図8に示した超音波発振器に適用した実施例を示す回路図。
【図13】図10に示したブリッジ回路を図9に示した超音波発振器に適用した実施例を示す回路図。
【図14】本発明による超音波処理装置の第2の実施形態を示す構成図。(実施例2)
【図15】図14に示した超音波振動子の他の実施例を示す図。
【図16】本発明による超音波処理装置の第3の実施形態を示す図。(実施例3)
【図17】図16に示した最外周枠と区画枠とを溝による枠部で形成した輻射板を示す図。
【図18】図17に示した溝による枠部の形成有無による音圧分布を示す特性図。
【図19】図16に示した最外周枠と区画枠とを梁による枠部で形成した輻射板を示す図。
【図20】図19に示した梁による枠部を設けた輻射板の音圧分布を示す特性図。
【図21】図6に示した超音波発振器を図17及び19の輻射板に採用して動作させた音圧分布を示す特性図。
【図22】図16に示した超音波振動子の配置を変えた他の実施例を示す図。
【図23】図16に示した枠部が格子状の輻射板と図22に示した千鳥状の輻射板との照射領域を対比した図。
【図24】図16に示した区画枠が離間して独立するように形成した他の実施例を示す図。
【図25】図16に示した最外周枠の幅を変えて形成した他の実施例を示す図。
【図26】図25に示したE−E線の断面を示す図。
【図27】最外周枠と中央の中央枠との幅を変えて形成した他の実施例を示す図。
【図28】最外周枠内の超音波振動子を複数単位で区画した他の実施例を示す図。
【図29】従来の底部固定型による超音波処理装置の実施形態を示す図。
【図30】従来の投込み型による超音波処理装置の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0052】
1 被洗浄物
2 処理液
3 超音波振動子
10 処理槽
11 本体
12 輻射板
12a 照射面
12b 設置面
13 フランジ
14 パッキン
15 パッキン
16 フランジ
17 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子を、処理液で満たされた処理槽底面の輻射板に外側底部の設置面から配置させて励振させることで処理液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置において、
前記処理槽の輻射板に中央の中央部及びその周囲の壁側からなる前記設置面を設定し、この設置面内で前記処理槽の洗浄状態に応じて、前記超音波発振器により前記中央部に低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子と、前記壁側に高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子とを各々分けて備えることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
超音波発振器より超音波出力を入力することが可能な超音波振動子を、処理液で満たされた処理槽の液内底部に防水状態で浸漬させる投込みケースの中空内上面の設置面に配置させて励振させることで処理液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置において、
前記投込みケースの中空内上面に中央の中央部及びその周囲の壁側からなる前記設置面を設定し、この設置面内で前記処理槽の洗浄状態に応じて、前記超音波発振器により前記中央部に低い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子と、前記壁側に高い超音波出力を入力して励振させる超音波振動子とを各々分けて備えることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記超音波振動子は、前記設置面に直接取り付けるプレート型振動子、または前記設置面に金属ブロックを介した圧電セラミックスをボルトで固定するランジュバン型振動子であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波処理装置。
【請求項4】
前記設置面は、前記処理槽底面の輻射板または前記投込みケース内上面の周囲壁から内側に6cm以上離した位置に設定した振動子接着エリアであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の超音波処理装置。
【請求項5】
前記超音波発振器は、前記中央部と壁側との各エリアごとに1台ずつ配置され、この各1台を前記中央部と壁側との前記超音波振動子に各々接続することでお互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の超音波処理装置。
【請求項6】
前記超音波発振器は、
1次側と2次側とに分離してなり当該2次側に前記超音波振動子を接続させる出力トランスと、
前記出力トランスの1次側に接続させるスイッチング出力回路と、
前記出力トランスの1次側または2次側いずれかに接続させる力率補正回路と、
前記出力トランスの2次側の巻数が異なる複数の端子から、それぞれ超音波出力レベルが異なるように取り出した複数の超音波出入力線とを備え、
前記複数の超音波出入力線を、前記中央部と壁側との前記超音波振動子に各々接続することでお互いに超音波出力レベルが異なるように、発振周波数調整、力率補正、及び超音波出力レベル調整を行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の超音波処理装置。
【請求項7】
前記超音波発振器は、前記出力トランス2次側以降の回路に、ブリッジ回路により前記超音波振動子の振動速度を検出する検出回路を更に設けることを特徴とする請求項6に記載の超音波処理装置。
【請求項8】
前記超音波発振器の力率補正回路は、前記出力トランスと前記超音波振動子との間の2次側に介在して前記超音波振動子の制動電気容量より大きな電気容量を有するキャパシタを前記超音波振動子に対して並列に接続し、且つ、発振周波数が共振周波数となるようなインダクタンスを有するインダクタを前記超音波振動子に直列接続しなることを特徴とする請求項6に記載の超音波処理装置。
【請求項9】
前記複数の超音波振動子を装着させた前記輻射板の設置面には、前記複数の超音波振動子を全て囲む最外周枠と、この最外周枠内の複数の超音波振動子を1個または複数個の単位ごとに区画して囲む区画枠とを有し、当該最外周枠と区画枠とを凹状の溝または凸状の梁により形成され、前記中央部の低い超音波出力及び前記壁側の高い超音波出力に加えて音圧分布を均一化させる枠部を備えたことを特徴とする請求項1及び3乃至8のいずれかに記載の超音波洗浄装置。
【請求項10】
前記溝または梁の枠部は、前記最外周枠内の複数の超音波振動子を前記区画枠により1個単位で囲む場合、格子状に囲む、または個々に間隔を有して独立させて囲む、或いは前記格子状の1行置きの行を片側にずらして列方向でジグザグの千鳥状に配列させて囲むいずれかにより形成されることを特徴とする請求項9に記載の超音波洗浄装置。
【請求項11】
前記溝または梁の枠部は、前記最外周枠内の前記区画枠のうち中央の中心部にある複数個を組合わせて外周を囲んだ中央枠を更に設定または形成し、この最外周枠と中央枠とにより前記超音波出力レベルを変える前記壁側及び中央部の2つのエリアに区分させることを特徴とする請求項9または10に記載の超音波洗浄装置。
【請求項12】
前記中心部の中央枠及び前記壁側の最外周枠は、他の区画枠に対して深さまたは高さと、幅とのいずれか一方或いは両方を変えて形成されることを特徴とする請求項11に記載の超音波洗浄装置。
【請求項13】
前記溝または梁の枠部は、前記最外周枠内の複数の超音波振動子を前記区画枠により複数個の単位で囲む場合、前記最外周枠内の複数の超音波振動子のうち前記区画枠が中央の複数個を組合わせて外周を囲むことで、この外側の前記最外周枠と、その中央の区画枠とにより、前記超音波出力レベルを変える前記壁側及び中央部の2つのエリアに区画できるように配設されることを特徴とする請求項9に記載の超音波洗浄装置。
【請求項14】
前記溝または梁の枠部は、前記区画枠から前記最外周枠までの間で更に囲む枠を備えて、前記最外周枠内で中心から段階的に外側に向かって複数のエリアに区画できるように配設されることを特徴とする請求項13に記載の超音波洗浄装置。
【請求項15】
前記複数の超音波振動子には、前記複数区画したエリアごとに異なる種々の超音波出力レベルを印加(入力)して励振させることを特徴とする請求項14に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−166028(P2009−166028A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282226(P2008−282226)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】