説明

距離計測方法及び露光装置

【課題】計測範囲が狭く計測距離が限られ、ホールド機能を備えた距離センサを用いて、高精細な画像露光を可能とする。
【解決手段】制御ユニットは、予めレーザー光源部を発光させて、基板材料を載置した移動テーブルの計測移動を開始し、距離計測のタイミングとなると、距離センサで計測される距離Dを読込み、計測終了タイミングで距離Dの読込みを終了する(ステップ100〜110)。この後、基板材料への走査露光が開始されたか否かを確認し、露光処理が開始されるとレーザー光源部の発光を停止し、距離センサでの計測値のホールドを解除し(ステップ112、114)、計測値がホールドされていることにより、有効レンジ外の基板材料に対して誤計測が生じるのを防止する。また、基板材料への走査露光が終了すると、レーザー発光部での発光を開始し、次の基板材料に対する距離計測が可能となるようにして(ステップ116、118)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板などの露光対象に対してプリントパターンなどの所定の画像を露光する露光装置に係り、計測可能レンジの狭い高精度の距離センサを用いて露光対象の距離を計測する距離計測方法及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線用基板などの基板材料を露光対象とする露光装置では、基板材料を露光ステージ上に載置して、配線パターンを画像とする画像データに基づいて、空間変調素子等によって光ビームを変調しながら走査し、基板材料に配線パターンを露光する。
【0003】
このような露光装置では、露光ステージ上に形成している多数の小穴へ負圧を供給することにより、基板材料の全面を露光ステージ上に密着させ、基板材料に浮きなどが生じて露光画像にゆがみなどが生じてしまうのを防止している。また、露光装置では、予め基板材料の所定位置に形成されている位置合わせ孔やマーク(アライメントマーク)などが所定位置に配置されるように位置決めされるようにしている。
【0004】
一方、高精細な画像露光を行うためには、光ビームの焦点を基板材料上の露光面に精度良く合わせる必要がある。ここから、露光装置では、露光ステージを移動することにより、基板材料と距離センサを移動させて、露光ステージ上の基板材料の露光面までの距離を計測し、この後に、露光ステージを露光ユニットに対して相対移動し、計測距離に基いて焦点調整を行いながら、画像露光を行うようにしている。
【0005】
一般に、非接触で焦点距離の計測を行う距離計測装置としては、レーザー光を計測対象へ照射し、計測対象からの反射光を受光し、受光量に応じた電気信号から、対象物までの距離を計測するものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0006】
ところで、高精度での距離計測が可能な距離センサは、計測可能な帯域であるレンジ幅が狭く、計測可能な距離も限られる。このような距離センサでは、計測される距離が計測可能な距離範囲(以下、計測レンジとする)にあると、高精度で距離の計測が可能となるが、計測レンジを外れると、計測レンジ内での最大値又は最小値の何れか一方の値を計測値として出力してしまう。このために、次の計測レンジを外れていると、この基板材料までの距離が近いか又は離れているかが不明となってしまう。
【0007】
ここから、高精度での距離計測が可能な距離センサとして、計測値を保持する機能(ホールド機能)を備えたものがある。この距離センサでは、基板材料が計測レンジ内にあると、その距離を高精度で計測可能であり、基板材料が徐々に接近して計測レンジを外れたときには、計測レンジの最小値が出力され、基板材料が徐々に離れて計測レンジを外れたときには、計測レンジの最大値が出力される。このために、基板材料までの距離が離れているのか近いのかの把握が可能となる。
【特許文献1】実開平5−34595号公報
【特許文献2】特開2001−249019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ホールド機能を備えた距離センサでは、基板材料の端部で、急激に変化して、計測レンジを外れると、直前の計測値を保持する。また、この距離センサでは、計測値を保持していると、次に、計測レンジを外れた距離の基板材料が通過しても、保持されている計測値が出力され続ける。このときの計測値が計測レンジ内の有効な計測値であるために、計測誤差となってしまう。
【0009】
これにより、高精度で焦点距離を調整した光ビームによる画像露光が困難となり、露光品質が低下してしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、計測レンジが狭く計測距離が限られ、かつ、ホールド機能を備えた距離センサを用いて露光対象までの距離を計測し、計測結果に基づいて焦点調整を行って画像露光を施すときに、高品質での画像露光を可能とする距離計測方法及び露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、支持体の表面に感光層が形成された露光対象を走査しながら光ビームを照射して露光するときに、露光対象までの距離に応じて焦点距離を調整する露光装置において、計測対象までの距離が予め設定された所定範囲であるときに、光源で発光されて計測対象へ照射されるレーザー光の反射光を受光部で受光することにより計測対象までの距離を計測可能であり、かつ、計測対象の端部で計測値が変化して前記計測範囲を外れたときに前記所定範囲で最前の計測値を保持すると共に、計測値が前記所定範囲を超えている間は、該計測値の保持を継続する保持手段が形成された距離センサを用い、前記露光対象を前記計測対象として前記焦点位置を調整するための距離を計測する距離計測方法であって、前記露光対象が前記距離センサの光照射位置を通過するのに先立って、前記光源からの発光を開始して、前記露光対象が前記距離センサの光照射位置を通過するときに、露光対象までの距離を計測し、次の前記露光対象に対する距離の計測に先立って、前記保持手段による前記計測値の保持解除を行う、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、例えば、計測可能な距離及び距離範囲が狭い距離センサを用いて、計測対象を露光対象として、露光対象を露光するときの焦点距離を調整するための距離を計測するときに、距離計測に先立って光源の発光を開始し、レーザー光の安定化を図る。これにより、露光対象までの距離が計測可能な範囲であれば、その距離を正確に計測することができる。
【0013】
また、計測位置が、露光対象から外れると、保持手段によって直前の計測値が保持される。また、保持手段による計測値の保持は、次の露光対象の計測を開始するまでの間に解除される。
【0014】
これにより、次の露光対象の距離計測を行うときに、該当露光対象の距離が計測可能範囲を外れていても、計測可能範囲の有効な距離として誤計測されてしまうのを確実に防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記距離センサが、前記光源の発光が停止されることにより前記保持手段による前記計測値の保持が解除されるときに、前記次の前記露光対象に対する距離の計測に先立って、前記光源の発光を停止する、ことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、光源部の発光を停止することにより保持手段が計測値の保持を解除する距離センサを用いるときに、距離計測に先立って光源部の発光を停止する。
【0017】
これにより、計測値の保持が解除されるので、次の露光対象の距離が計測可能範囲を外れていても、計測可能範囲の有効な距離として誤計測されてしまうのを確実に防止することができる。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記光源の発光停止による前記計測値の保持解除を、前記距離センサの計測結果に基づいた前記露光対象への露光中に行う、ことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、露光対象に対する露光中は、光源部の発光を停止する。これにより、露光対象に対する不必要が感光を抑えながら、誤計測の発生を確実に防止することができる。
【0020】
このような本発明が適用される露光装置は、露光対象へ露光光となる光ビームを照射可能な露光ヘッドと、前記露光ヘッドに設けられて前記光ビームの焦点位置の調整が可能な焦点調整手段と、レーザー光を発する光源、光源から発せられて前記露光対象で反射されたレーザー光を受光する受光部、受光部で受光された前記レーザー光から露光対象の表面までの距離を演算すると共に演算した距離が予め設定された有効範囲内であるときに演算された距離を出力する距離演算部及び、前記距離演算部で演算された距離が有効範囲を外れたときに直前の有効範囲内の距離が出力されるように保持する保持手段を含む距離センサと、前記露光ヘッド及び前記処理センサに対して前記露光対象を相対移動する移動手段と、前記移動手段によって前記露光対象が前記露光ヘッドに対向されながら移動されるときに、露光対象へ露光すべき画像の画像データに基づいて露光ヘッドから照射される前記光ビームを制御して露光処理を行う露光制御手段と、前記露光対象への前記露光処理に先立って前記移動手段によって前記距離センサに対向されながら移動される露光対象に対する距離を距離センサによって計測する距離計測制御手段と、前記露光対象に前記露光処理を行うときに、前記距離計測制御手段が前記距離センサによって計測した前記距離に基づいて前記焦点調整手段を作動して、前記光ビームの焦点位置が露光対象の表面となるように調整する調整制御手段と、前記距離計測手段が前記距離センサによる前記距離の計測が終了してから前記露光対象への画像露光が終了するまでの間に前記保持手段による前記距離センサが出力する前記距離の保持を解除する保持解除手段と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、露光対象への距離計測に先立って、前回の計測値の保持を解除するので、次の露光対象が、計測範囲を外れていても、誤計測が生じて、露光対象の形成される画像の品質が低下してしまうのを確実に防止することができるという優れた効果が得られる。
【0022】
また、本発明の露光装置では、露光ヘッドから露光光として照射される光ビームによって高精細な画像露光が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2には、本実施の形態に適用した露光装置10の概略構成が示されている。なお、本実施の形態では、露光装置10として複数の光ビームを用いて露光対象を露光する所謂マルチビーム露光装置を適用して説明するが、本発明の構成はこれに限るものではない。
【0024】
図1に示されるように、露光装置10は、所謂フラットベッド型が適用されており、長尺矩形形状の基台12を備え、この基台12が、複数本の脚部材12Aによって床面上に、上面が水平状態で支持される。
【0025】
基台12の上面には、一対のガイドレール14が長手方向に沿って取り付けられており、このガイドレール14に移動ステージ16が設けられている。図2に示されるように、基台12には、ステージ駆動部18が設けられている。これにより、図1に示される移動ステージ16は、基台12の長手方向に沿って往復移動可能となっている。このときに、移動ステージ16は、例えば、40mm/sec程度の速度などの予め設定されている一定速度で往復移動される。
【0026】
本実施の形態の露光装置10は、例えば、プリント基板(PCB)、カラーの液晶ディスプレイ(LCD)パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)などで、基板やガラスプレートなどの表面に感光性エポキシ樹脂などのフォトレジストを塗布したもの、フォトレジスト樹脂やドライフィルムをラミネートしたものなどの各種の感光材料を露光対象として、これらの感光材料への露光に適用される。以下では、露光対象とされる感光材料を、基板部材の表面に感光層が形成された基板材料20として説明する。なお、図1では、移動ステージ16の移動方向を矢印Y方向で示し、移動ステージ16の移動方向と直交するである基台12の幅方向を矢印X方向として示す。
【0027】
露光装置10では、基台12の長手方向の一端側が、移動ステージ16の原位置(例えば、図1の紙面奥側に二点鎖線で示す位置)として設定されている。露光装置10には、移動ステージ16の原位置を挟んで矢印X方向の一方に、搬入搬送手段22が設けられ、他方に搬出搬送手段24が設けられている。基板材料20は、搬入搬送手段22によって搬送され、原位置に待機されている移動ステージ16上の所定位置へ載置され、また、この原位置で移動ステージ16上から排出される。
【0028】
これにより、露光装置10では、搬入搬送手段22から連続して送り込まれる基板材料20に対して、順に露光処理を施して排出可能となっている。なお、搬入搬送手段22及び搬出搬送手段24は、コンベアなどの任意の構成を適用することができる。また、露光装置10では、少なくとも基台12上が遮光されており、これにより、移動ステージ16に載置されて移動される基板材料20が不必要に感光されてしまうのを防止されている。
【0029】
一方、図1及び図2に示されるように、露光装置10は、光源ユニット26、露光ヘッドユニット28及び、露光装置10の作動を制御する制御ユニット30を備えている。図1に示されるように、基台12には、長手方向の中間部に、基台12を幅方向に跨ぐように配置された門型のゲート32が取付けられており、このゲート32に露光ヘッドユニット28が取り付けられている。これにより、露光装置10では、移動ステージ16の矢印Y方向に沿った移動によって、基板材料20が露光ヘッドユニット28の下方を通過される。
【0030】
露光ヘッドユニット28には、それぞれから光ビームが射出される多数の露光ヘッド34が、例えばマトリックス状に配置されている。また、光源ユニット26と露光ヘッドユニット28との間には、例えば、バンドル状の光ファイバアレイ36が設けられ、光ファイバアレイ36の一端側が、露光ヘッドユニット28の露光ヘッド34に連結され、他端側が光源ユニット26に連結されている。
【0031】
光源ユニット26は、所定の波長域(例えば、紫外波長域)の光を含む光ビームを発する多数の光源(図示省略)が設けられている。光ファイバアレイ36は、それぞれが多数本の光ファイバを束ねて形成されており、光源ユニット26の各光源から発せられる光ビームが、光ファイバアレイ36の光ファイバに入射される。これにより、露光ヘッドユニット28には、光ファイバアレイ36によって多数条の光ビームが導入される。基板材料20は、基台12上を移動されているときに、露光ヘッド34に導入された光ビームが照射されることにより走査露光される。
【0032】
制御ユニット30は、例えば、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続された一般的構成のマイクロコンピュータ、ディスプレイなどの表示デバイス、キーボードなどの入力デバイスなどを含む各種の入出力デバイス、各種のデータの入出力を行う入出力インターフェイス、各種のデバイスを駆動する駆動回路などを含んでいる。
【0033】
露光装置10では、制御ユニット30によって、基台12上の移動ステージ16の移動、光源ユニット26、露光ヘッドユニット28(各露光ヘッド34)等の作動が制御される。このときに、制御ユニット30では、基板材料20へ露光すべき画像(例えば、プリントパターンなど)の画像データから、光ビームを走査するときの変調信号を生成して、露光ヘッドユニット28へ出力し、各露光ヘッド34から基板材料20へ照射する光ビームの偏向を制御する。これにより、移動ステージ16上の基板材料20が、画像データに応じて露光される。
【0034】
一方、基台12のゲート32には、露光ヘッドユニット28と共に距離センサ40が設けられている。この距離センサ40は、例えば、基台12の幅方向に沿って対で配置され、移動ステージ16の移動によって基板材料20に対して相対移動される。なお、本実施の形態に適用している露光装置10では、一例として、露光ヘッドユニット28が移動ステージ16の原位置側に配置され、距離センサ40が原位置と反対側に配置されている。また、本実施の形態では、一例として2台の距離センサ40を設けているが、これに限らず、基台12の幅方向の中間部に1台の距離センサ40を設けた構成であっても良く、また、基台12の幅方向に沿って3台以上の距離センサ40を配置した構成であってもよい。
【0035】
図1及び図2に示されるように、距離センサ40は、制御ユニット30に接続されている。露光装置10では、基板材料20を載置した移動ステージ16が、原位置から矢印Y方向に沿って移動される。このときに制御ユニット30は、距離センサ40によって基板材料20の距離を計測する。また、制御ユニット30は、この計測結果に基づいて、露光ヘッド34から照射する光ビームの焦点調整を行う。これにより、制御ユニット30は、各露光ヘッド34か照射される光ビームの焦点が基板材料20の露光面と一致させて、高精細の画像が露光されるようにしている。
【0036】
なお、制御ユニット30は、移動ステージ16に対する基板材料20の位置、すなわち、露光量域を判定し、判定した露光領域へ光ビームが走査されるようにアライメント調整を行う。このようなアライメント調整は、例えば基板材料20にアライメント用の基準位置として、アライメントマークや基準孔を形成するか又は、角部などの複数位置が設定し(図示省略)、制御ユニット30は、複数の基準位置の各座標を算出し、露光領域の変位データを作成し、この変位データに基づいて画像データを補正することにより、走査移動が行われるときに、基板材料20上の所定の領域に適正な画像露光が施されるようにしている。なお、アライメント調整は、これに限らず、公知の任意の手法を適用することができる。また、以下では、移動ステージ16が原位置から矢印Ym方向に沿った移動を計測移動とし、移動ステージ16が矢印Ye方向に沿って原位置へ戻る移動を走査移動とする。
【0037】
図3に示されるように、露光ヘッドユニット28には、多数の露光ヘッド34がマトリックス状に配置されている。露光装置10では、基板材料20の矢印X方向に沿った全域に露光ヘッド34が対向されるように、露光ヘッドユニット28に露光ヘッド34が設けられている。各露光ヘッド34は、光ビームの照射可能領域44Aが矩形状となっており、この照射可能領域44Aの短辺が、矢印Y方向に対して所定の角度で傾斜されている。
【0038】
また、露光ヘッドユニット28では、奇数列の露光ヘッド34の間に、偶数列の露光ヘッド32が配置され、矢印X方向に沿って隣接する露光ヘッド34の間では、矢印X方向に沿う照射可能領域44Aの端部が互いに重なりあうようになっている。これにより、矢印X方向に隣接する露光ヘッド34による光ビームの照射可能ライン44Bの端部が互いに重なり合い、露光装置10では、1回の走査移動によって基板材料20の露光面の全域へ光ビームを照射可能となっている。
【0039】
図4(A)及び図4(B)には、露光ヘッドユニット28に設けられる露光ヘッド34の一例を示している。なお、図4(A)は照射可能領域44Aの短辺方向に沿った一端側(長辺の一方側)から見た概略図とし、図4(B)は照射可能領域44Aの長辺方向に沿った一端側(短辺の一方側)から見た概略図としている。
【0040】
露光ヘッド34は、光ビームを画素ごとに変調する空間光変調素子として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(以下、DMD46とする)を備えている。このDMD46は、それぞれが一つの画素に対応する図示しない多数のマイクロミラーを備え、光源ユニット26から光ファイバアレイ36の各光ファイバによって案内された多数条の光ビームのそれぞれが、DMD46の各マイクロミラーに照射される。
【0041】
DMD46では、制御ユニット30から入力される画素ごとの変調信号に基づいて、各画素に対応するマイクロミラーの傾斜角が切替えられるように駆動される。これにより、露光ヘッド34では、マイクロミラーに照射された光ビームが偏向される。このときに、露光すべき画素に対応するマイクロミラーが光りビームを基板材料20へ向けて反射し、露光すべきでない画素に対応するマイクロミラーが、図示しない光吸収部材へ向けて光ビームを反射する。なお、このようなDMD46は、公知の構成を適用することができる。
【0042】
露光ヘッド34には、光ファイバアレイ36の各光ファイバが短辺と直交する方向に配列されて連結されている。また、露光ヘッド34は、光ファイバアレイ36の光ビーム射出端とDMD46の間に、光ファイバから射出される光ビームを補正して、DMD46上に集光するレンズ系48、レンズ系48を透過した光ビームを、DMD46へ向けて反射する反射鏡50が配置されている。
【0043】
レンズ系48は、例えば、光ファイバアレイ36から射出される多数条の光ビームを平行光とする一対の組み合せレンズ48A、平行光とされた各光ビームの光量分布が均一となるように補正する一対の組み合せレンズ48B、補正された各光ビームをDMD46上に集光する集光レンズ48Cを含んで形成されている。なお、レンズ系48では、組み合せレンズ48Bが、光ビームの配列方向に対して、レンズの光軸に近い光ビームの光束を広げると共に、レンズの光軸から離れた光ビームの光束を縮め、配列方向と直交する方向に対しては、光ビームをそのまま透過させることにより、光量分布が均一化されるように補正している。
【0044】
露光ヘッド34には、DMD46の光ビーム反射側に、DMD46で反射された光ビームを基板材料20上の露光面に結像するレンズ系52、54及び、レンズ系52、54を透過した光ビームの焦点(焦点距離)を調整するオートフォーカスユニット56が順に配置されている。なお、露光ヘッド34では、DMD46と基板材料20の露光面とが共役な関係となるようにレンズ系52、54が配置されている。
【0045】
制御ユニット30は、距離センサ40によって検出される距離に基いて、オートフォーカスユニット56を制御することにより、露光ヘッド34で各光ビームの焦点が基板材料20の露光面と一致するようにしている(フォーカス制御)。
【0046】
本実施の形態で一例として適用したオートフォーカスユニット56は、透明ガラス材料によって楔状(台形柱状)に形成された一対のペア楔ガラス58、60を備えている。ペア楔ガラス58、60は所定の屈折率(例えば、屈折率nがn=1.53)に設定され、互いに反転した向きで光ビームの光軸に沿って隣接配置されている。
【0047】
DMD46側に配置されているペア楔ガラス58は、両側面に対して直角に形成された側の面が光入射面58Aとして、DMD46側へ向けられている。ペア楔ガラス58は、光入射面58Aと反対側の面が光軸に対して傾斜されており、この面が、光出射面58Bとしてペア楔ガラス60へ向けられている。
【0048】
基板材料20側に配置されるペア楔ガラス60は、ペア楔ガラス58と同様に、一方の面が両側面に対して直角に形成され、他方の面が側面に対して傾斜されており、ペア楔ガラス60は、傾斜された面が、光入射面60Aとして、ペア楔ガラス58の光出射面58Bに対向され、直角に形成された面が、光出射面60Bとして基板材料20に対向されるように配置されている。また、オートフォーカスユニット56では、このペア楔ガラス58の光出射面58Bとペア楔ガラス60の光入射面60Aとが、所定の隙間(例えば、0.1mm)で、かつ、互いに平行となるように取付けられている。
【0049】
オートフォーカスユニット56では、図示しないアクチュエータ(例えば、フォーカスモータ)の作動によって、ペア楔ガラス58、60が、光出射面58Bと光入射面60Aの平行が保たれた状態で、光軸に対して直交する方向へ相対移動される。これにより、光ビームがペア楔ガラス58、60を透過するときの透過距離が変化し、光ビームの焦点距離FDが変化する。
【0050】
露光装置10では、距離センサ40に対する各露光ヘッド34の相対位置が予め決められているか、計測されており、これにより、制御ユニット30では、距離センサ40の検出結果から、各露光ヘッド34と対向される基板材料20の表面(露光面)との距離が演算できるようになっている。すなわち、制御ユニット30では、距離センサ40によって検出される基板材料20の露光面までの距離Dに基いて、オートフォーカスユニット56のアクチュエータを制御することにより、露光ヘッド34の焦点距離FDを制御している。このときに、露光装置10では、一対のペア楔ガラス58、60を備えたオートフォーカスユニット56を用いることにより、焦点距離FDを高精度で制御可能となっている。なお、焦点調整手段としては、オートフォーカスユニット56に限らず、任意の構成を適用することができる。
【0051】
ところで、露光装置10では、基板材料20に高精細な画像露光を行うためには、高精度で焦点距離FDを調整可能な機構に加えて、基板材料20の露光面までの距離を高精度で計測する必要がある。ここから、露光装置10では、レーザー光を用いる距離センサ40を用いている。
【0052】
図5に示されるように、本実施の形態に適用した距離センサ40は、レーザー光源部62、受光部64及び、距離演算部66を含んでいる。この距離センサ40では、レーザー光源部62が駆動されることにより発光されて、所定波長のレーザー光が基板材料20上へ照射される。なお、本実施の形態では、一例としてレーザー光源部62が、可視光を含むレーザー光を発光するようになっている。
【0053】
受光部64は、例えば、CCDセンサを備えており、基板材料20上に照射されたレーザー光の反射光を受光し、受光した光量に応じた電気信号を距離演算部66へ出力する。距離演算部66では、受光部64から入力される電気信号に基づいて、基板材料20の上面までの距離Dを演算する。
【0054】
距離センサ40は、レーザー光源部62及び距離演算部66が、制御ユニット30に接続されており、制御ユニット30にレーザー光源部62の発光/停止が制御されると共に、距離演算部66で演算された距離Dが制御ユニット30に読み込まれる。
【0055】
ここで、図6に示されるように、距離センサ40では、予め基準距離(以下、距離Dとする)が設定されており、実際の距離Drの検出範囲が、距離Dを中心として、±αの範囲((D−α)≦D≦(D+α))となっている。
【0056】
これにより、実際の距離Drが(D−α)≦Dr≦(D+α)であると、距離センサ40から出力される距離Dは、距離Drに一致する(D=Dr、(D−α)≦D≦(D+α))。すなわち、距離センサ40では、計測可能な距離Drの範囲であるレンジ幅が2・αで、計測レンジ(計測可能範囲)が(D−α)≦Dr≦(D+α)となっている。
【0057】
ここで、露光装置10では、例えば、距離Dが、D=25mmで、αが、α=1.0〜1.5mm(一例として1.5mm)となる距離センサ40を用い、(D−α)≦Dr≦(D+α)の範囲では、サブミクロンオーダーで高精度の距離Dr(距離D)の計測が可能となっている(実際の有効範囲は、(D−α)<Dr<(D+α))。
【0058】
図2に示されるように、露光装置10では、基台12にステージ高さ調整部68が設けられている。なお、このステージ高さ調整部68は、移動ステージ16を、上面が水平状態で昇降する任意の構成を適用でき、図1での図示及び詳細な機構の説明を省略する。
【0059】
図5に示されるように、露光装置10では、露光処理を施す基板材料20の基準となる板厚tに合わせて、距離センサ40によって検出される移動ステージ16上に載置した基板材料20の上面までの距離Drが距離Dとなるように、移動ステージ16の高さ調整(距離センサ40と移動ステージ16の距離Dsの調整)が行われている。
【0060】
一方、距離Drを高精度で計測可能な距離センサでは、例えば、基板材料20の端部で、計測位置が基板材料20上から外れて距離Drが急激に増加したり、また、距離Drが急激に減少するなどして、計測レンジを外れると、計測レンジ内の最大値(D+α)又は、最小値(D−α)の何れか一方の値が計測値として出力される。
【0061】
ここから、図5に示されるように、露光装置10に設けている距離センサ40には、ホールド設定部70が形成されている。このホールド設定部70は、例えば、ファームウェアとして距離センサ40内の図示しない記憶素子に書込まれるなどして形成されている。このホールド設定部70は、距離センサ40によって検出される距離Drが急激に変化し、かつ、計測レンジを外れたときに、距離演算部66から出力される距離Dが、計測レンジ内の直前の計測値となるように保持する(ホールド機能)。
【0062】
これにより、図6に示されるように、距離センサ40では、計測対象が傾斜しているときに、距離Drが大きい間は、距離Dが最大値(D=D+α)となるが、距離Drが計測レンジ内に入ると、距離D=Drが得られる(図6に実線で示す)。また、距離センサ40では、距離Drが小さくなって計測レンジを外れると、距離Dが最小値(D=D−α)となる(図6に破線で示す)。
【0063】
また、距離Drが、計測レンジ外から徐々に大きくなるときに、ホールド設定部70によって距離センサ40から出力される距離Dが最大値に保持されていても、距離Drが計測レンジ内となると、距離センサ40から出力される距離Dは、D=Drとなる(図6に実線で示す)。
【0064】
これにより、露光装置10では、基板材料20に対する露光処理を繰り返しても、各基板材料20の上面の距離Drが、(D−α)<Dr<(D+α)の範囲(以下、有効レンジとする)で、それぞれの基板材料20の距離Drを正確に計測することができる。
【0065】
一方、距離センサ40では、ホールド機能を備えていることにより、距離Dがホールドされているときに、距離Drが計測レンジ内となっている基板材料20が通過することにより、適正な距離Dを出力するが、距離Drが計測レンジ外となっている基板材料20が通過したときには、ホールドされている距離Dが継続して出力される。このときに距離センサ40から出力される距離Dは、計測レンジ内であるために、制御ユニット30では、この基板材料20の距離Drを誤認識してしまうことになる。
【0066】
ここで、距離センサ40に設けているホールド設定部70では、レーザー光源部62の発光を停止し、受光部64に反射光が受光されなくなると、ホールドしている計測値(距離D)の保持が解除される。また、距離センサ40では、ホールド設定部70での計測値の保持が解除されると、有効レンジを外れた、計測レンジ内の最大値(D+α)を距離Dとして出力する。
【0067】
制御ユニット30では、露光装置10の動作が開始されると、基板材料20への走査露光に先立って、レーザー光源部62での発光を開始する。これにより、基板材料20の距離Drを計測するときに、レーザー光が安定して、距離Drに応じた正確な距離Dが、距離センサ40から出力されるようにしている。
【0068】
また、制御ユニット30では、距離センサ40による距離Drの計測が終了すると、次ぎの基板材料20の距離Drを計測するのに先立って、レーザー光源部62の発光を停止する。これにより、次の基板材料20の距離Drを計測するときに、ホールド設定部70による計測値の保持が解除されるようにしている。
【0069】
ここで、本実施の形態では、露光ヘッド34を用いた基板材料20への走査露光中に、レーザー光源部62の発光を停止するようにしている。これにより、基板材料20への露光中に、レーザー光源部62から発せられるレーザー光が、基板材料20の表面に照射されてしまうのを防止しながら、ホールド解除が行われるようにしている。
【0070】
すなわち、距離センサ40では、基板材料20の距離Dの計測に先立って、ホールド解除がなされることにより、距離Drが計測レンジ外となっている基板材料20が通過したときに、距離Dが有効レンジ内の値となることがない。したがって、制御ユニット30では、距離センサ40を通過した基板材料20の距離Dが計測レンジ外であることを確実に認識することができる。
【0071】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0072】
露光装置10に設けられている制御ユニット30では、基板材料20に形成する画像(露光パターン)に応じた画像データが、制御ユニット30に入力されると、この画像データを、例えば、二値化データに変換して、図示しないフレームメモリに画像データを格納する。また、制御ユニット30では、基板材料20の露光開始に先立って、距離センサ40のレーザー光源部62での発光を開始する。
【0073】
一方、図7(A)に示されるように、露光装置10では、移動ステージ16が、原位置に待機されており、この移動ステージ16上に、搬入搬送手段22によって基板材料20が送り込まれる。
【0074】
露光装置10では、移動ステージ16上に基板材料20が載置されると、この基板材料20を移動ステージ16上に吸着保持する。この後、図7(B)及び図8に示されるように、移動ステージ16を計測方向(矢印Ym方向)へ移動する。これにより、移動ステージ16上に載置されている基板材料20が、距離センサ40に対向する位置を通過する。制御ユニット30では、このときに、距離センサ40によって、基板材料20の上面(露光面)までの距離Drを計測する。
【0075】
露光装置10では、移動ステージ16の計測移動が終了すると(図7(C)参照)、露光移動を開始する。この露光移動は、図7(D)に示されるように、移動ステージ16を矢印Ye方向へ移動する。制御ユニット30では、フレームメモリに格納した画像データに基づいて、画素ごとの変調信号を生成し、生成した変調信号を、この移動ステージ16の露光移動に基づいたタイミングで露光ヘッドユニット28の各露光ヘッド34へ出力する。
【0076】
このときに、制御ユニット30では、距離センサ40によって計測された距離Dに基いて、各露光ヘッド34のオートフォーカスユニット56を制御することにより、焦点調整が行われる。これにより、露光装置10では、基板材料20上に適正なピントで画像露光を施すことができる。
【0077】
また、露光装置10では、基板材料20への露光が終了して、移動ステージ16が原位置に戻ると(図7(E)参照)、排出搬送手段24によって基板材料20を排出し、次の基板材料20が移動ステージ16上に載置されると(図7(A)参照)、この基板材料20に対する画像露光を開始する。
【0078】
ところで、基板材料20に高精細な露光画像を形成するためには、正確な焦点調整が必要であり、このためには、距離センサ40によって距離Drを正確に計測する必要がある。このような距離センサ40は、レンジ幅が狭く、計測レンジが限られていると共に、ホールド機能を備えることにより、距離Drが、計測レンジを外れた基板材料20に対しては、適正な距離Dを出力することが困難となっている。
ここで、露光装置10に設けている制御ユニット30は、基板材料20の露光処理に合わせて距離センサ40を制御しており、図8から図10を参照しながら、露光装置10でこの距離センサ40を用いるときの制御を説明する。
【0079】
図8には、制御ユニット30で実行される距離センサ40の制御(距離計測制御)の一例を示している。このフローチャートは、例えば、露光装置10の電源スイッチがオンされて基板材料20への走査露光が可能となるか、又は、走査露光を行うための装置の立ち上げが開始されると実行され、露光装置10の電源スイッチがオフされるか、基板材料20への走査露光の終了又は中断(例えば、露光装置10のスタンバイ状態)されることにより終了する。
【0080】
図8のフローチャートでは、最初のステップ100で、距離センサ40の作動を開始する。このときにレーザー光源部62の発光を開始する(ステップ102)。すなわち、図9に示されるように、距離センサ40に基板材料20が対向されるのに先立って、距離センサ40がオンされると共に、レーザー光源部62の発光が開始される。
【0081】
また、距離センサ40は、オンされることにより、距離演算部66から距離Dが出力される。このときに、図10(A)に示されるように、距離センサ40では、計測値がホールドされておらず、また、基板材料20も対向していないので、距離Dとして、最大値である距離(D+α)が出力される。
【0082】
制御ユニット30は、基板材料20が移動ステージ16上に載置されて保持されると、移動ステージ16の計測方向への移動を開始する。これにより、距離センサ40には、移動ステージ16の上面、移動ステージ16上の基板材料20の上面が順に対向される。
【0083】
ここで、図8のフローチャートでは、ステップ104で距離センサ40によって距離Dを計測するタイミングとなったか否かを確認し、距離センサ40に基板材料20の先端が対向されるタイミングで、ステップ104で肯定判定してステップ106へ移行し、距離センサ40から出力される距離Dの読込みが開始される。
【0084】
図9及び図10(A)に示されるように、距離センサ40は、移動ステージ16の上面までの距離Dsが、計測レンジを外れている。これにより、距離センサ40は、移動ステージ16に対する相対位置が、位置Y、Yを過ぎても、距離Dとして、距離(D+α)を出力する。
【0085】
この後、移動ステージ16に対する距離センサ40の相対位置が位置Yに達し、かつ、距離Drが有効レンジ内であると、距離センサ40から出力される距離Dは、距離Dr(例えば、距離D、(D−α)<D<(D+α))となる。
【0086】
また、基板材料20が距離センサ40に対向されている間は、距離センサ40が、対向される基板材料20の表面までの距離Drに応じた距離D(D=D)が出力され、この距離Dが、制御ユニット30に読み込まれる。
【0087】
図8のフローチャートでは、ステップ108で基板材料20が、距離センサ40に対向する位置を過ぎて、距離計測を終了するタイミングとなったか否かを確認し、基板材料20の後端が距離センサ40に対向する位置(例えば、図9の位置Y)を通過すると、ステップ108で肯定判定してステップ110へ移行し、距離Dの読込みを終了する。なお、制御ユニット30では、距離Dの読込みを終了すると、読み込んだ距離Dに基いて、露光ヘッド34の焦点距離FDの調整用のデータを作成する。
【0088】
図9及び図10(A)に示されるように、距離センサ40では、移動ステージ16に対する相対位置が位置Yに達するまでは、距離Drが計測レンジ内であれば、距離Drが距離Dとして出力される。
【0089】
これに対して、移動ステージ16に対する距離センサ40の相対位置が、基板材料20の端部に対応する位置Yを過ぎると、距離センサ40によって計測される距離Drが急激に大きくなる(距離Ds、Ds>(D+α))。これにより、距離センサ40から出力される距離D(計測値)がホールドされる。距離センサ40では、計測値がホールドされると、出力される距離Dが有効レンジ内となっている。すなわち、位置Yに対応する基板材料20の距離DrがDであると、距離センサ40の出力が、この距離Dに保持される。
【0090】
一方、図8のフローチャートでは、ステップ112で、基板材料20への露光が開始されたか否かを確認する。制御ユニット30は、計測移動の終了した移動ステージ16が、走査移動を開始することにより、基板材料20が露光ヘッドユニット28に対して所定位置に達すると、光源ユニット26から発せられる光ビームが露光ヘッドユニット28の各露光ヘッド34へ送出すると共に、画像データに基づいて生成した変調信号を各露光ヘッド34へ出力する。
【0091】
これにより、基板材料20への走査露光が開始される。また、制御ユニット30は、基板材料20が露光ヘッドユニット28に対向する位置を過ぎると、基板材料20への走査露光を終了する。
【0092】
ここで、基板材料20への走査露光が開始されると、ステップ112で肯定判定されてステップ114へ移行する。このステップ114では、距離センサ40のレーザー光源部62をオフする。すなわち、レーザー光源部62の発光を停止する。
【0093】
また、ステップ116では、走査露光が終了したか否かを確認し、走査露光が終了すると、ステップ116で肯定判定してステップ118へ移行する。このステップ118では、次ぎの基板材料20に対する距離計測に先立って、レーザー光源部62の発光を再開する。
【0094】
なお、ステップ120では、露光装置10での露光処理(走査露光)が継続されるか否かを確認し、継続されるときには、ステップ120で肯定判定してステップ104へ移行し、露光処理が終了されるときには、ステップ120で否定判定してステップ122へ移行し、距離センサ40をオフ(レーザー光源部62もオフ)する。また、ここでは、レーザー光源部62の発光を開始した後に、露光処理が終了されるか否かを確認したが、レーザー光源部62の発光開始に先立って、露光処理が継続されるか否かを確認するものであっても良い。
【0095】
図10(A)に示されるように、距離センサ40は、レーザー光源部62が発光停止(オフ)すると、レーザー光が受光部64で受光されなくなり、ホールド設定部70が、距離Dのホールドを解除(オフ)する。また、距離センサ40は、走査露光が終了すると、レーザー光源部62の発光が開始される(オン)。
【0096】
距離センサ40では、ホールド解除されることにより、距離Dの保持が解除される。また、レーザー光源部62が発光を停止していることにより、距離演算部66からは、距離Dとして計測レンジ内の最大値(D+α)が出力される。さらに、距離センサ40は、レーザー光源部62の発光が開始されても、ホールド解除状態が継続される。
【0097】
これにより、次に基板材料20が距離センサ40に対向される位置に達し、この基板材料20の距離Drが距離センサ40の有効レンジ内(例えばD、(D−α)<D<(D+α))であると、距離センサ40は、距離Drを距離D(D=D)として出力する。
【0098】
このときに、レーザー光源部62の発光停止が、露光中の比較的短い時間であり、また、次の基板材料20に対する距離計測を開始するまでの時間が十分にあるので、距離センサ40では、レーザー光が安定し、正確な距離計測が可能となっている。
【0099】
一方、図10(B)に示されるように、距離センサ40がホールド解除されていないと、図10(B)に二点鎖線で示すように、有効レンジ内の距離Dが継続して出力される。これにより、次に距離計測を行う基板材料20の距離Drが、有効レンジを外れていても、有効レンジ内の距離D(ここでは、D=D)が制御ユニット30に読み込まれる。制御ユニット30は、読み込んだ距離Dが有効レンジ内となっていることにより、この距離Dに基いて光ビームの焦点調整を行う。
【0100】
したがって、露光ヘッド34から基板材料20に照射される光ビームに所謂ピントずれが生じ、基板材料20に形成される露光画像の品質が低下してしまう。
【0101】
これに対して、図10(A)に示されるように、予め距離センサ40のホールドオフを行うことにより、次に距離計測を行う基板材料20の距離Dが有効レンジを外れていると、図10(A)に二点鎖線で示すように、この基板材料20が通過しても、距離センサ40は、有効レンジを外れた距離D(ここでは、D=D+α)を出力する。
【0102】
これにより、制御ユニット30では、基板材料20が通過しても、距離センサ40から有効レンジ内の距離Dが出力されないことから、基板材料20の距離Drが距離センサ40の有効レンジから外れていることを的確に認識することができる。したがって、基板材料20に光ビームのピントずれが生じた画像が露光されてしまうのを確実に防止することができる。
【0103】
なお、露光装置10は、ステージ高さ調整部68を備えているので、制御ユニット30は、適正な距離Drが検出されなかったときに、ステージ高さ調整部68によって移動ステージ16の高さを変えて、再度、基板材料20の距離計測を行い、有効レンジ内の距離Dが得られたときに、このときの距離Dに基いて基板材料20への画像露光を行うものであっても良い。
【0104】
また、本実施の形態では、基板材料20に対して露光処理を行うときに、レーザー光源部62の発光停止を行うようにしたが、レーザー光源部62の発光停止のタイミング及び時間は、これに限るものではない。
【0105】
レーザー光源部62の発光停止タイミングは、基板材料20の距離計測が終了し、次の基板材料20の距離計測を開始する間であれば、任意のタイミングを適用することができる。このときに、レーザー光源部62が発光を開始してから、基板材料20の距離計測が行われるまでの間で、レーザー光が安定されるタイミング及び時間であることが好ましく、また、基板材料20に対する距離計測が終了したことが明確に判断できる時点から、該当基板材料20の露光が終了するまでの間で、レーザー光源部62の発光停止(ホールド設定部70でのホールド解除)が行われることがより好ましい。
【0106】
一方、本実施の形態では、レーザー光源部62の発光停止を行うことにより、距離Dのホールドを解除する距離センサ40を用いたが、ホールド解除は、これに限るものではない。
【0107】
例えば、距離センサは、ホールド設定部70が制御ユニット30に接続され、制御ユニット30のホールド解除信号によって、ホールド設定部70が距離Dのホールドを解除可能な構成であっても良い。このときには、基板材料20の距離計測が終了してから、次の基板材料20に対する距離計測を開始するまでの間の任意のタイミングで、制御ユニット30がホールド解除信号を、距離センサのホールド設定部70に入力すれば良い。これにより、レーザー光源部62の発光停止を行うことなく、基板材料20に対する距離Drの誤検出が生じるのを防止することができる。
【0108】
また、距離センサ40が、受光部64でのレーザー光の受光が停止することにより、ホールド設定部70が、計測値のホールドを解除する構成であるときは、レーザー光源部62の発光停止を行わずに、シャッタ機構を設けて、レーザー光源部62から発光されるレーザー光を遮るか、受光部64に受光されるレーザー光を遮る構成を適用することができる。
【0109】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明が適用される距離センサの構成を限定するものではない。本発明は、高精度での距離計測を可能とするために、レンジ幅が狭く計測レンジが限られていると共に、計測距離が急激に変化したときに直前の有効レンジ内の距離を保持する保持手段を備えた任意の構成の距離センサに適用することができる。
【0110】
また、以上説明した本実施の形態では、露光装置10を例に説明したが、本発明は、これに限らず、高精度での距離計測を可能とするために、レンジ幅が狭く計測レンジが限られていると共に、計測距離が急激に変化したときに直前の有効レンジ内の距離を保持する保持手段を備えた距離センサを用い、距離センサと露光対象との相対移動によって露光対象の距離計測を行う任意の構成の露光装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施の形態に適用した露光装置の概略構成図である。
【図2】露光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】基板材料に対する露光ヘッドの配列の一例を示す要部の概略斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は露光ヘッドの光学系の一例を示す概略図である。
【図5】本実施の形態に適用した距離センサの概略構成図である。
【図6】実際の距離に対する距離センサが出力される距離を示す線図である。
【図7】(A)〜(B)は、移動ステージの移動を示す概略図であり、(A)は移動開始前の原位置、(B)は距離計測時、(C)は距離計測終了時、(D)は走査露光時、(E)は走査露光の終了時を示している。
【図8】距離センサを用いた計測制御の一例を示し流れ図である。
【図9】距離計測時の移動ステージ及び基板材料に対する距離センサの相対位置を示す概略図である。
【図10】(A)は、本実施の形態に係る距離センサの制御を示すタイミングチャート、(B)はホールド解除を行われないときの一例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0112】
10 露光装置
12 基台
16 移動ステージ(移動手段)
18 ステージ駆動部(移動手段)
20 基板材料(露光対象、計測対象)
26 光源ユニット
28 露光ヘッドユニット(露光制御手段、距離計測制御手段、調整制御手段、保持解除手段)
30 制御ユニット
34 露光ヘッド
40 距離センサ
56 オートフォーカスユニット(焦点調整手段)
62 レーザー光源部
64 受光部
66 距離演算部(保持手段)
70 ホールド設定部(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の表面に感光層が形成された露光対象を走査しながら光ビームを照射して露光するときに、露光対象までの距離に応じて焦点距離を調整する露光装置において、
計測対象までの距離が予め設定された所定範囲であるときに、光源で発光されて計測対象へ照射されるレーザー光の反射光を受光部で受光することにより計測対象までの距離を計測可能であり、かつ、計測対象の端部で計測値が変化して前記計測範囲を外れたときに前記所定範囲で最前の計測値を保持すると共に、計測値が前記所定範囲を超えている間は、該計測値の保持を継続する保持手段が形成された距離センサを用い、
前記露光対象を前記計測対象として前記焦点位置を調整するための距離を計測する距離計測方法であって、
前記露光対象が前記距離センサの光照射位置を通過するのに先立って、前記光源からの発光を開始して、
前記露光対象が前記距離センサの光照射位置を通過するときに、露光対象までの距離を計測し、
次の前記露光対象に対する距離の計測に先立って、前記保持手段による前記計測値の保持解除を行う、
ことを特徴とする距離計測方法。
【請求項2】
前記距離センサが、前記光源の発光が停止されることにより前記保持手段による前記計測値の保持が解除されるときに、前記次の前記露光対象に対する距離の計測に先立って、前記光源の発光を停止する、ことを特徴とする請求項1に記載の距離計測方法。
【請求項3】
前記光源の発光停止による前記計測値の保持解除を、前記距離センサの計測結果に基づいた前記露光対象への露光中に行う、ことを特徴とする請求項2に記載の距離計測方法。
【請求項4】
露光対象へ露光光となる光ビームを照射可能な露光ヘッドと、
前記露光ヘッドに設けられて前記光ビームの焦点位置の調整が可能な焦点調整手段と、
レーザー光を発する光源、光源から発せられて前記露光対象で反射されたレーザー光を受光する受光部、受光部で受光された前記レーザー光から露光対象の表面までの距離を演算すると共に演算した距離が予め設定された有効範囲内であるときに演算された距離を出力する距離演算部及び、前記距離演算部で演算された距離が有効範囲を外れたときに直前の有効範囲内の距離が出力されるように保持する保持手段を含む距離センサと、
前記露光ヘッド及び前記処理センサに対して前記露光対象を相対移動する移動手段と、
前記移動手段によって前記露光対象が前記露光ヘッドに対向されながら移動されるときに、露光対象へ露光すべき画像の画像データに基づいて露光ヘッドから照射される前記光ビームを制御して露光処理を行う露光制御手段と、
前記露光対象への前記露光処理に先立って前記移動手段によって前記距離センサに対向されながら移動される露光対象に対する距離を距離センサによって計測する距離計測制御手段と、
前記露光対象に前記露光処理を行うときに、前記距離計測制御手段が前記距離センサによって計測した前記距離に基づいて前記焦点調整手段を作動して、前記光ビームの焦点位置が露光対象の表面となるように調整する調整制御手段と、
前記距離計測手段が前記距離センサによる前記距離の計測が終了してから前記露光対象への画像露光が終了するまでの間に前記保持手段による前記距離センサが出力する前記距離の保持を解除する保持解除手段と、
を含むことを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−244808(P2009−244808A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94268(P2008−94268)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】