説明

路車間通信装置

【課題】路上機または路車間通信装置の故障を早期に発見する。
【解決手段】路車間通信システム1の路上機リスト23aには、路上機の設置位置を示す路上機位置情報と、路上機の通信種別を示す路上機種別情報が記憶される。そして、路上機との間で通信が可能な範囲内に車両が位置している時に通信がなかった場合に、この路上機の路上機位置情報と路上機種別情報とを異常履歴リスト23bに記憶する。その後、異常履歴リスト23bに記憶された路上機位置情報と路上機種別情報に基づいて、通信種別が同一で且つ設置位置が異なる路上機との間で正常に通信が行われない回数(通信異常回数)を計数し、通信異常回数が所定値以上(例えば4)である場合に、この通信異常回数に対応した通信種別の路上機と通信を行う通信機(光ビーコン通信機12,電波ビーコン通信機13,ETC通信機14、DSRC通信機15の何れか)が故障していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行経路の近傍に設置された路上機との通信のために車両に搭載される路車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される装置として、車両の走行経路の近傍に設置された路上機との間で無線通信を行う路車間通信装置が知られている。この路車間通信装置と路上機との間での通信(以下、路車間通信という)により、車両の乗員は各種サービスの提供を受けることが可能である。
【0003】
例えば、一般道路に設置された光ビーコン路上機や、高速道路に設置された電波ビーコン路上機との間で路車間通信を行うことにより、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)から、道路の渋滞情報や交通規制情報などの道路交通情報を得ることができる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、高速道路の料金所に設置されたETC(Electronic Toll Collection System)路上機との間で路車間通信を行うことにより、ノンストップで料金所での料金収受を行うことができる。
【0004】
更に、DSRC(Dedicated Short Range Communication)と呼ばれる通信方式で通信を行う路上機(以下、DSRC路上機という)がガソリンスタンドや駐車場の敷地内に設置されて自動料金収受等に利用される予定であり、今後、路車間通信を行うための路上機が増加すると予測される。
【特許文献1】特開平8−189956号公報
【特許文献2】特開平8−29510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ETC路上機が高速道路の料金所のゲート近傍に設置されていることは一般によく知られている。また、ETC路上機とETC用路車間通信装置との間で通信が行われると、料金収受が行われた旨などが報知される。即ち、ETC路上機またはETC用路車間通信装置が故障して通信が行われなかった場合には、料金所のゲートを通過する際に、料金収受が行われた旨などの報知が行われず、ドライバーは、ETC路上機またはETC用路車間通信装置が故障していることを知ることができる。
【0006】
しかしながら、ドライバーは一般に、ETC用以外の路車間通信装置(例えば、光ビーコン路上機、電波ビーコン路上機)の設置場所を認識していない。更に、路車間通信装置と、光ビーコン路上機や電波ビーコン路上機との間で通信が行われたか否かを示す情報は、通常、ドライバーに報知されない。つまり、路上機と路車間通信装置との間で通信が行われなかった場合に、ドライバーはそのことに気付かない。
【0007】
また、路上機と路車間通信装置との間で通信が行われなかった場合に、この原因が、路上機または路車間通信装置が故障しているためであるのか、車両の周辺に路上機が設置されていないためであるのかを車両側で判別することができない。
【0008】
これにより、路上機または路車間通信装置が故障していたとしても、この故障を早期に発見できず、路車間通信により提供される各種サービスを車両の乗員が受けることができなくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、路上機または路車間通信装置の故障を早期に発見することができる路車間通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の路車間通信装置では、車両位置情報取得手段が、車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する。また位置情報記憶手段が、路上機が設置されている位置を示す路上機位置情報を、この路上機の種別を示す路上機種別情報と対応付けて記憶する。
【0011】
また範囲判断手段が、車両位置情報取得手段によって取得された車両位置情報と、位置情報記憶手段に記憶された路上機位置情報とに基づいて、この路上機位置情報に対応した路上機との間で通信を行うことが可能な通信可能範囲の範囲内に車両が位置するか否かを判断する。そして第1通信判断手段が、通信可能範囲の範囲内に車両が位置すると範囲判断手段によって判断された場合に、通信手段と路上機との間で正常に通信が行われたか否かを判断する。そして異常情報記憶手段が、路上機との間で正常に通信が行われていないと第1通信判断手段によって判断された場合に、通信可能範囲の範囲内に位置する路上機についての路上機位置情報を、この路上機についての路上機種別情報と対応付けて記憶する。
【0012】
その後に第1計数手段が、異常情報記憶手段に記憶された路上機位置情報と路上機種別情報とに基づいて、種別が同一で且つ設置位置が異なる路上機との間で正常に通信が行われていない回数である第1通信異常回数を計数する。そして第1故障判断手段が、第1計数手段によって計数された第1通信異常回数が予め設定された第1所定回数以上である場合に、この第1通信異常回数に対応した種別の路上機と通信を行う通信手段が故障していると判断する。
【0013】
尚、路上機の種別は、路車間通信装置との間で行われる通信方式の種類による区別であり、例えば、光ビーコン路上機、電波ビーコン路上機、ETC路上機及びDSRC路上機などの種別が挙げられる。
【0014】
このように請求項1に記載の路車間通信装置では、路上機位置情報が位置情報記憶手段に記憶されている。このため、この路上機位置情報によって特定される通信可能範囲の範囲内で正常に通信が行われなかった場合には、この原因が、通信可能範囲の範囲内に路上機が存在していないためではなく、路上機または路車間通信装置が故障しているためであると判断することができる。
【0015】
そして、種別が同一で且つ設置位置が異なる路上機の間で正常に通信が行われていない状況が継続した場合(請求項1では、第1通信異常回数が第1所定回数以上である場合)には、この原因が、設置位置が異なる路上機において連続して故障が発生しているためであるとは非常に考え難く、第1通信異常回数に対応した種別の路上機と通信を行う通信手段が故障していると判別することができる。
【0016】
従って、請求項1に記載の路車間通信装置によれば、路車間通信が正常に行われなかった場合に、この原因が、路上機または路車間通信装置が故障しているためであるか否かを判別できる。更に、第1通信異常回数が第1所定回数以上(例えば、3回以上)となれば、路上機ではなく通信手段が故障していると確定することができる。このため、通信手段が故障した場合に、この故障を早期に発見することができる。
【0017】
また、請求項1に記載の路車間通信装置は、請求項2に記載のように、通信手段が故障していると第1故障判断手段によって判断された場合に、通信手段が故障している旨を報知する第1報知手段を備えるようにするとよい。
【0018】
このように構成された路車間通信装置によれば、通信手段が故障していることを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、通信手段を修理するための措置を車両の乗員に促し、路車間通信ができない状況を早期に解消することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の路車間通信装置では、車両位置情報取得手段が、車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する。また位置情報記憶手段が、路上機が設置されている位置を示す路上機位置情報を、この路上機の種別を示す路上機種別情報と対応付けて記憶する。
【0020】
また範囲判断手段が、車両位置情報取得手段によって取得された車両位置情報と、位置情報記憶手段に記憶された路上機位置情報とに基づいて、この路上機位置情報に対応した路上機との間で通信を行うことが可能な通信可能範囲の範囲内に車両が位置するか否かを判断する。そして第1通信判断手段が、通信可能範囲の範囲内に車両が位置すると範囲判断手段によって判断された場合に、通信手段と路上機との間で正常に通信が行われたか否かを判断する。そして異常情報記憶手段が、路上機との間で正常に通信が行われていないと第1通信判断手段によって判断された場合に、通信可能範囲の範囲内に位置する路上機についての路上機位置情報を、この路上機についての路上機種別情報と対応付けて記憶する。
【0021】
その後に第2計数手段が、異常情報記憶手段に記憶された路上機位置情報に基づいて、設置位置が同一の路上機との間で正常に通信が行われていない回数である第2通信異常回数を計数する。そして第2故障判断手段が、第2計数手段によって計数された第2通信異常回数が予め設定された第2所定回数以上である場合に、この第2通信異常回数に対応した設置位置の路上機が故障していると判断する。
【0022】
このように請求項3に記載の路車間通信装置では、路上機位置情報が位置情報記憶手段に記憶されている。このため、この路上機位置情報によって特定される通信可能範囲の範囲内で正常に通信が行われなかった場合には、この原因が、通信可能範囲の範囲内に路上機が存在していないためではなく、路上機または路車間通信装置が故障しているためであると判断することができる。
【0023】
そして、設置位置が同一の路上機の間で正常に通信が行われていない状況が継続した場合(請求項3では、第2通信異常回数が第2所定回数以上である場合)には、この原因が、この設置位置に存在する路上機が故障していると判別することができる。
【0024】
従って、請求項3に記載の路車間通信装置によれば、路車間通信が正常に行われなかった場合に、この原因が、路上機または路車間通信装置が故障しているためであるか否かを判別できる。更に、第2通信異常回数が第2所定回数以上(例えば、3回以上)となれば、通信手段ではなく路上機が故障していると確定することができる。このため、路上機が故障した場合に、この故障を早期に発見することができる。
【0025】
また、請求項3に記載の路車間通信装置は、請求項4に記載のように、第2通信異常回数に対応した設置位置の路上機が故障していると第2故障判断手段によって判断された場合に、この路上機が故障している旨を報知する第2報知手段を備えるようにするとよい。
【0026】
このように構成された路車間通信装置によれば、路上機が故障していることを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、路上機が故障していることを車両の乗員が例えば路上機の保守会社に連絡する契機となり、路上機の保守会社は、路上機が故障していることを早期に知ることができる。
【0027】
また、請求項1〜請求項4の何れかに記載の路車間通信装置は、請求項5に記載のように、路上機との間で正常に通信が行われていないと第1通信判断手段によって判断された場合に、路上機との間で正常に通信が行われていない旨を報知する第3報知手段を備えるようにするとよい。
【0028】
このように構成された路車間通信装置によれば、路車間通信装置が搭載された車両が通信可能範囲の範囲内を通過して、正常に路車間通信が行われていない状況が発生する毎に、正常に路車間通信が行われていないことを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、路上機が故障しているか、または通信手段が故障しているかを車両の乗員側で判断するための判断材料とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態について図面をもとに説明する。
図1は、本発明が適用された実施形態の路車間通信システム1の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、実施形態の路車間通信システム1は、車両に搭載されて現在地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置11と、一般道路に設置された光ビーコン路上機(不図示)と通信を行う光ビーコン通信機12と、高速道路に設置された電波ビーコン路上機(不図示)と通信を行う電波ビーコン通信機13と、高速道路の料金所に設置されたETC(Electronic Toll Collection System)路上機(不図示)との間で通信を行うETC通信機14と、ガソリンスタンドや駐車場等に設置されたDSRC(Dedicated Short Range Communication)路上機(不図示)との間で通信を行うDSRC通信機15とから構成される。
【0031】
尚、光ビーコン路上機、電波ビーコン路上機、ETC路上機及びDSRC路上機をまとめて路上機と称す。また、光ビーコン通信機12、電波ビーコン通信機13、ETC通信機14及びDSRC通信機15をまとめて外部通信機と称す。
【0032】
ナビゲーション装置11は、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、車両の走行速度を検出する車速センサ22と、地図データや各種の情報を記憶可能なデータ記憶装置23と、ユーザからの各種指示を入力するための操作スイッチ群24と、地図表示画面やTV画面等の各種表示を行うための表示装置25と、各種の案内音声等を出力するための音声出力部26と、上述の光ビーコン通信機12,電波ビーコン通信機13,ETC通信機14,DSRC通信機15,位置検出器21,車速センサ22,操作スイッチ群24からの入力に応じて各種処理を実行し、データ記憶装置23,表示装置25及び音声出力部26を制御する制御部20とを備えている。
【0033】
これらのうち位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置,方位等を検出するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から距離を検出するための距離センサ21cと、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ21dとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21dは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては、上述したうちの一部のセンサで構成してもよく、またステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0034】
またデータ記憶装置23は、位置特定の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、地図データ、マークデータを含む各種データ、ナビゲーション装置11を動作させるために制御部20が実行するナビゲーションプログラム、路上機の設置位置及び種別が記憶された路上機リスト23a、及び路車間通信の異常履歴が記憶された異常履歴リスト23bを記憶するための装置である。これらのデータの記録媒体としては、そのデータ量からハードディスクなどの磁気記憶装置を用いている。
【0035】
路上機リスト23aは、図2に示すように、路上機毎に、設置位置を2次元座標(X,Y)で示す路上機位置情報と、光ビーコン路上機、電波ビーコン路上機、ETC路上機及びDSRC路上機の何れの通信種別に該当するかを示す路上機種別情報とを記憶している。
【0036】
また異常履歴リスト23bは、通信が正常に行われなかった路上機について、その通信が全く行われなかった(通信不可)のか、或いは通信は行われたが通信内容に異常があった(通信内容異常)のかの何れに該当するかを示す通信異常識別情報と、この路上機の設置位置を2次元座標(X,Y)で示す路上機位置情報と、この路上機の通信種別を示す路上機種別情報とを、時系列的に記憶している。
【0037】
次に制御部20は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。
そして制御部20は、データ記憶装置23に記憶されたプログラムに基づいて、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、データ記憶装置23から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示装置25に表示する機能を備える。
【0038】
また制御部20は、光ビーコン通信機12及び電波ビーコン通信機13から受信した道路交通情報(道路の渋滞情報や交通規制情報など)を表示装置25に表示する機能を備える。また、ETC通信機14から受信した料金情報に基づいて高速道路の利用料金を表示装置25に表示したり、DSRC通信機15から受信した料金情報に基づいて駐車場等の利用料金を表示装置25に表示したりする機能を備える。
【0039】
このように構成されたナビゲーション装置11において、制御部20は、外部通信機及び路上機の故障を検出するための故障検出処理を実行する。
ここで、制御部20が実行する故障検出処理の手順を、図3を用いて説明する。図3は故障検出処理を表すフローチャートである。この故障検出処理は、制御部20が起動(電源オン)している間に繰り返し実行される処理である。
【0040】
この故障検出処理が実行されると、制御部20は、まずS10にて、車両が通信可能範囲内に位置するか否かを判断する。この通信可能範囲は、路上機リスト23aに記憶されている路上機のそれぞれについて、設置位置を示す2次元座標(X,Y)を中心に予め設定された所定距離(例えば、10m)を半径とした円内の領域である。即ち、S10にて、路上機リスト23aに記憶されている全ての路上機のうちの何れかの通信可能範囲内に車両が位置しているか否かを、位置検出器21によって検出された車両位置に基づいて判断する。
【0041】
ここで、車両が通信可能範囲内に位置していない場合には(S10:NO)、故障検出処理を終了する。一方、車両が通信可能範囲内に位置する場合には(S10:YES)、S20にて、車両が通信可能範囲を通過したか否かを判断する。そして、車両が通信可能範囲を通過していない場合には(S20:NO)、S20に移行して上述の処理を繰り返す。一方、車両が通信可能範囲を通過した場合には(S20:YES)、S30に移行する。即ち、S20の処理は、車両が通信可能範囲内に進入して当該通信可能範囲外に移動するまで待機するための処理である。
【0042】
そしてS30に移行すると、路上機との間で通信があったか否かを判断する。ここで、通信がなかった場合には(S30:NO)、S40にて、通信不可を示す通信異常識別情報と、S20で通過したと判断された通信可能範囲内に位置する路上機(以下、現在通過路上機という)の2次元座標(X,Y)を示す路上機位置情報と、この路上機の通信種別を示す路上機種別情報とから構成される第1異常履歴情報を異常履歴リスト23bに記憶する。更にS50にて、路上機との間で通信が全く行われなかった(通信不可)ことを示す内容の音声を音声出力部26に出力させて、S90に移行する。
【0043】
またS30にて、路上機との間で通信があった場合には(S30:YES)、S60にて、通信内容に異常がなかったか否かを判断する。具体的には、所定のデータフォーマットとデータ内容で路上機からデータを受信できた場合には、通信内容に異常がなかったと判断し、受信できなかった場合には、通信内容に異常があったと判断する。例えば、周知のCRC(Cyclic Redundancy Check)を用いて異常があったか否かを判断するとよい。
【0044】
ここで、通信内容に異常があった場合には(S60:YES)、S70にて、通信内容異常を示す通信異常識別情報と、現在通過路上機の2次元座標(X,Y)を示す路上機位置情報と、この路上機の通信種別を示す路上機種別情報とから構成される第2異常履歴情報を異常履歴リスト23bに記憶する。更にS80にて、通信内容に異常があった(通信内容異常)ことを示す内容の音声を音声出力部26に出力させて、S90に移行する。
【0045】
一方、通信内容に異常がなかった場合には(S60:NO)、故障検出処理を終了する。
そしてS90に移行すると、異常履歴リスト23bに記憶された第1異常履歴情報及び第2異常履歴情報に基づいて、現在通過路上機と同じ通信種別で且つ異なる設置位置の路上機との間で通信不可及び通信内容異常が発生した回数(以下、第1通信異常回数という)を計数する。
【0046】
更にS100にて、異常履歴リスト23bに記憶された第1異常履歴情報及び第2異常履歴情報に基づいて、現在通過路上機との間で通信不可及び通信内容異常が発生した回数(以下、第2通信異常回数という)を計数する。
【0047】
そしてS110にて、S90で計数された第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1(例えば「4」)以上であるか否かを判断する。ここで、第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1未満である場合には(S110:NO)、S130に移行する。一方、第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1以上である場合には(S110:YES)、S120にて、外部通信機が故障している旨と、第1通信異常回数の通信種別に基づいた外部通信機の通信種別とを表示装置25に表示させる。例えば、S90で計数された第1通信異常回数の通信種別が「ETC」である場合には、「ETC通信機が故障しています」と表示させる。その後、S130に移行する。
【0048】
そしてS130に移行すると、S100で計数された第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2(例えば「3」)以上であるか否かを判断する。ここで、第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2未満である場合には(S130:NO)、故障検出処理を終了する。一方、第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2以上である場合には(S130:YES)、S140にて、路上機が故障している旨と、第2通信異常回数の通信種別に基づいた路上機の通信種別とを表示装置25に表示させる。例えば、S100で計数された第2通信異常回数の通信種別が「光ビーコン」である場合には、「光ビーコン路上機が故障しています」と表示させる。その後、故障検出処理を終了する。
【0049】
このように構成された路車間通信システム1では、路上機毎に設置位置を示す路上機位置情報と、通信種別を示す路上機種別情報とが路上機リスト23aに記憶されている。そして、位置検出器21によって検出された車両位置と、路上機リスト23aに記憶された路上機位置情報とに基づいて、この路上機位置情報に対応した路上機との間で通信を行うことが可能な通信可能範囲の範囲内に車両が位置するか否かを判断する(S10)。
【0050】
そして、通信可能範囲の範囲内に車両が位置すると判断された場合に、外部通信機と路上機との間で正常に通信が行われたか否かを判断する(S30,S60)。そして、外部通信機と路上機との間で正常に通信が行われていないと判断された場合に、通信可能範囲の範囲内に位置する路上機についての路上機位置情報を、この路上機についての路上機種別情報と対応付けて、異常履歴リスト23bに記憶する(S40,S70)。
【0051】
その後に、異常履歴リスト23bに記憶された路上機位置情報と路上機種別情報とに基づいて、通信種別が同一で且つ設置位置が異なる路上機との間で正常に通信が行われていない回数(第1通信異常回数)を計数する(S90)。そしてS90で計数された第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1以上である場合に、この第1通信異常回数に対応した通信種別の路上機と通信を行う外部通信機が故障していると判断する(S110)。
【0052】
このように路車間通信システム1では、路上機位置情報が路上機リスト23aに記憶されている。このため、この路上機位置情報によって特定される通信可能範囲の範囲内で正常に通信が行われなかった場合には、この原因が、通信可能範囲の範囲内に路上機が存在していないためではなく、路上機または外部通信機が故障しているためであると判断することができる。
【0053】
そして、通信種別が同一で且つ設置位置が異なる路上機の間で正常に通信が行われていない状況が継続した場合(本実施形態では、第1通信異常回数が第1故障検出値K1以上である場合)には、この原因が、設置位置が異なる路上機において連続して故障が発生しているためであるとは非常に考え難く、第1通信異常回数に対応した通信種別の路上機と通信を行う外部通信機が故障していると判別することができる。尚、ここで、「正常に通信が行われていない」とは、通信が全く行われなかった場合と、通信は行われたが通信内容に異常があった場合とを含む意味である。
【0054】
従って、路車間通信システム1によれば、路車間通信が正常に行われなかった場合に、この原因が、路上機または外部通信機が故障しているためであるか否かを判別できる。更に、第1通信異常回数が第1故障検出値K1以上となれば、路上機ではなく外部通信機が故障していると確定することができる。このため、外部通信機が故障した場合に、この故障を早期に発見することができる。
【0055】
また、S90で計数された第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1以上である場合に(S110)、外部通信機が故障している旨が表示される(S120)。
このため、外部通信機が故障していることを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、外部通信機を修理するための措置を車両の乗員に促し、路車間通信ができない状況を早期に解消することができる。
【0056】
更に、異常履歴リスト23bに記憶された路上機位置情報に基づいて、設置位置が同一の路上機との間で正常に通信が行われていない回数(第2通信異常回数)を計数する(S100)。そして、S100で計数された第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2以上である場合に、この第2通信異常回数に対応した設置位置の路上機が故障していると判断する(S130)。
【0057】
これにより、第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2となれば、外部通信機ではなく路上機が故障していると確定することができる。このため、路上機が故障した場合に、この故障を早期に発見することができる。
【0058】
また、S100で計数された第2通信異常回数が所定第2故障検出値K2以上である場合に(S130)、路上機が故障している旨が表示される(S140)。
このため、路上機が故障していることを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、路上機が故障していることを車両の乗員が例えば路上機の保守会社に連絡する契機となり、路上機の保守会社は、路上機が故障していることを早期に知ることができる。
【0059】
また、路上機との間で正常に通信が行われていないと判断された場合に(S30,S60)、路上機との間で正常に通信が行われていないことを示す内容の音声を音声出力部26に出力させる(S50,S80)。
【0060】
このため、路車間通信システム1が搭載された車両が通信可能範囲の範囲内を通過して、正常に路車間通信が行われていない状況が発生する毎に、正常に路車間通信が行われていないことを車両の乗員に知らせることが可能になる。これにより、路上機が故障しているか、または外部通信機が故障しているかを車両の乗員側で判断するための判断材料とすることができる。
【0061】
以上説明した実施形態において、路車間通信システム1は本発明における路車間通信装置、光ビーコン通信機12,電波ビーコン通信機13,ETC通信機14及びDSRC通信機15は本発明における通信手段、位置検出器21は本発明における車両位置情報取得手段、路上機リスト23aは本発明における位置情報記憶手段、S10の処理は本発明における範囲判断手段、S30及びS60の処理は本発明における第1通信判断手段、異常履歴リスト23bは本発明における異常情報記憶手段、S90の処理は本発明における第1計数手段、S110の処理は本発明における第1故障判断手段、S120の処理は本発明における第1報知手段である。
【0062】
また、S100の処理は本発明における第2計数手段、S130の処理は本発明における第2故障判断手段、S140の処理は本発明における第2報知手段、S50及びS80の処理は本発明における第3報知手段、所定第1故障検出値K1は本発明における第1所定回数、所定第2故障検出値K2は本発明における第2所定回数である。
【0063】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態においては、第1通信異常回数が所定第1故障検出値K1以上である場合に(S110)、外部通信機の故障を表示装置25に表示する(S120)ものを示したが、表示装置25に表示する代わりに、ナビゲーション装置11のダイアグ情報として記録し、ナビゲーション装置11のダイアグ画面が表示されたときに、外部通信機の故障を表示するようにしてもよい。
【0064】
また、外部通信機が故障した場合には、最寄の販売会社または修理工場へ経路案内したり、電話番号を表示装置25に表示したりするようにしてもよい。更に、電話を制御する機能を備えたナビゲーション装置11であれば、販売会社または修理工場へ電話がかかるようにしてもよい。
【0065】
また、路上機が故障した場合には、路上機の保守会社またはクレーム受付係の電話番号を表示装置25に表示するようにしてもよい。更に、電話を制御する機能を備えたナビゲーション装置11であれば、保守会社またはクレーム受付係へ電話がかかるようにしてもよい。
【0066】
また、通信可能範囲の範囲外で路車間通信が行われたときには、路上機が新設されたと判断して、この路上機の路上機位置情報と路上機種別情報とを路上機リスト23aに記憶できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】路車間通信システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】路上機リスト23aの構成を説明する図である。
【図3】故障検出処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1…路車間通信システム、11…ナビゲーション装置、12…光ビーコン通信機、13…電波ビーコン通信機、14…ETC通信機、15…DSRC通信機、20…制御部、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、21d…地磁気センサ、22…車速センサ、23…データ記憶装置、23a…路上機リスト、23b…異常履歴リスト、24…操作スイッチ群、25…表示装置、26…音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行経路の近傍に設置された路上機との間で通信を行う通信手段を備え、車両に搭載される路車間通信装置であって、
前記車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する車両位置情報取得手段と、
前記路上機が設置されている位置を示す路上機位置情報を、該路上機の通信方式の種別を示す路上機種別情報と対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、
前記車両位置情報取得手段によって取得された車両位置情報と、前記位置情報記憶手段に記憶された路上機位置情報とに基づいて、該路上機位置情報に対応した路上機との間で通信を行うことが可能な通信可能範囲の範囲内に前記車両が位置するか否かを判断する範囲判断手段と、
前記通信可能範囲の範囲内に前記車両が位置すると前記範囲判断手段によって判断された場合に、前記通信手段と前記路上機との間で正常に通信が行われたか否かを判断する第1通信判断手段と、
前記路上機との間で正常に通信が行われていないと前記第1通信判断手段によって判断された場合に、前記通信可能範囲の範囲内に位置する路上機についての前記路上機位置情報を、該路上機についての前記路上機種別情報と対応付けて記憶する異常情報記憶手段と、
前記異常情報記憶手段に記憶された前記路上機位置情報と前記路上機種別情報とに基づいて、種別が同一で且つ設置位置が異なる前記路上機との間で正常に通信が行われていない回数である第1通信異常回数を計数する第1計数手段と、
前記第1計数手段によって計数された第1通信異常回数が予め設定された第1所定回数以上である場合に、該第1通信異常回数に対応した種別の路上機と通信を行う前記通信手段が故障していると判断する第1故障判断手段と
を備えることを特徴とする路車間通信装置。
【請求項2】
前記通信手段が故障していると前記第1故障判断手段によって判断された場合に、前記通信手段が故障している旨を報知する第1報知手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の路車間通信装置。
【請求項3】
車両の走行経路の近傍に設置された路上機との間で通信を行う通信手段を備え、車両に搭載される路車間通信装置であって、
前記車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する車両位置情報取得手段と、
前記路上機が設置されている位置を示す路上機位置情報を、該路上機の通信方式の種別を示す路上機種別情報と対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、
前記車両位置情報取得手段によって取得された車両位置情報と、前記位置情報記憶手段に記憶された路上機位置情報とに基づいて、該路上機位置情報に対応した路上機との間で通信を行うことが可能な通信可能範囲の範囲内に前記車両が位置するか否かを判断する範囲判断手段と、
前記通信可能範囲の範囲内に前記車両が位置すると前記範囲判断手段によって判断された場合に、前記通信手段と前記路上機との間で正常に通信が行われたか否かを判断する第1通信判断手段と、
前記路上機との間で正常に通信が行われていないと前記第1通信判断手段によって判断された場合に、前記通信可能範囲の範囲内に位置する路上機についての前記路上機位置情報を、該路上機についての前記路上機種別情報と対応付けて記憶する異常情報記憶手段と、
前記異常情報記憶手段に記憶された前記路上機位置情報に基づいて、設置位置が同一の前記路上機との間で正常に通信が行われていない回数である第2通信異常回数を計数する第2計数手段と、
前記第2計数手段によって計数された第2通信異常回数が予め設定された第2所定回数以上である場合に、該第2通信異常回数に対応した設置位置の路上機が故障していると判断する第2故障判断手段と
を備えることを特徴とする路車間通信装置。
【請求項4】
前記第2通信異常回数に対応した設置位置の路上機が故障していると前記第2故障判断手段によって判断された場合に、該路上機が故障している旨を報知する第2報知手段を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の路車間通信装置。
【請求項5】
前記路上機との間で正常に通信が行われていないと前記第1通信判断手段によって判断された場合に、前記路上機との間で正常に通信が行われていない旨を報知する第3報知手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の路車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−123091(P2008−123091A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303872(P2006−303872)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】