説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】エンジントルクに応じたスロットルバルブの開度を精度高く制限する。
【解決手段】エンジンECUは、MG(1)トルクからエンジントルクを推定するステップ(S100)と、走行条件を満足する場合であって(S102にてYES)、かつ、エンジントルクがしきい値Th(0)よりも大きい場合(S104)、スロットル上限ガードを実行するステップ(S106)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御に関し、特に、エンジントルクを精度高く推定し、推定されたエンジントルクとエンジントルクの制約条件とに基づいてスロットルバルブの開度を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の1つとして、エンジンおよびモータからの駆動力により走行するハイブリッド車両が注目されている。このようなハイブリッド車両のエンジンは、効率良く動作させるためトルクと回転数とに基づいて設定される動作線に沿って制御される。
【0003】
このようなハイブリッド車両としては、たとえば、特開平10−325344号公報(特許文献1)は、モータジェネレータを大型化させることなく、エンジンおよびモータジェネレータを協調制御する運転モードが選択されている場合にエンジンの吹き上がりを防止するハイブリッド駆動制御装置を開示する。このハイブリッド駆動制御装置は、燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電動モータおよび発電機の少なくとも一方として用いられるモータジェネレータと、エンジンに連結される第1回転要素、モータジェネレータに連結される第2回転要素、および出力部材に連結される第3回転要素を有して、それらの間で機械的に力を合成、分配する3軸式動力入出力手段と、エンジンおよびモータジェネレータを協調制御して出力部材を回転駆動する協調駆動手段とを有するハイブリッド駆動制御装置において、協調駆動手段によりエンジンおよびモータジェネレータが協調制御される場合には、モータジェネレータの最大出力トルクに基づいて、エンジンの出力トルクを制限するエンジン出力トルク制限手段を有することを特徴とする。
【0004】
上述した公報に開示されたハイブリッド駆動制御装置によると、モータジェネレータを大型化したりブレーキをスリップ制御したりすることなく、エンジンの出力トルクに対して必要とされる反力トルクがモータジェネレータの最大出力トルクを超えないようにすることが可能で、エンジンの吹き上がりや過大な負荷によるモータジェネレータの耐久性の低下が防止されるようになる。
【特許文献1】特開平10−325344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した公報に開示されたハイブリッド駆動制御装置においては、スロットル開度および燃料噴射量に基づいてエンジントルクを推定しているため、推定精度が低いという問題がある。これは、エンジンの個体毎にスロットル開度および燃料噴射量に基づいて発現するエンジントルクにバラツキがあるためである。エンジントルクの推定精度が低い場合、確実にエンジンの吹き上がりを抑制するために、必要以上にスロットルを制限する場合がある。そのため、エンジンのパワーを十分に発揮できない可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジントルクに応じたスロットルバルブの開度を精度高く制限する車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る車両の制御装置においては、車両は、エンジンと、エンジンの出力軸に連結するモータジェネレータとを含む。エンジンは、気筒と、気筒内の気体を排気する排気通路と、排気通路と気筒との間に設けられる排気バルブと、気筒に導入される気体の流量を調整するスロットルバルブとを含む。この制御装置は、モータジェネレータにおけるエンジンのトルク反力に基づいてエンジントルクを推定するための推定手段と、エンジントルクがしきい値よりも大きい場合にスロットルバルブの開度の上限値を減少させるための減少手段とを含む。しきい値は、モータジェネレータの許容トルク、気筒内における圧力の最大値および排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つに基づいて設定される。第8の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0008】
第1の発明によると、モータジェネレータにおけるエンジンのトルク反力に基づいてエンジントルクを推定することにより、個体毎のバラツキを考慮する必要がない。そのため、スロットルバルブの開度および燃料噴射量に基づいて推定する場合よりもエンジントルクを精度高く推定することができる。そのため、推定されたエンジントルクが、モータジェネレータの許容トルク、気筒内の圧力の最大値および排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力に基づいて設定されるしきい値よりも大きい場合にスロットルバルブの開度を制限することにより、不必要にスロットルバルブの開度の制限を回避することができる。そのため、スロットルバルブの開度および燃料噴射量に基づいてエンジントルクを推定する場合よりもエンジントルクのパワーを十分に発揮することができる。したがって、エンジントルクに応じたスロットルバルブの開度を精度高く制限する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、減少手段は、エンジントルクがしきい値以下になるようにスロットルバルブの開度の上限値をエンジントルクとしきい値との差に応じた値だけ減少させる。第9の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0010】
第2の発明によると、エンジントルクをしきい値以下になるようにスロットルバルブの開度を制限することにより、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えることによるエンジン回転数の吹き上がり、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることによる局所的な高温部分の発生および排気バルブが閉じた場合の排気通路への排気の漏れの発生を抑制することができる。
【0011】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、減少手段は、エンジントルクがしきい値以下になるまでスロットルバルブの開度の上限値を段階的に減少させる。第10の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0012】
第3の発明によると、エンジンエンジントルクをしきい値以下になるまでスロットル開度の上限値を段階的に減少させることにより、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えることによるエンジン回転数の吹き上がり、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることによる局所的な高温部分の発生および排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れの発生を抑制することができる。
【0013】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、推定手段は、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足する場合に、エンジントルクを推定する。第11の発明に係る車両の制御方法は、第4の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0014】
第4の発明によると、車両の走行状態が予め定められた走行条件(たとえば、車両の走行状態が定常走行状態あるいは全開走行状態であるという条件)を満足する場合に、エンジントルクを推定することにより、推定精度が高い走行状態あるいは推定誤差が特定しやすい走行状態であるときにエンジントルクの推定を行なうことができる。そのため、エンジントルクを精度高く推定することができる。
【0015】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、しきい値は、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えないように設定される。第12の発明に係る車両の制御方法は、第5の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0016】
第5の発明によると、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えないようにしきい値を設定することにより、エンジン回転数の吹き上がりを防止することができる。
【0017】
第6の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜5のいずれかの発明の構成に加えて、しきい値は、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えないように設定される。第13の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0018】
第6の発明によると、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えないようにエンジントルクのしきい値を設定することにより、部品の製造バラツキおよび使用条件のバラツキ等の種々のバラツキが有していても気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることを回避することができるため、エンジンの耐久性の悪化を抑制することができる。
【0019】
第7の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、しきい値は、排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないように設定される。第14の発明に係る車両の制御方法は、第7の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0020】
第7の発明によると、排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないようにエンジントルクのしきい値を設定することにより、排気漏れを抑制して、局所的な高温部分の発生を抑制することができる。そのため、エンジンの耐久性の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置が搭載されるハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。
【0023】
ハイブリッド車両は、駆動源としての内燃機関(以下、エンジンという)120と、回転電機であるモータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、ジェネレータ140Aとモータ140Bと表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、ジェネレータ140Aがモータとして機能したり、モータ140Bがジェネレータとして機能したりする。
【0024】
エンジン120の吸気通路122には、吸入空気のほこりを捕捉するエアクリーナ122A、エアクリーナ122Aを通ってエンジン120に吸入される空気量を検出するエアフローメータ122B、エンジン120に吸入される空気量を調整するためのスロットルバルブ122Eを有する電子スロットル122Cが設けられている。電子スロットル122Cにはスロットルポジションセンサ122Dが設けられている。エンジンECU(Electronic Control Unit)280には、エアフローメータ122Bにより検出された吸入空気量や、スロットルポジションセンサ122Dにより検出されたスロットルバルブ122Eの開度(以下、スロットル開度ともいう)等が入力される。
【0025】
また、エンジン120の排気通路124には、三元触媒コンバータ124Bと、三元触媒コンバータ124Bに導入される排出ガスにおける空燃比(A/F)を検出する空燃比センサ124Aと、消音器124Cとが設けられている。
【0026】
エンジン120は、吸気通路122および排気通路124に接続される複数の気筒126が設けられる。吸気通路122と気筒126との間には、吸気バルブ128が設けられる。吸気バルブ128は、エンジン120の出力軸の回転に連動して作動する。具体的には、吸気バルブ128は、エンジン120の吸気行程で開き、他の行程(圧縮行程、膨張行程および排気行程)においては、閉じるように作動する。
【0027】
排気通路124と気筒126との間には、排気バルブ130が設けられる。排気バルブ130は、エンジン120の出力軸の回転に連動して作動する。具体的には、排気バルブ130は、エンジン120の排気行程で開き、他の行程(吸気行程、圧縮行程および膨張行程)においては、閉じるように作動する。
【0028】
エンジン120の出力軸には、クランクポジションセンサ380が設けられており、エンジンECU280には、クランクポジションセンサ380から出力軸の回転数を示す信号が入力される。
【0029】
モータ140Bの出力軸には、回転数センサ382が設けられており、MG_ECU300には、モータ140Bの回転数(MG(2)回転数)を示す信号が入力される。MG_ECU300に送信されたMG(2)回転数を示す信号は、HV_ECU320を経由してエンジンECU280に送信される。
【0030】
ハイブリッド車両は、減速機180と動力分割機構200とをさらに含む。減速機180は、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する。動力分割機構200は、たとえば、遊星歯車機構であって、エンジン120の発生する動力を駆動輪160(すなわち、モータ140B)とジェネレータ140Aとの2経路に分配する。遊星歯車機構は、サンギヤとリングギヤとキャリアとピニオンギヤとを含む。たとえば、遊星歯車機構のサンギヤは、ジェネレータ140Aに接続し、キャリアは、エンジンに接続され、リングギヤは、モータ140Bに接続されるものとする。なお、リングギヤとモータ140Bとの間に変速機構が設けられるようにしてもよい。
【0031】
また、ハイブリッド車両は、走行用バッテリ220と、インバータ240とをさらに含む。走行用バッテリ220は、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する。なお、走行用バッテリ代えてキャパシタ等を蓄電装置として用いてもよい。インバータ240は、走行用バッテリ220の直流とジェネレータ140Aおよびモータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なう。
【0032】
さらに、ハイブリッド車両は、バッテリ制御ユニット(以下バッテリECUという)260と、エンジンECU280と、MG_ECU300と、HV_ECU320とをさらに含む。
【0033】
バッテリECU260は、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御する。エンジンECU280は、エンジン120の動作状態を制御する。MG_ECU300は、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御する。HV_ECU320は、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御する。
【0034】
本実施の形態においては、走行用バッテリ220とインバータ240との間にはコンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、ジェネレータ140Aやモータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータジェネレータ140Aやモータ140Bに電力を供給するときには、コンバータ242で電力を昇圧する。このコンバータ242には平滑コンデンサが内蔵されており、コンバータ242が昇圧動作を行なう際には、この平滑コンデンサに電荷が蓄えられる。
【0035】
なお、図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、エンジンECU280とMG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0036】
運転席にはアクセルペダル(図示せず)が設けられており、アクセルポジションセンサ(図示せず)は、アクセルペダルの踏込み量を検出する。アクセルポジションセンサは、アクセルペダルの踏込み量を示す信号をHV_ECU320に出力する。HV_ECU320は、踏込み量に対応する要求駆動力に応じて、ジェネレータ140A、モータ140BおよびエンジンECU280を介してエンジン120の出力あるいはジェネレータ140Aおよび/またはモータ140B発電量を制御する。
【0037】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Aとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Aの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。
【0038】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Bのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Aを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Bを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Bに供給してモータ140Bの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。
【0039】
一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Bがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Aによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動力を増加する制御を行なう場合もある。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0040】
さらに、図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態によっては、燃費を向上させるために、エンジン120を停止させる。そして、その後も車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態を検出して、エンジン120を再始動させる。このように、このエンジン120は間欠運転され、従来の車両(エンジンしか搭載していない車両)においては、イグニッションスイッチがSTART位置にまで回されてエンジンが始動すると、イグニッションスイッチがON位置からACC位置またはOFF位置にされるまでエンジンが停止しない点で異なる。
【0041】
以上のような構成を有する車両において、たとえば、スロットル開度および燃料噴射量に基づいてエンジントルクを推定するようにすると推定精度が低い場合がある。これは、エンジンの個体毎にスロットル開度および燃料噴射量に基づいて発現するエンジントルクにバラツキがあるためである。
【0042】
ジェネレータ140Aの許容トルクを上回るようにエンジントルクが増加する場合には、エンジントルクとジェネレータ140Aとのトルクの釣り合いが崩れて、エンジン回転数が吹き上がる場合がある。図2の共線図に示すように、ジェネレータ140A、モータ140Bおよびエンジン120の回転数は、トルクが釣り合った状態において図2の実線の関係を維持する。ここで、エンジントルクがジェネレータ140Aの許容トルクを上回って増加すると、エンジン回転数の上昇をジェネレータ140Aにより抑制することができないため、図2の破線に示すようにエンジン回転数が吹き上がることとなる。
【0043】
また、気筒126内における圧力の最大値(以下、Pmaxと記載する)をエンジン120においての許容される値(以下、許容値と記載する)を超えるようにエンジントルクが増加する場合には、エンジン120の耐久性が悪化する場合がある。
【0044】
さらに、排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力になるようにエンジントルクが増加する場合には、局所的な高温部分が発生するため、エンジン120の耐久性が悪化する場合がある。
【0045】
したがって、エンジントルクの推定精度が低い場合においては、エンジン回転数の吹き上がりまたは耐久性の悪化を確実に抑制するために、必要以上にスロットルを制限する必要があり、エンジンのパワーを十分に発揮できない可能性がある。
【0046】
そこで、本発明は、エンジンECU280が、ジェネレータ140Aにおけるエンジン120のトルク反力に基づいてエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルクがしきい値よりも高い場合にスロットル開度の上限値を減少させる点に特徴を有する。しきい値は、ジェネレータ140Aの許容トルク、気筒126内における圧力の最大値および排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つに基づいて設定される値である。なお、エンジントルクの推定は、HV_ECU320において行なわれてもよいし、HV_ECU320が推定されたエンジントルクに基づいてスロットル開度の上限値を算出し、エンジンECU280が算出された上限値に基づいてスロットル開度を制限するように電子スロットル122Cを制御するようにしてもよい。
【0047】
図3に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280の機能ブロック図を示す。エンジンECU280は、エンジントルク推定部500と、走行条件判定部と、しきい値判定部504と、上限ガード実行部506とを含む。
【0048】
エンジントルク推定部500は、ジェネレータ140Aにおけるエンジン120のトルク反力に基づいてエンジントルクを推定する。具体的には、エンジントルク推定部500は、HV_ECU320から受信するジェネレータ140Aの電流値(MG(1)電流値)によりジェネレータ140Aにおいて生ずるトルク(以下、MG(1)トルクと記載する)を算出する。なお、エンジントルク推定部500は、ジェネレータ140Aの回転数と実験等により取得された回転数の変化に対するトルクの変化を示すマップとに基づいてMG(1)トルクを算出するようにしてもよい。
【0049】
エンジントルク推定部500は、MG(1)トルクに基づいてエンジントルクを算出する。ジェネレータ140A、モータ140Bおよびエンジン120の回転数は、トルクが釣り合っている場合においては、図4の実線の状態が維持される。ジェネレータ140Aが発生するトルク(MG(1)トルク)と、モータ140Bが発生するトルク(MG(2)トルク)と、エンジントルクと、路面からの反力トルクは、車両が定常走行している場合などにおいて釣り合う。このとき、エンジントルクとMG(1)トルクとは、プラネタリギヤ比(サンギヤ歯数/リングギヤ歯数)をρとすると、エンジントルク=(1+ρ)/ρ×MG(1)トルクの関係となる。したがって、エンジントルクのトルク反力であるMG(1)トルクを算出することにより上記した関係を用いてエンジントルクを精度高く推定することができる。
【0050】
走行条件判定部502は、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足するか否かを判定する。予め定められた走行条件は、エンジントルクについて予め定められた度合以上の推定精度が得られる走行条件であれば特に限定されるものではないが、たとえば、車両が定常走行状態(すなわち、車両の速度またはモータ140Bの回転数が略一定の状態あるいは車両の速度または回転数の変化量が予め定められた値以下の状態)であるという条件であってもよいし、アクセルの踏み込み量を最大にした場合など推定誤差が特定可能な走行状態であるという条件であってもよい。なお、走行条件判定部502は、たとえば、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足する場合に、走行条件判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0051】
しきい値判定部504は、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きいか否かを判定する。ここで、しきい値は、上述したとおり、ジェネレータ140Aの許容トルク、Pmaxおよび排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つに基づいて設定される。
【0052】
本実施の形態において、しきい値は、ジェネレータ140Aの許容トルク、Pmaxおよび排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力に基づいて実験等の適合により設定されるとして説明するが、エンジンの要求性能あるいは仕様に応じて、ジェネレータ140Aの許容トルク、Pmaxおよび排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つを選択して、選択された条件を満足するしきい値を実験等により適合するようにしてもよい。
【0053】
ジェネレータ140Aの許容トルクは、ジェネレータの種類、体格、使用条件および各種バラツキなどに応じて設計的および/または実験的に設定される。しきい値は、エンジントルクがジェネレータ140Aの許容トルクを超えないように設定される。
【0054】
また、しきい値は、Pmaxが許容値を超えないように設定される。なお、Pmaxは、設計的および/または実験的に設定される。Pmaxは、たとえば、吸入空気量が多いほど高くなる。また、点火時期がMBT(Minimum Advance for Best Torque)になるまであるいはノッキングが発生するまで進角するほどPmaxが高くなる。高出力または低燃費を実現するエンジンほど、Pmaxと許容値との差は小さくなる傾向がある。
【0055】
しきい値は、設定されたPmaxに基づいて一義的に決定される。ただし、Pmaxは、エンジン回転数によって変動する場合があるため、好ましくは、エンジントルクおよび/またはエンジン回転数の変化に対応するPmaxの変化を予め実験等により測定しておき、測定結果に基づくPmaxが許容値を超えないようにしきい値を設定することが望ましい。あるいは、エンジントルクおよび/またはエンジン回転数の変化によりしきい値をマップ等を用いて変化させるようにしてもよい。
【0056】
さらに、しきい値は、排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないように設定される。排気バルブ130が閉じた場合の排気通路124への排気の漏れは、吸入空気量が高く、かつ、排気の圧力が高い場合に生じ、バルブとバルブシートのわずかな隙間から燃焼室の燃焼ガスが噴出して排気の漏れが生じると、局所的に高温部分が発生する場合がある。このような問題は、高性能を実現するエンジンにおいて、フリクションロスの抑制のため排気バルブを閉じ側に付勢力を与えるスプリングの張力を低減する場合に生じる。
【0057】
このような排気の漏れは、吸入空気量が高い場合すなわちエンジントルクが高い場合に生じるため、スロットル開度の上限値を制限することにより、吸入空気量の低下させて(すなわち、エンジントルクを低下させて)、排気の圧力を低下させることができる。
【0058】
なお、しきい値の設定方法としては、本実施の形態においては、ジェネレータ140Aの許容トルク、Pmaxおよび排気バルブ130が閉じた場合に排気通路124への排気の漏れが生じる排気圧力のうちのいずれかの条件を満たす一つのしきい値を設定するようにしてもよいし、あるいは、2つの以上のしきい値を設定するようにしてもよい。
【0059】
たとえば、エンジントルクがジェネレータ140Aの許容トルクを短時間だけ超えた場合でも、エンジン回転数の吹き上がりは生じる。また、排気バルブ130が閉じた場合の排気通路124への排気の漏れについてもエンジントルクが排気漏れが生じさせるエンジントルクを短時間だけ超えた場合でも、排気の漏れは生じる。したがって、少なくともエンジントルクがジェネレータ140Aの許容トルクを超えず、かつ、排気の漏れが生じる排気圧力にならないように1つのしきい値(1)が設定される。
【0060】
そして、Pmaxが許容値を超えないようにする場合には、短時間の観点で考慮する許容値と長時間の観点で考慮する許容値とが異なるため、しきい値(1)とは、別にしきい値(2)を設定する。
【0061】
しきい値判定部504は、推定されたエンジントルクがしきい値(1)およびしきい値(2)のうちの少なくともいずれか一方よりも大きいか否かを判定する。このように制約条件によってしきい値を複数設定することにより、スロットルバルブの開度の上限を適切に制限することができる。
【0062】
なお、しきい値判定部504は、たとえば、走行条件判定フラグがオンである場合に上述した判定を実行し、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きい場合に、しきい値判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0063】
上限ガード実行部506は、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きい場合に、スロットル開度の上限値を減少させた上で、スロットル開度を制御する。
【0064】
具体的には、上限ガード実行部506は、推定されたエンジントルクとしきい値との差に応じた値だけスロットル開度の上限値を減少させる。あるいは、上限ガード実行部506は、エンジントルクとしきい値との差に関わらず予め定められた値だけ上限値を減少させるようにしてもよい。
【0065】
または、上限ガード実行部506は、推定されたエンジントルクがしきい値以下になるまで段階的に上限値を減少させるようにしてもよい。たとえば、段階毎に減少させる程度を予め定めておく。上限ガード実行部506は、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きい場合に、段階に応じた減少の程度で上限値を減少させる。上限ガード実行部506は、上限値を減少させてから予め定められた時間が経過した後に、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きい場合に、次の段階に応じた減少の程度で上限値を減少させる。上限ガード実行部506は、推定されたエンジントルクがしきい値以下になった場合に、上限値の減少を停止する。
【0066】
本実施の形態において、エンジントルク推定部500と、走行条件判定部502と、しきい値判定部504と、上限ガード実行部506とは、いずれもエンジンECU280のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0067】
図5を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0068】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、エンジンECU280は、MG(1)トルクに基づいてエンジントルクを推定する。S102にて、エンジンECU280は、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足するか否かを判定する。なお、予め定められた走行条件を満足するか否かの判定は、エンジントルクの推定(S100)よりも前に行なうようにしてもよい。車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足すると(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、この処理は終了する。
【0069】
S104にて、エンジンECU280は、推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きいか否かを判定する。推定されたエンジントルクがしきい値よりも大きいと(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでないと(S104にてNO)、この処理は終了する。S106にて、エンジンECU280は、スロットル上限ガードを実行する。
【0070】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280の動作について図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7において示されるエンジントルクの変化は一例であって、このような変化に限定されるものではない。
【0071】
<推定されたエンジントルクとしきい値との差に応じた上限ガード値を設定する場合>
たとえば、上限ガード値がA(0)である場合であって、かつ、エンジントルクがTe(0)である場合を想定する。ここで、A(0)は、スロットル開度の上限が制限されていない場合に設定される値である。
【0072】
時間T(0)にて、MG(1)トルクに基づいてエンジントルクTe(0)が推定される(S100)。MG(2)回転数の変化量が予め定められた変化量以下となり、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足すると(S102にてYES)、エンジントルクTe(0)がしきい値Th(0)よりも大きいか否かが判定される(S104)。
【0073】
エンジントルクTe(0)は、しきい値Th(0)よりも大きいため(S104にてYES)、スロットル上限ガードが実行される(S106)。すなわち、エンジンECU280は、スロットルバルブ122Eの開度の上限を制限する。
【0074】
このとき、スロットルバルブ122Eの上限ガード値としては、エンジントルクTe(0)としきい値Th(0)との差に応じた値A(1)が設定される。
【0075】
また、本実施の形態において、上限ガード値A(0)からA(1)まで予め定められた時間変化量で変化するとして説明するが、特にこのような変化の態様に限定されるものではない。たとえば、エンジントルクTe(0)がしきい値Th(0)よりも大きい時点で上限ガード値をA(0)からA(1)に変更するようにしてもよい。
【0076】
スロットル上限ガード値をA(0)からA(1)に減少することにより、スロットルバルブ122Eの開度が制限されると、エンジン120において生じるエンジントルクが減少する。そのため、時間T(1)にて、エンジントルクがしきい値Th(0)よりも小さいTe(2)となる。
【0077】
<上限ガード値を段階的に減少させる場合>
たとえば、上限ガード値がA’(0)である場合であって、かつ、エンジントルクがTe’(0)である場合を想定する。ここで、A’(0)は、スロットル開度の上限が制限されていない場合に設定される値である。
【0078】
時間T’(0)にて、MG(1)トルクに基づいてエンジントルクTe’(0)が推定される(S100)。MG(2)回転数の変化量が予め定められた変化量以下となり、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足すると(S102にてYES)、エンジントルクTe’(0)がしきい値Th(0)よりも大きいか否かが判定される(S104)。
【0079】
エンジントルクTe’(0)は、しきい値Th(0)よりも大きいため(S104にてYES)、スロットル上限ガードが実行される(S106)。すなわち、エンジンECU280は、スロットルバルブ122Eの開度の上限を制限する。
【0080】
このとき、スロットルバルブ122Eの上限ガード値は、段階的に減少する。具体的には、エンジンECU280は、推定されたエンジントルクがしきい値Th(0)よりも大きい場合、上限ガード値を段階に応じた予め定められた値だけ減少させてA’(1)とする。
【0081】
エンジンECU280は、上限ガード値を予め定められた値だけ減少させた時点から予め定められた時間が経過するまで(すなわち、時間T’(1)から予め定められた時間経過後の時間T’(2)まで)、A’(1)を上限ガード値としてスロットルバルブ122Eの開度を制御する。このとき、スロットルバルブ122Eの上限が制限されることにより、エンジントルクは、Te’(0)からTe’(1)に変化する。
【0082】
時間T’(2)にて、推定されたエンジントルクTe’(1)がしきい値Th(0)よりも大きい場合、再度上限ガード値を予め定められた値だけ減少させてA’(2)とする。そして、エンジンECU280は、エンジントルクがしきい値Th(0)以下になるまで上限ガード値の減少を繰返す。スロットルバルブ122Eの上限の制限の度合が大きくなることにより、時間T’(3)にて、エンジントルクは、Te’(1)からTh(0)よりも低いTe’(2)に変化する。
【0083】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、モータジェネレータにおけるエンジンのトルク反力に基づいてエンジントルクを推定することにより、個体毎のバラツキを考慮する必要がない。そのため、スロットルバルブの開度および燃料噴射量に基づいて推定する場合よりもエンジントルクを精度高く推定することができる。そのため、モータジェネレータの許容トルク、気筒内の圧力の最大値および排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力に基づいて設定されるしきい値よりも推定されたエンジントルクが大きい場合にスロットルバルブの開度を制限することにより、不必要にスロットルバルブの開度の制限を回避することができる。そのため、スロットルバルブの開度および燃料噴射量に基づいてエンジントルクを推定する場合よりもエンジントルクのパワーを十分に発揮することができる。したがって、エンジントルクに応じたスロットルバルブの開度を精度高く制限する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0084】
また、エンジントルクをしきい値Th(0)以下になるようにスロットルバルブの開度を制限することにより、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えることによるエンジン回転数の吹き上がり、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることによる局所的な高温部分の発生および排気バルブが閉じた場合の排気通路への排気の漏れの発生を抑制することができる。
【0085】
さらに、エンジントルクをしきい値Th(0)以下になるまでスロットル開度の上限値を段階的に減少させることにより、エンジントルクがジェネレータの許容トルクを超えることによるエンジン回転数の吹き上がり、気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることによる局所的な高温の発生および排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れの発生を抑制することができる。
【0086】
そして、エンジントルクがモータジェネレータの許容トルクを超えないようにしきい値を設定することにより、エンジン回転数の吹き上がりを防止することができる。
【0087】
さらに、気筒内の圧力の最大値(Pmax)がエンジンにおいて許容される値を超えないようにエンジントルクのしきい値を設定することにより、部品の製造バラツキおよび使用条件のバラツキ等の種々のバラツキが有していても気筒内の圧力の最大値がエンジンにおいて許容される値を超えることを回避することができるため、エンジンの耐久性の悪化を抑制することができる。
【0088】
排気バルブが閉じた場合に排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないようにエンジントルクのしきい値を設定することにより、排気の漏れを抑制して、局所的な高温の発生を抑制することができる。そのため、エンジンの耐久性の悪化を抑制することができる。
【0089】
本実施の形態において、ジェネレータの許容トルク、Pmaxおよび閉じた排気バルブにおいて排気漏れが生じるときの排気圧力の程度に基づいてエンジントルクのしきい値を設定して、推定されたエンジントルクが設定されたしきい値を超えた場合に、スロットルバルブの開度の上限を制限するとして説明したが、エンジントルクに代えてまたは加えてエンジンパワーについてのしきい値を設定するようにしてもよい。すなわち、推定されたエンジンパワーがしきい値よりも大きいとスロットルバルブの開度の上限を制限するようにしてもよい。エンジンパワーは、推定されたエンジントルクと現在のエンジン回転数との積により推定される。
【0090】
特に、Pmaxおよび排気バルブが閉じたときの排気圧力等については、回転数の影響を受ける。したがって、推定されたエンジントルクがジェネレータの許容トルクに基づいて設定されたしきい値よりも大きいか、あるいは、推定されたエンジンパワーがPmaxおよび排気バルブが閉じたときの排気圧力に基づいて設定されるエンジンパワーのしきい値よりも大きいと、スロットルバルブの開度の上限を制限するようにしてもよい。このようにすると、より精度高くスロットルバルブの開度の上限を制限することができるため、不必要にスロットルバルブの開度の上限を制限されることはない。
【0091】
さらに、本実施の形態においては、車両の走行状態が、定常走行状態あるいは全開走行状態等であるなどの走行条件を満足する場合に、エンジントルクを推定するものとして説明したが、たとえば、推定されたエンジントルクおよびエンジン回転数から算出されるエンジンパワーが予め定められた値(たとえば、排気バルブが閉じた場合に排気漏れが生じない上限値)よりも大きい場合に、車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足するとするようにしてもよい。
【0092】
さらに、本実施の形態においては、上限ガード実行時にエンジントルクがしきい値Th
(0)よりも小さくなるように上限ガード値を設定するようにしたが、エンジンパワーがしきい値よりも小さくなるように上限ガード値を設定するようにしてもよい。
【0093】
さらに、本実施の形態においては、予め定められた走行条件を満足する場合に、推定されたトルクがしきい値よりも大きいか否かを判定するとしたが、たとえば、少なくとも推定されたトルクがしきい値よりも大きい場合に上限ガードを実行し、予め定められた走行条件を満足しない場合には、スロットル開度の上限が制限されていない場合に設定される値を選択するようにしてもよい。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施の形態におけるハイブリッド車両の構成を示す制御ブロック図である。
【図2】動力分割機構の共線図(その1)である。
【図3】本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。
【図4】動力分割機構の共線図(その2)である。
【図5】本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECUの動作を示すタイミングチャート(その1)である。
【図7】本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECUの動作を示すタイミングチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0096】
120 エンジン、122 吸気通路、122A エアクリーナ、122B エアフローメータ、122C 電子スロットル、122D スロットルポジションセンサ、122E スロットルバルブ、124 排気通路、124A 空燃比センサ、124B 三元触媒コンバータ、124C 触媒温度センサ、124D 消音器、124E 酸素センサ、126 気筒、128 吸気バルブ、130 排気バルブ、140 モータジェネレータ、140A ジェネレータ、140B モータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、380 クランクポジションセンサ、500 エンジントルク推定部、502 走行条件判定部、504 しきい値判定部、506 上限ガード実行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、前記車両は、エンジンと、前記エンジンの出力軸に連結するモータジェネレータとを含み、前記エンジンは、気筒と、前記気筒内の気体を排気する排気通路と、前記排気通路と気筒との間に設けられる排気バルブと、前記気筒に導入される気体の流量を調整するスロットルバルブとを含み、
前記モータジェネレータにおける前記エンジンのトルク反力に基づいてエンジントルクを推定するための推定手段と、
前記エンジントルクがしきい値よりも大きい場合に前記スロットルバルブの開度の上限値を減少させるための減少手段とを含み、
前記しきい値は、前記モータジェネレータの許容トルク、前記気筒内における圧力の最大値および前記排気バルブが閉じた場合に前記排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つに基づいて設定される、車両の制御装置。
【請求項2】
前記減少手段は、前記エンジントルクが前記しきい値以下になるように前記スロットルバルブの開度の上限値を前記エンジントルクと前記しきい値との差に応じた値だけ減少させる、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記減少手段は、前記エンジントルクが前記しきい値以下になるまで前記スロットルバルブの開度の上限値を段階的に減少させる、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足する場合に、前記エンジントルクを推定する、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記しきい値は、前記エンジントルクが前記モータジェネレータの許容トルクを超えないように設定される、請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記しきい値は、前記気筒内の圧力の最大値が前記エンジンにおいて許容される値を超えないように設定される、請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記しきい値は、前記排気バルブが閉じた場合に前記排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないように設定される、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項8】
車両の制御方法であって、前記車両は、エンジンと、前記エンジンの出力軸に連結するモータジェネレータとを含み、前記エンジンは、気筒と、前記気筒内の気体を排気する排気通路と、前記排気通路と気筒との間に設けられる排気バルブと、前記気筒に導入される気体の流量を調整するスロットルバルブとを含み、
前記モータジェネレータにおける前記エンジンのトルク反力に基づいてエンジントルクを推定するステップと、
前記エンジントルクがしきい値よりも大きい場合に前記スロットルバルブの開度の上限値を減少させるステップとを含み、
前記しきい値は、前記モータジェネレータの許容トルク、前記気筒内における圧力の最大値および前記排気バルブが閉じた場合に前記排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力のうちの少なくともいずれか一つに基づいて設定される、車両の制御方法。
【請求項9】
前記上限値を減少させるステップは、前記エンジントルクが前記しきい値以下になるように前記スロットルバルブの開度の上限値を前記エンジントルクと前記しきい値との差に応じた値だけ減少させる、請求項8に記載の車両の制御方法。
【請求項10】
前記上限値を減少させるステップは、前記エンジントルクが前記しきい値以下になるまで前記スロットルバルブの開度の上限値を段階的に減少させる、請求項8または9に記載の車両の制御方法。
【請求項11】
前記エンジントルクを推定するステップは、前記車両の走行状態が予め定められた走行条件を満足する場合に、前記エンジントルクを推定する、請求項8〜10のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項12】
前記しきい値は、前記エンジントルクが前記モータジェネレータの許容トルクを超えないように設定される、請求項8〜11のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項13】
前記しきい値は、前記気筒内の圧力の最大値が前記エンジンにおいて許容される値を超えないように設定される、請求項8〜12のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項14】
前記しきい値は、前記排気バルブが閉じた場合に前記排気通路への排気の漏れが生じる排気圧力を生じさせないように設定される、請求項8〜13のいずれかに記載の車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−64599(P2010−64599A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232466(P2008−232466)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】