説明

車両の制御装置

【課題】 運転者の負担を増大させることなく、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行う。
【解決手段】 自車両の衝突が検知された場合に、所定のタイミングでブレーキ装置5を作動させて自動ブレーキをかける衝突制御手段2と、運転者によるブレーキ操作が行われていることを検出するブレーキ操作検出手段16とを備える車両の制御装置において、上記衝突制御手段2の制御に基づいて作動する自動ブレーキの制動力を、上記ブレーキ操作検出手段16によって運転者によるブレーキ操作が検出されたときの方が、ブレーキ操作が検出されなかったときに比べて大きくなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突事故が発生したときに乗員を適正に保護できるように車両を制御する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両に加わる加速度を二次元的に検出するGセンサの検出信号に基づいて自車両が衝突状態になったことが検出された場合に、自動的にブレーキ装置を作動させて自車両に制動力を付与するように構成された自動ブレーキ装置が知られている。
【0003】
この特許文献1記載の発明では、衝突事故発生時に自車両のブレーキ装置が自動的に作動するように構成されているため、衝突事故発生時に作用する衝撃荷重により自車両が突き動かされることに起因した二次衝突の発生を防止することが可能であった。
【0004】
また、自車両が他車両等と衝突することを車間距離等に基づいて予知する衝突予知機能を備えた車両においては、上記自動ブレーキ装置を、例えば衝突事故が予知された時点で作動させるようにすれば、衝突時の衝撃を低減することも可能であった。
【特許文献1】特開平6−234342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記自動ブレーキ装置によって付与される制動力は、上記のような衝突時の衝撃低減効果や二次衝突防止効果をより高める点からは大きい方が望ましい。しかしながら、上記自動ブレーキ装置の制動力を、運転者の運転意思や着座状態等にかかわらず一律に大きくすると、それによって発生する大きな減速度によって運転者が強い違和感を覚える等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、運転者の負担を増大させることなく、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことのできる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明による車両の制御装置は、自車両の衝突が検知された場合に、所定のタイミングでブレーキ装置を作動させて自動ブレーキをかける衝突制御手段と、運転者によるブレーキ操作が行われていることを検出するブレーキ操作検出手段とを備え、上記衝突制御手段の制御に基づいて作動する自動ブレーキの制動力が、上記ブレーキ操作検出手段によって運転者によるブレーキ操作が検出されたときの方が、ブレーキ操作が検出されなかったときに比べて大きくなるように設定されていることを特徴としたものである。なお、ここでいう「自車両の衝突が検知された場合」とは、自車両が他車両等と衝突することが避けられない状態にあることが予知された場合、若しくは、実際に衝突が発生したことが検出された場合の、いずれか一方の場合か、又は、これら両方の場合を指すものとする。
【0008】
本発明の車両の制御装置によれば、自車両の衝突が検知された場合に自車両に自動ブレーキが付与されるように制御され、さらにこの制動力が、運転者によるブレーキ操作が行われているときの方が、ブレーキ操作が行われていないときに比べて大きくなるように設定されていることにより、運転者の負担を増大させることなく、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことができる。すなわち、運転者は、ブレーキペダルを踏んでいるときの方が、踏んでいないときに比べて身体の踏ん張りが利くことから、運転者の身体の踏ん張りが利くブレーキ操作中であれば、上記自動ブレーキの制動力を大きめに設定することによって多少大きな減速度を発生させたとしても、運転者に強い違和感を与えることがない。そして、このように運転者のブレーキ操作中にのみ上記自動ブレーキの制動力を高めることにより、運転者の負担を増大させることなく、例えば、衝突時の衝撃低減効果や二次衝突防止効果を高めることができ、その結果、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことができる。
【0009】
この構成においては、上記ブレーキ操作検出手段を、少なくとも運転者によるブレーキペダルの踏み込み量を検出するように構成するとともに、上記自動ブレーキの制動力を、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど大きく設定することが好ましい。同様に、上記ブレーキ操作検出手段を、少なくとも運転者によるブレーキペダルの踏み込み速度を検出するように構成し、上記自動ブレーキの制動力を、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど大きく設定することも好ましい。これらの構成によれば、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど、及び/又はブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど、上記自動ブレーキの制動力が大きくなるように設定されているため、運転者の踏ん張り度合いに応じて、衝突事故時の乗員保護効果を可及的に高めることができる。
【0010】
ただし、たとえ運転者がブレーキペダルを踏んでいたとしても、運転者がブレーキペダルから足を離す最中であるとき、すなわち、ブレーキペダルの踏み込み速度が負であるときは、運転者はブレーキペダルを踏み込む力を抜いてしまっていることになる。このような状況では、運転者は、ブレーキペダルを踏んでいない場合と同様に踏ん張りが利かないため、当該状況下で上記自動ブレーキの制動力を大きくしてしまうと、運転者は強い違和感を覚えてしまう。このため、上記自動ブレーキの制動力を、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み速度が負である場合には、運転者によるブレーキ操作が行われていない場合と同一の制動力となるように設定することが好ましい。このようにすれば、運転者の負担の増大を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の車両の制御装置によれば、運転者の負担を増大させることなく、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る車両の制御装置の一実施形態を示している。この車両の制御装置には、自車両の走行速度を自動的に調節して先行車両に追従する等の制御を実行する自動速度制御手段1と、自車両と対向車両等との衝突が避けられない状態となった場合又は実際に衝突が起きた場合に、所定の衝突対策制御を実行する衝突制御手段2とを有する運転制御ユニット4が設けられている。
【0013】
上記運転制御ユニット4には、自車両の走行速度を検出する車速センサ6と、ステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角センサ7と、車体に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ8と、自車両の前方に位置する他車両等の情報を検出する前方情報検出手段9と、自動速度制御用のメインスイッチ(ACCメインSW)10、セット/コーストスイッチ11、キャンセルスイッチ12、リジューム/アクセルスイッチ13および目標車間距離設定スイッチ14と、自動車が他車両等に衝突したことを検出するGセンサ等からなる衝突センサ15と、運転者によるブレーキ操作が行われたことを検出するブレーキ操作検出手段16とがそれぞれ接続されている。
【0014】
上記前方情報検出手段9は、検出用のレーダー波(検出波)として例えばミリ波やレーザー波あるいは超音波等を車体の前方側に向けて送信する送信機と、自車両の前方に位置する先行車両または対向車両等の他車両に当たって反射した反射波を受信する受信機とを有し、上記検出波の送信時点から反射波の受信時点までの時間を順次計測することにより、上記他車両と自車両との車間距離および相対速度を演算して検出し、この検出信号を運転制御ユニット4の自動速度制御手段1および衝突制御手段2に出力するように構成されている。
【0015】
上記ブレーキ操作検出手段16は、運転者によるブレーキ操作を検出するものであり、具体的には、ブレーキペダルの踏み込み量及び踏み込み速度を検出し、それらの検出信号を衝突制御手段2に出力するように構成されている。なお、ブレーキペダルの踏み込み速度については、正の場合と負の場合があるが、正の場合は運転者がブレーキペダルをさらに踏み込もうとしていることを表し、負の場合は運転者がブレーキペダルから足を離そうとしていることを表すことになる。
【0016】
上記自動速度制御手段1は、自動速度制御用のメインスイッチ10が運転者によってON操作された場合に、上記車速センサ6、操舵角センサ7およびヨーレートセンサ8の出力信号に応じ、自車両の進行路を予測するとともに、この進行路内に適当な先行車両が存在しているか否かを前方情報検出手段9の検出結果に基づいて判別し、自車両の進行路内に適当な先行車両が存在していることが確認された場合に、エンジンのスロットル弁駆動装置19にエンジン回転数を調節するための制御信号を出力するとともに、車両のブレーキ装置5に制動力を調節するための制御信号を出力することにより、自車両の走行速度を調節して上記目標車間距離設定スイッチ14により設定された目標車間距離に、先行車両との車間距離を一致させる制御を実行するように構成されている。
【0017】
上記自動速度制御用のセット/コーストスイッチ11は、自動速度制御手段1の記憶手段に目標車速を記憶させるものであり、運転者による目標車速の設定が行われていない車両の走行状態で、運転者が上記セット/コーストスイッチ11の操作を行うと、この操作時点の走行速度が目標車速として設定されるように構成されている。また、運転者による目標車速の設定が既に行われた状態で、運転者によってセット/コーストスイッチ11が操作されると、目標車速が一定の割合で低減されるようになっている。
【0018】
上記キャンセルスイッチ12は、自動速度制御手段1による速度制御を停止させる機能を有するものであり、このキャンセルスイッチ12が運転者により操作されると、通常の速度制御状態に移行することになる。上記リジューム/アクセルスイッチ13は、キャンセルスイッチ12により停止された自動速度制御を復帰させる機能と、目標車速を増大させる機能とを備えたものであり、自動速度制御の実行状態で上記リジューム/アクセルスイッチ13が運転者により操作されると、目標車速が一定の割合で増大されるように構成されている。
【0019】
そして、上記前方情報検出手段9等の出力信号に基づいて自車両の進行路内に適当な先行車両が存在していないことが確認された場合には、上記セット/コーストスイッチ11等により設定された目標車速に自車両の走行速度を一致させるための制御信号がスロットル弁駆動装置19およびブレーキ装置5に出力されることにより、上記目標車速に対応した速度制御が上記自動速度制御手段1において実行されるようになっている。
【0020】
また、上記自動速度制御手段1において、前方情報検出手段9により検出された先行車両と自車両との車間距離が、予め設定された所定の自動制動用閾値以下であることが確認された場合には、スロットル弁駆動装置19を作動させてスロットル弁を閉止状態とするとともに、ブレーキ装置5のホイールシリンダ等からなる駆動手段に作動油圧を供給することによって自動ブレーキをかけ、さらに、インストルメントパネルに設けられた表示ランプまたは車室内に設けられたアラーム等からなる警報装置20を作動させて自動制動状態にあることを運転者に報知する制御が実行されるように構成されている。
【0021】
さらに、上記自動速度制御手段1において、前方情報検出手段9により検出された先行車両と自車両との車間距離が、上記自動制動用閾値以上である走行状態において、この自動制動用閾値よりも大きい値に予め設定された警報用閾値以下であることが確認された場合には、上記警報装置20を作動させて車間距離が小さいことを運転者に報知する制御が実行されるようになっている。
【0022】
上記衝突制御手段2は、前方情報検出手段9により検出された他車両と自車両との車間距離および相対速度に基づいて、他車両と自車両とが衝突する状態にあること、つまり現時点から自車両のブレーキ操作およびハンドル操作を行っても衝突の発生が避けられない状態にあることを予知する機能と、この衝突が発生する時点を予測する機能と、この予測結果に基づいて運転者に所定の警告を行う機能と、この衝突が予知された場合及び衝突センサ15によって衝突が検出された場合に所定のタイミングでブレーキ装置5を作動させて自動ブレーキをかける機能等の、乗員を適正に保護するための機能を有している。
【0023】
具体的に、上記衝突制御手段2は、自車両と先行車両との車間距離および相対速度に基づいて自車両が先行車両に追突することが避けられない状態にあること、または自車両と対向車両との車間距離および相対速度に基づいて自車両と対向車両とが正面衝突することが避けられない状態にあることを予知すると、衝突状態になると予測された衝突予測時点よりも前に、上記警報装置20を作動させて衝突予知状態にあることを運転者に報知する制御と、シートベルトテンショナー21を作動させて予め設定された第1張力でシートベルトを巻き取る制御とを実行するとともに、衝突前自動ブレーキをかけるための制御として、ブレーキ装置5を作動させて予め設定された第1減速度に対応した制動力を断続的に付与する制御を実行する。さらに、上記衝突制御手段2は、衝突センサ15によって自車両と対向車両等との衝突が検出されると、所定のタイミングで、シートベルトテンショナー21を作動させて予め設定された第2張力でシートベルトを巻き取る制御を実行するとともに、衝突後自動ブレーキをかけるための制御として、ブレーキ操作検出手段16の検出結果に基づいて適切な第2減速度を設定するとともにブレーキ装置5を作動させてその第2減速度に対応した制動力を連続的に付与する制御を実行する。
【0024】
次に、上記車両用制御ユニット4に設けられた各制御手段1,2による制御動作を、図2および図3に示すフローチャートに基づいて説明する。上記自動速度制御用のメインスイッチ10がON操作される等により制御動作がスタートすると、各センサおよびスイッチ等からの信号が入力された後(ステップS1)、上記車速センサ6、操舵角センサ7およびヨーレートセンサ8の出力信号に基づいて自車両の進行路を予測する制御が実行されるとともに(ステップS2)、上記前方情報検出手段9の出力信号に基づいて前方に位置する先行車両または対向車両等と自車両との車間距離および相対速度の演算が行われる(ステップS3)。
【0025】
次いで、上記ステップS2で予測された自車両の進行路と、ステップS3で演算された車間距離および相対速度とに基づき、自車両の進行路内に先行車両が存在するか否か、または自車両の進行路に向かう対向車両が存在するか否かを判定する等により、自車両に他車両が接近している状態にあるか否かを判定し(ステップS4)、NOと判定された場合には、セット/コーストスイッチ11の操作があったか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5でYESと判定されてセット/コーストスイッチ11が操作されたことが確認された場合には、その時点における自車両の走行速度(現車速)を目標車速VTとして設定した後(ステップS6)、下記ステップS7に移行する。
【0026】
上記ステップS5でNOと判定された場合には、ステップS6等において設定された目標車速VTと、車速センサ6により検出された実車速Vとの偏差(VT−V)が、予め設定された加速用基準値αよりも大きいか否かを判定し(ステップS7)、YESと判定されて実車速Vが目標車速VTよりも、ある程度低い状態にあることが確認された場合には、上記偏差(VT−V)に対応した加速度目標値を設定する(ステップS8)。
【0027】
上記ステップS7でNOと判定されて目標車速VTに比べて実車速Vがそれ程低い状態にないことが確認された場合には、実車速Vと目標車速VTとの偏差(V−VT)が予め設定された減速用基準値βよりも大きいか否かを判定し(ステップS9)、YESと判定されて実車速Vが目標車速VTよりも、ある程度高い状態にあることが確認された場合には、上記偏差(V−VT)に対応した減速度目標値を設定する(ステップS10)。
【0028】
次いで、上記ステップS8またはステップS10で設定された加速度目標値もしくは減速度目標値に応じて自車両の走行速度を上昇させ、あるいは低下させるための制御信号を上記スロットル弁駆動装置19またはブレーキ装置5に出力することにより、自車両の走行速度(実車速V)を目標車速Vに一致させる速度制御を実行する(ステップS11)。なお、上記ステップS9でNOと判定されて実車速Vと目標車速VTとが略等しいことが確認された場合には、上記速度制御を実行することなく下記ステップS21に移行することにより現在の走行速度を維持する。
【0029】
一方、ステップS4でYESと判定されて自車両の進行路内に先行車両等が存在していることが確認された場合には、前方情報検出手段9により検出された先行車両等と自車両との車間距離が、予め設定された所定の自動制動用閾値K1よりも小さいか否かを判定し(ステップS12)、YESと判定されて先行車両等と自車両とがかなり接近した状態にあると判定された場合には、スロットル弁駆動装置19を作動させてスロットル弁を閉止状態とするとともに、上記先行車両等の接近状態が確認された時点t0で、図4に示すように、ブレーキ装置5を作動させて自動ブレーキをかけ、予め0.4G程度の減速度に対応した値に設定された制動力B0を付与し、かつ警報装置20を作動させて自動制動状態にあることを報知する制御を実行する(ステップS13)。
【0030】
上記ステップS12でNOと判定された場合には、前方情報検出手段9により検出された先行車両等と自車両との車間距離が、上記自動制動用閾値K1以上である状態において、この自動制動用閾値K1よりも大きい値に予め設定された警報用閾値K2よりも小さいか否かを判定し(ステップS14)、YESと判定されて先行車両と自車両とがやや接近した状態にあることが確認された場合には、警報装置20を作動させて車間距離が小さいことを報知する制御を実行する(ステップS15)。
【0031】
上記ステップS14でNOと判定されて先行車両と自車両との車間距離が上記警報用閾値K2以上であることが確認された場合には、上記目標車間距離設定スイッチ14により設定された目標車間距離LTと、上記前方情報検出手段9により検出された実車間距離Lとの偏差(LT−L)が予め設定された減速用基準値γよりも大きいか否かを判定し(ステップS16)、YESと判定されて実車間距離Lが目標車間距離LTよりも、ある程度小さい状態にあることが確認された場合には、上記偏差(LT−L)に対応した減速度目標値を設定する(ステップS17)。
【0032】
上記ステップS15でNOと判定されて目標車間距離LTに比べて実車間距離Lが、それ程小さい状態にないことが確認された場合には、上記実車間距離Lと目標車間距離LTとの偏差(L−LT)が予め設定された加速用基準値δよりも大きいか否かを判定し(ステップS18)、YESと判定されて実車間距離Lが目標車間距離LTよりも、ある程度大きい状態にあることが確認された場合には、上記偏差(L−LT)に対応した加速度目標値を設定する(ステップS19)。
【0033】
その後、上記ステップS17またはステップS19で設定された減速度目標値もしくは加速度目標値に応じて自車両の走行速度を低下させ、あるいは上昇させるための制御信号を上記スロットル弁駆動装置19またはブレーキ装置5に出力することにより、先行車両と自車両との車間距離を目標車間距離に一致させるための速度制御を実行する(ステップS20)。なお、上記ステップS18でNOと判定されて先行車両と自車両との車間距離が目標車間距離に略等しいことが確認された場合には、上記速度制御を実行することなく下記ステップS21に移行することにより現在の車間距離を維持する。
【0034】
次いで、上記衝突制御手段2において自車両が他車両と衝突することが避けられない状態にあることが予知されたか否かを判定し(ステップS21)、YESと判定された場合には、シートベルトテンショナー21を作動させてシートベルトを予め設定された第1張力、例えば運転者を過度に拘束することなくシートベルトの弛みを解消する程度に設定された張力でシートベルトを巻き取る制御を実行するとともに(ステップS22)、衝突前自動ブレーキをかけるための制御として、図4に示すように、衝突が避けられない状態にあることが予知された時点t1で、予め0.45Gに設定された第1減速度に対応した制動力B1を断続的に付与する制御を実行する(ステップS23)。
【0035】
さらに、警報装置20を作動させて衝突の予知状態にあることを運転者に報知した後(ステップS24)、衝突センサ15の検出信号に基づいて衝突の発生が検出されたか否かを判定し(ステップS25)、YESと判定された場合には、シートベルトテンショナー21を作動させてシートベルトを予め設定された第2張力、例えば運転者をかなりの拘束力で運転者用シートに保持させる程度に設定された張力でシートベルトを巻き取る制御を実行する(ステップS26)。
【0036】
次いで、上記ブレーキ操作検出手段16の検出信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み量がゼロより大きいか、つまり、運転者がブレーキペダルを踏んでいるか否かを判定し(ステップS27)、NOと判定された場合には、衝突後自動ブレーキをかけるための制御として、図4の実線で示すように、衝突の検出時点t2で、予め0.6G程度に設定された第2減速度に対応する制動力B2にブレーキ装置5の制動力を再設定するとともにこの制動力B2を連続的に付与する制御を実行する(ステップS31)。なお、上記予め設定された第2減速度の0.6Gという値は、運転者に過大な違和感を与えない範囲でなるべく大きく設定されたものであり、一般に、0.6Gよりも大きな減速度が発生すると、運転者は、例えば身体を支えるものがない状態では、かなりの違和感を覚えるようになる。
【0037】
一方、上記ステップS27でYESと判定されてブレーキペダルの踏み込み量がゼロより大きいことが確認された場合には、上記ブレーキ操作検出手段16の検出信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み速度が負であるか、つまり、運転者がブレーキペダルから足を離す最中であるか否かを判定し(ステップS28)、YESと判定された場合には、上記ステップ27でブレーキ操作が検出されなかったときと同様に、予め0.6G程度に設定された第2減速度に対応した制動力B2を連続的に付与する制御を実行する。
【0038】
これに対し、上記ステップS28においてNOと判定されて運転者によるブレーキペダルの踏む込み速度が正又はゼロであることが確認された場合には、上記衝突制御手段2において、上記ブレーキ操作検出手段16によって検出されたブレーキペダルの踏み込み量及び踏み込み速度に応じた減速度増大係数aを設定する(ステップS29)。この減速度増大係数aは、上記予め設定された第2減速度をさらに増大させるためにこれに乗じられる1より大きい係数であり、最大で1.4程度までの範囲で、ブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど及びブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど大きい値に設定されるようになっている。
【0039】
そして、上記衝突制御手段2は、上記ステップS29において設定された減速度増大係数aを、ステップS30において、予め設定された上記第2減速度(0.6G程度)に乗じることにより、補正済み第2減速度を求める。これにより、補正済み第2減速度は、0.6Gよりも大きい値で、最大で0.8G程度に設定される。さらに、上記衝突制御手段2は、ステップS31においてブレーキ装置5を作動させ、この補正済み第2減速度に対応した制動力B2’を連続的に付与する制御を実行する(図4の破線参照)。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の車両の制御装置によれば、自車両の前方に存在する対向車両等の情報を検出する前方情報検出手段9と、自車両が衝突状態になったことを検出する衝突センサ15と、運転者によるブレーキ操作が行われていることを検出するブレーキ操作検出手段16と、これら前方情報検出手段9、衝突センサ15、及びブレーキ操作検出手段16から得られる情報に基づいて、衝突事故発生の前後にわたって適切な衝突対策制御を実行する衝突制御手段2とが設けられていることにより、衝突事故による被害を効果的に低減して運転者を適正に保護することができる。
【0041】
すなわち、本実施形態の車両の制御装置によれば、まず、前方情報検出手段9の検出結果に基づいて対向車両等が自車両に衝突することが予知された場合に、この衝突が発生すると予測された衝突予測時点よりも前の所定時期、例えば上記衝突が予知された時点t1で、警報装置20を作動させる制御と、シートベルトテンショナー21を作動させてシートベルトの弛みを解消する程度に設定された第1張力でシートベルトを巻き取る制御と、さらに衝突前自動ブレーキをかけるための制御として、ブレーキ装置5を作動させて予め設定された第1減速度に対応した制動力B1を断続的に付与する制御とが上記衝突制御手段2において実行されるようになっているため、運転者に危険を察知させて身構えさせることができるとともに、衝突時の衝撃を低減することができる。
【0042】
さらに、衝突センサ15によって自車両が衝突状態になったことが検出された場合には、所定のタイミング、例えば衝突の発生が検出された時点t2で、衝突後自動ブレーキをかけるための制御として、ブレーキ操作検出手段16の検出結果に基づいて適切な第2減速度を設定するとともにブレーキ装置5を作動させてその第2減速度に対応した制動力(B2又はB2’)を連続的に付与する制御が上記衝突制御手段2において実行されるようになっているため、衝突時に作用する衝撃荷重により自車両が突き動かされて更に他の車両等に衝突するという二次衝突の発生を効果的に防止することができる。
【0043】
しかも、本実施形態では、上記衝突後自動ブレーキの制動力が、ブレーキ操作検出手段16によって運転者によるブレーキ操作が検出されたときの方が、ブレーキ操作が検出されなかったときに比べて大きくなるように設定されている。具体的には、運転者がブレーキ操作を行っていないときの衝突後自動ブレーキの制動力が、予め運転者に過度の違和感を与えない程度(例えば0.6G程度)に設定された第2減速度に対応した値(制動力B2)に設定される一方で、運転者がブレーキ操作を行っているときの衝突後自動ブレーキの制動力は、上記予め設定された第2減速度よりも大きい値(例えば最大で0.8G程度)に増大補正された補正済み第2減速度に対応した値(制動力B2’)に設定されるようになっている。これにより、運転者の負担を増大させることなく、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことができる。すなわち、運転者は、ブレーキペダルを踏んでいるときの方が、踏んでいないときに比べて身体の踏ん張りが利くことから、運転者の身体の踏ん張りが利くブレーキ操作中であれば、衝突後自動ブレーキの制動力を増大させることにより多少大きな減速度を発生させたとしても、運転者に強い違和感を与えることがない。そして、このように運転者のブレーキ操作中にのみ衝突後自動ブレーキの制動力を高めることにより、運転者の負担を増大させることなく、二次衝突の発生をより確実に防止することができ、その結果、衝突事故時の乗員保護をより効果的に行うことができる。
【0044】
さらに、上記補正済み第2減速度の、上記予め設定された第2減速度に対する増大率(減速度増大係数a)が、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど及びブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど大きい値に設定されるようになっているため、運転者の踏ん張り度合いに応じて、衝突事故時の乗員保護効果を可及的に高めることができる。
【0045】
ただし、たとえ運転者がブレーキペダルを踏んでいたとしても、運転者がブレーキペダルから足を離す最中であるとき、すなわち、ブレーキペダルの踏み込み速度が負であるときは、運転者はブレーキペダルを踏み込む力を抜いてしまっていることになる。このような状況では、運転者は、ブレーキペダルを踏んでいない場合と同様に踏ん張りが利かないため、当該状況下で上記衝突後自動ブレーキの制動力を上記補正済み第2減速度に対応した制動力B2’に設定してしまうと、運転者は強い違和感を覚えてしまう。しかるに、本実施形態では、ブレーキペダルの踏み込み速度が負である場合については、運転者がブレーキペダルを踏んでいない場合と同様に、上記衝突後自動ブレーキの制動力を上記予め設定された第2減速度に対応した制動力B2に設定するようにしている。これにより、運転者の負担の増大を確実に防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、衝突後自動ブレーキの制動力を、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど及びブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど大きい値に増大補正し、かつ、ブレーキペダルの踏み込み速度が負の場合は当該増大補正を行わないように構成したが、これを例えば、運転者によるブレーキ操作が有ったときは一律の値に増大させるようにしてもよい。あるいは、衝突後自動ブレーキの制動力を、ブレーキペダルの踏み込み量又は踏み込み速度のいずれか一方にのみ比例させるように構成してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、衝突センサ15によって衝突が検出された後に付与される衝突後自動ブレーキの制動力を、運転者のブレーキ操作の有無等によって増減設定するようにしたが、これと同様の制御を、衝突が発生する前に付与される衝突前自動ブレーキに対して適用してもよい。すなわち、本実施形態では、衝突前自動ブレーキを、予め設定された第1減速度(例えば0.45G)に対応した制動力B1を断続的に付与するように構成したが(ステップS23)、これを例えば、上記ステップS27〜S31と同様の制御に基づいて、運転者のブレーキ操作の有無等によって例えば0.6G程度付近で増減設定される減速度に対応した制動力を連続的に付与するように構成してもよい。このようにすれば、運転者の負担を増大させることなく、衝突時の衝撃をより効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る車両の制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】上記制御装置による制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図3】上記制御装置による制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図4】衝突制御時における制動力の変化状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0049】
2 衝突制御手段
5 ブレーキ装置
15 衝突センサ
16 ブレーキ操作検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の衝突が検知された場合に、所定のタイミングでブレーキ装置を作動させて自動ブレーキをかける衝突制御手段と、
運転者によるブレーキ操作が行われていることを検出するブレーキ操作検出手段とを備え、
上記衝突制御手段の制御に基づいて作動する自動ブレーキの制動力は、上記ブレーキ操作検出手段によって運転者によるブレーキ操作が検出されたときの方が、ブレーキ操作が検出されなかったときに比べて大きくなるように設定されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
上記ブレーキ操作検出手段は、少なくとも運転者によるブレーキペダルの踏み込み量を検出するものであって、
上記自動ブレーキの制動力は、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど大きくなるように設定されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の制御装置において、
上記ブレーキ操作検出手段は、少なくとも運転者によるブレーキペダルの踏み込み速度を検出するものであって、
上記自動ブレーキの制動力は、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み速度が速いほど大きくなるように設定されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の制御装置において、
上記自動ブレーキの制動力は、上記ブレーキ操作検出手段によって検出されたブレーキペダルの踏み込み速度が負である場合には、運転者によるブレーキ操作が行われていない場合と同一の制動力となるように設定されていることを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−1516(P2007−1516A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186329(P2005−186329)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】