車両の安全運転装置
【課題】 駐車場での安全運転を可能とする。
【解決手段】 ナビゲーション制御部8は現在地を駐車場の場所情報と比較して駐車場内にあるとき徐行推奨エリアに入っていると判別し、安全優先モードをオンする。運転制御部18は安全優先モードがオンのとき、アクセルペダル10の踏み込み量に比例したスロットル開度となるように電子スロットル12を制御し、このスロットル開度とエンジン回転速度に応じた最適な空燃比となるように電子制御燃料噴射装置13を制御する。安全優先モードがオンすると、運転制御部18はスロットル開度の上限が通常より小さい範囲で、アクセルペダル10の踏み込み量が或る値まではアクセルペダル10の踏み込み量に比例したスロットル開度、当該或る値以上は一定のスロットル開度となるように電子スロットル12を制御し、このスロットル開度とエンジン回転速度に応じた最適な空燃比となるように電子制御燃料噴射装置13を制御する。
【解決手段】 ナビゲーション制御部8は現在地を駐車場の場所情報と比較して駐車場内にあるとき徐行推奨エリアに入っていると判別し、安全優先モードをオンする。運転制御部18は安全優先モードがオンのとき、アクセルペダル10の踏み込み量に比例したスロットル開度となるように電子スロットル12を制御し、このスロットル開度とエンジン回転速度に応じた最適な空燃比となるように電子制御燃料噴射装置13を制御する。安全優先モードがオンすると、運転制御部18はスロットル開度の上限が通常より小さい範囲で、アクセルペダル10の踏み込み量が或る値まではアクセルペダル10の踏み込み量に比例したスロットル開度、当該或る値以上は一定のスロットル開度となるように電子スロットル12を制御し、このスロットル開度とエンジン回転速度に応じた最適な空燃比となるように電子制御燃料噴射装置13を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の安全運転装置に係り、とくに駐車場等での事故を未然に防止する車両の安全運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ではアクセルペダルを操作してスロットル開度を可変し、動力源の出力を増減させたり、ブレーキペダルを操作して制動力を増減したりして、加減速を行い、発進、停車、所望速度での走行が自在にできるようになっている。具体的には、アクセルぺダルの踏み込み量(アクセル開度)情報を入力した運転制御部が吸気・燃料系に設けられた電子制御スロットルを制御し、アクセルぺダルの踏み込み量に比例してスロットル開度を可変し吸気量を増減するとともに、スロットル開度とエンジン回転数に応じた最適な空燃比を計算し、電子制御燃料噴射装置を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を増減することで出力を増減させる。また、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて油圧式ブレーキの液圧が増減し、車輪に対する制動力が増減する。
【0003】
ところで、駐車場に入って車両を駐車させたり、駐車場から車両を発進させたりする場合、走行スペースが限られていること、前後を人が横切ることなどから慌ててアクセルやブレーキの操作を誤り、他の車両や施設、人と接触・衝突事故を起こす危険性が高い。公園や商店街の道路でも、人やボールが飛び出してきたとき慌てて操作ミスし、事故を起こす危険性が高い。
従来から、車間距離が狭くなると自動的にブレーキを掛けて追突を防止する追突防止装置やアクセルペダルやブレーキペダルの操作をしなくても自動的にエンジンやブレーキを制御して一定速度で走行させる自動運転装置は存在しているが、駐車場内での急加速・急発進や高速走行を制限することは出来なかった。
また、特開2004−169674号にアクセルとブレーキの踏み間違えを防止する提案がされているが、踵を床に設置しているか否かでアクセル操作かブレーキ操作かを判別する構成なため、ドライバーが踵を床に着けずにアクセル操作する癖が有る場合や踵を床に着けてブレーキ操作する癖が有る場合に誤動作を起こし、ドライバーの意図したアクセル・ブレーキ操作が出来なくなって却って危険となる欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−169674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、駐車場などの運転に注意を要する場所での安全を確保できる車両の安全運転装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の安全運転装置の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、動力源の出力を通常時より制限する制限手段と、を備えたことを特徴としている。制限手段は、スロットル開度の上限を通常時より小さくしたり、アクセルペダルの踏み込み量の上限を通常時より小さくしたり、アクセルペダルの踏み込み量に対するスロットル開度を通常時より小さくしたりすることで、動力源の出力の制限を行うようにすることができる。
本発明の車両の安全運転装置の他の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、車両の上限速度を一定以下に制限する制限手段と、を備えたことを特徴としている。車両の上限速度は、外部から通信により受信した現在エリア速度制限情報に基づき設定するようにしても良い。
本発明の車両の安全運転装置の他の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、ブレーキ操作による制動力を通常時より増大させる制動力増大手段と、を備えたことを特徴としている。
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしても良く、この場合、徐行推奨エリアの場所情報は地図情報から入手するようにしても良い。
また、徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、外部から通信により受信した現在エリアの種別情報に基づき判別するようにしても良い。
また、上限速度は、外部から通信により受信した速度制限情報に基づき設定するようにしても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つによれば、車両が駐車場、公園、商店街等の徐行推奨エリアに入ると、アクセル操作による動力源の出力が通常時より制限されるので、急加速・急発進による危険を回避できる。
また、本発明の他の一つによれば、徐行推奨エリアに入ると、車両の上限速度が一定以下に制限されるので、高速走行による危険を未然に防止できる。
また、本発明の更に他の一つによれば、徐行推奨エリアに入ると、ブレーキ操作による制動力が通常時より増大されるので、他の車両、施設、人などと接触・衝突しそうな場合に車両を素早く減速・停止させて接触・事故を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0009】
図1を参照して本発明の第1実施例を説明する。図1は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図である。
図1において、1は現在位置周辺の地図画像を表示する車載用ナビゲーション装置であり、現在位置が、駐車場内、公園内、商店街のいずれかの徐行推奨エリアに入っているか否かを判別する機能も有している。車載用ナビゲーション装置1の内、2は衛星航法と自律航法を組み合わせて車両の現在位置と現在方位を検出する現在地検出部、3は地図表示や徐行推奨エリアの判別に用いる各種地図データを蓄積したハードディスク装置等の地図データ蓄積部、4はITS (高度交通システム) の一つであるVICS(道路交通情報システム。VICSは登録商標。以下同様)のセンタからFM多重放送により送信された広域の渋滞情報(渋滞箇所・長さ・方向)、規制情報(場所・種別)、駐車場情報(場所・満空)等の道路交通情報を受信するFM多重道路交通情報受信部、5はVICSのセンタからビーコンによりスポット的に送信された狭い範囲の道路交通情報を受信する路車間通信部、6は道路交通情報等を一時記憶する記憶部、7は地図画像の表示部、8は現在地周辺の地図画像を自車位置マークと現在地道路交通情報付で表示させるナビゲーション制御部である。地図データ蓄積部3には、駐車場、公園、商店街について、経緯度座標上で駐車場敷地境界、公園敷地境界、商店街エリア境界を多角形近似した場所情報が含まれており、ナビゲーション制御部8が現在地がこれらの徐行推奨エリアに入っているか否か判別可能になっているものとする。
なお、VICSのセンタが送信する道路交通情報の中に駐車場、公園、商店街について、経緯度座標上で駐車場敷地境界、公園敷地境界、商店街エリア境界を多角形近似した場所情報を含めるようにしてもよい。
【0010】
10はエンジン(図示せず)の出力を増減させるアクセルペダルであり、踏み込み量(角度)Aがアクセルペダルセンサ(図示せず)により検出される。11はエンジンの吸気・燃料系、12は吸気量を電子制御で可変する電子制御スロットル、13は燃料噴射量を電子制御で可変する電子制御燃料噴射装置である。14は制動力の増減操作をするブレーキペダルであり、踏み込み量(角度)Bがブレーキぺダルセンサ(図示せず)により検出される。15はブレーキペダル14の踏み込み量Bに比例した油圧を発生する油圧発生部、16は油圧発生部15と結合された油圧式ブレーキであり、油圧の増減に応じて制動力を増減する。17は油圧発生部15に付設されたブレーキアシスト部であり、後述する運転制御部の制御により、ブレーキペダル14の踏み込み量Bと油圧(または制動力)の比率を通常より大きくしたり(倍力。図2の破線参照)、通常の比率に戻したりする(図2の実線参照)。
【0011】
18は運転制御部(ECU)であり、アクセルペダル10の踏み込み量Aを入力し、Aに比例するスロットル開度Sとなるように電子制御スロットル12を制御するとともに、外部のエンジン回転センサ(図示せず)から入力したエンジン回転速度EVとスロットル開度Sに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する。但し、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているとき、アクセルペダル10の踏み込み量Aに対するスロットル開度Sの上限を通常より小さく設定して、急加速・急発進が出来ないようにする(図3の破線参照)。また、運転制御部18は車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているとき、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオン制御をする。
【0012】
図4はナビゲーション制御部8の制御処理を示すフローチャート、図5と図6は運転制御部18のエンジン制御処理とブレーキ制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の動作を説明する。なお、アクセルぺダル10の踏み込み量Aの可変操作範囲は0〜AMAX、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの可変操作範囲は0〜BMAXとする。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
現在地検出部2は衛星航法と自律航法を組み合わせて定期的に車両の現在位置と現在方位を検出し、ナビゲーション制御部8に出力する。また、FM多重道路交通情報受信部4と路車間通信部5は道路交通情報を受信するとナビゲーション制御部8に出力する。ナビゲーション制御部8はFM多重道路交通情報受信部4または路車間通信部5から道路交通情報を入力すると記憶部6に一時記憶しておく(図4のステップS10、S11)。ナビゲーション制御部8は定期的に現在地検出部2から現在位置と現在方位を入力し、地図データ蓄積部3に蓄積された地図データを用いて現在地周辺の地図画像を自車位置マーク、道路交通情報とともに描画し、表示部7に表示させる(ステップS12、S13)。そして、地図データと道路交通情報の中の駐車場、公園、商店街の場所情報(エリアを示す経緯度座標上の多角形)を現在位置と比較し、車両が現在、駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているか判別し、郊外を走行しているなどしてNOであれば、安全優先モードオフ信号を出力する(ステップS14、S15)。以下、ナビゲーション制御部8は図4のステップS10以下の処理を繰り返す。
【0013】
一方、運転制御部18にはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサとブレーキペダルセンサから踏み込み量A、B、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18はアクセルペダル10の踏み込み量Aとブレーキペダル14の踏み込み量Bを監視しており、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始し、踏み込み量Aが0より大きくなると、アクセルの踏み込みが開始したと判断し(図5のステップS20でYES)、まずナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(ステップS21)。郊外を走行しているなどしてNOであれば、通常のスロットル開度可変範囲内(0〜SMAX、図3の実線参照)で電子制御スロットル12を制御し、現在の踏み込み量Aに応じた分のスロットル開度Sとし(ステップS22)、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS23)。次に、踏み込み量Aが0となり、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS24)、NOであればステップS21に戻って同様の処理をし、アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力を通常の範囲で増減させる。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS24でYESと判断し、ステップS20へ戻る。
このように、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリア以外を走行しているとき、スロットル開度Sが通常の範囲で可変するので(図3の実線参照)、急加速が可能である。
【0014】
その後、ドライバが減速のためブレーキペダル14の踏み込みを開始し、踏み込み量Bが0より大きくなると、運転制御部18はブレーキの踏み込みが開始したと判断し(図6のステップS30でYES)、ナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(ステップS31)。NOであれば、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオフ制御を行なう(ステップS32)。これにより、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの増大につれて制動力が通常に増大して車両が減速する(図2の実線参照)。ドライバがブレーキペダル14の踏み込みを終了したときステップS33でYESと判断し、ステップS30へ戻る。
【0015】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、ナビゲーション制御部8が地図データ中の駐車場場所情報と現在位置を比較した結果、車両の現在位置が駐車場内に在るとき、徐行推奨エリアに入ったと判断し、運転制御部18へ安全優先モードオン信号を出力する(図4のステップS14、S16)。
すると、運転制御部18はアクセルの踏み込みが開始したと判断したあと、ナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているかのステップS21の判断でYESとなる。このとき、通常より上限が狭いスロットル開度可変範囲内(0〜SMAX’。図3の破線参照)で電子制御スロットル12を制御し、或る踏み込み量A=A0まではAに比例して増大するスロットル開度Sとし、A0<A≦AMAXでは一定のスロットル開度SMAX’とし、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS25、S23)。次に、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS24)、NOであればステップS21に戻って同様の処理をし、アクセルペダル10の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力を通常より制限された範囲で増減させる。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS24でYESと判断し、ステップS20へ戻る。
このように、車両が駐車場内に入ったとき、スロットル開度Sの上限が通常より制限された範囲で可変するので、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速や急発進を防止でき、他の車両、施設、人との接触・衝突事故の危険性を小さくできる。
【0016】
また、ドライバが駐車場で他の車両や施設、人との接触・衝突を避けるためブレーキペダル14の踏み込みを開始し、踏み込み量Bが0より大きくなると、運転制御部18はブレーキの踏み込みが開始したと判断し、続いてナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(図6のステップS30、S31)。YESなので、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオン制御を行なう(ステップS34)。これにより、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの増大につれて制動力が通常より速く増大し、車両を迅速に減速、停車させることができ、駐車場内での接触・衝突事故の危険性を小さくできる(図2の破線参照)。
車両が駐車場内から外に出ると、ナビゲーション制御部8が地図データ中の駐車場場所情報と現在位置を比較した結果、車両の現在位置が駐車場内に無く徐行推奨エリアから出たと判断し、運転制御部18へ安全優先モードオフ信号を運転制御部18に出力するので(図4のステップS14でNO、S15)、スロットル開度の可変範囲が通常に復帰し(図5のステップS21でNO、S22)、また、ブレーキアシストもオフし(図6のステップS31でNO、S32)、ドライバはアクセルペダル10とブレーキペダル14の操作で通常に車両の加速と制動を行なうことができる。
【0017】
公園内や商店街に入ったときも駐車場内に入ったときと全く同様にして、ナビゲーション制御部8は現在位置を公園内や商店街の場所情報と比較し、公園内や商店街に在れば徐行推奨エリアに入ったと判別し、安全優先モードオン信号を運転制御部18へ出力する。安全優先モードオン信号を入力した運転制御部18はスロットル開度の上限を通常より狭くした範囲で可変することで急加速・急発進を防止するとともにブレーキアシストオン制御をしてブレーキペダル14の踏み込み量Bに対する制動力を通常より増大させて、素早く減速・停車が可能とする。
【0018】
この実施例によれば、駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、エンジン出力が通常より制限されるので、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。また、車両が徐行推奨エリアに入ると、ブレーキアシストがオンし、ブレーキペダル14の踏み込み量の増大につれて制動力が通常より速く増大するので、他の車両、施設、人などと接触・衝突しそうな場合に車両を迅速に減速、停車させることができ、これによっても接触・衝突事故の危険性を小さくできる。
【実施例2】
【0019】
次に図7を参照して本発明の第2実施例を説明する。図7は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第2実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、アクセルペダル10の踏み込み量の上限を物理的に小さくするようにしたものである。
図7において、20はアクセルペダル10の最大踏み込み量を可変するためのアクチュエータ、21はアクチュエータ20に結合されて昇降するストッパである。アクチュエータ20は運転制御部(ECU)18Aにより制御される。具体的には、運転制御部18Aは安全優先モードがオフ状態のとき、アクチュエータ20を制御してストッパ21を所定の復帰位置に下げ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常の範囲(0〜AMAX)とし、安全優先モードがオフからオンに変わるとアクチュエータ20を制御し、ストッパ21を復帰状態から所定高さまで上昇させ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常より上限を小さく制限した範囲(0〜AMAX’、但し、AMAX’<AMAX)とし、急加速・急発進が出来ないようにする。
図7の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0020】
図8は運転制御部18Aのアクセルペダル踏み込み量制限処理を示すフローチャート、図9はエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第2実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Aにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、エンジン回転センサからエンジン回転速度が入力されている。運転制御部18Aは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、アクチュエータ20を制御してストッパ21を所定の復帰位置に下げ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常の範囲(0〜AMAX)とする(図8のステップS40、S41)。
ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、現在の踏み込み量Aに応じた分のスロットル開度Sとし、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(図9のステップS50〜S52)。次に、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS53)、NOであればステップS51に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常の範囲(図3の実線参照)で可変し、エンジン出力が通常の範囲で増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS53でYESと判断し、ステップS50へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、スロットル開度Sが通常の範囲で可変するので、急加速が可能である。
【0021】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全優先モードがオンすると、運転制御部18Aはアクチュエータ20を制御し、ストッパ21を復帰状態から所定高さまで上昇させ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常より上限を小さく制限した範囲(0〜AMAX’)とする(図8のステップS40、S42)。ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度に基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を最適な空燃比となるように制御するが、踏み込み量Aの上限が制限されているためスロットル開度Sの可変範囲も上限が通常より小さくなった範囲(0〜SMAX’)で可変し、エンジン出力の上限が通常より制限される(図9のステップS50〜S52)。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Aは再び、ストッパ21を下方の復帰位置に下げ、アクセルペダル10の踏み込み量Aを通常の範囲で可変操作できるようにする(図8のステップS40、S41)。
【0022】
この第2実施例によっても、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、アクセルペダル10の踏み込み量Aの上限が通常より制限され、スロットル開度Sは上限が通常より制限された範囲で可変するので、エンジン出力が通常より制限されることになり、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【実施例3】
【0023】
次に図10を参照して本発明の第3実施例を説明する。図10は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第3実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、アクセルペダル10の踏み込み量Aとスロットル開度Sの比率を小さくするようにしたものである。
図10において、運転制御部18Bは安全優先モードがオフ状態のとき、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御し(図11の実線参照)、安全優先モードがオン状態のとき、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率より小さい比率関係となるようにスロットル制御をし、急加速・急発進が出来ないようにする(図11の破線参照)。
図10の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0024】
図12は運転制御部18Bのエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、この図を参照して上記した第3実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Bにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18Bは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるように踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を最適な空燃比となるように制御して燃料噴射量を可変する(図12のステップS60〜S63)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS64でNO)、ステップS61に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常の比率関係で可変し(図11の実線参照)、エンジン出力が通常の範囲で増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS64でYESと判断し、ステップS60へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、アクセルペダル14の踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係で可変するので、急加速が可能である。
【0025】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全優先モードがオンすると、運転制御部18Bはドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常より小さい比率関係で踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS60、S61、S65、S63)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS64でNO)、ステップS61に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常より小さい比率関係で可変し(図11の破線参照)、エンジン出力が通常より上限が制限される。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS64でYESと判断し、ステップS60へ戻る。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Bは再び、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御をする。
【0026】
この第3実施例によっても、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、アクセルペダル10の踏み込み量Aとスロットル開度Sの比率関係が通常より小さくなるので、エンジン出力が通常より制限され、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【実施例4】
【0027】
次に図13を参照して本発明の第4実施例を説明する。図13は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第4実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、車速を所定の上限速度以下に制限するようにしたものである。
図13において、運転制御部18Cは図示しない車速センサから車速MVを入力し、安全優先モードがオフ状態のときは、通常のスロットル制御と燃料噴射制御をし、安全優先モードがオン状態になると、車速が所定の上限速度V0以下(例えば、V0=20km/h)であれば通常のスロットル制御と燃料噴射制御をするが、所定の上限速度を越えると燃料噴射を停止してエンジン出力を零とし、高速走行が出来ないようにする。
図13の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0028】
図14は運転制御部18Cのエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、この図を参照して上記した第4実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Cにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、図示しない車速センサから車速MV、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18Cは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに応じたスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度に基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(図14のステップS70〜S73)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS74でNO)、ステップS71に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力が増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS74でYESと判断し、ステップS70へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、とくに速度制限されることなく高速走行が可能である。
【0029】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全運転優先モードがオンすると、運転制御部18Cはドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに応じたスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御したあと(ステップS71、S75)、現在の車速が所定の上限速度V0を超えているか判断し(ステップS76)、越えていなければスロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS73)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS74でNO)、ステップS71に戻って同様の処理をする。車速が上限速度V0を越えない間はアクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが可変し、エンジン出力が増減する。但し、安全優先モードオン下で車速MVが上限速度V0を越えると、運転制御部18Cは電子制御燃料噴射装置13を制御して燃料噴射量を零とし(ステップS76でYES、S77)、エンジン出力を零とする。これにより、加速が止り、減速する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS74でYESと判断し、ステップS70へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリアを走行しているとき、車速MVが上限速度V0を越えないように燃料噴射制御がされるので、高速走行が不可能となる。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Cは再び、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御をし、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する。
【0030】
この第4実施例によれば、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、車速が上限速度以下に制限されるので、高速走行が不可能となり、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【0031】
なお、上記した各実施例では、徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしたが、例えば、駐車場敷地の入口に設けた路側機から「駐車場内」を示す現在エリア種別情報を送信し、駐車場敷地の出口に設けた路側機から「駐車場外」を示す現在エリア種別情報を送信し、車両のナビゲーション制御部は路車間通信部で受信した現在エリア種別情報が駐車場内となったとき、徐行推奨エリアに入ったと判別し、駐車場外となったとき、徐行推奨エリアを出たと判別するようにしても良い。
また、上記した第4実施例では、運転制御部に予め設定された上限速度V0を用いるようにしたが、例えば、駐車場敷地の入口に設けた路側機から上限速度VCを含む速度制限情報を送信し、駐車場敷地の出口に設けた路側機から速度制限解除情報を送信し、車両のナビゲーション制御部は路車間通信部で速度制限情報を受信すると、徐行推奨エリアに入ったと判別し、安全優先モードをオンするとともに上限速度VCを運転制御部へ出力し、上限速度としてVCを設定させ、速度制限解除情報を受信すると、、安全優先モードをオフするようにしても良い。
また、徐行推奨エリアは駐車場内、公園内、商店街、学校内、病院敷地内、通学ゾーンなどの内、任意の1または複数の組合せとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車載用ナビゲーション装置、路車間通信機、FM多重放送受信機などを搭載した自動車、バス、トラックなどの車両に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例1)。
【図2】ブレーキペダル踏み込み量と油圧(制動力)の関係を示す線図である。
【図3】アクセルペダル踏み込み量とスロットル開度の関係を示す線図である。
【図4】図1のナビゲーション制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例2)。
【図8】図7の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】図7の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例3)。
【図11】アクセルペダル踏み込み量とスロットル開度の関係を示す線図である。
【図12】図10の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例4)。
【図14】図13の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【0034】
1 車載用ナビゲーション装置
2 現在地検出部
3 地図データ蓄積部
4 FM多重道路交通情報受信部
5 路車間通信部
10 アクセルペダル
12 電子制御スロットル
13 電子制御燃料噴射装置
14 ブレーキペダル
17 ブレーキアシスト部
18、18A、18B、18C 運転制御部
20 アクチュエータ
21 ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の安全運転装置に係り、とくに駐車場等での事故を未然に防止する車両の安全運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ではアクセルペダルを操作してスロットル開度を可変し、動力源の出力を増減させたり、ブレーキペダルを操作して制動力を増減したりして、加減速を行い、発進、停車、所望速度での走行が自在にできるようになっている。具体的には、アクセルぺダルの踏み込み量(アクセル開度)情報を入力した運転制御部が吸気・燃料系に設けられた電子制御スロットルを制御し、アクセルぺダルの踏み込み量に比例してスロットル開度を可変し吸気量を増減するとともに、スロットル開度とエンジン回転数に応じた最適な空燃比を計算し、電子制御燃料噴射装置を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を増減することで出力を増減させる。また、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて油圧式ブレーキの液圧が増減し、車輪に対する制動力が増減する。
【0003】
ところで、駐車場に入って車両を駐車させたり、駐車場から車両を発進させたりする場合、走行スペースが限られていること、前後を人が横切ることなどから慌ててアクセルやブレーキの操作を誤り、他の車両や施設、人と接触・衝突事故を起こす危険性が高い。公園や商店街の道路でも、人やボールが飛び出してきたとき慌てて操作ミスし、事故を起こす危険性が高い。
従来から、車間距離が狭くなると自動的にブレーキを掛けて追突を防止する追突防止装置やアクセルペダルやブレーキペダルの操作をしなくても自動的にエンジンやブレーキを制御して一定速度で走行させる自動運転装置は存在しているが、駐車場内での急加速・急発進や高速走行を制限することは出来なかった。
また、特開2004−169674号にアクセルとブレーキの踏み間違えを防止する提案がされているが、踵を床に設置しているか否かでアクセル操作かブレーキ操作かを判別する構成なため、ドライバーが踵を床に着けずにアクセル操作する癖が有る場合や踵を床に着けてブレーキ操作する癖が有る場合に誤動作を起こし、ドライバーの意図したアクセル・ブレーキ操作が出来なくなって却って危険となる欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−169674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、駐車場などの運転に注意を要する場所での安全を確保できる車両の安全運転装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の安全運転装置の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、動力源の出力を通常時より制限する制限手段と、を備えたことを特徴としている。制限手段は、スロットル開度の上限を通常時より小さくしたり、アクセルペダルの踏み込み量の上限を通常時より小さくしたり、アクセルペダルの踏み込み量に対するスロットル開度を通常時より小さくしたりすることで、動力源の出力の制限を行うようにすることができる。
本発明の車両の安全運転装置の他の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、車両の上限速度を一定以下に制限する制限手段と、を備えたことを特徴としている。車両の上限速度は、外部から通信により受信した現在エリア速度制限情報に基づき設定するようにしても良い。
本発明の車両の安全運転装置の他の一つでは、車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、ブレーキ操作による制動力を通常時より増大させる制動力増大手段と、を備えたことを特徴としている。
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしても良く、この場合、徐行推奨エリアの場所情報は地図情報から入手するようにしても良い。
また、徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、外部から通信により受信した現在エリアの種別情報に基づき判別するようにしても良い。
また、上限速度は、外部から通信により受信した速度制限情報に基づき設定するようにしても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つによれば、車両が駐車場、公園、商店街等の徐行推奨エリアに入ると、アクセル操作による動力源の出力が通常時より制限されるので、急加速・急発進による危険を回避できる。
また、本発明の他の一つによれば、徐行推奨エリアに入ると、車両の上限速度が一定以下に制限されるので、高速走行による危険を未然に防止できる。
また、本発明の更に他の一つによれば、徐行推奨エリアに入ると、ブレーキ操作による制動力が通常時より増大されるので、他の車両、施設、人などと接触・衝突しそうな場合に車両を素早く減速・停止させて接触・事故を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0009】
図1を参照して本発明の第1実施例を説明する。図1は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図である。
図1において、1は現在位置周辺の地図画像を表示する車載用ナビゲーション装置であり、現在位置が、駐車場内、公園内、商店街のいずれかの徐行推奨エリアに入っているか否かを判別する機能も有している。車載用ナビゲーション装置1の内、2は衛星航法と自律航法を組み合わせて車両の現在位置と現在方位を検出する現在地検出部、3は地図表示や徐行推奨エリアの判別に用いる各種地図データを蓄積したハードディスク装置等の地図データ蓄積部、4はITS (高度交通システム) の一つであるVICS(道路交通情報システム。VICSは登録商標。以下同様)のセンタからFM多重放送により送信された広域の渋滞情報(渋滞箇所・長さ・方向)、規制情報(場所・種別)、駐車場情報(場所・満空)等の道路交通情報を受信するFM多重道路交通情報受信部、5はVICSのセンタからビーコンによりスポット的に送信された狭い範囲の道路交通情報を受信する路車間通信部、6は道路交通情報等を一時記憶する記憶部、7は地図画像の表示部、8は現在地周辺の地図画像を自車位置マークと現在地道路交通情報付で表示させるナビゲーション制御部である。地図データ蓄積部3には、駐車場、公園、商店街について、経緯度座標上で駐車場敷地境界、公園敷地境界、商店街エリア境界を多角形近似した場所情報が含まれており、ナビゲーション制御部8が現在地がこれらの徐行推奨エリアに入っているか否か判別可能になっているものとする。
なお、VICSのセンタが送信する道路交通情報の中に駐車場、公園、商店街について、経緯度座標上で駐車場敷地境界、公園敷地境界、商店街エリア境界を多角形近似した場所情報を含めるようにしてもよい。
【0010】
10はエンジン(図示せず)の出力を増減させるアクセルペダルであり、踏み込み量(角度)Aがアクセルペダルセンサ(図示せず)により検出される。11はエンジンの吸気・燃料系、12は吸気量を電子制御で可変する電子制御スロットル、13は燃料噴射量を電子制御で可変する電子制御燃料噴射装置である。14は制動力の増減操作をするブレーキペダルであり、踏み込み量(角度)Bがブレーキぺダルセンサ(図示せず)により検出される。15はブレーキペダル14の踏み込み量Bに比例した油圧を発生する油圧発生部、16は油圧発生部15と結合された油圧式ブレーキであり、油圧の増減に応じて制動力を増減する。17は油圧発生部15に付設されたブレーキアシスト部であり、後述する運転制御部の制御により、ブレーキペダル14の踏み込み量Bと油圧(または制動力)の比率を通常より大きくしたり(倍力。図2の破線参照)、通常の比率に戻したりする(図2の実線参照)。
【0011】
18は運転制御部(ECU)であり、アクセルペダル10の踏み込み量Aを入力し、Aに比例するスロットル開度Sとなるように電子制御スロットル12を制御するとともに、外部のエンジン回転センサ(図示せず)から入力したエンジン回転速度EVとスロットル開度Sに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する。但し、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているとき、アクセルペダル10の踏み込み量Aに対するスロットル開度Sの上限を通常より小さく設定して、急加速・急発進が出来ないようにする(図3の破線参照)。また、運転制御部18は車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているとき、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオン制御をする。
【0012】
図4はナビゲーション制御部8の制御処理を示すフローチャート、図5と図6は運転制御部18のエンジン制御処理とブレーキ制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の動作を説明する。なお、アクセルぺダル10の踏み込み量Aの可変操作範囲は0〜AMAX、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの可変操作範囲は0〜BMAXとする。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
現在地検出部2は衛星航法と自律航法を組み合わせて定期的に車両の現在位置と現在方位を検出し、ナビゲーション制御部8に出力する。また、FM多重道路交通情報受信部4と路車間通信部5は道路交通情報を受信するとナビゲーション制御部8に出力する。ナビゲーション制御部8はFM多重道路交通情報受信部4または路車間通信部5から道路交通情報を入力すると記憶部6に一時記憶しておく(図4のステップS10、S11)。ナビゲーション制御部8は定期的に現在地検出部2から現在位置と現在方位を入力し、地図データ蓄積部3に蓄積された地図データを用いて現在地周辺の地図画像を自車位置マーク、道路交通情報とともに描画し、表示部7に表示させる(ステップS12、S13)。そして、地図データと道路交通情報の中の駐車場、公園、商店街の場所情報(エリアを示す経緯度座標上の多角形)を現在位置と比較し、車両が現在、駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入っているか判別し、郊外を走行しているなどしてNOであれば、安全優先モードオフ信号を出力する(ステップS14、S15)。以下、ナビゲーション制御部8は図4のステップS10以下の処理を繰り返す。
【0013】
一方、運転制御部18にはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサとブレーキペダルセンサから踏み込み量A、B、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18はアクセルペダル10の踏み込み量Aとブレーキペダル14の踏み込み量Bを監視しており、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始し、踏み込み量Aが0より大きくなると、アクセルの踏み込みが開始したと判断し(図5のステップS20でYES)、まずナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(ステップS21)。郊外を走行しているなどしてNOであれば、通常のスロットル開度可変範囲内(0〜SMAX、図3の実線参照)で電子制御スロットル12を制御し、現在の踏み込み量Aに応じた分のスロットル開度Sとし(ステップS22)、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS23)。次に、踏み込み量Aが0となり、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS24)、NOであればステップS21に戻って同様の処理をし、アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力を通常の範囲で増減させる。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS24でYESと判断し、ステップS20へ戻る。
このように、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリア以外を走行しているとき、スロットル開度Sが通常の範囲で可変するので(図3の実線参照)、急加速が可能である。
【0014】
その後、ドライバが減速のためブレーキペダル14の踏み込みを開始し、踏み込み量Bが0より大きくなると、運転制御部18はブレーキの踏み込みが開始したと判断し(図6のステップS30でYES)、ナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(ステップS31)。NOであれば、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオフ制御を行なう(ステップS32)。これにより、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの増大につれて制動力が通常に増大して車両が減速する(図2の実線参照)。ドライバがブレーキペダル14の踏み込みを終了したときステップS33でYESと判断し、ステップS30へ戻る。
【0015】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、ナビゲーション制御部8が地図データ中の駐車場場所情報と現在位置を比較した結果、車両の現在位置が駐車場内に在るとき、徐行推奨エリアに入ったと判断し、運転制御部18へ安全優先モードオン信号を出力する(図4のステップS14、S16)。
すると、運転制御部18はアクセルの踏み込みが開始したと判断したあと、ナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているかのステップS21の判断でYESとなる。このとき、通常より上限が狭いスロットル開度可変範囲内(0〜SMAX’。図3の破線参照)で電子制御スロットル12を制御し、或る踏み込み量A=A0まではAに比例して増大するスロットル開度Sとし、A0<A≦AMAXでは一定のスロットル開度SMAX’とし、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS25、S23)。次に、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS24)、NOであればステップS21に戻って同様の処理をし、アクセルペダル10の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力を通常より制限された範囲で増減させる。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS24でYESと判断し、ステップS20へ戻る。
このように、車両が駐車場内に入ったとき、スロットル開度Sの上限が通常より制限された範囲で可変するので、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速や急発進を防止でき、他の車両、施設、人との接触・衝突事故の危険性を小さくできる。
【0016】
また、ドライバが駐車場で他の車両や施設、人との接触・衝突を避けるためブレーキペダル14の踏み込みを開始し、踏み込み量Bが0より大きくなると、運転制御部18はブレーキの踏み込みが開始したと判断し、続いてナビゲーション制御部8から現在、安全優先モードオン信号が入力されているか判断する(図6のステップS30、S31)。YESなので、ブレーキアシスト部17に対しブレーキアシストオン制御を行なう(ステップS34)。これにより、ブレーキペダル14の踏み込み量Bの増大につれて制動力が通常より速く増大し、車両を迅速に減速、停車させることができ、駐車場内での接触・衝突事故の危険性を小さくできる(図2の破線参照)。
車両が駐車場内から外に出ると、ナビゲーション制御部8が地図データ中の駐車場場所情報と現在位置を比較した結果、車両の現在位置が駐車場内に無く徐行推奨エリアから出たと判断し、運転制御部18へ安全優先モードオフ信号を運転制御部18に出力するので(図4のステップS14でNO、S15)、スロットル開度の可変範囲が通常に復帰し(図5のステップS21でNO、S22)、また、ブレーキアシストもオフし(図6のステップS31でNO、S32)、ドライバはアクセルペダル10とブレーキペダル14の操作で通常に車両の加速と制動を行なうことができる。
【0017】
公園内や商店街に入ったときも駐車場内に入ったときと全く同様にして、ナビゲーション制御部8は現在位置を公園内や商店街の場所情報と比較し、公園内や商店街に在れば徐行推奨エリアに入ったと判別し、安全優先モードオン信号を運転制御部18へ出力する。安全優先モードオン信号を入力した運転制御部18はスロットル開度の上限を通常より狭くした範囲で可変することで急加速・急発進を防止するとともにブレーキアシストオン制御をしてブレーキペダル14の踏み込み量Bに対する制動力を通常より増大させて、素早く減速・停車が可能とする。
【0018】
この実施例によれば、駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、エンジン出力が通常より制限されるので、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。また、車両が徐行推奨エリアに入ると、ブレーキアシストがオンし、ブレーキペダル14の踏み込み量の増大につれて制動力が通常より速く増大するので、他の車両、施設、人などと接触・衝突しそうな場合に車両を迅速に減速、停車させることができ、これによっても接触・衝突事故の危険性を小さくできる。
【実施例2】
【0019】
次に図7を参照して本発明の第2実施例を説明する。図7は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第2実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、アクセルペダル10の踏み込み量の上限を物理的に小さくするようにしたものである。
図7において、20はアクセルペダル10の最大踏み込み量を可変するためのアクチュエータ、21はアクチュエータ20に結合されて昇降するストッパである。アクチュエータ20は運転制御部(ECU)18Aにより制御される。具体的には、運転制御部18Aは安全優先モードがオフ状態のとき、アクチュエータ20を制御してストッパ21を所定の復帰位置に下げ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常の範囲(0〜AMAX)とし、安全優先モードがオフからオンに変わるとアクチュエータ20を制御し、ストッパ21を復帰状態から所定高さまで上昇させ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常より上限を小さく制限した範囲(0〜AMAX’、但し、AMAX’<AMAX)とし、急加速・急発進が出来ないようにする。
図7の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0020】
図8は運転制御部18Aのアクセルペダル踏み込み量制限処理を示すフローチャート、図9はエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第2実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Aにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、エンジン回転センサからエンジン回転速度が入力されている。運転制御部18Aは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、アクチュエータ20を制御してストッパ21を所定の復帰位置に下げ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常の範囲(0〜AMAX)とする(図8のステップS40、S41)。
ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、現在の踏み込み量Aに応じた分のスロットル開度Sとし、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(図9のステップS50〜S52)。次に、ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したか判断し(ステップS53)、NOであればステップS51に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常の範囲(図3の実線参照)で可変し、エンジン出力が通常の範囲で増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS53でYESと判断し、ステップS50へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、スロットル開度Sが通常の範囲で可変するので、急加速が可能である。
【0021】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全優先モードがオンすると、運転制御部18Aはアクチュエータ20を制御し、ストッパ21を復帰状態から所定高さまで上昇させ、踏み込み量Aの可変操作範囲を通常より上限を小さく制限した範囲(0〜AMAX’)とする(図8のステップS40、S42)。ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度に基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を最適な空燃比となるように制御するが、踏み込み量Aの上限が制限されているためスロットル開度Sの可変範囲も上限が通常より小さくなった範囲(0〜SMAX’)で可変し、エンジン出力の上限が通常より制限される(図9のステップS50〜S52)。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Aは再び、ストッパ21を下方の復帰位置に下げ、アクセルペダル10の踏み込み量Aを通常の範囲で可変操作できるようにする(図8のステップS40、S41)。
【0022】
この第2実施例によっても、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、アクセルペダル10の踏み込み量Aの上限が通常より制限され、スロットル開度Sは上限が通常より制限された範囲で可変するので、エンジン出力が通常より制限されることになり、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【実施例3】
【0023】
次に図10を参照して本発明の第3実施例を説明する。図10は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第3実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、アクセルペダル10の踏み込み量Aとスロットル開度Sの比率を小さくするようにしたものである。
図10において、運転制御部18Bは安全優先モードがオフ状態のとき、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御し(図11の実線参照)、安全優先モードがオン状態のとき、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率より小さい比率関係となるようにスロットル制御をし、急加速・急発進が出来ないようにする(図11の破線参照)。
図10の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0024】
図12は運転制御部18Bのエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、この図を参照して上記した第3実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Bにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18Bは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるように踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を最適な空燃比となるように制御して燃料噴射量を可変する(図12のステップS60〜S63)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS64でNO)、ステップS61に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常の比率関係で可変し(図11の実線参照)、エンジン出力が通常の範囲で増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS64でYESと判断し、ステップS60へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、アクセルペダル14の踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係で可変するので、急加速が可能である。
【0025】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全優先モードがオンすると、運転制御部18Bはドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常より小さい比率関係で踏み込み量Aに比例したスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS60、S61、S65、S63)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS64でNO)、ステップS61に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが通常より小さい比率関係で可変し(図11の破線参照)、エンジン出力が通常より上限が制限される。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS64でYESと判断し、ステップS60へ戻る。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Bは再び、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御をする。
【0026】
この第3実施例によっても、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、アクセルペダル10の踏み込み量Aとスロットル開度Sの比率関係が通常より小さくなるので、エンジン出力が通常より制限され、仮にブレーキペダル14と間違えてアクセルペダル10を踏み込んだり、アクセルペダル10を踏み込み過ぎたりしたとしても急加速・急発進が防止され、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【実施例4】
【0027】
次に図13を参照して本発明の第4実施例を説明する。図13は本発明に係る車両の案全運転装置の構成を示す構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
この第4実施例は徐行推奨エリアに入ったとき、車速を所定の上限速度以下に制限するようにしたものである。
図13において、運転制御部18Cは図示しない車速センサから車速MVを入力し、安全優先モードがオフ状態のときは、通常のスロットル制御と燃料噴射制御をし、安全優先モードがオン状態になると、車速が所定の上限速度V0以下(例えば、V0=20km/h)であれば通常のスロットル制御と燃料噴射制御をするが、所定の上限速度を越えると燃料噴射を停止してエンジン出力を零とし、高速走行が出来ないようにする。
図13の他の構成部分は図1と同様に構成されており、説明を省略する。
【0028】
図14は運転制御部18Cのエンジン制御処理を示すフローチャートであり、以下、この図を参照して上記した第4実施例の動作を説明する。なお、ブレーキ制御処理は第1実施例の運転制御部18と同一であり、説明を省略する。
(1)徐行推奨エリア以外の走行時
運転制御部18Cにはナビゲーション制御部8から安全優先モードオン/オフ信号、アクセルペダルセンサから踏み込み量A、図示しない車速センサから車速MV、エンジン回転センサからエンジン回転速度EVが入力されている。運転制御部18Cは車両が駐車場等の徐行推奨エリアの外を走行しており、安全優先モードがオフのとき、ドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに応じたスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御し、スロットル開度Sとエンジン回転速度に基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(図14のステップS70〜S73)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS74でNO)、ステップS71に戻って同様の処理をする。アクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてエンジン出力が増減する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS74でYESと判断し、ステップS70へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリア以外を走行しているとき、とくに速度制限されることなく高速走行が可能である。
【0029】
(2)徐行推奨エリアに入った時
ドライバが車両を駐車させるため駐車場内に入り、安全運転優先モードがオンすると、運転制御部18Cはドライバが加速のためアクセルペダル10の踏み込みを開始すると、踏み込み量Aに応じたスロットル開度Sで電子制御スロットル12を制御したあと(ステップS71、S75)、現在の車速が所定の上限速度V0を超えているか判断し(ステップS76)、越えていなければスロットル開度Sとエンジン回転速度EVに基づき最適な空燃比となる燃料噴射量を計算し、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する(ステップS73)。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了しなければ(ステップS74でNO)、ステップS71に戻って同様の処理をする。車速が上限速度V0を越えない間はアクセルペダル14の踏み込み量Aの増減に応じてスロットル開度Sが可変し、エンジン出力が増減する。但し、安全優先モードオン下で車速MVが上限速度V0を越えると、運転制御部18Cは電子制御燃料噴射装置13を制御して燃料噴射量を零とし(ステップS76でYES、S77)、エンジン出力を零とする。これにより、加速が止り、減速する。ドライバがアクセルペダル10の踏み込みを終了したときステップS74でYESと判断し、ステップS70へ戻る。
このように、車両が徐行推奨エリアを走行しているとき、車速MVが上限速度V0を越えないように燃料噴射制御がされるので、高速走行が不可能となる。
車両が駐車場内から外に出て、安全優先モードがオフすると、運転制御部18Cは再び、踏み込み量Aとスロットル開度Sが通常の比率関係となるようにスロットル制御をし、電子制御燃料噴射装置13を制御して最適な空燃比となるように燃料噴射量を可変する。
【0030】
この第4実施例によれば、車両が駐車場内、公園内、商店街の徐行推奨エリアに入ると、車速が上限速度以下に制限されるので、高速走行が不可能となり、他の車両、施設、人などと接触・衝突する危険性を小さくできる。
【0031】
なお、上記した各実施例では、徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしたが、例えば、駐車場敷地の入口に設けた路側機から「駐車場内」を示す現在エリア種別情報を送信し、駐車場敷地の出口に設けた路側機から「駐車場外」を示す現在エリア種別情報を送信し、車両のナビゲーション制御部は路車間通信部で受信した現在エリア種別情報が駐車場内となったとき、徐行推奨エリアに入ったと判別し、駐車場外となったとき、徐行推奨エリアを出たと判別するようにしても良い。
また、上記した第4実施例では、運転制御部に予め設定された上限速度V0を用いるようにしたが、例えば、駐車場敷地の入口に設けた路側機から上限速度VCを含む速度制限情報を送信し、駐車場敷地の出口に設けた路側機から速度制限解除情報を送信し、車両のナビゲーション制御部は路車間通信部で速度制限情報を受信すると、徐行推奨エリアに入ったと判別し、安全優先モードをオンするとともに上限速度VCを運転制御部へ出力し、上限速度としてVCを設定させ、速度制限解除情報を受信すると、、安全優先モードをオフするようにしても良い。
また、徐行推奨エリアは駐車場内、公園内、商店街、学校内、病院敷地内、通学ゾーンなどの内、任意の1または複数の組合せとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車載用ナビゲーション装置、路車間通信機、FM多重放送受信機などを搭載した自動車、バス、トラックなどの車両に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例1)。
【図2】ブレーキペダル踏み込み量と油圧(制動力)の関係を示す線図である。
【図3】アクセルペダル踏み込み量とスロットル開度の関係を示す線図である。
【図4】図1のナビゲーション制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例2)。
【図8】図7の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】図7の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例3)。
【図11】アクセルペダル踏み込み量とスロットル開度の関係を示す線図である。
【図12】図10の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施例に係る車両の安全運転装置を示す構成図である(実施例4)。
【図14】図13の運転制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【0034】
1 車載用ナビゲーション装置
2 現在地検出部
3 地図データ蓄積部
4 FM多重道路交通情報受信部
5 路車間通信部
10 アクセルペダル
12 電子制御スロットル
13 電子制御燃料噴射装置
14 ブレーキペダル
17 ブレーキアシスト部
18、18A、18B、18C 運転制御部
20 アクチュエータ
21 ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、動力源の出力を通常時より制限する制限手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項2】
制限手段は、スロットル開度の上限を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項3】
制限手段は、アクセルペダルの踏み込み量の上限を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項4】
制限手段は、アクセルペダルの踏み込み量に対するスロットル開度の比率を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項5】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、車両の上限速度を一定以下に制限する制限手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項6】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、ブレーキ操作による制動力を通常時より増大させる制動力増大手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項7】
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしたこと、
を特徴とする請求項1または5または6記載の車両の安全運転装置。
【請求項8】
徐行推奨エリアの場所情報は地図情報から入手するようにしたこと、
を特徴とする請求項7記載の車両の安全運転装置。
【請求項9】
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、外部から通信により受信した現在エリア種別情報に基づき判別するようにしたこと、
を特徴とする請求項1または5または6記載の車両の安全運転装置。
【請求項10】
車両の上限速度は、外部から通信により受信した徐行推奨エリアの速度制限情報に基づき設定するようにしたこと、
を特徴とする請求項5記載の車両の安全運転装置。
【請求項1】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、動力源の出力を通常時より制限する制限手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項2】
制限手段は、スロットル開度の上限を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項3】
制限手段は、アクセルペダルの踏み込み量の上限を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項4】
制限手段は、アクセルペダルの踏み込み量に対するスロットル開度の比率を通常時より小さくすることで、動力源の出力の制限を行うようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の車両の安全運転装置。
【請求項5】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、車両の上限速度を一定以下に制限する制限手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項6】
車両が徐行推奨エリアに入っているか判別する判別手段と、
車両が徐行推奨エリアに入っていると判別されたとき、ブレーキ操作による制動力を通常時より増大させる制動力増大手段と、
を備えたことを特徴とする車両の安全運転装置。
【請求項7】
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、車両の現在位置を徐行推奨エリアの場所情報と比較して判別するようにしたこと、
を特徴とする請求項1または5または6記載の車両の安全運転装置。
【請求項8】
徐行推奨エリアの場所情報は地図情報から入手するようにしたこと、
を特徴とする請求項7記載の車両の安全運転装置。
【請求項9】
徐行推奨エリアに入っているか否かの判別は、外部から通信により受信した現在エリア種別情報に基づき判別するようにしたこと、
を特徴とする請求項1または5または6記載の車両の安全運転装置。
【請求項10】
車両の上限速度は、外部から通信により受信した徐行推奨エリアの速度制限情報に基づき設定するようにしたこと、
を特徴とする請求項5記載の車両の安全運転装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−144667(P2010−144667A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324768(P2008−324768)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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