説明

車両制御装置

【課題】バッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置1のGPS71、地図情報DB72及び通信機81が、車両が走行する道路に関する道路情報を取得し、ハイブリッドECU30が、車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定する。また、ハイブリッドECU30は、GPS71等が取得した道路情報に基づいて、車両のドライバーの操作を予測する。さらに、ハイブリッドECU30は、予測した車両のドライバーの操作に応じて、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更する。このため、道路に関する道路情報と当該道路で行なわれるドライバーの操作とに応じてバッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関し、特には、車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び電動機を搭載し内燃機関及び電動機の少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両が提案されている。例えば、特許文献1には、コントローラが、バッテリ電流・電圧検出センサの出力からバッテリ残量を算出し、ナビゲーション処理部から供給される道路情報と現在地の情報に基づいて、走行経路に応じてバッテリ残量の目標値を設定し、実際のバッテリ残量が目標値に近づくように、モータ及びエンジンの出力を調整することにより、予め走行経路が分かっているときのバッテリへの回生充電を効率良く行うことができると共に、排ガスを少なくすることが可能なハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−126116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、単に道路情報や経路情報からバッテリ残量の目標値を設定しているため、例えば、道路の標高に関する情報から将来の降坂時の回生を期待してバッテリ残量目標値を低く設定してしまい、その後にドライバーがその降坂の前に車速を上げようとしてバッテリ残量が不足してモータによるアシストが不足することにより、加速が不可能となる場合が予想される。
【0005】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、バッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能な車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両が走行する道路に関する道路情報を取得する道路情報取得手段と、道路情報取得手段が取得した道路情報に基づいて、車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定するバッテリ残量目標値設定手段と、道路情報取得手段が取得した道路情報に基づいて、車両のドライバーの操作を予測する操作予測手段とを備え、バッテリ残量目標値設定手段は、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作に応じて、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更する車両制御装置である。
【0007】
この構成によれば、道路情報取得手段が、車両が走行する道路に関する道路情報を取得し、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報に基づいて、車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定する。また、操作予測手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報に基づいて、車両のドライバーの操作を予測する。さらに、バッテリ残量目標値設定手段は、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作に応じて、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更する。このため、道路に関する道路情報と当該道路で行なわれるドライバーの操作とに応じてバッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能となる。
【0008】
この場合、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報取得手段が取得した道路情報に含まれる道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配の少なくともいずれかに基づいて、バッテリ残量目標値を設定し、操作予測手段は、道路情報取得手段が取得した道路情報に含まれる信号機が表示している信号に関する情報及び道路の交通量に関する情報の少なくともいずれかに基づいて、車両のドライバーの操作を予測することが好適である。
【0009】
この構成によれば、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報取得手段が取得した道路情報に含まれる道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配といった静的な情報に基づいてバッテリ残量目標値を設定するため、道路の状況に不測の事態が生じない場合には、精度良くバッテリ残量目標値を設定することができる。また、操作予測手段は、道路情報取得手段が取得した道路情報に含まれる信号機が表示している信号に関する情報及び道路の交通量といった動的な情報に基づいてドライバーの操作を予測するため、停止信号の点灯や渋滞等の不測の事態に対応してドライバーの操作を予測することができる。
【0010】
また、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されるときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しないことが好適である。
【0011】
この構成によれば、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されるときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しない。このため、例えば、道路の標高に関する情報から将来の降坂時の回生を期待してバッテリ残量目標値を低く設定してしまい、その後にドライバーがその降坂の前に車速を上げようとしてバッテリ残量が不足してモータによるアシストが不足することにより、加速が不可能となる事態を防止することができる。
【0012】
この場合、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかが予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されないときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を減少させることが好適である。
【0013】
この構成によれば、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、操作予測手段が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されないときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を減少させる。このため、道路の環境に合わせて過度の充電が行なわれることによる損失や不利益を防止することができる。
【0014】
また、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されるときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しないことが好適である。
【0015】
この構成によれば、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されるときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しない。このため、例えば、道路の標高に関する情報から将来の登坂時のバッテリからの放電に備えてバッテリ残量目標値を高く設定してしまい、その後にドライバーがその登坂の前に車速を減少させることによりバッテリ残量が過大となり、過度の充電が行なわれたことによる損失や不利益が生じることを防止することができる。
【0016】
この場合、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されないときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を増大させることが好適である。
【0017】
この構成によれば、バッテリ残量目標値設定手段が、道路情報取得手段が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかを予測してバッテリ残量目標値を設定したときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されないときは、バッテリ残量目標値設定手段は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を増大させる。このため、道路の環境に合わせて充電が不足となることを防止することができる。
【0018】
また、車両は、内燃機関及び電動機を搭載し内燃機関及び電動機の少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両であるものとできる。
【0019】
この構成によれば、車両は、内燃機関及び電動機を搭載し内燃機関及び電動機の少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両である。このため、本発明により、バッテリ残量の不足による加速性の悪化を防ぎつつ、過度の充電による損失を防ぐことにより、燃費の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両制御装置によれば、バッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、エンジン2及びモータ3を搭載してエンジン2又はモータ3の駆動により走行可能なハイブリッド車両に設置されている。モータ3は、バッテリ5から電力供給を受けて駆動する電動機であり、減速機6を介して駆動輪7に機械的に接続され、駆動輪7に駆動力を伝達する。エンジン2は、動力分配機構8及び減速機6を介して駆動輪7に機械的に接続され、駆動輪7に駆動力を伝達する。動力分配機構8としては、例えば遊星歯車機構が用いられる。
【0023】
動力分配機構8には、ジェネレータ9が接続されている。ジェネレータ9は、エンジン2又は駆動輪7の駆動力を受けて発電する。ジェネレータ9及びモータ3は、インバータ10を介してバッテリ5に対し電気的に接続されている。ジェネレータ9により発電された交流電力は、インバータ10により直流変換されてバッテリ5に充電される。このとき、バッテリ5は、ジェネレータ9が発電した電力を蓄電する。バッテリ5の直流電力は、インバータ10により交流変換されてモータ3に供給され、その交流電力の供給によりモータ3が駆動する。
【0024】
車両制御装置1には、エンジンECU20、ハイブリッドECU30及びモータECU40が設けられている。エンジンECU20は、ハイブリッドECU30からの駆動要求に従い、エンジン2のスロットル開度指令信号を出力する制御器である。モータECU40は、ハイブリッドECU30からの駆動要求に従い、インバータ10を通じてモータ3の駆動信号を出力する制御器であり、インバータ10と接続されている。
【0025】
ハイブリッドECU30は、アクセル開度、車速などから必要なエンジン出力、モータトルクなどを演算し、エンジンECU20、モータECU40に駆動要求信号を出力し、エンジン2及びモータ3の駆動を制御する制御器である。ハイブリッドECU30は、ハイブリッド車両が、エンジン効率の悪い低負荷領域(特に発進時や極低速時)には、エンジン2を始動せずにモータ3のみで車両の駆動を行う(EV走行)。ハイブリッドECU30は、車速がエンジン効率が良くなる高速度領域に達したら大きなトルクを出力することができるエンジン2を始動し、モータ3を停止する(エンジン走行)。また、加速時や登坂時等に大きな出力が必要なときは、エンジン2及びモータ3を同時に駆動し、所望の出力を取得する(ハイブリッド走行)。
【0026】
また、ハイブリッドECU30は、バッテリ5の充電量、即ちSOC(State of Charge)値について所定の目標値である目標バッテリ残量を設定し、設定した所定の目標バッテリ残量に保つように制御する制御器として機能する。例えば、バッテリ5のSOC値を検出し、そのSOC値が設定した目標バッテリ残量となるように適宜エンジン出力を調整して発電を行い、SOC値を制御する。
【0027】
なお、図1では、エンジンECU20、ハイブリッドECU30、モータECU40がそれぞれ別体に設けられているが、これらの全部又は一部が一体に構成されていてもよい。
【0028】
車両には、EV(Electric Vehicle)走行スイッチ51が設置されている。EV走行スイッチ51は、車両の運転者の意思により電動機走行を可能とするスイッチである。このEV走行スイッチ51が運転者によりオンされることにより、車両がEV走行モードとなり、モータ3の駆動によるEV走行が可能となる。すなわち、EV走行スイッチ51のオンにより、車両が強制的にEV走行モード(モータ3のみの駆動力により走行するモード)となる。これにより、通常ではエンジン2が作動すべき状態であっても、強制的にエンジン2が停止され、それと同時にモータ3が駆動して車両走行が行われる。
【0029】
車両には、充電スイッチ52が設置されている。充電スイッチ52は、車両の運転者の意思によりバッテリ5の目標充電量を高く設定してバッテリ5の蓄電量を増加させるスイッチである。この充電スイッチ52が運転者によりオンされることにより、車両が充電モードとなり、ハイブリッドECU30に記憶される目標充電量が増加され、適宜エンジン出力が調整されジェネレータ9の発電によりバッテリ5のSOC値が通常時より増加した値とされる。
【0030】
インバータ10とバッテリ5を接続する配線の途中には、電流センサ53が設けられている。電流センサ53は、インバータ10、バッテリ5間に流れる電流量を検出する。電流センサ53の出力信号に基づいて、バッテリ5のSOC値が算出される。また、バッテリ5は、ハイブリッドECU30に接続されており、その蓄電電圧はハイブリッドECU30に入力されている。この電圧値は、SOC値の算出において補正値として用いられる。
【0031】
車両には、表示部61が設けられている。表示部61は、充電モード、EV走行モード及びハイブリッド走行モードを表示し運転者に車両状態を知らせる。この表示部61は、例えば充電モード表示用ランプ、EV走行モード表示用ランプ及びハイブリッド走行モード表示用ランプなどが用いられ、運転者が視認しやすいようにインストルメントパネルに設置される。充電モード表示用ランプは、充電モード時の充電中のときに点滅表示され、充電モード時の充電完了のときに点灯表示とされ、充電モード時以外のときには消灯される。EV走行モード表示用ランプは、EV走行モード時に点灯表示され、EV走行モード以外のときには消灯される。ハイブリッド走行モード表示用ランプは、ハイブリッド走行モード時に点灯表示され、ハイブリッド走行モード以外のときには消灯される。
【0032】
なお、表示部61としては、LCD(liquid crystal display:液晶表示器)などランプ以外の表示機器や音声スピーカにより構成してもよい。
【0033】
また、GPS71及び地図情報DB72が設置されている。GPS71は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信することにより、自車両の測位を行うためのものである。地図情報DB72は、地図情報を記憶したデータベースである。GPS71及び地図情報DB72は、ハイブリッドECU30に接続されている。ハイブリッドECU30は、GPS71及び地図情報DB72により、車両が走行する道路の標高、曲率、傾斜等の道路環境に関する情報を取得する。また、ハイブリッドECU30には、通信機81が接続されている。ハイブリッドECU30は通信機81により、他車両や路側施設と通信し、車両が走行する道路の標高、曲率、傾斜等の道路環境に関する情報を取得する。
【0034】
以下、本実施形態の車両制御装置1の動作について説明する。図2に示すように、車両の走行中に車両制御装置1のハイブリッドECU30には、電流センサ53により検出されたバッテリ5の電流値とバッテリ5の電圧値とが入力される(S101)。ハイブリッドECU30は、入力された電流値と電圧値とから、バッテリ5の残量であるSOCを算出する(S102)。
【0035】
ハイブリッドECU30は、GPS71、地図情報DB72及び通信機81により、車両の現在地と道路情報とを受信する(S103)。道路情報に含まれる情報には、道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配といった静的な短時間(数分〜数時間)では変動しない情報が含まれる。また、道路情報に含まれる情報には、この先で渋滞が発生しているか否かを判定するための情報及びこの先の信号機の信号が停止信号となるか否かを判定するための情報といった動的な短時間(数分〜数時間)で変動する情報が含まれる。
【0036】
ハイブリッドECU30は、道路情報に含まれる道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配に関する情報により、車両の持つ運動エネルギー及びゴール地点との高低差による位置エネルギーを算出する(S104)。ハイブリッドECU30は、車両の持つ運動エネルギー及びゴール地点との高低差による位置エネルギーから、車両の回生が予測されるか否かについて判定する(S105)。
【0037】
車両の回生が予測される場合(S105)、ハイブリッドECU30は、ドライバーの操作により車両が回生前に、さらなる加速を行なう可能性があるか否かについて判定する(S106)。ハイブリッドECU30は、例えば、予想される経路が、回生が行なわれる場所の手前で、カーブが多い場合や、道路の幅が狭くなる場合や、特に、渋滞が発生している場合や、赤信号等の停止信号が点灯する場合には、ハイブリッドECU30は、さらなる加速の可能性はないと判定できる。一方、ハイブリッドECU30は、例えば、予想される経路が、回生が行なわれる場所の手前で、カーブが少ない場合や、道路の幅が広いままの場合であって、特に、渋滞が発生していない場合や、赤信号等の停止信号が当面点灯しない場合には、ハイブリッドECU30は、さらなる加速の可能性があると判定できる。
【0038】
回生前にさらなる加速の可能性があると判定されるときは(S106)、ハイブリッドECU30は、道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配といった静的な情報のみからでは、減速や降坂路による回生が予測される場合であっても(S104)、目標バッテリ残量を変更しない(S107)。一方、回生前にさらなる加速の可能性がないと判定されるときは(S106)、ハイブリッドECU30は、目標バッテリ残量を下げる(S108)。
【0039】
また、S105において、車両の回生が予測されないときは(S104)、ハイブリッドECU30は、ドライバーの操作により車両が、加速の開始や登坂路に進入する前に、減速を行なう可能性があるか否かについて判定する(S109)。
【0040】
ハイブリッドECU30は、例えば、予想される経路が、加速の開始や登坂路に進入する場所の手前で、カーブが多い場合や、道路の幅が狭くなる場合や、特に、渋滞が発生している場合や、車両の通過時に赤信号等の停止信号が点灯する場合には、ハイブリッドECU30は、減速の可能性があると判定できる。一方、ハイブリッドECU30は、例えば、予想される経路が、加速の開始や登坂路に進入する場所の手前で、カーブが少ない場合や、道路の幅が広いままの場合や、特に、渋滞が発生していない場合や、赤信号等の停止信号が当面点灯しない場合には、ハイブリッドECU30は、減速の可能性が無いと判定できる。
【0041】
さらなる減速の可能性があるときは(S109)、ハイブリッドECU30は、道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配といった静的な情報のみからでは、減速や降坂路による回生が予測されない場合にも、目標バッテリ残量を変更しない(S107)。一方、さらなる減速の可能性が無いときは(S109)、ハイブリッドECU30は、目標バッテリ残量を上げる(S110)。
【0042】
本実施形態では、車両制御装置1のGPS71、地図情報DB72及び通信機81が車両が走行する道路に関する道路情報を取得し、ハイブリッドECU30は、車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定する。また、ハイブリッドECU30が、GPS71等が取得した道路情報に基づいて、車両のドライバーの操作を予測する。さらに、ハイブリッドECU30は、予測した車両のドライバーの操作に応じて、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更する。このため、道路に関する道路情報と当該道路で行なわれるドライバーの操作とに応じてバッテリ残量目標値をより適切に設定することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、ハイブリッドECU30は、GPS71、地図情報DB72及び通信機81が取得した道路情報に含まれる道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配といった静的な情報に基づいてバッテリ残量目標値を設定するため、道路の状況に不測の事態が生じない場合には、精度良くバッテリ残量目標値を設定することができる。また、ハイブリッドECU30は、GPS71、地図情報DB72及び通信機81が取得した道路情報に含まれる信号機が表示している信号に関する情報及び道路の交通量といった動的な情報に基づいてドライバーの操作を予測するため、停止信号の点灯や渋滞等の不測の事態に対応してドライバーの操作を予測することができる。
【0044】
また、車両制御装置1のGPS71等が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかが予測されるときであって、ハイブリッドECU30が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されるときは、ハイブリッドECU30は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しない。このため、例えば、道路の標高に関する情報から将来の降坂時の回生を期待してバッテリ残量目標値を低く設定してしまい、その後にドライバーがその降坂の前に車速を上げようとしてバッテリ残量が不足してモータによるアシストが不足することにより、加速が不可能となる事態を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態では、車両制御装置1のGPS71等が取得した道路情報から車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかが予測されるときであって、ハイブリッドECU30が予測した車両のドライバーの操作から回生前にドライバーの加速操作が予測されないときは、ハイブリッドECU30は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を減少させる。このため、道路の環境に合わせて過度の充電が行なわれることによる損失や不利益を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態では、車両制御装置1のGPS71等が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかが予測されるときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されるときは、ハイブリッドECU30は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を変更しない。このため、例えば、道路の標高に関する情報から将来の登坂時のバッテリからの放電に備えてバッテリ残量目標値を高く設定してしまい、その後にドライバーがその登坂の前に車速を減少させることによりバッテリ残量が過大となり、過度の充電が行なわれたことによる損失や不利益が生じることを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、車両制御装置1のGPS71等が取得した道路情報から車両の加速によるバッテリ残量の減少及び登坂路によるバッテリ残量の減少のいずれかが予測されるときであって、バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されないときは、ハイブリッドECU30は、道路情報に基づいて設定したバッテリ残量目標値を増大させる。このため、道路の環境に合わせて充電が不足となることを防止することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、車両制御装置1が搭載される車両は、内燃機関及び電動機を搭載し内燃機関及び電動機の少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両である。このため、本発明により、バッテリ残量の不足による加速性の悪化を防ぎつつ、過度の充電による損失を防ぐことにより、燃費の向上が可能となる。
【0049】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、車両制御装置1が設置される車両としては、必ずしも上述したようなハイブリッド車両に限られるものではなく、電動機の駆動力により走行可能なものであれば、モータとジェネレータの双方の機能を備えるモータジェネレータを搭載するものでもよい。また、車両制御装置1が設置されるハイブリッド車両は、車輪駆動をモータで行いエンジンをジェネレータへの電力供給源として用いるシリーズタイプ、エンジンとモータの双方で車輪を駆動可能としたパラレルタイプなど、いずれのタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…車両制御装置、2…エンジン、3…モータ、5…バッテリ、6…減速機、7…駆動輪、8…動力分配機構、9…ジェネレータ、10…インバータ、20…エンジンECU、30…ハイブリッドECU、40…モータECU、51…EV走行スイッチ、52…充電スイッチ、53…電流センサ、61…表示部、71…GPS、72…地図情報DB、81…通信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路に関する道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報に基づいて、前記車両を駆動する電力源であるバッテリの残量の目標値であるバッテリ残量目標値を設定するバッテリ残量目標値設定手段と、
前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報に基づいて、前記車両のドライバーの操作を予測する操作予測手段と、
を備え、
前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記操作予測手段が予測した前記車両のドライバーの操作に応じて、前記道路情報に基づいて設定した前記バッテリ残量目標値を変更する、車両制御装置。
【請求項2】
前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報に含まれる前記道路の標高、幅、カーブの曲率、カーブの連続数及び勾配の少なくともいずれかに基づいて、前記バッテリ残量目標値を設定し、
前記操作予測手段は、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報に含まれる信号機が表示している信号に関する情報及び前記道路の交通量に関する情報の少なくともいずれかに基づいて、前記車両のドライバーの操作を予測する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記バッテリ残量目標値設定手段が、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報から前記車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかを予測して前記バッテリ残量目標値を設定したときであって、前記操作予測手段が予測した前記車両のドライバーの操作から前記回生前にドライバーの加速操作が予測されるときは、前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記道路情報に基づいて設定した前記バッテリ残量目標値を変更しない、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記バッテリ残量目標値設定手段が、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報から前記車両の減速による回生及び降坂路による回生のいずれかを予測して前記バッテリ残量目標値を設定したときであって、前記操作予測手段が予測した前記車両のドライバーの操作から前記回生前にドライバーの加速操作が予測されないときは、前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記道路情報に基づいて設定した前記バッテリ残量目標値を減少させる、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記バッテリ残量目標値設定手段が、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報から前記車両の加速による前記バッテリ残量の減少及び登坂路による前記バッテリ残量の減少のいずれかを予測して前記バッテリ残量目標値を設定したときであって、前記バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されるときは、前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記道路情報に基づいて設定した前記バッテリ残量目標値を変更しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記バッテリ残量目標値設定手段が、前記道路情報取得手段が取得した前記道路情報から前記車両の加速による前記バッテリ残量の減少及び登坂路による前記バッテリ残量の減少のいずれかを予測して前記バッテリ残量目標値を設定したときであって、前記バッテリ残量の減少前にドライバーの減速操作が予測されないときは、前記バッテリ残量目標値設定手段は、前記道路情報に基づいて設定した前記バッテリ残量目標値を増大させる、請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記車両は、内燃機関及び電動機を搭載し前記内燃機関及び前記電動機の少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−147554(P2012−147554A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3219(P2011−3219)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】