説明

車両懸架装置

【課題】自動車用懸架装置の構成を簡素化する。
【解決手段】懸架装置を主懸架部材10を主要構成部材として構成する。主懸架部材10は、パイプから成る本体部12と、その両端にそれぞれ固定の2つの車体側取付部14、16と、本体部12の後方側の部分に固定された車輪側取付部18とを備えたものとする。本体部12は、パイプの両端が互いに接近し、側面視においてほぼC字形を成す形状に形成する。車体側取付部14,16はそれらの軸線のまわりに回転可能に車体に取り付けるのであるが、その際、それらの軸線をそれら軸線に直角な方向に互いにずらすか、互いに傾かせるか、その両方とする。一方、車輪側取付部18は、車輪30を回転可能に保持する図示しない車輪保持部材に取り付ける。主懸架部材10は懸架ばねの機能と懸架リンクの機能とを共に果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両懸架装置に関するものであり、特にそれの構成の簡素化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両懸架装置は、車体を車輪に支持させるとともに、車輪の振動が車体に伝達されることをできる限り回避し、かつ、車輪の車体に対する相対位置を所望の状態に拘束するために、車両の車体と車輪との間に設けられるものである。従来から種々の形式のものが使用されているが、上記の目的を達するために、どうしても構成が複雑になる。そこで構成を簡素化するために、下記特許文献1ないし4に、サスペンションリンクの弾性変形能を大きくしてばね部材の機能を果たさせ、あるいはばね部材の形状を工夫する等の提案が為されている。
【特許文献1】特開2000−177346号公報
【特許文献2】特開平3−266783号公報
【特許文献3】特開平7−89312号公報
【特許文献4】特開2005−225258
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、未だ簡素化の程度が十分とは言えず、従来の車両懸架装置には未だ改良の余地がある。本発明は、この認識の下に、構成が簡素でありながら、要求は十分に満たすことができる新規な車両懸架装置を得ることを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、車両懸架装置を、長手材料の両端が互いに接近する形状に形成されて成る本体部と、その本体部の前記両端の各々に設けられてそれぞれ車体に回動可能に取り付けられる第1車体側取付部および第2車体側取付部と、前記本体部の前記第1および第2車体側取付部から離れた部分に設けられて車輪側部材に取り付けられる車輪側取付部とを備え、懸架ばねおよび懸架リンクの両方として機能する主懸架部材を主体として構成することによって解決される。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る車両懸架装置においては、主懸架部材が、長手材料の両端が互いに接近した形状に形成されて成る本体部を備えたものとされる。これにより本体部を構成する長手材料の長さを十分長くして弾性変形能を十分大きくしながら、その長さの割りに、本体部全体を小さいスペースに収めることが可能となる。しかも、主懸架部材は本体部の両端に設けられた第1車体側取付部および第2車体側取付部において、回動可能に車体に取り付けられる。車体への回動可能な取付けは、回動不能な固定に比較して容易である。また、摺動軸受や転がり軸受の使用も可能であるが、従来の車両懸架装置において多用されているゴムブッシュの使用も可能であり、これの使用により、主懸架部材から車体への振動の伝達を良好に防止することができる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(5)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(15)項が請求項6に、(16)項が請求項7に、(19)項が請求項8に、(21)項が請求項9に、(22)項が請求項10に、(23)項が請求項11に、(24)項が請求項12に、(25)項が請求項13に、(26)項が請求項14にそれぞれ相当する。
【0008】
(1)長手材料の両端が互いに接近する形状に形成されて成る本体部と、その本体部の前記両端の各々に設けられてそれぞれ車体に回動可能に取り付けられる第1車体側取付部および第2車体側取付部と、前記本体部の前記第1および第2車体側取付部から離れた部分に設けられて車輪側部材に取り付けられる車輪側取付部とを備え、懸架ばねおよび懸架リンクの両方として機能する主懸架部材を主体として構成された車両懸架装置。
本体部は1本の長手材料が滑らかに湾曲させられて、例えば、側面視で概してC字形を成すようにされることが、応力集中を避け、あるいは製造を容易にする上で望ましいが、これに限定される訳ではない。例えば、側面視で概して多角形を成すものとされてもよく、複数の部材が溶接,リベット締め、ボルト締め等により一体的に結合されたものでもよい。
長手材料は、ばね材等の金属材料から成るものとすることも、繊維強化樹脂等の非金属材料から成るものとすることも可能である。
(2)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに平行とされ、かつ、互いにそれら回動軸線に直角な方向にずらされた(1)項に記載の車両懸架装置。
本態様においては、第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに平行とされているため、一見、主懸架部材が自由に回動できそうであるが、両車体側取付部が回動軸線に直角な方向にずらされているため、実際は、本体部の弾性変形を伴うことなく回動することはできない。このことは、第1車体側取付部と第2車体側取付部との一方を完全に自由にして、主懸架部材を他方の車体側取付部の回動軸線まわりに回動させれば、一方の車体側取付部の回動軸線がそれに直角な方向に移動することから容易に理解できる。実際には、一方の回動軸線の移動は許されないので、一旦ずれた回動軸線を元の位置へ戻すことが必要であり、そのためには、本体部を弾性変形させざるを得ないのである。
(3)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに前記車体の上下方向の成分を有する方向にずらされた(2)項に記載の車両懸架装置。
(4)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに前記車体の前後方向の成分を有する方向にずらされた(2)項または(3)項に記載の車両懸架装置。
(5)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部とが、互いに前記回動軸線に平行な方向の成分を有する方向にずらされた(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線のそれら回動軸線に直角な方向のずれは小さいほど、主懸架部材を容易に弾性変形させることができる。それら回動軸線間の距離で、それら回動軸線と車輪側取付部(厳密には車輪側取付部に対する車輪からの力の作用点)との距離を割った比が大きくなり、車輪からの小さい上向きの上下力で主懸架部材を大きく弾性変形させることができ、いわゆるホイールレイトを小さくできるのである。
しかし、第1車体側取付部や第2車体側取付部は強度確保上、ある程度の大きさを必要とし、それら相互の干渉を避けるために両者の回動軸線間の距離を一定以上小さくすることができない。それに対し、本項におけるように、第1車体側取付部と第2車体側取付部とをそれらの回動軸線に平行な方向の成分を有する方向にずらし、第1車体側取付部と第2車体側取付部との干渉を回避すれば、両者の回動軸線のそれら回動軸線に直角な方向のずれ量を十分小さくすることが可能となる。これが本項の構成のメリットの一つである。
(6)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに傾かされた(1)項に記載の車両懸架装置。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線が互いに傾かされると、両車体側取付部の回動に伴って、本体部にねじりの弾性変形が生じる。例えば、後述の(19)項の態様におけるように、第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動中心点(第1車体側取付部と第2車体側取付部との各回動軸線と本体部の中立軸の2本の延長線との交点)にずれがない場合には、本体部のねじりに起因する弾性変形が主体となる(曲げが生じないわけではない)が、(15)項の態様におけるように、両回動軸線の傾きと回動中心点のずれとの両方が与えられる場合には、明瞭にねじりと曲げとの複合弾性変形が発生し、本体部の弾性変形能をより効率的に利用することが可能になる。また、本体部のねじり弾性変形は、後述するように所望のアライメント変化を実現する上でも有効に利用できる。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線が互いに平行である場合には、両車体側取付部がそれぞれの回動軸線まわりに回動すると単純に考え得るが、2つの回動軸線が互いに傾かされている場合には、単純ではない。そこで、第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とを想定し、これらを第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動中心と考えることとする。主懸架部材が概して、第1交点と第2交点とを通る1本の直線のまわりに回動すると考えるのである。
なお、第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線とは互いに交差するように、第1車体側取付部および前記第2車体側取付部と本体部との相対位置が決められることが多いが、厳密には交差すると言えない場合もある。しかし、その場合でも、各回動軸線と中立軸の各延長線とは短い距離を隔てて立体交差することとなる。この場合には、各回動軸線上の、中立軸の各延長線に最も近い点を交点と見なすこととする。
(7)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が平面視において互いに傾かされた(6)項に記載の車両懸架装置。
後述の(11)項におけるように、第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線を、車体の前後方向視において互いに傾かせることも可能であるが、本項におけるように、平面視において互いに傾かせる方が、アライメント変化が良好な車両懸架装置が得られることが多い。
(8)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との一方の回動軸線が車体の横方向に平行である(6)項または(7)項に記載の車両懸架装置。
(9)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との前記一方より前記他方が上方に位置させられた(8)項に記載の車両懸架装置。
(10)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との前記一方より前記他方が下方に位置させられた(8)項に記載の車両懸架装置。
(11)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が、前記車体の前後方向視において互いに傾かされた(6)項ないし(10)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(12)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とが互いに前記車体の上下方向の成分を有する方向にずらされた(7)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(13)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とが互いに前記車体の前後方向の成分を有する方向にずらされた(7)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(14)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とが互いに前記車体の横方向の成分を有する方向にずらされた(7)項ないし(13)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(15)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とが、それぞれ前記第2車体側取付部の回動軸線と前記第1車体側取付部の回動軸線との延長線上から外された(6)項ないし(14)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(16)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点と、前記本体部の中立軸の平面視において前記中点から最も離れた点とを通る鉛直面である第1基準平面が、前記車体の前後方向に対して傾かされた(1)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
本項は、端的に言えば、主懸架部材、特に本体部が、平面視において車体の前後方向に対して傾斜させて配置される態様である。
本態様によれば、鉛直方向の力(上下力)および車体の横方向の力(横力)のみならず、車体の前後方向の力(前後力)によっても本体部を弾性変形させることが可能となり、所望のアライメント変化、例えば、前後力に基づくトーンと横力に基づくトーインとの両方を実現することが可能になる。
なお、本明細書においては、車両が水平面上に置かれている状態を前提としており、したがって、車体前後方向と車体横方向とは共に水平方向となり、車体上下方向は鉛直方向となる。
さらに付言すれば、本項の懸架装置を、前述の(4)項,(11)項,(13)項の各々において「前後方向」を「第1基準平面と水平面との交線に平行な方向」と読み替え、(8)項ないし(10)項,(14)項の各々において「横方向」を「第1基準平面に直角な方向」と読み替えた態様とすることも可能である。
(17)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点を通るとともに前記2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる一直線が平面視において前記車体の横方向に対して傾かされた(1)項ないし(16)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
本項は、端的に言えば、主懸架部材の回動平面が平面視において車体の前後方向に対して傾斜させて配置される態様である。主懸架部材は概して車体への取付部のまわりに回動するが、その回動平面(厳密には仮想回動平面である)が平面視において車体の前後方向に対して傾斜するように配置されるのである。第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線が互いに平行である場合には、主懸架部材が、概して、それら回動軸線に平行でかつ第1交点と第2交点との中点を通る一直線のまわりに回動すると考えるのが妥当であり、第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線が互いに傾かされている場合には、概して、第1交点と第2交点との中点を通るとともに2本の回動軸線が延びる方向の平均方向に延びる一直線(仮想回動軸線と略称する)のまわりに回動すると考えるのが妥当である。「2本の回動軸線が延びる方向の平均方向」は、例えば、上下方向視(鉛直方向視)において2本の回動軸線の成す角を2等分する直線が車体横方向に対して成す角と、前後方向視において2本の回動軸線が成す角を2等分する直線が車体横方向に対して成す角とを2つの方向成分として有する一直線の延びる方向として取得される。
なお、本項の車両懸架装置を、前述の(8)項ないし(10)項,(14)項の各々において「横方向」を「2本の回動軸線の延びる方向の平均方向」と読み替えた態様とすることも可能である。
(18)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点と、前記本体部の中立軸の最上点と、前記本体部の中立軸の最下点とを含む平面である第2基準平面が鉛直方向に対して傾かされた(1)項,(2)項,(4)項ないし(6)項,(9)項ないし(11)項,(13)項,(15)項のいずれにかに記載の車両懸架装置。
本項は、端的に言えば、主懸架部材が前後方向視において車体の上下方向に対して傾斜させて配置される態様である。
なお、本項の車両懸架装置を、前述の(3)項および(12)項において「上下方向」を「第2基準平面に平行でかつ前後方向に直角な方向」と読み替え、(7)項において「平面視」を「第2基準平面に平行でかつ前後方向に直角な方向から視て」と読み替え、(8)項および(14)項において「横方向」を「第2基準平面に直角な方向」と読み替えた態様とすることも可能である。
(19)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点を通るとともに前記2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる一直線が、前後方向視において前記車体の横方向に対して傾かされた(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
本項は、端的に言えば、主懸架部材の回動平面が前後方向視において車体の上下方向に対して傾斜させて配置される態様である。前記(17)項で説明したのと同じ理由で、「第1交点と第2交点との中点を通るとともに2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる一直線」を想定し、その一直線が前後方向視において前記車体の横方向に対して傾かされたものと表現することとしたのである。
仮想回動軸線の前後方向視における車体横方向に対する傾き角を調整することによって、例えば、実施例の項において詳述するように、外力を受けたときにその外力を主懸架部材がどの方向で受けるか、換言すれば、外力をどのような剛性バランスで受けるかを調整することができる。また、主懸架部材を車輪の内部空間内に配設することや、主懸架部材の近傍に駆動装置や制動装置を配設することが容易となる効果が得られる。
なお、本項の車両懸架装置を、前述の(3)項および(12)項において「上下方向」を「第1交点と第2交点との中点を通るとともに2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる直線(仮想回動軸線)および車体の前後方向と直交する方向」と読み替え、(7)項において「平面視」を「第1交点と第2交点との中点を通るとともに2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる直線(仮想回動軸線)および車体の前後方向と直交する方向から視て」と読み替え、(8)項および(14)項において「横方向」を「2本の回動軸線の延びる方向の平均方向」と読み替えた態様とすることも可能である。
(20)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点を通るとともに前記2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる一直線と直交する平面(仮想回動平面)が、前記車体の前後方向と上下方向との両方向に対して傾かされた(2)項に記載の車両懸架装置。
本項は、端的に言えば、主懸架部材の回動平面が平面視において車体の前後方向に対して傾斜させられるとともに、前後方向視において車体の上下方向に対して傾斜させられる態様である。
(21)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が一平面内に位置するとともにその一平面内において互いに傾かされており、かつ、前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との一方の回動軸線と前記本体部の中立軸の延長線との交点が、前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との他方の回動軸線の延長線上に位置する(1)項に記載の車両懸架装置。
(22)前記車輪側取付部が、前記本体部の、前記第1車体側取付部および第2車体側取付部から前記車体の前後方向において最も離れた部分に固定され、そこから第1車体側取付部および第2車体側取付部に接近する向きに延び出させられ、その延び出た部分の先端部に車輪からの横力が加えられる(1)項ないし(21)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
本態様においては、車輪側取付部に取り付けられた車輪に作用する横力の車輪側取付部への作用線が、平面視において、第1車体側取付部および第2車体側取付部と、本体部のそれら第1車体側取付部および第2車体側取付部から前記車体の前後方向において最も離れた部分との間を通ることとなる。それによって、主懸架部材の本体部に、横力に基づく曲げ変形が生じさせられるとともに、車輪側取付部の本体部への固定位置から先端部までの距離に応じたねじりモーメントによるねじり弾性変形が生じさせられる。そのため、後に実施例の項において詳述するように、主懸架部材の横方向の力の入力点と横方向の力に対する弾性主軸との相対位置の選定により、横力に基づくトー角変化の調整が可能になるなど、アライメントの調整が容易になる。
(23)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との一方が、他方に比較して、その一方の前記回動軸線に平行な方向に移動容易な状態で前記車体に取り付けられた(6)項ないし(15)項,(22)項のいずれか、あるいは(16)項ないし(18)項の(6)項ないし(15)項のいずれかに従属する部分に記載の車両懸架装置。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との一方を、回動軸線に平行な方向に移動可能とすれば、第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線が互いに傾かされていることに起因する本体部のねじり弾性変形や、上記(22)項におけるように横力に起因するねじりトルクによる本体部のねじり弾性変形が容易となり、ねじり弾性変形を利用した所望のアライメント変化の実現が容易となる。しかも、他方は回動軸線に平行な方向の移動は比較的小さく抑制されるため、主懸架部材全体としては回動軸線に平行な方向の移動が抑制され、車輪の位置拘束能力の要件も満たされる。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との一方がその一方の回動軸線に平行な方向に自由に移動可能であり、他方がその他方の回動軸線に平行な方向に移動不能である態様が、最も端的なものであるが、第1車体側取付部も第2車体側取付部も共にそれらの回動軸線に平行な方向に移動可能であってもよい。例えば、第1車体側取付部および第2車体側取付部が共にゴムブッシュを介して車体に回動可能に取り付けられる場合には、多少なりとも両取付部がそれらの回動軸線に平行な方向に移動することが許容される。しかし、その場合でも、例えば、第1車体側取付部と第2車体側取付部との一方のゴムブッシュはできる限り軸方向の変形の小さいものとし、他方のゴムブッシュは意図的に軸方向の変形を大きくしたものとすれば、本項の特徴の効果を享受することができる。
(24)前記車輪側取付部が取り付けられた車輪と前記車体とから前記主懸架部材に加えられる上下方向の力に基づく前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動に伴って互いの間隔が変化する2つのばね保持部の間に、それら2つのばね保持部の間隔の変化に応じて弾性変形する補助ばね部材が設けられた(1)項ないし(23)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
補助ばね部材の着脱や、ばね特性の異なる複数種類の補助ばね部材の選択的使用によって、車両懸架装置全体のばね特性を容易に変更することができる。
補助ばね部材としては、いかなる種類のばね部材も採用可能である。例えば、第1車体側取付部と第2車体側取付部との回動軸線に平行な方向のずれがないか小さい場合にはコイルスプリングを採用し、回動軸線に平行な方向のずれが大きい場合には板ばねを採用するというように、状況に応じて適宜のものを採用すればよいのである。
(25)前記車輪側取付部の少なくとも一部が、その車輪側取付部に対応する車輪の内部空間内に配設された(1)項ないし(24)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
主懸架部材はコンパクトに構成することが容易であるため、その一部あるいは大部分を対応する車輪、すなわちその主懸架部材により懸架されている車輪の内部空間内に配設することができる。なお、車輪側取付部の50%以上の部分が車輪の内部空間内に配設されることが望ましく、80%以上の部分が配設されることがさらに望ましい。
(26)前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との少なくとも一方の少なくとも一部が、前記車輪側取付部に対応する車輪の内部空間内に配設された(1)項ないし(25)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
第1車体側取付部と第2車体側取付部との両方が完全に車輪の内部空間内に収容されることが理想であるが、第1車体側取付部と第2車体側取付部との少なくとも一方の少なくとも一部が車輪の内部空間内に収容されていれば、一応の効果が得られる。第1車体側取付部と第2車体側取付部との少なくとも一方の50%以上の部分が車輪の内部空間内に配設されることが望ましく、80%以上の部分が配設されることがさらに望ましい。
(27)前記車輪側取付部に対応する車輪を駆動する駆動装置が、その車輪の内部空間内に配設された(1)項ないし(26)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
本請求可能発明の車両懸架装置は構成部品が少なくて済み、かつコンパクトに構成し得るため、車輪の内部空間内に、主懸架部材のみならず、駆動装置や制動装置を設けることも可能である。
(28)前記車輪側取付部に対応する車輪を制動する制動装置が、その車輪の内部空間内に配設された(1)項ないし(27)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(29)前記主懸架部材の前記本体部が中空管から成る(1)項ないし(28)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(30)前記主懸架部材の前記本体部が中実棒材から成る(1)項ないし(28)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(31)前記主懸架部材の前記本体部が帯板から成る(1)項ないし(28)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(32)前記主懸架部材に加えて、その主懸架部材の振動を減衰させる減衰装置を含む(1)項ないし(31)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(33)前記減衰装置が、前記主懸架部材の前記本体部に沿って配設され、その本体部の弾性変形に伴って減衰力を発生させる減衰材を含む(1)項ないし(31)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
(35)項におけるように、減衰装置として流体式のショックアブソーバを設けることも可能である。しかし、主懸架部材の本体部に沿って減衰材を配設し、本体部の弾性変形に伴って減衰力を発生させるようにすれば、車両懸架装置全体を一層コンパクトに構成することができる。
(34)前記減衰材が、前記本体部の各部に対してそれら各部の弾性変形歪みに比例した減衰力を発生させる分布で配設された(33)項に記載の車両懸架装置。
減衰材の配設により本体部の弾性変形モード(弾性変形の仕方ないし弾性歪みの分布)が変わることがなく、主懸架部材あるいはそれを含む車両懸架装置の設計が容易となる効果が得られる。
(35)前記減衰装置が、両端の連結部が前記車輪側取付部と前記車体とに連結されたショックアブソーバを含む(32)項ないし(34)項のいずれかに記載の車両懸架装置。
ショックアブソーバを、本体部の一部と車体との間に設けることも可能である。しかし、その場合には、ショックアブソーバが発生させる減衰力により本体部の弾性変形モードが変わることを避け得ない。それに対し、車輪側取付部と車体との間にショックアブソーバを設ければ、それが発生させる減衰力の本体部の弾性変形モードへの影響が小さくて済む。
【実施例】
【0009】
図1に、請求可能発明の一実施例である四輪自動車の後輪懸架装置(以下、懸架装置と略称する)を模型的に示す。図1は右後輪用の懸架装置を左前方から斜め下向きに見た状態を示している。この懸架装置は主懸架部材10を主要構成部材としており、その主懸架部材10は、ばね鋼製長手部材であるパイプから成る本体部12と、その本体部12の両端にそれぞれ固定された中空円筒部材から成る2つの車体側取付部14、16と、本体部12の車体側取付部14、16から最も遠い部分、すなわち最も後方の部分(厳密には、最も後方の部分またはその近傍部)に固定された車輪側取付部18とを備えている。本体部12は、パイプの両端が互いに接近し、側面視においてほぼC字形を成す形状に形成されている。車体側取付部14,16は、本体部12の両端に、それら両端と、直角またはそれに近い角度で交差する状態で固定されている。車体側取付部14,16は、それらの軸線のまわりに回転可能に車体に、厳密には車体の一部を成すブラケット22,24に、取り付けられている。車体側取付部14,16とブラケット22,24との間には、図示を省略するがゴムブッシュと取付軸とが配設されている。ゴムブッシュは、共に中空円筒状を成す内筒と外筒との間の隙間にゴム層が形成されたものであり、ゴム層の弾性変形により、車体側取付部14,16からブラケット22,24への振動の伝達を抑制するとともに、外筒と内筒との相対回転によってブラケット22,24に対する車体側取付部14,16の相対回転を許容する。すなわち、主懸架部材10は車体側取付部14,16において、それら車体側取付部14,16の各軸線と一致する各回動軸線まわりに回動可能に車体に取り付けられているのである。
なお、上記のように、ゴムブッシュを配設する代わりに、転がり軸受あるいはすべり軸受を介してブラケット22,24に回動可能に取り付けることも可能である。その場合には、ブラケット22,24と車体との間に振動伝達を抑制するゴムシート等の弾性体を配設することが望ましい。
【0010】
車輪側取付部18は、車輪30を回転可能に保持する図示しない車輪保持部材に取り付けられる。主懸架部材10は、車輪30の車体に対する相対位置を規定するとともに、本体部12の弾性変形により車輪30の車体に対する相対移動を許容する。車輪側取付部18と車体との間にはさらに、ショックアブソーバ32が配設される。主懸架部材10は、懸架装置に求められる3つの主要な機能のうち、振動減衰機能以外の2つの機能、すなわり車輪30の車体に対する上下方向の相対変位を許容しつつ車輪30に車体を支持させる機能(懸架ばねの機能)と車輪30の車体に対する相対位置を規定する機能(懸架リンクの機能)とを共に果たすのであり、そのために、主懸架部材10が満たすことが望ましい条件、すなわち備えるべき懸架性能については後述する。
【0011】
本懸架装置はかなりの部分が車輪30の内部空間、すなわち、車輪30のタイヤ34を保持するホイール36のホイールリムとホイールディスクとに囲まれた空間内に配置されている。すなわち、側面視では主懸架部材10の全体がホイール36の内周面より内側に配置されており、車輪30の軸方向(車体横方向)に関しても、車体側取付部14の90%以上と、車輪側取付部18の80%以上と、本体部12の中立軸の50%以上とが内部空間内に配置されているのである。
なお、図において、符号38は車輪代替部材を示し、車輪30から車輪側取付部18に加えられる上下力F1,横力F2および前後力F3を考えるために、車輪30に代替するものとして仮想される部材である。
【0012】
上記主懸架部材10に求められる懸架性能の主たるものは以下のものである。
(a) 車輪側取付部の適切な上下方向の弾性変位を許容すること
車両の走行時に車輪30が路面の凹凸に起因して上下動する場合、その上下動につれて車体も上下動することを極力回避することが望まれる。そのために、主懸架部材10は十分な弾性変形能を備えるとともに適切なホイールレイトを実現するものであること、例えば、図2に示すように、バウンド方向とリバウンド方向とにそれぞれ100mm程度のストロークを許容するとともに20N/mm程度のホイールレイトを実現することが望ましい。
(b) コンパクトに構成可能であること
主懸架部材の相当の部分、例えば、2つの車体側取付部14,16の少なくとも一方の少なくとも50%以上の部分と、本体部12の中立軸の30%以上の部分とが、車輪30の内部空間内に配設され得るコンパクトさを有することが望ましく、そのためには、側面視において、主懸架部材10の車体側取付部14,16または本体部12の車体側取付部14,16に隣接する部分が、図3に示すように、車輪30がフルバウンドした状態における車輪30の内部空間40とフルリバウンドした状態における車輪30の内部空間42とが互いに重なり合う重なり部分44の内側に、配置され得ることが望ましい。ただし、車体側取付部14,16の一方が、車輪30の軸方向に関して、完全に車輪30の内部空間の外に配設される場合があり、この場合はその一方に関しては上記条件は不可欠ではなくなる。
(c) 適切な車輪拘束能力を有すること
車輪30には、図4に示す並進x,y,zおよび回転ψ,θ,φの6つの自由度があるが、主懸架部材10はこれら6自由度の各々に対して適切な剛性と強度を有することが必要である。
また、車輪30の車体に対する上下方向の相対移動量(上下ストロークと称する)に対して、適切なアライメント変化、例えば、図5に例示するトー角(φ)およびキャンバ角(ψ)の変化が生じることが望ましい。
さらに、路面から車輪30に前後力,横力等の外力が加えられた場合に適切なアライメント変化が生じること、例えば、車両内向きの横力が加えられた場合にはトーインとなることが望まれる。
【0013】
上記の条件を満たすための具体的な対策は下に例示する通り複数存在し、それら複数の対策の単独採用あるいは併用によって、所望の懸架性能を有する懸架装置が得られる。
(i) 本体部12の中立軸長さを選定すること
(ii) 本体部12の横断面形状,寸法を選定すること
(iii) 車体側取付部14,16を、それらの回動軸線が互いに平行なままそれら回動軸線に直角な方向に互いにずらすこと
(iv) 車体側取付部14,16を、それらの回動軸線に平行な方向に互いにずらすこと
(v) 車体側取付部14,16の回動軸線を互いに傾けること
(vi) 主懸架部材10の形状を選定すること
(vii) 車輪側取付部18に対する車輪30側からの力の入力位置を選定すること
(viii) 主懸架部材を車体前後方向に対して傾けること
(ix) 主懸架部材の仮想回動平面を車体前後方向に対して傾けること
(x) 主懸架部材を車体上下方向に対して傾けること
(xi) 主懸架部材の仮想回動平面を車体上下方向に対して傾けること
以下、これら対策について順次説明する。
【0014】
(i) 本体部12の中立軸長さを選定すること
本体部12は自身の少なくとも曲げの弾性変形、場合によっては曲げとねじりとの弾性変形により車輪30の上下ストロークを許容するものであり、概して本体部12の中立軸長さが長いほど弾性変形能が大きくなることは明らかである。反面、懸架装置のコンパクト化のためには中立軸長さが短いことが望ましく、これら両面を考慮して適切な長さに選定されるべきである。
【0015】
(ii) 本体部12の横断面形状,寸法を選定すること
本体部12は上記のように自身の少なくとも曲げの弾性変形、場合によっては曲げとねじりとの弾性変形により車輪30の上下ストロークを許容するものであり、本体部12の横断面形状および寸法は、本体部の弾性変形能および最大応力に大きな影響を及ぼす。本実施例においては横断面形状が円環状を成すパイプ状部材が採用されており、曲げとねじりとの両方に適しており、かつ、変形や応力の計算が比較的容易である利点を有しているが、図6に示す横断面形状が矩形状を成す帯板48等、他の横断面形状の長手部材の採用も可能である。
なお、横断面形状と寸法との両方を本体部12全体にわたって均一にすることも可能であるが、応力の均一化、軽量化等の目的で、本体部12の中立軸に沿って横断面形状と寸法との少なくとも一方を変化させることも可能である。その場合、段階的に変化させても、連続的に変化させてもよい。
【0016】
(iii) 車体側取付部14,16を、それらの回動軸線が互いに平行なままそれら回動軸線に直角な方向にずらすこと
車体側取付部14と車体側取付部16とを互いに同軸にすれば、車輪30から主懸架部材10に上向きの上下力が加えられた場合に、主懸架部材10は単純に車体側取付部14,16の回動軸線のまわりに回動するのみで、弾性変形せず、車輪30に車体を支持させるための弾性力が生じない。それに対して、車体側取付部14,16の回動軸線が互いに平行であっても、それら回動軸線をそれら回動軸線に直角な方向にずらされていれば、主懸架部材10は本体部12の弾性変形を伴うことなく回動することが不可能であり、車輪30に車体を支持させるための弾性力が発生する。このことは、図1の主懸架部材10を概念化して示す図7において、主懸架部材10を、仮に、車体側取付部14を表す点50を中心に単純に回動させたとすれば、車体側取付部16を表す点52が点50を中心とする円弧に沿って点52′の位置へ移動するが、実際には点52の移動は許容されないため、点52′を点52の位置へ戻すことが必要であり、そのためには本体部12を弾性変形させることが不可欠であることから理解できる。図7においては、点50,52、すなわち車体側取付部14,16の回動軸線の位置が車体の上下方向にずらされているが、前後方向にのみずらしても、上下方向と前後方向との両方向にずらしても、同様に主懸架部材10の回動には本体部12の弾性変形が伴い、車輪30に車体を支持させるための弾性力を発生させることができる。
ただし、実際には、車輪30から主懸架部材10に加えられる上下力F1は、車輪側取付部18の入力点54に加えられ、その入力点54と本体部12への入力点56との隔たり(以下、第1アーム長A1と称する)に起因して、本体部12の入力点56へは上向きの上下力F1と、図7において反時計方向の回転モーメントM1(上下力F1と第1アーム長A1との積)とが加えられることとなるため、本体部12には、上記点52′を点52の位置へ戻す場合の弾性変形の他に、上記回転モーメントM1に基づく弾性変形も生じることとなる。
【0017】
(iv) 車体側取付部14,16を、それらの回動軸線に平行な方向に互いにずらすこと
上記のように、車体側取付部14,16を、それらの回動軸線が互いに平行なままそれら回動軸線に直角な方向にずらす場合、そのずらし量が小さければ、車体側取付部14,16同士、あるいは車体側取付部14,16の一方と本体部12とが干渉して、回動軸線のずらし量を実現できない場合がある。それに対し、車体側取付部14,16を、それらの回動軸線に平行な方向に互いにずらせば、上記干渉が生じることを回避しつつ、いかに小さな回動軸線のずらし量でも実現可能となる。この車体側取付部14,16同士、あるいは車体側取付部14,16の一方と本体部12との干渉回避の効果は、後述するように、車体側取付部14,16の回動軸線同士を互いに傾斜させる場合にも得られる。
また、車体側取付部14,16をそれらの回動軸線に平行な方向に互いにずらせば、ずらさない場合に比較して、主懸架部材10に横力が作用した場合に、平面視において主懸架部材10を車体側取付部14,16側の端を中心に回動させようとする回転モーメントに対抗させることが容易となる利点もある。特に、ブラケット22,24と車体側取付部14,16との間にゴムブッシュが設けられる場合には、そのゴムブッシュの半径方向の弾性変形量が小さくて済み、かつ、同じ大きさの半径方向の弾性変形に起因して生じる主懸架部材10の平面視における回動量が小さくて済む。
さらに、車体側取付部14,16をそれらの回動軸線に平行な方向に互いにずらせば、ずらさない場合に比較して、本体部12の形状の選択可能範囲が広くなり、その分、懸架装置の設計の自由度が高くなる利点もある。
【0018】
(v) 車体側取付部14,16の回動軸線を互いに傾けること
前述のように車体側取付部14,16の回動軸線をそれら回動軸線に直角な方向にずらすことに代えて、あるいはそのずらしと共に、車体側取付部14,16の回動軸線を互いに傾けることによっても、主懸架部材10の回動に伴って本体部12に弾性変形を生じさせることができる。
例えば、主懸架部材10を、図8、図9に示すように、車体側取付部14,16の回動軸線同士が一致している状態から、車体側取付部16を、その車体側取付部16の回動軸線の中点60を中心に水平面内において所定角度回動させた上で本体部12に固定したものとする。なお、図8と図9とにおいては、これら両図における本体部12の最後方点61より上側の部分である上側部62と下側の部分である下側部64との対応関係を理解し易くするために、前者を実線で表し、後者を破線で表すこととする。また、「回動軸線の中点」とは、車体側取付部14,16の軸方向における中央面と回動軸線との交点の意味であり、図示の例においては、車体側取付部14,16の回動軸線と本体部12の中立軸との交点と中点とが一致するように構成されている。
上記図8,図9の場合には、主懸架部材10が、車体側取付部14の回動軸線と一致した直線L1のまわりに回動する状態を想定しても、車体側取付部14の回動軸線は勿論、車体側取付部16の中点60も移動しない。しかしながら、車体側取付部16の回動軸線が、直線L1のまわりに旋回することとなる。車体側取付部16の回動軸線は、図10に拡大して示すように、円錐面72の一母線74と一致する状態となり、車体側取付部16の回動軸線を元に戻すためには、母線74を中点60を中心に鉛直面内で角度α回動させるとともに、水平面内で角度β回動させることが必要であり、角度αの回動により本体部12が主としてねじり弾性変形させられ、角度βの回動により本体部12が主として曲げ弾性変形させられることとなる。角度αは角度βに比較して大きいため、本体部12には概してねじり弾性変形が生じ(後述するように、ねじりモーメントに起因する曲げ弾性変形も生じる)、この弾性変形が車輪30に車体を弾性支持させるための弾性力を生じさせる。
なお、車体側取付部14、16の回動軸線を互いに傾ければ、少なくとも一方の回動軸線の中点は必ず他方の回動軸線上から外れることとなり、両方の回転軸線の中点が共に相手側の回動軸線上から外れる場合もある。例えば、車体側取付部14、16の回動軸線が一直線と一致している状態から、それら回動軸線の2つの中点が共に一直線上に位置する状態を保って、車体側取付部14、16の回動軸線を互いに逆の向きに、同じ角度あるいは互いに異なる角度回動させて、両回動軸線を互いに傾けても、主懸架部材10の上記一直線まわりの回動につれて車輪30に車体を弾性支持させるための弾性力を生じさせることができ、その場合には、車体側取付部14、16の回動軸線の中点がそれぞれ車体側取付部16、14の回動軸線上から外れることになる。
上記のように、車体側取付部14,16の回動軸線を互いに傾けるのみでも、主懸架部材10の回動に伴って、本体部12に弾性変形を生じことができるが、それに加えて車体側取付部16の回動軸線の中点を、車体側取付部14の回動軸線からその回動軸線に直角な方向ずらせば、前記(iii)項の場合と同様な理由による弾性変形を生じさせることができ、本(v)項の対策と前記(iii)項の対策との併用となる。
【0019】
(vi) 主懸架部材10の形状を選定すること
本体部12の中立軸の長さを選定することにより、主懸架部材10の弾性変形能を変え得ることは前述した通りであるが、本体部12の湾曲形状(特に、側面視における本体部12全体の形状)や、本体部12のうち車体側取付部14と車輪側取付部18との間に存在する部分と、車体側取付部16と車輪側取付部18との間に存在する部分との中立軸の長さの割合等、本体部12の形状を適切に選定することにより、あるいは車体側取付部14の回動軸線に対する車体側取付部16の回動軸線の傾き角の大きさを選定することにより、あるいは車輪側取付部18の形状(特に前記アーム長A1)を選定することにより、車輪30の上下ストロークの最大値やホイールレイト、あるいは上下ストロークに対するアライメント変化を所望のものに調節することができる。
例えば、上記(v)項に記載の「車体側取付部14,16の回動軸線を互いに傾けること」と本項の「主懸架部材10の形状を選定すること」とを組み合わせることによって、以下のように、アライメント変化を調節することができる。図11に示すように、車体側取付部14の回動軸線を車体横方向に平行とし、車体側取付部16の回動軸線を水平面内において車体外側に向かうに従って車体前方に向かう向きに傾ければ、車輪30のバウンド時に、前記(v)項に関して説明したように、本体部12が車体側取付部16側の端において矢印で示す方向にねじられ、それに伴って、図12に示すように、本体部12の下側部64が車体外側へ移動する一方、上側部62が殆ど移動せず、場合によっては車体内側へ移動し、それにつれて車輪側取付部18が図12において(背面視で)反時計方向に回動させられる。したがって、その車輪側取付部18に取り付けられる車輪30のキャンバ角がネガティブ側へ変化することとなる。また、車輪30への上向きの上下力F1が本体部12の中立軸より距離A2だけ車体外側に作用すれば、距離A2(第2アーム長と称する)と上向きの上下力F1との積で表される回転モーメントM2により車輪側取付部18を図12において反時計方向に回動させる。これによっても車輪30のキャンバ角がネガティブ側へ変化する。上記本体部12のねじり弾性変形に基づくキャンバ角の変化量は、車体側取付部16の回動軸線の傾き角が大きいほど大きくなる。また、上記回転モーメントM2に基づくキャンバ角の変化量は、上記第2アーム長A2が大きいほど大きくなる。さらに、いずれのキャンバ角の変化量も、車輪30への上向きの上下力F1が大きいほど、換言すればバウンド方向の上下ストロークが大きくなるほど大きくなる。
次にトー角変化について説明する。上記のように、本体部12のねじり弾性変形に基づいて最後方点61の近傍部が図11において反時計方向に回転し、それにつれて車輪側取付部18も反時計方向に回動する。その結果、車輪30のトー角がトーイン側へ変化する。このトー角の変化量は、車体側取付部16の回動軸線の傾き角が大きいほど大きくなる。また、トー角の変化量は、車輪30への上向きの上下力F1が大きいほど、換言すればバウンド方向の上下ストロークが大きくなるほど大きくなる。
【0020】
(vii) 車輪側取付部18に対する車輪30側からの力の入力位置を選定すること
車輪側取付部18は、前述のように、本体部12の車体側取付部14,16から最も遠い部分(最後方点61またはその近傍)に設けられるのであるが、その車輪側取付部18への車輪30からの力の入力位置は、車輪側取付部18の形状選択と相俟って相当広い範囲で変更可能である。車輪30側から車輪側取付部18に加えられる上向きの上下力に基づいて本体部12に加えられる回転モーメントの大きさが第2アーム長A2によって変わることは前述の通りであるが、路面から車輪30に加えられる横力F2に基づいて本体部12に加えられる回転モーメントM3の大きさが第1アーム長A1によって変わる。この横力F2に基づく回転モーメントM3は、本体部12をねじるモーメントとして作用する。すなわち、図13に概念化して示すように、横力F2により本体部12が曲げ弾性変形させられることにより、車輪側取付部18が平面視で時計方向に回動させられる傾向があるとともに、上記回転モーメントM3により本体部12がねじり弾性変形させられることにより、車輪側取付部18が平面視で反時計方向に回動させられる傾向があり、実際には、車輪側取付部18がこれら両傾向による回動の和の変位をすることになる。すなわち、両傾向の強さが同じであれば、車輪側取付部18は単純に横方向に並進するのみであり、曲げ弾性変形による回動の傾向が強ければ、車輪側取付部18は時計方向に回動して車輪30にトーアウト傾向を生じさせ、逆にねじり弾性変形による回動の傾向が強ければ、車輪側取付部18は反時計方向に回動して車輪30にトーイン傾向を生じさせる。
上記のように、両傾向の強さが同じで、車輪側取付部18が単純に横方向に並進するのみの場合、横力F2が弾性主軸上に作用していると称されることがある。例えば、図14に示すように、本体部12の形状が、部分円とそれに対する2本の接線からなるC形状を成す場合に、横力についての弾性主軸は上記部分円の中心近傍の斜線を施した領域に存在する。そして、仮に弾性主軸が図15における点76の位置にあり、横力F2が点78の位置に作用する(車軸の中心線が点78を通る)とすれば、車輪30はトーイン傾向となる。すなわち、車軸の中心線を弾性主軸より後方にすれば、トーアウト傾向となり、前方にすればトーイン傾向となるのであり、横力F2が同じである場合に、車軸の中心線が弾性主軸からの離れるほど、トーアウト傾向あるいはトーイン傾向が強くなるのである。換言すれば、本体部12が同じであっても、第1アーム長A1の選定(車軸位置の選定)により、横力F2に基づくトー角変化を任意に変え得るのである。
【0021】
(viii) 主懸架部材を車体前後方向に対して傾けること
上記(vii)項においては、本体部12が車体前後方向に平行に配設されている場合を説明したが、図16示すように、平面視で、本体部12を車体前後方向に対して傾かせることも可能である。このようにすれば、例えば、上記のように横力F2に基づくトー角変化を変え得るのみならず、前後力F3に基づくトー角変化も変えることが可能になる。横力F2に基づくトー角変化と前後力F3に基づくトー角変化との割合は、本体部12の車体前後方向に対する傾き角を変えることによって変えることができる。
なお、図16においては車体側取付部14,16の回動軸線が互いに平行で、かつ、車体の上下方向にずらされており、それら回転軸線が車体横方向に対して傾けられているが、これは不可欠ではない。図16の場合には、車体側取付部14,16がそれらの回動軸線に平行な方向にはずらされておらず、本体部12の中立軸が車体側取付部14,16の回動軸線に直角な一平面上に位置するため、主懸架部材10の車体前後方向に対する傾き角は、上記一平面の車体前後方向に対する傾き角であって単純である。それに対して、車体側取付部14,16がそれらの回動軸線に平行な方向にずらされ、あるいは車体側取付部14,16の回動軸線が互いに傾かれる場合には、本体部12の中立軸が一平面上にはない状態となるのが普通である。この場合には、主懸架部材の傾きが一義的には決められない。そこで、図17に例示するように、車体側取付部14と車体側取付部16との各回動軸線80,82と本体部12の中立軸の2本の延長線84,86との交点である第1交点90と第2交点92とを通る直線上における第1交点と第2交点との中点94と、本体部12の中立軸の上記中点から最も離れた点である最遠点96とを通る鉛直面である基準平面98を便宜的に想定し、その基準平面98が車体前後方向に対して成す傾き角を、主懸架部材10の車体前後方向に対する傾き角と考えることとする。第1交点90が車体側取付部14の代表点であり、第2交点92が車体側取付部16の代表点であると考えるのである。車体側取付部14,16と本体部12との相対位置は、上記代表点が車体側取付部14,16の軸方向の中点と一致するように決められるとは限らず、周辺の状況によっては軸方向の中点が意図的に代表点からずらされることもある。その場合には、車体側取付部14,16の軸方向の中点を代表点とすることも可能であるが、各回動軸線80,82と本体部12の中立軸の2本の延長線84,86との交点90,92を代表点と考える方が妥当であると考え、主懸架部材10の基準平面98は上記のように決めることとしたのである。このように考えれば、主懸架部材10の形状のいかんを問わず、車体の前後方向に対する主懸架部材10の傾斜角を論ずることができる。
【0022】
(ix) 主懸架部材の仮想回動平面を車体前後方向に対して傾けること
図16に示す例においては、車体側取付部14,16の回動軸線が互いに平行であるため、主懸架部材10は、概して、車体側取付部14,16の回動軸線と直交する一平面に沿って回動すると考えることは妥当なことである。そして、この場合には、車体側取付部14,16について上記の場合と同様に、第1交点と第2交点とを考え、それら両交点を結ぶ線分の中点を通り、かつ、車体側取付部14,16の回動軸線に平行な一直線を想定し、主懸架部材10は概してその一直線のまわりに回動すると考えることが妥当である。本体部12の形状、特に、車体側取付部14と車輪側取付部18との間の部分と、車体側取付部16と車輪側取付部18との間の部分との中立軸の長さや湾曲形状の違いに基づいて、実際の回動軸線が正確には上記仮想回動軸線と一致しないことはあるものの、そのずれ量はそれほど大きくはないのが普通であり、概して仮想回動軸線のまわりに回動すると考えることは妥当なことなのである。図16に示す例は、前記(viii)項と本項との両方の条件を満たす例なのである。
そして、主懸架部材10の仮想回動軸線が車体の横方向に対して傾斜しており、その仮想回動軸線と直交する仮想回動平面が車体の前後方向に対して傾いている場合には、その主懸架部材10に保持された車輪30は、従来のセミトレーリングアーム式懸架装置と同様に、車輪30の上下方向のストロークに伴って、車輪のトー角やキャンバ角が変化する。したがって、仮想回動平面を車体前後方向に対して傾けることはアライメント調整の一手段として利用できる。
なお、図17に示すように、車体側取付部14,16がそれらの回動軸線に平行な方向にずらされ、あるいは車体側取付部14,16の回動軸線が互いに傾かれる場合には、仮想回動軸線や仮想回動平面が単純には決まらない。そこで、車体側取付部14と車体側取付部16との各回動軸線80,82と本体部12の中立軸の2本の延長線84,86との交点である第1交点90と第2交点92とを通る直線上における第1交点と第2交点との中点94を通り、回動軸線80,82の延びる方向の平均方向に延びる一直線を求め、その一直線を仮想回動軸線100とし、その仮想傾動軸線100と直交する平面を仮想回動平面101とする。図17の例では、仮想回動軸線100は、平面視で、中点94を通り、回動軸線80,82の成す角を2等分する方向に延びる一直線となり、車体の横方向に対して傾斜しているため、本項の効果を得ることができる。
【0023】
(x) 主懸架部材を車体上下方向(鉛直方向)に対して傾けること
主懸架部材10を前述のように車体前後方向に対して傾けるとともに、あるいはその代わりに、車体上下方向に対して傾けることも可能である。このように、主懸架部材10を車体上下方向に対して傾けることにより、例えば、主懸架部材10を車輪30の内部空間内に配設することや、主懸架部材の近傍に駆動装置や制動装置を配設することが容易となる効果が得られる。図18に、上下方向にのみ傾けられた状態の主懸架部材10を示す。
上下方向に対する傾きを論ずる場合でも、前述のように前後方向に対する傾きを論ずる場合と同様の問題があり、本明細書では、図19に例示するように、車体側取付部14と車体側取付部16との各回動軸線と本体部12の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点90と第2交点92とを通る直線上における第1交点90と第2交点92との中点94と、本体部12の中立軸の最上点102および最下点104との3点を含む平面である基準平面106を想定し、その基準平面106の車体上下方向に対する傾き角を主懸架部材10の車体上下方向に対する傾き角であると考えることとする。
なお、例えば図19におけるように、主懸架部材10が車体上下方向に対してのみならず、前後方向に対しても傾けられるとき、主懸架部材10の基準平面を(viii)項に記載の方法と本項に記載の方法との2つの方法で定義する場合には、1つの主懸架部材が2つの基準平面を有することとなり、それら2つの基準平面に基づいて規定される車体前後方向に対する傾き角と上下方向に対する傾き角とを有することになる。
実用上は、そのように考えても差し支えないのであるが、理論上は、1つの主懸架部材10は1つの基準平面のみを有すると考え、その1つの基準平面の車体前後方向および車体上下方向に対する角度が、主懸架部材の傾き角であると考える方が簡明である。そのためには、例えば、上記のように、第1交点90と第2交点92との中点94と、本体部12の中立軸の最上点102および最下点104との3点を含む上記平面(106)が主懸架部材10の唯一の基準平面であると考えること、あるいは、上記2つの基準平面98,106に基づいて得られる車体前後方向に対する傾き角と車体上下方向に対する傾き角とを有し、かつ、第1交点90と第2交点92との中点94、本体部12の中立軸の最上点102および最下点104、ならびに本体部12の中立軸の、平面視で上記中点94から最も遠い最遠点96の合計4点からの距離の二乗の和が最小となる一平面を想定して、その一平面が主懸架部材10の唯一の基準平面であると考えること、あるいは、上記4点94,96,102,104からの距離の二乗の和が最小である一平面を想定して、その一平面が主懸架部材10の唯一の基準平面であると考えること等が可能である。
【0024】
(xi) 主懸架部材の仮想回動平面を車体上下方向に対して傾けること
前記図18の例においては、主懸架部材10が上下方向に対して傾かされるとともに、仮想回動平面も上下方向に対して傾かされている。このように、仮想回動平面を上下方向に対して傾かせ、その傾斜角度を調整すれば、主懸架部材10の比較的容易に弾性変形する方向と、弾性変形し難い方向との、車体上下方向あるいは車体横方向に対する相対角度を調整することができ、例えば、車体のロールセンタを調整することが可能になる。以下、この点について説明する。
従来の懸架装置においても、図20に示すように、懸架装置全体を比較的弾性変形し難く(剛性が高く)、回動軸線110のまわりに回動可能なリンク112と、そのリンク112の回動に伴って弾性変形する(剛性が低い)ばね114とに置換して考えることが行われている。このモデル化された懸架装置に車輪30から横力F2が作用すれば、その横力F2はリンク112とばね114とが分担して受けることとなる。リンク112が分担する成分をリンク分担成分F2a、ばね114が分担する成分をばね分担成分F2bと称することとするが、リンク112は剛性が高いため、リンク分担成分F2aに対する車輪30の変位は比較的小さく、ばね114は剛性が低いため、ばね分担成分F2bに対する車輪30の変位は比較的大きい。そして、リンク112の車体上下方向あるいは車体横方向に対する傾斜角を変えることにより、車輪30が比較的容易に変位し易い方向、あるいは変位し難い方向を変えることができる。
図18に示す懸架装置においても、同様に、比較的剛性の高い方向と低い方向とがある。前述のように、本体部12は車体側取付部14,16の回動軸線80,82に直角な方向には弾性変形し易いが、回動軸線80,82に平行な方向には比較的変形し難く、前者の方向の力に対してはばねとして機能し、後者の方向の力に対してはリンクとして機能する。したがって、図21に示すように、車輪30に横力F2が作用した場合には、リンク分担成分F2aとばね分担成分F2bとの方向が図示の方向となる。図20に示した従来例と比較して、リンク分担成分F2aとばね分担成分F2bとの方向が入れ替わった状態となるが、剛性の比較的高い方向と低い方向とが存在することは同様であり、この事実を利用して、従来の懸架装置におけると同様に、ロールセンタの調整を行うことができる。
図22に車両の右旋回時を例として示すように、車体118の重心120に作用する慣性力に基づく回転モーメントは、左右の車輪30を介して路面により受けられるが、その際、左右の車輪は懸架装置の作用により車体30に対して前記リンク分担成分とばね分担成分との方向で決まる各瞬間中心122,124の回りに旋回すると考えることができ、これら各瞬間中心と各車輪30の接地点とを結ぶ直線の交点が車体120のロールセンタ126となる。したがって、主懸架部材10のリンク分担成分とばね分担成分との方向、換言すれば、前後方向視における仮想回動平面の方向を調整することによって、ロールセンタの位置を調整することができる。
【0025】
以上の説明では、車体側取付部14と車体側取付部16とが共に、軸方向には移動不能にブラケット22,24に取り付けられているものとしたが、一方を軸方向に移動不能とする一方、他方を軸方向に移動可能とすることも可能である。
その一例を図23に示す。この例においては、車体側取付部14が軸方向に移動不能、車体側取付部16が軸方向に移動可能とされている。本例においては、車体側取付部16が軸方向に移動するにつれてそれを元の位置に復帰させる弾性力が発生させる弾性部材130が設けられているが、全く軸方向の抵抗力を受けることなく移動可能とすること、つまり移動自在とすることも可能である。このようにすると、本体部12の弾性変形、特にねじり弾性変形が容易となり、主懸架部材10の弾性変形能を増すことができる。
図示の例におけるように、車体側取付部14と車体側取付部16との回動軸線が十分大きな角度で互いに傾かされている場合には、両取付部14,16を共に軸方向に移動自在としても主懸架部材10の車体横方向の位置が一義的に決まるため、そのようにすることが可能であるが、車体側取付部14と車体側取付部16との回動軸線の傾き角度が小さい場合や、両回動軸線が互いに平行である場合には、両取付部14,16の一方は移動不能にすること、あるいは他方に比較して軸方向に移動し難くすることが望ましい。
【0026】
多くの場合、以上説明した複数の対策を組み合わせて採用することにより所望の懸架特性を有する主懸架部材10を得るのであるが、その際、有限要素法等を利用して、各部の歪み,応力,変位を計算することが望ましい。ただし、計算によることは不可欠ではなく、試作品を製作し、それの挙動を測定する実験を行って所望の懸架特性を有するものに改良してもよい。
【0027】
さらに別の実施例を図24に示す。本実施例は、主懸架部材10に補助ばね140を付加したものである。主懸架部材10が、図19(a)に示す中立位置にある状態から図19(b)に示すように上方へ回動する際、車体側取付部14,16も同じ向きに回動する。この回動に伴って、間隔が変化する2つのばね保持部の間に補助ばね140が配設されているのである。図示の例においては、車体側取付部14,16の、主懸架部材10の上記回動に伴って互いの間隔が増大する部分に、ばね保持部としてのばね保持ピン142,144が半径方向外向きに突出する状態で設けられており、それらばね保持ピン142,144の間に補助ばね140としての引張コイルばねが張り渡されている。そのため、主懸架部材10の上記回動に伴って、補助ばね140が引き延ばされることとなり、その分、主懸架部材10が弾性変形し難くなる。本体部12のばね定数が大きくなるに等しいのであり、したがって、この補助ばね140を着脱するか、あるいはばね定数を異にする別の補助ばね140と交換することにより、主懸架部材10のばね定数を複数段階に変更することができる。
本実施例は、例えば、一車種で複数種類に車体重量が異なる場合に利用することができる。補助ばね140の着脱あるいは交換により、車体重量の違いにかかわらず中立状態における車高を同じにすることができるのである。あるいは、複数種類の自動車に共通の懸架装置を使用しながら、各自動車の中立状態における車高をそれぞれ所望の大きさにすることもできる。
【0028】
本請求可能発明に係る懸架装置は簡易な構成とし得るため、車輪30の駆動装置や制動装置をホイール36の内部空間内に配設することが容易である利点を有する。
図25ないし図29に駆動装置の配設例を示す。図25および図26は、駆動源を外部に配設し、車輪側取付部18を貫通して延びるドライブシャフト150を介して駆動する駆動装置の例であり、配設が特に簡単である。
図27および図28は、電動モータを駆動源とする駆動装置全体をホイール36の内部空間内に配設した例である。インナロータ型の電動モータ152の回転トルクが減速機154を介してホイール36に伝達される。電動モータ152および減速機154は車輪側取付部18に取付られ、概して本体部12の上側部62とホイール36のホイールディスクとの間に配置されている。
図29は、アウタロータ型の電動モータ162を備えた駆動装置をホイール36の内部空間内に配設した例であり、アウタロータ164がホイール36の内周面に固定され、インナステータ166が車輪側取付部18に固定されている。
【0029】
駆動装置と制動装置とを共にホイール36の内部空間内に配設した例を図30ないし図32に示す。図30は、図25および図26に示したドライブシャフト150によりホイール36を駆動する駆動装置と、制動装置としてのディスクブレーキ170とを組み合わせたものでである。ディスクブレーキ170は、ホイール36に固定されたディスクロータ172と、車輪側取付部18に取り付けられたキャリパ174とを備えている。キャリパ174は液圧によって作動するホイールシリンダを有し、ホイール36の軸方向に平行に移動可能なブレーキパッドをディスクロータ152に押圧してそれの回転を抑制する。
図31および図32は、図27および図28に示したインナロータ型の電動モータ152と減速機154とを含む駆動装置と、上記ディスクブレーキ170とを組み合わせたものでである。ディスクブレーキ170のディスクロータ172がハット型であり、電動モータ152がハットの鍔に相当する摩擦板部180と軸方向において並ぶ状態配置され、減速機154の一部が有底円筒部182の内側に配置されている。キャリパ174は、それのホイールシリンダ176が主懸架部材10の本体部12の車体側取付部16に隣接する部分とディスクロータ172との間に位置する状態で配設され、減速機154のケーシングを介して間接的に、あるいは直接的に車輪側取付部18に取り付けられる。
ただし、図示の例に限定されるものではなく、例えば、ホイールリムの内周面から半径方向内向きに延び出たフランジ部をディスクロータとして利用することも可能であり、キャリパの配設位置も、主懸架部材10とホイールディスクとの間に、十分な軸方向寸法を有するスペースが存在する部分のうちから任意に選定し得る。例えば、車体側取付部14がホイールディスクに近接して設けられている場合には、その車体側取付部14の車両内側に位置するスペースにキャリパを配設することも可能である。
【0030】
上記実施例においては、ショックアブソーバ32が車輪側取付部18と車体との間に設けられていた。本体部12の任意の部分と車体との間にショックアブソーバ32を設けても減衰効果は得ることができるのであるが、その場合には、ショックアブソーバ32によって加えられる力により、本体部12の弾性変形モードが変わってしまうため、所望のアライメント変化を実現することが困難になる。それに対して、前述のように車輪側取付部18と車体との間にショックアブソーバ32を設ければ、ホイール36から加えられる力に、ショックアブソーバ32により加えられる力が追加されるのみで、本体部12の弾性変形モードに対する影響が小さくなり、あるいは影響を考慮することが容易となり、所望のアライメント変化を実現することが容易となる。
同様の理由で、ショックアブソーバ32を車体側取付部14,16の少なくとも一方と車体との間に設けることも推奨される。例えば、車体側取付部14,16のいすれか一方、あるいは双方から、図28に例示するように、半径方向外向きに突出するアーム部184を設け、そのアーム部184の自由端部と車体との間にショックアブソーバ32を配設するのである。あるいは、車体側取付部14,16の少なくとも一方とそれらを回転可能に保持するブラケット22,24との間にロータリダンパを設けてもよい。
【0031】
流体の流動抵抗を利用する通常のショックアブソーバ32により減衰装置を構成するとともに、あるいはそれに代えて、固体部材間の摩擦力あるいは固体部材の内部摩擦に基づいて振動を減衰させる固体型減衰装置を設けることも可能である。
例えば、減衰装置を、主懸架部材10の本体部12に沿って配設され、その本体部の弾性変形に伴って減衰力を発生させる減衰材を含むものとするのである。本体部12が前記図6に示した帯板48により構成される場合には、本体部12を複数の帯板を重ねるとともに、それら複数の帯板の接触面同士を弾性的に押し付けて、本体部12の弾性変形に伴って複数の帯板間に滑りが生じるようにしたり、複数の帯板間に減衰材を挟んでその減衰材に減衰機能を果たさせるようにしたりして、重ね板ばね型の減衰装置兼懸架ばねとすることが望ましい。
また、主懸架部材10の本体部12がパイプ状部材によって構成される場合には、パイプ状部材の内周面に沿って減衰材を配設する形態が望ましい。例えば、図34に示すように、パイプ状部材を構成している外管192の内周面に制振ゴム等、内部摩擦の大きい材料から成る内層194を固着する形態が便利である。
あるいは、図35に示すように、内層194のさらに内側に内管196を設ければ、本体部12のねじり、あるいは曲げの弾性変形に伴って生じる外管192と内管196との相対移動に基づいて内層194に減衰作用を生じさせることができ、一層有効である。
以上のように、本体部12の弾性変形に伴って減衰力を発生させる手段を講じれば、減衰装置の設置にまとまったスペースを必要とせず、懸架装置全体をコンパクトに構成することが容易となる。
【0032】
上記のように本体部12に沿って減衰装置を構成する場合でも、減衰力によって本体部12の弾性変形モードが変わり、所望のアライメント変化を達成することが困難になる。この不都合を回避あるいは軽減するために、減衰力を発生させる手段が本体部12の各部に加える抵抗力が、本体部12を弾性変形させるために本体部12の各部に加えられる力あるいはそれら力によって発生させられる歪みに比例する状態に減衰装置を構成することが望ましい。このようにすれば、減衰装置の配設により本体部12の弾性変形モードが変わることがなく、主懸架部材10あるいはそれを含む車両懸架装置の設計が容易となる効果が得られる。
【0033】
以上、四輪自動車の後輪用懸架装置に請求可能発明を適用する場合について説明した。本請求可能発明は後輪用懸架装置に特に適しているためであるが、前輪用懸架装置に適用することも可能である。
また、上記実施例はいずれも、主懸架部材と減衰装置とによって懸架装置を構成するものであった。この構成が最も簡易であり、本請求可能発明の効果を特に有効に享受できるものであるが、本請求可能発明は、例えば、主懸架部材と減衰装置との組合わせによりほぼ目的を達成し得る懸架装置を得た上で、アライメント変化をさらに理想的なものに近づける等の目的で、前述の弾性部材130や1,2本の補助リンクを付加することまで排除するわけではない。
【0034】
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、これは文字通り例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】請求可能発明の一実施例である懸架装置を示す斜視図である。
【図2】上記懸架装置が満たすことが望ましい条件の1つを示すグラフである。
【図3】上記懸架装置が満たすことが望ましい別の条件を説明するための図である。
【図4】上記懸架装置が満たすことが望ましいさらに別の条件を説明するための図である。
【図5】上記懸架装置が満たすことが望ましいさらに別の条件を示すグラフである。
【図6】別の実施例における主懸架部材を示す斜視図である。
【図7】図1の懸架装置の主懸架部材に求められる条件を満たすための一対策を説明するための図である。
【図8】図1の懸架装置の主懸架部材に求められる条件を満たすためのさらに別の対策を説明するための平面図である。
【図9】図8の懸架装置の側面図である。
【図10】図8の主懸架部材の作動を説明するための図である。
【図11】図8の主懸架部材におけるアライメント変化を説明するための平面図である。
【図12】図8の主懸架部材におけるアライメント変化を説明するための背面図である。
【図13】さらに別の実施例である懸架装置に横力が作用する場合の主懸架部材の変形を説明するための平面図である。
【図14】図13の実施例の作用を説明するための図である。
【図15】図13の実施例の作用を説明するための図である。
【図16】さらに別の実施例である懸架装置に横力および前後力が作用する場合の主懸架部材の変形を説明するための平面図である。
【図17】さらに別の実施例の懸架装置における主懸架部材の前後方向に対する傾き角の考え方を説明するための平面図である。
【図18】さらに別の実施例である懸架装置を示す背面図である。
【図19】さらに別の実施例である懸架装置における主懸架部材の上下方向に対する傾き角の考え方を説明するための背面図である。
【図20】図18の実施例の作用を説明するための図である。
【図21】図18の実施例の作用を説明するための図である。
【図22】図18の実施例の作用を説明するための図である。
【図23】さらに別の実施例である懸架装置における主懸架部材の平面図である。
【図24】さらに別の実施例である懸架装置の側面図である。
【図25】図1の懸架装置と駆動装置の一例との配置を示す斜視図である。
【図26】図25の装置の別の方向からの斜視図である。
【図27】図1の懸架装置と別の駆動装置との配置を示す斜視図である。
【図28】図27の装置の別の方向からの斜視図である。
【図29】図1の懸架装置とさらに別の駆動装置との配置を示す斜視図である。
【図30】図25,図26の装置に制動装置を付加した状態を示す斜視図である。
【図31】図27,図28の装置に制動装置を付加した状態を示す側面図である。
【図32】図31における32−32断面図である。
【図33】さらに別の実施例である懸架装置の一部を示す側面図である。
【図34】さらに別の実施例である懸架装置の一部を示す正面断面図である。
【図35】さらに別の実施例である懸架装置の一部を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10:主懸架部材 12:本体部 14,16:車体側取付部 18:車輪側取付部 22,24:ブラケット 30:車輪 32:ショックアブソーバ 34:タイヤ 36:ホイール 48:帯板 80,82:回動軸線 84,86:延長線 90:第1交点 92:第2交点 94:中点 96:最遠点 98:基準平面 102:最上点 104:最下点 106:基準平面 130:弾性部材 140:補助ばね 142,144:ばね保持ピン 150:ドライブシャフト 152:電動モータ 154:減速機 162:電動モータ 164:アウタロータ 166:インナステータ 170:ディスクブレーキ 172:ディスクロータ 174:キャリパ 192:外管 194:内層 194:内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手材料の両端が互いに接近する形状に形成されて成る本体部と、その本体部の前記両端の各々に設けられてそれぞれ車体に回動可能に取り付けられる第1車体側取付部および第2車体側取付部と、前記本体部の前記第1および第2車体側取付部から離れた部分に設けられて車輪側部材に取り付けられる車輪側取付部とを備え、懸架ばねおよび懸架リンクの両方として機能する主懸架部材を主体として構成された車両懸架装置。
【請求項2】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに平行とされ、かつ、互いにそれら回動軸線に直角な方向にずらされた請求項1に記載の車両懸架装置。
【請求項3】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部とが、互いに前記回動軸線に平行な方向の成分を有する方向にずらされた請求項2に記載の車両懸架装置。
【請求項4】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が互いに傾かされた請求項1に記載の車両懸架装置。
【請求項5】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が平面視において互いに傾かされた請求項4に記載の車両懸架装置。
【請求項6】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点とが、それぞれ前記第2車体側取付部の回動軸線と前記第1車体側取付部の回動軸線との延長線上から外された請求項4または5に記載の車両懸架装置。
【請求項7】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点と、前記本体部の中立軸の平面視において前記中点から最も離れた点とを通る鉛直面である基準平面が、前記車体の前後方向に対して傾かされた請求項1ないし6のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項8】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との各回動軸線と前記本体部の中立軸の2本の延長線との交点である第1交点と第2交点との中点を通るとともに前記2本の回動軸線の延びる方向の平均方向に延びる一直線が、前後方向視において前記車体の横方向に対して傾かされた請求項1ないし7のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項9】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動軸線が一平面内に位置するとともにその一平面内において互いに傾かされており、かつ、前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との一方の回動軸線と前記本体部の中立軸の延長線との交点が、前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との他方の回動軸線の延長線上に位置する請求項1に記載の車両懸架装置。
【請求項10】
前記車輪側取付部が、前記本体部の、前記第1車体側取付部および第2車体側取付部から前記車体の前後方向において最も離れた部分に固定され、そこから第1車体側取付部および第2車体側取付部に接近する向きに延び出させられ、その延び出た部分の先端部に車輪からの横力が加えられる請求項1ないし9のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項11】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との一方が、他方に比較して、その一方の前記回動軸線に平行な方向に移動容易な状態で前記車体に取り付けられた請求項4ないし6,10のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項12】
前記車輪側取付部が取り付けられた車輪と前記車体とから前記主懸架部材に加えられる上下方向の力に基づく前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との回動に伴って互いの間隔が変化する2つのばね保持部の間に、それら2つのばね保持部の間隔の変化に応じて弾性変形する補助ばね部材が設けられた請求項1ないし11のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項13】
前記車輪側取付部の少なくとも一部が、その車輪側取付部が取り付けられる車輪の内部空間内に配設された請求項1ないし12のいずれかに記載の車両懸架装置。
【請求項14】
前記第1車体側取付部と前記第2車体側取付部との少なくとも一方の少なくとも一部が、前記車輪側取付部が取り付けられる車輪の内部空間内に配設された請求項1ないし13のいずれかに記載の車両懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−195352(P2008−195352A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35323(P2007−35323)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】