説明

車両用乗員保護構造

【課題】乗員の安全性とロール保護部材の小型化による軽量化との両立を図り、また、車室内空間の拡大と、ロール保護部材の配設とを両立し、車室内空間の拡大により、車室を広く活用でき、ロール保護部材の配設により、乗員の保護を図る車両用乗員保護構造を提供する。
【解決手段】車室1外後方の車体リヤデッキ部26の上方に、ロール保護部材27を配設し、ロール保護部材27の上端とフロントヘッダ3の上端を結んだ線Lが、車室1内の乗員Xを保護可能になるようロール保護部材27の高さを設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車幅方向に延びて車室前部のフロントウインドウの上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダと、このフロントヘッダの後方に連なって車室上部を形成するルーフ部とが設けられ、該ルーフ部が開閉可能に支持されたようなオープンカーの車両用乗員保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にルーフ部が開閉可能に支持されたオープンカーにおいては、ルーフ部を開放してオープン状態と成した時、車両転倒時に乗員の頭部を保護する目的で、ロールバーが設けられている。
上述のロールバーを備えた従来の車両用乗員保護構造としては、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
すなわち、特許文献1、2の何れにおいても、フロアパネル後部から斜め上方に立上がるキックアップ部を設け、このキックアップ部上端から後方に延びるリヤフロアを設ける一方、キックアップ部背面とリヤフロア前端部下面とに跨って車幅方向に延びるクロスメンバを設けている。
また、車両の両側面を構成する左右一対のサイドパネル間には、リンクブラケットをそれぞれ介して車幅方向に延びる閉断面構造のクロスバーを設けている。
【0004】
さらに、運転席シートのシートバック直後および助手席シートのシートバック直後において、上述のクロスメンバに対応するリヤフロア前端部上面から上方に立上がる左右一対のロールバーを設け、これら左右一対のロールバーの上下方向中間部を上述のクロスバーを貫通して上方へ延ばし、この上方延設部を逆U字状に折曲げると共に、折曲げ端部をクロスバーに連結固定している。
【0005】
加えて、上述のロールバーとサイドパネルとの間を連結部材で車幅方向に連結して、該ロールバーの支持剛性向上を図っている。
上述のロールバーは剛性丸パイプから構成されており、車両転倒時に左右一対のロールバーで車両を支持する関係上、ロールバーそれ自体の剛性およびロールバー支持剛性を備えるように構成されている。
【0006】
このように、特許文献1、2の何れの従来構造においても、ロールバーの構造が複雑で、かつ重いうえ、ロールバーがシートバック直後に位置しているので、シートバック後方のルーフ収納部に対してルーフ部を収納する場合に、該ロールバーが邪魔になる。
また、上記ロールバーは全体的に上下方向に高く延びており、ロールバーの上端とシートバック(またはヘッドレスト部)上端とは路面一状に形成されており、このロールバーが車室内外から目視できるのでデザイン的にも良好ではなかった。
【特許文献1】特開2006−21607号公報
【特許文献2】特開2005−186688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に、ロール保護部材を配設し、該ロール保護部材の上端とフロントヘッダの上端とを結ぶ線が、車室内の乗員を保護可能になるよう上記ロール保護部材の高さを設定することにより、乗員の安全性とロール保護部材の小型化による軽量化との両立を図ることができ、また、車室内空間の拡大と、ロール保護部材の配設とが両立でき、車室内空間の拡大により、車室を広く活用することができると共に、ロール保護部材の配設により、乗員の保護を図ることができる車両用乗員保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両用乗員保護構造は、車幅方向に延びて車室前部のフロントウインドウの上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダと、該フロントヘッダの後方に連なって車室上部を形成するルーフ部とが設けられ、該ルーフ部が開閉可能に支持されたオープンカーの車両用乗員保護構造であって、車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に、ロール保護部材を配設し、該ロール保護部材の上端と上記フロントヘッダの上端を結んだ線が、車室内の乗員を保護可能になるよう上記ロール保護部材の高さを設定したものである。
上記構成によれば、ロール保護部材を車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に設け、かつ、該ロール保護部材上端とフロントヘッダ上端とを結ぶ線が車室内の乗員を保護するように、該ロール保護部材の高さを設定したので、このロール保護部材の上下方向の寸法を小さくし、その小型化を図って、該ロール保護部材の軽量化を図ることができる。
【0009】
また、ルーフ部をオープン状態に開放し、かつ車両が転倒した場合には、フロントヘッダとロール保護部材とで車両を支持することができて、乗員の安全性を確保することができる。
しかも、上記ロール保護部材を車体リヤデッキ部の上方に設けたので、車室内空間の拡大を、ロール保護部材の配設とが両立できる。この結果、上記車室内空間の拡大により、車室を広く活用することができると共に、ロール保護部材の配設により、乗員の保護を図ることができる。
加えて、上記ロール保護部材の上下方向の寸法が小さくなるので、デザイン的な見映えの向上を図ることができると共に、後方視界の拡大を図ることもできる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記車室内には乗員の着座するシートが設けられ、上記ロール保護部材の上端と上記フロントヘッダの上端を結んだ線が、上記シートの上端より高くなるように上記ロール保護部材の高さを設定したものである。
上述のシートの上端は、シートバックの上端、またはヘッドレスト一体形のシートバックにおいては、ヘッドレスト部の上端に設定してもよい。
【0011】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、シートは乗員に対応して構成されているので、上記ロール保護部材の高さ設定により、車両転倒時において確実に乗員を保護することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記車室の後方には上記ルーフ部を開放時に収納するルーフ収納部が設けられ、上記ロール保護部材を該ルーフ収納部の後方に配設したものである。
上記構成によれば、ルーフ収納部の後方にロール保護部材を配設したので、このロール保護部材によりルーフ収納空間が阻害されることはなく、大型のルーフ部であっても適切に収納することができ、またルーフ部の分割構造の自由度向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ロール保護部材を車幅方向に渡って配設したものである。
上記構成によれば、ロール(roll、ころがり)時に、車両の転倒の形態が変化しても、車幅方向に渡るロール保護部材にて乗員を確実に保護することができ、また、該ロール保護部材が車体強度の向上にも寄与する。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ロール保護部材を車幅方向に離間して複数配設したものである。
上記構成によれば、ロール保護部材が複数設けられているので、ロール時の車両の転倒形態が如何に変化しても、これら複数のロール保護部材により確実に乗員を保護することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記車体のリヤデッキ部には強度部材で車幅方向に延びるリヤデッキメンバ部材が設けられ、該リヤデッキメンバ部材に対応した位置に上記ロール保護部材を配設したものである。
上記構成によれば、ロール保護部材をリヤデッキメンバ部材に対応する位置に設けたので、ロール保護部材の支持強度を確保することができると共に、ロール保護部材の剛性確保と構造の簡素化による軽量化との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に、ロール保護部材を配設し、該ロール保護部材の上端とフロントヘッダの上端とを結ぶ線が、車室内の乗員を保護可能になるよう上記ロール保護部材の高さを設定したので、乗員の安全性とロール保護部材の小型化による軽量化との両立を図ることができ、また、車室内空間の拡大と、ロール保護部材の配設とが両立でき、車室内空間の拡大により、車室を広く活用することができると共に、ロール保護部材の配設により、乗員の保護を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
車室内空間の拡大と、ロール保護部材の配設との両立を図るという目的を、車幅方向に延びて車室前部のフロントウインドウの上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダと、該フロントヘッダの後方に連なって車室上部を形成するルーフ部とが設けられ、該ルーフ部が開閉可能に支持されたオープンカーの車両用乗員保護構造において、車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に、ロール保護部材を配設し、該ロール保護部材の上端と上記フロントヘッダの上端を結んだ線が、車室内の乗員を保護可能になるよう上記ロール保護部材の高さを設定するという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はオープンカーの車両用乗員保護構造を示し、図1において、このオープンカーは、車幅方向に延びて車室1前部のフロントウインドウ2の上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダ3と、このフロントヘッダ3の後方に連なって車室1上部を形成する前後のルーフ部4,5とが設けられている。
上述の前後のルーフ部4,5は開閉可能に支持されている。なお、図1においては前後のルーフ部4,5を閉成した状態を仮想線α,βで示し、これらルーフ部4,5を開放し、後述するルーフ収納部14に収納した状態を実線で示している。
【0019】
ここで、上述のフロントヘッダ3は、フロントヘッダアウタ3aとフロントヘッダインナ3bとを接合して、車幅方向に延びるヘッダ閉断面3cを備えた強度部材であって、このフロントヘッダ3の左右両端部は、閉断面構造のフロントピラー(図示せず)を介してヒンジピラーに連結されている。
【0020】
一方、車室1の底面を構成するフロアパネル6を設け、このフロアパネル6の後部には、斜め後方かつ上方に立上がるキックアップ部7を介して、リヤフロア8を連設している。
このリヤフロア8の車幅方向中間部には下方に凹設されたスペアタイヤパン9を一体形成すると共に、該リヤフロア8の後端部には、上下方向に延びるリヤエンドパネル10を一体的に取付け、このリヤエンドパネル10の上部車外側には車幅方向に延びるリヤエンドメンバ11を接合し、該リヤエンドメンバ11とリヤエンドパネル10との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面12を形成して、後部車体剛性の向上を図っている。
【0021】
また、上述のリヤフロア8の前後方向中間部には、上下方向に延びるリヤデッキパネル13を取付け、このリヤデッキパネル13の前側をルーフ収納部14に設定すると共に、リヤデッキパネル13の後側を荷室つまりトランクルーム15に設定している。
このトランクルーム15の上部は、トランクリッド16により開閉可能に覆われている。
【0022】
また、上述のルーフ収納部14は、車室1の後方に設けられており、図1に実線で示すように、開放時の前後のルーフ部4,5を収納する収納部である。
ここで、上述のリヤデッキパネル13は、その下端に前方に折曲げ形成された接合片13aを一体形成すると共に、その上端にも前方に屈曲形成された屈曲部13bを形成し、リヤデッキパネル13の上部は該屈曲部13bを含む、コ字状部13cに形成されており、リヤデッキパネル13それ自体の剛性向上を図るように構成している。
【0023】
ところで、上述のフロアパネル6には複数のシートブラケット17,18を介して、乗員が着座するシート19を設けている。このシート19はシートクッション19Cと、ヘッドレスト部19Hが一体に形成されたシートバック19Bとを備えている。なお、この車両はドライバーズシートとパッセンジャーズシートとを備えた2人乗り用に構成されている。
【0024】
また、上述のキックアップ部7の背面と、リヤフロア8の前部下面との間には、車幅方向に延びるクロスメンバ20を取付け、これら各要素7,8,20間には、車幅方向に延びる閉断面21を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
【0025】
さらに、上述のリヤデッキパネル13の下部と上下方向に略対応するように、リヤフロア8の下面には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ22を取付け、リヤフロア8とリヤクロスメンバ22との間には、車幅方向に延びる閉断面23を形成して、下部車体剛性の向上を図り、また、該リヤクロスメンバ22の下部に図示しないサブフレームを取付けるように構成している。
【0026】
上述のリヤデッキパネル13上部のコ字状部13cには、該コ字状部13cを後方から覆うようにリヤデッキメンバ24を接合固定して、リヤデッキパネル13とリヤデッキメンバ24との間には、車幅方向に延びるリヤデッキ閉断面25を形成して、リヤデッキ部26の剛性向上を図るように構成している。ここで、上述のリヤデッキメンバ24は前方が開放した横向きU字状またはV字状断面を有するように形成されている。
つまり、車体のリヤデッキ部26には強度部材で車幅方向に延びるリヤデッキメンバ24が設けられたものである。
【0027】
図2は図1の要部平面図であって、上述のリヤデッキメンバ24は同図に示すように、車幅方向に延びると共に、その車幅方向両端部は車両の前方側に回り込んで回込み部24R,24Rが一体形成されており、これら左右の各回込み部24R,24Rの上部には、ロール保護部材27,27が取付けられている。該ロール保護部材27は内部中空の剛性部材にて構成されており、ルーフ部4,5をオープン状態に開放し、かつ車両が転倒した際には、該ロール保護部材27とフロントヘッダ3とで車両を支持して、乗員の安全性を確保するためのものである。
このため、図1に示すように、ロール保護部材27の上端とフロントヘッダ3の上端とを結んだ線Lが、車室1内の乗員Xを保護可能になるよう該ロール保護部材27の高さが設定されている。
【0028】
具体的には、図1に示すように、ロール保護部材27の上端とフロントヘッダ3の上端とを前後方向に結んだ線Lが、車室1内のシート19におけるシートバック19Bの上端よりも高くなるように該ロール保護部材27の高さが設定されている。
しかも、該ロール保護部材27は上述のルーフ収納部14の後方において車幅方向に離間して複数(図2の実施例では2個)配設されると共に、これらの各ロール保護部材27,27はリヤデッキメンバ24に対応した位置に配設されている。
【0029】
図2において、フロアパネル6の車幅方向中央部には、車室1内に突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部28が一体に形成されている。また、フロアパネル6の左右両サイドには閉断面構造のサイドシル29,29が一体的に接合固定されている。
このサイドシル29は、サイドシルインナとサイドシルアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる車体剛性部材であって、サイドシルインナと、サイドシルアウタとの間には、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面が形成されている。
【0030】
また、リヤフロア8の左右両サイド下部には、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム30,30が接合固定されており、リヤフロア8とリヤサイドフレーム30との間には、車両の前後方向に延びる閉断面31(図3参照)が形成されており、該リヤサイドフレーム30により、下部車体剛性の向上を図っている。
【0031】
図2に示すように、上述のリヤサイドフレーム30の車幅方向外側には、左右の後輪ホイールハウス32,32が設けられている。これらの各後輪ホイールハウス32,32は、ホイールハウスアウタ33とホイールハウスインナ34とを接合して構成されている。
【0032】
図1、図2に示すように、上述のロール保護部材27は、車室1後方の後輪ホイールハウス32上方のリヤデッキ部26に配設されており、該ロール保護部材27は上述の後輪ホイールハウス32に対応した位置に配設されている。
また、上述の後輪ホイールハウス32には、該後輪ホイールハウス32を補強するホイールハウスレインフォースメント35が設けられており、このホイールハウスレインフォースメント35と対応した位置に上述のロール保護部材27が配設されているので、図3、図4を参照して、ホイールハウスレインフォースメント35およびその周辺の構造について詳述する。
【0033】
図3に示すように、後輪36を囲む後輪ホイールハウス32は、ホイールハウスインナ34とホイールハウスアウタ33とを接合することにより形成され、後輪ホイールハウス32の外側部分は、リヤクオータパネルインナ37とホイールアウタ33との間に延びるリヤフェンダレインフォースメント38と、その外側に位置するリヤフェンダ39とで構成されている。
【0034】
また、図3に示すように、リヤサイドフレーム30の車両外方には、リヤサスペンション機構のダンパ90を支持するサスペンションハウジング40が形成されている。
このサスペンションハウジング40は、そのスカート部に、該スカート部の外周を取り囲むように平面視略円弧状のサスペンションハウジングガセット41が接合され、サスペンションハウジングガセット41は上方に延びており、ホイールハウスインナ34に接合されている。
【0035】
サスペンションハウジングガセット41は、また、図4に示すように、前後に離間した一対のパッケージジャンクション42,43に接合され、また、これら前後のパッケージジャンクション42と43との間には、上下に延びるサスペンションハウジングレインフォースメント44が配置されて、このサスペンションハウジングレインフォースメント44は、前後のパッケージジャンクション42と43に接合されている。
【0036】
これらの要素は、サスペンション支持構造体を構成するものであり、前後のパッケージジャンクション42,43は、その下端縁に沿って接合フランジ42aを有し、これら接合フランジ42aを介して、前後のパッケージジャンクション42,43は、ホイールハウスインナ34および車体側壁としてのリヤクオータパネルインナ37の車内側面に接合されている。また、前後のパッケージジャンクション42と43との間に配置された上記サスペンションハウジングレインフォースメント44は、前後のパッケージジャンクション42,43に接合されている。
【0037】
また、図4に示すように、前後のパッケージジャンクション42と43との間には、その上下方向中間部に、ジャンクションロアメンバ45が配置され、ジャンクションロアメンバ45はリヤデッキパネル13に接合されている。
【0038】
図3に示すように、サスペンションハウジングレインフォースメント44の上端縁には、前後のパッケージジャンクション42と43との間に位置するジャンクションアッパメンバ46が配置され、このジャンクションアッパメンバ46は、サスペンションハウジングレインフォースメント44、パッケージジャンクション42,43、リヤクオータパネルインナ37に、それぞれ接合されている。ジャンクションアッパメンバ46は開口46aを有し、この開口46aを介して、ベルトリトラクタ(図示せず)からショルダベルト(図示せず)が車室内に引き出される。
【0039】
さらに、車体側壁を構成するホイールハウスインナ34およびリヤクオータパネルインナ37の車体内方側に位置するサスペンションハウジングレインフォースメント44は、その下端がホイールハウスインナ34に接合されており、また、上端が、水平方向に延びるジャンクションアッパメンバ46の車体内方部に接合されており、そして、このジャンクションアッパメンバ46の車幅方向外側の端部は、リヤクオータパネルインナ37に接合されて、これらの各要素46,37,34,44間に閉断面47が形成されている。
【0040】
そして、上述のパッケージジャンクション42,43、サスペンションハウジングレインフォースメント44、ジャンクションロアメンバ45およびジャンクションアッパメンバ46の各要素により、後輪ホイールハウス32を補強する上述のホイールハウスレインフォースメント35を構成している。
【0041】
図3に示すように、リヤデッキパネル13の上部の屈曲部13bは、ホイールハウスレインフォースメント35を構成するジャンクションアッパメンバ46に接合固定されている。また、該リヤデッキパネル13のコ字状部13cには、アンカレインフォースメント48が上下方向に向けて取付けられている。
【0042】
後輪36に連結されたダンパ90は、リヤサスペンション機構を構成するもので、このダンパ90を含むリヤサスペンション機構としては、図示しないアッパアーム、ロアアーム、ナックルなどを含む、マルチリンク式のサスペンション構造を採用してもよい。
【0043】
ダンパ90は、図3に示すように、円筒状のダンパサポート49と、このダンパサポート49の下端に接合されたアッパスプリングシート50と、その下方に位置するロアスプリングシート51とを有し、上下のスプリングシート50と51との間にはコイルスプリング52が配設されている。
【0044】
また、サスペンションハウジングレインフォースメント44には、サスペンションハウジング40から上方に突出するダンパサポート49を支持するガセット部材として、第1ガセット61、第2ガセット62、第3ガセット63を設けている。
【0045】
図5を参照して、これらの各ガセット61,62,63の構成について説明する。
同図に示すように、上述の第1ガセット61は上下に水平板状部61a,61bを有する断面コ字状の部材であって、これら上下の水平板状部61a,61bの中間にはダンパサポート49の逃し部61c,61dが形成されると共に、各水平板状部61a,61bにはサスペンションハウジングレインフォースメント44に接合される複数のフランジ部61eが一体形成されている。
【0046】
また、第1ガセット61のルーフ収納部14と対向する部分には、その車体前後方向に取付け面61f,61fが一体的に形成され、これら前後の取付け面61f,61f間に凹部61gが形成されると共に、取付け面61f,61fの背面側にはナット64,64が予め溶接固定されている。この第1ガセット61は図3に示すようにサスペンションハウジングレインフォースメント44に取付けられている。
【0047】
第2ガセット62は、図3にも示すように、第1ガセット61から上方に延びて、ジャンクションロアメンバ45を介して、リヤデッキパネル13およびリヤデッキメンバ24に結合されるもので、この上下方向に延びる第2ガセット62は、図5に示すようにガセット主板62aと、このガセット主板62aのダンパサポート49と対応する部分に形成されてルーフ収納部14側に膨出する膨出部62bと、この膨出部62bの下部に設けられた凹部62cと、上述のガセット主板62aの上部から上方に向けて一体的に折曲げ形成されたフランジ部62d…を備え、上述の凹部62cの車体前後方向に離間する取付け面62e,62eには、ボルト挿通孔65,65が形成されている。
【0048】
上述の第3ガセット63は、第2ガセット62のルーフ収納部14側に配設されるもので、この第3ガセット63は、図5に示すように、車体前後方向中間部63aに対して前部63bおよび後部63cが若干上方かつ車幅方向外方に位置する略V字状に形成されている。また、第3ガセット63の中間部63aには、2つのボルト挿通孔66,66が形成されると共に、前部63bおよび後部63cには、それぞれ1つのボルト挿通孔67,67が形成されている。
【0049】
図3に示すように、上述の第1ガセット61および第2ガセット62は予め車体に溶接され、第3ガセット63はダンパ90を取り付けた後に、ボルト68,68をナット64,64に締結することで、各ガセット61,62に固定され、またボルト69,69を用いてダンパサポート49のブラケット70に固定される。
そして、図3に示すように、後輪ホイールハウス32の上部には、後輪36に連結されたダンパ90の上端が支持され、第1〜第3のガセット61,62,63およびサスペンションハウジングレインフォースメント44から成るダンパ支持部71に対応した位置に上述のロール保護部材27を配設したものである。
【0050】
図6は、図3の部分拡大断面図であって、ロール保護部材27はフランジ部27aとテーパコーン部27bとを備え、その内部が中空状に形成されている。また、ジャンクションアッパメンバ46の下面およびリヤデッキパネル13上部の屈曲部13b下面に予め複数のナット53を溶接固定し、これら複数のナット53に対して上方からボルト54を締付けることで、ロール保護部材27をリヤデッキ部26に取付けたものである。
【0051】
ここで、上述のボルト54、ナット53の上下の関係は、逆に成してもよい。すなわち、ジャンクションアッパメンバ46およびリヤデッキパネル13から上方に向けてウエルドボルトを固定し、このウエルドボルトに対して上方から締付ける袋ナットにより、ロール保護部材27をリヤデッキ部26に取付けるように構成してもよい。
【0052】
図2で示した構成に代えて、図7で示す構成を採用してもよい。すなわち、図2においては、リヤデッキメンバ24を含むリヤデッキ部26の左右2箇所に合計2個のロール保護部材27,27を設けたが、図7に示す実施例においては、リヤデッキ部26の車幅方向中央部または車幅方向中間部に、さらに1個を追加して、合計3個のロール保護部材27…を設けたものである。
また、図2、図7で示した構成に代えて、図8、図9に示す構成を採用してもよい。
【0053】
すなわち、図2、図7においては、複数のロール保護部材27,27を車幅方向に離間配設したが、図8、図9に示すこの実施例においては、図2と同一位置の左右一対のテーパコーン部27b,27bを、リヤデッキメンバ24の平面視形状と対応して、車幅方向に連結する閉断面構造の連結部27cを設け、ロール保護部材27を車幅方向に渡って配設したものである。
なお、図7、図8、図9において前図と同一の部分には同一符号を付している。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0054】
このように構成したオープンカーの車両用乗員保護構造において、図1に示す如く前後のルーフ部4,5を開放し、これら各ルーフ部4,5をルーフ収納部14に収納した状態下において、車両が転倒すると、この転倒した車両を、フロントヘッダ3とロール保護部材27とで支持するものであって、ロール保護部材27の上端とフロントヘッダ3の上端を結ぶ線Lが、ヘッドレスト部19Hを有するシートバック19Bの上端よりも高くなるように上記ロール保護部材27の高さが設定されているので、車両の転倒時において該ロール保護部材27にて乗員を確実に保護することができる。
【0055】
しかも、上述のロール保護部材27は、リヤデッキメンバ24および後輪ホイールハウス32に対応した位置に配設されているので、該ロール保護部材27の剛性を確保することができ、特に、ロール保護部材27の強度確保が既存の車体構造にて達成することができ、これにより、乗員保護構造の簡略化と軽量化とを両立することができる。
【0056】
このように、上記実施例の車両用乗員保護構造は、車幅方向に延びて車室1前部のフロントウインドウ2の上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダ3と、該フロントヘッダ3の後方に連なって車室1上部を形成するルーフ部4,5とが設けられ、該ルーフ部4,5が開閉可能に支持されたオープンカーの車両用乗員保護構造であって、車室1外後方のリヤデッキ部26の上方に、ロール保護部材27を配設し、該ロール保護部材27の上端と上記フロントヘッダ3の上端を結んだ線Lが、車室1内の乗員Xを保護可能になるよう上記ロール保護部材27の高さを設定したものである(図1参照)。
【0057】
この構成によれば、ロール保護部材27を車室1外後方のリヤデッキ部26の上方に設け、かつ、該ロール保護部材27上端とフロントヘッダ3上端とを結ぶ線Lが車室1内の乗員Xを保護するように、該ロール保護部材27の高さを設定したので、このロール保護部材27の上下方向の寸法を小さくし、その小型化を図って、該ロール保護部材27の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、ルーフ部4,5をオープン状態に開放し、かつ車両が転倒した場合には、フロントヘッダ3とロール保護部材27とで車両を支持することができて、乗員Xの安全性を確保することができる。
しかも、上記ロール保護部材27をリヤデッキ部26の上方に設けたので、車室1内空間の拡大を、ロール保護部材27の配設とが両立できる。この結果、上記車室内空間の拡大により、車室1を広く活用することができると共に、ロール保護部材27の配設により、乗員の保護を図ることができる。
【0059】
加えて、上記ロール保護部材27の上下方向の寸法が小さくなるので、デザイン的な見映えの向上を図ることができると共に、後方視界の拡大を図ることもできる。
さらに、上記車室1内には乗員の着座するシート19が設けられ、上記ロール保護部材27の上端と上記フロントヘッダ3の上端を結んだ線Lが、上記シート19の上端より高くなるように上記ロール保護部材27の高さを設定したものである(図1参照)。
【0060】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、シート19は乗員Xに対応して構成されているので、上記ロール保護部材27の高さ設定により、車両転倒時において確実に乗員を保護することができる。
【0061】
また、上記車室1の後方には上記ルーフ部4,5を開放時に収納するルーフ収納部14が設けられ、上記ロール保護部材27を該ルーフ収納部14の後方に配設したものである(図1参照)。
この構成によれば、ルーフ収納部14の後方にロール保護部材27を配設したので、このロール保護部材27によりルーフ収納空間が阻害されることはなく、大型のルーフ部4,5であっても適切に収納することができ、またルーフ部4,5の分割構造(この実施例では前後に2分割している)の自由度向上を図ることができる。
【0062】
加えて、上記ロール保護部材27を車幅方向に渡って配設したものである(図8、図9参照)。
この構成によれば、ロール(roll、ころがり)時に、車両の転倒の形態が変化しても、車幅方向に渡るロール保護部材27にて乗員Xを確実に保護することができ、また、該ロール保護部材27が車体強度の向上にも寄与する。
【0063】
また、上記ロール保護部材27を車幅方向に離間して複数配設したものである(図2、図7参照)。
この構成によれば、ロール保護部材27が複数設けられているので、ロール時の車両の転倒形態が如何に変化しても、これら複数のロール保護部材27により確実に乗員を保護することができる。
【0064】
さらに、上記車体のリヤデッキ部26には強度部材で車幅方向に延びるリヤデッキメンバ24が設けられ、該リヤデッキメンバ24に対応した位置に上記ロール保護部材27を配設したものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、ロール保護部材27をリヤデッキメンバ24に対応する位置に設けたので、ロール保護部材27の支持強度を確保することができると共に、ロール保護部材27の剛性確保と構造の簡素化による軽量化との両立を図ることができる。
【0065】
また、実施例で開示したように、車室1後方の後輪ホイールハウス32上方のリヤデッキ部26にロール保護部材27を配設し、該ロール保護部材27を上記後輪ホイールハウス32に対応した位置に配設すると、該ロール保護部材27の剛性を確保することができ、特に、ロール保護部材27の強度確保が既存の車体構造(後輪ホイールハウス32)で達成することができるので、構造の簡略化と軽量化とを両立することができる。
【0066】
さらに、実施例で開示したように、上記後輪ホイールハウス32の上部には、後輪36に連結されたダンパ90の上端が支持され、該ダンパ90の支持部71に対応した位置に上記ロール保護部材27を配設すると、次のような効果がある。
すなわち、ダンパ90それ自体が強度が高いうえ、ダンパ90の支持部71も強度が高いので、このダンパ支持部71を利用して、ロール保護部材27の補強を行なうことができる。
【0067】
また、実施例で開示したように、上記後輪ホイールハウス32には該後輪ホイールハウス32を補強するホイールハウスレインフォースメント35が設けられ、該ホイールハウスレインフォースメント35と対応した位置に上記ロール保護部材27を配設すると、ホイールハウスレインフォースメント35により、後輪ホイールハウス32およびその周辺の車体強度が全体的に高められており、この強度が高いホイールハウスレインフォースメント32と対応した位置にロール保護部材27を配設するので、該ロール保護部材27の剛性をより一層高めることができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体リヤデッキ部は、実施例のリヤデッキ部26に対応し、
以下同様に、
リヤデッキメンバ部材は、リヤデッキメンバ24に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のオープンカーの車両用乗員保護構造を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】ロール保護部材の配設構造を示す正面図
【図4】車両右側の後輪ホイールハウスおよびホイールハウスレインフォースメントの周辺構造を示す斜視図
【図5】各ガセットの分解斜視図
【図6】図3の部分拡大断面図
【図7】ロール保護部材配設構造の他の実施例を示す平面図
【図8】車両用乗員保護構造の他の実施例を示す平面図
【図9】図8で示したロール保護部材の斜視図
【符号の説明】
【0070】
1…車室
2…フロントウインドウ
3…フロントヘッダ
4,5…ルーフ部
14…ルーフ収納部
19…シート
24…リヤデッキメンバ(リヤデッキメンバ部材)
26…リヤデッキ部(車体リヤデッキ部)
27…ロール保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びて車室前部のフロントウインドウの上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダと、
該フロントヘッダの後方に連なって車室上部を形成するルーフ部とが設けられ、
該ルーフ部が開閉可能に支持されたオープンカーの車両用乗員保護構造であって、
車室外後方の車体リヤデッキ部の上方に、ロール保護部材を配設し、
該ロール保護部材の上端と上記フロントヘッダの上端を結んだ線が、車室内の乗員を保護可能になるよう上記ロール保護部材の高さを設定した
車両用乗員保護構造。
【請求項2】
上記車室内には乗員の着座するシートが設けられ、
上記ロール保護部材の上端と上記フロントヘッダの上端を結んだ線が、上記シートの上端より高くなるように上記ロール保護部材の高さを設定した
請求項1記載の車両用乗員保護構造。
【請求項3】
上記車室の後方には上記ルーフ部を開放時に収納するルーフ収納部が設けられ、
上記ロール保護部材を該ルーフ収納部の後方に配設した
請求項1または2記載の車両用乗員保護構造。
【請求項4】
上記ロール保護部材を車幅方向に渡って配設した
請求項1〜3の何れか1に記載の車両用乗員保護構造。
【請求項5】
上記ロール保護部材を車幅方向に離間して複数配設した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両用乗員保護構造。
【請求項6】
上記車体のリヤデッキ部には強度部材で車幅方向に延びるリヤデッキメンバ部材が設けられ、
該リヤデッキメンバ部材に対応した位置に上記ロール保護部材を配設した
請求項1〜5の何れか1に記載の車両用乗員保護構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−137743(P2010−137743A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316617(P2008−316617)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】