説明

車両用充電量制御装置

【課題】無線通信装置に電力を供給する二次電池の充電量を適切に制御することが可能な車両用充電量制御装置を提供すること。
【解決手段】無線通信装置に電力を供給する二次電池を充電する充電手段(30、32)と、自車両の進行先における電波状態を取得する電波状態取得手段(42B、46)と、電波状態取得手段により取得された電波状態が悪くなるのに応じて、二次電池の充電を促進するように充電手段を制御する制御手段(50)と、を備える車両用充電量制御装置(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に電力を供給する二次電池の充電量を制御する車両用充電量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両の走行用モータに電力供給するバッテリの充電量を、走行スケジュールに応じて制御するハイブリッド車両についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、目的地までの距離や、坂路の存在に応じて必要な充電量を算出し、これに基づいて走行前にバッテリを充電するものとしている。
【特許文献1】特開平8−237810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両には、走行用のモータを備えるか否かに拘らず、無線通信装置や空調装置等の車載機器に電力を供給するバッテリが搭載されるのが通常である。そして、走行用のモータに電力を供給するバッテリが搭載される場合、機器に適合する電圧値の相違から、無線通信装置や空調装置等の車載機器に電力を供給するバッテリとは別のバッテリが搭載されるのが通常である。
【0004】
無線通信装置や空調装置等の車載機器に電力を供給するバッテリの充電量制御に対して、上記特許文献1に記載のハイブリッド車両におけるバッテリ充電量制御を適用するのは、適切ではない。以下にその理由を述べる。
【0005】
近年、車両に搭載された無線通信装置と車外設備との間で情報の送受信を行なって、車両側に各種サービスを提供する情報サービスシステムが普及しつつあり、この各種サービスの中には、車両の事故時等における緊急通報の受付、及びサービス車両の派遣等が含まれる。そして、こうした緊急通報は常時可能な状態である必要があるため、無線通信装置等に電力を供給するバッテリの充電量は、上記特許文献1に記載のハイブリッド車両の如く、車両の走行スケジュールに応じて必要十分な充電量があればよいという性質のものではないからである。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、無線通信装置に電力を供給する二次電池の充電量を適切に制御することが可能な車両用充電量制御装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、無線通信装置に電力を供給する二次電池を充電する充電手段と、自車両の進行先における電波状態を取得する電波状態取得手段と、電波状態取得手段により取得された電波状態が悪くなるのに応じて、二次電池の充電を促進するように充電手段を制御する制御手段と、を備える車両用充電量制御装置である。
【0008】
ここで、無線通信装置は、例えば、車両の事故時等における救援要請のための通報である、緊急通報を行なうことを役割の一つとする無線通信装置である。この場合、「二次電池の充電を促進する」とは、例えば、緊急通報に必要な電力を供給可能である状態まで充電することを意味する。
【0009】
この本発明の一態様によれば、自車両の進行先における電波状態を予め取得しておき、自車両の進行先における電波状態が悪くなるのに応じて、予め二次電池の充電を促進することが可能となるため、二次電池の急速充電を回避することができ、二次電池の劣化を抑制することができる。従って、二次電池の充電量を適切に制御することができる。
【0010】
本発明の一態様において、自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置から、ユーザーにより設定される目的地に至るまでの推奨経路を設定する推奨経路設定手段と、を備え、電波状態取得手段は、推奨経路設定手段により設定された推奨経路上の電波状態を、自車両の進行先における電波状態として取得する手段であるものとしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様において、自車両の進行先における電波状態が所定程度悪いエリアと自車両との距離を特定可能な距離特定手段を更に備え、制御手段は、距離特定手段により特定された距離が大きくなるほど、充電速度が緩やかになるように充電手段を制御する手段であるものとしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様において、自車両から、自車両の進行先における電波状態が所定程度悪いエリアに至るまでの到達時間を特定可能な到達時間特定手段を更に備え、制御手段は、到達時間特定手段により特定された到達時間が大きくなるほど、充電速度が緩やかになるように充電手段を制御する手段であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線通信装置に電力を供給する二次電池の充電量を適切に制御することが可能な車両用充電量制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例に係る車両用充電量制御装置1について説明する。
【0016】
[構成]
図1は、車両用充電量制御装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用充電量制御装置1は、無線通信装置10に電力を供給する二次電池20の充電量を制御する装置であり、主要な構成として、電流センサー22と、オルタネータ30と、エンジン32と、エンジンECU34と、GPS受信機40と、メモリ42と、HMI44と、ナビゲーションコンピューター46と、充電量制御用ECU50と、を備える。
【0017】
無線通信装置10は、例えば、無線基地局70及びネットワーク80を介して情報センター100との間で情報の送受信を行なう。無線通信装置10と無線基地局70との間では、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話、ビーコン等を利用した無線通信が行なわれる。また、無線基地局70と情報センター100を接続するネットワーク80は、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線ネットワークである。従って、無線通信装置10は、携帯電話と等価な機構を備えるものであってもよいし、市販の携帯電話が、連結、有線接続、又はBluetooth等の短距離無線伝送システムにより車両側と通信可能に接続されたものであってもよい。また、携帯電話以外の機構を有する装置であってもよいのは勿論である。
【0018】
ここで、情報センター100とは、例えば、ユーザーとの契約により、ユーザー保有の車両に対して各種情報サービスを提供するための施設である。情報センター100は、自動車メーカーが運営する民間の施設であってもよいし、警察等が運営する公的な施設であってもよい。
【0019】
無線通信装置10は、情報センター100から受信する種々のサービス情報を、ナビゲーションコンピューター46に出力する。情報センター100から受信する情報は、例えば、自車両の現在位置付近の観光情報や渋滞情報、天気予報が含まれ、ナビゲーションコンピューター46では、これらをHMI44により表示又は音声出力する。
【0020】
また、無線通信装置10は、事故時等において救援を要請するための緊急通報や、イモビライザーシステム等により自車両が盗難にあったと判断された際の自車両の現在位置の送信等も行なっている。緊急通報時においては、ハンズフリー通話システム等と連携して、情報センター100内のオペレーターと直接通話が開始されるように自動的に電話回線への接続を行なってもよい。
【0021】
二次電池20は、充放電可能な電池であり、例えば、リチウムイオン電池(Li-ion)である。また、これに限定されず、ニッカド電池(NiCd)やニッケル水素電池(NiMH)であってもよいし、他の種類の二次電池であっても構わない。二次電池20は、無線通信装置10や空調装置等の車載機器に、作動のための電力を供給する。
【0022】
二次電池20は、オルタネータ30により充電が行なわれる。二次電池20とオルタネータ30を接続する電力ラインには、電流センサー22が接続されており、二次電池20が入出力する電流値を検出して充電量制御用ECU50に出力している。また、二次電池20には、その端子間電圧を検出する電圧センサーや温度を検出する温度センサーが取り付けられており、これらの出力値は充電量制御用ECU50に出力される。
【0023】
オルタネータ30は、ステータとロータとの間の電磁誘導により交流電流を発生させる交流発電機、ロータの電磁石(フィールドコイル)に供給する電流(励磁電流)を調節して交流発電機の発電電圧が一定の範囲に収まるように制御するICレギュレーター、及び、交流電流を直流電流に変換する変換器等を内蔵する。オルタネータ30のロータは、エンジン32のクランクシャフトにベルトやプーリーを介して接続される。オルタネータ30のICレギュレーターに対する制御信号は、充電量制御用ECU50から入力される。
【0024】
エンジン32の運転制御は、エンジンECU34により行なわれる。エンジンECU34は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、各種記憶媒体やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。エンジンECU34は、基本的には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)やシフト位置に応じてスロットル開度や点火タイミング等を決定し、所望のエンジン回転数やエンジントルクを実現するようにエンジン32の運転制御を行なう。また、充電量制御用ECU50から、二次電池20の充電時のためにエンジン回転数を通常時よりも高くする必要がある旨の要請を受信した際には、これに応じてスロットル開度の補正を行なう。
【0025】
GPS受信機40は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信し、ナビゲーションコンピューター46に出力する。
【0026】
メモリ42は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)、CD−ROM等の記憶媒体であり、地図情報42A、及び電界強度マップ42Bが記憶されている。
【0027】
地図情報42Aは、例えば、交差点等を示すノードと、各ノードを接続するリンクと、により道路形状が特定されており、主要な建物や地名、各種施設等の座標(緯度、経度)が併せて記憶されている。
【0028】
電界強度マップ42Bは、全国各地における電界強度を示すマップである。電界強度とは、ある地点における電波の強さを示す指標値であり、単位[V/m]で表され、スペクトラムアナライザ等の電界強度測定器を用いて測定される。電界強度マップ42Bは、例えば、プローブ情報システム(車両において収集された情報を無線通信等によりセンターに集積して、情報サービスを行なうシステムをいう)により収集された情報が情報センター100に集積され、情報センター100にマップ化されたものが定期的に無線通信装置10を介してダウンロードされる。電界強度マップ42Bは、各地点における電界強度を有段階の数値により特定するものであってもよいし、連続する数値により特定するものであってもよい。
【0029】
なお、電界強度マップ42Bは、例えば、所定の座標系上に、電界強度値が各座標点に対応する形で記憶されたものであってもよいし、電界強度値が同一のエリアの外縁線(いわゆる等高線)が当該座標系上で特定されたものであってもよい。従って、地図情報42Aと電界強度マップ42Bとの双方を参照することにより、自車両と電界強度値が一定値以上(又は以下)であるエリアとの距離を特定することが可能である。ここで、距離とは、絶対距離であってもよいし、道路に沿って走行した場合の距離であってもよい。
【0030】
HMI44は、ユーザーと車載ナビゲーション装置の間の入出力インターフェースとなる機器群であり、例えば、画像表示を行なうと共に、タッチパネルとしてユーザーによる種々の入力操作を可能に構成されたディスプレイ装置や、音声入出力のためのマイク、スピーカー、ブザー等からなる。HMI44の出力内容は、ナビゲーションコンピューター46により決定され、HMI44になされた入力操作は、ナビゲーションコンピューター46に入力される。
【0031】
ナビゲーションコンピューター46は、例えば、エンジンECU34と同様のハードウエア構成を有するコンピューターユニットである。ナビゲーションコンピューター46は、GPS受信機40が受信した電波信号の時間差に基づく演算により、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を特定する。また、自車両の現在位置は、車速センサーやジャイロセンサー等の各種センサーの出力や、ビーコン受信機及びFM多重放送受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてよい。
【0032】
こうして特定された自車両の現在位置は、車載ナビゲーション装置の本来の機能である目的地までの経路案内に用いられる。すなわち、自車両の現在位置から、ユーザーによりHMI44を用いて入力された目的地に至る推奨経路をダイクストラ法等により生成し、推奨経路に従って車両が走行できるようにHMI44を用いたナビゲーション表示や音声案内を行なう。
【0033】
また、ナビゲーションコンピューター46は、前述した情報センター100との送受信による各種サービスに係る制御を行なう。例えば、自車両の現在位置を情報センター100に送信して当該位置付近のイベント情報や観光情報等をダウンロードしたり、事故時等に緊急通報を行なったりするように無線通信装置10に指示する。なお、緊急通報と共に自車両の現在位置を併せて送信すると好適である。
【0034】
充電量制御用ECU50は、例えば、エンジンECU34と同様のハードウエア構成を有するコンピューターユニットであり、電流センサー22から入力される電流値の積分により、二次電池20のSOC(States Of Charge;バッテリの電気容量に対して、充電している電気量の割合を表す値)を把握している。充電量制御用ECU50は、原則的には、無線通信装置10その他の車載機器の作動状況を把握した上で、二次電池20のSOCが適切な範囲に維持されるように、オルタネータ30のICレギュレーターに対して、励磁電流の調節指示を行なう。なお、この適切な範囲とは、例えば、40〜60%程度の範囲であり、車載機器に供給するのに十分な電力を蓄えることと、電池寿命との均衡により決定される。以下、この範囲を通常時の適切な範囲と称する。この際に、二次電池20に取り付けられた電圧センサーや温度センサーの出力値が加味される。また、励磁電流の調節だけでは充電量が不足する場合は、エンジン32の回転数を通常時よりも高めに維持するようにエンジンECU34に指示してもよい。
【0035】
[問題点]
ここで、車載機器が通常の使用状態である間は、上記の如く、二次電池20のSOCを通常時の適切な範囲に維持する制御を行なってもよいのであるが、本実施例の搭載された車両においては、二次電池20のSOCを、より高く変更する必要がある場面が生じ得る。
【0036】
例えば、事故時等に緊急通報を行なう際には、迅速に情報センター100にアクセスすることが求められる。このため、無線通信装置10が、車両が存する地域をカバーする無線基地局70に接続されるまで、繰り返し(例えば、10分間程度の間)、呼びかけ信号等を送信することとなる。また、接続が悪いときには、一時的に無線通信装置10の出力を上昇させる制御も行なわれる。
【0037】
このような場面において、無線通信装置10の作動に必要な電力は二次電池20により供給される。しかしながら、二次電池20の電気容量が十分に大きいものでない場合は、そのSOCが通常時の適切な範囲に維持されていたと仮定すると、緊急通報に必要な電力の全てを供給できない可能性がある。なお、二次電池20は車載機器であるため、スペースやコスト上の制約が生じ、無制限にそのサイズを大きくすることができる性質のものではない。
【0038】
従って、電波状態の悪い地域において事故が発生した時に緊急通報を行なう等、一時的に電力を大きく消費する可能性のある車両においては、そのような場面に備えて二次電池20のSOCを高く維持しなければならないこととなる。ところが、いつそのような場面が到来するか不明であれば、例えば車両の始動時において、二次電池20のSOCがそのような場面に備えるのに十分なSOCに満たない場合、急速に二次電池20を充電する必要が生じる。
【0039】
しかしながら、二次電池20の代表例であるリチウムイオン電池等は、急速に充電されたとき、及びSOCが高く維持されたときに容量劣化が促進され、電池寿命が短くなるという問題を有する。こうした問題から、電波状態の悪い地域を自車両が通過する際には二次電池20のSOCを一時的に高くし(通常時の適切な範囲の上限付近に維持するものとしてもよい)、それ以外の場合には、二次電池20のSOCを通常時の適切な範囲に維持する等の制御を行なうことが適切であると考えられる。
【0040】
[本発明の特徴的な制御]
以上の考察を踏まえ、本実施例の車両用充電量制御装置1では、以下に説明する特徴的な充電量の制御を行なうこととした。図2は、こうした充電量の制御を含め、車両用充電量制御装置1が実行する特徴的な制御の流れを示すフローチャートの一例である。本フローは、前述した経路案内に係る目的地がHMI44において設定されたときに開始される。
【0041】
まず、ナビゲーションコンピューター46が、上記の如く生成した推奨経路上の電波状態(電界強度)を電界強度マップ42Bから取得する(S100)。
【0042】
そして、電波状態が悪いエリア(電界強度が所定値以下のエリア、以下同じ)を通過する時間帯を予測する(S102)。当該予測は、例えば、推奨経路を基準速度に従って走行したと仮定し、電波状態が悪いエリアに到達する時刻と、当該エリアを脱する時刻を計算することにより行なうことができる。基準速度とは、例えば、上記エリアに至るまでの道路における各区間(例えば、各リンク)に対応して算出される速度であって、各区間の法定速度を、情報センター100から受信する渋滞情報や、高速道路の存在によって補正した速度である。単に法定速度を用いても構わない。そして、電波状態が悪いエリアに到達する時刻や当該エリアを脱する時刻は、各区間の距離(全長)を当該区間の基準速度で除した区間別所要時間を算出し、これを全区間について加算することによって算出することができる。なお、各区間の距離や法定速度、高速道路の存在は、地図情報42Aから把握される。
【0043】
また、法定速度等に基づいて到達時間を算出する手法に限らず、前述したプローブ情報システム等を利用して車両を追跡することにより到達時間を特定してもよい。すなわち、ある車両が第1地点を通過した時刻と、第2時刻を通過した時刻と、を比較して第1地点から第2地点に至るまでの到達時間を特定する。各地点を通過する車両の特定は、センターと車両との通信、或いはナンバープレートの撮像等により行なうことができる。そして、センターにおいて複数の地点間の到達時間を統合して到達時間情報を作成し、各車両に提供する。
【0044】
電波状態が悪いエリアを通過する時間帯を予測すると、これを情報センター100に送信する(S104)。情報センター100においては、当該時間帯にサービス情報を車両に送信する予定があるか否かを検索し、サービス情報を送信する予定がある場合には、当該サービス情報を送信する予定の時刻を、電波状態が悪いエリアを通過する時間帯を外すように変更する。また、当該時間帯に、車両に対して何らかの情報送信を要求する予定がある場合にも、当該情報送信を要求する予定の時刻を、電波状態が悪いエリアを通過する時間帯を外すように変更する。これらの時刻変更については、サービス情報の内容や情報送信要求の内容に応じて、電波状態が悪いエリアを通過する前に時刻変更するものであってもよいし、電波状態が悪いエリアに到達する時刻と、当該エリアを脱する時刻とのうち、サービス情報の送信予定時刻や情報送信要求予定時刻に近い方に変更するものとしてもよい。
【0045】
そして、充電量制御用ECU50は、推奨経路上に存在する電波状態が悪いエリア内で緊急通報を行なうのに必要なSOC(以下、緊急通報時目標SOCと称する)を計算し(S108)、二次電池20が徐々に充電されて、電波状態が悪いエリアに到達する時刻において緊急通報時目標SOCに至るように、オルタネータ30のICレギュレーターに対して、励磁電流の調節指示を行なう(S110)。すなわち、現在の時刻から電波状態が悪いエリアに到達する時刻までの時間である到達時間が大きくなるほど、充電速度が緩やかになるように、二次電池20の充電制御を行なう。また、必要に応じて、エンジン32の回転数を通常時よりも高めに維持するようにエンジンECU34に指示する。これらにより、電波状態が悪いエリアに到達するまでの到達時間が大きくなれば、二次電池20がより緩やかな充電速度をもって充電されることとなる。
【0046】
ここで、緊急通報時目標SOCは、二次電池20の定格値等に応じて一律に決定されてもよいが、電波状態の程度に基づいて柔軟に決定されると好適である。図3は、電波状態と、これに応じて決定される緊急通報時目標SOCと、の相関関係の一例を示す図である。図示する如く、電波状態が最も悪い領域において緊急通報時目標SOCがそれ程高くならないのは、緊急通報は、最初の呼びかけを行なう第1の通信段階と、相手方を発見した後に自車両のID等を送信する第2の通信段階と、に分けられるのが通常であることに基づく。すなわち、第1の通信段階において消費される電力は第2の通信段階において消費される電力に比して小さいため、全く接続不可能であるような場所においては、第1の通信段階を所定時間、繰り返し実行した後に通信トライを終了するから、それ程の電力消費が想定されないのである。一方、第1の通信段階において相手方を発見した後に、第2の通信段階が完了できずに繰り返し実行されるような場面において(そのような場面が想定される電波状態において)、緊急通報時目標SOCがピーク値となる。なお、本実施例の場合、電波状態が良いとは、電界強度が大きいことを意味し、電波状態が悪いとは、電界強度が小さいことを意味する。
【0047】
なお、電波状態が悪いエリアを通過するのに要する時間を更に加味して、緊急通報時目標SOCを決定してもよい。例えば、電波状態が悪いエリアを通過するのに要する時間が短くなるのに応じて緊急通報時目標SOCを低下させることが考えられる。すなわち、短時間で電波状態が悪いエリアを通過するときには、緊急通報時目標SOCを余り上昇させないこととしてよい。これについては、安全面の観点から緊急通報機能を維持することと、二次電池20の容量劣化の抑制との均衡により適切に定められてよい。
【0048】
また、推奨経路上の電波状態が悪いエリアが複数存在する場合は、一の電波状態が悪いエリアを脱した後、次の電波状態が悪いエリアに至るまでの間は、一度二次電池20のSOCを低下させてから再度徐々に上昇させる制御を行なってもよいし、緊急通報時目標SOCを維持するものとしてもよい。
【0049】
そして、S110の制御を、目的地に到達するか、推奨経路が変更されるまでの間、実行する(S112、S114)。目的地に到達した場合は本フローを終了し、推奨経路が変更された場合は、S100以下の処理を再度実行する。
【0050】
本実施例の車両用充電量制御装置1によれば、電波状態が悪いエリアに到達する時点において二次電池20のSOCが緊急通報時目標SOCに達するように、徐々に二次電池20を充電することが可能となるため、急速充電を回避して、二次電池20の劣化を抑制することができる。また、電波状態が悪いエリアを通過しない場合には、二次電池20のSOCを通常時の適切な範囲に維持することも可能となるため(予め電波状態が悪いエリアを通過しないことが判明しているから)、二次電池20の劣化をより抑制することができる。しかも、電波状態の程度に応じて緊急通報時目標SOCを柔軟に決定するため、過剰な充電を回避して二次電池20の劣化を更に抑制することができる。
【0051】
従って、無線通信装置に電力を供給する二次電池の充電量を適切に制御することができる。
【0052】
また、二次電池20の劣化を抑制しつつその性能を十分に引き出すことが可能であるため、よりサイズの大きい二次電池を車両に搭載する必要が小さくなり、車両における搭載スペースの確保、重量及びコストの低減を図ることができる。
【0053】
なお、図2のフローチャートにおけるS108及びS110の処理と並行し、情報センター100に情報送信等をする予定があるか否かを検索し、当該予定に係る時刻が、電波状態が悪いエリアを通過する時間帯に該当する場合には、電波状態が悪いエリアを通過する前後に予定時刻を変更する等の制御を行なってもよい。この場合、電波状態が悪いエリアを通過する前に変更するか、後に変更するかは、送信する情報の性質に応じて任意に定めてよい。
【0054】
[変形例]
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、電界強度マップ42B、ないしこれに相当する電波状態を把握可能な情報は、情報センター100において保持するものとしてもよい。この場合、車両側において目的地が設定される度に、情報センター100から推奨経路上の電波状態を取得するものとすればよい。
【0056】
また、到達時間に代えて、自車両と電波状態が悪いエリアとの距離が大きくなるほど充電速度が緩やかになるように、二次電池20の充電制御を行なうものとしてもよい。自車両と電波状態が悪いエリアとの距離は、前述の如く、地図情報42Aと電界強度マップ42Bとの双方を参照することにより特定することができる。この際に、推奨経路が設定されていれば、推奨経路上を走行することを前提に、地図情報42Aと電界強度マップ42Bとの双方を参照して距離を特定する。なお、到達時間と距離の双方に基づいて(例えば、到達時間が大きくなるほど充電速度が緩やかになるように、且つ距離が大きくなるほど充電速度が緩やかになるように)、二次電池20の充電制御を行なうものとしてもよい。
【0057】
また、必ずしも目的地が設定され、推奨経路が生成されたことを開始条件とする必要はない。例えば、車両の進行方向における所定距離以内の領域を、これから自車両が進行する領域であるとみなして、当該領域内の電波状態を取得して、実施例と同様の充電量制御を行なうものとすればよい。
【0058】
また、電波の強さを示す指標値として電界強度を用いることを例示したが、これに限らず他の指標値を電波の強さとして用いてもよい。例えば、電界強度測定器等を用いて直接的に何らかの指標値を測定するのではなく、車両において各地点で実際に通信可能であったか否かの結果を記憶しておき、これを情報センターで集積してマップ等を作成してもよい。
【0059】
また、充電量制御用ECU50は、エンジンECU34やナビゲーションコンピューター46等の車載コンピューターに統合されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】車両用充電量制御装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】車両用充電量制御装置1が実行する特徴的な制御の流れを示すフローチャートの一例である。
【図3】電波状態と、これに応じて決定される緊急通報時目標SOCとの相関関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両用充電量制御装置
10 無線通信装置
20 二次電池
22 電流センサー
30 オルタネータ
32 エンジン
34 エンジンECU
40 GPS受信機
42 メモリ
42A 地図情報
42B 電界強度マップ
44 HMI
46 ナビゲーションコンピューター
50 充電量制御用ECU
70 無線基地局
80 ネットワーク
100 情報センター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置に電力を供給する二次電池を充電する充電手段と、
自車両の進行先における電波状態を取得する電波状態取得手段と、
該電波状態取得手段により取得された電波状態が悪くなるのに応じて、前記二次電池の充電を促進するように前記充電手段を制御する制御手段と、
を備える車両用充電量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用充電量制御装置であって、
自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
前記現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置から、ユーザーにより設定される目的地に至るまでの推奨経路を設定する推奨経路設定手段と、を備え、
前記電波状態取得手段は、前記推奨経路設定手段により設定された推奨経路上の電波状態を、自車両の進行先における電波状態として取得する手段である、
車両用充電量制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用充電量制御装置であって、
自車両の進行先における電波状態が所定程度悪いエリアと自車両との距離を特定可能な距離特定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記距離特定手段により特定された距離が大きくなるほど、充電速度が緩やかになるように前記充電手段を制御する手段である、
車両用充電量制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用充電量制御装置であって、
自車両から、自車両の進行先における電波状態が所定程度悪いエリアに至るまでの到達時間を特定可能な到達時間特定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記到達時間特定手段により特定された到達時間が大きくなるほど、充電速度が緩やかになるように前記充電手段を制御する手段である、
車両用充電量制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−1123(P2009−1123A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163119(P2007−163119)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】