説明

車両用状態推定装置、車両用状態推定方法、車両用懸架制御装置および自動車

【課題】サスペンションの状態推定をより高精度に行う。
【解決手段】車両用懸架制御装置1Aは、車両挙動予測部201と、車両挙動推定部202と、サスペンション制御部203とを備え、車両挙動予測部201で、車両に将来加わる予定の外乱(路面形状)に対する車両挙動を予測し、車両挙動推定部202において、この将来の車両挙動の予測結果を基に、その将来における車両挙動の推定に用いるカルマンフィルタのゲインを補正する。そして、車両挙動推定部202は、ゲインを補正したカルマンフィルタを用いて現在の車両挙動を推定し、サスペンション制御部203は、この推定結果に基づいて、能動型懸架装置の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両状態を推定する車両用状態推定装置、車両用状態推定方法、車両用懸架制御装置および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に備えられる懸架装置(サスペンション)の状態量を推定する技術として、状態量推定手法の一つであるカルマンフィルタを用いたものが知られている(特許文献1参照)。
この技術は、車両に搭載したセンサによって、ばね上の加速度やストローク等の状態量を計測し、サスペンションを含む車両の構成部品の特性をモデル化した車両モデルに対して、カルマンフィルタを適用した状態推定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3098425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カルマンフィルタによって状態推定を行う場合、状態推定を行う対象は、入力に対する応答が線形な伝達関数として表されるものに限られる。そのため、フリクションやばね、あるいは、ダンパー等が非線形性を有するサスペンションにカルマンフィルタを適用した場合、状態推定の精度が低下する可能性がある。
本発明の課題は、サスペンションの状態推定をより高精度に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用状態推定装置は、車両挙動推定手段が、車両の挙動を示す物理量に基づき、車両の現在の挙動を推定する。さらに、車両挙動予測手段が、車両に将来加わる予定の外乱の情報と、車両挙動推定手段が推定した現在の挙動を示す情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する。そして、車両挙動情報補正手段が、前記予測した将来の挙動を示す情報に基づき、前記外乱の情報に対応する外乱が車両に加わる予定のタイミングと同じタイミング又はこれに先立つタイミングで、前記推定した車両の現在の挙動を示す情報を補正する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、能動型懸架装置が非線形な動作領域で動作する外乱の入力に対して、予めそのときの車両の挙動(以下、車両挙動と称する。)を予測し、この予測した情報に基づき能動型懸架装置の制御に用いる現在の車両挙動の推定情報を補正することができる。これによって、外乱に対して非線形な動作領域を有する能動型懸架装置を備えた車両の挙動を、より正確に推定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用懸架制御装置1Aを備えた自動車1の概略構成を示す図である。
【図2】電動サスペンション100の構成例を示す模式図である。
【図3】車両用懸架制御装置1Aの機能構成を示すブロック図である。
【図4】車両用懸架制御装置1Aの制御ロジックを示すブロック図である。
【図5】車両挙動推定部202の制御ロジックにおいて用いている車両モデルを示す模式図である。
【図6】車両挙動推定部202の制御ロジックを示す図である。
【図7】車両挙動推定部202の有するカルマンフィルタの構成例を示す図である。
【図8】外乱としての路面加振に対する従来及び本実施形態の方法による推定結果の一例を示す図である。
【図9】本実施形態の車両挙動推定部202の制御ロジックを示す図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る車両用状態推定装置、車両用状態推定方法、車両用懸架制御装置および自動車の第1実施形態を図面を参照して説明する。図1〜図8は、本発明に係る車両用状態推定装置、車両用状態推定方法、車両用懸架制御装置および自動車の第1実施形態を示す図である。
【0009】
(構成)
(自動車1の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用懸架制御装置1Aを備えた自動車1の概略構成を示す図である。
図1において、自動車1は、車体前端に設置したプレビューセンサ10と、前輪および後輪の電動サスペンション100(後述)に設置したアクチュエータ20と、センターコンソール付近に設置した車載センサ30とを備えている。
さらに、自動車1は、車体の電動サスペンション連結部付近(例えば、ダンパー連結部)に設置した車体上下加速度センサ40と、ハブが連結するサスペンションリンク(例えば、ナックル)に設置した車輪上下加速度センサ50と、コントローラ60とを備えている。
【0010】
これらのうち、プレビューセンサ10、車載センサ30、車体上下加速度センサ40、車輪上下加速度センサ50およびコントローラ60が車両用懸架制御装置1Aを構成している。
プレビューセンサ10は、超音波あるいはレーザ等を用いて車体前方の路面の凹凸形状を検出する。この車体前方の路面の凹凸は、自動車1が前方に向かって走行をしている場合に、車輪に将来加わる予定の外乱となる。なお、プレビューセンサ10については、路面の画像をカメラで撮影し、撮影した画像から路面の凹凸形状を検出する構成とすることも可能である。
【0011】
そして、プレビューセンサ10は、検出した路面の凹凸を示す情報(以下、「路面形状情報」と称する。)をコントローラ60に出力する。
アクチュエータ20は、電動サスペンション100における上下方向(ダンパーの伸縮方向)の推力を発生するリニアモータである。アクチュエータ20は、コントローラ60からの指令によって、ダンパーの位置を制御する。また、アクチュエータ20は、コントローラ60からの指令によって推力を制御することにより、電動サスペンション100のばね特性およびダンパー特性を変化させる。
【0012】
車載センサ30は、自動車1の車両状態(車両挙動)を示す物理量(例えば、ヨーレイト、ロール角、ピッチ角等)を検出する。
車体上下加速度センサ40は、各車輪と車体とを連結する電動サスペンション100の取り付け位置にそれぞれ設置してあり、各設置位置における車体の上下加速度(以下、適宜「ばね上加速度」と称する。)を検出する。また、車体上下加速度センサ40は、検出したばね上加速度をコントローラ60に出力する。
車輪上下加速度センサ50は、各車輪を回転自在に保持しているハブにおいて、車輪と一体に回転しない部分(例えば、ナックルやロワーアームによって固定した部分)に設置してあり、各車輪の上下加速度(以下、適宜「ばね下加速度」と称する。)を検出する。また、車輪上下加速度センサ50は、検出したばね下加速度をコントローラ60に出力する。
【0013】
(電動サスペンション100の構成)
図2は、電動サスペンション100の構成例を示す模式図である。
図2に示す電動サスペンション100は、アクチュエータ20によって各車輪のばね特性およびダンパー特性を変化させることが可能なリニアモータ式の電動アクティブサスペンションである。なお、図2では、電動サスペンション100を模式的なリンク機構として示している。
図2において、電動サスペンション100は、アッパーアーム101と、ロワーアーム102と、ナックル103と、ハブ104と、ダンパー105とを備え、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを構成している。
【0014】
これらのうち、ダンパー105は、上述のアクチュエータ20を備えており、アクチュエータ20がダンパーとしての機能およびばねとしての機能を実現している。
即ち、コントローラ60が、各種センサの検出結果に応じた指令値を入力すると、アクチュエータ20は、指令値に応じた推力を発生し、コントローラ60の指令に応じたばね特性およびダンパー特性を実現する。
このような構成により、電動サスペンション100は、路面からの振動を抑制したり、ばね下に対する車体の挙動を目的とする状態に変えたり、車輪の接地性能を制御したりする。
【0015】
(車両用懸架制御装置1Aの機能構成)
図3は、車両用懸架制御装置1Aの機能構成を示すブロック図である。
図3において、車両用懸架制御装置1Aは、車両挙動予測部201と、車両挙動推定部202と、サスペンション制御部203とを備えている。
なお、車両用懸架制御装置1Aの機能構成から、サスペンション制御部203を除いたセンサ等を含む残りの構成部が、車両用状態推定装置を構成する。
これら車両挙動予測部201、車両挙動推定部202およびサスペンション制御部203は、コントローラ60内の機能として実現されている。
【0016】
また、これらの機能は、コンピュータによって専用のプログラムを実行することで、ソフトウェアによってその機能を実現するものとして構成することができる。また、ソフトウェアによってハードウェアを制御することによってその機能を実現するものとして構成することができる。上記各機能は、これらのいずれか、あるいは組み合わせによって構成することができる。
また、上記各機能は、電気回路等のハードウェアによってその機能を実現するものとして構成することも可能である。
【0017】
車両挙動予測部201には、車体に加わる将来の外乱を示す情報として、プレビューセンサ10から路面形状情報を入力する。また、車両挙動予測部201には、車両挙動推定部202によって推定した現在の車両挙動を示す情報(例えば、ばね上加速度、ばね上変位等)を入力する。
そして、車両挙動予測部201は、サスペンション特性等から車両特性をモデル化した車両モデルを参照し、現在の車両挙動を示すパラメータと、路面形状情報(将来の外乱を示す情報)とに基づいて、将来の外乱が加わる瞬間の車両挙動の予測を行う。さらに、車両挙動予測部201は、予測した将来の車両挙動を示す情報(例えば、ばね上加速度、ばね上変位等)を車両挙動推定部202に出力する。
【0018】
また、車両挙動予測部201は、アクチュエータ20の動特性にも基づいて、将来の外乱が入力される瞬間の車両挙動を予測する。つまり、アクチュエータ20が指令値に応じて推力を発生するときの遅れ特性にも基づいて、将来の車両挙動を予測する。
車両挙動推定部202は、車載センサ30、車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50の入力する各種センサ出力を基に、車両モデルを参照して現在の車両挙動を推定し、推定した現在の車両挙動をサスペンション制御部203に出力する。このとき、車両挙動推定部202は、カルマンフィルタを適用して現在の車両挙動を推定する。
【0019】
また、車両挙動推定部202は、車両挙動予測部201の入力した将来の車両挙動を示す情報を基に、必要に応じて、その将来に至るタイミングに合わせて、上記カルマンフィルタの特性(カルマンフィルタにおける各ゲイン)を補正する。このとき、車両挙動推定部202は、将来の車両挙動が非線形なものとなる場合でも、その瞬間では線形性を有するものと近似して車両モデルを特定し、その車両モデルに対するカルマンフィルタの特性を決定する。
【0020】
そして、車両挙動推定部202は、その将来に至った場合に、特性を変更したカルマンフィルタを用いて、そのときの車両挙動(その将来における「現在の車両挙動」)を推定し、推定した車両挙動(各輪におけるサスペンションの挙動))をサスペンション制御部203に出力する。
なお、車両挙動推定部202は、車両挙動予測部201の入力した将来の車両挙動を示す情報によって、車両挙動が非線形となるか否かを判定し、非線形になると判定したときは、推定に用いる各ゲインの変更を行う。また、車両挙動推定部202は、車両挙動が非線形ではなく線形になると判定したときは、各ゲインの変更は行わず、線形の挙動用に予め用意したゲインを用いて推定を行う。
【0021】
つまり、車両挙動推定部202は、非線形動作領域で動作をすると判定したときだけ、その非線形動作に対応するゲインへの変更を行い、線形動作領域で動作すると判定したときは、線形動作用のゲインを用いる。
サスペンション制御部203は、車両挙動推定部202の入力する現在の車両挙動を基に、各電動サスペンション100のアクチュエータ20に対する指令値を出力する。
このとき、サスペンション制御部203は、電動サスペンション100が予め設定したサスペンション特性(ばね特性、ダンパー特性)となるようにアクチュエータ20に対する指令を行う。
【0022】
図4は、車両用懸架制御装置1Aの制御ロジックを示すブロック図である。
図4において、車両用懸架制御装置1Aでは、プレビューセンサ10によって検出した路面形状情報と車両挙動推定部202によって推定した現在の車両挙動を示す情報とを基に、車両挙動予測部201が将来の車両挙動を予測している。
そして、車両挙動予測部201が予測した将来の車両挙動を基に、線形性を有する車両モデルを特定し、その車両モデルに合わせて、車両挙動推定部202におけるカルマンフィルタの特性を補正する。
車両挙動推定部202は、車載センサ30、車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50の入力する各種センサ出力を入力として、カルマンフィルタを用いた演算を行い、現在の車両挙動を推定する。
【0023】
車両挙動推定部202は、この推定結果をサスペンション制御部203に出力し、サスペンション制御部203が、予め設定したサスペンション特性となるように各電動サスペンション100のアクチュエータ20に対する指令値を出力する。
これにより、車両が非線形な特性を示す領域においても、カルマンフィルタを用いて、より正確な車両状態の推定を行うことができ、自動車1をより適切に制御することが可能となる。
【0024】
(車両挙動推定部202の制御ロジック)
図5は、車両挙動推定部202の制御ロジックにおいて用いている車両モデルを示す模式図である。
また、図6は、車両挙動推定部202の制御ロジックを示す図である。
図5に示すように、本実施形態で用いる車両モデルとして二輪モデルを想定している。図5中の、lfは車体重心と車体におけるフロントサスペンション作用点との距離、x0fは路面変位、K1fはタイヤのばね定数、m1fはばね下質量をそれぞれ示している。
また、図5中の、x1fはばね下変位、C2fはダンパー減衰係数、K2fはサスペンションのばね定数、Ffはダンパーのフリクション、x2fはばね上変位(前輪変位)をそれぞれ示している。
【0025】
また、図5中の、θは車体の重心周りの回転角度、x2は車体の上下変位、m2は車体質量、I2は車体の慣性モーメント、Vは車体速度を示している。
また、図5中の、lrは車体重心と車体におけるリアサスペンション作用点との距離、x0rは路面変位、K1rはタイヤのばね定数、m1rはばね下質量、x1rはばね下変位(後輪変位)を示している。
また、図5中の、C2rはダンパー減衰係数、K2rはサスペンションのばね定数、Frはダンパーのフリクション、x2rはばね上変位をそれぞれ示している。
なお、符号の最後の下付の「f」は、車両のフロント側(前輪側)のパラメータであることを示し、「r」は、車両のリア側(後輪側)のパラメータであることを示す。
【0026】
そして、図6に示すように、車両挙動推定部202は、図5に示す車両モデルを対象として、車両挙動予測部201によって予測した将来の前輪サスペンションの速度および変位、将来の後輪サスペンションの速度および変位を入力とする。そして、これら入力情報を基に、各輪に設置したダンパーの減衰係数、および、各輪に設置したサスペンションのばね定数を算出する。さらに、これらの算出値を基に、カルマンフィルタのゲイン(カルマンフィルタを特定する各パラメータ)を設定する。
【0027】
具体的に、将来の各輪のサスペンション速度および変位から、予め用意したサスペンションの特性を示すデータを登録したサスペンション特性マップにより、各輪に設置したダンパーの減衰係数、および、各輪に設置したサスペンションのばね定数を算出する。このサスペンション特性マップには、サスペンションの特性を示すデータとして、ばね上加速度や、ばね上変位等に対する、各輪のダンパー特性を示すデータ、各輪のサスペンションのばね特性を示すデータなどが登録してある。例えば、ばね上加速度や、ばね上変位等に対する、路面からの外乱による振動を吸収するのに適切なダンパー係数のデータ、ばね定数のデータなどが登録してある。そして、これらの特性データを基に、各輪のダンパーの減衰係数、および、各輪のサスペンションのばね定数を算出して、将来の外乱が加わる瞬間における車両モデルの特性を線形化する。さらに、この算出結果を基に、カルマンフィルタのゲインを算出し、現在のカルマンフィルタのゲインの値を、この算出した値に変更する。
【0028】
即ち、車両挙動推定部202は、車両挙動予測部201によって予測した将来の車両挙動となるタイミングで、カルマンフィルタのゲインを、その車両挙動に対応する値に変更する。なお、予測した将来の車両挙動となるタイミングに先立つタイミングでゲインを変更するようにしてもよい。
そして、車両挙動推定部202は、車両挙動に対応してゲインを変更したカルマンフィルタを用いて、車両挙動を推定し、推定した車両挙動(具体的には各サスペンションの挙動)をサスペンション制御部203に出力する。
【0029】
ここで、電動サスペンション100は、「能動型懸架装置」に対応し、車載センサ30、車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50は、「物理量検出手段」に対応し、プレビューセンサ10は、「外乱情報検出手段」に対応する。
また、車両挙動予測部201は、「車両挙動予測手段」に対応し、車両挙動推定部202は、「車両挙動推定手段」および「車両挙動情報補正手段」に対応し、サスペンション制御部203は、「懸架制御手段」に対応する。
また、車両挙動推定部202で推定した現在の車両挙動を示す情報は、「第1の車両挙動情報」に対応し、車両挙動予測部201で予測した将来の車両挙動を示す情報は、「第2の車両挙動情報」に対応する。
【0030】
(動作)
次に、図7〜図8を参照して、本実施形態の動作を説明する。
ここで、図7は、車両挙動推定部202の有するカルマンフィルタの構成例を示す図である。
また、図8は、外乱としての路面加振に対する従来及び本実施形態の方法による推定結果の一例を示す図である。
エンジンが始動して、自動車1が走行を開始すると、プレビューセンサ10が車体前方の路面の凹凸形状の検出を開始する。一方、車載センサ30は、自動車1のヨーレイト、ロール角、ピッチ角等の検出を開始し、車体上下加速度センサ40は、ばね上加速度の検出を開始し、車輪上下加速度センサ50は、ばね下加速度の検出を開始する。これら各センサは、検出結果をコントローラ60にそれぞれ出力する。
【0031】
車両挙動推定部202は、各種センサ出力を入力として、カルマンフィルタを用いた演算を行い、現在の車両状態を推定する。
以下、カルマンフィルタを適用する運動方程式及び観測方程式の例を挙げて、車両挙動推定部202の動作を具体的に説明する。
ここでは、カルマンフィルタの係数を定義する運動方程式は下式(1)に、観測方程式は下式(2)に示すものになるとする。
【0032】
【数1】

【0033】
上式(1)及び(2)において、A〜Dがカルマンフィルタのゲインとなり、下式(3)〜(6)で示す行列式となる。
【0034】
【数2】

【0035】
また、上式(1)及び(2)において、x(t)は状態変数であり下式(7)で示す行列式となる。また、y(t)は観測出力であり下式(8)で示す行列式となる。また、u(t)は、車両システムへの入力であり、下式(9)に示す行列式となる。
【0036】
【数3】

【0037】
上式(7)より、状態変数x(t)は、ばね下変位x1f,x1r、車体上下変位x2、車体重心周りの回転角度θ、および、これらの微分値となる。また、上式(8)より、観測出力は、ばね上変位x2f,x2rとなり、上式(9)より、車両システムへの入力は、ダンパーのフリクションFf,Frとなる。
また、上式(3)において、a51〜a58、および、a61〜a68は、下式(10)、および、下式(11)で示すものとなる。
a51=(−K1f−K2f)/m1f
a52=0
a53=K2f/m1f
a54=−K2f*lf/m1f
a55=−C2f/m1f
a56=0
a57=C2f/m1f
a58=−C2f*lf/m1f ・・・(10)
【0038】
a61=0
a62=(−K1r−K2r)/m1r
a63=K2r/m1r
a64=K2r*lr/m1r
a65=0
a66=(−C2r)/m1r
a67=(C2r)/m1r
a68=C2r*lr/m1r ・・・(11)
【0039】
また、上式(3)及び(5)において、a71〜a78は、下式(12)で示すものとなる。
a71=K2f/m2
a72=K2r/m2
a73=(−K2f−K2r)/m2
a74=(K2f*lf−K2r*lr)/m2
a75=C2f/m2
a76=C2r/m2
a77=(−C2f−C2r)/m2
a78=(C2f*lf−C2r*lr)/m2 ・・・(12)
【0040】
また、上式(3)において、a81〜a88は、下式(13)で示すものとなる。
a81=−lf*K2f/I2
a82=lr*K2r/I2
a83=(lf*K2f−lr*K2r)/I2
a84=(−K2f*lf2−K2r*lr2)/I2
a85=−lf*C2f/I2
a86=lr*C2r/I2
a87=(lf*C2f−lr*C2r)/I2
a88=(−C2f*lf2−C2r*lr2)/I2
・・・(13)
【0041】
なお、上式(1)及び(7)における、同じ記号で上にドット「・」があるものは、ドットのない記号の値の微分値を示す。
そして、上式(1)および(2)に示す運動方程式および観測方程式に、外乱(路面形状情報)、観測雑音、出力のフィードバックなどを考慮して構成したカルマンフィルタは、図7に示すものとなる。
図7に示すように、車両挙動推定部202を構成するカルマンフィルタは、上式(3)〜(6)で示したゲインA〜Dを有している。加えて、カルマンフィルタの出力と実際の車両システムからの出力との誤差をフィードバックするときのフィードバックゲイン「L」を有している。
【0042】
ここで、図7に示す車両システムは、アクチュエータ制御部203からの指令値に応じて駆動する自動車1の各輪に対応する電動サスペンション100を含む、これに関連する構成要素(図5の車両モデルに対応する構成要素)で構成したシステムとなる。
また、図7において、「1/s」は、ラプラス変換における積分項であり、「−F」は、アクチュエータ制御部203の伝達関数である。また、「w」は、外乱であり、「G」は、外乱「w」に対する伝達関数(例えば、路面形状情報への変換を要する場合に必要)であり、「v」は、車両システムの出力「y」に混入する観測雑音である。
【0043】
本実施形態の車両挙動推定部202は、上記構成のカルマンフィルタにおける、ゲインA〜D及びLを、車両挙動予測部201で予測した将来の車両挙動に基づいて変更する。
具体的に、まず、車両挙動予測部201において、プレビューセンサ10で検出した路面形状情報と、車両挙動推定部202の入力する現在の車両挙動(ばね上加速度、ばね上変位等)とを基に、将来の車両挙動(ばね上加速度、ばね上変位等)を予測する。即ち、プレビューセンサ10で検出した外乱が自動車1に将来加わると仮定して、この外乱に対する将来の車両挙動を事前に予測する。
【0044】
このとき、各輪の電動サスペンション100のアクチュエータ20の動特性も加味して、将来の車両挙動を予測する。これにより、状態推定を含む制御系としての、アクチュエータ20の推力の発生遅れを低減することができる。
次に、車両挙動推定部202において、予測した将来の車両挙動を基に、電動サスペンション100が線形動作領域で動作するか否かを判定する。ここでは、予測した将来のばね上加速度、およびばね上変位等の将来の車両挙動を示す情報と、予め用意した閾値とを比較して、閾値未満であれば線形動作領域で動作すると判定する。一方、閾値以上であれば非線形動作領域で動作すると判定する。
【0045】
車両挙動推定部202は、電動サスペンション100が線形動作領域で動作すると判定したときは、その将来の外乱が加わるタイミングにおいて、車両挙動の推定に予め用意した線形動作領域用のゲインを用いる。
一方、車両挙動推定部202は、非線形動作領域で動作すると判定したときは、予測した将来のばね上加速度、および、ばね上変位等の車両挙動から、この非線形動作に対応するダンパー減衰係数、サスペンションのばね定数などのゲインに係る値を算出する。
【0046】
具体的に、サスペンション特性マップのデータによって、予測した非線形の車両挙動をその瞬間において線形化するための、カルマンフィルタのゲインに係るダンパー減衰係数、サスペンションのばね定数などを算出する。
さらに、車両挙動推定部202は、これら算出した、ダンパー減衰係数C2f,C2r、サスペンションのばね定数K2f,K2rなどを用いて、上式(3)〜(6)で示すゲインA〜Dと、フィードバック用のゲインLとを算出する。
そして、その将来の外乱が加わるタイミングにおいて、推定に用いるカルマンフィルタのゲインA〜D及びLの値を、この算出した値に変更する。
【0047】
次に、車両挙動推定部202は、車載センサ30、車体上下加速度センサ40、および、車輪上下加速度センサ50の各センサ出力と、上記設定したゲインとによって、カルマンフィルタを用いて、現在の車両挙動を推定する。そして、この推定結果を、サスペンション制御部203および車両挙動予測部201にそれぞれ出力する。
【0048】
サスペンション制御部203は、入力された現在の車両挙動の推定値に基づいて、各輪の電動サスペンション100のアクチュエータ20への指令値を生成し、生成した指令値を各アクチュエータ20に出力する。これによって、アクチュエータ20が指令値に応じて動作し、例えば、路面からの振動を抑制する。なお、サスペンション制御部203は、例えばスカイフック制御などの制御方法を用いて、アクチュエータ20への指令値を生成する。
一方、車両挙動予測部201は、上記同様に、入力された現在の車両挙動の推定値と、プレビューセンサ10の検出情報とに基づいて、将来の車両挙動を予測する。
以降は、自動車1が停止、またはエンジンが停止するまで、上記一連の動作を繰り返す。
【0049】
次に、図8を参照して、本実施形態の車両用懸架制御装置1Aの効果を説明する。
図8は、カルマンフィルタによって、車両挙動としてばね上の変位を推定した時の結果を示すグラフであり、破線は、ばね上変位の実測値であり、実線は、本実施形態の車両用懸架制御装置1Aを適用した場合の、ばね上変位の推定値である。図8において、各グラフの横軸が時間[sec]、縦軸がばね上変位[mm]となる。
また、図8の例は、カルマンフィルタに適用した車両モデルのダンパー減衰特性を非線形動作に対応するものに変更する前及び後(右図及び左図)の変位を示し、外乱としての路面加振時の振幅を10[mm](上図)と2[mm](下図)とに変えている。
【0050】
ここで、路面加振時の周波数が比較的低く且つ振幅が比較的大振幅のときは、フリクション等の影響が小さいため、図8の上側の右図に示すように、通常時に用いる線形動作に対応するカルマンフィルタのゲインを用いた推定値が直接計測した値からずれる。
また、路面加振時の周波数が比較的高く且つ振幅が比較的小振幅のときは、フリクション等の影響が大きいため、図8の下側の右図に示すように、通常時に用いる線形動作に対応するカルマンフィルタのゲインを用いた推定値が直接計測した値から大きくずれる。
【0051】
このように、線形なシステムに対応するカルマンフィルタを、非線形性が強いサスペンションに適用した場合、必ずしもすべての条件において高精度な推定が実現できるとは限らない。
そこで、本実施形態では、このようにサスペンションが非線形な動作領域で動作する状況を引き起こす外乱を事前に予測して、車両モデルのダンパー減衰係数を、非線形な動作領域に対応するダンパー減衰係数へと変更する。
【0052】
具体的に、路面加振時の周波数が比較的低く且つ振幅が比較的大振幅のときは、ダンパー減衰係数を通常時に用いるものより小さくする。そして、この小さくしたダンパー減衰係数からカルマンフィルタのゲインを算出し、この算出値を推定に用いるゲインとして設定する。これにより、図8の上側の左図に示すように、図8の上側の右図に示す線形動作用のゲインを用いて推定した場合と比較して、推定値が直接計測した値に近い値となる。
【0053】
また、路面加振時の周波数が比較的高く且つ振幅が比較的小振幅のときは、ダンパー減衰係数を通常時に用いるものより大きくする。そして、この大きくしたダンパー減衰係数からカルマンフィルタのゲインを算出し、この算出値を推定に用いるゲインとして設定する。これにより、図8の下側の左図に示すように、図8の下側の右図に示す線形動作用のゲインを用いて推定した場合と比較して、推定値が直接計測した値に近い値となる。
【0054】
以上、本実施形態の車両用懸架制御装置1Aは、外乱が加わることによって、車両挙動が非線形動作領域となる状況が発生する場合に、車両に将来加わる予定の路面からの外乱の影響と現在の車両挙動とを基に、そのときの車両挙動を事前に予測することができる。さらに、予測した車両挙動を基に、その将来における車両モデルの特性を、サスペンション特性マップによって線形近似することができる。さらに、この非線形動作に対応するサスペンションの各特性値から、カルマンフィルタのゲインを調整し、適切な状態推定を実現することができる。これによって、非線形な動作領域を有するサスペンションを備えた車両の挙動を、高精度に推定することができる。
(効果)
(1)物理量検出手段が、前記車両の挙動を示す物理量を検出する。車両挙動推定手段が、前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する。外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する。車両挙動予測手段が、前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する。車両挙動情報補正手段が、前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わるタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する。
【0055】
これによって、能動型懸架装置が、外乱によって非線形な動作をする場合に、それを事前に予測して、能動型懸架装置の動作制御に用いる第1の車両挙動情報を予め補正することができる。そのため、非線形性の強い能動型懸架装置などを含む車両モデルに対して、より高精度に現在の車両挙動の推定を行うことができるという効果が得られる。
【0056】
(2)車両挙動情報補正手段が、前記能動型懸架装置が前記車両に将来加わる予定の外乱によって非線形な動作領域で動作すると判定したときに、前記第1の車両挙動情報を前記非線形な動作領域を線形近似して推定した内容に補正する。
これによって、能動型懸架装置が非線形な動作領域で動作するときの現在の車両挙動を、非線形な動作領域を線形近似することによって、高精度に推定することができるという効果が得られる。
【0057】
(3)車両挙動推定手段が、カルマンフィルタによって前記車両の現在の挙動を推定する手段である。車両挙動情報補正手段が、前記第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱が加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記カルマンフィルタのゲインを補正することで、前記第1の車両挙動情報を補正する。
これによって、予め既知である非線形な車両特性に基づいて、線形なモデルに対応するカルマンフィルタのゲインを、この非線形な車両特性に適した値に変更することができる。そのため、非線形性の強い能動型懸架装置などを含む車両システムに対して、より高精度に現在の車両挙動の推定を行うことができるという効果が得られる。
【0058】
(4)車両に将来加わる予定の外乱は、路面の状態によって車両に加わる外乱である路面外乱を含み、外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の前記路面外乱の情報を含む外乱情報を検出する。
路面の状態によって車両に将来加わる予定の外乱の情報を事前に検出し、この外乱に対する将来の車両挙動を予測し、この予測結果に基づき、第1の車両挙動情報を補正することができる。そのため、車両の車輪(前後輪)に加わる外乱に応じた車両挙動を、より高精度に推定することができるという効果が得られる。
【0059】
(5)車両挙動予測手段が、前記能動型懸架装置の有するアクチュエータの動特性と前記検出した外乱情報とに基づき、前記第2の車両挙動情報を予測する。
これによって、アクチュエータの動特性を加味して、将来の車両挙動を予測することができるので、状態推定を含む制御系としての推力の発生遅れを低減することができるという効果が得られる。
【0060】
(6)物理量検出手段が、前記車両の挙動を示す物理量を検出する。車両挙動推定手段が、前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する。外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する。車両挙動予測手段が、前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する。車両挙動情報補正手段が、前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わるタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する。
【0061】
これによって、能動型懸架装置が、外乱によって非線形な動作をする場合に、それを事前に予測して、能動型懸架装置の動作制御に用いる第1の車両挙動情報を予め補正することができる。そのため、非線形性の強い能動型懸架装置などを含む車両モデルに対して、より高精度に現在の車両挙動の推定を行うことができる車両用状態推定方法とすることができる。
【0062】
(7)物理量検出手段が、前記車両の挙動を示す物理量を検出する。車両挙動推定手段が、前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する。懸架制御手段が、車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報に基づき、前記能動型懸架装置の動作を制御する。外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する。車両挙動予測手段が、前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する。車両挙動情報補正手段が、前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わるタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する。
【0063】
これによって、能動型懸架装置が、外乱によって非線形な動作をする場合に、それを事前に予測して、予め補正をすることができる。そして、この補正した第1の車両挙動情報に基づき、能動型懸架装置の動作を制御することができる。そのため、非線形性の強い能動型懸架装置の動作を、より高精度に制御することができるという効果が得られる。
【0064】
(8)物理量検出手段が、前記車両の挙動を示す物理量を検出する。車両挙動推定手段が、前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する。懸架制御手段が、車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報に基づき、前記能動型懸架装置の動作を制御する。外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する。車両挙動予測手段が、前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する。車両挙動情報補正手段が、前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わるタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する。
【0065】
これによって、能動型懸架装置が、外乱によって非線形な動作をする場合に、それを事前に予測して、能動型懸架装置の動作制御に用いる第1の車両挙動情報を予め補正することができる。そして、この補正した第1の車両挙動情報に基づき、能動型懸架装置の動作を制御することができる。そのため、非線形性の強い能動型懸架装置の動作を、より高精度に制御することができる自動車とすることができる。
【0066】
(応用例)
(1)上記第1実施形態において、本発明を電動アクティブサスペンションに適用する構成としたが、この構成に限らない。例えば、速度に応じて推力を変更可能なセミアクティブペンション、スタビライザーの剛性を変更可能な装置など、アクチュエータを制御することでその特性を変更可能なものであれば、どのような装置にも適用可能である。
(2)上記第1実施形態において、車両挙動推定部202を、カルマンフィルタを用いて現在の車両挙動を推定する構成としたが、この構成に限らず、ウィーナフィルタ、隠れマルコフモデル、遺伝的アルゴリズム等を用いた他の推定方法を用いる構成としてもよい。
【0067】
(3)上記第1実施形態において、カルマンフィルタを適用する運動方程式及び観測方程式を上式(1)〜(13)で示すものとしたが、これに限らず、他の構成としてもよい。
(4)上記第1実施形態において、カルマンフィルタのゲインを補正することで、現在の車両挙動を示す情報を間接的に補正する構成としたが、この構成に限らず、現在の車両挙動を示す情報を直接補正する構成としてもよい。例えば、補正テーブルを予め用意しておき、予測した車両挙動に対応する補正量で、現在の車両挙動を示す情報を補正する。
【0068】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面を参照して説明する。図9は、本発明に係る車両用状態推定装置、車両用懸架制御装置、車両用状態推定方法および自動車の第2実施形態を示す図である。
(構成)
上記第1実施形態では、プレビューセンサ10によって検出した、車両に将来加わる予定の外乱情報を基に、将来の車両挙動を予測し、この予測した車両挙動を基に、カルマンフィルタのゲインの補正を行った。これに対して、本実施形態では、前輪側に加わった外乱に対する車両挙動に基づき、将来の後輪側の車両挙動を予測し、この予測した車両挙動を用いて、車両モデルのパラメータ同定を行う。さらに、この同定したパラメータを用いて、後輪側の車両挙動を推定するときのカルマンフィルタのゲインの修正を行う。
【0069】
なお、本実施形態の自動車の構成は、上記第1実施形態の自動車1の構成と同様となる。但し、本実施形態では、プレビューセンサ10を用いないので、自動車1からプレビューセンサ10を取り除いた構成とすることができる。
以下、上記第1実施形態と異なる部分を詳細に説明し、同じ部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0070】
(車両挙動予測部201の機能)
本実施形態において、車両挙動予測部201は、車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50から入力される各種センサ出力を入力とし、前輪モデル(不図示)を用いて、各種センサ出力から後輪側に将来加わる予定の外乱を予測する。具体的に、後輪側に将来加わる予定の路面の凹凸等による外乱(以下、路面外乱)を予測する。この路面外乱は、上記第1実施形態の路面形状情報と同様に、路面の変位を示す情報となる。
【0071】
さらに、車両挙動予測部201は、予測した路面外乱と、車両挙動推定部202の推定した前輪側に対する現在の車両挙動を示す情報とを基に、前輪側に加わった外乱が後輪側に将来加わるときの車両挙動を予測する。
そして、車両挙動予測部201は、上記予測した、将来の後輪側に加わる路面外乱を示す情報と、将来の後輪側の車両挙動を示す情報とを車両挙動推定部202に出力する。
【0072】
なお、本実施形態では、車両挙動予測部201において、将来の後輪側に加わる路面外乱を予測する構成としたが、この構成に限らない。例えば、車両挙動予測部201の前段に、別途外乱予測部を設け、そこで、車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50の各種センサ出力を基に、前輪モデルを用いて路面外乱を予測する構成としてもよい。
【0073】
(車両挙動推定部202の機能)
図9は、本実施形態の車両挙動推定部202の制御ロジックを示す図である。
本実施形態において、車両挙動推定部202は、図9に示すように、車両挙動予測部201の入力した将来の路面外乱及び将来の後輪側の車両挙動(状態)を示す情報を基に、車両システム同定器によって車両システム(図5の車両モデル)のパラメータを同定する。これによって、車両システムの動特性をリアルタイムに線形化する。つまり、非線形な動作領域となる路面外乱に対する車両応答の動特性を、パラメータ同定によって、線形なモデルとして近似する。そして、車両挙動推定部202は、この線形化した動特性を基に、線形モデルの状態方程式(線形車両特性)を算出して、カルマンフィルタのゲインを算出する。
【0074】
更に、車両挙動推定部202は、予測した路面外乱が加わる将来の瞬間において、算出した状態方程式と、算出したゲインとからカルマンフィルタを構成し、このカルマンフィルタによって、その将来における「現在の後輪側の車両挙動」を推定する。
さらに、本実施形態の車両挙動推定部202は、車両挙動予測部201で予測した将来の後輪側の車両挙動と、その将来における車載センサ30のセンサ出力などから解る実際の車両応答との差異を基に、カルマンフィルタのゲインを補正する。具体的に、カルマンフィルタのゲインに係る車両モデルのパラメータに対応する予測値と実測値との差異に応じてゲインの算出に係るパラメータの値を補正する。これによって、車両挙動予測部201の予測誤差を補うことができる。
ここで、前輪側の車体上下加速度センサ40および車輪上下加速度センサ50と、車両挙動予測部201における路面外乱の予測機能とは、「外乱情報検出手段」に対応する。
【0075】
(動作)
エンジンが始動して、自動車1が前方に向かって走行を開始すると、車体上下加速度センサ40は、ばね上加速度の検出を開始し、車輪上下加速度センサ50は、ばね下加速度の検出を開始する。各センサは、検出結果をコントローラ60にそれぞれ出力する。
コントローラ60において、車両挙動予測部201は、前輪側の各センサ出力を入力として、前輪モデルを用いて、後輪側に将来加わる予定の路面外乱を予測する。ここで、路面外乱として、路面の凹凸を示す変位量を算出する。
また、車両挙動予測部201は、予測した路面外乱と、車両挙動推定部202の推定した前輪側に対する現在の車両挙動を示す情報とを基に、前輪側に加わった外乱が後輪側に将来加わるときの車両挙動を予測する。
【0076】
そして、車両挙動予測部201は、予測した路面外乱と、予測した後輪側の車両挙動を示す情報とを、車両挙動推定部202に出力する。
一方、車両挙動推定部202は、車両挙動予測部201の入力した路面外乱と、後輪側の将来の車両挙動を示す情報とを基に、車両システム(第1実施形態と同様)のパラメータ同定を実行して、車両システムの動特性を線形近似した線形モデルを生成する。
【0077】
この線形モデルは、具体的に、上記第1実施形態の図5に示す車両モデル(前輪側)の線形動作領域に対応するパラメータを、外乱による非線形動作領域においてその動作特性が線形となるパラメータに変更したものに該当する。
更に、この線形モデルから状態方程式を算出し、この状態方程式から、カルマンフィルタのゲインを算出する。このようにして算出した状態方程式、および、カルマンフィルタのゲインは、上記第1実施形態の図7に示すカルマンフィルタの各項を構成する。なお、本実施形態では、カルマンフィルタの各項をリアルタイムに逐次更新する。
【0078】
車両挙動推定部202は、車載センサ30、後輪側の車体上下加速度センサ40、および、後輪側の車輪上下加速度センサ50のセンサ出力と、上記構成したカルマンフィルタを用いて、現在の後輪側の車両挙動を推定する。そして、この推定結果を、サスペンション制御部203および車両挙動予測部201にそれぞれ出力する。
また、車両挙動推定部202は、後輪側に対する各種センサ出力と、車両挙動予測部201で予測した車両挙動を示す情報との差異(例えば、差分)を算出し、この差異を基に、カルマンフィルタのゲインを修正する。
【0079】
一方、サスペンション制御部203は、入力された現在の車両挙動の推定値に基づいて、各輪の電動サスペンション100のアクチュエータ20への指令値を生成し、生成した指令値を各アクチュエータ20に出力する。これによって、アクチュエータ20が指令値に応じて動作し、例えば、路面からの振動を抑制する。
一方、車両挙動予測部201は、上記同様に、入力された現在の車両挙動の推定値と、前輪側の車体上下加速度センサ40、および、前輪側の車輪上下加速度センサ50のセンサ出力とに基づいて、将来の外乱と、将来の車両挙動とを予測する。
以降は、自動車1が停止、またはエンジンが停止するまで、上記一連の動作を繰り返す。
【0080】
以上、本実施形態の車両用懸架制御装置1Aは、外乱が加わることによって、車両挙動が非線形動作領域となる状況が発生する場合に、前輪側に加わった外乱の情報を基に、後輪側に将来加わる予定の路面外乱を予測することができる。更に、予測した路面外乱と現在の後輪側の車両挙動とを基に、将来における後輪側の車両挙動を予測することができる。さらに、予測した路面外乱と、予測した車両挙動とを基に、車両システムのパラメータを同定して、車両システムの路面外乱に対する動特性を線形近似した線形モデルを生成することができる。さらに、線形モデルから状態方程式を算出し、この状態方程式からカルマンフィルタのゲインを算出することができる。そして、これら状態方程式及びゲインから、カルマンフィルタを構成し、非線形動作を引き起こす外乱に対して、適切な状態推定を実現することができる。これによって、非線形な動作領域を有するサスペンションを備えた後輪側の車両挙動を、高精度に推定することができる。
【0081】
また、車両システムをリアルタイムに同定することによって、温度変化や経年劣化などによる固有パラメータの変動が生じた場合にも、リアルタイムに対応することができる。
また、予測した車両挙動を示す情報と、各種センサによる実測値との差異を基に、カルマンフィルタのゲインを補正することができる。これによって、車両挙動予測部201における予測誤差を補正することができる。
【0082】
(効果)
(1)車両挙動推定手段が、カルマンフィルタによって前記車両の現在の挙動を推定する手段である。車両挙動情報補正手段が、前記外乱情報と、前記第2の車両挙動情報とに基づき前記将来加わる予定の外乱に対する前記車両の挙動の特性を逐次同定し、この同定結果に基づき前記カルマンフィルタのゲインを算出する。更に、車両挙動情報補正手段が、カルマンフィルタのゲインを、前記算出したゲインに逐次変更することで、前記第1の車両挙動情報を補正する。
【0083】
つまり、予測した車両挙動の情報と、検出した外乱情報とに基づいて、車両に将来加わる予定の外乱に対する車両の挙動の特性を逐次同定し、その同定結果によって算出される最適なカルマンフィルタのゲインに逐次変更する。これによって、あらかじめ車両特性が既知でなくても、また部品の劣化等により車両特性が変わった場合においても、最適な状態推定を実現することができるという効果が得られる。
【0084】
(2)物理量検出手段が、前記外乱情報検出手段で検出した外乱情報の外乱が前記車両に加わったときの前記物理量(ばね上加速度、ばね上変位など)を検出する。車両挙動推定手段が、前記検出した物理量と、前記第2の車両挙動情報における前記物理量に対応する値との差分の情報に基づき、前記カルマンフィルタのゲインを補正することで、前記第1の車両挙動情報を補正する。
つまり、外乱が加わったときの車両の挙動を示す物理量と、第2の車両挙動情報における前記物理量に対応する値との差分の情報に基づき、カルマンフィルタのゲインを補正するようにした。これによって、あらかじめ車両挙動予測手段の備えている車両特性がなんらかにより変化した場合においても、高精度な状態推定を実現することができるという効果が得られる。
【0085】
(3)外乱情報検出手段が、前記外乱が最初に加わる前記車両の一部の挙動を示す情報に基づき、前記車両の他部に将来加わる予定の外乱の情報を前記外乱情報として検出する。
つまり、先に外乱が加わる車両の一部(例えば、前輪)の情報を、後から外乱の加わる車両の他部(例えば、後輪)で用いるようにした。これによって、例えば、路面の情報を直接計測する比較的高価なセンサなどの計測システムが不要となり、車両の他部(後輪)の挙動の推定精度を安価な構成で向上することができるという効果が得られる。
【0086】
なお、上記各実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…自動車、1A…車両用懸架制御装置、10…プレビューセンサ、20…アクチュエータ、30…車載センサ、40…車体上下加速度センサ、50…車輪上下加速度センサ、60…コントローラ、100…電動サスペンション、101…アッパーアーム、102…ロワーアーム、103…ナックル、104…ハブ、105…ダンパー、201…車両挙動予測部、202…車両挙動推定部、203…サスペンション制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動型懸架装置と、車両の現在の挙動の推定情報に基づき前記能動型懸架装置の動作を制御する懸架制御手段とを備えた車両に用いられる、車両用状態推定装置であって、
前記車両の挙動を示す物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する車両挙動推定手段と、
前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する外乱情報検出手段と、
前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する車両挙動予測手段と、
前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する車両挙動情報補正手段と、を備えることを特徴とする車両用状態推定装置。
【請求項2】
前記車両挙動情報補正手段は、前記能動型懸架装置が前記車両に将来加わる予定の外乱によって非線形な動作領域で動作すると判定したときに、前記第1の車両挙動情報を前記非線形な動作領域を線形近似して推定した内容に補正することを特徴とする請求項1に記載の車両用状態推定装置。
【請求項3】
前記車両挙動推定手段は、カルマンフィルタによって前記車両の現在の挙動を推定する手段であり、
前記車両挙動情報補正手段は、前記第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱が加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記カルマンフィルタのゲインを補正することで、前記第1の車両挙動情報を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用状態推定装置。
【請求項4】
前記車両挙動推定手段は、カルマンフィルタによって前記車両の現在の挙動を推定する手段であり、
前記車両挙動情報補正手段は、前記外乱情報と、前記第2の車両挙動情報とに基づき前記将来加わる予定の外乱に対する前記車両の挙動の特性を逐次同定し、この同定結果に基づき前記カルマンフィルタのゲインを算出し、前記カルマンフィルタのゲインを、前記算出したゲインに逐次変更することで、前記第1の車両挙動情報を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用状態推定装置。
【請求項5】
前記車両挙動推定手段は、前記物理量検出手段で検出した、前記外乱情報検出手段で検出した外乱情報の外乱が前記車両に加わったときの前記物理量と、前記第2の車両挙動情報における前記物理量に対応する値との差分の情報に基づき、前記カルマンフィルタのゲインを補正することで、前記第1の車両挙動情報を補正することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用状態推定装置。
【請求項6】
前記外乱は、路面の状態によって車両に加わる外乱である路面外乱を含み、
前記外乱情報検出手段は、前記車両に将来加わる予定の前記路面外乱の情報を含む外乱情報を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用状態推定装置。
【請求項7】
前記外乱情報検出手段は、前記外乱が最初に加わる前記車両の一部の挙動を示す情報に基づき、前記車両の他部に将来加わる予定の外乱の情報を前記外乱情報として検出することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用状態推定装置。
【請求項8】
前記車両挙動予測手段は、前記能動型懸架装置の有するアクチュエータの動特性と前記検出した外乱情報とに基づき、前記第2の車両挙動情報を予測することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両用状態推定装置。
【請求項9】
能動型懸架装置と、車両の現在の挙動の推定情報に基づき前記能動型懸架装置の動作を制御する懸架制御手段とを備えた車両に用いられる、車両用状態推定方法であって、
物理量検出手段が、前記車両の挙動を示す物理量を検出する物理量検出ステップと、
車両挙動推定手段が、前記物理量検出ステップで検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する車両挙動推定ステップと、
外乱情報検出手段が、前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する外乱情報検出ステップと、
車両挙動予測手段が、前記外乱情報検出ステップで検出した前記外乱情報と、前記車両挙動推定ステップで推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する車両挙動予測ステップと、
車両挙動情報補正手段が、前記車両挙動予測ステップで予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する車両挙動情報補正ステップと、を含むことを特徴とする車両用状態推定方法。
【請求項10】
能動型懸架装置を備えた車両に用いられる車両用懸架制御装置であって、
前記車両の挙動を示す物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、前記車両の現在の挙動を推定する車両挙動推定手段と、
前記車両挙動推定手段で推定した前記車両の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報に基づき、前記能動型懸架装置の動作を制御する懸架制御手段と、
前記車両に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する外乱情報検出手段と、
前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記第1の車両挙動情報とに基づき、前記車両の将来の挙動を予測する車両挙動予測手段と、
前記車両挙動予測手段で予測した前記車両の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が前記車両に加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する車両挙動情報補正手段と、を備えることを特徴とする車両用懸架制御装置。
【請求項11】
車体と、
車体に設置した複数の車輪と、
前記車体と前記複数の車輪との間にそれぞれ設置した能動型懸架装置と、
自己の挙動を示す物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出した前記物理量に基づき、自己の現在の挙動を推定する車両挙動推定手段と、
前記車両挙動推定手段で推定した自己の現在の挙動を示す情報である第1の車両挙動情報に基づき、前記能動型懸架装置の動作を制御する懸架制御手段と、
自己に将来加わる予定の外乱の情報である外乱情報を検出する外乱情報検出手段と、
前記外乱情報検出手段で検出した前記外乱情報と、前記第1の車両挙動情報とに基づき、前記外乱が自己に加わったときの自己の将来の挙動を予測する車両挙動予測手段と、
前記車両挙動予測手段で予測した自己の将来の挙動を示す情報である第2の車両挙動情報に基づき、前記外乱情報に対応する外乱が自己に加わる予定のタイミングと同じ又は先立つタイミングで前記第1の車両挙動情報を補正する車両挙動情報補正手段と、を備えることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−195323(P2010−195323A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44856(P2009−44856)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】