説明

車両用走行制御装置及び車両用走行制御方法

【課題】ハイブリッド車両の車速制限制御時において、より適切にエンジン運転状態を制御する。
【解決手段】駆動輪7L,7Rに駆動力を伝達する駆動源としてエンジン1及びモータジェネレータ2を有するハイブリッド車両の走行速度を、ステアリングスイッチ28で設定されたリミッタ車速以下で維持するように自動調整する制御であるASL制御を行っているときに、アクセルペダル33の操作に応じたドライバ要求トルクと、車速制限時の駆動トルクである車速リミッタトルクとのセレクトローによって決定される目標駆動トルクから逆算して求められる擬似アクセル開度VAPOに基づき、エンジン1を始動するか又は停止するかのいずれかの判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータを駆動源とし、走行の状態に応じてエンジン及びモータの少なくとも一方を使用して走行するハイブリッド車両の走行制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の走行制御を行う装置としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1のハイブリッド車両の制御装置では、車速制限制御時において、設定した上限速度を超えた場合に、まずモータ駆動トルクを低減して無駄な駆動力を低減し、更なる速度の上昇に応じて、モータ発電トルクによる減速を行うといったように、車速に応じてモータ駆動トルクを段階的に制御することによって車速制限を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−177910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のハイブリッド車両において、エンジンを駆動した状態で適宜モータを駆動するHEVモードで走行しているときに、運転者のアクセルペダルの操作量(アクセルペダル開度)に基づいてエンジンを始動するか又は停止するかの判定を行っている。
しかしながら、アクセルペダルの操作量に基づき判定を行っているため、車速制限制御時において、例えば、上限速度で定速走行中などの走行抵抗R/Lが軽負荷となる状況であっても、アクセル開度がエンジン停止判定時の値以下とならずに、エンジンが停止されない状態が継続されてしまう場合がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、車速制限制御時において、ハイブリッド車両のエンジン運転状態を、より適切に制御することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、車速制限制御を実施しているときに、設定した上限速度とハイブリッド車両の走行速度とに基づき、車速制限時に駆動源に要求する駆動トルクである車速制限トルクを算出する車速制限トルク算出手段と、車速制限トルクに基づき、該車速制限トルクに対応するアクセル開度である擬似アクセル開度を算出する擬似アクセル開度算出手段と、運転者のアクセルペダルの操作に応じて検出されるアクセル開度であるアクセルペダル開度に基づき前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定するエンジン始動停止判定手段と、エンジン始動停止判定手段の判定結果に基づきエンジンの始動及び停止を制御するエンジン始動停止制御手段と、を備えた。本発明の車両用走行制御装置は、車速制限制御を実施しているときに、エンジン始動停止判定手段が、擬似アクセル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、走行速度を上限速度以下で維持する車速制限制御を実施しているときに、エンジン始動停止判定手段が、擬似アクセル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。これにより、車速制限制御時において、不要なエンジン運転状態の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るハイブリッド車両の概要構成図である。
【図2】本発明に係るハイブリッドシステムの構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る統合コントローラにおける基本的な信号の流れを示す図である。
【図4】本発明に係る統合コントローラの機能ブロックを示す図である。
【図5】目標駆動トルク演算部の機能ブロックを示す図である。
【図6】車両状態モードの遷移関係を示す図である。
【図7】走行制御における各指令値の算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】ベーストルクMapの一例を示す図である。
【図9】リミッタ車速及びASL(Adjustable Speed Limitter)作動フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】車速リミッタトルクの算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】擬似アクセル開度の算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】擬似アクセル開度Mapの一例を示す図である。
【図13】アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】車両状態モード生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図15】従来のASL制御の作動中におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【図16】本発明のASL制御の作動中におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【図17】第2実施形態の統合コントローラ21のASL制御を実行時の各種処理の流れを示す第1の概要構成図を例示するものである。
【図18】第2実施形態の統合コントローラ21のASL制御を実行時の各種処理の流れを示す第2の概要構成図を例示するものである。
【図19】ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図20】タップダウンスイッチによる減速要求の入力後におけるリミッタ車速近傍判定フラグと、車速と、リミッタ車速との特性例を示すタイムチャートである。
【図21】タップダウンスイッチによる減速要求の入力後におけるASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCと、車速と、リミッタ車速との特性例を示すタイムチャートである。
【図22】第2実施形態における車両状態モード生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図23】第1実施形態のタップダウン減速時におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【図24】第2実施形態のタップダウン減速時におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1〜図16は、本発明に係る車両用走行制御装置及び車両用走行制御方法の第1実施形態を示す図である。
(駆動系の構成)
まず、ハイブリッド車両の駆動系(パワートレーン)の構成について説明する。
図1は本発明に係るハイブリッド車両の概要構成図である。図1に示すハイブリッド車両は後輪駆動の例であるが、前輪駆動であっても本発明は適用可能である。
本実施形態のパワートレーンは、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2と、自動変速機(オートマチックトランスミッション(AT))3と、第1クラッチ4と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、左後輪(駆動輪)7Lと、右後輪(駆動輪)7Rと、を備える。
【0009】
パワートレーンは、更に、エンジン回転センサ10と、MG回転センサ11と、AT入力回転センサ12と、AT出力回転センサ13と、電動サブオイルポンプ14と、機械式オイルポンプ15と、を備える。
かかるパワートレーンは、エンジン1から左右駆動輪7L,7Rまでのトルク伝達経路の途中に、モータジェネレータ2及び自動変速機3を介装した構成となっている。更に、エンジン1とモータジェネレータ2との間に、第1クラッチ4を介装した構成となっている。また、モータジェネレータ2と左右駆動輪7L,7Rとの間のトルク伝達経路に第2クラッチ5を介装した構成となっている。この例では、第2クラッチ5は、自動変速機3の一部を構成する。自動変速機3は、プロペラシャフト、ディファレンシャルギア6、及びドライブシャフトを介して左右駆動輪7L,7Rに接続されている。
【0010】
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。エンジン1は、後述するエンジンコントローラ22からの制御指令に基づき、スロットルバルブのバルブ開度等を制御する。なお、エンジン1の出力軸に、フライホイールが設けられていても良い。
モータジェネレータ2は、例えばロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータである。モータジェネレータ2は、後述するモータコントローラ23からの制御指令に基づき、後述のインバータ8で作り出した三相交流を印加することで制御できる。このモータジェネレータ2は、後述のバッテリ9からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできる(この状態を「力行」と呼ぶ)。また、モータジェネレータ2は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ9を充電することもできる(この動作状態を「回生」と呼ぶ)。このモータジェネレータ2のロータは、図外のダンパーを介して自動変速機3の入力軸に連結している。
【0011】
自動変速機3は、例えば、前進5速後退1速や前進7速後退1速等の有段階の変速比を車速や後述する統合コントローラ21から入力した変速用アクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機である。ここで、第2クラッチ5は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機3の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用して構成する。
【0012】
第1クラッチ4は、上記エンジン1とモータジェネレータ2との間に介装された油圧式単板クラッチである。第1クラッチ4は、後述する統合コントローラ21からの制御指令に基づいて、入力した目標クラッチ伝達トルクとなるように、後述する第1クラッチ油圧ユニット(不図示)の作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
【0013】
第2クラッチ5は、油圧式多板クラッチである。第2クラッチ5は、後述する統合コントローラ21からの制御指令に基づき、目標クラッチ伝達トルクとなるように、後述する第2クラッチ油圧ユニットの作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
ここで、本実施形態では、第2クラッチ5を自動変速機3の一部として構成する場合を例示しているが、これに限定されない。第2クラッチ5は、モータジェネレータ2と自動変速機3との間、若しくは自動変速機3とディファレンシャルギア6との間に配置する構成であっても良い。
【0014】
また、各輪には、それぞれブレーキユニット(不図示)を備える。各ブレーキユニットは、例えばディスクブレーキやドラムブレーキからなる。各ブレーキユニットは、油圧ブレーキ装置であっても、電動ブレーキ装置であっても良い。各ブレーキユニットは、ブレーキコントローラ25からの指令に応じて、対応する車輪に制動力を付与する。なお、ブレーキユニットは、全ての車輪に設ける必要はない。
【0015】
エンジン回転センサ10は、エンジン1の回転数を検出するセンサである。
MG回転センサ11は、レゾルバ等から構成されモータジェネレータ2のモータ回転数を検出するセンサである。
AT入力回転センサ12は、自動変速機3の入力軸の回転数を検出するセンサである。
AT出力回転センサ13は、自動変速機3の出力軸の回転数を検出するセンサである。
【0016】
電動サブオイルポンプ14は、第1クラッチ4のための油圧を発生するポンプである。
機械式オイルポンプ15は、第2クラッチ5のための油圧を発生するポンプである。
第1クラッチ油圧ユニットは、例えば、印加電流に応じてバルブ(プランジャ)のストローク位置を変化させ、バルブ部の開口面積等を変えてオイルの流量を制御する比例制御型のアクチュエータである。第1クラッチ油圧ユニットは、後述するATコントローラ24からの指令信号(制御電流)に応じてストローク制御され、第1クラッチ4に供給する油圧を制御する。
【0017】
第2クラッチ油圧ユニットは、例えば、AT油圧コントロールバルブ内に配設され、第1クラッチ油圧ユニットと同様に比例制御型のアクチュエータである。第2クラッチ油圧ユニットは、後述するATコントローラ24からの指令信号(制御電流)に応じてストローク制御され、第2クラッチ5に供給する油圧を制御する。
また、パワートレーンは、第1クラッチ4に供給される油圧を検出する第1クラッチ油圧センサを有する。第1クラッチ油圧センサは、検出した油圧情報を、ATコントローラ24に出力する。
また、パワートレーンは、第2クラッチ5に供給される油圧を検出する第2クラッチ油圧センサを有する。第2クラッチ油圧センサは、検出した油圧情報を、ATコントローラ24に出力する。
【0018】
(制御系の構成)
次に、ハイブリッド車両の制御系の構成について説明する。
図2は、ハイブリッド車両の制御系を説明する構成図である。
ハイブリッド車両の制御系は、図2に示すように、インバータ8と、バッテリ9と、電圧センサ18と、電流センサ19と、APOセンサ(アクセルセンサ)20と、車輪速センサ27L,27Rと、ブレーキスイッチ(SW)29と、アクセルペダル33と、ペダルアクチュエータ34と、メータ35と、を備える。
インバータ8は、高電圧インバータであって、バッテリ9からの直流電流を交流電流に変換し、モータジェネレータ2の駆動電流を生成する。更に、インバータ8は、モータジェネレータ2からの交流電流を直流電流に変換し、バッテリ9の充電電流を生成する。
バッテリ9は、モータジェネレータ2にインバータ8を介して電力を供給し、また、モータジェネレータ2からの回生エネルギーを、インバータ8を介して蓄積する高電圧バッテリである。
【0019】
電圧センサ18は、バッテリ9の電圧を検出するセンサである。電圧センサ18は、検出した電圧情報をバッテリコントローラ26に出力する。
電流センサ19は、バッテリ9の電流を検出するセンサである。電流センサ19は、検出した電流情報をバッテリコントローラ26に出力する。
アクセルセンサ20は、アクセルペダル33のアクセル開度APOを検出するセンサである。アクセルセンサ20は、検出したアクセル開度APO情報を統合コントローラ21に出力する。
【0020】
車輪速センサ27Lは、車輪の回転速度に応じた周波数あるいは回転周期を示すパルス信号を発生するセンサであって、左駆動輪7Lの回転速度を検出する。車輪速センサ27Lは、検出した左駆動輪7Lの車輪速情報をブレーキコントローラ25に出力する。
車輪速センサ27Rは、車輪の回転速度に応じた周波数あるいは回転周期を示すパルス信号を発生するセンサであって、右駆動輪7Rの回転速度を検出する。車輪速センサ27Rは、検出した右駆動輪7Rの車輪速情報をブレーキコントローラ25に出力する。
【0021】
また、車輪速情報から求まる車速情報は、ブレーキコントローラ25から統合コントローラ21及び車間制御コントローラ31に出力される。
なお、車輪速センサ27L,27Rは、図1に示すように、左右駆動輪(後輪)7L,7Rの車輪速を検出するようにそれぞれ設けたが、不図示の左右従動輪(前輪)にも設けてもよい。
ブレーキスイッチ29は、ブレーキペダル(不図示)の操作を検出するスイッチである。
【0022】
アクセルペダル33は、運転者によって踏み込み操作され、アクセル開度APOを、踏み込み量に応じて予め設定されている大きさに可変する。
ペダルアクチュエータ34は、車間制御コントローラ31からの指令に応じたペダル反力をアクセルペダル33に付与するアクチュエータである。
メータ35は、運転者に走行状態を提示するためのメータである。メータ35は、車速制限制御の情報、オートクルーズの情報などを表示する。
【0023】
図2に示すように、ハイブリッド車両の制御系は、更に、統合コントローラ21と、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25と、バッテリコントローラ26と、を備える。
統合コントローラ21と、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25とは、互いに情報交換が可能なCAN通信線(不図示)を介して接続している。
統合コントローラ21は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率を目標値として車両を走らせるための機能を担うものである。
【0024】
統合コントローラ21は、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ10、モータ回転数Nmを検出するMG回転センサ11、変速機入力回転数を検出するAT入力回転センサ12、変速機出力回転数を検出するAT出力回転センサ13からの情報を入力する。また、統合コントローラ21は、アクセルセンサ20からアクセル開度APO情報、バッテリコントローラ26からバッテリ9の蓄電状態SOCの情報を入力する。また、統合コントローラ21は、CAN通信線を介して取得した情報を出力する。
【0025】
また、統合コントローラ21は、エンジンコントローラ22への制御指令によりエンジン1の動作制御を実行する。統合コントローラ21は、モータコントローラ23への制御指令によりモータジェネレータ2の動作制御を実行する。統合コントローラ21は、ATコントローラ24への制御指令により第1クラッチ4の締結・開放制御を実行する。統合コントローラ21は、ATコントローラ24への制御指令により第2クラッチ5の締結・開放制御を実行する。
【0026】
エンジンコントローラ22は、エンジン回転センサ10からのエンジン回転数情報を入力する。そして、エンジンコントローラ22は、統合コントローラ21からの目標エンジントルク等に応じ、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Neの情報は、CAN通信線を介して統合コントローラ21から取得する。
モータコントローラ23は、モータジェネレータ2のロータ回転位置を検出するMG回転センサ11からの情報を入力する。そして、モータコントローラ23は、統合コントローラ21からの目標モータトルクや回転数指令等に応じ、モータジェネレータ2のモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ8へ出力する。
【0027】
ATコントローラ24は、第1クラッチ4に供給される油圧を検出する第1油圧センサ(不図示)及び第2クラッチ5に供給される油圧を検出する第2クラッチ油圧センサ(不図示)からのセンサ情報を入力する。そして、ATコントローラ24は、統合コントローラ21からのアクセル開度APO情報、車速情報、第1及び第2クラッチ制御指令(目標第1クラッチトルク、目標第2クラッチトルク)に応じ、変速制御における第2クラッチ5の制御に優先し、第2クラッチ5の締結・開放を制御する制御指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニットに出力すると共に、第1クラッチ4の締結・開放を制御する制御指令を第1クラッチ油圧ユニット(不図示)に出力する。
【0028】
ブレーキコントローラ25は、後輪の各車輪速を検出する車輪速センサ27L,27Rとブレーキストロークセンサからのセンサ情報を入力する。上記ブレーキコントローラ25は、予め設定した制御サイクルで、ブレーキペダルのストローク量や車間制御コントローラ31などからの制動要求量、車速に基づき目標減速度を演算する。そして、ブレーキコントローラ25は、回生協調ブレーキ制御として、目標減速度を回転制動力としての協調回生ブレーキ要求トルク及び機械制動力(油圧制動力)としての目標油圧制動力に制動力配分を行う。そして、協調回生ブレーキ要求トルクを統合コントローラ21のモータジェネレータ制御部に出力する。目標油圧制動力を、油圧制動力装置に出力する。例えば、上記ブレーキコントローラ25は、ブレーキ踏み込み制動時のブレーキストロークBS等から求められる要求制動力に対し、回生制動力だけでは不足する場合、回生協調ブレーキ制御を行う。そして、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータジェネレータ2の制動力)で補うように、統合コントローラ21からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
【0029】
バッテリコントローラ26は、バッテリ9の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視している。バッテリコントローラ26は、バッテリSOC情報を、モータジェネレータ2の制御情報等として、CAN通信線を介して統合コントローラ21へ供給する。
ハイブリッド車両の制御系は、更に、ステアリングスイッチ(SW)28と、クルーズキャンセルスイッチ(SW)30と、車間制御コントローラ31と、レーダユニット32と、を備える。
【0030】
なお、車間制御コントローラ31と、統合コントローラ21と、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25とは、上記CAN通信線を介して接続する。
ステアリングスイッチ28は、自動走行制御によるオートクルーズ走行の起動、走行条件(目標車速)の変更指示、車速制限制御であるASL制御の起動、車速制限時の上限速度であるリミッタ車速の変更指示等を運転者が行う操作子である。
【0031】
ここで、本実施形態のオートクルーズ走行は、定速走行制御(定速クルーズ)及び車間制御(車間クルーズ)の両方を含む。
また、本実施形態では、ステアリングスイッチ28内のメインスイッチの操作によりASL制御を作動し、メインスイッチ又はキャンセルスイッチによりASL制御の作動を解除することができる。また、本実施形態では、ステアリングスイッチ28内のタップアップスイッチ(+1km/h)、タップダウンスイッチ(−1km/h)、アクセラレータスイッチ(+10km/h)、コーストスイッチ(−10km/h)によって、リミッタ車速の増速及び減速を行うことができる。
【0032】
クルーズキャンセルスイッチ30は、ブレーキペダルに設けられたスイッチである。クルーズキャンセルスイッチ30は、自動走行制御によるオートクルーズ走行の終了を指示するための操作子である。なお、上記ステアリングスイッチ28にもオートクルーズの終了を指示するスイッチが存在する。本実施形態では、このスイッチも含めクルーズキャンセルスイッチ30と呼ぶ。
【0033】
レーダユニット32は、車両前方の先行車両を検出し、検出した先行車両情報を車間制御コントローラ31に出力する。
車間制御コントローラ31は、運転者のステアリングスイッチ28の操作による入力情報、クルーズ制御作動許可状態、その他の必要情報を、統合コントローラ21から入力する。そして、車間制御コントローラ31は、統合コントローラ21からの情報に基づき、先行車に対する車間制御を実施するか否かの判定を行う。そして、車間制御コントローラ31は、車間制御を実施すると判定すると、自車速、レーダユニット32の検出に基づく先行車両の情報(車間距離や相対速度など)等に基づき、先行車に対して目標車間距離や目標車間時間とするための目標加速度及び目標減速度を演算する。更に、車間制御コントローラ31は、求めた目標加速度を車間クルーズ要求トルク(ACC要求トルク)として統合コントローラ21に出力する。また、車間制御コントローラ31は、求めた目標減速度を制動要求トルクとしてブレーキコントローラ25に出力する。
【0034】
また、車間制御コントローラ31は、DCA(Distance Control Assist)制御部31Aを有する。DCA制御部31Aは、統合コントローラ21から受信するアクセル開度APO情報と、車輪速センサ27の検出に基づく車速情報、レーダユニット32からの情報に基づきペダル反力指令を演算する。そして、DCA制御部31Aは、先行車との車間を保つ為の運転者への支援情報として、演算した反力指令をペダルアクチュエータ34に出力する。これにより、ペダルアクチュエータ34は、反力指令に応じて入力したアクセルペダル33に反力を付与する。
【0035】
(基本動作モード)
次に、本実施形態のハイブリッド車両における基本動作モードについて説明する。
車両停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジン1を始動して発電を行い、バッテリ9を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチ4は締結で第2クラッチ5は開放のままでエンジン1を停止する。
エンジン1による発進時には、アクセル開度APOとバッテリSOC状態によって、モータジェネレータ2を連れ回し、力行/発電に切り替える。
【0036】
モータ走行(EVモード)は、エンジン始動に必要なモータトルクとバッテリ出力を確保し、不足する場合はエンジン走行に移行する。また、予め設定したマップ等に基づき予め設定した所定車速以上となると、モータ走行(EVモード)からエンジン走行(HEVモード)に移行する。またエンジン走行時において、アクセル踏み込み時のレスポンス向上のために、エンジントルク遅れ分をモータジェネレータ2によりアシストする。すなわち、エンジン走行中は、エンジン1の動力だけ、若しくはエンジン1及びモータジェネレータ2の動力の両方で走行するモードが存在する。
【0037】
ブレーキON減速時には、運転者のブレーキ操作に応じた減速力を回生協調ブレーキ制御にて得る。
エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータジェネレータ2を回生/力行させ、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
図3は、本実施形態の統合コントローラ21の制御における基本的な指令値の基本的な流れを示す概要構成図を例示したものである。また、図4は本実施形態の統合コントローラ21の制御を機能的に説明する機能ブロック図である。
【0038】
次に、統合コントローラ21にて実行する制駆動制御処理における、本発明に関わる部分について説明する。
統合コントローラ21は、図4に示すように、要求発電トルクベース演算部21Aと、要求エンジン発電トルク演算部21Bと、モータ出力可能トルク演算部21Cと、目標駆動トルク演算部21Dと、車両状態モード決定部21Eと、を備える。
統合コントローラ21は、更に、エンジン始動制御部21Fと、エンジン停止制御部21Gと、目標エンジントルク算出部21Hと、目標モータトルク算出部21Jと、目標クラッチトルク算出部21Kと、擬似アクセル開度演算部21Lと、を備える。
【0039】
要求発電トルクベース演算部21Aは、バッテリコントローラ26からのSOCなどのバッテリ情報などに基づき、モータジェネレータ2で発電すべき目標発電電力を演算する。更に、演算した目標発電電力に基づき、エンジン1で発生すべき要求エンジン発電トルクのベースとなる要求発電トルクベースを演算する。
要求エンジン発電トルク演算部21Bは、MG回転センサ11、又はAT入力回転センサ12からの入力軸回転数等の車両状態や要求発電トルクベース演算部21Aが演算した要求発電トルクベース等に基づき、エンジン1で発生すべき要求エンジン発電トルクを演算する。
【0040】
モータ出力可能トルク演算部21Cは、バッテリコントローラ26からのSOCなどのバッテリ情報や、車速などに基づき、モータジェネレータ2が出力可能なモータ出力可能トルクを演算する。
本実施形態の目標駆動トルク演算部21Dは、図5に示すように、ドライバ要求トルク演算部21Daと、自動制御要求トルク演算部21Dbと、第1目標駆動トルク演算部21Dcと、車速リミッタトルク演算部21Ddと、最終目標駆動トルク演算部21Deと、を備える。
【0041】
ドライバ要求トルク演算部21Daは、少なくともアクセルペダル33のアクセル開度APO情報及び車速に基づき、ドライバ要求トルクを演算する。ドライバ要求トルク演算部21Daは、図3に示す例では、アクセル開度APO及び変速機入力回転数を入力し、ベーストルクマップを参照して基本ドライバ要求トルクを演算する。また、車速に基づき、クリープ・コースト駆動力テーブルを参照して第1の補正トルクを演算する。また、アクセル開度APO情報と、変速機入力回転数と、SOC等に基づく電力制限情報とに基づき、MGアシストトルクMapを参照して、第2の補正トルクを算出する。そして、ドライバ要求トルク演算部21Daは、演算した基本ドライバ要求トルク、第1の補正トルク及び第2の補正トルクに基づき、最終的なドライバ要求トルクを求める。
【0042】
自動制御要求トルク演算部21Dbは、ステアリングスイッチ28の操作情報及びACC許可信号を車間制御コントローラ31に出力すると共に、該車間制御コントローラ31からの車間クルーズ要求トルク(ACC要求トルク)を入力する。また、自動制御要求トルク演算部21Dbは、ASC(自動速度制御(定速走行制御ともいう))作動時には、ステアリングスイッチ28によって設定された設定車速及び現在の車速に基づき、設定車速となるようにフィードバック制御するためのクルーズ要求トルクを演算する。そして、自動制御要求トルク演算部21Dbは、ASC作動時において、ACC作動(車間制御の作動)の有無に応じて、ACC要求トルク若しくはASC要求トルクの一方を自動制御要求トルクとして選択する。ここでは、ACC作動時には、クルーズ要求トルクよりもACC要求トルクを優先して選択するように処理する。
【0043】
第1目標駆動トルク演算部21Dcは、ドライバ要求トルク演算部21Daが演算したドライバ要求トルクと、自動制御要求トルク演算部21Dbが演算した自動制御要求トルクとのセレクトハイを実施して、大きい方を第1目標駆動トルクとして選択して出力する。
車速リミッタトルク演算部21Ddは、運転者によってステアリングスイッチ28内のメインスイッチが操作されることに応じて、ASL制御を作動する。ASL制御が作動されると、ステアリングスイッチ28によって設定されるリミッタ車速に対する許可判定等を実行する。そして、設定されたリミッタ車速及び現在の車速に基づき車速F/B(フィードバック)制御を実行して、車速を設定したリミッタ車速以下とするための車速リミッタトルクを演算する。車速リミッタトルク演算部21Ddは、演算した車速リミッタトルクを最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
【0044】
最終目標駆動トルク演算部21Deは、第1目標駆動トルク演算部21Dcが出力する第1目標駆動トルクと、車速リミッタトルク演算部21Ddが演算した車速リミッタトルクとのセレクトローを実施する。すなわち、第1目標駆動トルクを車速リミッタトルクで制限して、目標駆動トルクを求める。
擬似アクセル開度演算部21Lは、目標駆動トルクと変速機入力回転数とから逆算して対応する擬似アクセル開度(VAPO)を演算する。擬似アクセル開度演算部21Lは、演算した擬似アクセル開度VAPOを変速用アクセル開度としてATコントローラ24に出力する。ASL制御の作動中における擬似アクセル開度VAPOは、ASL制御によって車速が上限速度を超えないように駆動トルクを制御するようなアクセル開度を演算によって求めた値になる。
【0045】
車両状態モード決定部21Eは、アクセル開度APO、擬似アクセル開度VAPO、車速情報(又は変速機出力回転数)、モータ出力可能トルク、要求エンジン発電トルク、及び目標駆動トルクに基づき、車両状態モード領域マップ(EV−HEV遷移マップ)などを参照して、目標とする目標車両状態モード(EVモード、HEVモード)を決定する。例えば、車両制駆動制御のための目標駆動トルクに、エンジン1の始動に必要なクランキングトルクを加えたトルクが、モータジェネレータ2が出力可能なトルクを下回ると、HEVモードからEVモードに運転モードが遷移する。また、バッテリ充電等の要求などによって要求エンジン発電トルクがある場合には、目標とする目標車両状態モードをHEVモードとする。そして、現在の車両状態モードがEVモードであり、目標車両状態モードがHEVモードである場合には、エンジン始動シーケンスの処理を行う。また、現在の車両状態モードがHEVモードであり、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジン停止シーケンスの処理を行う。
【0046】
ここで、車両状態モードとしては、図6に示すように、HEVモードと、EVモードと、遷移時のモードである、エンジン停止シーケンス及びエンジン始動シーケンスのモードとを備える。HEVモードは、少なくともエンジン1を駆動源として走行する車両状態モードである。エンジン停止シーケンスのモードは、HEVモードからEVモードに移行する際の遷移時の車両状態モードである。エンジン始動シーケンスのモードは、EVモードからHEVモードに移行する際の遷移時の車両状態モードである。そして、現在の車両状態モードと目標車両状態モードとが同じ場合には、前回の状態モードを保持する。例えば、現在の車両状態モードがEVモードで目標車両状態モードもEVモードの場合には、車両状態モードをEVモードとする。現在の車両状態モードがHEVモードで目標車両状態モードもHEVモードの場合には、車両状態モードをHEVモードとする。一方、現在の車両状態モードがEVモードで、目標車両状態モードがHEVモードの場合、若しくは現在の車両状態モードがHEVモードで、目標車両状態モードがEVモードの場合、遷移モードとして、エンジン1の停止若しくは始動の処理が完了するまでは、エンジン停止シーケンスのモード若しくはエンジン始動シーケンスのモードとなる。
【0047】
また、車両状態モード決定部21Eは、エンジン停止について判定する。本実施形態の車両状態モード決定部21Eでは、下記の条件のいずれかを満足すると、エンジン始動要求フラグをOFFにする。下記条件のいずれも満足しない場合には、エンジン始動要求フラグをONにする。
・アクセル開度APOが予め設定したエンジン停止開度以下
・ASL制御の作動時に、擬似アクセル開度VAPOが予め設定したエンジン停止開度以下
・自動制御要求トルク(目標駆動トルク)が予め設定したエンジン停止トルク以下
【0048】
但し、システム要求による停止禁止要求がある場合には、エンジン始動要求フラグをONとする。システム要求による停止禁止要求とは、例えばSOCが予め設定した値(SOC始動判定値)以下に低下している場合、水温が予め設定した温度以下の場合、モータジェネレータ2の許容回転数以上の車速などの場合である。
そして、エンジン始動要求フラグがOFFに設定された場合には、EVモードで無ければ、エンジン停止制御部21Gを作動する処理を実行する。
エンジン始動制御部21Fは、エンジン始動要求フラグがONに設定された場合に作動して、モータ走行中にエンジン1を始動する処理を実施してHEVモードへの移行処理を行う。
【0049】
具体的に、エンジン始動制御部21Fは、エンジン始動指令(エンジン始動要求フラグがON)を取得すると、まず第2クラッチ5を目標クラッチ伝達トルクにするための目標第2クラッチトルク指令を、ATコントローラ24に出力する。目標第2クラッチ伝達トルク指令は、エンジン始動処理前の出力トルク相当のトルクを伝達可能な伝達トルク指令であって、モータジェネレータ2が出力する駆動力を増大したとしても出力軸トルクに影響を与えない範囲とする。ここで、ATコントローラ24は、指令に応じたクラッチ油圧が発生するように第2クラッチ油圧ユニットを制御する。
【0050】
次に、エンジン始動制御部21Fは、モータコントローラ23に、モータジェネレータ2を回転数制御する指令を出力する。なお、モータジェネレータ2の実トルクはモータジェネレータ2に作用する負荷によって決定される。続いて、ATコントローラ24に対して、第1クラッチ4のトルク伝達トルクがエンジンクランキング用のトルクとなるトルク指令を出力する。続いて、エンジン回転数とモータ回転数とが同期したことを検知したら、クランキング処理の終了として第1クラッチ4を完全締結とする指令を出力する。第1クラッチ4の同期判定は、実モータ回転と実エンジン回転の差回転が規定値以下の状態が規定時間経過したときに同期したと判定する。規定値は第1クラッチ4のトルク制御中から完全締結移行時の応答無駄時間相当の差回転を設定する。さらに、エンジン回転数が始動可能回転数以上になったことを検知したら、エンジンコントローラ22に対してエンジン始動指令を出力する。
【0051】
エンジン停止制御部21Gは、エンジン停止指令(エンジン始動要求フラグがOFF)を取得すると起動し、エンジン走行から、エンジン1を停止してモータジェネレータ2を駆動するEVモードへの移行処理を行う。
具体的に、エンジン停止制御部21Gは、エンジン停止指令(エンジン始動要求フラグがOFF)を取得すると起動して、まず、ATコントローラ24に対して、第1クラッチ4を滑り締結する予め設定したトルク指令を出力する。同期をとって、モータコントローラ23に、モータジェネレータ2を回転数制御する指令を出力する。これによって、第1クラッチ4によるエンジン1からのトルクを減少しつつ、モータトルクを増大して、目標駆動トルクを得る。目標モータトルクが目標駆動トルクとなったら、第1クラッチ4を目標クラッチ伝達トルク=0にするための目標第1クラッチトルク指令を、ATコントローラ24に出力する。その後、エンジンコントローラ22に対して目標エンジントルクとしてゼロを出力する。これによって、エンジンは燃料カット(F/C)され、エンジンは空回りしている状態となる。
【0052】
目標エンジントルク算出部21Hは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、車速などの走行状態情報、目標駆動トルク、発電のために要求される要求エンジン発電トルクに基づき、目標エンジントルク(指令エンジントルク)を算出する。なお、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジントルクは不要であるので、目標エンジントルクは、ゼロ若しくは負値となっている。また、予め設定したF/C(燃料カット)条件を満足している場合には、エンジン1に対するF/Cが指示され、第1クラッチ4が開放状態の場合にエンジン1は無負荷状態で回転(空転)する状態となる。
【0053】
目標モータトルク算出部21Jは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、車速情報や第1クラッチ4の状態を示す情報などの走行状態情報、目標駆動トルク、要求発電トルクに基づき、目標モータトルクを算出する。具体的に、目標エンジントルクに遅れ補正(フィルタ処理)等を施して、推定エンジントルクを算出し、推定エンジントルクに第1クラッチ4の状態を反映して有効CL1トルクを算出する。そして、目標駆動トルクから、有効CL1トルクを減算した値を目標モータトルクとする。なお、他の制御部から回生ブレーキ要求トルク(<0)の入力がある場合には、目標モータトルクをその回生ブレーキ要求トルク分を足した値を最終的な目標モータトルク(指令MGトルク)とする。
【0054】
目標クラッチトルク算出部21Kは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、エンジン1及びモータジェネレータ2の発生トルクに基づき、第1クラッチ4及び第2クラッチ5の目標各クラッチトルクを算出する。なお、EVモード状態の場合には、ATコントローラ24に第1クラッチ4を開放する開放指令を出力すると共に、ATコントローラ24に第2クラッチ5の締結指令又はすべり締結指令を出力することで、第1クラッチ4を開放状態とすると共に、第2クラッチ5を締結状態又はすべり締結状態とする。また、HEVモード状態の場合には、ATコントローラ24に第1クラッチ4を締結する締結指令を出力すると共に、ATコントローラ24に第2クラッチ5の締結指令を出力することで、第1クラッチ4を締結状態とすると共に、第2クラッチ5を締結状態とする。また、エンジン始動若しくは停止処理の場合には、上述の締結開放状態となるクラッチトルクを算出する。
【0055】
(ASL制御を実施時の処理)
次に、図3に基づき、ASL制御を実施時の各種指令信号の流れについて説明する。
図3に示すように、車速リミッタトルク演算部21Ddは、運転者のステアリングスイッチ28の操作入力に応じて入力処理を実行する。具体的に、車速リミッタトルク演算部21Ddは、ステアリングスイッチ28内のメインスイッチの操作に応じてASL制御を起動する。ASL制御が起動すると、車速リミッタトルク演算部21Ddは、引き続き運転者のステアリングスイッチ28の操作に応じて入力されるリミッタ車速と、メータ35に表示されている速度の情報とに基づき、入力されたリミッタ車速に対して許可判定処理を実行する。そして、入力されたリミッタ車速が許可されると、このリミッタ車速を正式なリミッタ車速として設定し、該リミッタ車速と自車速とに基づき車速F/B制御を実行して、自車速がリミッタ車速以下となるように駆動源に要求する車速リミッタトルクを演算する。車速リミッタトルク演算部21Ddは、この車速リミッタトルクを最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
【0056】
一方、第1目標駆動トルク演算部21Dcでは、ドライバ要求トルク演算部21Daからのドライバ要求トルクと、自動制御要求トルク演算部21Dbからの自動制御要求トルクとのセレクトハイを実施する。そして、第1目標駆動トルク演算部21Dcは、ドライバ要求トルク及び自動制御要求トルクのうち大きい方のトルクを第1目標駆動トルクとして最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
最終目標駆動トルク演算部21Deは、車速リミッタトルクと、第1目標駆動トルクとのセレクトローを実施して、車速リミッタトルク及び第1目標駆動トルクのうち小さい方のトルクを目標駆動トルクとして決定する。
【0057】
従って、運転者のアクセルペダル33の操作に応じたドライバ要求トルク、又はオートクルーズ走行時の自動制御要求トルクのいずれかが、リミッタ車速を超えさせるようなトルク(車速リミッタトルクより大きいトルク)となる場合に、車速リミッタトルクが目標駆動トルクとして選択されることになる。このようにして選択された車速リミッタトルクにより、自車速をリミッタ車速以下に制限する。
【0058】
なお、擬似アクセル開度演算部21Lでは、目標駆動トルク(ドライバ要求トルク、車速リミッタトルク、自動制御要求トルクのいずれか)と入力軸回転数とから逆算して、アクセル開度を演算している。本実施形態では、このアクセル開度を擬似アクセル開度VAPOと称して、アクセルペダル33の操作に応じてアクセルセンサ20で検出されるアクセル開度APOと区別する。
【0059】
(各指令値の算出処理)
次に、図7及び図8に基づき、統合コントローラ21において行われる各指令値の算出処理の処理手順を説明する。
ここで、図7は、走行制御における各指令値の算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図8は、ベーストルクMapの一例を示す図である。
但し、図7の例では、オートクルーズ走行制御を実施していない場合の処理手順となる。また、各指令値の算出処理は、所定周期で繰り返し実行される処理である。
統合コントローラ21において、プログラムが実行され、各指令値の算出処理が実行されると、図7に示すように、まず、ステップS100に移行する。
【0060】
ステップS100では、統合コントローラ21において、各種センサ、各コントローラからデータを受信して、ステップS102に移行する。
ステップS102では、目標駆動トルク演算部21Dのドライバ要求トルク演算部21Daにおいて、ドライバ要求トルクを算出して、ステップS104に移行する。
具体的に、アクセルセンサ20からのアクセル開度APOと、MG回転センサ11又はAT入力回転センサ12からの入力軸回転数とに基づき、図8に例示したベーストルクMapから該当する駆動トルクを、ドライバ要求トルクのベースとなるトルク(基本ドライバ要求トルク)として選択する。図8において、横軸が入力軸回転数、縦軸が駆動トルク、斜め軸がアクセル開度である。つまり、図8に示すように、現在のアクセル開度APOと、現在の入力軸回転数とからこれらに該当する駆動トルクを基本ドライバ要求トルクとして選択する。
【0061】
そして、この選択した基本ドライバ要求トルクを、クリープ・コースト駆動力Table、MGアシストトルクMapからの各補正トルクに基づき補正して、最終的なドライバ要求トルクを算出する。ドライバ要求トルク演算部21Daは、算出したドライバ要求トルクを、第1目標駆動トルク演算部21Dcに出力する。なお、第1目標駆動トルク演算部21Dcは、オートクルーズ走行制御を実施していない場合に、ドライバ要求トルクを、最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
【0062】
ステップS104では、車速リミッタトルク演算部において、後述するASL作動フラグに基づき、ASL制御が作動しているか否かを判定する。そして、ASL制御が作動していると判定した場合(Yes)は、ステップS106に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS112に移行する。
ステップS106に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、車速リミッタトルクの算出処理を実行し、算出した車速リミッタトルクを最終目標駆動トルク演算部21Deに出力して、ステップS108に移行する。
【0063】
ステップS108では、最終目標駆動トルク演算部21Deにおいて、ドライバ要求トルク(第1目標駆動トルク)と、車速リミッタトルクとのセレクトローを実施し、小さい方のトルクを目標駆動トルクに決定して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、擬似アクセル開度演算部21Lにおいて、擬似アクセル開度VAPOの算出処理を実行し、算出した擬似アクセル開度VAPOを、車両状態モード決定部21E及びATコントローラ24にそれぞれ出力して、ステップS114に移行する。
【0064】
一方、ステップS104において、ASL制御が作動していないと判定して、ステップS112に移行した場合は、最終目標駆動トルク演算部21Deにおいて、ドライバ要求トルクを目標駆動トルクに決定して、ステップS114に移行する。
ステップS114では、最終目標駆動トルク演算部21Deにおいて、目標駆動トルクを補正して、補正後の目標駆動トルクを、車両状態モード決定部21E、目標エンジントルク算出部21H、目標モータトルク算出部21J及び擬似アクセル開度演算部21Lにそれぞれ出力して、ステップS116に移行する。
【0065】
ステップS116では、車両状態モード決定部21Eにおいて、要求エンジン発電トルク、モータ出力可能トルク、目標駆動トルク等に基づき、車両状態モードの生成処理を実行する。そして、生成した車両状態モードを、目標エンジントルク算出部21H、目標モータトルク算出部21J、目標クラッチトルク算出部21K、エンジン始動制御部21F及びエンジン停止制御部21Gにそれぞれ出力して、ステップS118に移行する。
【0066】
ステップS118では、要求発電トルクベース演算部21Aにおいて、バッテリコントローラ26からのSOCに基づき目標発電電力を算出し、算出した目標発電電力から要求発電トルクべースを算出する。そして、算出した要求発電トルクベースを、要求エンジン発電トルク演算部21B及び目標モータトルク算出部21Jにそれぞれ出力して、ステップS120に移行する。
具体的に、目標発電電力と入力軸回転数とからトルク換算して要求発電トルクベースを算出する。
ステップS120では、目標モータトルク算出部21Jにおいて、車両状態モードと、MG回転センサ11又はAT入力回転センサ12からの入力軸回転数と、AT出力回転センサ13からの出力軸回転数とに基づき、目標モータ回転数を算出して、ステップS122に移行する。
【0067】
ステップS122では、要求エンジン発電トルク演算部21Bにおいて、車両状態、要求発電トルクベース等に基づき、目標発電電力をモータジェネレータ2で発電するためのエンジン1で発生すべき要求エンジン発電トルクを算出する。そして、算出した要求エンジン発電トルクを、車両状態モード決定部21E及び目標エンジントルク算出部21Hにそれぞれ出力して、ステップS124に移行する。
【0068】
ステップS124では、目標エンジントルク算出部21Hにおいて、車両状態モードに基づき、エンジン1が運転状態か否かを判定する。そして、運転状態であると判定した場合は、コーストF/C条件を満足していないと判定して、ステップS126に移行する。
一方、エンジン1が運転状態ではないと判定した場合は、コーストF/C条件を満足していると判定して、エンジンコントローラ22に対して、コーストF/C指令を出力して、ステップS126に移行する。
【0069】
ステップS126では、目標エンジントルク算出部21Hにおいて、目標エンジントルクを算出し、算出した目標エンジントルクをエンジンコントローラ22及び目標モータトルク算出部21Jにそれぞれ出力して、ステップS128に移行する。
具体的に、目標エンジントルク算出部21Hは、ステップS114で算出した目標駆動トルクに、ステップS122で算出した要求エンジン発電トルクを加算して、エンジントルクを算出し、このエンジントルクを補正して、目標エンジントルクを生成する。なお、車両状態モードがエンジン運転状態ではない場合は、目標エンジントルクが「0」又はマイナス値となる。この場合は、コーストF/C指令がエンジンコントローラ22に出力される。
【0070】
ステップS128では、目標モータトルク算出部21Jにおいて、ステップS126で算出した目標エンジントルクに対してフィルタリング処理による遅れ補正処理等を行って、推定エンジントルクを算出して、ステップS130に移行する。
ステップS130では、目標モータトルク算出部21Jにおいて、ステップS114で算出した目標駆動トルクに対して第1クラッチ4の状態を反映して、有効CL1トルクを算出し、ステップS132に移行する。
【0071】
ステップS132では、目標モータトルク算出部21Jにおいて、ステップS114で算出した目標駆動トルクから、ステップS130で算出した有効CL1トルクを減算してモータトルクを算出する。更に、算出したモータトルクを補正して、目標モータトルクを生成して、ステップS134に移行する。
ステップS134では、目標クラッチトルク算出部21Kにおいて、目標駆動トルクから算出してなる目標入力トルクに基づき、第2クラッチ5の目標クラッチトルクである目標CL2トルクを算出して、ステップS136に移行する。
【0072】
ステップS136では、目標クラッチトルク算出部21Kにおいて、目標入力トルクと、AT入力軸回転数とに基づき、第1クラッチ4の目標クラッチトルクである目標CL1トルクを算出して、ステップS138に移行する。
ステップS138では、統合コントローラ21において、CAN通信線を介して、擬似アクセル開度、目標エンジントルク、目標モータトルク、目標CL1トルク、目標CL2トルクなどの各算出した指令値を各対応するコントローラに送信して、一連の処理を終了する。
【0073】
(リミッタ車速及びASL作動フラグの設定処理)
次に、図9に基づき、運転者のステアリングスイッチ28の操作に応じた、車速リミッタトルク演算部21Ddにおけるリミッタ車速及びASL作動フラグの設定処理の処理手順について説明する。
ここで、図9は、リミッタ車速及びASL作動フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
統合コントローラ21において、プログラムが実行され、リミッタ車速及びASL作動フラグの設定処理が実行されると、図9に示すように、まず、ステップS200に移行する。
【0074】
ステップS200では、目標駆動トルク演算部21Dの車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ステアリングスイッチ28内のメインスイッチがON操作されたか否かを判定する。そして、メインスイッチがON操作されたと判定した場合(Yes)は、ステップS202に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ON操作されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS202に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASL制御を開始すると共に、ASL作動フラグをONに設定して、ステップS204に移行する。
【0075】
ステップS204では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ステアリングスイッチ28内の車速用セットスイッチの操作入力があったか否かを判定する。そして、操作入力があったと判定した場合(Yes)は、ステップS206に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS210に移行する。
ステップS206に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、操作入力された速度情報に応じて、許可判定処理を実行し、判定結果に基づきリミッタ車速の増速又は減速処理等を実行して、ステップS208に移行する。
【0076】
本実施形態では、車速用セットスイッチとして、現在の車速をリミッタ車速として設定するセットスイッチの他、上述したように、タップアップスイッチ(+1km/h)、タップダウンスイッチ(−1km/h)、アクセラレータスイッチ(+10km/h)、コーストスイッチ(−10km/h)がある。これらのスイッチを、運転者が操作することによって、リミッタ車速の増速及び減速を行うことができる。具体的に、各スイッチを1回操作するごとに、括弧内の数値で示される速度の増速(+の場合)、減速(−の場合)が行われる。
【0077】
なお、本実施形態では、自車速度と、操作入力された増速量又は減速量とに基づき、予め設定された閾値速度を超える速度(あるいは速度変化量)がリミッタ車速として設定された場合は、リミッタ車速の変更を不許可とする。
ステップS208では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ステップS206の判定結果及び操作入力に応じた車速をリミッタ車速として確定し、確定したリミッタ車速をASL制御に用いる車速として設定して、ステップS204に移行する。
【0078】
一方、ステップS204において、車速用セットスイッチの操作入力が無いと判定され、ステップS210に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASL制御のキャンセル操作入力があったか否かを判定する。そして、キャンセル操作入力があったと判定した場合(Yes)は、ステップS212に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS204に移行する。
ステップS212に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASL制御が作動中の場合は、ASL制御を終了すると共に、ASL作動フラグをOFFに設定して、ステップS200に移行する。
【0079】
(車速リミッタトルク算出処理)
次に、図10に基づき、上記ステップS106における車速リミッタトルクの算出処理の処理手順を説明する。
ここで、図10は、車速リミッタトルクの算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS106において、車速リミッタトルクの算出処理が実行されると、図10に示すように、まず、ステップS300に移行する。
ステップS300では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、設定したリミッタ車速VLと自車速Vとを取得して、ステップS302に移行する。
【0080】
ステップS302では、リミッタ車速VLから自車速Vを減算して、車速偏差ΔVを算出して、ステップS304に移行する。
ステップS304では、ステップS302で算出した車速偏差ΔVに基づき、リミッタ車速を目標車速とした車速F/B制御を実行して、自車速Vがリミッタ車速VLを超えないような車速リミッタトルクTLを算出して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0081】
(擬似アクセル開度算出処理)
次に、図11及び図12に基づき、上記ステップS110における擬似アクセル開度の算出処理の処理手順について説明する。
ここで、図11は、擬似アクセル開度の算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図12は、擬似アクセル開度Mapの一例を示す図である。
ステップS110において、擬似アクセル開度算出処理が実行されると、図11に示すように、まず、ステップS400に移行する。
【0082】
ステップS400では、擬似アクセル開度演算部21Lにおいて、ASL作動フラグに基づき、ASL制御が作動しているか否かを判定する。そして、作動していると判定した場合(Yes)は、ステップS402に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS406に移行する。
ステップS402に移行した場合は、擬似アクセル開度演算部21Lにおいて、最終目標駆動トルク演算部21Deからの目標駆動トルクTrと、MG回転センサ11又はAT入力回転センサ12からの入力軸回転数Riとを取得して、ステップS404に移行する。
【0083】
ステップS404では、擬似アクセル開度演算部21Lにおいて、目標駆動トルクTrと、入力軸回転数Riとから逆算して、擬似アクセル開度VAPOを算出し、該算出した擬似アクセル開度VAPOを設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
具体的に、擬似アクセル開度VAPOの算出処理は、図12に示すように、擬似アクセル開度Map上における、取得した目標駆動トルクTrと入力軸回転数Riとの交点に対応するアクセル開度を選択する処理となる。なお、図12において、横軸が入力軸回転数、縦軸が駆動トルク、斜め軸が擬似アクセル開度VAPOとなる。
【0084】
図12に示すように、ASL制御が作動して、車速リミッタトルクによる目標駆動トルクの制限が行われている場合は、現在の入力軸回転数と制限された目標駆動トルクとに対応するアクセル開度が擬似アクセル開度VAPOとして算出(選択)される。
一方、ステップS400において、ASL制御が作動していないと判定され、ステップS406に移行した場合は、擬似アクセル開度VAPOとして、アクセルセンサ20によって検出されたアクセル開度APO(以下、アクセルペダル開度APOと称す)を設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0085】
(アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理)
次に、図13に基づき、ステップS116の車両状態モードの生成処理において実行される、アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理の処理手順について説明する。
ここで、図13は、アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS116において、アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理が実行されると、図13に示すように、まず、ステップS500に移行する。
【0086】
ステップS500では、車両状態モード決定部21Eにおいて、ASL作動フラグに基づき、ASL制御が作動しているか否かを判定する。そして、ASL制御が作動していると判定した場合(Yes)は、ステップS502に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS508に移行する。
ステップS502に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、アクセルペダル開度APOが擬似アクセル開度VAPOよりも大きいか否かを判定する。そして、大きいと判定した場合(Yes)は、ステップS504に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS506に移行する。
【0087】
ステップS504に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度を擬似アクセル開度VAPOに設定して、ステップS510に移行する。
また、ステップS506に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度をアクセルペダル開度APOに設定して、ステップS510に移行する。
一方、ステップS500において、ASL制御が作動していないと判定され、ステップS508に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度をアクセルペダル開度APOに設定して、ステップS510に移行する。
【0088】
ステップS510では、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度に対応するエンジン始動判定値を算出して、ステップS512に移行する。
ここで、アクセル開度に対応するエンジン始動判定値は、判定用アクセル開度と比較される値であって、エンジンの始動判定に用いられる値である。
ステップS512では、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度に対応するエンジン停止判定値を算出して、ステップS514に移行する。
【0089】
ここで、アクセル開度に対応するエンジン停止判定値は、判定用アクセル開度と比較される値であって、エンジンの停止判定に用いられる値である。
ステップS514では、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度がエンジン始動判定値以下であるか否かを判定する。そして、エンジン始動判定値以下であると判定した場合(Yes)は、ステップS516に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS518に移行する。
【0090】
ステップS516に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、アクセルエンジン始動要求フラグをONに設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
ここで、アクセルエンジン始動要求フラグとは、アクセル開度に基づくエンジンの始動・停止判定において、ON(例えば、判定値では「1」)に設定された場合にエンジンを始動する判定結果を示し、OFF(例えば、判定値では「0」)に設定された場合にエンジンを停止する判定結果を示すフラグである。
【0091】
一方、ステップS518に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、判定用アクセル開度がエンジン停止判定値よりも小さいか否かを判定する。そして、エンジン始動停止判定値よりも小さいと判定した場合(Yes)は、ステップS520に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS522に移行する。
ステップS520に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、アクセルエンジン始動要求フラグをOFFに設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
一方、ステップS522に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、アクセルエンジン始動要求フラグを前回値に保持して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0092】
(車両状態モード生成処理)
次に、図14に基づき、ステップS116において実行される車両状態モード生成処理の具体的な処理手順について説明する。
ここで、図14は、車両状態モード生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS116において、車両状態モード生成処理が開始されると、図14に示すように、まず、ステップS600に移行する。
ステップS600では、車両状態モード決定部21Eにおいて、各種エンジン始動要求フラグの設定処理を実行して、各種フラグを設定し、ステップS602に移行する。
【0093】
本実施形態において、上記ステップS600では、上記したアクセルエンジン始動要求フラグの設定処理の他、クルーズエンジン始動要求フラグの設定処理、システムエンジン始動要求フラグの設定処理が実行される。
ここで、クルーズエンジン始動要求フラグの設定処理は、オートクルーズ走行制御時における目標駆動トルクである、クルーズ要求トルクや、ACC要求トルクなどに基づき設定されるエンジンの始動・停止を判定するためのフラグである。具体的に、アクセルエンジン始動要求フラグと同様に、各トルクとエンジン始動判定値及びエンジン停止判定値との比較処理等を行う。そして、始動条件を満たしている場合に、クルーズエンジン始動要求フラグをONに設定し、停止条件を満たしている場合に、クルーズエンジン始動要求フラグをOFFに設定する。
【0094】
また、システムエンジン始動要求フラグの設定処理は、上述したシステム要求による停止禁止要求等に基づいて設定される、エンジンの始動・停止を判定するためのフラグである。具体的に、システムからの停止禁止要求がある場合は、システムエンジン始動要求フラグをONに設定する。また、システムからの停止禁止要求が無い場合は、システムエンジン始動要求フラグをOFFに設定する。
【0095】
ステップS602では、車両状態モード決定部21Eにおいて、条件[1]が成立したか否かを判定し、成立したと判定した場合(Yes)は、ステップS604に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS606に移行する。
即ち、条件[1]である、下記(1)〜(4)のいずれか1が成立したか否かを判定する。(1)アクセルエンジン始動要求フラグ=ON
(2)システムエンジン始動要求フラグ=ON
(3)クルーズエンジン始動要求フラグ=ON
そして、上記条件[1]の(1)〜(3)のいずれか1が成立している場合は、ステップS604に移行する。一方、条件[1]の(1)〜(3)のいずれも成立していない場合は、ステップS606に移行する。
【0096】
ステップS604に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、エンジン始動要求フラグをONに設定して、ステップS608に移行する。
ここで、エンジン始動要求フラグは、最終的にエンジンの始動・停止の判定を行うためのフラグであり、ONに設定された場合にエンジンを始動する判定結果を示し、OFFに設定された場合にエンジンを停止する判定結果を示す。
【0097】
一方、ステップS606に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、エンジン始動要求フラグをOFFに設定して、ステップS608に移行する。
ステップS608では、車両状態モード決定部21Eにおいて、現在の車両状態や、エンジン始動要求フラグ等に基づき、車両状態モードを生成して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0098】
本実施形態では、例えば、現在の車両状態モードがEV走行モードであってエンジンが停止状態のときに、エンジン始動要求フラグがONに設定された場合は、車両状態モードとして、エンジン始動シーケンスモードを生成する。また、例えば、現在の車両状態モードがHEV走行モードであって、エンジンが運転状態のときに、エンジン始動要求フラグがOFFに設定された場合は、車両状態モードとして、エンジン停止シーケンスモードが生成される。そして、これら生成された車両状態モードに基づき、エンジン始動制御部21F又はエンジン停止制御部21Gが制御され、各車両状態モードへと遷移する。
【0099】
(動作)
次に、図15及び図16に基づき、本実施形態の動作を説明する。
ここで、図15は、従来のASL制御の作動中におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。また、図16は、本発明のASL制御の作動中におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【0100】
従来は、運転者のアクセルペダル33の踏み込み操作に応じて、アクセル開度APOが上昇し、図15中(5)の実線部に示すように、アクセル開度APOがエンジン始動判定値を超えることで、図15中(7)に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグがON(Highレベル)となる。これにより、エンジン1が始動して、図15中(9)に示すように、エンジン回転数が上昇する。そして、エンジン1の始動によって、図15中(1)の実線部に示すように、車速が上昇していくと、図15中(4)に示すように、車速の上昇に応じて車速リミッタトルクが低下していく。ASL制御が作動中であるため、車速の上昇に応じて車速リミッタトルクが低下していき、やがてドライバ要求トルクよりも小さくなると、車速リミッタトルクが目標駆動トルクとして選択される。このように、ASL制御が作動中は、アクセルペダル33の踏み込み量(アクセルペダル開度APO)に対して、車速がリミッタ車速を超えないように、車速リミッタトルクによる車速制限制御が行われる。
【0101】
なお、図15に示す例では、運転者によるアクセルペダル33の操作に応じたアクセルペダル開度APOは、図15中(5)の点線部に示すように変化しており、これに伴ってドライバ要求トルクが、図15中(3)の点線部に示すように変化する。このような状況において、もしASL制御が作動しない場合は、車速は図15中(1)の点線部に示すように、リミッタ車速を超えて上昇していくことになる。
【0102】
一方、車速リミッタトルクがドライバ要求トルクよりも小さくなると、車速リミッタトルクが低下していくことによって、擬似アクセル開度VAPOも低下していき、図15中(6)に示すように、擬似アクセル開度VAPOは、やがてエンジン停止判定値以下となる。その後、ASL制御によって、車速がリミッタ車速に収束すると、図15中(4)に示すように、車速リミッタトルクがドライバ要求トルクよりも小さい状態で一定値となる。これにより、図15中(6)に示すように、擬似アクセル開度VAPOがエンジン停止判定値よりも小さい値で一定となる。このような状況は、走行抵抗R/Lが低くなっていることを示す。つまり、エンジン1を停止すること(EV走行)が可能な状態となっていることを示す。従って、このような状況においては、図15中(8)の点線部に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグをOFF(Lowレベル)に設定し、図15中(10)の点線部に示すように、エンジン1を停止することが望ましい。
【0103】
しかし、従来は、アクセルエンジン始動要求フラグは、アクセルペダル開度APOに基づき設定される。そのため、上記したように、ASL制御によって、走行抵抗R/Lが低い状態となっていても、アクセルペダル開度APOが、図15中(5)の点線部に示すように、エンジン始動判定値を超えている状況では、図15中(7)に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグはONのままとなる。
【0104】
図15の例では、実際の自車速である実車速(ここではリミッタ車速)に対してアクセルペダル33の踏み込み操作量が大きくなっている。このような場合に、従来のアクセルエンジン始動要求フラグの設定処理では、実際はエンジン1を停止できる走行状態になっていてもエンジン1の運転状態を継続してしまうといった状況が発生する。
これに対して、本実施形態に係るアクセルエンジン始動要求フラグの設定処理では、上記従来の問題点を解決するために、以下のように処理が行われる。
【0105】
いま、運転者のアクセルペダル33の踏み込み操作に応じて、図16中(5)の実線部に示すように、アクセルペダル開度APOが0[deg]から上昇を開始したとする。ASL制御が作動中においては、図16中(3)の点線部及び(4)の実線部に示すように、ドライバ要求トルクが車速リミッタトルクよりも小さい間は、ドライバ要求トルクが目標駆動トルクとなる(ステップS402〜S404)。
【0106】
ここで、ASL制御が作動中(ステップS400の「Yes」)において、ドライバ要求トルクが車速リミッタトルクよりも小さい間は、擬似アクセル開度VAPOは、ドライバ要求トルクから逆算して求められる(ステップS402〜S404)。そのため、図16中(5)及び(6)の実線で重なっている部分に示すように、アクセルペダル開度APO及び擬似アクセル開度VAPOは同じ値(あるいは近い値)となる期間が生じる。
【0107】
引き続き、アクセルペダル開度APOが上昇していくと、本実施形態では、ASL制御の作動中は、アクセルペダル開度APOが擬似アクセル開度以下のときは(ステップS502の「No」)、アクセルエンジン始動要求フラグ設定時の判定に用いる判定用アクセル開度として、アクセルペダル開度APOが設定される(ステップS506)。一方、アクセルペダル開度APOが擬似アクセル開度よりも大きいときは(ステップS502の「Yes」)、判定用アクセル開度として擬似アクセル開度APOが設定される(ステップS504)。
【0108】
図16中(5)及び(6)の実線部に示すように、判定用アクセル開度としていずれが設定されても、判定用アクセル開度は、エンジン始動判定値以上へと遷移するため(ステップS514の「Yes」)、アクセルエンジン始動要求フラグはONに設定される(ステップS516)。これにより、エンジン1が始動し、図16中(10)の実線部に示すように、エンジン回転数が上昇する。
一方、アクセルペダル開度APOが上昇していくと、図16中(1)の実線部に示すように、車速が上昇するため、図16中(4)の点線部に示すように、車速の上昇途中において車速リミッタトルクが低下を開始する。
【0109】
引き続き、図16中(5)の点線部に示すように、アクセルペダル開度APOは上昇を続け、その後一定となる。これにより、図16中(3)の実線部に示すように、ドライバ要求トルクも上昇の後に一定となる。これにより、ドライバ要求トルクが車速リミッタトルクよりも小さい間は、図16中(6)に示すように、擬似アクセル開度VAPOも一定となる。この一定となる期間において、擬似アクセル開度VAPOは、アクセルペダル開度APOよりも小さい値となるため(ステップS502の「Yes」)、判定用アクセル開度として、擬似アクセル開度VAPOが設定される(ステップS504)。但し、判定用アクセル開度がエンジン始動判定値以上の値となっているため(ステップS514の「Yes」)、アクセルエンジン始動要求フラグはONのままとなる(ステップS516)。
【0110】
引き続き、車速が上昇していくと、車速リミッタトルクが低下していき、図16中(4)の実線部に示すように、やがて車速リミッタトルクがドライバ要求トルクを下回る。これにより、目標駆動トルクが車速リミッタトルクとなる。車速リミッタトルクがドライバ要求トルクよりも小さい間は、図16中(4)及び(6)の実線部に示すように、車速リミッタトルクが小さくなればなるほど、擬似アクセル開度VAPOも小さくなる。図16の例では、車速リミッタトルクが、ドライバ要求トルクより小さくなった後も、図16中(4)の実線部に示すように低下していくため、これに伴い、図16中(6)に示すように、擬似アクセル開度VAPOも低下していく。これにより、判定用アクセル開度(擬似アクセル開度VAPO)が、まずエンジン始動判定値よりも小さくなる(ステップS514の「No」)。判定用アクセル開度(擬似アクセル開度VAPO)は、引き続き低下を続け、やがてエンジン停止判定値よりも小さくなる(ステップS518の「Yes」)。
【0111】
その後、判定用アクセル開度(擬似アクセル開度VAPO)は、図16中(6)に示すように、エンジン始動判定値よりも小さい状態で一定となる。
一方、アクセルペダル開度APOは、図16中(5)の点線部に示すように、エンジン始動判定値よりも大きな値のまま推移する。
本実施形態では、上述したように、擬似アクセル開度VAPOがアクセルペダル開度APOよりも小さくなる期間は、判定用アクセル開度として、擬似アクセル開度VAPOを用いる。従って、擬似アクセル開度VAPOが、エンジン停止判定値以下となると、図16中(8)に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグをONの状態からOFFの状態へと設定変更する(ステップS520)。これにより、擬似アクセル開度VAPOがエンジン始動判定値よりも小さい状態で一定となる状況、即ち走行抵抗R/Lがエンジン1を停止可能な軽負荷となる状況において、エンジン1を停止することができる。
【0112】
ここで、モータジェネレータ2は、「モータ」に対応し、ステアリングスイッチ28、車速リミッタトルク演算部21Ddは、「上限速度設定手段」に対応し、車速リミッタトルク演算部21Ddは、「車速制限トルク算出手段」に対応する。
また、擬似アクセル開度演算部21Lは、「擬似アクセル開度算出手段」に対応し、車両状態モード決定部21Eは、「エンジン始動停止判定手段」に対応し、エンジン始動制御部21F及びエンジン停止制御部21Gは、「エンジン駆動制御手段」に対応する。
また、リミッタ車速は、「上限速度」に対応し、車速リミッタトルクは、「車速制限トルク」に対応し、ASL制御は、「車速制限制御」に対応する。
【0113】
(第1実施形態の作用効果)
(1)上限速度設定手段が、ハイブリッド車両の上限速度を設定する。車速制限手段が、ハイブリッド車両の走行速度を、設定した上限速度以下に制限する車速制限制御を行う。車速制限トルク算出手段が、車速制限制御を実施しているときに、上限速度とハイブリッド車両の走行速度とに基づき、車速制限時に駆動源に要求する駆動トルクである車速制限トルクを算出する。擬似アクセル開度算出手段が、車速制限トルクに基づき、該車速制限トルクに対応するアクセル開度である擬似アクセル開度を算出する。エンジン始動停止判定手段が、運転者のアクセルペダルの操作に応じて検出されるアクセル開度であるアクセルペダル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。エンジン始動停止制御手段が、エンジン始動停止判定手段の判定結果に基づきエンジンの始動及び停止を制御する。そして、エンジン始動停止判定手段が、車速制限制御を実施しているときに、擬似アクセル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。
【0114】
つまり、車速制限制御が実施されているときは、アクセルペダル開度だけでは無く、擬似アクセル開度にも基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することができる。
例えば、設定した上限速度に対してアクセルペダルが深めに踏み込まれた場合のアクセルペダル開度に対して、車速制限トルクによって、走行速度が上限速度に制限されているとする。このときに、擬似アクセル開度は、設定された上限速度での定速走行中において比較的低い開度で一定となる。そして、走行抵抗R/Lが軽負荷となり、エンジンを停止可能な状態となったとする。
このような状況において、擬似アクセル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することができるので、車速制限制御の実施中において、不要なエンジン運転状態の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0115】
(2)車速制限制御を実施しているときに、エンジン始動停止判定手段が、アクセルペダル開度と擬似アクセル開度とのうち、小さい方の開度に基づき、エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。
例えば、アクセルペダル開度の上昇に応じて車速が上昇し上限速度へと近づいていくと、車速リミッタトルクは、車速を上限速度以下に制限するために車速の上昇に応じて下降していく。車速リミッタトルクが下降すると、該下降に応じて擬似アクセル開度も下降する。
つまり、車速リミッタトルクによって、車速が上限速度に制限されている状況において、アクセルペダル開度が擬似アクセル開度よりも大きくなっている場合に、擬似アクセル開度に基づき、エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することができる。
【0116】
一方で、車速が上限速度に近づく前において、アクセルペダル開度が擬似アクセル開度よりも小さくなっている場合は、アクセルペダル開度に基づき、エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することができる。
これによって、状況に応じた適切な開度に基づき、エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することができるので、車速制限制御の実施中において、不要なエンジン運転状態の発生を適切に抑制することができるという効果が得られる。
【0117】
(3)エンジン及びモータを駆動源とするハイブリッド車両が車速制限制御を実施しているときに、車速制限時に駆動源に要求する駆動トルクである車速制限トルクに対応するアクセル開度である擬似アクセル開度に基づきエンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定する。
これによって、車速制限制御の実施中において、不要なエンジン運転状態の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0118】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づき説明する。図17〜図24は、本発明に係る車両用走行制御装置及び車両用走行制御方法の第2実施形態を示す図である。
本実施形態は、上記第1実施形態の車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、以下に挙げる点が異なる。
まず、ASL制御が作動中に、ステアリングスイッチ28内のタップダウンスイッチによって、リミッタ車速が減速設定されたときに、減速設定されてから車速がリミッタ車速の近傍となるまでの期間はエンジンの停止を禁止する制御を行う点が異なる。
次に、ASL制御が作動中に、リミッタ車速が、タップダウンスイッチによって減速設定されてから所定時間を経過するまでの期間はエンジンの停止を禁止する制御を行う点が異なる。
【0119】
具体的に、本実施形態では、タップダウンスイッチによって減速設定されてから車速がリミッタ車速の近傍となったか否かを判定するためのフラグ(以下、リミッタ車速近傍判定フラグと称す)の設定処理が加わる。更に、減速設定されてからの経過時間の測定処理及び経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する処理が加わる。更に、リミッタ車速近傍判定フラグ及び経過時間の判定結果に基づく、ASL制御の作動時におけるタップダウンスイッチによる減速設定時にエンジンの停止(IdleStop(I/S))を禁止するか否かを判定するためのフラグを設定する処理が加わる。以下、このフラグを、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグと称す。そして、エンジン始動要求フラグの設定時において、上記第1実施形態で用いた条件[1]の(1)〜(3)のフラグに加えて、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグを判定に用いる。それ以外の構成は、上記第1実施形態と同様となる。
【0120】
以下、上記第1実施形態と異なる部分を詳細に説明し、同じ部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
(ASL制御を実行時の処理)
まず、図17及び図18に基づき、本実施形態のASL制御を実行時の各種指令値の流れを説明する。
ここで、図17は、本実施形態の統合コントローラ21のASL制御を実行時の各種処理の流れを示す第1の概要構成図を例示するものである。また、図18は、本実施形態の統合コントローラ21のASL制御を実行時の各種処理の流れを示す第2の概要構成図を例示するものである。なお、図17及び図18は、オートクルーズ走行制御を非実行時の簡略構成図となっている。
【0121】
車速リミッタトルク演算部21Ddは、上記第1実施形態と同様に、ステアリングスイッチ28内のメインスイッチのON操作に応じて、ASL制御の作動を開始すると共に、ASL作動フラグをONに設定する。また、メインスイッチのOFF操作又はキャンセルスイッチの操作に応じてASL制御の作動を終了すると共に、ASL作動フラグをOFFに設定する。
【0122】
車速リミッタトルク演算部21Ddは、ASL制御を開始すると、図17に示すように、運転者のステアリングスイッチ28の操作に応じて入力されるリミッタ車速と、メータ35に表示されている速度の情報とに基づき、入力されたリミッタ車速に対して許可判定処理を実行する。そして、入力されたリミッタ車速が許可されると、このリミッタ車速を正式なリミッタ車速として設定し、該リミッタ車速と自車速とに基づき車速F/B制御を実行して、自車速がリミッタ車速を超えないように駆動源に要求する車速リミッタトルクを演算する。本実施形態において、車速リミッタトルク演算部21Ddは、この車速リミッタトルクを、最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
【0123】
また、車速リミッタトルク演算部21Ddは、ASL制御の作動中において、運転者のタップダウンスイッチの操作によるリミッタ車速の減速設定が行われた場合に、ASLタップダウン要求フラグの設定処理を実行する。また、運転者のコーストスイッチの操作によるリミッタ車速の減速設定が行われた場合に、ASLコースト判定フラグの設定処理を実行する。また、運転者のタップアップスイッチ又はアクセラレータスイッチの操作によるリミッタ車速の増速設定が行われた場合に、ASL加速要求フラグの設定処理を実行する。
【0124】
本実施形態において、ASLタップダウン要求フラグは、ONに設定された場合に、タップダウンスイッチによる減速要求があることを示し、OFFに設定された場合に、タップダウンスイッチによる減速要求が無いことを示すフラグである。なお、ASLタップダウン要求フラグとして、タップダウンスイッチを操作時の出力信号そのものを用いることが可能である。
また、ASLコースト判定フラグは、ONに設定された場合に、コーストスイッチによる減速要求があることを示し、OFFに設定された場合に、コーストスイッチによる減速要求が無いことを示すフラグである。なお、ASLコースト判定フラグとして、コーストスイッチを操作時の出力信号そのものを用いることが可能である。
【0125】
また、ASL加速要求フラグは、ONに設定された場合に、タップアップスイッチ又はアクセラレータスイッチによる加速要求があることを示し、OFFに設定された場合に、タップアップスイッチ又はアクセラレータスイッチによる加速要求が無いことを示すフラグである。なお、ASL加速要求フラグとして、タップアップスイッチ又はアクセラレータスイッチを操作時の出力信号そのものを用いることが可能である。
【0126】
更に、車速リミッタトルク演算部21Ddは、ASLタップダウン要求フラグがONになったことに応じて、リミッタ車速近傍判定フラグの設定、タップダウンスイッチによる減速要求の入力が行われてからの経過時間の計測等を実行する。
ここで、リミッタ車速近傍判定フラグは、ONに設定された場合に、実車速がリミッタ車速の近傍になったことを示し、OFFに設定された場合に、実車速がリミッタ車速の近傍では無いことを示すフラグである。
【0127】
更に、車速リミッタトルク演算部21Ddは、ASL作動フラグ、車速リミッタトルク、リミッタ車速近傍判定フラグ、上記計測した経過時間の情報、タップアップスイッチ、ASL加速要求フラグ等に基づき、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理を実行する。そして、車速リミッタトルク演算部21Ddは、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグを、車両状態モード決定部21Eに出力する。
【0128】
ここで、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグとは、ASL制御の作動時において、ONに設定された場合は、エンジンの停止(I/S)を禁止する判定結果を示し、OFFに設定された場合は、エンジンの停止を許可する判定結果を示すフラグである。
一方、第1目標駆動トルク演算部21Dcでは、オートクルーズ走行制御が非実行時において、ドライバ要求トルク演算部21Daからのドライバ要求トルクを第1目標駆動トルクとして最終目標駆動トルク演算部21Deに出力する。
【0129】
最終目標駆動トルク演算部21Deは、車速リミッタトルクと、ドライバ要求トルクとのセレクトローを実施して、車速リミッタトルク及びドライバ要求トルクのうち小さい方のトルクを目標駆動トルクとして決定する。最終目標駆動トルク演算部21Deは、この目標駆動トルクを補正し、補正後の目標駆動トルクを、車両状態モード決定部21E及び目標エンジントルク算出部21Hにそれぞれ出力する。
また、擬似アクセル開度演算部21Lでは、上記第1実施形態と同様に、目標駆動トルクと入力軸回転数とから逆算して、擬似アクセル開度VAPOを算出する。そして、擬似アクセル開度演算部21Lは、擬似アクセル開度VAPOを、ATコントローラ24及び車両状態モード決定部21Eにそれぞれ出力する。
【0130】
車両状態モード決定部21Eでは、図18に示すように、目標駆動トルク、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグ、システム状態、クラッチスリップ回転数(例えば、第2クラッチ5であればモータ回転数からAT入力回転数を減算したもの)等に基づき、車両状態モードを決定する。具体的には、アクセルペダル開度APO及び擬似アクセル開度VAPOに基づくアクセルエンジン始動要求フラグの設定、システム状態情報に基づくシステムエンジン始動要求フラグの設定、目標駆動トルク(自動制御要求トルク)に基づくクルーズエンジン始動要求フラグの設定等を行う。そして、これら設定したフラグと、車速リミッタトルク演算部21DeからのASLタップダウン時I/S禁止要求フラグとに基づき、車両状態モードを生成する。車両状態モード決定部21Eは、生成した車両状態モードを、目標エンジントルク算出部21H及び目標モータトルク算出部21Jにそれぞれ出力する。
【0131】
一方、要求発電トルクベース演算部21A及び要求エンジン発電トルク演算部21Bでは、SOC等のバッテリ状態を示す情報と、入力軸回転数とに基づき要求エンジン発電トルクを算出する。そして、要求エンジン発電トルクを、目標エンジントルク算出部21Hに出力する。
また、目標エンジントルク算出部21Hでは、目標駆動トルクから目標入力トルク(AT3への目標入力トルク)を算出し、該算出した目標入力トルクと、車両状態モードと、要求エンジン発電トルクとに基づき、目標エンジントルクを算出する。目標エンジントルク算出部21Hは、目標入力トルクを、目標クラッチトルク算出部21Kに出力し、目標エンジントルクを目標モータトルク算出部21j及びエンジンコントローラ22にそれぞれ出力する。
【0132】
また、目標モータトルク算出部21Jでは、車両状態モードと、目標エンジントルクとに基づき目標モータトルクを算出し、該算出した目標モータトルクをモータコントローラ23に出力する。
また、目標クラッチトルク算出部21Kでは、目標エンジントルク算出部21Hからの目標入力トルクに基づき、目標CL1トルクを算出する。更に、目標入力トルクと入力軸回転数とに基づき、目標CL2トルクを算出する。そして、目標CL1トルク及び目標CL2トルクをATコントローラ24に出力する。
【0133】
(ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理)
次に、図19〜図21に基づき、ステップS116の車両状態モードの生成処理において、車速リミッタトルク演算部21Ddで実行される、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理の処理手順について説明する。
ここで、図19は、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図20は、タップダウンスイッチによる減速要求の入力後におけるリミッタ車速近傍判定フラグと、車速と、リミッタ車速との特性例を示すタイムチャートである。また、図21は、タップダウンスイッチによる減速要求の入力後におけるASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCと、車速と、リミッタ車速との特性例を示すタイムチャートである。
【0134】
ステップS116において、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグの設定処理が実行されると、図19に示すように、まず、ステップS700に移行する。
ステップS700では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン要求フラグ、車速、減速設定後のリミッタ車速(目標車速)を取得して、ステップS702に移行する。
ステップS702では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、タップダウンスイッチの操作によって減速設定後のリミッタ車速に対して、設定された判定マージンを加算して、リミッタ車速近傍判定値VLMを算出して、ステップS704に移行する。
【0135】
本実施形態では、タップダウンスイッチによってリミッタ車速が設定されると、その車速を目標車速として、図20に示すように、現在のリミッタ車速を緩変化させて、その緩変化させたリミッタ車速に対して車速を追随させるように減速制御が行われる。リミッタ車速近傍判定値VLMは、車速が目標リミッタ車速近傍にまで低下したことを判定するための判定値である。そのため、図20に示すように、目標リミッタ車速に判定マージンを加算した値となる。
【0136】
ステップS704では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン要求フラグの前回値AFPと、ASLタップダウン要求フラグの今回値AFNとを比較して、ステップS706に移行する。
本実施形態では、ASLタップダウン要求フラグのOFFからONへの変化を判定するために、ASLタップダウン要求フラグの前回値AFPを保持している。
【0137】
ステップS706では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ステップS704の比較結果に基づき、ASLタップダウン要求フラグがOFFからONに変化したか否かを判定する。そして、OFFからONに変化したと判定した場合(Yes)は、ステップS708に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS724に移行する。
ステップS708に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、リミッタ車速近傍判定フラグをOFFに設定して、ステップS710に移行する。
【0138】
ステップS710では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCを0にリセットして、ステップS712に移行する。
ここで、ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCは、タップダウンスイッチによって減速設定がされてからの経過時間を測定するための変数である。従って、図21に示すように、ASLタップダウン要求フラグがOFFからONに変化した時点で0にクリアされる。
【0139】
ステップS712では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、前回値AFPを今回値AFNに変更して保持し、ステップS714に移行する。
ステップS714では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、条件[2]が成立したか否かを判定し、成立したと判定した場合(Yes)は、ステップS716に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS718に移行する。
【0140】
具体的に、条件[2]である下記a〜fのいずれかが成立したか否かを判定する。
a.下記(1)及び(2)が成立
(1)車速リミッタトルク>0
(2)リミッタ車速近傍判定フラグ=ON
b.ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDC>所定値
c.ASLコースト判定フラグ=ON
d.アイドルSW=ON
e.ASL解除(ASL作動フラグ=OFF)
f.ASL加速要求(ASL加速要求フラグ=ON)
【0141】
上記a〜fのいずれかが成立してステップS716に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグをOFFに設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
なお、上記b.のASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCとの大小比較に用いる所定値は、タップダウンスイッチによる減速設定時において、エンジン1の停止と始動とが短時間に行われることを防止するのに十分な時間に相当する値に設定する。例えば、官能評価によって運転者がエンジン始動・停止のサイクルをビジーと感じない程度の時間に相当する値に設定する。
【0142】
一方、ステップS712において、条件[2]が成立せずに、ステップS718に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、条件[3]が成立したか否かを判定する。そして、条件[3]が成立したと判定した場合(Yes)は、ステップS720に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS722に移行する。
具体的に、条件[3]である下記(1)〜(3)の全てが成立したか否かを判定する。
(1)ASL作動中(ASL作動フラグ=ON)
(2)ASLタップダウン要求フラグ=ON
(3)車両状態モード=エンジン運転
【0143】
上記(1)〜(3)が全て成立してステップS720に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグをONに設定して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
また、ステップS722に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグを前回値に保持して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0144】
また、ステップS706において、ASLタップダウン要求フラグがOFFからONに変化していないと判定され、ステップS724に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン要求フラグがONか否かを判定する。そして、ASLタップダウン要求フラグがONであると判定した場合(Yes)は、ステップS726に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS728に移行する。
【0145】
ステップS726に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCの値にα(例えば「1」)を加算して、ステップS728に移行する。
つまり、前回値AFP=今回値AFNで、且つ、両者がONを示す値である場合は、ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCをカウントアップ(インクリメント)する。
【0146】
ステップS728では、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、車速Vが、リミッタ車速VLよりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合(Yes)は、ステップS730に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS732に移行する。
ステップS730に移行した場合は、リミッタ車速近傍判定フラグをONに設定して、ステップS712に移行する。
一方、ステップS732に移行した場合は、車速リミッタトルク演算部21Ddにおいて、リミッタ車速近傍判定値を前回値に保持して、ステップS712に移行する。
【0147】
(状態遷移モード制御処理)
次に、図22に基づき、ステップS116において実行される車両状態モード生成処理の具体的な処理手順について説明する。
ここで、図22は、本実施形態における車両状態モード生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS116において、車両状態モード生成処理が開始されると、図22に示すように、まず、ステップS800に移行する。
ステップS800では、車両状態モード決定部21Eにおいて、システム状態、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグ等を取得する一方、各種エンジン始動要求フラグの設定処理を実行して各種フラグを設定して、ステップS802に移行する。
【0148】
上記ステップS800では、上記第1実施形態と同様に、アクセルエンジン始動要求フラグの設定処理、クルーズエンジン始動要求フラグの設定処理、システムエンジン始動要求フラグの設定処理が実行される。
ステップS802では、車両状態モード決定部21Eにおいて、条件[4]が成立したか否かを判定し、成立したと判定した場合(Yes)は、ステップS604に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS606に移行する。
【0149】
具体的に、条件[4]である、(1)アクセルエンジン始動要求フラグ=ON、(2)システムエンジン始動要求フラグ=ON、(3)クルーズエンジン始動要求フラグ=ON、(4)ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグ=ONのいずれか1が成立しているか否かを判定する。そして、これら(1)〜(4)のいずれか1が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS804に移行する。一方、(1)〜(4)のいずれも成立していない場合(No)は、ステップS806に移行する。
【0150】
ステップS804に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、エンジン始動要求フラグをONに設定して、ステップS808に移行する。
一方、ステップS806に移行した場合は、車両状態モード決定部21Eにおいて、エンジン始動要求フラグをOFFに設定して、ステップS808に移行する。
ステップS808では、車両状態モード決定部21Eにおいて、現在の車両状態や、エンジン始動要求フラグ等に基づき、車両状態モードを生成して、一連の処理を終了し、元の処理に復帰する。
【0151】
(動作)
次に、図23及び図24に基づき、本実施形態の動作を説明する。
ここで、図23は、第1実施形態のタップダウン減速時におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。また、図24は、本実施形態のタップダウン減速時におけるリミッタ車速、車速、車速リミッタトルク、ドライバ要求トルク、アクセルペダル開度、擬似アクセル開度、アクセルエンジン始動要求フラグ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
【0152】
上記第1実施形態では、ASL制御の作動中において、図23中(1)〜(2)に示すように、運転者のタップダウンスイッチの操作に応じて、リミッタ車速が設定された速度量(本実施形態ではタップダウン操作1回につき1[km/h]減速)だけ減速する。リミッタ車速が減速することによって、実車速を、減速後のリミッタ車速に追随するために、車速リミッタトルクが、図23中(3)のR/LトルクA(プラス値)からマイナス値(コーストトルク)へと変化する。そのため、目標駆動トルクがコーストトルクとなり、図23中(4)に示すように、このトルクから逆算される擬似アクセル開度VAPOが全閉状態を示す値(0[deg])となる。そして、図23中(4)に示すように、擬似アクセル開度VAPOが、エンジン停止判定値を下回るため、図23中(5)に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグがOFF(Lowレベル)となる。これにより、エンジン1が停止して、図23中(6)に示すように、エンジン回転数が0となる。
【0153】
その後、図23中(2)に示すように、実車速がリミッタ車速に収束すると、図23中(3)のR/LトルクB(プラス値)に示すように、車速リミッタトルクが走行抵抗R/L相当まで増加する。これにより、擬似アクセル開度VAPOもR/L相当まで増加する。その結果、図23中(4)に示すように、擬似アクセル開度VAPOがエンジン始動判定値を上回り、図23中(5)に示すように、アクセルエンジン始動要求フラグがONとなる。これにより、エンジン1が始動して、図23中(6)に示すように、エンジン回転数が増加する。
【0154】
ここで、タップダウンスイッチの操作によるリミッタ車速の減速は、本実施形態では1[km/h]を例に挙げたが、例えば、1[km/h]〜1[mph]程度の幅において設定される。そのため、図23中(6)に示すように、エンジン1の停止は、ごく短時間で終了し、エンジン1が再始動する。従って、このわずかな時間の間にエンジン1の停止と始動が行われる事になるので、ビジーなエンジン始動停止、及び、車速変化タイミングでのエンジン始動ショックによりドライバビリティが悪化してしまう恐れがある。
【0155】
これに対して、本実施形態では、図24中(1)〜(2)に示すように、運転者のタップダウンスイッチの操作に応じて、リミッタ車速が減速すると、ASLタップダウン要求フラグがOFFからONへと設定される(ステップS706の「Yes」)。続いて、リミッタ車速近傍判定フラグがOFFに設定され(ステップS708)、ASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCが0にクリアされる(ステップS710)。
【0156】
なお、ここでは、上記条件[2]に係る、ASLコースト判定フラグ=OFF、アイドルSW=OFF、ASL作動フラグ=ON、ASL加速要求フラグ=OFFの状態であるとする。
リミッタ車速が減速設定されると、図24中(2)〜(4)に示すように、リミッタ車速の減速に応じて、車速リミッタトルクが、R/LトルクAからコーストトルクへと変化し、擬似アクセル開度VAPOが全閉状態の値に変化する。これにより、擬似アクセル開度VAPOがエンジン停止判定値を下回るので、アクセルエンジン始動要求フラグがOFFに設定される。
【0157】
一方、本実施形態では、この状態において、上記条件[2]の判定処理が実施される(ステップS714)。現時点において、車速リミッタトルクはマイナス値、リミッタ車速近傍判定フラグ=OFF、TDC=0、ASLコースト判定フラグ=OFF、アイドルSW=OFF、ASL作動フラグ=ON、ASL加速要求フラグ=OFFとなっているため、条件[2]は不成立となる(ステップS714の「No」)。
【0158】
従って、引き続き、上記条件[3]の判定処理が実施される(ステップS718)。現時点において、ASL作動フラグ=ON、ASLタップダウン要求フラグ=ON、エンジン1は回転状態(=エンジン運転状態)のいずれも成立するため、条件[3]が成立する(ステップS718の「Yes」)。そして、図24中(5)に示すように、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグがONに設定され(ステップS720)、上記条件[4]の判定処理において、条件[4]の(4)が成立する(ステップS802の「Yes」)。
これにより、図24中(6)の実線部に示すように、エンジン始動要求フラグがONに設定される(ステップS804)。従って、アクセルエンジン始動要求フラグがOFFに設定されていても、図24中(6)の点線部のように、エンジン始動要求フラグがOFFとならず、エンジン1が運転状態のまま維持される。
【0159】
その後、図24中(2)〜(3)に示すように、車速リミッタトルクが0よりも大きい状態で、実車速がリミッタ車速に収束(リミッタ車速近傍判定フラグ=ON)するか、またはASLタップダウン後経過カウンタ変数TDCが所定値よりも大きくなると(所定時間以上経過すると)、上記条件[2]が成立する(ステップS714の「Yes」)。これにより、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグがOFFに設定される(ステップS716)。このとき、車速リミッタトルクが、図24中(3)のR/LトルクBに向かって上昇し、これに伴い擬似アクセル開度VAPOが上昇してエンジン始動判定値を上回ると、アクセルエンジン始動要求フラグがONに設定される。つまり、ASLタップダウン時I/S禁止要求フラグ=OFF、アクセルエンジン始動要求フラグ=ONの状態となる。
【0160】
従って、上記条件[4]の判定処理において、条件[4]の(1)が成立し(ステップS802の「Yes」)、エンジン始動要求フラグがONに設定される(ステップS804)。
以上、本実施形態では、タップダウンスイッチの操作によるリミッタ車速の減速時において、実車速がリミッタ車速に収束するまでの期間か、又はタップダウンスイッチが操作されてから所定時間以上が経過するまでの期間は、エンジン1を運転状態のまま維持することができる。
【0161】
これにより、タップダウンスイッチの操作によるリミッタ車速の減速時において、図24中(7)の点線部に示すような、ごく短時間のエンジン停止状態の発生を防ぐことができる。
ここで、モータジェネレータ2は、「モータ」に対応し、ステアリングスイッチ28、車速リミッタトルク演算部21Ddは、「上限速度設定手段」に対応し、車速リミッタトルク演算部21Ddは、「車速制限トルク算出手段」に対応する。
【0162】
また、車速リミッタトルク演算部21Dd、車両状態モード決定部21Eは、「エンジン停止禁止制御手段」に対応する。
また、擬似アクセル開度演算部21Lは、「擬似アクセル開度算出手段」に対応し、車両状態モード決定部21Eは、「エンジン始動停止判定手段」に対応し、エンジン始動制御部21F及びエンジン停止制御部21Gは、「エンジン駆動制御手段」に対応する。
【0163】
また、リミッタ車速は、「上限速度」に対応し、車速リミッタトルクは、「車速制限トルク」に対応し、ASL制御は、「車速制限制御」に対応する。
また、タップダウンスイッチの操作によるリミッタ車速の減速量は、「第1の速度量」に対応し、コーストスイッチの操作によるリミッタ車速の減速量は、「第2の速度量」に対応する。
【0164】
(第2実施形態の作用効果)
(1)エンジン停止禁止制御手段が、車速制限制御を実施しているときに、車速制限トルクが急変する上限速度の設定変更が行われたときは、設定した条件が成立するまでの期間においてエンジンの停止を禁止する制御を行う。
速度制限制御を実施しているときに、例えば、上限速度の微小減速による車速制限トルクが急変する期間(つまり、車速制限トルクがプラス値からマイナス値になってすぐに再びプラス値となる期間)において、エンジンの停止を禁止する制御を行うことができる。
これにより、車速制限トルクが急激に変化する期間におけるエンジン停止の判定に対して、エンジンの停止を禁止することができる。つまり、上限速度の減速量が小さくて、エンジンの停止期間が短く、エンジンの停止後にすぐに始動をするような場面において、エンジンを運転状態のまま維持することができる。従って、上限速度の設定変更後における、ビジーなエンジンの始動停止、及び、車速変化タイミングでのエンジン始動ショックが発生するのを防ぐことができるという効果が得られる。
【0165】
(2)設定した条件が成立するまでの期間を、ハイブリッド車両の走行速度が設定変更後の上限速度に収束するまでの期間とした。
つまり、速度制限制御を実施しているときに、車速制限トルクが急変する上限速度の設定変更後に、ハイブリッド車両の走行速度(実車速)が、設定後の上限速度に収束するまでの期間において、エンジンの停止を禁止する制御を行うことができる。
これにより、車速制限トルクが急激に変化する期間におけるエンジン停止の判定に対して、エンジンの停止を禁止することができる。つまり、例えば上限速度の減速量が小さくて、エンジンの停止期間が短く、エンジンの停止後にすぐに始動をするような場面において、エンジンを運転状態のまま維持することができる。従って、上限速度の設定変更後における、ビジーなエンジンの始動停止、及び、車速変化タイミングでのエンジン始動ショックが発生するのを防ぐことができるという効果が得られる。
【0166】
(3)時間測定手段が、車速制限トルクが急変する設定変更が行われてからの経過時間を測定する。設定した条件が成立するまでの期間を、経過時間が設定した時間となるまでの期間とした。
つまり、速度制限制御を実施しているときに、車速制限トルクが急変する上限速度の設定変更後に、設定した時間が経過するまでの期間において、エンジンの停止を禁止する制御を行うことができる。
【0167】
これにより、車速制限トルクが急激に変化する期間におけるエンジン停止の判定が行われる期間をカバーできる時間期間を条件として設定することで、この期間におけるエンジンの停止を禁止することができる。つまり、例えば減速量が小さくて、エンジンの停止期間が短く、エンジンの停止後にすぐに始動をするような場面において、エンジンを運転状態のまま維持することができる。従って、上限速度の設定変更後において、ビジーなエンジンの始動停止、及び、車速変化タイミングでのエンジン始動ショックが発生するのを防ぐことができるという効果が得られる。
【0168】
(4)エンジン停止禁止制御手段が、車速制限トルクが急変する第1の速度量以下の単位で上限速度の減速設定が行われたときは、エンジン始動停止判定手段においてエンジン停止の判定がされても設定した条件が成立するまでの期間はエンジンの停止を禁止する制御を行う。更に、エンジン停止禁止制御手段が、第1の速度量よりも大きい第2の速度量の単位で上限速度の減速設定が行われたときは、エンジン始動停止判定手段のエンジン停止の判定に対してエンジンの停止を許可する制御を行う。
【0169】
つまり、速度制限制御を実施しているときに、上限速度の第1の速度量以下の減速設定後に、設定した条件が成立するまでの期間において、エンジンの停止を禁止する制御を行うことができる。
これにより、減速量が小さくて、エンジンの停止期間が短く、エンジンの停止後にすぐに始動をするような場面において、エンジンを運転状態のまま維持することができる。加えて、減速量が大きくて、エンジンの停止期間を長くできる状況では、エンジン停止の判定に応じてエンジンを停止することができる。
【0170】
従って、上限速度の減速設定後において、ビジーなエンジン始動停止、及び、車速変化タイミングでのエンジン始動ショックが発生するのを防ぐことができると共に、より適切なエンジン運転状態の制御を行うことができるという効果が得られる。
(5)上記(1)〜(4)の作用効果以外にも、上記第1実施形態の(1)〜(3)と同等の作用効果が得られる。
【0171】
(応用例)
上記第2実施形態において、ASL制御の作動中におけるタップダウンスイッチによる減速設定時において、実車速が設定後のリミッタ車速に収束するまでの期間、又は減速設定時から所定時間が経過するまでの期間においてエンジン1の停止を禁止する制御を行う構成としたが、この構成に限らない。
例えば、車速リミッタトルクが所定トルク以上で一定となるまでの期間など、他の要素に基づく期間において、エンジン1の停止を禁止する制御を行う構成としてもよい。
【0172】
また、上記第2実施形態において、ASL制御の作動中におけるタップダウンスイッチによる減速設定時において、実車速が設定後のリミッタ車速に収束するまでの期間、及び減速設定時から所定時間が経過するまでの期間の双方をエンジン停止の禁止期間として用いる構成としたが、この構成に限らず、いずれか一方の期間を用いる構成としてもよい。
【0173】
また、上記各実施形態において、エンジン回転トルクによって発電する機能(以下、第1の発電機能と称す)と、減速時の外力によるモータ回転トルクによって発電する機能(以下、第2の発電機能と称す)とをモータジェネレータ2が備える構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。
例えば、第1の発電機能を備える発電機を別途備える構成や、モータと発電機の機能とを完全に分けて、例えば、第1の発電機能を備える第1の発電機及び第2の発電機能を備える第2の発電機をそれぞれ別々に備える構成や、第1及び第2の発電機能を備える発電機を別途備える構成などとしてもよい。
【0174】
また、上記各実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0175】
1 エンジン
2 モータジェネレータ
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
7L 左駆動輪
7R 右駆動輪
20 アクセルセンサ
21 統合コントローラ
21A 要求発電トルクベース演算部
21B 要求エンジン発電トルク演算部
21C モータ出力可能トルク演算部
21D 目標駆動トルク演算部
21Da ドライバ要求トルク演算部
21Db 自動制御要求トルク演算部
21Dc 第1目標駆動トルク演算部
21Dd 車速リミッタトルク演算部
21De 最終目標駆動トルク演算部
21E 車両状態モード決定部
21F エンジン始動制御部
21G エンジン停止制御部
21H 目標エンジントルク算出部
21J 目標モータトルク算出部
21K 目標クラッチトルク算出部
21L 擬似アクセル開度演算部
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 ATコントローラ
25 ブレーキコントローラ
26 バッテリコントローラ
28 ステアリングスイッチ
30 クルーズキャンセルスイッチ
31 車間制御コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に駆動力を伝達する駆動源としてのエンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の上限速度を設定する上限速度設定手段と、
前記ハイブリッド車両の走行速度を、前記上限速度以下に制限する車速制限制御を行う車速制限手段と、
前記車速制限制御を実施しているときに、前記上限速度と前記ハイブリッド車両の走行速度とに基づき、車速制限時に前記駆動源に要求する駆動トルクである車速制限トルクを算出する車速制限トルク算出手段と、
前記車速制限トルクに基づき、該車速制限トルクに対応するアクセル開度である擬似アクセル開度を算出する擬似アクセル開度算出手段と、
運転者のアクセルペダルの操作に応じて検出されるアクセル開度であるアクセルペダル開度に基づき前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定するエンジン始動停止判定手段と、
前記エンジン始動停止判定手段の判定結果に基づき前記エンジンの始動及び停止を制御するエンジン始動停止制御手段と、を備え、
前記エンジン始動停止判定手段は、前記車速制限制御を実施しているときに、前記擬似アクセル開度に基づき前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
前記エンジン始動停止判定手段は、前記車速制限制御を実施しているときに、前記アクセルペダル開度と前記擬似アクセル開度とのうち、小さい方の開度に基づき、前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
前記車速制限制御を実施しているときに、前記車速制限トルクが急変する前記上限速度の設定変更が行われたときは、設定した条件が成立するまでの期間において前記エンジンの停止を禁止する制御を行うエンジン停止禁止制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用走行制御装置。
【請求項4】
前記設定した条件が成立するまでの期間は、前記ハイブリッド車両の走行速度が前記設定変更後の上限速度に収束するまでの期間であることを特徴とする請求項3に記載の車両用走行制御装置。
【請求項5】
前記車速制限トルクが急変する設定変更が行われてからの経過時間を測定する時間測定手段を備え、
前記設定した条件が成立するまでの期間は、前記経過時間が設定した時間となるまでの期間であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用走行制御装置。
【請求項6】
前記エンジン停止禁止制御手段は、前記車速制限トルクが急変する第1の速度量以下の単位で前記上限速度の減速設定が行われたときは、前記エンジン始動停止判定手段においてエンジン停止の判定がされても前記設定した条件が成立するまでの期間は前記エンジンの停止を禁止する制御を行い、前記第1の速度量よりも大きい第2の速度量の単位で前記上限速度の減速設定が行われたときは、前記エンジン始動停止判定手段のエンジン停止の判定に対して前記エンジンの停止を許可する制御を行うことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項7】
駆動輪に駆動力を伝達する駆動源としてのエンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行速度を、設定した上限速度以下に制限する車速制限制御を実施しているときに、前記上限速度と前記ハイブリッド車両の走行速度とに基づき、車速制限時に前記駆動源に要求する目標駆動トルクである車速制限トルクを算出する車速制限トルク算出ステップと、
前記車速制限トルクに基づき、該車速制限トルク対応するアクセル開度である擬似アクセル開度を算出する擬似アクセル開度算出ステップと、
運転者のアクセルペダルの操作に応じて検出されるアクセル開度であるアクセルペダル開度に基づき前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定するエンジン始動停止判定ステップと、
前記エンジン始動停止判定ステップにおける判定結果に基づき前記エンジンの始動及び停止を制御するエンジン始動停止制御ステップと、を含み、
前記エンジン始動停止判定ステップにおいては、前記車速制限制御を実施しているときに、前記擬似アクセル開度に基づき前記エンジンを始動するか又は停止するかのいずれかを判定することを特徴とする車両用走行制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−153344(P2012−153344A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16708(P2011−16708)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】