説明

車両用運転支援装置

【課題】逆走状態をより正確に判断して接触事故を防止することを可能にする。
【解決手段】車両の現在位置を検出する位置検出手段と、水平面に対する道路上の区間ごとの傾斜度の情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記位置検出手段が検出した前記車両の現在位置と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データとに基づいて、前記車両の現在位置を道路上の区間にマッチングさせるマップマッチング処理を実行するマップマッチング手段と、水平面に対する前記車両の傾斜度を計測する傾斜度計測手段と、前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度が、前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上異なっているか否かを判定する第1一致判定手段と、前記第1一致判定手段での判定結果に基づいて、前記車両が逆走状態であるか否かを判断する逆走状態判断手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が逆走状態であるか否かを判断する車両用運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路の逆走による接触事故が発生している。例えば、都市高速のように料金先払いの高速道路の場合、出口には料金所ゲートが存在しない。そのため、ドライバーが誤って出口から進入してしまった場合、逆走に気づかずに本線まで到達してしまう可能性が高く、事故の危険性が懸念される。
【0003】
道路の逆走による接触事故を防ぐ手段としては、車載ナビゲーション装置のマップマッチングにより車両の逆走状態を判断し、逆走による接触事故を防ぐことが考えられる。例えば、特許文献1には、交差点を越えたときに自車両が誤って反対車線に入ってしまった場合に、車載ナビゲーション装置に用いられる通常的なものと同様の地図データベースから得られる道路情報に基づいて自車両が正規の進行方向に対して逆方向に走行している逆走状態か否かを判定し、逆走状態と判定された場合には警告を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−3801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車載ナビゲーション装置のマップマッチングにより車両の逆走状態を判断しようとした場合には、車両の逆走状態を正確に判断できない可能性が高いため、逆走状態を判断することによって接触事故を防止することが困難であるという問題点を有していた。詳しくは、一般に車載ナビゲーション装置のマップマッチングでは、道路リンクの走行方向も考慮してマッチングを行っているため、走行方向とは逆方向の道路リンクをマッチングの対象としていない。従って、車両が逆走中であってもマップマッチングによって逆走中の道路の道路リンクとマッチングすることがなく、例えば逆走中の道路の付近の道路のうちの走行方向が一致する道路の道路リンクにマッチングしてしまう。そのため、車両の逆走状態を正確に判断できない。
【0006】
また、車載ナビゲーション装置に用いられる通常的なものと同様の地図データベースから得られる道路情報に基づいて自車両が正規の進行方向に対して逆方向に走行している逆走状態か否かを判定する特許文献1に開示の技術についても、誤ってマッチングした道路リンクについての道路情報に基づいて逆走状態か否かを判定することになるので、車両の逆走状態を正確に判断できない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、逆走状態をより正確に判断して接触事故を防止することを可能にする車両用運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の車両用運転支援装置は、上記課題を解決するために、前記車両の現在位置を検出する位置検出手段と、水平面に対する道路上の区間ごとの傾斜度の情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記位置検出手段が検出した前記車両の現在位置と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データとに基づいて、前記車両の現在位置を道路上の区間にマッチングさせるマップマッチング処理を実行するマップマッチング手段と、水平面に対する前記車両の傾斜度を計測する傾斜度計測手段と、前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度が、前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上異なっているか否かを判定する第1一致判定手段と、前記第1一致判定手段での判定結果に基づいて、前記車両が逆走状態であるか否かを判断する逆走状態判断手段と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
マップマッチング処理によってマッチングさせた車両の現在位置と道路上の区間とが食い違っていた場合には、その車両が逆走状態にある可能性が高い。これは、通常のマップマッチング処理ではマップマッチング処理の対象を車両の走行方向と順方向のものに限定するため、車両が逆走状態にある場合にマップマッチング処理を行うと、車両の走行中の道路上の区間以外の区間と車両の現在位置とをマッチングさせてしまうことによる。
【0010】
請求項1の構成によれば、高架道路や半地下道路等の出口ランプウェイから誤って車両を進入させてしまい逆走状態になったときに、マップマッチング処理によってこの出口ランプウェイ以外の道路上の区間に当該車両の現在位置を誤ってマッチングさせてしまった場合であっても、当該車両の傾斜度と当該道路上の区間の傾斜度との食い違いをもとにして、マップマッチング処理が誤っていたことを判別することができる。つまり、高架道路や半地下道路等の出口ランプウェイから誤って車両を進入させてしまい逆走状態になったときに、当該車両の傾斜度と当該道路上の区間の傾斜度との相違をもとにして、当該車両が逆走状態であることを判定することが可能になる。従って、請求項1の構成によれば、逆走状態をより正確に判断して接触事故を防止することが可能になる。
【0011】
また、請求項2の車両用運転支援装置では、前記逆走状態判断手段で前記車両が逆走状態であるとの判断を行った場合に、前記車両が逆走状態であることを報知する報知手段をさらに備えることを特徴としている。
【0012】
これによれば、車両が逆走状態であることを判定した場合に、車両が逆走状態であることを報知してドライバーに知らせることができるので、車両の逆走による接触事故を防止することができる。
【0013】
また、請求項3の車両用運転支援装置では、前記傾斜度計測手段は、加速度センサの複数方向についてのセンサ出力をもとに、水平面に対する前記車両の傾斜度を計測することを特徴としている。
【0014】
この請求項3のように、傾斜度計測手段が、加速度センサの複数方向についてのセンサ出力をもとに、車両の傾斜度を計測する態様としてもよい。
【0015】
また、請求項4の車両用運転支援装置では、前記逆走状態判断手段は、前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度と前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度とが所定の値以上異なっていると前記第1一致判定手段で判定した場合に、当該区間から所定の範囲内に存在する道路上の区間のうち、前記車両の走行方向と逆方向の区間を対象として、前記マップマッチング手段によって再度のマップマッチング処理を実行させる再マップマッチング手段と、前記再マップマッチング手段での再度のマップマッチング処理の結果、マッチングする区間が存在した場合に、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致しているか否かを判定する第2一致判定手段と、をさらに備え、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致していると前記第2一致判定手段で判定した場合に、前記車両が逆走状態であると判断することを特徴としている。
【0016】
また、請求項5の車両用運転支援装置では、前記逆走状態判断手段は、前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度と前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度とが所定の値以上異なっていると前記第1一致判定手段で判定した場合に、当該区間から所定の範囲内に存在する道路上の区間のうち、前記車両の走行方向と順方向の区間も逆方向の区間も対象として、前記マップマッチング手段によって再度のマップマッチング処理を実行させる再マップマッチング手段と、前記再マップマッチング手段での再度のマップマッチング処理の結果、マッチングする区間が存在した場合に、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致しているか否かを判定する第2一致判定手段と、をさらに備え、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致していると前記第2一致判定手段で判定した場合に、前記車両が逆走状態であると判断することを特徴としている。
【0017】
車両が逆走状態にある場合にマップマッチング処理を行い、車両の走行中の道路上の区間以外の区間と車両の現在位置をマッチングさせてしまっている場合、車両の実際の現在位置の付近に存在する、車両の走行方向と順方向の他の区間とマッチングさせてしまっている可能性が高い。よって、マップマッチング処理で誤った区間とマッチングさせてしまっている場合、車両の現在位置の付近に存在する、車両の走行方向と逆方向の区間であって、且つ、マップマッチング処理でマッチングする区間のうち、車両の傾斜度と所定の値以上一致している傾斜度を有する区間が、実際の走行中の道路上の区間であると考えられる。
【0018】
請求項4および請求項5の構成によれば、マップマッチング処理が誤っていた場合に、車両の走行方向と逆方向の区間も対象として再度のマップマッチング処理を行う。そして、再度のマップマッチング処理の結果、車両の傾斜度と所定の値以上一致している傾斜度を有する区間が存在したと判定した場合(誤ってマッチングした区間以外の実際の走行中の道路上の区間が存在すると判定した場合)に、当該車両が逆走状態であると判断する。よって、車両が逆走状態であることを、さらに正確に判断することが可能になる。
【0019】
また、請求項6の車両用運転支援装置では、前記再マップマッチング手段は、さらに、ランプウェイに該当する道路上の区間のみを前記再度のマップマッチング処理の対象とすることを特徴としている。
【0020】
これによれば、再度のマップマッチング処理の対象を、ランプウェイに該当する道路上の区間のみに限定することができるので、再度のマップマッチング処理における負荷をより減らすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ナビゲーション装置1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置1での運転支援処理のフローを示すフローチャートである。
【図3】高速道路の出口ランプウェイの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用されたナビゲーション装置1の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示すナビゲーション装置1は、車両に搭載されるものであり、位置検出器11、地図データ入力器16、記憶媒体17、操作スイッチ群18、音声出力装置20、外部メモリ21、表示装置22、リモコンセンサ23、リモートコントロール端末(以下リモコンと称する)24、およびこれらと接続された制御装置19を含んでいる。なお、ナビゲーション装置1を搭載している車両を以降では自車両と呼ぶ。
【0023】
位置検出器11は、自車両の加速度を検出する加速度センサ12、車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ13、車両の速度を検出する車速センサ14、および人工衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPSのためのGPS受信機15を有しており、定期的に車両の現在位置および進行方向の検出を行う。よって、位置検出器11は、請求項の位置検出手段として機能する。また、これらの各センサ12〜15は、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器11を上述した内の一部で構成してもよく、さらに、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の回転速度から速度を検出する車速センサ等を用いてもよい。また、本実施形態では、加速度センサ12は、例えばX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサであるものとする。
【0024】
なお、以降では、ジャイロスコープ13等の方位センサの測定値と加速度センサ12や車速センサ14の測定値とから求めた推定現在位置と後述する道路データとを照合して自車両の現在位置を決定する航法を自律航法と呼ぶ。また、複数の人工衛星からの電波に基づいてGPS受信機15で自車両の推定現在位置を求め、この推定現在位置と道路データとを照合して自車両の現在位置を決定する航法を電波航法と呼ぶ。なお、上述したような推定現在位置と道路データとを照合して自車両の推定現在位置を地図データ中の後述の道路リンクにマッチング(つまり、一致)させる処理をマップマッチング処理と呼ぶこととする。また、ナビゲーション装置1では、例えば自律航法と電波航法とを組み合わせたハイブリッド航法を用いるものとする。
【0025】
地図データ入力器16は、記憶媒体17が装着され、その記憶媒体17に格納されている地図データを含む各種データを入力するための装置である。なお、地図データには、道路データ、背景データ、および文字データなどが含まれるものとする。また、記憶媒体17としては、CD−ROMまたはDVD−ROM、メモリカード、HDD等が用いられる。
【0026】
道路データには、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる。なお、リンク(道路リンク)とは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点、斜路の開始点・斜路の終了点等の複数のノードにて分割したときのノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。道路リンクは、道路上の一区間に相当するものとも言える。なお、ここで言うところの斜路とは、人間が認識できる程度以上の勾配を持つ道路であって、ランプウェイを含むものとする。リンクデータは、道路リンクを特定する固有番号(リンクID)、道路リンクの長さを示すリンク長、道路リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路リンクの傾斜度(つまり、水平面に対する道路上の区間の傾斜度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、および制限速度等の各データから構成される。よって、記憶媒体17は、請求項の地図データ記憶手段として機能する。
【0027】
一方、ノードデータは、地図上のノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、および交差点種類等の各データから構成される。
【0028】
また、背景データは、地図上の各施設や地形等と、それに対応する地図上の座標とを関連付けたデータである。なお、施設に関しては、各種施設の種類、名称、住所のデータなども含まれる。また、文字データは、地名、施設名、道路名等を地図上に表示するためのデータであって、その表示すべき位置に対応する座標データと関連付けられている。
【0029】
操作スイッチ群18は、例えば表示装置22と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、スイッチ操作により制御装置19へ各種機能(例えば、地図縮尺変更、メニュー表示選択、目的地設定、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、表示画面変更、音量調整等)の操作指示を行う。また、操作スイッチ群18は、出発地および目的地を設定するためのスイッチを含んでいる。そのスイッチを操作することによって、ユーザ(つまり、車両の乗員)は、予め登録しておいた地点、施設名、電話番号、住所などから、出発地および目的地を設定することができる。
【0030】
リモコン24には複数の操作スイッチ(図示せず)が設けられ、スイッチ操作によりリモコンセンサ23を介して各種指令信号を制御装置19に入力することにより、操作スイッチ群18と同じ機能を制御装置19に対して実行させることが可能である。
【0031】
音声出力装置20は、スピーカ等から構成され、制御装置19の指示に基づいて、経路案内時の案内音声や後述する警告音声などを出力する。
【0032】
外部メモリ21は、書き込み可能なHDD等の大容量記憶装置である。外部メモリ21には大量のデータや電源をOFFしても消去してはいけないデータを記憶したり、頻繁に使用するデータを地図データ入力器16からコピーして利用したりする等の用途がある。なお、外部メモリ21は、比較的記憶容量の小さいリムーバブルなメモリであってもよい。
【0033】
表示装置22は、車両の走行を案内するための地図、目的地選択画面、および後述する警告画面等を表示するものであって、フルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。
【0034】
制御装置19は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMなどのメモリ、I/O及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)が備えられている。制御装置19は、位置検出器11、地図データ入力器16、操作スイッチ群18、外部メモリ21、リモコンセンサ23から入力された各種情報に基づき、ナビゲーション機能としての処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、マップマッチング処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等)を実行する。例えば、経路探索実行処理においては、制御装置19は、操作スイッチ群18、リモコン24から目的地が入力されると、距離優先、時間優先等の予め設定された条件を満たす複数の移動経路(以下、案内候補経路と呼ぶ)を、公知のダイクストラ法を用いて探索する。よって、制御装置19は、請求項のマップマッチング手段として機能する。
【0035】
また、制御装置19は、加速度センサ12からのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向についてのセンサ出力をもとに水平面に対する自車両の傾斜度(以下、車両傾斜度と呼ぶ)を計測する。よって、制御装置19は、請求項の傾斜度計測手段としても機能する。また、加速度センサ12からのセンサ出力をもとに車両傾斜度を計測する方法としては、加速度センサからのセンサ出力をもとに車両の傾斜度を計測する周知の方法を用いる構成とすればよい。
【0036】
さらに、制御装置19は、位置検出器11、加速度センサ12、地図データ入力器16からの入力をもとに自車両が逆走状態であるか否かを判断し、自車両が逆走状態であると判断した場合に、音声出力装置20から後述する警告音声を出力させたり、表示装置22に後述する警告画面を表示させたりすることによってドライバーに危険を報知する運転支援処理を行う。よって、ナビゲーション装置1は、請求項の車両用運転支援装置として機能する。また、音声出力装置20および表示装置22は、請求項の報知手段として機能する。
【0037】
次に、図2を用いて、ナビゲーション装置1での運転支援処理についての説明を行う。図2は、ナビゲーション装置1での運転支援処理のフローを示すフローチャートである。なお、本フローは、自車両のイグニッションスイッチがオンされたときに開始される。
【0038】
まず、ステップS1では、加速度センサ12からのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向についてのセンサ出力をもとに制御装置19で車両傾斜度を計測し、ステップS2に移る。
【0039】
ステップS2では、マップマッチング処理によってマッチング中の道路リンクの傾斜度(以下、道路傾斜度と呼ぶ)を、制御装置19が地図データ入力器16を介して記憶媒体17の道路データから取得し、ステップS3に移る。
【0040】
ステップS3では、ステップS1で計測した車両傾斜度とステップS2で取得した道路傾斜度とを比較し、車両傾斜度と道路傾斜度との差が所定の値以上であるか否かを制御装置19が判定する。よって、制御装置19は、請求項の第1一致判定手段としても機能する。そして、車両傾斜度と道路傾斜度との差が所定の値以上であると判定した場合(ステップS3でYes)には、ステップS4に移る。また、車両傾斜度と道路傾斜度との差が所定の値以上であると判定しなかった場合(ステップS3でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。なお、ここで言うところの所定の値とは、任意に設定可能な値である。一例として、加速度センサ12のセンサ出力をもとにした車両傾斜度の計測の誤差範囲程度の値を、ここでいうところの所定の値としてもよい。
【0041】
ステップS4では、マッチング中の道路リンクが示す道路上の区間から所定の範囲内に存在する道路上の区間に相当する道路リンクのうち、自車両の走行方向と逆方向の道路リンクを対象として、制御装置19が再度のマップマッチング処理を実行し、ステップS5に移る。よって、制御装置19は、請求項の再マップマッチング手段としても機能する。なお、自車両の走行方向については、ジャイロスコープ13のセンサ出力をもとに制御装置19が算出するものとする。よって、制御装置19は、自車両の現在位置における進行方向を検出する進行方向検出手段としても機能する。また、ここで言うところの所定の範囲とは、マップマッチング処理のアルゴリズムに依存して決まる範囲であって、任意に設定可能な値である。一例として、自律航法や電波航法における現在位置の推定の誤差範囲程度の範囲を、ここで言うところの所定の範囲としてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、再度のマップマッチング処理において、自車両の走行方向と逆方向の道路リンクを対象とする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車両の走行方向と順方向および逆方向の区間を対象とする構成としてもよい。
【0043】
ステップS5では、ステップS4での再度のマップマッチング処理の結果、マッチングする道路リンク(詳しくは、マッチング候補となる道路リング)が存在した場合(ステップS5でYes)には、ステップS6に移る。また、マッチングする道路リンクが存在しなかった場合(ステップS5でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0044】
ステップS6では、再度のマップマッチング処理によってマッチング候補となった道路リンクの傾斜度(以下、候補道路傾斜度と呼ぶ)の情報を、制御装置19が地図データ入力器16を介して記憶媒体17の道路データから取得し、ステップS7に移る。
【0045】
ステップS7では、ステップS1で計測した車両傾斜度とステップS6で取得した候補道路傾斜度とを比較し、車両傾斜度と候補道路傾斜度との差が所定の値以内であるか否かを制御装置19が判定する。よって、制御装置19は、請求項の第2一致判定手段としても機能する。そして、車両傾斜度と候補道路傾斜度との差が所定の値以内であると判定した場合(ステップS7でYes)には、ステップS8に移る。また、車両傾斜度と候補道路傾斜度との差が所定の値以内であると判定しなかった場合(ステップS7でNo)には、ステップS4に戻ってフローを繰り返す。また、ここで言うところの所定の値とは、任意に設定可能な値である。一例として、加速度センサ12のセンサ出力をもとにした車両傾斜度の計測の誤差範囲におさまる程度の値を、ここでいうところの所定の値としてもよい。また、ステップS3の所定の値とステップS7の所定の値とを同一の値とする構成であってもよいし、同一の値としてない構成であってもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、車両傾斜度と候補道路傾斜度との差が所定の値以内であると判定しなかった場合にステップS4に戻ってフローを繰り返す構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、車両傾斜度と候補道路傾斜度との差が所定の値以内であると判定しなかった場合には、自車両の走行方向と順方向および逆方向の道路リンクを対象として制御装置19が再度のマップマッチング処理を実行する構成としてもよい。そして、当該再度のマップマッチング処理の結果得られたマッチング候補の道路リンクの候補道路傾斜度と車両傾斜度との差が所定の値以内であると制御装置19で判定しなかった場合には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す構成としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、高速道路等の有料道路の本線車道への流入や本線車道からの流出のための斜路であるランプウェイに該当する道路リンクのみを再度のマップマッチング処理の対象とする構成であってもよい。これによれば、再度のマップマッチング処理の対象を、ランプウェイに該当する道路リンクのみに限定することができるので、再度のマップマッチング処理における負荷をより減らすことが可能になる。
【0048】
ステップS8では、自車両が逆走状態であると制御装置19が判断し、音声出力装置20および表示装置22から自車両が逆走状態であることを示す警告を行わせる指示(以下、注意喚起処理と呼ぶ)を行い、ステップS9に移る。よって、制御装置19は、請求項の逆走状態判断手段としても機能する。なお、自車両が逆走状態であることを示す警告の中に、事故の危険を示す警告や路側帯などへの自車両の避難を促す警告等を含む構成であってもよい。
【0049】
ステップS9では、音声出力装置20から自車両が逆走状態であることを示す警告音声を出力するとともに、表示装置22に自車両が逆走状態であることを示す警告画面を表示する報知を行い、ステップS10に移る。
【0050】
なお、本実施形態では、音声出力装置20および表示装置22によって警告を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、音声出力装置20および表示装置22のうちの一方のみによって警告を行う構成であってもよい。
【0051】
ステップS10では、自車両のイグニッションスイッチがオフになった場合(ステップS10でYes)には、フローを終了する。また、自車両のイグニッションスイッチがオフになっていない場合(ステップS10でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0052】
例えば、都市高速のように料金先払いの高速道路の場合、出口には料金所ゲートが存在しない。そのため、ドライバーが運転する車両が誤ってこの出口から進入してしまった場合に、ドライバーが車両の逆走状態に気づかずに本線車道まで到達してしまう可能性が高く、本線車道を走行している車両との衝突事故の危険性が懸念される。例えば、図3に示すように、高速道路の出口ランプウェイには一見すると一般道の坂道のように見える箇所も多く、特に高齢者のドライバーが運転する車両などが誤ってこの出口ランプウェイから進入してしまう可能性がある。
【0053】
これに対して、以上の構成によれば、高架道路や半地下道路等の出口ランプウェイから誤って自車両を進入させてしまい逆走状態になったときに、マップマッチング処理によってこの出口ランプウェイ以外の道路上の区間に相当する道路リンクに自車両の推定現在位置を誤ってマッチングさせてしまった場合であっても、車両傾斜度と当該道路リンクの道路傾斜度(詳しくは、当該道路リンクに相当する道路上の区間の道路傾斜度)とが所定の値以上食い違っていることをもとにして、マップマッチング処理が誤っていたことを判別することができる。これは、高速道路等の有料道路の出口ランプウェイには一般に、上りまたは下りの傾斜がついているという特徴を利用している。
【0054】
なお、マップマッチング処理によってマッチングさせた自車両の現在位置と道路リンクとが食い違っていた場合(つまり、実際の現在位置に相当しない道路リンクにマッチングしている場合)には、自車両が逆走状態にある可能性が高い。これは、通常のマップマッチング処理ではマップマッチング処理の対象を自車両の走行方向と順方向のものに限定するため、自車両が逆走状態にある場合にマップマッチング処理を行うと、自車両の走行中の道路上の区間以外の区間に相当する道路リンクと自車両の推定現在位置とをマッチングさせてしまうことによる。
【0055】
また、マップマッチング処理によって誤ったマッチングを行っている場合には、自車両の実際の現在位置の付近に存在する他の区間(特に、自車両の走行方向と順方向の他の区間)に相当する道路リンクとマッチングさせてしまっている可能性が高い。よって、マップマッチング処理で誤ったマッチングを行っている場合には、自車両の推定現在位置の付近に存在する、自車両の走行方向と逆方向の区間に相当する道路リンクであって、且つ、マップマッチング処理でマッチングする道路リンクのうち、車両傾斜度と所定の値以上一致している道路傾斜度を有する道路リンクが、実際の走行中の道路上の区間に相当する道路リンクであると考えられる。
【0056】
以上の構成によれば、マップマッチング処理が誤っていた場合に、自車両の走行方向と逆方向の道路リンクも対象として再度のマップマッチング処理を行う。そして、再度のマップマッチング処理の結果、車両傾斜度と所定の値以上一致している道路傾斜度を有する区間に相当する道路リンクが存在したと判定した場合(誤ってマッチングした区間以外の実際の走行中の道路上の区間に相当する道路リンクが存在すると判定した場合)に、自車両が逆走状態であると判断する。よって、自車両が逆走状態であることを、より正確に判断することが可能になる。
【0057】
なお、本実施形態では、加速度センサ12として3軸加速度センサを用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、加速度センサ12は、センサ出力から傾斜度を求められるのであれば1軸加速度センサであってもよいし、2軸加速度センサであってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、加速度センサ12からのセンサ出力をもとに制御装置19で傾斜度を計測する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、周知の光学式の傾斜センサや周知の静電容量式の傾斜センサ等の傾斜センサのセンサ出力をもとに制御装置19で傾斜度を計測する構成としてもよい。
【0059】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 ナビゲーション装置(車両用運転支援装置)、11 位置検出器(位置検出手段)、12 加速度センサ、13 ジャイロスコープ、14 車速センサ、15 GPS受信機、16 地図データ入力器、17 記憶媒体(地図データ記憶手段)、18 操作スイッチ群、19 制御装置(マップマッチング手段、傾斜度計測手段、第1一致判定手段、再マップマッチング手段、第2一致判定手段、逆走状態判断手段)、20 音声出力装置(報知手段)、21 外部メモリ、22 表示装置(報知手段)、23 リモコンセンサ、24 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
水平面に対する道路上の区間ごとの傾斜度の情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記位置検出手段が検出した前記車両の現在位置と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データとに基づいて、前記車両の現在位置を道路上の区間にマッチングさせるマップマッチング処理を実行するマップマッチング手段と、
水平面に対する前記車両の傾斜度を計測する傾斜度計測手段と、
前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度が、前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上異なっているか否かを判定する第1一致判定手段と、
前記第1一致判定手段での判定結果に基づいて、前記車両が逆走状態であるか否かを判断する逆走状態判断手段と、を備えていることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記逆走状態判断手段で前記車両が逆走状態であるとの判断を行った場合に、前記車両が逆走状態であることを報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記傾斜度計測手段は、加速度センサの複数方向についてのセンサ出力をもとに、水平面に対する前記車両の傾斜度を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記逆走状態判断手段は、
前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度と前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度とが所定の値以上異なっていると前記第1一致判定手段で判定した場合に、当該区間から所定の範囲内に存在する道路上の区間のうち、前記車両の走行方向と逆方向の区間を対象として、前記マップマッチング手段によって再度のマップマッチング処理を実行させる再マップマッチング手段と、
前記再マップマッチング手段での再度のマップマッチング処理の結果、マッチングする区間が存在した場合に、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致しているか否かを判定する第2一致判定手段と、をさらに備え、
この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致していると前記第2一致判定手段で判定した場合に、前記車両が逆走状態であると判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記逆走状態判断手段は、
前記マップマッチング手段でマッチングさせた道路上の区間の傾斜度と前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度とが所定の値以上異なっていると前記第1一致判定手段で判定した場合に、当該区間から所定の範囲内に存在する道路上の区間のうち、前記車両の走行方向と順方向の区間も逆方向の区間も対象として、前記マップマッチング手段によって再度のマップマッチング処理を実行させる再マップマッチング手段と、
前記再マップマッチング手段での再度のマップマッチング処理の結果、マッチングする区間が存在した場合に、この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致しているか否かを判定する第2一致判定手段と、をさらに備え、
この区間の傾斜度が前記傾斜度計測手段で計測した傾斜度と所定の値以上一致していると前記第2一致判定手段で判定した場合に、前記車両が逆走状態であると判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
前記再マップマッチング手段は、さらに、ランプウェイに該当する道路上の区間のみを前記再度のマップマッチング処理の対象とすることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−160657(P2010−160657A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2027(P2009−2027)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】