説明

車両用駆動力配分制御装置

【課題】モータと車輪との間に介在する機構等の異常を速やかに検出し、その異常に対して他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制する処理を行なう車両用駆動力配分制御装置を提供する。
【解決手段】駆動源の駆動力を第1の駆動軸12L及び第2の駆動軸12Rに差動を許容して伝達する差動機構14と、モータ32と、モータ32に駆動電流を供給する駆動回路33と、モータ32によって第1及び第2の駆動軸12L,12Rの差動回転を制御する差動回転制御機構と、第1及び第2の駆動軸12L,12Rの差動回転を検出する差動回転検出手段9Ls,9Rsと、第1及び第2の駆動軸12L,12Rの差動回転、又はモータ32の駆動電流に基づいて、差動機構14、駆動回路33、又は差動回転制御機構の異常を検出する異常検出手段と、異常検出手段が異常を検出したとき、所定の異常処理を行う異常処理手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動力配分制御装置に関し、特に車両の左右輪へのトルク配分割合を制御可能な車両用駆動力配分制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の左右輪に配分される駆動力の割合をモータのトルクによって制御する駆動力配分装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の駆動力配分装置は、エンジンの駆動力を左右輪に配分する差動機構と、モータのトルクによって駆動される遊星歯車機構とを備え、モータのトルクが遊星歯車機構を介して左車輪と右車輪にそれぞれ逆方向に作用するように構成されている。これにより、例えば車両が右旋回する場合には、モータのトルクを制御することにより旋回外側にあたる左車輪のトルクを増大させ、かつ旋回内側にあたる右車輪のトルクを減少させるように作用させ、車両の旋回性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−144963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の装置においては、装置を構成する機構やモータに対して、装置の性能を十分に発揮できなくなる破損等の異常が発生する可能性がある。このような異常が発生した場合には、その異常を速やかに検出し、異常内容に応じた異常処置を行う必要がある。従来においては、例えばモータに供給される電流を測定してモータの過負荷等を検出することは可能であっても、モータと車輪との間に介在する機構等の異常を検出し、その異常に対して適切な処理を行うことはなされていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、モータと車輪との間に介在する機構等の異常を速やかに検出し、その異常に対して他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することが可能な車両用駆動力配分制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用駆動力配分制御装置は、車両の駆動源の駆動力を第1の駆動軸及び第2の駆動軸にこれら駆動軸間の差動を許容して伝達する差動機構と、モータと、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路と、前記モータのトルクによって前記第1及び第2の駆動軸の差動回転を制御する差動回転制御機構と、前記第1及び第2の駆動軸の差動回転を検出する差動回転検出手段と、前記差動回転検出手段が検出した前記第1及び第2の駆動軸の差動回転、又は前記モータに供給される前記駆動電流の電流量に基づいて、前記差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段が異常を検出したとき、所定の異常処理を行う異常処理手段と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、モータと各駆動軸との間に介在する差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構の異常を速やかに検出し、その異常に対して他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することができる。
【0009】
また、前記異常検出手段は、前記第1及び第2の駆動軸の差動回転と前記モータの回転とが、前記差動回転制御機構に応じて定められた所定の対応関係を満たさないときに異常を検出してもよい。
【0010】
この構成によれば、差動回転制御機構に応じて定められた所定の対応関係に基づいて、モータと各駆動軸との間に介在する差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構の異常を簡易に検出することができる。
【0011】
また、前記異常処理手段は、前記駆動回路による前記駆動電流の供給を遮断してもよい。
【0012】
この構成によれば、駆動電流の供給を遮断するため、異常発生によってモータが消費する不要な電力消費を抑制することができる。
【0013】
また、前記異常処理手段は、前記異常検出手段が前記差動回転制御機構の異常を検出したとき、前記車両の操舵装置の操舵角の変化を規制してもよい。
【0014】
この構成によれば、モータと各駆動軸との間に介在する差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構に異常が発生した場合であっても、急操舵による車両の回転等を防止することができる。
【0015】
また、前記第1及び第2の駆動軸が回転していない状態で、前記駆動回路を制御して前記モータにトルクを発生させる制御手段を備え、前記異常検出手段は、前記制御手段により前記トルクを発生させた際の前記モータの回転角度に応じて前記差動回転制御機構の異常を検出してもよい。
【0016】
この構成によれば、車両の駆動源始動時(走行開始前)に、モータと各駆動軸との間に介在する差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構の異常を早期に検出することができる。
【0017】
また、前記差動機構と前記差動回転制御機構とを連結するクラッチを備え、前記異常処理手段は、前記クラッチを解放して前記差動機構と前記差動回転制御機構との連結を解除してもよい。
【0018】
この構成によれば、クラッチの開放によって連結を解除するため、モータと各駆動軸との間に介在する差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構に発生した異常によって他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モータと車輪との間に介在する機構等の異常を速やかに検出し、その異常に対して他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る車両用駆動力配分制御装置が搭載された車両の概略構成図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャルの断面図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャルの概略構成図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る遊星歯車機構及び変速機構部分の拡大断面図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態に係るプラネタリギヤが組み込まれたプラネタリキャリヤの斜視図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置に関する制御フロー図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置のうち上位ECUに関する制御フロー図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置に関する制御フロー図。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置に関する制御フロー図。
【図10】図10は、本発明の第3の実施の形態に係る駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャルの概略構成図。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置に関する制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る車両用駆動力配分制御装置が搭載された車両の概略構成を示す。図1に示すように、車両1は、駆動源としてのエンジン2と、エンジン2の出力を変速するトランスミッション3を有する。また、車両1は後輪駆動車であり、運転者のステアリング操作によって、図示しない操舵装置のラック軸4に連結された前輪5FL,5FRが操舵される。各前輪5FL,5FRの近傍には、左前輪5FL及び右前輪5FRのそれぞれに対応して、前輪5FL,5FRの回転角速度をそれぞれ検知する一対の回転角速度センサ4Ls,4Rsが設けられている。
【0022】
トランスミッション3には、プロペラシャフト6が連結されており、そのプロペラシャフト6は、伝達トルクを制御可能なトルクカップリング7及びリヤディファレンシャル8を介して一対の後輪側のドライブシャフト9L,9Rと連結されている。そして、これらプロペラシャフト6、トルクカップリング7、リヤディファレンシャル8、及びドライブシャフト9L,9Rを介して、後輪5RL,5RRにエンジン2からの駆動力が伝達されるようになっている。
【0023】
また、後輪5RL,5RRに対応して、後輪5RL,5RRの回転角速度をそれぞれ検知する一対の回転角速度センサ9Ls,9Rsが設けられている。回転角速度センサ9Ls,9Rsは、差動回転検出手段の一例である。
【0024】
これらの回転角速度センサ4Ls,4Rs,9Ls,9Rsからの検出結果は、車両1に搭載された車両制御部10に入力される。車両制御部10は、ROM(Read Only Memory)等の記憶素子に記憶されたプログラムに従ってCPU(Central Processing Unit)が動作することにより、回転角速度センサ4Ls,4Rs,9Ls,9Rsの検出結果、ステアリングホイールの操舵角、運転者の操作によるアクセル開度等に基づいて、リヤディファレンシャル8を制御する信号を出力する。車両制御部10は、リヤディファレンシャル8と共に、本実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置を構成する。
【0025】
図2は、リヤディファレンシャル8の構成例を示す断面図である。リヤディファレンシャル8は、差動機構14と、モータ32と、遊星歯車機構31と、変速機構61とを有して構成されている。
【0026】
図2に示すように、第1の実施の形態のリヤディファレンシャル8は、略円筒状のハウジング11を備えており、そのハウジング11内には、ドライブシャフト9L,9Rがそれぞれ一体回転するように連結される第1及び第2の駆動軸12L,12Rが、その軸線方向に沿うように収容されている。また、ハウジング11内には、これら第1及び第2の駆動軸12L,12Rと略直交するように、トルクカップリング7(図1参照)の出力側に連結された入力軸13が収容されている。そして、これら第1及び第2の駆動軸12L,12R及び入力軸13は、遊星歯車式の差動機構14により連結されている。
【0027】
ハウジング11は、隔壁部15を介して第1ハウジング16a及び第2ハウジング16bを連結することにより形成されている。そして、差動機構14は、第1ハウジング16a内に収容され、遊星歯車機構31及び変速機構61は、第2ハウジング16b内に収容されている。
【0028】
差動機構14は、略円筒状に形成されたデフケース17を有しており、そのデフケース17は、第1及び第2の駆動軸12L,12Rと同軸上で、軸受18a,18bにより回転自在に支持されている。そして、第1及び第2の駆動軸12L,12Rの各基端部12La,12Raは、それぞれデフケース17内に配置されている。
【0029】
デフケース17は、その内周面にインターナルギヤ19が形成されると共に、外周にはリングギヤ20が固定されている。このデフケース17は、軸受18aに支持された第1部材17a及び軸受18bに支持された第2部材17bを連結してなり、リングギヤ20は、これら第1部材17a及び第2部材17bと共にボルト締結されることにより、デフケース17の外周に固定されている。そして、このリングギヤ20には、入力軸13の先端に形成されたドライブピニオン21が噛み合わされている。
【0030】
また、デフケース17内に配置された第1の駆動軸12Lの基端部12Laにはサンギヤ22が形成されており、サンギヤ22とデフケース17の内周面との間には、複数のプラネタリギヤ対23が配置されている。各プラネタリギヤ対23は、インターナルギヤ19に噛み合わされた第1プラネタリギヤ23a及びサンギヤ22に噛み合わされた第2プラネタリギヤ23bからなり、これら各第1プラネタリギヤ23a及び各第2プラネタリギヤ23bは、互いに噛み合わされた状態で、プラネタリキャリヤ24によりそれぞれ自転可能且つ公転可能に保持されている。そして、プラネタリキャリヤ24は、デフケース17内に配置された第2の駆動軸12Rの基端12Raと相対回転不能に連結されている。
【0031】
すなわち、トルクカップリング7を介して入力軸13に伝達されるプロペラシャフト6の回転は、その先端のドライブピニオン21に噛み合わされたリングギヤ20からデフケース17へと伝達される。そして、デフケース17と共に、デフケース17に連結されたサンギヤ22及びプラネタリキャリヤ24が回転することにより、その駆動力が第1及び第2の駆動軸12L,12R、すなわち両ドライブシャフト9L,9Rから左右の後輪5RL,5RRへと伝達される。
【0032】
また、車両旋回時等、左右の後輪5RL,5RRに回転差が生じた場合には、各第1プラネタリギヤ23a及び各第2プラネタリギヤ23bのそれぞれが、自転しつつサンギヤ22の周りを公転する。これにより、差動機構14は、第1及び第2の駆動軸12L,12R間の差動を許容しながらトルクを配分可能に構成されている。
【0033】
そしてリヤディファレンシャル8は、エンジン2の駆動力の左右の後輪5RL,5RRへの配分比率を制御可能な駆動力配分装置30としての機能を有している。
【0034】
図3は、リヤディファレンシャル8の概略の構成例を示す構成図である。図2及び図3に示すように、第1の駆動軸12Lと第2の駆動軸12Rとの間には、これら第1及び第2の駆動軸12L,12R間に回転差を発生させることが可能な遊星歯車機構31及び変速機構61が設けられている。遊星歯車機構31及び変速機構61は、第1及び第2の駆動軸12L,12Rの差動回転を制御する差動回転制御機構60を構成する。
【0035】
遊星歯車機構31は、中空状に形成されたモータ32と駆動連結され、モータ32の作動、すなわち制御用トルクとして遊星歯車機構31に入力されるモータトルクに基づいて第1及び第2の駆動軸12L,12R間に回転差を生じさせ、図1に示すプロペラシャフト6から入力されるエンジン2の駆動力を走行状態に応じた比率で第1及び第2の駆動軸12L,12Rに配分することが可能である。
【0036】
図4は、上記リヤディファレンシャル8の一部を構成する遊星歯車機構31及び変速機構部分61の拡大断面図を示す。図2乃至図4に示すように、遊星歯車機構31は、ピッチ円径の異なる第1ピニオン42及び第2ピニオン43を相対回転不能に連結してなる複数(4つ)のプラネタリギヤ44と、これらのプラネタリギヤ44を公転可能かつ自転可能に支持するプラネタリキャリヤ45とを備えている。プラネタリギヤ44は、第2ピニオン43のピッチ円径が、第1ピニオン42のピッチ円径よりも僅かに大きく形成されている。
【0037】
図5は、リヤディファレンシャル8の一部を構成する複数のプラネタリギヤ44が組み込まれたプラネタリキャリヤ45の斜視図を示す。図5に示すように、プラネタリキャリヤ45は、有底円筒状に形成されており、プラネタリキャリヤ45の周壁46には、プラネタリギヤ44の数に対応する複数の開口部47が形成されている。
【0038】
開口部47は、プラネタリキャリヤ45の周壁46に、周方向に沿って等間隔に4箇所形成されている。そして、各プラネタリギヤ44は、該各プラネタリギヤ44を構成する第1ピニオン42及び第2ピニオン43の各歯部42a,43aを、対応する各開口部47から筒外に臨ませた状態で、プラネタリキャリヤ45内において回転自在に収容されている。なお、このようなプラネタリギヤのギヤの支持構造は、後述する変速機構61側のプラネタリギヤ64についても同様であるため、括弧内に変速機構61に対応する符号を付し、変速機構61の構成についての詳細な説明を省略する。
【0039】
また、図4に示すように、プラネタリキャリヤ45の両底部48a,48bには、各開口部47に対応する位置において、互いに対向するように形成された支持穴49a,49bが形成されている。各プラネタリギヤ44は、その軸線方向に沿って延びる回転軸44aがこれら支持穴49a,49b内に差し込まれることにより、プラネタリキャリヤ45に対して回転自在に支持されている。
【0040】
また、図4及び図5に示すように、プラネタリキャリヤ45の両底部48a,48bの中心、すなわちプラネタリキャリヤ45の軸心部には、その軸線方向に沿って第1の駆動軸12Lの挿通が可能な挿通孔50a,50bが形成されている。そして、プラネタリキャリヤ45は、これら挿通孔50a,50bに第1の駆動軸12Lが挿通され、第1の駆動軸12Lにより回転自在に支持されている。
【0041】
図2乃至図4に示すように、プラネタリキャリヤ45の上記各開口部47を介して外部に突出された各第1ピニオン42及び第2ピニオン43には、それぞれ第1リングギヤ51及び第2リングギヤ52が噛み合わされている。そして、第2ピニオン43に噛み合わされた第2リングギヤ52は、差動機構14を構成するプラネタリキャリヤ24に対して相対回転不能に連結されている。
【0042】
第1の実施の形態の第2リングギヤ52は、図2乃至図4に示すように、第1の駆動軸12Lが挿通される筒状部52aを有し、この筒状部52aがハウジング11に設けられたボール軸受53a及び第1の駆動軸12Lとの間に介在されたニードル軸受54によって回転可能に支持されている。そして、第2リングギヤ52は、この筒状部52aの先端が差動機構14を構成するプラネタリキャリヤ24にスプライン嵌合されることにより、プラネタリキャリヤ24(差動機構14)を介して、第2の駆動軸12Rと連結されている。
【0043】
また、図4及び図5に示すように、プラネタリキャリヤ45の周壁46には、径方向外側に延びるフランジ部55が設けられており、該フランジ部55の外周には、外歯55aが形成されている。このフランジ部55は、制御用駆動源であるモータ32に連結されている。
【0044】
モータ32は、例えばブラシレスモータからなり、遊星歯車機構31の径方向外側に同軸配置され、図3に示す駆動回路33からのモータ電流の供給によって回転する。駆動回路33は、図示しないバッテリーを電力供給源とし、PWM(Pulse Width Modulation)制御によるスイッチングによってモータ電流を調整する。また、プラネタリキャリヤ45は、その周壁46に設けられたフランジ部55(外歯55a)がモータ32の回転子の内周にスプライン嵌合されることにより、モータ32と連結されている。
【0045】
また、第1の実施の形態の駆動力配分装置30は、図2乃至図4に示すように、遊星歯車機構31に設定された変速比を補正するための変速機構61を備えている。そして、第1ピニオン42に噛み合わされた第1リングギヤ51は、この変速機構61を介して第1の駆動軸12L側に連結されている。
【0046】
すなわち、遊星歯車機構31には、プラネタリギヤ44の第1ピニオン42と第2ピニオン43とのピッチ円径差による所定のギヤ比が存在することから、変速機構61を有しない場合には、走行時に第1及び第2の駆動軸12L,12R間に差動が発生していなくてもプラネタリキャリヤ45が回転することになり、モータ32等に負荷がかかる。
【0047】
このため、遊星歯車機構31の第1リングギヤ51と第1の駆動軸12Lとの間には、遊星歯車機構31に設定された変速比を相殺する変速機構61が介在している。これにより、第1及び第2の駆動軸12L,12R間に差動が発生していない場合には、車両1が走行しても、モータ32が回転しないように構成されている。
【0048】
より具体的には、図4に示すように、変速機構61は、プラネタリギヤ44を構成する第1ピニオン42と同一のピッチ円径を有する第3ピニオン62、及び第2ピニオン43と同一のピッチ円径を有する第4ピニオン63を相対回転不能に連結してなる複数(4つ)のプラネタリギヤ64を有し、これらの各プラネタリギヤ64は、プラネタリキャリヤ65により公転可能且つ自転可能に支えられている(図5参照)。このプラネタリキャリヤ65は、その軸心に形成された挿通孔70a,70bに挿通された第1の駆動軸12Lに回転自在に支持されている。
【0049】
また、図4に示すように、プラネタリキャリヤ65の各開口部67から外部に突出された各第3ピニオン62及び第4ピニオン63には(図5参照)、それぞれ第1リングギヤ51と同一の構成を有する第3リングギヤ71、及び第2リングギヤ52と同一の構成を有する第4リングギヤ72が噛み合わされている。第3ピニオン62に噛み合わされた第3リングギヤ71は、遊星歯車機構31側の第1リングギヤ51と相対回転不能に連結され、第4リングギヤ72は、第1の駆動軸12Lと相対回転不能に連結されている。そして、各プラネタリギヤ64を支えるプラネタリキャリヤ65は、その周壁66に設けられたフランジ部75(外歯75a、図5参照)を連結部として、ハウジング11と相対回転不能に連結されている。
【0050】
なお、第1の実施の形態においては、第1リングギヤ51及び第3リングギヤ71は、筒状のスリーブ77の内周両端に同一形状の内歯を並列に配置することにより一体に形成されている。また、第4リングギヤ72は、図4に示すように、第1の駆動軸12Lが挿通される筒状部72aを有しており、この筒状部72aがハウジング11に設けられたボール軸受53bにより回転自在に支持されている。そして、この筒状部72aが第1の駆動軸12Lにスプライン嵌合されることにより、第1の駆動軸12Lと相対回転不能に連結されている。
【0051】
以上のように構成された駆動力配分装置30においては、第1及び第2の駆動軸12L,12R間に差動が発生していない場合には、モータ32に連結された遊星歯車機構31のプラネタリキャリヤ45は回転しない。一方、モータトルクによりフランジ部55を介してプラネタリキャリヤ45を回転駆動することにより、第1及び第2の駆動軸12L,12R、すなわち両ドライブシャフト9L,9R間に回転差を生じさせることができる。そして、その制御用トルクとして遊星歯車機構31に入力されるモータトルクを制御することにより、両ドライブシャフト9L,9Rに配分するエンジン2の駆動力の比率を可変制御することが可能となっている。
【0052】
次に、第1の実施の形態の駆動力配分装置30を制御するための車両用駆動力配分制御装置の動作について図6を参照して説明する。
【0053】
図6は、車両制御部10が制御手段及び異常処理手段として実行する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば車両制御部10に電源が投入されたときに開始される。
【0054】
車両制御部10はまず、ini_flag,fix_flag,res1及びres2の各パラメータを初期値0に設定する(S101)。ここで、ini_flagは、エンジン2始動直後であるか否かを判断するために用いられるフラグであり、fix_flagは、駆動力配分装置30が故障したか否か判断した時に用いられるフラグである。また、res1は、エンジン始動時の差動回転制御機構に対する固着判定制御においてモータ32駆動前のレゾルバセンサ55s出力値を保存するためのパラメータであり、res2は、エンジン始動時の差動回転制御機構に対する固着判定制御においてモータ32駆動後のレゾルバセンサ55s出力値を保存するためのパラメータである。
【0055】
次に、車両制御部10は、エンジンスタートの有無を判断する(S102)。エンジンがスタートしていなければ(S102:No)待機し、スタートしていれば(S102:Yes)次のステップS103へ進む。
【0056】
次に、車両制御部10は、差動回転制御機構60の固着判定が既に処理されたか否かを判断する(S103)。具体的には、ステップS101の処理において初期値に設定されたini_flagが0であるか否かが判断される。エンジン始動直後においては、ini_flagの値は0であるため(S103:Yes)、次のステップS104の処理へ進む。
【0057】
次に、車両制御部10は、ini_flagの値を1に変更する(S104)。これによりエンジン始動後において以下の差動回転制御機構60の固着判定の処理が1度だけ行なわれることとなる。具体的には、ini_flagの値が1に変更されることにより、次周期以降においてはステップS103の判断において0ではないと判断され(S103:No)、再度イグニッションスイッチの操作がなされない限り、S104以降の差動回転制御機構60の固着判定の処理は実行されない。
【0058】
次に、車両制御部10は、図3に示されるフランジ部55近傍に設置され、フランジ部55の回転角度を検出するレゾルバセンサ55sからの出力値であるangle_resを取得し、res1として保存する(S105)。
【0059】
次に、車両制御部10は、車両1の発進前において、モータ32が所定の角度以上に回転するように予め設定された電流量を駆動回路33からモータ32へ供給させる(S106)。本実施の形態では、後輪5RL,5RRが回転していない状態で、モータ32が少なくとも1deg回転するトルク、より具体的には5deg程度回転するトルクに応じた電流量を駆動回路33からモータ32へ供給する。ここで、差動回転制御機構60に固着が存在しなければ、モータ32と連結しているフランジ部55を介してプラネタリキャリヤ45も5deg程度回転することとなる。なお、車両1に備えつけられたパーキングブレーキ(サイドブレーキ)等によって後輪5RL,5RRが固定されている場合であっても、モータ32と後輪5RL,5RR間の減速比が極めて大きく設定されているため、差動回転制御機構60に固着が存在しなければ、ドライブシャフト9L,9Rの捩れ等により、プラネタリキャリヤ45を少なくとも5deg程度回転させることが可能である。
【0060】
次に、車両制御部10は、モータ32にフランジ部55を約5deg回転させるだけのトルクを発生させた状態で、レゾルバセンサ55sからの出力値であるangle_resを取得し、res2として保存する(S107)。
【0061】
次に、車両制御部10は、ステップS107の処理において保存されたres2とS105の処理において保存されたres1との差の絶対値が、1degよりも大きい値であるか否かを判断する(S108)。この判断の結果、res2とres1との差の絶対値が1degよりも大きい場合には(S108:Yes)、そのときのfix_flagの値の情報をそのまま図示しない上位ECU(Electronic Control Unit)に送信する(S109)。一方、res2とres1との差の絶対値が1degよりも大きくない場合には(S108:No)、fix_flagの値を1とし(S110)、そのfix_flagの値の情報を図示しない上位ECUに送信する(S109)。
【0062】
ここで、差動回転制御機構60に固着がなく、モータ32に発生したトルクによってフランジ部55が正常に回転する場合は、その回転角が1degよりも大きい値となるため(S108:Yes)、fix_flagが0の初期値のまま上位ECUへ送信される(S109)。つまり、差動回転制御機構60に固着が存在しない旨が上位ECUに送信される。一方で、モータ32への電流印加を行なってもフランジ部55が正常に回転しない場合、つまり、ステップS107の処理において保存されたres2とステップS105の処理において保存されたres1との差の絶対値が1deg以下の場合は(S108:No)、ステップS110の処理に進んで、差動回転制御機構60で固着が存在していると判定することができるため、fix_flagの値を1として保存する。そして、このfix_flagの情報が上位ECUへ送信される(S109)。
【0063】
詳細は後述するが、上位ECUにおいては、差動回転制御機構60で固着が存在しているとの判定結果(fix_flagが1)に基づいて、車両1の運転者に注意を促すための処理が行なわれ、最終的には、車両1のエンジン停止(イグニッションオフ)に至るまで運転者に注意を促すための処理が行なわれる。
【0064】
次に、車両制御部10は、上位ECUで行なわれる運転者に対する注意を促すための処理によって、運転者がイグニッションオフ(車両1のエンジン停止)を行なったか否かを判定する(S111)。ここで、イグニッションがオフ状態にあれば(S111:Yes)、第1の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置の処理は終了する。一方で、イグニッションがオフ状態にない場合には(S111:No)、fix_flagが1であるか否かを判定する(S112)。
【0065】
具体的には、上述したように、fix_flagが1である場合には、上位ECUにおいて車両1の運転者に注意を促すための処理が行なわれる。詳細は後述するが、上位ECUにおいては、上記処理と同時に、モータ32への電流印加が制限されることになるため、後続のステップS113での判断が不要となる。そのため、車両制御部10は、ステップS112の判断においては、fix_flagが1である場合(S112:Yes)、結合子1を介してステップS103へ進んで、イグニッションがオフ状態(S111:Yes)になるまで所定の処理を繰り返す。一方で、fix_flagが1でない場合(S112:No)、ステップS113の処理へ進むこととなる。
【0066】
次に、車両制御部10は、上位ECU等から出力されたモータ32を駆動するための電流印加信号の有無について判定する(S113)。ここで、電流印加信号がある場合(S113:Yes)、結合子2を介して図8のステップS301の処理へ進む。一方で、電流印加信号がない場合(S113:No)、結合子1を介してステップS103へ進む。ステップS103以降の処理については、上述のとおりであり、イグニッションがオフ状態(S111:Yes)になるまで所定の処理を繰り返す。
【0067】
以上より、車両1のエンジン2の始動時(走行開始前)に、モータ32と各駆動軸12L,12Rとの間に介在する差動機構14又は差動回転制御機構60等の異常を早期に検出することができる。
【0068】
続いて、図7を参照して上位ECUの処理の一部を説明する。
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用駆動力配分制御装置のうち上位ECUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0069】
上位ECUは、車両制御部10のステップS109の処理により、fix_flagの情報を受信する(S201)。
【0070】
次に、上位ECUは、ステップS201の処理において受信したfix_flagが1でない場合(S202:No)、つまり、fix_flagが0から1になるまで、ステップS201でfix_flagの信号を受信して、ステップS202の判断においてfix_flagが1であるか否かの判定処理を繰り返す。
【0071】
上位ECUは、ステップS201の処理において受信したfix_flagが1である場合(S202:Yes)、ステップS203の処理へ進んでモータ32への電流印加信号出力を停止させる。つまり、車両制御部10によるステップS108の固着判定において駆動力配分装置30に異常が生じたと判定し、異常処理を行う。この異常判定以降については、上位ECUは、モータ32への電流印加を停止する制御を行なうことにより、駆動力配分装置30において更に発生し得る異常の拡大を阻止する。なお、fix_flagが1に転じた以降の上位ECUにおける処理(特に、ステップS203並びに後述するステップS205、S206及びS207)は、本発明に係る異常処理手段の一例に相当する。
【0072】
電流印加信号出力の停止後、上位ECUは、車両1が走行中であるか停車中であるかを判定する(S204)。具体的には、上位ECUは、回転速度センサ4Ls,4Rs,9Ls,9Rsの検出結果の平均値を算出し、その算出した平均値を車両1の車速として推定することで、走行中であるか停車中であるかを判定する。車両1が走行中、つまり、推定した車速が0でない場合(S204:Yes)、ステップS205の処理へ進む。
【0073】
上位ECUは、ステップS205の処理において、車両1の運転者に対して走行中の車両1を減速又は停止させるように注意を促す。具体的には、図示しない車内ディスプレイに減速又は停止させるような注意を視覚的に表示する。またこの視覚的表示に替えて又は加えて、図示しないスピーカーを介して減速又は停止させるような注意を聴覚的に伝えてもよい。
【0074】
また、車両1に備えつけられた電子パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)装置等の操舵装置に対して車両1の旋回操作を制限することにより、運転者に注意を促すことも有効である。そのため、上位ECUは、走行中の車両1に対して例えば瞬時に又は段階的に車両1の旋回操作を制限する操舵装置の操作リミッタを開始する(S206)。操舵装置の操作リミッタとして、例えば、操舵装置の旋回中における操舵角の変化を規制することや車両1の直進走行を維持するように操舵装置の操舵角を規制することなどが考えられる。操舵装置の操作リミッタが開始することによって、上位ECUは、車両1の運転者に対し走行中の車両1を減速又は停止させるように体感的に注意を更に促すことができる。なお、推定した車速が0に至るまで、上位ECUは、ステップS204〜S206の処理を繰り返す。
【0075】
一方で、車両1が停止中、つまり、推定した車速が0である場合(S204:No)、上位ECUは、車両1の運転者に対してエンジンを停止させるように注意を促す(S207)。具体的には、図示しない車内ディスプレイに減速又は停止させるような注意を視覚的に表示する。またこの視覚的表示に替えて又は加えて、図示しないスピーカーを介して減速又は停止させるような注意を聴覚的に伝えてもよい。
【0076】
次に、上位ECUは、車両1のエンジンが停止しているか否かを判定する(S208)。エンジンが停止している場合(S208:Yes)、上位ECUの処理は終了する。一方で、エンジンが停止していない場合(S208:No)、車両1が停車中の場合において、上位ECUは、エンジンが停止するまでステップS204,S207及びS208の処理を繰り返す。
【0077】
以上より、車両1の走行が不安定になること未然に防止することができ、ひいては車両1を停止させることができる。
【0078】
ところで、前述の通り車両1は後輪駆動車であることから、車両1の旋回時において車両1がオーバーステア状態になりやすい傾向にある。そのため、モータ32によるモータトルクを発生させて、両ドライブシャフト9L(12L),9R(12R)に配分するエンジン2の駆動力の比率を積極的に制御することが好ましい。そのため、図1に示したエンジン2等の重量物を搭載する車両1の重量との関係で両ドライブシャフト9L(12L),9R(12R)に大きなトルクを発生させる必要がある。その結果、モータ32は、大きな電力を消費することとなる。
【0079】
ここで、モータトルクが実際に発生したか否かは、図3に示す駆動回路33からモータ32へ供給した実際の電流量とモータ32が発生した実際のモータトルクをそれぞれ検出して判定することが好ましい。しかし、図2に示す第1の実施の形態の駆動力配分装置30は、比較的コンパクトな構造となるよう設計されているため、モータトルクの検出に必要なトルクセンサの取り付け部分における十分な剛性を確保することが困難である。よって、モータ32に対する制御は、一般的にオープンループ制御となってしまい、駆動回路33又はモータ32においてショートカット等の故障となった場合、その故障を検知することが困難である。オープンループ制御においては、駆動回路33からモータ32へ電流を供給しても、所望のモータトルクを発生しないまま大きな電力を消費してしまうおそれがある。
【0080】
そこで、トルクセンサを取り付けることなく、モータ32の故障を判定する制御方法について図8を参照して説明する。
図8は、モータ32の故障の判定に関して車両制御部10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0081】
図6に示すステップS113の判断から結合子2を介して車両制御部10の処理が図8に示すステップS301へ進むと、車両制御部10は、電流印加信号に基づいた所定量の電流をモータ32に印加する。
【0082】
次に、車両制御部10は、電流測定装置(図示略)によって、駆動回路33からモータ32へ実際に供給された実電流値を測定すると共に、回転角速度センサ4Ls,4Rs,9Ls,9Rsによって、各車輪5FL,5FR,5RL,5RRの車輪速をそれぞれ測定する。また、測定した各車輪5FL,5FR,5RL,5RRの車輪速に基づいて、前車輪と後車輪それぞれの左右車輪速差を算出する(S302)。
【0083】
次に、車両制御部10は、ステップS302の処理において測定した今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲(例えば電流印加信号からテーブル等により決定)内に納まっているか否かを判断する(S303)。なお、このステップS303、及び後述するステップS304,S306及びS307の処理は、異常検出手段としての処理の一例に相当する。
【0084】
ここで、今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まっている場合(S303:Yes)、モータ32は正常であり、電流印加信号に基づいた電流値が適切に出力されていると判断することができるため、結合子1を介して図6に示すステップS103の処理に戻る。一方、図8のステップS303の判断において今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まっていない場合(S303:No)、車両制御部10は、ステップS304の処理を実行する。
【0085】
ステップS304の処理において、車両制御部10は、モータ32のモータ電流が過電流となっているか否かを判断する。具体的には、ステップS302の処理において測定した今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標上限値(例えば電流印加信号からテーブル等により決定)より大きい値となっているか否かを判断する(S304)。
【0086】
ここで、今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標上限値より大きい場合(S304:Yes)は、駆動回路33又はモータ32の少なくとも一部にショートカットが生じているおそれがあるため、モータ32近傍に備えられたリレー(図示略)により電流を遮断する(S305)。このステップS305の処理は、異常処理手段としての処理の一例に相当する。これにより、モータ32がフリー状態になると共に、モータ32への不要な電力供給を制限することができる。
【0087】
また、車両制御部10は、ステップS305の処理において、fix_flagの値を1として保存する。fix_flagの値を1とすることによって、図6のステップS112の判断結果が肯定的(Yes)となるので、モータ32への電流印加を制限することができる。
【0088】
一方で、今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標上限値以下の場合、つまり、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲を下まわる場合(S304:No)、ステップS306の判断へ進む。
【0089】
車両制御部10は、ステップS306の判断において、今回における実電流値Ic(今回値)と前回における実電流値Ip(前回値)とを比較する。比較の結果、今回値と前回値とが互いに概ね等しい場合(S306:Yes)、車両制御部10は後述するステップS307に処理を進める。
【0090】
一方、ステップS306における比較の結果、今回値と前回値が互いに異なる値である場合、つまり、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まっておらず、且つ、前回値と比べて今回値が実質的に変化している場合(S306:No)、図3に示した駆動回路33からモータ32への供給電流値が制御周期毎に増加していく過程であると判断することができるため、実電流値が電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まるようになるまで電流供給を続ける。そのため、図8のステップS308の処理において、今回値を前回値として保存して、モータ32への電流印加(S301)など、上述した処理を繰り返す。
【0091】
また、車両制御部10は、ステップS307の判断において、算出した車輪速差の絶対値が、車両1の走行状況に応じた車輪速差目標範囲(例えば走行状況からテーブル等により決定)の下限値(目標下限値)以上であるか否かを判断する。ここで、車輪速差の絶対値が目標下限値以上である場合(S307:Yes)、今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まっていない原因として、車両1の車輪5FL,5FR,5RL,5RRのうち少なくとも1つの車輪がスリップ状態(空転状態)にあると判断することができる。よって、車両制御部10は、スリップ状態が解消するまで、今回における実電流値Ic(今回値)を前回値として保存し(S308)、モータ32への電流印加(S301)など、上述したモータ32の故障判定を繰り返す。
【0092】
一方、車輪速差の絶対値が、目標下限値に満たない場合(S307:No)、今回値と前回値との比較において、実電流値の増加が認められず、且つ、車輪速差が十分な値でないため、図3に示した駆動回路を構成する駆動回路33又はモータ32において断線があるものと判断することができる。このため、車両制御部10は、モータ32近傍に備えられたリレー(図示略)を切り替え、モータ32供給される電流を遮断する(S305)。これにより、モータ32がフリー状態になると共に、駆動回路33からモータ32への不要な電力供給を制限することができる。
【0093】
また、ステップS305の処理においては、fix_flagの値を1として保存する。fix_flagの値を1として保存することによって、図6のステップS112の判断結果が肯定的(Yes)となるので、モータ32への電流印加を制限することができる。
【0094】
以上より、駆動電流の供給を遮断するため、異常発生によってモータ32が消費する不要な電力消費を抑制することができる。
【0095】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の車両用駆動力配分制御装置を図9等に基づいて説明する。
【0096】
図9は、第2の実施の形態に係る車両制御部10の処理の一例を示すフローチャートである。なお、第2の実施の形態については、上述の第1の実施の形態と比較し、ステップS303の判断において肯定的な判断がなされた場合(S303:Yes)、測定した各車輪速及び算出した車輪速差に基づいて、走行時におけるモータ32の固着を判定する制御処理のみが相違するものである。したがって、その相違点を中心に説明し、第1の実施の形態と同一構成および同一の処理については、説明を省略する。
【0097】
第1の実施の形態においては、図8に示すように、トルクセンサを備えていないため、駆動回路33からモータ32へ実際に供給した実電流値と回転角速度センサ4Ls,4Rs,9Ls,9Rsによって各車輪5FL,5FR,5RL,5RRの車輪速を制御周期毎にそれぞれ測定していた。また、測定した各車輪5FL,5FR,5RL,5RRの車輪速に基づいて前車輪と後車輪それぞれの左右車輪速差を制御周期毎に算出し、これらの測定値及び算出値からモータ32の故障を判断していた。これにより、駆動回路33又はモータ32においてショートカット又は断線等の故障が生じた場合、モータ32近傍に設置してあるリレーを遮断する制御を行うようになっていた。
【0098】
これに対して、第2の実施の形態においては、上述した測定値及び算出値からモータ32の固着も追加的に判断する。また、この判断結果に基づいて、例えば、車両1に備えつけられたEPS等の操舵装置による車両1の旋回操作を制限する制御をおこなう。
【0099】
図9のステップS302の処理(図8のステップS302と同様の処理)において測定した今回における実電流値Icが、電流印加信号に基づいた出力すべき電流値の目標範囲内に納まっている場合(S303:Yes)、第2の実施の形態においては、図9のステップS310の判断へ進む。
【0100】
車両制御部10は、上述のステップS302の処理において算出した後輪の車輪速差が、少なくとも電流印加信号、操舵装置(図示略)の操舵角及び車両1に備えつけられたヨーレートセンサ(図示略)の検出値等に基づいた後輪の車輪速差の目標範囲(例えばテーブル等により決定)内に納まっているか否かを判断する(S310)。このステップS310の処理、及び後述するステップS311及びS312の処理は、異常検出手段としての処理の一例に相当する。
【0101】
ここで、算出した後輪の車輪速差が、上述の後輪の車輪速差の目標範囲内に納まっている場合(S310:Yes)、固着が存在せずモータ32は正常であると判断することができるため、車両制御部10は、結合子1を介して図6のステップS103の判断へ処理を戻す。一方、算出した後輪の車輪速差が、上述の後輪の車輪速差の目標範囲内に納まっていない場合(S310:No)、図9のステップS311の判断へ進む。
【0102】
車両制御部10は、ステップS311において、各前輪5FL,5FRの車輪速が0であるか否かを判断する。ここで、各前輪5FL,5FRの車輪速が0である場合(S311:Yes)、車両1は後輪駆動車であることから、車両1が停止状態(車両速度が0の状態)である可能性が高いため、後述するモータ32の固着判定を行なわずに、結合子1を介して図6のステップS103に処理を戻す。一方、少なくとも各前輪5FL,5FRの車輪速が0でない場合(S311:No)には、ステップS312の判断へ進む。
【0103】
車両制御部10は、ステップS312においては、各後輪5RL,5RRの車輪速が0であるか否かを判断する。ここで、各後輪5RL,5RRの車輪速が0である場合(S312:Yes)、モータ32が固着している可能性が高いため、モータ32の固着判定を行なうと共に、fix_flagの値を1とする(S313)。つまり、fix_flagの値を1とすることによって、図6のステップS112の判断が肯定的(Yes)となるため、上位ECUにおいて、走行中の車両1に対して瞬時に又は段階的に旋回操作を制限する操舵装置の操作リミッタを開始する処理(S206)等を行うことができる。これら処理は、異常処理手段としての処理の一例に相当する。これにより、モータ32が固着した場合であっても、急操舵による車両1のスピンを防止することができ、ひいては車両1を完全に停止させることが可能となる。
【0104】
なお、ステップS205の処理では、車両1の運転者に対して車両1の減速又は停止を促すための処理を行なっているが、上位ECUが自発的(アクティブ)に所定のブレーキ(制動)制御又は所定のエンジン制御の処理を行なうことによって、車両1を完全に停止させてもよい。また、ステップS205の処理においては、車輪1に備えつけられているハザードを自発的(アクティブ)に点滅させることによって、車両1の周囲(特に後続車など)に対し車両1が緊急的に停止する可能性があることを認知させてもよい。これにより、車両1をより安全に停止させることが可能となる。
【0105】
一方、少なくとも各後輪5RL,5RRの車輪速が0でない場合(S312:No)、算出した後輪の車輪速差が上述の後輪の車輪速差の目標範囲内に納まっていないが、車両1は走行状態にある可能性が高いと判断することができる。このため、モータ32の固着判定を行なわずに、結合子1を介してステップS103に処理を戻す。
【0106】
なお、上記で説明を省略した構成および処理等は、第1の実施の形態とおおむね同じである。
【0107】
以上より、急操舵による車両1のスピンを防止することができ、ひいては車両1を安全に停止させることができる。
【0108】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態の車両用駆動力配分制御装置について図10及び図11を中心に参照して説明する。
【0109】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャル8の概略の構成例を示す構成図である。
【0110】
なお、第3の実施の形態については、上述の第1の実施の形態又は第2の実施の形態と比較し、走行時において差動回転制御機構60の一部が固着した場合、駆動力配分装置30の差動回転制御機構60と第1及び第2の駆動軸12L,12Rとの各連結部に、第1及び第2の駆動軸12L,12Rから差動回転制御機構60を構成する遊星歯車機構31及び変速機構61を分離可能なクラッチ機構82,83が設けられていること、及び、これらクラッチ機構82,83の開閉制御を行なうことのみが相違するものである。したがって、それらの相違点を中心に説明し、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同一構成および同一の処理については、説明を省略する。
【0111】
上述のように、駆動力配分装置30を車両1の左右駆動力配分として用いた場合、車両1の走行状態によっては、各駆動軸12L,12Rに対して衝撃的な逆入力トルクが印加されることがある。そして、その衝撃的な逆入力トルクが差動回転制御機構60に印加されることで、差動回転制御機構60を構成する各ギヤが破損する可能性があり、その破損したギヤが噛み込むことによって、駆動力配分装置30の駆動力配分装置としての機能のみならず、本来のディファレンシャル装置としての機能までもが低下してしまうおそれがある。
【0112】
この点を踏まえ、第3の実施の形態の駆動力配分装置30において、その差動回転制御機構60と第1及び第2の駆動軸12L,12Rとの各連結部には、第1及び第2の駆動軸12L,12Rから差動回転制御機構60を構成する遊星歯車機構31及び変速機構61を分離可能なクラッチ機構82,83が設けられている。そして、差動回転制御機構60を構成する各ギヤが破損してその破損したギヤが噛み込むこと等によって固着した場合、これらのクラッチ機構82,83を切り離すことによって、第1及び第2の駆動軸12L,12Rから差動回転制御機構60を分離する。
【0113】
第3の実施の形態においては、図10に示すように、遊星歯車機構31と第2の駆動軸12R(差動機構14のプラネタリキャリヤ24)との連結部、及び変速機構61と第1の駆動軸12Lとの連結部には、車両1の走行状態に応じた車両制御部10からの制御信号に基づいてこれら連結部を切り離すクラッチ機構82,83が設けられている。なお、クラッチ機構82,83は、一般的な湿式多板クラッチを用いるが、乾式多板クラッチ等の他種のクラッチを用いてもよい。
【0114】
次に、図11を参照してクラッチ機構82,83の制御について説明する。
図11は、第3の実施の形態に係る車両制御部10の処理の一例を示すフローチャートである。
【0115】
図11に示すフローチャートは、図6のステップS113の判断において否定の判断を行なった場合、図8のステップS303の判断において肯定の判断を行なった場合(同図のステップS305でリレー遮断を行なった後を含む。)及び図9のステップS310の判断において肯定の判断を行なった場合(同図のステップS305の処理においてリレー遮断を行なった後、同図のステップS311の判断において肯定の判断を行なった場合、同図のステップS312の判断において否定の判断を行なった場合及び同図のステップS313の判断においてモータ固着判定を行なった後を含む。)に続く処理の内容を示すものである。従って、図11に示すフローチャートは結合子3から開始されている。
【0116】
車両制御部10は、ステップS401の処理において、図10に示した回転速度センサ9Ls,9Rsによって各後車輪5RL,5RRの車輪速をそれぞれ測定する。また、測定した各後車輪5RL,5RRの車輪速に基づいて、後車輪の左右車輪速差を算出する。これらの処理は、図6のステップS113の判断において否定の判断を行なった場合に必要となる。つまり、図8のステップS302及び図9のステップS302で、同様の処理を既に行なっているからである。よって、図8のステップS302の判断及び図9のステップS302の処理を経由した場合においては、ステップS401の処理を省略してもよい。
【0117】
次に、車両制御部10は、レゾルバ変化値を算出する(S402)。レゾルバ変化値とは、所定時間におけるレゾルバ出力値の変化を意味する。具体的には、図10に示されるフランジ部55近傍に設置されたレゾルバセンサ55sからの所定時間における出力値の変化を意味する。このレゾルバ変化値を上述の所定時間で除することによって、モータ32の回転角速度を算出することができる。
【0118】
次に、車両制御部10は、ステップS401の処理において算出した後輪車輪速度差の絶対値が0より大きいか、つまり、車両1がカーブ等を走行旋回中で第1及び第2の駆動軸12L,12R間に差動が発生いるかを判断し、これと同時に、S402の処理において算出したモータ32の回転角速度の絶対値が所定の許容値(例えば、毎秒5deg)以下であるかを判断する(S403)。このステップS403の処理は、異常検出手段としての処理の一例に相当する。
【0119】
ここで、算出した後輪車輪速度差の絶対値が0より大きく、且つ、モータ32の回転角速度の絶対値が許容値以下であると判断できる場合(S403:Yes)、車両用駆動力配分制御装置は、差動回転制御機構60を構成する各ギヤが破損してその破損したギヤが噛み込むこと等によって差動回転制御機構60の一部が固着している可能性があると判断する。そして、クラッチ機構82,83の切り離し(解放)を行なうべく制御信号を出力する(S404)。このステップS404の処理は、異常処理手段としての処理の一例に相当する。
【0120】
つまり、第1及び第2の駆動軸12L,12R間に差動が発生しているにもかかわらず、差動回転制御機構60の一部に固着が存在することによって、モータ32に連結された遊星歯車機構31のフランジ部55(プラネタリキャリヤ45)が、許容値以上の回転角速度において回転していない可能性があると判断する。そして、出力された制御信号に基づいてクラッチ機構82,83が切り離され、上記連結部を解除する。
【0121】
また、駆動力配分装置30の故障と判断することができることから、上位ECUにおいて車両1の運転者に注意を促すための処理が必要となる。そのため、fix_flagを1とし(S405)、図6のステップS103へ処理を戻す。
【0122】
一方、ステップS403の判断における2つの条件のうち少なくとも1つも満たさない場合(S403:No)、差動回転制御機構60が正常であると判断することができる。よって、クラッチ機構82,83を切り離す処理を行なわずに、図6のステップS103へ処理を戻す。
【0123】
以上より、クラッチ機構82,83の開放によって上記各連結部を解除するため、モータ32と各駆動軸12L,12Rとの間に介在する差動機構14又は差動回転制御機構60等に発生した異常によって他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することができる。
【0124】
すなわち、上記の実施の形態によれば、モータと車輪との間に介在する機構等の異常を速やかに検出し、その異常に対して他の機構に発生し得る機能低下の拡大を抑制することができる。
【0125】
なお、本発明の車両用駆動力配分制御装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1…車両、2…エンジン、3…トランスミッション、4…ラック軸、4Ls…回転角速度センサ、4Rs…回転角速度センサ、5FL…前輪、5FR…前輪、5RL…後輪、5RR…後輪、6…プロペラシャフト、7…トルクカップリング、8…リヤディファレンシャル、9L…ドライブシャフト、9Ls…回転角速度センサ、9R…ドライブシャフト、9Rs…回転角速度センサ、10…車両制御部、11…ハウジング、12L…第1の駆動軸、12La…第1の駆動軸の基端、12R…第2の駆動軸、12Ra…第2の駆動軸の基端、13…入力軸、14…差動機構、15…隔壁部、16a…第1ハウジング、16b…第2ハウジング、17…デフケース、17a…デフケース第1部材、17b…デフケース第2部材、18a…軸受、18b…軸受、19…インターナルギヤ、20…リングギヤ、21…ドライブピニオン、22…サンギヤ、23…プラネタリギヤ対、23a…第1プラネタリギヤ、23b…第2プラネタリギヤ、24…プラネタリキャリヤ、30…駆動力配分装置、31…遊星歯車機構、32…モータ、33…駆動回路、42…第1ピニオン、42a…歯部、43…第2ピニオン、43a…歯部、44…プラネタリギヤ、44a…回転軸、45…プラネタリキャリヤ、46…周壁、47…開口部、48a…底部、48b…底部、49a…支持穴、49b…支持穴、50a…挿通孔、50b…挿通孔、51…第1リングギヤ、52…第2リングギヤ、52a…筒状部、53a…ボール軸受、53b…ボール軸受、54…ニードル軸受、55…フランジ部、55a…外歯、55s…レゾルバセンサ、61…変速機構、62…第3ピニオン、63…第4ピニオン、64…プラネタリギヤ、65…プラネタリキャリヤ、66…周壁、67…開口部、70a…挿通孔、70b…挿通孔、71…第3リングギヤ、72…第4リングギヤ、72a…筒状部、75…フランジ部、75a…外歯、77…スリーブ、82…クラッチ機構、83…クラッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源の駆動力を第1の駆動軸及び第2の駆動軸にこれら駆動軸間の差動を許容して伝達する差動機構と、
モータと、
前記モータに駆動電流を供給する駆動回路と、
前記モータのトルクによって前記第1及び第2の駆動軸の差動回転を制御する差動回転制御機構と、
前記第1及び第2の駆動軸の差動回転を検出する差動回転検出手段と、
前記差動回転検出手段が検出した前記第1及び第2の駆動軸の差動回転、又は前記モータに供給される前記駆動電流の電流量に基づいて、前記差動機構、前記駆動回路、又は前記差動回転制御機構の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出したとき、所定の異常処理を行う異常処理手段と
を備えた車両用駆動力配分制御装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記第1及び第2の駆動軸の差動回転と前記モータの回転とが、前記差動回転制御機構に応じて定められた所定の対応関係を満たさないときに異常を検出する請求項1に記載の車両用駆動力配分制御装置。
【請求項3】
前記異常処理手段は、前記駆動回路による前記駆動電流の供給を遮断する、請求項1又は2に記載の車両用駆動力配分制御装置。
【請求項4】
前記異常処理手段は、前記異常検出手段が前記差動回転制御機構の異常を検出したとき、前記車両の操舵装置の操舵角の変化を規制する、請求項1又は2に記載の車両用駆動力配分制御装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の駆動軸が回転していない状態で、前記駆動回路を制御して前記モータにトルクを発生させる制御手段を備え、
前記異常検出手段は、前記制御手段により前記トルクを発生させた際の前記モータの回転角度に応じて前記差動回転制御機構の異常を検出する、請求項1又は2に記載の車両用駆動力配分制御装置。
【請求項6】
前記差動機構と前記差動回転制御機構とを連結するクラッチを備え、
前記異常処理手段は、前記クラッチを解放して前記差動機構と前記差動回転制御機構との連結を解除する、請求項1又は2に記載の車両用駆動力配分制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−67891(P2012−67891A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215134(P2010−215134)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】