説明

車両駆動力制御装置

【課題】ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、車両の発進シーン、加速シーン等に於ける燃費を向上させる車両駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】この発明による車両駆動力制御装置は、アクセル開度と駆動力の特性に基づいて検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、少なくとも算出された目標駆動力に基づいて駆動力制御装置を操作するための駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、算出された駆動力操作量に基づいて駆動力を制御する駆動力制御装置と、少なくとも前記アクセル開度変化量に基づき目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、目標駆動力算出手段は、目標駆動力が目標駆動力下限値に到達するまで、アクセル操作開始からの経過時間の増加量に伴って目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載された駆動力源の制御装置、特に、駆動力源の駆動力を制御することで車両の燃費向上を図るようにした車両駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界に於いて燃料消費量の削減、即ち燃費改善に向けた取り組みが進められている。燃費改善を実現するためには無駄な燃料消費をしないこと、燃料消費によって得た車両の運動エネルギーを効率良く使用する必要があること等が知られている。例えば、特許文献1には、ドライバーが5省燃費モードを選択することで、通常モード選択時に比べてエンジン出力特性を低下させることで、車両の発進等の加速時に必要以上の燃料が消費されるのを防ぐようにした技術が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示された技術では、車両の発進シーン及び加速シーンに於いて、ドライバーの思い描く加速度が得られない場合、ドライバーは違和感を抱いてしまい、この違和感を解消するためにアクセルの踏み増しが生じ、燃料消費量が増加するという問題があった。
【0004】
特許文献1に示された従来の装置に於ける前述の問題に対して、本願の出願人が出願した先の出願(特願2009−135057号)に於いて、アクセル開度と駆動力の特性に基づいて駆動力が得られるが、アクセルを踏み込んでからの経過時間の増大に伴って前記駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出し、この目標駆動力に基づいてスロットルバルブ、インジェクタ等の駆動力制御装置を制御することで、車両の発進シーン及び加速シーンに於いても、ドライバーに違和感を与えることなく無駄な燃料消費を抑え、燃費を向上させる車両駆動力制御装置を提案した。
【0005】
前述の先の出願に於ける車両駆動力制御装置は、アクセル開度と駆動力の特性に基づいて得られた通常運転に適した駆動力から、アクセルを踏み込んでからの経過時間の増大に伴って漸次減少させた駆動力を目標駆動力とし、この目標駆動力に基づいて駆動力制御装置を制御するものである。この車両駆動力制御装置によれば、アクセルを踏み込んだ直後はアクセル開度と駆動力の特性に基づいて得られた通常運転に適した駆動力を得ることが可能であるため、発進シーン及び加速シーンにおけるアクセルの踏み込み直後にドライバーは違和感を抱くことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3872507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の先の出願による車両駆動力制御装置の場合、車両の走行環境を考慮せずに、アクセルを踏み込んでからの経過時間の増大に伴って目標駆動力を漸次減少しているため、車両の走行環境によっては、目標駆動力が漸次減少している過程で、ドライバーの意図する加速度が得られなくなる可能性がある。例えば、登坂路を走行する等、車両の走行抵抗が大きくなった場合である。
【0008】
登坂路を走行する場合は平坦路を走行する場合と比べて勾配抵抗が増加するため、車両の走行抵抗が大きくなる。一般に、車両の走行抵抗が大きくなると余裕駆動力が小さくな
り、車両の加速度が小さくなる。即ち、前述の先の出願に記載の制御では、登坂路を走行する場合に於いて、目標駆動力が必要以上に漸次減少して車両の加速度が小さくなってしまい、ドライバーの意図する加速度を得られなくなる可能性が高い。このため、ドライバーは意図する加速度を得るためにアクセルを踏み増し、結果として燃料消費量が増加するという課題があった。
【0009】
又、方向指示器やステアリング操作等のドライバーの運転操作を考慮せずに、アクセルを踏み込んでからの経過時間の増加量に伴って目標駆動力を漸次減少しているため、例えば、ドライバーが先行車を追い抜くために方向指示器を操作している状況で、ドライバーがアクセルを踏み込んだ場合に於いて、ドライバーは先行車を追い抜くために継続的に加速度を得ようとしているにも関らず、アクセルを踏み込んでからの経過時間の増加に伴って目標駆動力が漸次減少してしまうため、ドライバーの意図する加速度を得ることができなくなる。このため、ドライバーは意図する加速度を得るためにアクセルを踏み増し、結果として燃料消費量が増加するという課題もあった。
【0010】
この発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、車両の発進シーン、加速シーン等に於いて、アクセル踏み込み開始から、走行環境やドライバー運転操作に基づいて適切に目標駆動力を漸次減少させることで、ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両駆動力制御装置は、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの経過時間を算出する経過時間算出手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
少なくとも前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記アクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記経過時間の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたものである。
【0012】
又、この発明による車両駆動力制御装置は、
自車の車速を検出する車速センサと、
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたア
クセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたものである。
【0013】
更に、この発明による車両駆動力制御装置は、
自車の車速を検出する車速センサと、
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明による車両駆動力制御装置によれば、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの経過時間を算出する経過時間算出手段と、前記アクセル開度と車両の駆動源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、少なくとも前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、少なくとも前記アクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記経過時間の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたので、ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【0015】
又、この発明による車両駆動力制御装置によれば、自車の車速を検出する車速センサと、
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、前記アクセ
ル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたので、ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【0016】
更に、この発明による車両駆動力制御装置によれば、自車の車速を検出する車速センサと、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、前記アクセル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出するようにしたので、ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で実行される処理を説明するフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度変化量と所定時間経過後の到達車速との関係を示すグラフである。
【図5】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度変化量と目標車速との関係を示すグラフである。
【0018】
【図6】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける目標車速と重み付け値の最大値の関係を示すグラフである。
【図7】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける経過時間と重み付け値の関係を示すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度と目標駆動力の関係を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける車速と駆動力との関係を示すグラフである。
【図10】この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度と目標駆動力の関係を示すグラフである。
【0019】
【図11】この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図13】この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で算出される加速度の所定値の一例を示すグラフである。
【図15】この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける重み付け値ωの特性を示すグラフである。
【0020】
【図16】この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図18】この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置に於ける重み付け値ωの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。図1に於いて、アクセル開度センサ101は、駆動力源であるエンジン(図示せず)へ供給する燃料と空気との混合気の量を制御するアクセル(図示せず)の、アクセル開度θを検出する。車速センサ102は、自車の車速Vsを検出する。アクセル開度変化量算出手段103は、アクセル開度センサ101により検出したアクセル開度θに基づき、アクセル開度変化量△θを算出する。
【0022】
アクセル操作開始判定手段104は、アクセル開度変化量算出手段103によって算出されたアクセル開度変化量△θに基づき、ドライバーがアクセル操作を開始したか否かを判定し、アクセル操作開始判定フラグFlgをオン「1」若しくはオフ「0」として出力する。踏み込み経過時間算出手段105は、アクセル操作開始判定手段104により検出したアクセル操作開始判定フラグFlgがオンとなった瞬間の時点からの経過時間trを算出する。
【0023】
目標車速算出手段106は、アクセル操作開始判定手段105から出力されるアクセル操作開始判定フラグFlgをトリガーとして、アクセル操作開始判定フラグFlgが出力された瞬間の時点から所定時間内のアクセル開度変化量△θ及び車速センサ102によって検出された自車の車速Vsに基づき、目標車速Vtを算出する。
【0024】
走行抵抗算出手段110は、車両が走行する際に路面や空気などから受ける走行抵抗を算出する。ここで、車両の走行抵抗は、登坂路など勾配のある道を走行中に生じる勾配抵抗、車両重量に比例して生じるころがり抵抗、車速の2乗に比例して生じる空気抵抗、車両の加速度に比例して生じる加速抵抗に大別される。これらの各抵抗のうち、例えば空気抵抗は、車速センサ102により検出した車速Vsを用いて検出される。
【0025】
目標駆動力算出手段107は、アクセル開度センサ101により検出したアクセル開度θ、アクセル操作開始判定手段104から出力されるアクセル操作開始判定フラグFlg、踏み込み経過時間算出手段105により算出した経過時間tr、目標車速算出手段106により算出した目標車速Vt、走行抵抗算出手段110により算出した走行抵抗RLに基づいて目標駆動力Ptを算出する。駆動力操作量算出手段108は、少なくとも目標駆
動力算出手段107により算出した目標駆動力Ptに基づき、駆動力操作量Qを算出する。
【0026】
尚、駆動力源は、エンジンのみにより構成されている場合のほか、ハイブリッド車のようにエンジンと電動機とにより構成されている場合をも含む。又、駆動力操作量算出手段108は、目標駆動力Ptだけでなく、駆動力源の回転数、ハイブリッド車のように駆動力を電動機によりアシストする場合はその電動機によるアシスト駆動力等に基づき、駆動力操作量Qを算出するようにしてもよい。
【0027】
駆動力制御装置109は、駆動力操作量算出手段108により算出した駆動力操作量Qに基づき、駆動力源の駆動力を制御する。具体的には、駆動力操作量算出手段109は、例えば、ガソリンエンジン搭載車の場合ではスロットルバルブの開度や吸気バルブのリフト量及び開閉タイミングを制御し、ディーゼルエンジン搭載車の場合ではインジェクタの燃料噴射量及び燃料噴射タイミングを制御し、駆動力源の駆動力を制御する。尚、駆動力操作量算出手段109は、駆動力源の駆動力を制御することだけに限らず、車両が駆動力源の駆動力を伝達する変速機を搭載している場合に於いては、その変速機の駆動力を制御しても良い。
【0028】
次に、この発明の実施の形態1による車両駆動制御装置の動作について説明する。図2は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートであり、(a)はアクセル開度、(b)は目標駆動力、(c)は重み付け値ω(後述
する)を示している。図2は、時点t1に於いてドライバーがアクセルを踏み込み、時点t3に至るまで一定のアクセル開度で走行し、時点t3に於いてドライバーはアクセル開度を全閉にして、時点t4に於いて再びアクセルを踏み込む状態を示している。又、時点t2から時点t3の間及び時点t5から時点t6の間に於いては目標車速に到達した状態を示し、時点t5から時点t6の間に於いては走行抵抗が時点t2から時点t3の間に於ける値よりも大きい状態を示している。
【0029】
目標駆動力算出手段107は、以下に述べる処理により目標駆動力Ptを算出し出力する。図3は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で実行される処理を説明するフローチャートである。図3に示す処理は、所定時間毎に繰り返して行なわれる。
【0030】
図3に於いて、ステップ301ではアクセル開度検出手段101により算出したアクセル開度θを取得する。ステップ302では、踏み込み経過時間算出手段105にて算出した経過時間trを取得する。つまり、図2の(a)に示すように、時点t1、t4の各時点は、アクセル操作開始判定フラグがオンとなった瞬間の時点であり、ステップ302ではそれらの各時点t1、t4からの経過時間trを取得する。
【0031】
ステップ303では車速センサ102により検出した車速Vs及び目標車速算出手段106により算出した目標車速Vtを取得する。目標車速Vtの算出には、例えば、図4に示すアクセル開度変化量△θと到達車速Vrchの関係を用いる。
【0032】
図4は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度変化量と所定時間経過後の到達車速との関係を示すグラフである。一般的に図4に示すように、アクセル開度変化量△θと所定時間経過後の到達車速Vrchとの間には、比例関係があることが知られている。従って、アクセル開度変化量△θが大きい場合には、ドライバーが目標とする車速が高いため、アクセル開度変化量△θが大きいほど、目標車速Vtを高く設定する。図5は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度変化量と目標車速との関係を示すグラフである。
【0033】
図3に於けるステップ303では、ドライバーがアクセル操作を開始した時点の車速V1に、アクセル開度変化量△θに比例する値を加算することで目標車速Vtを求めている。次に、ステップ304では走行抵抗算出手段110により走行抵抗RLを算出する。
【0034】
ステップ305ではステップ304で取得した走行抵抗RLから、下記の式(1)に基づき、重み付け値の最大値の傾きCを算出する。

C=D/RL 式(1)

ここに、Dは定数である。
【0035】
次に、ステップ306ではステップ303で取得した目標車速Vt、ステップ305で取得した重み付け値の最大値の傾きCから、下記の式(2)に基づき、重み付け値の最大値ωmax(0<ωmax≦1)を算出する。この重み付け値の最大値ωmaxの傾きCは、前述の式(1)から明らかなように、走行抵抗RLが大きいほど小さくなる。

ωmax=C・Vt 式(2)
【0036】
図6は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける目標車速と重み付け値の最大値の関係を示すグラフである。重み付け値の最大値ωmaxは、車両が目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力を算出する値として設定し、図6に示すように、目標車速Vtが大きいほど、重み付け値の最大値ωmaxは小さくなる特性を持つ。これは、目標車速Vtが大きいほど、車両が目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力が大きいためであり、後述するが、重み付け値ωが大きいほど目標駆動力小さくなるからである。走行抵抗RLが大きいほど、目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力が大きくなるため、重み付け値の最大値ωmaxは小さくなるように算出する。
【0037】
ステップ307に進むと、前述のステップ304にて取得した走行抵抗RLから、下記の式(3)に基づき、重み付け値特性の傾きAを算出する。

A=B/RL 式(3)

ここに、Bは定数である。
【0038】
次にステップ308では、ステップ307にて算出した重み付け値特性の傾きAと、ステップ302で取得した経過時間trから、下記の式(4)に基づき、重み付け値ωを算出する。

ω=A・tr 式(4)
【0039】
図7は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける経過時間と重み付け値の関係を示すグラフである。図7に示すように、重み付け値ωは、経過時間trに比例する特性を備えている。この重み付け値ωの傾きAは、前述の式(4)から明らかなように、走行抵抗RLが大きいほど小さくなる。
【0040】
ステップ309に於いては、ステップ308で算出した重み付け値ωの上下限制限処理
を行い、0≦ω≦ωmaxに制限する。次に、ステップ310にて、ステップ301により検出したアクセル開度θ、ステップ309で上下限制限処理を行った重み付け値ωから、下記の式(5)に基づいて目標駆動力Ptを算出する。

Pt=f(θ)−ω・△P
=f(θ)−ω{f1(θ)−f(θ)}
=(1−ω)f(θ)+ω・f(θ) 式(5)

ここに、f(θ)は特性fで与えられる目標駆動力、f(θ)は特性fで与えられる目標駆動力、△Pは目標駆動力f(θ)と目標駆動力f(θ)との偏差である。
【0041】
アクセル開度θと目標駆動力Pの関係は、例えば図8で示す関係となる。図8は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度と目標駆動力の関係を示すグラフである。図8に示すように、特性fで与えられる目標駆動力f(θ)は、特性fで与えられる目標駆動力f(θ)よりも小さな値となる。
【0042】
以上の処理が目標駆動力算出手段107により実行されるが、この処理は、以下の点に注目し、ドライバーに違和感を与えることなく、車両の発進シーン及び加速シーンに於ける無駄な燃料消費量を抑える制御を可能とする目標駆動力Ptを算出する。
【0043】
即ち、図7に示すように重み付け値ωを経過時間trに比例して変化させ、これに加えて走行抵抗RLに基づき、重み付け値特性の傾きAを補正する。そして、図8に示すような目標駆動力f(θ)を与える特性fと、この目標駆動力f(θ)より小さな目標駆動力f(θ)を与える特性fと、走行抵抗RLと経過時間trから算出した重み付け値ωと
に基づいて目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力まで漸次減少するように目標駆動力Ptを算出する。
【0044】
以上より、図2の(b)に示すように、ドライバーのアクセル操作量に対する駆動力を、時間の経過とともに目標車速Vtで定速走行するために必要な駆動力まで小さくする。このため、省燃費運転の熟練ドライバーがアクセル操作を行った場合の駆動力の動きに近くすることができ、燃費を向上させることができる。
【0045】
又、図2に示す時点t4からt6の間の状態、即ち、車両が登坂路にさしかかり、走行抵抗の一つである勾配抵抗が増加したような場合に於いては、目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力が大きくなるため、重み付け値の最大値ωmaxを小さくして目標駆動力を漸減しすぎないことで、登坂路のように車両の走行環境に変化があったとしても、アクセル踏み増しを防止し、燃費を向上できる。更に、走行抵抗RLが大きいときには重み付け値特性の傾きAを小さくして、目標駆動力の漸減速度を遅くすることで、アクセル踏み増しを防止し、燃費を向上できる。
【0046】
図9は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於ける車速と駆動力との関係を示すグラフである。図9に示すように、最も燃料消費量が少ない加速方法は、より小さな余裕駆動力を引き出しながら加速する方法である。しかし、運転経験の浅いドライバーや運転技術が低いドライバーの場合、アクセル操作は踏込み時、戻し時ともにステップ的であるため、図9に破線Wに示すような軌跡を描く。このため、実際には必要以上の余裕駆動力を引き出し、燃費を悪化させている。
【0047】
このため、この発明の実施の形態1では、図2に示すようにアクセルペダル操作開始の時点t1後の経過時間とともに、徐々に駆動力を漸減することで、図9の実線Eに示すよ
うな軌跡を描く加速を行い、無駄な燃料消費を抑える。又、アクセル操作開始の時点t1ではドライバーの思い描く加速が得られるため、踏み増しを防ぐことができる。
【0048】
以上述べたように、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置によれば、車両の走行環境が変化した場合に於いても適切な駆動力制御を実施することで余裕駆動力を抑えて、目標車速Vtに向けて、図9の実線Eにて示すような加速をすることで、無駄な燃料消費を抑えることができる。これにより、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【0049】
尚、実施の形態1では、重み付け値の最大値ωmaxの算出には、走行抵抗RLを用いているが、重み付け値の最大値ωmaxを算出する方法はこれに限られるものではない。例えば、車両がカーブを走行する場合に於いて、ドライバーはアクセル開度を緩める傾向にあり、直線路と同様に目標駆動力を漸次減少すると、必要以上に駆動力が小さくなる可能性が高い。そこで、カーブが大きいほど重み付け値の最大値ωmaxを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0050】
又、アクセル開度変化量が大きいほどドライバーは大きな加速を要求している。そこで、アクセル開度変化量が大きいほど重み付け値の最大値ωmaxを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0051】
又、車線変更等の進路変更をする場合や先行車を追い越す場合に於いては、ドライバーは大きな加速を要求している。そこで、車線変更等の進路変更をする場合や先行車を追い越す場合に於いては、車線変更等の進路変更をしない場合や先行車の追い越しをしない場合よりも重み付け値の最大値ωmaxを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0052】
又、車両に搭載される変速機(図示なし)の変速モードとして、通常運転に適合する変速機の制御モードの他に、通常運転に適合する変速機の制御モードよりもパワーを抑制したスノーモード、通常運転に適合する変速機の制御モードよりも燃費を重視したエコモードを有している。変速機の制御モードとして、スノーモード、エコモードのいずれかが選択されている場合に於いては、変速機の制御モードによって目標駆動力が抑制されているため、通常運転に適合する変速機の制御モードが選択されている場合と同様に目標駆動力を漸次減少すると、必要以上に駆動力が小さくなる可能性が高い。そこで、変速機の制御モードとして、スノーモード、エコモードのいずれかが選択されている場合には、重み付け値の最大値ωmaxを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0053】
又、車両に搭載される変速機(図示なし)の変速モードとして、通常運転に適合する変速機の制御モードの他に、通常運転に適合する変速機の制御モードよりもパワーを重視したスポーツモード、ドライバーが手動操作によって変速機の変速段若しくは変速比を選択できる手動モードを有しており、変速機の制御モードとして、スポーツモード、手動モードのいずれかが選択されている場合のアクセル踏み込み時に於いては、通常運転に適合する変速機の制御モードを選択している場合と比較して、ドライバーは大きな加速を要求している可能性が高い。これより、ドライバーに違和感を与えないためには、変速機の制御モードとして、スポーツモード、手動モードの何れかが選択されている場合には重み付け
値の最大値ωmaxを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0054】
又、重み付け値の最大値ωmaxをドライバーによって調整できるようにしても良い。例えば、重み付け値の最大値ωmaxの値を調整できる調整ノブを備え、ドライバーが操作した調整ノブの操作量の増減に伴って重み付け値の最大値ωmaxを増減するようにすれば、ドライバー意思を反映することができるため、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0055】
加えて、実施の形態1では、重み付け値特性の傾きAの算出には、走行抵抗RLを用いているが、重み付け値特性の傾きAを算出する方法はこの限りではない。例えば、車両がカーブを走行する場合に於いて、ドライバーはアクセル開度を緩める傾向にあり、直線路と同様に目標駆動力を漸次減少すると、必要以上に駆動力が小さくなる可能性が高い。従って、カーブが大きいほど重み付け値特性の傾きAを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0056】
又、アクセル開度変化量が大きいほどドライバーは大きな加速を要求している。そこで、アクセル開度変化量が大きいほど重み付け値特性の傾きAを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0057】
更に、車線変更等の進路変更をする場合や先行車を追い越す場合に於いては、ドライバーは大きな加速を要求している。そこで、アクセル開度変化量が大きいほど重み付け値特性の傾きAを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0058】
又、車両に搭載される変速機(図示なし)の変速モードとして、通常運転に適合する変速機の制御モードの他に、通常運転に適合する変速機の制御モードよりもパワーを抑制したスノーモード、通常運転に適合する変速機の制御モードよりも燃費を重視したエコモードを有しており、変速機の制御モードとして、スノーモード、エコモードのいずれかが選択されている場合に於いては、変速機の制御モードによって目標駆動力が抑制されているため、通常運転に適合する変速機の制御モードが選択されている場合と同様に目標駆動力を漸次減少すると、必要以上に駆動力が小さくなる可能性が高い。そこで、変速機の制御モードとして、スノーモード、エコモードのいずれかが選択されている場合には重み付け値特性の傾きAを小さくすることで、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0059】
又、車両に搭載される変速機(図示なし)の変速モードとして、通常運転に適合する変速機の制御モードの他に、通常運転に適合する変速機の制御モードよりもパワーを重視したスポーツモード、ドライバーが手動操作によって変速機の変速段若しくは変速比を選択できる手動モードを有しており、変速機の制御モードとして、スポーツモード、手動モードのいずれかが選択されている場合のアクセル踏み込み時に於いては、通常運転に適合する変速機の制御モードを選択している場合と比較して、ドライバーは大きな加速を要求している可能性が高い。そこで、変速機の制御モードとして、スポーツモード、手動モードのいずれかが選択されている場合には重み付け値特性の傾きAを小さくすることで、ドラ
イバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0060】
更に、重み付け値特性の傾きAをドライバーによって調整できるようにしても良い。例えば、重み付け値特性の傾きAを調整できる調整ノブを備え、ドライバーが操作した調整ノブの操作量の増減に伴って重み付け値特性の傾きAを増減することで、ドライバー意思を反映することができるため、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上させることができる。
【0061】
加えて、この発明の実施の形態1では、車両が目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力を算出する手段として、重み付け値の最大値ωmaxを用いたが、所望の目標駆動力を得るためには図8に於ける特性f2を変化させてもよい。図10は、この発明の実施の形態1による車両駆動力制御装置に於けるアクセル開度と目標駆動力の関係を示すグラフである。例えば、図10に示すように、目標車速Vtが大きい場合には、特性f2よりも目標駆動力が大きい特性f2uとし、目標車速Vtが小さい場合には、特性f2よりも目標駆動力が小さい特性f2dとすることで車両が目標車速Vtで定速走行するために必要な目標駆動力を算出しても同様の効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態2.
図11は、この発明の実施の形態2に係る車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。図11に於いて、アクセル開度センサ101、車速センサ102、アクセル開度変化量算出手段103、アクセル操作開始判定手段104、目標車速算出手段106、駆動力操作量算出手段108、駆動力制御装置109については、実施の形態1に於ける図1に同一符号で示すものと同様のため、説明は省略する。
【0063】
加速度検出手段1101は、自車の加速度Aclを検出する手段であり、加速度センサを用いても良いし、自車の車速Vsから算出して良い。目標駆動力算出手段1102は、アクセル開度センサ101により検出したアクセル開度θ、アクセル操作開始判定手段104から出力されるアクセル操作開始判定フラグFlg、目標車速算出手段106により算出した目標車速Vt、及び、加速度検出手段1101により検出した自車の加速度Aclに基づいて目標駆動力Ptを算出する。
【0064】
次に、以上のように構成されたこの発明の実施の形態2に係る車両駆動力制御装置の動作について説明する。図12は、この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートであり、(a)はアクセル開度、(b)は目標駆動力、(c)は車速、(d)は加速度及び加速度の所定値(後述する)、(e)は重み付け値ω(後述する)を示している。
【0065】
図12に於いて、時点t11にてドライバーがアクセルを踏み込み、時点t15に至るまで一定のアクセル開度で走行し、時点t12からt13の間の状態に於いては、例えば道路勾配が大きい登坂路を走行しており、そのため加速度が低下する状態を示している。時点t14に於いて目標車速Vtに到達する。
【0066】
目標駆動力算出手段1102は、以下に述べる処理により目標駆動力Ptを算出し出力する。図13は、この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で実行される処理を説明するためのフローチャートである。図13に示す処理は、所定時間毎に繰り返して行われる。図13に於いて、ステップ1301ではアクセル開度検出手段101により検出したアクセル開度θ及びアクセル開度変化量算出手段103により算出したアクセル開度変化量△θを取得する。
【0067】
ステップ1302ではアクセル操作開始判定手段104によって出力されたアクセル操作開始判定フラグFlgを取得する。アクセル操作開始判定フラグFlgはドライバーによるアクセル操作が開始された否かを判定するフラグであり、アクセル開度変化量算出手段103によって算出されたアクセル開度変化量△θに基づき、アクセル全閉状態からアクセル非全閉状態に移行したかどうかを判定し、アクセル全閉状態からアクセル非全閉状態に移行した場合には、アクセル操作開始判定フラグFlgをオン、つまりアクセル操作開始判定フラグFlgを「1」に設定し、それ以外の場合には、アクセル操作開始判定フラグFlgをオフ、つまりアクセル操作開始判定フラグFlgを「0」に設定する。
【0068】
ステップ1303では目標車速算出手段106により算出した目標車速Vtを取得する。目標車速Vtは、例えば、図4に示すアクセル開度変化量△θと到達車速Vrchの関係から算出する。一般的に図4に示すように、アクセル開度変化量△θと所定時間経過後の到達車速Vrchとの間には、比例関係があることが知られている。従って、アクセル開度変化量△θが大きい場合には、ドライバーが目標とする車速が高いため、アクセル開度変化量△θが大きいほど、目標車速Vtを高く設定する。尚、アクセル開度変化量△θに対する目標車速Vtの設定の一例は、前述の図5に示したとおりである。ここでは、ドライバーがアクセル操作を開始した時点の車速V1に、アクセル開度変化量△θに比例する値を加算することで目標車速Vtを求めている。
【0069】
ステップ1304では、車速センサ102により検出した車速Vsを取得する。次に、ステップ1305では加速度検出手段1101によって検出した加速度Aclを取得する。加速度Aclは、加速度センサを用いて検出しても良いし、車速センサ102により検出した車速Vsを微分することで検出しても良い。
【0070】
ステップ1306では、ステップ1302にて取得したアクセル操作開始判定フラグFlgがオンか否かを判定し、オンの場合(Yes)、つまり図12に示す時点t11の状態にあり、ドライバーによるアクセル操作が開始された場合はステップ1307へ進み、それ以外の場合(No)は、ステップ1307、1308をスキップし、1309に進む。
【0071】
ステップ1307に進むと、ステップ1303で取得した目標車速Vtをドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2として記憶する。ステップ1308では前述のステップ1304で取得した車速Vsから下記の式(6)に基づき、加速度の所定値Athを算出する。

Ath=f(Vs) 式(6)
【0072】
図14は、この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力算出手段内で算出される加速度の所定値の一例を示すグラフであり、縦軸の加速度の所定値Athは、ドライバーがアクセル操作を開始した時点の車速V1から目標車速Vt2に到達するまでの加速度の閾値をスケジュールされたものである。図14に示すように、横軸の車速Vsが目標車速Vt2に近づく程、加速度の所定値Athは同等若しくは小さくなるように設定されている。
【0073】
加速度の所定値Athは目標車速Vt2に到達するまでのドライバーの意図する最小限の加速度をスケジュールしたものであり、車速Vsに於ける加速度Aclが加速度の所定値Athより小さい場合は、ドライバーの意図する加速度が得られていないため、目標駆動力の漸次減少を行わないように制御する。これにより、目標駆動力が必要以上に漸次減
少して車両の加速度が小さくなることを抑制できる。
【0074】
次に、ステップ1309へ進むと、ステップ1305で取得した加速度Aclがステップ1308で算出した加速度の所定値Athより小さいか否かを判定し、加速度Aclが加速度の所定値Athより小さい場合(Yes)、つまり、図12の(c)に示す時点t12からt13の間の状態にある場合はステップ1311へ進み、下記の式(7)に基づき、重み付け値ωを算出する。

ω=ω(前回値) 式(7)
【0075】
ステップ1309に於いて、ステップ1305で取得した加速度Aclが加速度の所定値Athと同等若しくは加速度の所定値Athより大きい場合(No)は、ステップ1310へ進む。ステップ1310では、ステップ1304で取得した車速Vsがステップ1307で記憶したドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2と同等若しくはドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より大きいか否かを判定し、車速Vsがドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2と同等若しくはドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より大きい場合(Yes)、つまり、図12の(d)に示す時点t14以降の状態にある場合はステップ1311へ進み、上述した式(7)に基づき、重み付け値ωを算出する。
【0076】
一方、ステップ1310にて車速Vsがドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より小さい場合(No)、つまり、図12の(d)に示す時点t11からt12の間若しくは時点t13からt14の間の状態にある場合は、ステップ1312へ進み、ステップ1304で取得した車速Vsと、前述したドライバーがアクセル操作を開始した時点の車速V1から、下記の式(8)に基づき、重み付け値ωを算出する。

ω=A・△Vs 式(8)

ここで、Aは正の定数である。
【0077】
図15は、この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置に於ける重み付け値ωの特性を示すグラフである。図15に示すように、重み付け値ωは、ドライバーがアクセル操作を開始した時点からの車速の増加量△Vs(△Vs=Vs−V1)に比例する特性を備えている。
【0078】
次に、ステップ1313に於いては、ステップ1311若しくはステップ1312で算出した重み付け値ωの上下限制限処理を行い、重み付け値ωを0≦ω≦1に制限する。ステップ1314に進むと、ステップ1301により検出したアクセル開度θ、ステップ1313で上下限制限処理を行った重み付け値ωから、下記の式(9)に基づいて目標駆動力Ptを算出する。

Pt=f(θ)−ω・△P
=f(θ)−ω{f1(θ)−f(θ)}
=(1−ω)f(θ)+ω・f(θ) 式(9)

ここに、f(θ)は特性fで与えられる目標駆動力、f(θ)は特性fで与えられる目標駆動力、△Pは目標駆動力f(θ)と目標駆動力f(θ)との偏差である。
【0079】
アクセル開度θと目標駆動力Pの関係は、例えば前述した図8で示す関係となる。図8に示すように、特性fで与えられる目標駆動力f(θ)は、特性fで与えられる目標駆動力f(θ)よりも小さな値となる。
【0080】
以上の処理が目標駆動力算出手段1102によって実行されるが、この処理は以下の点に注目し、ドライバーに違和感を与えることなく、車両の発進シーン及び加速シーンに於ける無駄な燃料消費量を抑える制御を可能とする目標駆動力Ptを算出する。
【0081】
車速と駆動力との関係を示すグラフである前述の図9に示すように、最も燃料消費量が少ない加速方法は、より小さな余裕駆動力を引き出しながら加速する方法である。図9の実線Eに示すような軌跡を描く加速を行うことで無駄な燃料消費を抑えることができるが、図9内の走行抵抗曲線は車両の走行環境(例えば、道路勾配、路面状態、風向き等)によって変化するため、例えば登坂路を走行している場合の走行抵抗は図9内の走行抵抗曲線よりも大きくなるため、余裕駆動力が小さくなる。即ち、車両の加速度が小さくなり、ドライバーの意図する加速度を得られない。
【0082】
このため、この発明の実施の形態2では、図14に示すように、ドライバーによるアクセル操作が開始された時点の車速V1から目標車速Vt2までの車速Vsに対応した加速度の所定値Athを算出し、加速度Aclが加速度の所定値Athよりも小さくなる(図12の(d)に示す時点t12からt13の間の状態にある)場合には、目標駆動力の漸次減少を停止し、時点t12での目標駆動力を保持することでドライバーの意図する加速度が得られるのでアクセルの踏み増しを防ぐことができる。尚、ここでは、道路勾配が大きい登坂路を走行するシーンに於いて、加速度Aclが加速度の所定値Athよりも小さくなった場合に目標駆動力を保持する制御を行っているが、同様の制御を実施するべき条件は他にもある。
【0083】
例えば、車両が走行する際に路面や空気等から受ける走行抵抗が目標駆動力Ptと同等以下若しくは小さい場合に於いては、余裕駆動力が「0」若しくはそれ以下となることになり、車両は加速することができなくなる。即ち、目標車速Vtに到達するまでに余裕駆動力が「0」になると、ドライバーの意図する加速度を得られないことになる。このため、車両が走行する際に路面や空気などから受ける走行抵抗を基準として算出される値RL2(具体的には、車速Vsで走行している場合に於いては、車速Vsで走行するために必要な目標駆動力よりも大きい値)が目標駆動力Ptと同等、若しくは目標駆動力Ptよりも小さい場合には、目標駆動力を漸次減少せずに目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。このため、ドライバーに煩わしさを感じさせること防ぐことができる。
【0084】
又、カーブを走行する場合に於いて、ドライバーはアクセル開度を緩める傾向にあり、直線路と同様に駆動力を漸次減少すると、必要以上に駆動力が小さくなる可能性が高い。このため、道路曲率が所定値以上のカーブを走行している場合には目標駆動力を漸次減少せずに、目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。道路曲率が所定値より小さくなった場合には、再び目標車速Vtに到達するまで目標駆動力を漸次減少する。これより、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上できる。
【0085】
更に、アクセル開度変化量が大きい程、ドライバーは大きな加速を要求しているため、アクセル開度変化量が所定値以上の場合には目標駆動力を漸次減少せずに、目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。アクセル開度変化量が所定値より小さくなった場合には、再び目標車速Vtに到達するまで目標駆動力を漸次減少する。これより、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感
じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上できる。
【0086】
又、ドライバーが車両に搭載される変速機(図示せず)をシフトダウンして意図的に加速する場合、即ち、変速機の速度比が所定値以上の場合には目標駆動力を漸次減少せずに、目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。変速機の速度比が所定値より小さくなった場合には、再び目標車速Vtに到達するまで目標駆動力を漸次減少する。これより、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上できる。
【0087】
又、車線変更等の進路変更をする場合や先行車を追い越す場合に於いては、ドライバーは大きな加速を要求しているため、目標駆動力を漸次減少せずに、目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。車線変更等の進路変更後、先行車を追い越した後には、再び目標車速Vtに到達するまで目標駆動力を漸次減少する。これより、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上できる。
【0088】
又、この発明の実施の形態2による車両用駆動力制御装置の構成部が故障状態である場合に於いては、目標駆動力を漸次減少せずに、目標駆動力を保持する制御を行うことで車両の加速度を確保することができる。車両用駆動力制御装置の構成部が修復した場合には、再び目標車速Vtに到達するまで目標駆動力を漸次減少する。これより、ドライバーの意図通りの加速感が得られ、ドライバーに煩わしさを感じさせること無く、即ちドライバーの意識無しに燃費を向上できる。
【0089】
以上述べたように、この発明の実施の形態2による車両駆動力制御装置によれば、適切な駆動力制御を実施することでドライバーの意図する加速度を維持した状態で余裕駆動力を抑えて、無駄な燃料消費を抑えることができる。これにより、ドライバーに違和感を与えることなく、また、ドライバーと干渉することなく燃費を向上できる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【0090】
実施の形態3.
図16は、この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。図16に於いて、アクセル開度センサ101、車速センサ102、アクセル開度変化量算出手段103、アクセル操作開始判定手段104、目標車速算出手段106、駆動力操作量算出手段108、駆動力制御装置109については、前述の実施の形態1に於ける図1で示した同一符号のものと同様のため、説明は省略する。
【0091】
目標駆動力算出手段1601は、アクセル開度センサ101により検出したアクセル開度θ、車速センサ102により検出した車速Vs、アクセル操作開始判定手段104から出力されるアクセル操作開始判定フラグFlg、目標車速算出手段106により算出した目標車速Vtに基づいて目標駆動力Ptを算出する。
【0092】
次に、以上のように構成されたこの発明の実施の形態3に係る車両駆動力制御装置の動作について説明する。図17は、この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置の動作を説明するタイミングチャートであり、(a)はアクセル開度、(b)は目標駆動力、(c)は車速を示している。図17は、時点t21に於いて、定速走行している状態から
ドライバーがアクセルを踏み込み、時点t23に至るまで一定のアクセル開度で平坦路を走行し、時点t22に於いて目標車速に到達する状態を示している。
【0093】
目標駆動力算出手段1601は、以下に述べる処理により目標駆動力Ptを算出し出力する。図18は、この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置に於ける目標駆動力
算出手段内で実行される処理を説明するためのフローチャートである。図18に示す処理は、所定時間毎に繰り返して行なわれる。図18に於いて、ステップ1301からステップ1307及びステップ1314に示す処理については、前述の実施の形態2に於ける図13のフローチャートに於ける同一符号のステップの処理と同等であるので、説明を省略する。
【0094】
ステップ1801では、ステップ1304で取得した車速Vsがステップ1307で記憶したドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2と同等若しくはドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より大きいか否かを判定し、車速Vsがドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2と同等若しくはドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より大きい場合(Yes)、つまり、図17の(c)に示す時点t22以降の状態にある場合はステップ1802へ進み、下記の式(10)に基づき、重み付け値ωを算出する。

ω=ω(前回値) 式(10)
【0095】
一方、ステップ1801にて車速Vsがドライバーによるアクセル操作が開始されたときの目標車速Vt2より小さい場合(No)、つまり、図17の(c)に示す時点t21からt22の間の状態にある場合はステップ1803へ進み、ステップ304で取得した車速Vsから、下記の式(11)に基づき、重み付け値ωを算出する。図19は重み付け値ωの特性を示すグラフである。図19に示すように、重み付け値ωは、車速の増加量に伴い、大きくなる特性を備えている。

ω=g(Vs) 式(11)
【0096】
図19に示す重み付け値ωの特性とすることで、実施の形態1の図7で示した、重み付け値ωの特性と比較して、アクセル踏み込み開始直後の目標駆動力を抑制することができる。また、アクセル踏み込み開始からの時間経過と伴に、目標駆動力の漸減量を少なくすることができるため、ドライバーに気付かれることなく燃料消費を抑制することができる。
【0097】
目標駆動力算出手段1601は、図8に示すような特性fと、特性fより小さな目標駆動力を与える特性fと、車速Vsから算出した重み付け値ωに基づいて目標駆動力Ptを算出する。又、目標車速Vtに到達した場合には、目標駆動力を車速の増加量に伴って漸減せずに保持する。その結果、図17に示す時点t21〜t22間の加速シーンに於ける駆動力を、図17の(b)に示すように適切に漸減制御することができる。
【0098】
通常のエコ運転(省エネルギー運転)では、巡航中の加速シーンに於いて、ドライバーが意図的にアクセル操作量を小さくすることで無駄な燃料消費を抑えている。巡航中の車両は十分な運動エネルギーを持った状態であるため、運動エネルギーのない発進シーンと比較して、所望の車速上昇に要する燃料消費量が少ない。しかし、運転経験の浅いドライバーや運転技術が低いドライバーの場合、発進時と同じアクセルペダル操作をしてしまうため、必要量以上の燃料を消費していることになる。
【0099】
そこで、この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置によれば、目標駆動力算出手段1601は、前述のようにアクセル開度センサ101により検出したアクセル開度θ、アクセル操作開始判定手段104から出力されるアクセル操作開始判定フラグFlg、目標車速算出手段106により算出した目標車速Vtに基づいて目標駆動力Ptを算出するように構成されており、車速が上昇し、十分な運動エネルギーを得た巡航状態からの加速シーン、即ち図17に示す時点t21〜t22の加速シーンに於いて、車速Vsから式(11)に基づいて目標駆動力Ptを算出する。
【0100】
その結果、車速が高い巡航状態からの加速シーンに於いては、図17に示す加速開始の瞬間である時点t21から駆動力を抑制することができ、無駄な燃料消費を抑えることができる。
【0101】
以上述べたように、この発明の実施の形態3による車両駆動力制御装置によれば、ドライバーに煩わしさを感じさせることなく、即ちドライバーの意識がなくても燃費を向上させることができる車両駆動力制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
101 アクセル開度センサ 102 車速センサ
103 アクセル開度変化量算出手段 104 アクセル操作開始判定手段
105 踏み込み経過時間算出手段 106 目標車速算出手段
107、1102、1601 目標駆動力算出手段
108 駆動力操作量算出手段 109 駆動力制御装置
110 走行抵抗算出手段 1101 加速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの経過時間を算出する経過時間算出手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
少なくとも前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記アクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記経過時間の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出することを特徴とする車両駆動力制御装置。
【請求項2】
自車の車速を検出する車速センサと、
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出することを特徴とする車両駆動力制御装置。
【請求項3】
自車の車速を検出する車速センサと、
アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記検出されたアクセル開度からアクセル開度変化量を算出するアクセル開度変化量算出手段と、
前記算出されたアクセル開度変化量に基づきアクセル操作開始を判定するアクセル操作開始判定手段と、
前記アクセル開度と車両の駆動力源の駆動力との関連特性に基づいて前記検出されたアクセル開度に対応する目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、
少なくとも前記算出された目標駆動力に基づいて駆動力操作量を算出する駆動力操作量算出手段と、
前記算出された駆動力操作量に基づいて前記駆動力を制御する駆動力制御装置と、
少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき、前記目標駆動力の目標駆動力
下限値を算出する目標駆動力下限値算出手段とを備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記目標駆動力が前記目標駆動力下限値に到達するまで、前記アクセル操作開始判定手段によりアクセル操作が開始したと判定された時点からの前記車速の増加量に伴って前記目標駆動力を漸次減少させる目標駆動力を算出することを特徴とする車両駆動力制御装置。
【請求項4】
自車の加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記検出された加速度が所定値よりも小さい場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項5】
自車の走行抵抗を検出する走行抵抗検出手段を備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記検出された目標駆動力が前記走行抵抗を基準とする値以下の場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項6】
自車が走行する道路の道路曲率を検出する道路曲率検出手段を備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記検出された道路曲率が所定値よりも小さい場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項7】
前記目標駆動力算出手段は、前記アクセル開度変化量が所定値よりも小さい場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項8】
複数の変速比を有し、前記駆動力源の駆動力を前記車両の駆動輪伝達する変速機と、
前記変速機の変速比を変更する変速比変更手段を備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記変速比が所定値以上である場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項9】
右左折または走行路変更等の運転者の進路変更意思を検出する進路変更意思検出手段を備え、
前記目標駆動力算出手段は、前記運転者に進路変更の意思があることを検出した場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項10】
前記目標駆動力算出手段は、前記車両駆動力制御装置の構成部が故障状態である場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項11】
自車の走行抵抗を検出する走行抵抗検出手段を備え、
前記目標駆動力下限値算出手段は、前記検出された走行抵抗が大きいほど、前記目標駆動力下限値を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車
両駆動力制御装置。
【請求項12】
自車が走行する道路の道路曲率を検出する道路曲率検出手段を備え、
前記目標駆動力下限値算出手段は、前記検出された道路曲率が大きいほど、前記目標駆動力下限値を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項13】
目標駆動力下限値算出手段は、前記算出されたアクセル開度変化量が大きいほど、前記目標駆動力下限値を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項14】
右左折または走行路変更等の運転者の進路変更意思を検出する進路変更意思検出手段を備え、
目標駆動力下限値算出手段は、前記運転者に進路変更の意思があることを検出した場合には、前記運転者に進路変更の意思がないと検出した場合よりも、前記目標駆動力下限値を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項15】
少なくとも通常運転に適合する変速モードである第1の変速モードを含む複数の変速モードを有する自動変速機と、
前記変速機の変速モードを選択する選択手段を備え、
前記目標駆動力下限値算出手段は、前記選択手段により前記第1の変速モードを選択していない場合には、前記選択手段により前記第1の変速モードを選択している場合よりも、前記目標駆動力下限値を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項16】
運転者の手動操作により前記目標駆動力下限値を調整できる目標駆動力下限値調整手段を備え、
前記目標駆動力下限値算出手段は、運転者の手動操作により前記目標駆動力下限値を調整し得ることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項17】
自車の車速を検出する車速センサと、
少なくとも前記算出されたアクセル開度変化量に基づき目標車速を算出する目標車速算出手段を更に備え、
目標駆動力算出手段は、前記検出された車速が前記目標車速より大きい場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項18】
少なくとも前記算出したアクセル開度変化量に基づき目標車速を算出する目標車速算出手段を更に備え、
前記車速が前記目標車速より大きい場合には、前記アクセル開度に対する前記目標駆動力が漸次減少しないように保持する目標駆動力を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項19】
前記目標駆動力は、前記駆動力源の目標駆動力であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項20】
前記駆動力源の駆動力を車両の駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記目標駆動力は前記変速機の目標駆動力であることを特徴とする請求項1乃至3のう
ちの何れか一項に記載の車両駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−99376(P2011−99376A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254151(P2009−254151)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】