車用静電センサー
【構成】多様な形態の電極(12)を使用した乗員センサーシステムが開示されている。電極(12)はエアバッグ噴出口(44)に隣接して設置でき、それぞれの電極は乗員の近接度に対応する信号を提供する。このシステムは1信号の場合よりも適切な決定を下すことができるように複数の信号を比較するコンパレータをさらに含んでいる。電極(12)を誘電基材(16)上に形成し、電極間をブロックするように提供された接地領域(14)で分離することができる。電極(12)を、片面に導電コーティングを施した誘電材料に取り付けられた導電材料で形成することができる。電極(12)を内装体内に接地導電材料と隣接させて埋設し、1電極にDC電圧を印加して第2電極への導電通路を形成することができる。その導電通路は湿気で提供される。ドライブ電極(22)とレシーブ電極(26)は車の窓と一体的に形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
関連出願
本願は、1997年7月25日出願による米国仮特許願第60/053,733号「乗員用静電センサー」、1997年11月20日出願による米国仮特許願第60/066,235号「静電センサーデザイン及び車の安全性への貢献」及び1998年4月29日出願による米国仮特許願第60/083,456号「静電センサー/成型埋込電極」の優先権主張出願である。
【0002】
本願は、米国特許第5,366,241号、第5,602,734号及び第5,691,693号、米国特許願第08/621,465号及び第08/778,871号、並びにPCT出願PCT/US95/12077、PCT/US/96/14060、PCT/US97/03510及びPCT/US97/06822に関連している。
【0003】
本願発明は静電センサー(capacitive sensor)に関し、特には車の乗員センサー(vehicle occupant sensor)として利用される静電センサーに関する。
【0004】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
センサー技術は車の安全性と利便性の向上に益々貢献してきている。車のデザインの相違や、車が使用される環境の著しい相違によって、現在入手が可能なセンサーは多くの点において不充分である。本願発明は本明細書の詳細な説明中に解説されているそれら諸問題に対処する装置と方法とを提供する。
【0005】
現在の技術レベルは以下の特許に記載されている。タカハシ他の米国特許第5,702,123号「乗員シート用エアバッグ装置」、ブリード他の米国特許第5,653,462号「車の乗員ポジション及び車速のためのセンサー」、キシルの米国特許第5,602,734号「自動車エアバッグシステム」、デービスの米国特許第5,549,323号「集積乗員センサーモジュールを備えたプラスチックエアバッグ」、チェン他の米国特許第5,512,836号「固体状の近接度センサー(proximity sensor)」、キシルの米国特許第5,366,241号「自動車エアバッグシステム」、ジェンストロム他の米国特許第5,363,051号「ハンドルキャパシフレクタセンサー(capaciflector sensor)」並びにマッテス他の米国特許第5,118,134号「自動車乗員を保護する方法及び装置」。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明の1例は乗員センサーシステムであって、それぞれ乗員との距離あるいは近接度に応じた信号を発生させるエアバッグ噴出口に近接して配置された複数の電極と、それら信号を比較検討するコンパレータとを備えている。それら電極をオプション的にエアバッグ噴出口周囲に埋設することもできる。この好適実施例においては、コンパレータは所定のしきい値(threshold)を越える信号の割合と、乗員加速度、速度、二次元ポジション及び/又は三次元ポジションを決定する。
【0007】
本願発明の別例はセンサータイプであり、誘電体基板(dielectric substrate)上に形成され、それら電極間の信号進行ルート(line-of-sight)をブロックするように提供された接地領域(grounded area)によって分離された複数の電極を含んでいる。この好適実施例においては誘電体基板はそれら電極に対して凸形状に提供される。
【0008】
本願発明の別例は複数の電極を含んでいる静電センサータイプであり、一面に導電コーティングが施されて成る誘電材料に取り付けられた導電材料を含んでいる。この好適実施例においては、電極の一部はその導電コーティング層の1層上に形成されており、別層の導電コーティングは接地されている。このセンサーは車両エアバッグシステムの作動パラメータを修正し、誘電材料との乗員の距離すなわち近接度を決定に利用される信号を提供する。好適にはこの誘電材料はガラスである。本願発明のこの例は特に車のサンバイザーへの取り付けに適している。
【0009】
本願発明の別例は集積回路タイプであり、複数の静電センサーのサポート電子装置と、別の集積回路にオシレータ出力(oscillator output)を提供する手段とを含んでいる。
【0010】
本願発明の別例は車の内装体内に埋設され、接地された導電材料に隣接して提供された電極を含んだ静電センサータイプである。この好適実施例においては、その導電材料は平坦であり、DC電圧が1電極に提供されて別電極への導電通路を形成している。この導電通路は湿気によって提供される。
【0011】
本願発明の別例は、車の窓と一体に形成されたドライブ電極(drive electrode)とレシーブ電極(receive electrode)とを備えた静電センサータイプである。この好適実施例においては、それら電極の一方は他方の電極を囲むように提供されたU形状に形成されている。複数ペアのドライブ電極とレシーブ電極を採用することもできる。
【0012】
本願発明の主たる目的は、多様な車の形状や利用環境条件に最適に対応することができるセンサー技術を提供することである。
【0013】
本願発明のその他の目的、利点及び新規な特徴並びに利用形態は、添付図面を利用した以下の詳細な説明に記述されている。本願発明の目的及び利点は、本明細書の「特許請求の範囲」に記載された手段及びそれらの組み合わせによって達成されよう。
【0014】
【発明の実施の形態】
添付の図面は本願発明のいくつかの実施例を図示しており、本明細書の詳細な説明と共に本願発明の解説に供されている。それら図面は好適実施例の説明のみを目的とするものであり、本願発明の限定は意図されていない。
【0015】
本願発明は、多様な車の形状や使用環境に対処できるセンサー装置とセンサー方法とを提供する。例えば、エアバッグ噴出口周囲、フロントガラス内、サンバイザー内あるいは内装具内へのセンサーの提供、並びに湿潤作用の利用形態を提供する。
【0016】
まず図1と図2を解説する。本願発明は近接度電極静電センサー10のデザイン、製造及び組み立て、並びにいくつかの有効な利用方法に関する。このセンサーのレスポンス曲線は、国際出願PCT/US97/06822の図13に開示されている静電減衰関数(capacitive decay function)を示している。設置されたセンサー表面に対して1インチから2インチよりも近くに接近したとき、その大きさが電極有効範囲を越える非接地物体はレスポンス曲線の急反転現象を引き起こすことが知られている。物体がこのような近接領域に進入すると電圧は継続的に低下せず、図1に示すように急激な増加現象が発生する。
【0017】
この反転現象によって、物体の近接度が2つのうちのいずれかの値をもつことになるので、センサーの適用形態によっては曖昧さが引き起こされる。この反転現象は物体の接地によって、あるいは電極間の接地ギャップを高めることによって低減させることが可能である。モノリス状接地バック平面体18を有した誘電基材16上の電極12間に導入されているこの接地された平面状で高められた要素あるいはギャップ14は、それら電極間に直接的に存在する非常に強力な静電カップリング(capacitive coupling)を接地するように短絡(shunt)させる作用を提供する。この強力な静電カップリング現象が近接領域での信号反転現象を引き起こす主因であると考えられている。この高められた接地ギャップは図2に示されている。
【0018】
この近接度電極静電センサーの実効センサー範囲は一般的に電極形状の関数(function of geometry)である。この有効範囲は電極を搭載する基材28と、接地バック平面体29と、ドライブ電極22とレシーブ電極26との間の接地ギャップ24とを凸面形状にすることで増加できる。センサー有効範囲のこの改善20は図3に示すように1体のセンサーの場合にも、あるいはセンサーアレイの場合にも可能である。
【0019】
本願発明は車の乗員センサー用として特に有用であり、中でも特にエアバッグシステムに利用する乗員ポジションを決定したり、運転手の居眠りを感知したり、シート及びヘッドレストを自動調整したり、運転手のヘッドポジションに応じた最適ミラー角度を提供したり、他の安全性並びに利便性向上のために利用できる。
【0020】
新車には2体のフロントエアバッグシステムが装着されるようになってきた。事故発生時には2人にはそれぞれ異なる運動エネルギーがかかるので、それぞれのエアバッグに対して独立して乗員ポジションを決定することが重要である。これを達成する1つの方法は、エアバッグコントローラに対してそれぞれの乗員ポジションに関する情報を連続的に提供するよう、シートポジションに対して別々に乗員センサーシステムを装備することである。これを達成するため、異なる静電センサーアレイまたは他の種類の乗員センサーアレイを各シートポジションに隣接させて配置する。サポート電子装置にそれぞれの乗員ポジションをモニターする技術と装置を使用したり、別体のシステムを利用することで達成できる。各アレイに近接電極と接地ギャップ及び接地バック平面体で構成されたルーフ搭載静電センサーを含ませ、全センサーを1体のオシレータで作動させることが好ましいが、複数のセンサーを各乗員シートポジションに近接させて車内に分設することも可能である。同様に、静電及び重量センサー、赤外線及び静電センサー、超音波及び静電センサー、赤外線及び超音波センサー、超音波及び重量センサー、等々の複数種の組み合わせ乗員センサーを利用することも可能である。
【0021】
図4と図5に図示するように本願発明はエアバッグ噴出口44の周囲にアレンジしたセンサーアレイの形態で利用することもできる。この形態30は車のフロントガラス34の下方にある計器パネルまたはダッシュボード36上に設置すると特に有効である。センサー有効フィールド32は一般的に静電センサーアレイ38から乗員シートに向かって水平方向に広がる。好適には、これらセンサーは、国際出願PCT/US97/06822の図15に類似したドライブ電極に取り付けられた1体のオシレータによって励起される。好適にはエアバッグ噴出口は4体のレシーブ電極48に囲まれる。ドライブ電極46とレシーブ電極との間のギャップと基材42の裏側は両方とも車体接地部(vehicle ground)に接続されている。別形態では、4個未満のレシーブ電極を利用することもできる。それらをエアバッグ噴出口の上下あるいは左右に配置する。いずれの場合も、それらセンサーをエアバッグ噴出口自体に、あるいはエアバッグ噴出口に近接して配置することができる。
【0022】
製造は、例えば図14に図示されたもののごとき追加的ドライバー用センサーのごとき他の同様な製品との組み合わせで達成できる。誘電基材の両面に電極と接地領域とを提供する製造工程時に、ドライバー用のエアバッグ噴出口センサー49を乗員エアバッグ噴出口センサー30の内側に組み入れ、図6に示すように製造効率と製品性能とを高めることができる。
【0023】
それぞれのエアバッグに対するドライバーと乗員の両方のポジションを検出するために複数のセンサーアレイを車に搭載する場合、その信頼性を向上させるためにはサポート電子装置の数を最低限とすることが望ましい。本願発明は好適実施例において、2体の静電乗員センサーアレイをサポートするようにデザインされた適用特定集積回路(ASIC)を採用する。ASICは好適には雛菊連輪形状で提供されており、複数のASIC装置を複数のセンサーアレイペアのサポート用に組み合わせて使用する。この形態を達成するには、ASICに内蔵したオシレータ回路をASICの2つのピン(pin-out)に連結(convey)する。図7に示すように、それらの1つはドライブ電極の一部に接続されており、1つは第2ASICの基準入力ピン(reference input pin)に接続されている。
【0024】
乗員エアバッグシステムに求められる重要な機能は、子供の場合や、体勢が崩れた姿勢で着座している乗員がエアバッグに隣接している場合にエアバッグを作動させないことである。このような場合にエアバッグが作動すると大怪我の基になり得る。4つのセンサーの異なるレスポンスによって、非作動としたり、作動状態を多様化させることが可能である。例えば、エアバッグ噴出口に成人の膝が接近している場合には怪我の心配がない。しかし、子供の頭部がエアバッグ噴出口に接近している場合には同一ポジションであっても重大な脳障害を引き起こしかねない。しきい値以下(Y=乗員検出)あるいはしきい値以上(N=乗員非検出)の場合の電圧出力の形態によるセンサーレスポンスと予想されるエアバッグ作動状態は図8の表に示されている。
【0025】
車体のスタイルがさらに流線型に近づくに連れ、ルーフ面積が減少し、フロントガラス面積が増大する。従って、多くの車において、ルーフ搭載静電センサー形態は実施が困難であり、たとえ物理的に可能であっても、センサーはシートの真上には設置できないであろう。よって、本願発明はルーフ以外の車内部分に静電センサーを設置させたり、あるいはルーフの制限条件をクリアするような拡大センサー有効範囲を有したルーフセンサーシステムを提供してこの問題を解決する。
【0026】
PCT/US97/06822はその2ページ9行目で、他の同様なセンサーとの組み合わせによる乗員の存在及び/又はポジションを検出するルーフサポート体用のジュアル型近接度電極静電センサーを開示している。本願発明の1実施例ではルーフサポート体70にそのようなセンサーを採用し、それらを個々に作動させ、車内の他のセンサーとは分離独立させている。もし複数のセンサーをルーフサポート体に搭載するならば、それらを共通のオシレータによって作動し、オーバーラップするセンサー有効フィールドを提供する。乗員が複数のセンサー有効フィールド内に進入した際の差動レスポンス(differential response)はルーフサポート体に1個のみの静電センサーが搭載されている場合よりも多くの情報を提供する。特に身体全体、身体ポジション、身体モーション方向、及び隣接するエアバッグシステムから乗員を保護するための情報を提供する。フロントルーフサポート体に配置された複数センサーを活用する1形態50は図9(a)と図9(b)とに図示されており、ルーフ52、第1センサーレシーブ電極54、第1センサー電子装置56、第2センサーレシーブ電極58、第2センサー電子装置60、車の電源及び入力/出力62への接続部、車体フード64、電極後方及中間の接地領域66、フロントガラス68、及びルーフサポート体72を含んでいる。フロントルーフサポート上に1個のセンサーを設置した実施例も可能であり、この場合、それら2個のレシーブ電極は1個のレシーブ電極と置換が可能である。
【0027】
ハンドル内に設置されたエアバッグへの近接度を検出する機能を達成するために、PCT/US97/06822はエアバッグ噴出口内側へのデュアル近接度電極静電センサーの採用を開示している。複数のセンサー90をこの場所に設置し、図14に示すように接地面102、ドライブ電極104及びレシーブ電極106を利用して、ドライバーの身体、頭部、手、及び/又は腕の近接度に従った差動電圧(differential voltage)を提供している。
【0028】
あるいは、ドライバー用であっても乗員用であっても、静電センサーをサンバイザーに設置し、サンバイザーの使用時、非使用時に拘わらず作動させることができる。この場合、複数のセンサーの使用が望ましく、それぞれサンバイザーの表面に配置し、1つのドライブ電極と複数のレシーブ電極、または複数のドライブ電極と1つのレシーブ電極の形態を利用する。複数の電極(ドライブ電極あるいはレシーブ電極)はその一部がサンバイザーの角度に応じて作動するように配置される。
【0029】
図10から図12に示す接地平面体88を備えた複数のドライブ電極と1個のレシーブ電極の場合80、サンバイザー84がルーフパネル82に収納された場合、上方ドライブ電極94はオフ状態となり、金属ルーフへの接近によるセンサーの感度低下を防止する。この収納ポジションにおいて、下方ドライブ電極90は作動状態にあり、レシーブ電極86にカップリングされている。サンバイザーが垂直下向きポジションにある場合、両ドライブ電極は作動状態であり、エアバッグモジュールに対して最大信号カップリングと最大センサー有効フィールドとを提供する。サンバイザーがフロントガラスに向かって前方に傾斜状態で押し出されているとき、上方ドライブ電極は作動状態であり、下方ドライブ電極はオフ状態となる。これで、フロントガラスに付着する雨滴や雪片による影響を受ける可能性のあるフロントガラスを介したカップリングを回避させる。レシーブ電極がサンバイザーの両面をカバーし、信号がどちらのドライブ電極の作動状態にあるかに拘わらず常に受信されるようにすることが望ましい。多くのサンバイザーにおいてミラーは上面に提供されている。静電センサーレシーブ電極はこのミラーを囲むように提供が可能である。あるいはミラーの金属反射層に電気的に取り付け、ミラーをレシーブ電極内に一体化させることも可能である。
【0030】
ガラス部分に埋め込まれた着色フィルムを静電センサーの要素として利用することもできる。第1実施態様においては、このフィルムを透明あるいは半透明な導電膜で形成させることができ、車体接地部に接続させて接地平面体を形成させ、ルーフサポート部あるいはサンバイザーセンサーのセンサー有効フィールドをガラス表面の雨滴や雪片の影響から隔離させる。よって、ドライブ電極とレシーブ電極との間の静電容量の変化は車内の人物または他の導電物体の接近で引き起こされる静電カップリングの妨害によるものと考えることができる。オプションとして、センサードライブ電極とレシーブ電極とを車体ガラス内の導電膜上に形成し、別体の導電膜接地平面体をドライブ電極とレシーブ電極とに重ねることができる。この静電乗員センサーのバリエーションはガラスの内側に接近している乗員あるいは物体の近接度を検出する能力を備えている。
【0031】
本願発明はさらに車体ルーフの面積限定要因を克服するように車内ルーフに設置された拡大有効範囲を有するセンサーデザイン90を提供する。このレシーブ電極94は扇形であり、近接ドライブ電極92はレシーブ電極に静電カップリングする信号を提供する。扇形レシーブ電極のアレイの1形態は図13に図示されている。この実施例では、ドライブ電極はレシーブ電極アレイの周囲に配置されており、接地領域96がそれら電極を分離している。図示のごとくに電子装置98が各レシーブ電極に、電力線、接地線及び入力/出力線99で電気的に接続されている。
【0032】
図15(a)と図15(b)に示す電極114は絶縁導電線で形成することができる。好適には非常に細いものであり、車体のフロントガラス等の積層ガラス構造体112、116の内側面に形成された導電膜あるいは導電コーティング114上に直載される。そのような電極の1つはオシレータ信号120で作動され、別の1つは信号処理装置に接続される。この装置は、電極間に存在するように提供された静電カップリングを電圧信号に変換する。この電圧信号は処理されて、電極間の静電カップリングが人物のごとき高導電性物体によって部分的あるいは完全にブロックされているかどうかを判定する。このブロック現象は静電カップリングフィールドの一部を短絡することで発生する。静電フィールドのこのブロックは人体とガラス構造体との近接度に相関する。
【0033】
フロントガラスに近接してダッシュボードに設置された車のエアバッグシステムにおいて、本願発明のものはエアバッグ噴出口への乗員の近接度の検出に使用が可能である。この近接度の情報はエアバッグコントローラによって利用され、乗員がエアバッグ噴出口に非常に近い場合にはエアバッグを非作動とすることができる。この近接度情報をエアバッグの作動パラメータの調整に利用することができる。
【0034】
あるいは、ガラス埋設静電センサーからの複数の信号を、ダッシュボード、エアバッグ噴出口、ピラー、ルーフ、サンバイザー、あるいはシートに設置されたセンサーからの信号と組み合わせ、乗員のポジション、速度、あるいは加速度に関する追加的情報を提供することもできる。例えば、米国特許第5,602,734号と第5,691,693号は車のヘッドライナーに設置された3体の静電カップリングセンサーの出力を参照して乗員のヘッドポジションを三角法で処理する技術を開示している。この三角測定法は、ヘッドライナーとフロントガラスに配置されたセンサーからのデータを組み合わせて利用するように修正が可能である。少なくとも3体のセンサーからのデータが三角法での乗員の頭部に関する3座標点の取得に必要なことは理解されよう。オプションとして、米国特許願第08/621,465号は乗員頭部の2座標点の取得のためにルーフヘッドライナーの2つの静電センサーからのデータの使用を開示しており、本願発明に従った2つのセンサーを利用することができる。さらに、他のタイプのセンサーも組み合わせて利用できる。それらには、超音波センサー、能動的あるいは受動的赤外線センサー、重量センサー、レーダー並びに他の同様な近接度あるいは容積センサー装置が含まれる。
【0035】
本願発明は、エアバッグ噴出口、車体計器パネル、ルーフサポート体内装具、ルーフヘッドライナー等々のごとき成型または合成材料への電極埋設方法にも関する。1実施例においては、ワイヤーや他の導電材料で提供された電極が成型/合成材料の裏側に埋設される。これら電極は小型プリント回路ボードに搭載される集積回路あるいは他の電子装置と接続される。導電材料が埋設された電極を含んだ裏面に適用され、車体の接地部に接続される。これで電極は絶縁され、静電フィールドは成型/合成材料を介してのみ形成される。すなわち、静電フィールドは、乗員の近接度を検出する目的で車内に向かって広がる。導電材料132は液体またはスプレー形態で提供され、成型/合成部剤138の裏側にプリントされる。あるいは、図16に示すごときの適用方法が採用される。または、電極134は成型部材の中央、あるいは近接して、またはその前面に埋設され、電極端子、回路ボード及び接地平面体は前述のごとき個所に残るように配置されるか、電極の位置に従って適当に移動される。
【0036】
本願発明は、電極が成型あるいは合成材料142の前面に隣接して提供されるようにその材料内に電極を提供することも含んでいる。この実施例では、低DC電圧148が1電極156に適用され、覆う湿気の存在下で、その湿気は第2電極156へと電流を流すための導電通路144を提供する。この電流は湿気を蒸発させる熱を提供し、導電通路の導電性を低下させて電流量を減少させ、やがて湿気が充分に蒸発すると電流を完全に遮断させる。これら電極は静電センサー146の形成にも採用され、成型あるいは合成材料に近接した乗員の近接度を検出させる。これら電極間を静電カップリングさせるため、ACオシレータ信号150が1電極に接続され、信号処理回路154は第2電極に取り付けられる。導電材料は電極の直後で成型/合成材料と一体化されるか、または成型/合成材料の裏側に接着される。この導電材料は車体接地部に接続され152、図17に示すように接地バック平面体を形成する。あるいは、成型/合成材料142の表面は、充分な湿度となると導電性となる湿気感応材料で構成されたり、あるいはそのような材料を含むこともできる。そのような材料の例としての安定塩付加剤(stabilized salt-additive)は湿気の存在下で導電性を追加する。
【0037】
本願発明は絶縁ワイヤー状あるいは扇形である他の導電材料で形成される電極群であってもよい。好適には、各扇形電極162は車のエアバッグ噴出口のごとき多角形の角部に隣接して提供される。第2電極は、その第2電極とそれぞれの扇形電極との間に共通の距離が提供されるように扇形電極のそれぞれの内部に形成される。それら扇形電極と内部電極とのセットはプリント回路ボード上のごとくに集積回路または他の電子装置に接続される。導電材料をその方形領域あるいはエアバッグ噴出口に提供して車体の接地部と接続させ、図18に示すごとくに接地平面体を電極の背後に形成させることもできる。
【0038】
米国特許第5,691,693号は車のヘッドライナーに設置されてヘッドポジションを検出する静電乗員センサーシステムを開示している。このシステムは、例えば、運転手の居眠り等の危険な状態を経時的に検出してその変化を比較するプロセッサーを利用している。このシステムの処理回路は好適には複数の利得ステージ(gain stage)を採用しており、背の高いドライバーと背の低いドライバーのヘッドポジションを同等の精度で判定することができる。本願発明においては、この複数の利得ンステップはそれぞれ異なる利得要素を採用している複数の同期検出処理ステージ(multiple synchronous detection processing stages)によって実行される。本願発明のこの複数ステージは静電センサーのための最良解析度を提供するのに使用される。2つの同期検出処理ステージの出力は図19に図示されている。あるいは、これら複数の利得ステージをログアンプ(logarithmic amplifier)で提供することができる。
【0039】
図20から図23に図示されている追加静電センサー200はガラスに埋設されており、誘電材料(フロントガラス202等)内に提供されたワイヤー204と206で構成されている。このセンサーはガラスまたは同様な透明あるいは半透明の材料の表面に形成された導電材料214上に提供されている。
【0040】
1実施例においては、1本のワイヤーはオシレータ装置等のドライブ手段に取り付けられ、別のワイヤーはチャージ感応アンプ(charge sensitive amplifier)のごときレシーブ手段に取り付けられている。導電材料はシステムの接地部に取り付けられている。静電カップリングがドライブワイヤーとレシーブワイヤーの間に形成され、人体のごとき導電物体の接近に反応して変化する。別実施例においては、図20に示すように、このドライブワイヤー204はフロントガラス202を提供するガラス表面の一部に水平に埋設されており、レシーブワイヤー206はドライブワイヤーを囲むように長形U形状に埋設されている。第2セット212の同様なワイヤーを図21に示すように第1セット216のワイヤーと平行に埋設することができる。この実施例では、システムの接地部への導電膜214の単接続で両セットのワイヤーには充分である。
【0041】
車の乗員センサーシステムにおいては、それぞれのセット212、216のワイヤーに対する乗員の接近による静電カップリングの変動は論理的に結合され、乗員の前後及び上下のポジションが決定される。これらポジションは経時的に測定され、乗員の接近角度が提供される。この接近角度は例えば水平等の基準軸に対する角度として記述される。図22参照。センサー有効ゾーンに進入する乗員頭部226と手あるいは腕224との識別は基準軸に対する接近角度の変化によって決定できる。基準軸より上方からの接近角度のものは乗員頭部と解釈され、基準軸より下方からの接近角度は乗員の腕や手のセンサー有効ゾーンへの進入であると解釈される。さらに、あるいはオプションとして、その識別は乗員がセンサー有効フィールドに進入するポジションと時間との関係を計算することでも達成される。エアバッグの規制を必要とするクラッシュ条件は、乗員の頭部または手の随意な動きよりも単位時間当たりのポジション変動が大きいと考えられる。さらに、あるいはオプションとして、乗員の頭部と手との識別は、所定時間にどのセンサー有効フィールドの組み合わせに乗員が進入しているかが決定できるよう、電圧しきい値に対する論理的操作を利用して行うことができる。その進入領域がフロントガラスの上方に近いことを示すような組み合わせであれば乗員の頭部として理解され、フロントガラスの下方に近いことを示すものであれば乗員の手か膝であると理解できる。この手法は米国特許願第08/621,465号の図22に図示される論理と類似している。
【0042】
このような識別データは乗員エアバッグシステムのごとき車の安全システムによって利用が可能であり、エアバッグ222のための適当な作動条件の決定に利用することができる。もしこの識別データが、乗員の頭部がエアバッグに隣接した領域に進入しており、エアバッグの作動通路に入っていることを示しているなら、エアバッグ論理コントローラは低パワー作動あるいは非作動を選択し、エアバッグによる障害を低減させることができる。もし識別データが乗員の腕がエアバッグに隣接した領域に進入していることを示すなら、コントローラは通常作動を選択することができる。この静電センサー装置またはシステムからの出力を、静電センサー、超音波センサー、赤外線センサー、重量センサー、シートポジションセンサー、チャイルドシート検出手段、レーダ等々の多彩な他のセンサー装置の出力と組み合わせ、乗員のあらゆる状態に対応した安全システムを最良状態で提供することができる。
【0043】
図20から図22にかけて示される静電センサーの利用形態は、小型電子回路236をガラス238の縁部のワイヤー234の出口に近いガラス238の内側表面に直載することで達成される。図23(a)と図23(b)はさらに誘電材料232、電子接続部240、導電フィルム242、及び外側ガラス層244を示している。その回路を湿気、凝結及び他の物体の付着から保護するため、回路をエポキシ樹脂やプラスチック材料のごとき材料で被覆することができる。この回路の電子絶縁は回路の上部及び側部をシステム接地部に電気的に接続した導電材料で包囲することにより達成できる。このような実施例は次のような多くの等価的形態で提供することができる。ワイヤーを、静電フィールドを創出し、あるいは、静電フィールドの変化を検出する異なるタイプの電子装置と接続させたり、ワイヤーを平坦、丸形あるいは他の形状の導電材料で形成したり、導電材料を金属製あるいは非金属製としたり、システム接地部に取り付ける導電材料をガラスまたは透明/半透明表面に物理的に接着させたり、あるいはガラスに接着された柔軟な膜体に取り付けたり、ワイヤーの配向性を適当に選択させたり、1セットのワイヤーを別セットのワイヤーとはオフセットの状態に提供したり、複数の接近角度、ポジションと時間しきい値の関係、あるいは電圧/ゾーンポジションを利用して識別性能の精度を上げたり、3セット以上のワイヤーを利用し、3軸での乗員ポジションの決定に三角法を採用したり、電子回路をガラスの縁部から離して設置したり、好適にはワイヤーをガラス縁部の出口で遮蔽処理したりすることができる。
【0044】
以上、本願発明はこれら好適実施例に関して詳細に説明されているが、他の実施例でも同様な結果を達成させるであろう。本願発明の改良や変更は当業者には自明であり、それらは本願の請求項によってカバーされている。前出の全ての引用及び紹介文献の内容を本願に援用する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は図2に示す本願発明のセンサーのレスポンス曲線を表すグラフである。
【図2】 図2は本願発明の1例による電極間に高く提供された接地ギャップ(grounded gap)を示す側面図である。
【図3】 図3は本願発明の凸状近接電極静電センサー(convex adjacent electrode capacitive sensor)の略図である。
【図4】 図4は計器パネル上に設置された状態の静電センサーアレイの略図である。
【図5】 図5はエアバッグ噴出口周囲に提供された本願発明の複数のL型電極を図示している。
【図6】 図6は製造工程の効率を高めるための静電センサーの設置形態を図示している。
【図7】 図7は本願発明の利用特定集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit))の雛菊連鎖形態(daisy-chaining)を図示している。
【図8】 図8は図5図示するごときのセンサーセットにおけるセンサー値と、それを利用する好適エアバッグの反応との関係を示す表である。
【図9】 図9(a)はルーフサポート内に設置された静電センサーを図示している。 図9(b)は図9(a)に示すルーフサポート内静電センサーの断面図である。
【図10】 図10は収納状態のサンバイザー内に設置された静電センサーを図示している。
【図11】 図11(a)はサンバイザーが垂直に引き下げられたときの図10に示す形態の静電センサーを図示している。図11(b)はサンバイザーが前方に斜めに押し出されたときの図10に示す形態の静電センサーを図示している。
【図12】 図12は図10に示す静電センサー形態の平面図である。
【図13】 図13は扇形レシーブ電極静電センサーアレイを図示している。
【図14】 図14はハンドル内に設置された複数のドライブ電極とレシーブ電極とを図示している。
【図15】 図15(a)と図15(b)は層状ガラス内に設置されたワイヤー電極を図示している(断面図と正面図)。
【図16】 図16は内装具内に埋設された状態の電極を図示している。
【図17】 図17は湿気発生器と静電センサーとを図示している。
【図18】 図18はエアバッグ噴出口に使用する本願発明の電極デザインを図示している。
【図19】 図19は複数の信号処理チャンネルからの出力を示すグラフである。
【図20】 図20はフロントガラス内に提供された静電センサーの別実施例を図示している。
【図21】 図21は接地導電フィルムに共に接続された状態の図20の2体のセンサーを図示している。
【図22】 図22は乗員の頭部と手とを区別するために接近角度を利用する形態を図示している。
【図23】 図23(a)と図23(b)は図20から図22に示すフロントガラスへのセンサー電極の設置状態を図示している。
【0001】
【産業上の利用分野】
関連出願
本願は、1997年7月25日出願による米国仮特許願第60/053,733号「乗員用静電センサー」、1997年11月20日出願による米国仮特許願第60/066,235号「静電センサーデザイン及び車の安全性への貢献」及び1998年4月29日出願による米国仮特許願第60/083,456号「静電センサー/成型埋込電極」の優先権主張出願である。
【0002】
本願は、米国特許第5,366,241号、第5,602,734号及び第5,691,693号、米国特許願第08/621,465号及び第08/778,871号、並びにPCT出願PCT/US95/12077、PCT/US/96/14060、PCT/US97/03510及びPCT/US97/06822に関連している。
【0003】
本願発明は静電センサー(capacitive sensor)に関し、特には車の乗員センサー(vehicle occupant sensor)として利用される静電センサーに関する。
【0004】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
センサー技術は車の安全性と利便性の向上に益々貢献してきている。車のデザインの相違や、車が使用される環境の著しい相違によって、現在入手が可能なセンサーは多くの点において不充分である。本願発明は本明細書の詳細な説明中に解説されているそれら諸問題に対処する装置と方法とを提供する。
【0005】
現在の技術レベルは以下の特許に記載されている。タカハシ他の米国特許第5,702,123号「乗員シート用エアバッグ装置」、ブリード他の米国特許第5,653,462号「車の乗員ポジション及び車速のためのセンサー」、キシルの米国特許第5,602,734号「自動車エアバッグシステム」、デービスの米国特許第5,549,323号「集積乗員センサーモジュールを備えたプラスチックエアバッグ」、チェン他の米国特許第5,512,836号「固体状の近接度センサー(proximity sensor)」、キシルの米国特許第5,366,241号「自動車エアバッグシステム」、ジェンストロム他の米国特許第5,363,051号「ハンドルキャパシフレクタセンサー(capaciflector sensor)」並びにマッテス他の米国特許第5,118,134号「自動車乗員を保護する方法及び装置」。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明の1例は乗員センサーシステムであって、それぞれ乗員との距離あるいは近接度に応じた信号を発生させるエアバッグ噴出口に近接して配置された複数の電極と、それら信号を比較検討するコンパレータとを備えている。それら電極をオプション的にエアバッグ噴出口周囲に埋設することもできる。この好適実施例においては、コンパレータは所定のしきい値(threshold)を越える信号の割合と、乗員加速度、速度、二次元ポジション及び/又は三次元ポジションを決定する。
【0007】
本願発明の別例はセンサータイプであり、誘電体基板(dielectric substrate)上に形成され、それら電極間の信号進行ルート(line-of-sight)をブロックするように提供された接地領域(grounded area)によって分離された複数の電極を含んでいる。この好適実施例においては誘電体基板はそれら電極に対して凸形状に提供される。
【0008】
本願発明の別例は複数の電極を含んでいる静電センサータイプであり、一面に導電コーティングが施されて成る誘電材料に取り付けられた導電材料を含んでいる。この好適実施例においては、電極の一部はその導電コーティング層の1層上に形成されており、別層の導電コーティングは接地されている。このセンサーは車両エアバッグシステムの作動パラメータを修正し、誘電材料との乗員の距離すなわち近接度を決定に利用される信号を提供する。好適にはこの誘電材料はガラスである。本願発明のこの例は特に車のサンバイザーへの取り付けに適している。
【0009】
本願発明の別例は集積回路タイプであり、複数の静電センサーのサポート電子装置と、別の集積回路にオシレータ出力(oscillator output)を提供する手段とを含んでいる。
【0010】
本願発明の別例は車の内装体内に埋設され、接地された導電材料に隣接して提供された電極を含んだ静電センサータイプである。この好適実施例においては、その導電材料は平坦であり、DC電圧が1電極に提供されて別電極への導電通路を形成している。この導電通路は湿気によって提供される。
【0011】
本願発明の別例は、車の窓と一体に形成されたドライブ電極(drive electrode)とレシーブ電極(receive electrode)とを備えた静電センサータイプである。この好適実施例においては、それら電極の一方は他方の電極を囲むように提供されたU形状に形成されている。複数ペアのドライブ電極とレシーブ電極を採用することもできる。
【0012】
本願発明の主たる目的は、多様な車の形状や利用環境条件に最適に対応することができるセンサー技術を提供することである。
【0013】
本願発明のその他の目的、利点及び新規な特徴並びに利用形態は、添付図面を利用した以下の詳細な説明に記述されている。本願発明の目的及び利点は、本明細書の「特許請求の範囲」に記載された手段及びそれらの組み合わせによって達成されよう。
【0014】
【発明の実施の形態】
添付の図面は本願発明のいくつかの実施例を図示しており、本明細書の詳細な説明と共に本願発明の解説に供されている。それら図面は好適実施例の説明のみを目的とするものであり、本願発明の限定は意図されていない。
【0015】
本願発明は、多様な車の形状や使用環境に対処できるセンサー装置とセンサー方法とを提供する。例えば、エアバッグ噴出口周囲、フロントガラス内、サンバイザー内あるいは内装具内へのセンサーの提供、並びに湿潤作用の利用形態を提供する。
【0016】
まず図1と図2を解説する。本願発明は近接度電極静電センサー10のデザイン、製造及び組み立て、並びにいくつかの有効な利用方法に関する。このセンサーのレスポンス曲線は、国際出願PCT/US97/06822の図13に開示されている静電減衰関数(capacitive decay function)を示している。設置されたセンサー表面に対して1インチから2インチよりも近くに接近したとき、その大きさが電極有効範囲を越える非接地物体はレスポンス曲線の急反転現象を引き起こすことが知られている。物体がこのような近接領域に進入すると電圧は継続的に低下せず、図1に示すように急激な増加現象が発生する。
【0017】
この反転現象によって、物体の近接度が2つのうちのいずれかの値をもつことになるので、センサーの適用形態によっては曖昧さが引き起こされる。この反転現象は物体の接地によって、あるいは電極間の接地ギャップを高めることによって低減させることが可能である。モノリス状接地バック平面体18を有した誘電基材16上の電極12間に導入されているこの接地された平面状で高められた要素あるいはギャップ14は、それら電極間に直接的に存在する非常に強力な静電カップリング(capacitive coupling)を接地するように短絡(shunt)させる作用を提供する。この強力な静電カップリング現象が近接領域での信号反転現象を引き起こす主因であると考えられている。この高められた接地ギャップは図2に示されている。
【0018】
この近接度電極静電センサーの実効センサー範囲は一般的に電極形状の関数(function of geometry)である。この有効範囲は電極を搭載する基材28と、接地バック平面体29と、ドライブ電極22とレシーブ電極26との間の接地ギャップ24とを凸面形状にすることで増加できる。センサー有効範囲のこの改善20は図3に示すように1体のセンサーの場合にも、あるいはセンサーアレイの場合にも可能である。
【0019】
本願発明は車の乗員センサー用として特に有用であり、中でも特にエアバッグシステムに利用する乗員ポジションを決定したり、運転手の居眠りを感知したり、シート及びヘッドレストを自動調整したり、運転手のヘッドポジションに応じた最適ミラー角度を提供したり、他の安全性並びに利便性向上のために利用できる。
【0020】
新車には2体のフロントエアバッグシステムが装着されるようになってきた。事故発生時には2人にはそれぞれ異なる運動エネルギーがかかるので、それぞれのエアバッグに対して独立して乗員ポジションを決定することが重要である。これを達成する1つの方法は、エアバッグコントローラに対してそれぞれの乗員ポジションに関する情報を連続的に提供するよう、シートポジションに対して別々に乗員センサーシステムを装備することである。これを達成するため、異なる静電センサーアレイまたは他の種類の乗員センサーアレイを各シートポジションに隣接させて配置する。サポート電子装置にそれぞれの乗員ポジションをモニターする技術と装置を使用したり、別体のシステムを利用することで達成できる。各アレイに近接電極と接地ギャップ及び接地バック平面体で構成されたルーフ搭載静電センサーを含ませ、全センサーを1体のオシレータで作動させることが好ましいが、複数のセンサーを各乗員シートポジションに近接させて車内に分設することも可能である。同様に、静電及び重量センサー、赤外線及び静電センサー、超音波及び静電センサー、赤外線及び超音波センサー、超音波及び重量センサー、等々の複数種の組み合わせ乗員センサーを利用することも可能である。
【0021】
図4と図5に図示するように本願発明はエアバッグ噴出口44の周囲にアレンジしたセンサーアレイの形態で利用することもできる。この形態30は車のフロントガラス34の下方にある計器パネルまたはダッシュボード36上に設置すると特に有効である。センサー有効フィールド32は一般的に静電センサーアレイ38から乗員シートに向かって水平方向に広がる。好適には、これらセンサーは、国際出願PCT/US97/06822の図15に類似したドライブ電極に取り付けられた1体のオシレータによって励起される。好適にはエアバッグ噴出口は4体のレシーブ電極48に囲まれる。ドライブ電極46とレシーブ電極との間のギャップと基材42の裏側は両方とも車体接地部(vehicle ground)に接続されている。別形態では、4個未満のレシーブ電極を利用することもできる。それらをエアバッグ噴出口の上下あるいは左右に配置する。いずれの場合も、それらセンサーをエアバッグ噴出口自体に、あるいはエアバッグ噴出口に近接して配置することができる。
【0022】
製造は、例えば図14に図示されたもののごとき追加的ドライバー用センサーのごとき他の同様な製品との組み合わせで達成できる。誘電基材の両面に電極と接地領域とを提供する製造工程時に、ドライバー用のエアバッグ噴出口センサー49を乗員エアバッグ噴出口センサー30の内側に組み入れ、図6に示すように製造効率と製品性能とを高めることができる。
【0023】
それぞれのエアバッグに対するドライバーと乗員の両方のポジションを検出するために複数のセンサーアレイを車に搭載する場合、その信頼性を向上させるためにはサポート電子装置の数を最低限とすることが望ましい。本願発明は好適実施例において、2体の静電乗員センサーアレイをサポートするようにデザインされた適用特定集積回路(ASIC)を採用する。ASICは好適には雛菊連輪形状で提供されており、複数のASIC装置を複数のセンサーアレイペアのサポート用に組み合わせて使用する。この形態を達成するには、ASICに内蔵したオシレータ回路をASICの2つのピン(pin-out)に連結(convey)する。図7に示すように、それらの1つはドライブ電極の一部に接続されており、1つは第2ASICの基準入力ピン(reference input pin)に接続されている。
【0024】
乗員エアバッグシステムに求められる重要な機能は、子供の場合や、体勢が崩れた姿勢で着座している乗員がエアバッグに隣接している場合にエアバッグを作動させないことである。このような場合にエアバッグが作動すると大怪我の基になり得る。4つのセンサーの異なるレスポンスによって、非作動としたり、作動状態を多様化させることが可能である。例えば、エアバッグ噴出口に成人の膝が接近している場合には怪我の心配がない。しかし、子供の頭部がエアバッグ噴出口に接近している場合には同一ポジションであっても重大な脳障害を引き起こしかねない。しきい値以下(Y=乗員検出)あるいはしきい値以上(N=乗員非検出)の場合の電圧出力の形態によるセンサーレスポンスと予想されるエアバッグ作動状態は図8の表に示されている。
【0025】
車体のスタイルがさらに流線型に近づくに連れ、ルーフ面積が減少し、フロントガラス面積が増大する。従って、多くの車において、ルーフ搭載静電センサー形態は実施が困難であり、たとえ物理的に可能であっても、センサーはシートの真上には設置できないであろう。よって、本願発明はルーフ以外の車内部分に静電センサーを設置させたり、あるいはルーフの制限条件をクリアするような拡大センサー有効範囲を有したルーフセンサーシステムを提供してこの問題を解決する。
【0026】
PCT/US97/06822はその2ページ9行目で、他の同様なセンサーとの組み合わせによる乗員の存在及び/又はポジションを検出するルーフサポート体用のジュアル型近接度電極静電センサーを開示している。本願発明の1実施例ではルーフサポート体70にそのようなセンサーを採用し、それらを個々に作動させ、車内の他のセンサーとは分離独立させている。もし複数のセンサーをルーフサポート体に搭載するならば、それらを共通のオシレータによって作動し、オーバーラップするセンサー有効フィールドを提供する。乗員が複数のセンサー有効フィールド内に進入した際の差動レスポンス(differential response)はルーフサポート体に1個のみの静電センサーが搭載されている場合よりも多くの情報を提供する。特に身体全体、身体ポジション、身体モーション方向、及び隣接するエアバッグシステムから乗員を保護するための情報を提供する。フロントルーフサポート体に配置された複数センサーを活用する1形態50は図9(a)と図9(b)とに図示されており、ルーフ52、第1センサーレシーブ電極54、第1センサー電子装置56、第2センサーレシーブ電極58、第2センサー電子装置60、車の電源及び入力/出力62への接続部、車体フード64、電極後方及中間の接地領域66、フロントガラス68、及びルーフサポート体72を含んでいる。フロントルーフサポート上に1個のセンサーを設置した実施例も可能であり、この場合、それら2個のレシーブ電極は1個のレシーブ電極と置換が可能である。
【0027】
ハンドル内に設置されたエアバッグへの近接度を検出する機能を達成するために、PCT/US97/06822はエアバッグ噴出口内側へのデュアル近接度電極静電センサーの採用を開示している。複数のセンサー90をこの場所に設置し、図14に示すように接地面102、ドライブ電極104及びレシーブ電極106を利用して、ドライバーの身体、頭部、手、及び/又は腕の近接度に従った差動電圧(differential voltage)を提供している。
【0028】
あるいは、ドライバー用であっても乗員用であっても、静電センサーをサンバイザーに設置し、サンバイザーの使用時、非使用時に拘わらず作動させることができる。この場合、複数のセンサーの使用が望ましく、それぞれサンバイザーの表面に配置し、1つのドライブ電極と複数のレシーブ電極、または複数のドライブ電極と1つのレシーブ電極の形態を利用する。複数の電極(ドライブ電極あるいはレシーブ電極)はその一部がサンバイザーの角度に応じて作動するように配置される。
【0029】
図10から図12に示す接地平面体88を備えた複数のドライブ電極と1個のレシーブ電極の場合80、サンバイザー84がルーフパネル82に収納された場合、上方ドライブ電極94はオフ状態となり、金属ルーフへの接近によるセンサーの感度低下を防止する。この収納ポジションにおいて、下方ドライブ電極90は作動状態にあり、レシーブ電極86にカップリングされている。サンバイザーが垂直下向きポジションにある場合、両ドライブ電極は作動状態であり、エアバッグモジュールに対して最大信号カップリングと最大センサー有効フィールドとを提供する。サンバイザーがフロントガラスに向かって前方に傾斜状態で押し出されているとき、上方ドライブ電極は作動状態であり、下方ドライブ電極はオフ状態となる。これで、フロントガラスに付着する雨滴や雪片による影響を受ける可能性のあるフロントガラスを介したカップリングを回避させる。レシーブ電極がサンバイザーの両面をカバーし、信号がどちらのドライブ電極の作動状態にあるかに拘わらず常に受信されるようにすることが望ましい。多くのサンバイザーにおいてミラーは上面に提供されている。静電センサーレシーブ電極はこのミラーを囲むように提供が可能である。あるいはミラーの金属反射層に電気的に取り付け、ミラーをレシーブ電極内に一体化させることも可能である。
【0030】
ガラス部分に埋め込まれた着色フィルムを静電センサーの要素として利用することもできる。第1実施態様においては、このフィルムを透明あるいは半透明な導電膜で形成させることができ、車体接地部に接続させて接地平面体を形成させ、ルーフサポート部あるいはサンバイザーセンサーのセンサー有効フィールドをガラス表面の雨滴や雪片の影響から隔離させる。よって、ドライブ電極とレシーブ電極との間の静電容量の変化は車内の人物または他の導電物体の接近で引き起こされる静電カップリングの妨害によるものと考えることができる。オプションとして、センサードライブ電極とレシーブ電極とを車体ガラス内の導電膜上に形成し、別体の導電膜接地平面体をドライブ電極とレシーブ電極とに重ねることができる。この静電乗員センサーのバリエーションはガラスの内側に接近している乗員あるいは物体の近接度を検出する能力を備えている。
【0031】
本願発明はさらに車体ルーフの面積限定要因を克服するように車内ルーフに設置された拡大有効範囲を有するセンサーデザイン90を提供する。このレシーブ電極94は扇形であり、近接ドライブ電極92はレシーブ電極に静電カップリングする信号を提供する。扇形レシーブ電極のアレイの1形態は図13に図示されている。この実施例では、ドライブ電極はレシーブ電極アレイの周囲に配置されており、接地領域96がそれら電極を分離している。図示のごとくに電子装置98が各レシーブ電極に、電力線、接地線及び入力/出力線99で電気的に接続されている。
【0032】
図15(a)と図15(b)に示す電極114は絶縁導電線で形成することができる。好適には非常に細いものであり、車体のフロントガラス等の積層ガラス構造体112、116の内側面に形成された導電膜あるいは導電コーティング114上に直載される。そのような電極の1つはオシレータ信号120で作動され、別の1つは信号処理装置に接続される。この装置は、電極間に存在するように提供された静電カップリングを電圧信号に変換する。この電圧信号は処理されて、電極間の静電カップリングが人物のごとき高導電性物体によって部分的あるいは完全にブロックされているかどうかを判定する。このブロック現象は静電カップリングフィールドの一部を短絡することで発生する。静電フィールドのこのブロックは人体とガラス構造体との近接度に相関する。
【0033】
フロントガラスに近接してダッシュボードに設置された車のエアバッグシステムにおいて、本願発明のものはエアバッグ噴出口への乗員の近接度の検出に使用が可能である。この近接度の情報はエアバッグコントローラによって利用され、乗員がエアバッグ噴出口に非常に近い場合にはエアバッグを非作動とすることができる。この近接度情報をエアバッグの作動パラメータの調整に利用することができる。
【0034】
あるいは、ガラス埋設静電センサーからの複数の信号を、ダッシュボード、エアバッグ噴出口、ピラー、ルーフ、サンバイザー、あるいはシートに設置されたセンサーからの信号と組み合わせ、乗員のポジション、速度、あるいは加速度に関する追加的情報を提供することもできる。例えば、米国特許第5,602,734号と第5,691,693号は車のヘッドライナーに設置された3体の静電カップリングセンサーの出力を参照して乗員のヘッドポジションを三角法で処理する技術を開示している。この三角測定法は、ヘッドライナーとフロントガラスに配置されたセンサーからのデータを組み合わせて利用するように修正が可能である。少なくとも3体のセンサーからのデータが三角法での乗員の頭部に関する3座標点の取得に必要なことは理解されよう。オプションとして、米国特許願第08/621,465号は乗員頭部の2座標点の取得のためにルーフヘッドライナーの2つの静電センサーからのデータの使用を開示しており、本願発明に従った2つのセンサーを利用することができる。さらに、他のタイプのセンサーも組み合わせて利用できる。それらには、超音波センサー、能動的あるいは受動的赤外線センサー、重量センサー、レーダー並びに他の同様な近接度あるいは容積センサー装置が含まれる。
【0035】
本願発明は、エアバッグ噴出口、車体計器パネル、ルーフサポート体内装具、ルーフヘッドライナー等々のごとき成型または合成材料への電極埋設方法にも関する。1実施例においては、ワイヤーや他の導電材料で提供された電極が成型/合成材料の裏側に埋設される。これら電極は小型プリント回路ボードに搭載される集積回路あるいは他の電子装置と接続される。導電材料が埋設された電極を含んだ裏面に適用され、車体の接地部に接続される。これで電極は絶縁され、静電フィールドは成型/合成材料を介してのみ形成される。すなわち、静電フィールドは、乗員の近接度を検出する目的で車内に向かって広がる。導電材料132は液体またはスプレー形態で提供され、成型/合成部剤138の裏側にプリントされる。あるいは、図16に示すごときの適用方法が採用される。または、電極134は成型部材の中央、あるいは近接して、またはその前面に埋設され、電極端子、回路ボード及び接地平面体は前述のごとき個所に残るように配置されるか、電極の位置に従って適当に移動される。
【0036】
本願発明は、電極が成型あるいは合成材料142の前面に隣接して提供されるようにその材料内に電極を提供することも含んでいる。この実施例では、低DC電圧148が1電極156に適用され、覆う湿気の存在下で、その湿気は第2電極156へと電流を流すための導電通路144を提供する。この電流は湿気を蒸発させる熱を提供し、導電通路の導電性を低下させて電流量を減少させ、やがて湿気が充分に蒸発すると電流を完全に遮断させる。これら電極は静電センサー146の形成にも採用され、成型あるいは合成材料に近接した乗員の近接度を検出させる。これら電極間を静電カップリングさせるため、ACオシレータ信号150が1電極に接続され、信号処理回路154は第2電極に取り付けられる。導電材料は電極の直後で成型/合成材料と一体化されるか、または成型/合成材料の裏側に接着される。この導電材料は車体接地部に接続され152、図17に示すように接地バック平面体を形成する。あるいは、成型/合成材料142の表面は、充分な湿度となると導電性となる湿気感応材料で構成されたり、あるいはそのような材料を含むこともできる。そのような材料の例としての安定塩付加剤(stabilized salt-additive)は湿気の存在下で導電性を追加する。
【0037】
本願発明は絶縁ワイヤー状あるいは扇形である他の導電材料で形成される電極群であってもよい。好適には、各扇形電極162は車のエアバッグ噴出口のごとき多角形の角部に隣接して提供される。第2電極は、その第2電極とそれぞれの扇形電極との間に共通の距離が提供されるように扇形電極のそれぞれの内部に形成される。それら扇形電極と内部電極とのセットはプリント回路ボード上のごとくに集積回路または他の電子装置に接続される。導電材料をその方形領域あるいはエアバッグ噴出口に提供して車体の接地部と接続させ、図18に示すごとくに接地平面体を電極の背後に形成させることもできる。
【0038】
米国特許第5,691,693号は車のヘッドライナーに設置されてヘッドポジションを検出する静電乗員センサーシステムを開示している。このシステムは、例えば、運転手の居眠り等の危険な状態を経時的に検出してその変化を比較するプロセッサーを利用している。このシステムの処理回路は好適には複数の利得ステージ(gain stage)を採用しており、背の高いドライバーと背の低いドライバーのヘッドポジションを同等の精度で判定することができる。本願発明においては、この複数の利得ンステップはそれぞれ異なる利得要素を採用している複数の同期検出処理ステージ(multiple synchronous detection processing stages)によって実行される。本願発明のこの複数ステージは静電センサーのための最良解析度を提供するのに使用される。2つの同期検出処理ステージの出力は図19に図示されている。あるいは、これら複数の利得ステージをログアンプ(logarithmic amplifier)で提供することができる。
【0039】
図20から図23に図示されている追加静電センサー200はガラスに埋設されており、誘電材料(フロントガラス202等)内に提供されたワイヤー204と206で構成されている。このセンサーはガラスまたは同様な透明あるいは半透明の材料の表面に形成された導電材料214上に提供されている。
【0040】
1実施例においては、1本のワイヤーはオシレータ装置等のドライブ手段に取り付けられ、別のワイヤーはチャージ感応アンプ(charge sensitive amplifier)のごときレシーブ手段に取り付けられている。導電材料はシステムの接地部に取り付けられている。静電カップリングがドライブワイヤーとレシーブワイヤーの間に形成され、人体のごとき導電物体の接近に反応して変化する。別実施例においては、図20に示すように、このドライブワイヤー204はフロントガラス202を提供するガラス表面の一部に水平に埋設されており、レシーブワイヤー206はドライブワイヤーを囲むように長形U形状に埋設されている。第2セット212の同様なワイヤーを図21に示すように第1セット216のワイヤーと平行に埋設することができる。この実施例では、システムの接地部への導電膜214の単接続で両セットのワイヤーには充分である。
【0041】
車の乗員センサーシステムにおいては、それぞれのセット212、216のワイヤーに対する乗員の接近による静電カップリングの変動は論理的に結合され、乗員の前後及び上下のポジションが決定される。これらポジションは経時的に測定され、乗員の接近角度が提供される。この接近角度は例えば水平等の基準軸に対する角度として記述される。図22参照。センサー有効ゾーンに進入する乗員頭部226と手あるいは腕224との識別は基準軸に対する接近角度の変化によって決定できる。基準軸より上方からの接近角度のものは乗員頭部と解釈され、基準軸より下方からの接近角度は乗員の腕や手のセンサー有効ゾーンへの進入であると解釈される。さらに、あるいはオプションとして、その識別は乗員がセンサー有効フィールドに進入するポジションと時間との関係を計算することでも達成される。エアバッグの規制を必要とするクラッシュ条件は、乗員の頭部または手の随意な動きよりも単位時間当たりのポジション変動が大きいと考えられる。さらに、あるいはオプションとして、乗員の頭部と手との識別は、所定時間にどのセンサー有効フィールドの組み合わせに乗員が進入しているかが決定できるよう、電圧しきい値に対する論理的操作を利用して行うことができる。その進入領域がフロントガラスの上方に近いことを示すような組み合わせであれば乗員の頭部として理解され、フロントガラスの下方に近いことを示すものであれば乗員の手か膝であると理解できる。この手法は米国特許願第08/621,465号の図22に図示される論理と類似している。
【0042】
このような識別データは乗員エアバッグシステムのごとき車の安全システムによって利用が可能であり、エアバッグ222のための適当な作動条件の決定に利用することができる。もしこの識別データが、乗員の頭部がエアバッグに隣接した領域に進入しており、エアバッグの作動通路に入っていることを示しているなら、エアバッグ論理コントローラは低パワー作動あるいは非作動を選択し、エアバッグによる障害を低減させることができる。もし識別データが乗員の腕がエアバッグに隣接した領域に進入していることを示すなら、コントローラは通常作動を選択することができる。この静電センサー装置またはシステムからの出力を、静電センサー、超音波センサー、赤外線センサー、重量センサー、シートポジションセンサー、チャイルドシート検出手段、レーダ等々の多彩な他のセンサー装置の出力と組み合わせ、乗員のあらゆる状態に対応した安全システムを最良状態で提供することができる。
【0043】
図20から図22にかけて示される静電センサーの利用形態は、小型電子回路236をガラス238の縁部のワイヤー234の出口に近いガラス238の内側表面に直載することで達成される。図23(a)と図23(b)はさらに誘電材料232、電子接続部240、導電フィルム242、及び外側ガラス層244を示している。その回路を湿気、凝結及び他の物体の付着から保護するため、回路をエポキシ樹脂やプラスチック材料のごとき材料で被覆することができる。この回路の電子絶縁は回路の上部及び側部をシステム接地部に電気的に接続した導電材料で包囲することにより達成できる。このような実施例は次のような多くの等価的形態で提供することができる。ワイヤーを、静電フィールドを創出し、あるいは、静電フィールドの変化を検出する異なるタイプの電子装置と接続させたり、ワイヤーを平坦、丸形あるいは他の形状の導電材料で形成したり、導電材料を金属製あるいは非金属製としたり、システム接地部に取り付ける導電材料をガラスまたは透明/半透明表面に物理的に接着させたり、あるいはガラスに接着された柔軟な膜体に取り付けたり、ワイヤーの配向性を適当に選択させたり、1セットのワイヤーを別セットのワイヤーとはオフセットの状態に提供したり、複数の接近角度、ポジションと時間しきい値の関係、あるいは電圧/ゾーンポジションを利用して識別性能の精度を上げたり、3セット以上のワイヤーを利用し、3軸での乗員ポジションの決定に三角法を採用したり、電子回路をガラスの縁部から離して設置したり、好適にはワイヤーをガラス縁部の出口で遮蔽処理したりすることができる。
【0044】
以上、本願発明はこれら好適実施例に関して詳細に説明されているが、他の実施例でも同様な結果を達成させるであろう。本願発明の改良や変更は当業者には自明であり、それらは本願の請求項によってカバーされている。前出の全ての引用及び紹介文献の内容を本願に援用する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は図2に示す本願発明のセンサーのレスポンス曲線を表すグラフである。
【図2】 図2は本願発明の1例による電極間に高く提供された接地ギャップ(grounded gap)を示す側面図である。
【図3】 図3は本願発明の凸状近接電極静電センサー(convex adjacent electrode capacitive sensor)の略図である。
【図4】 図4は計器パネル上に設置された状態の静電センサーアレイの略図である。
【図5】 図5はエアバッグ噴出口周囲に提供された本願発明の複数のL型電極を図示している。
【図6】 図6は製造工程の効率を高めるための静電センサーの設置形態を図示している。
【図7】 図7は本願発明の利用特定集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit))の雛菊連鎖形態(daisy-chaining)を図示している。
【図8】 図8は図5図示するごときのセンサーセットにおけるセンサー値と、それを利用する好適エアバッグの反応との関係を示す表である。
【図9】 図9(a)はルーフサポート内に設置された静電センサーを図示している。 図9(b)は図9(a)に示すルーフサポート内静電センサーの断面図である。
【図10】 図10は収納状態のサンバイザー内に設置された静電センサーを図示している。
【図11】 図11(a)はサンバイザーが垂直に引き下げられたときの図10に示す形態の静電センサーを図示している。図11(b)はサンバイザーが前方に斜めに押し出されたときの図10に示す形態の静電センサーを図示している。
【図12】 図12は図10に示す静電センサー形態の平面図である。
【図13】 図13は扇形レシーブ電極静電センサーアレイを図示している。
【図14】 図14はハンドル内に設置された複数のドライブ電極とレシーブ電極とを図示している。
【図15】 図15(a)と図15(b)は層状ガラス内に設置されたワイヤー電極を図示している(断面図と正面図)。
【図16】 図16は内装具内に埋設された状態の電極を図示している。
【図17】 図17は湿気発生器と静電センサーとを図示している。
【図18】 図18はエアバッグ噴出口に使用する本願発明の電極デザインを図示している。
【図19】 図19は複数の信号処理チャンネルからの出力を示すグラフである。
【図20】 図20はフロントガラス内に提供された静電センサーの別実施例を図示している。
【図21】 図21は接地導電フィルムに共に接続された状態の図20の2体のセンサーを図示している。
【図22】 図22は乗員の頭部と手とを区別するために接近角度を利用する形態を図示している。
【図23】 図23(a)と図23(b)は図20から図22に示すフロントガラスへのセンサー電極の設置状態を図示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員センサーシステムであって、エアバッグ噴出口に隣接して提供され、それぞれ乗員の近接度に対応した信号を提供する複数の電極と、その信号を比較する比較手段とを含んでおり、それら電極はオプションで前記エアバッグ噴出口の周囲に埋設されていることを特徴とする乗員センサーシステム。
【請求項2】
その比較手段は所定のしきい値を越える値の信号の割合を決定する手段を含んでおり、オプションで、加速度、速度、二次元ポジション、三次元ポジション及びそれらの組み合わせで成る群から選択される乗員状態の特徴を決定する手段を含んでいることを特徴とする請求項1記載の乗員センサーシステム。
【請求項3】
センサーであって、誘電基材上に形成された複数の電極を含んでおり、それら電極はそれぞれの電極間をブロックするように提供された接地領域によって分離されており、オプションで、該誘電基材は電極に対して凸形状に提供されていることを特徴とするセンサー。
【請求項4】
静電センサーであって、一面に導電コーティングを備えている誘電材料に取り付けられた導電材料を含んだ複数の電極を含んでおり、オプションで、それら電極の1個または複数個は前記導電コーティングの1層上に形成されており、その導電コーティングの第2層は接地されており、それら両層は相互に絶縁されており、オプションで、本静電センサーはエアバッグシステムの作動パラメータの修正に利用される信号を提供し、オプションで、本静電センサーは前記誘電材料に対する人物の近接度の決定に利用される信号を提供し、オプションで、その誘電材料はガラスであり、オプションでその誘電材料はサンバイザーであることを特徴とする静電センサー。
【請求項5】
集積回路であって、複数の静電センサー用のサポート電子装置と、第2集積回路に対してオシレータ出力を提供する手段とを含んでいることを特徴とする集積回路。
【請求項6】
静電センサーであって、車の内装体内で接地導電材料に隣接して埋設されている電極を含んでおり、オプションで、その材料は導電性であることを特徴とする静電センサー。
【請求項7】
DC電圧を1電極に印加し、第2電極への導電通路を形成させる手段をさらに含んでおり、該導電通路は湿気を含んでいることを特徴とする請求項6記載の静電センサー。
【請求項8】
静電センサーであって、ドライブ電極とレシーブ電極とを含んでおり、それら電極は車の窓と一体的に形成されていることを特徴とする静電センサー。
【請求項9】
一方の電極は他方の電極を包囲するようにU形状に形成されていることを特徴とする請求項8記載の静電センサー。
【請求項10】
複数ペアのドライブ電極とレシーブ電極を含んでいることを特徴とする請求項8記載の静電センサー。
【請求項1】
乗員センサーシステムであって、エアバッグ噴出口に隣接して提供され、それぞれ乗員の近接度に対応した信号を提供する複数の電極と、その信号を比較する比較手段とを含んでおり、それら電極はオプションで前記エアバッグ噴出口の周囲に埋設されていることを特徴とする乗員センサーシステム。
【請求項2】
その比較手段は所定のしきい値を越える値の信号の割合を決定する手段を含んでおり、オプションで、加速度、速度、二次元ポジション、三次元ポジション及びそれらの組み合わせで成る群から選択される乗員状態の特徴を決定する手段を含んでいることを特徴とする請求項1記載の乗員センサーシステム。
【請求項3】
センサーであって、誘電基材上に形成された複数の電極を含んでおり、それら電極はそれぞれの電極間をブロックするように提供された接地領域によって分離されており、オプションで、該誘電基材は電極に対して凸形状に提供されていることを特徴とするセンサー。
【請求項4】
静電センサーであって、一面に導電コーティングを備えている誘電材料に取り付けられた導電材料を含んだ複数の電極を含んでおり、オプションで、それら電極の1個または複数個は前記導電コーティングの1層上に形成されており、その導電コーティングの第2層は接地されており、それら両層は相互に絶縁されており、オプションで、本静電センサーはエアバッグシステムの作動パラメータの修正に利用される信号を提供し、オプションで、本静電センサーは前記誘電材料に対する人物の近接度の決定に利用される信号を提供し、オプションで、その誘電材料はガラスであり、オプションでその誘電材料はサンバイザーであることを特徴とする静電センサー。
【請求項5】
集積回路であって、複数の静電センサー用のサポート電子装置と、第2集積回路に対してオシレータ出力を提供する手段とを含んでいることを特徴とする集積回路。
【請求項6】
静電センサーであって、車の内装体内で接地導電材料に隣接して埋設されている電極を含んでおり、オプションで、その材料は導電性であることを特徴とする静電センサー。
【請求項7】
DC電圧を1電極に印加し、第2電極への導電通路を形成させる手段をさらに含んでおり、該導電通路は湿気を含んでいることを特徴とする請求項6記載の静電センサー。
【請求項8】
静電センサーであって、ドライブ電極とレシーブ電極とを含んでおり、それら電極は車の窓と一体的に形成されていることを特徴とする静電センサー。
【請求項9】
一方の電極は他方の電極を包囲するようにU形状に形成されていることを特徴とする請求項8記載の静電センサー。
【請求項10】
複数ペアのドライブ電極とレシーブ電極を含んでいることを特徴とする請求項8記載の静電センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2006−523560(P2006−523560A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−504025(P2000−504025)
【出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【国際出願番号】PCT/US1998/015505
【国際公開番号】WO1999/005008
【国際公開日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(500033748)アドバンスト セイフティ コンセプツ, インク. (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【国際出願番号】PCT/US1998/015505
【国際公開番号】WO1999/005008
【国際公開日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(500033748)アドバンスト セイフティ コンセプツ, インク. (2)
【Fターム(参考)】
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