説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】微小角分岐点におけるミスマッチングを早期に解消し、自車位置精度を向上させることができる「車載用ナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】マップマッチング処理手段19が、微小角分岐点検出手段20によって検出された微小角分岐点を、自車両が、複数本のマッチング候補道路における第1候補上にマッチングされた状態として通過した後に、自車両による微小角分岐点の通過後に電波航法位置検出手段17によって検出される自車位置とマッチング候補道路との距離の推移に基づいて、現在の第1候補上から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補以外の道路上へとマッチングを修正することが可能に形成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置に係り、特に、自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置にマッチングさせるのに好適な車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両を出発地から目的地まで推奨経路に沿ってルート案内する車載用ナビゲーション装置においては、自車両が現在走行している道路を正確に追尾するために、自車位置が地図データにおける該当する道路上を外れないように地図上の自車位置を補正するマップマッチング処理を行っていた。
【0003】
このようなマップマッチング処理においては、現在地に近い地図データベース上の道路データから複数の候補(マッチング候補道路)を挙げ、それらを比較して最も適切な道路(第1候補)上に自車位置をマッチング(補正)させるようになっていた。
【0004】
このようなマップマッチング処理の具体的な方法としては、これまでにも、例えば、図8に示すような投影法が知られていた。
【0005】
すなわち、図8においては、ジャイロセンサや車速センサ(車速パルス)等の自律航法センサを用いた自律航法によって検出された前回の自車位置が点Pi−1(Xi−1,Yi−1)とされ、自律航法によって検出された前回の自車方位がθi−1とされている。
【0006】
ここで、自車両が点Pi−1から一定距離L走行した場合における前回の自車方位θi−1からの相対方位(方位の変化分)がΔθであるとするならば、自律航法によって検出される今回の自車位置を示す点P’(X’,Y’)と、今回の自車方位θとは、それぞれ次式により求められる。
【0007】
θ=θi−1+Δθ
’=Xi−1+L・cosθ
’=Yi−1+L・sinθ
【0008】
このようにして、今回の自車位置P’(Xi’,Yi’)および自車方位θが求められた上で、投影法においては、マッチング候補道路として、点P’から垂線を降ろすことができるリンクであって、今回の自車方位θとのなす角度が所定の角度以下かつ点P’から降ろした垂線の長さが所定の距離以下となっているリンクを挙げる。
【0009】
図8においては、道路RD上の方位θa1とされたリンクLKa1(すなわち、ノードNa0とノードNa1とを両端としたリンク)と、道路RD上の方位θb1とされたリンクLKb1(すなわち、ノードNb0とノードNb1とを両端としたリンク)との2本のリンクがマッチング候補道路となる。
【0010】
次いで、点P’から2本のリンクLKa1、LKb1の双方にそれぞれ降ろした垂線RLia、RLibの長さを求め、長さが短い方のリンクをマップマッチングの第1候補とし、長い方のリンクを第2候補とする。図8においては、リンクLKa1が第1候補となる。
【0011】
このようにして第1候補が選出された後に、前回の自車位置Pi−1と今回の自車位置P’とを結ぶ走行軌跡SHを、その点Pi−1が第1候補LKa1上(または第1候補LKa1の延長線上)に位置されるまで垂線RLia方向に平行移動し、この平行移動による点Pi−1、点P’の移動点PTi−1、PT’を求める。
【0012】
最後に、点PTi−1を中心にして、点PTi’がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に位置されるまで回転移動して移動点を求め、この移動点を、補正された自車位置P(X,Y)とする。このようにして、自車位置が第1候補上にマッチングされることになる。なお、自車位置Pにおける自車方位はθのままとされている。
【0013】
なお、マップマッチング処理においては、自律航法によって検出された自車位置(以下、自律航法位置と称する)に加えて、GPS衛星から発信される情報を用いた電波航法によって検出された自車位置(以下、電波航法位置と称する)を考慮し、例えば、投影法によってマッチングされた地図上の自車位置が、電波航法位置から明らかに遠い場合には、マッチングを修正することも行われていた。
【0014】
【特許文献1】特開平5−60566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような投影法を用いたマップマッチング処理では、道路幅等の影響により、実際の道路と、ディジタイズされた地図データベース上の道路との差が大きくなる地点においてミスマッチングが生じることが少なくなく、特に、複数本のマッチング候補道路同士が微小角度で分岐する微小角分岐点においては顕著であった。
【0016】
図9(a)〜(e)は、このことを説明するための説明図である。なお、図9(a)は、ディジタイズされた地図データベース上の道路を示すものであり、この道路は、微小角分岐点BKと、この微小角分岐点BKの手前から分岐後にかけて直線状に延びるリンクLKと、このリンクLKの途中から微小角分岐点BKを介して分岐されたリンクLKとからなる。また、図9(b)は、図9(a)に示した地図データベース上の道路と、これに対応する実際の道路とを等倍にして重ね合わせたものである。さらに、図9(c)は、図9(b)に示した図に、さらに、自車両の実際の走行場所(破線で示される軌跡)を重ねたものである。
【0017】
この図9(c)からも分かるように、地図データベース上の道路では、実際の微小角分岐点BKよりも遅れた位置に微小角分岐点BKがとられている。これは、現行のディジタイズルール上では、最後に分岐可能な場所に分岐道路を定義するように決められていることによるものである。
【0018】
図9(d)は、所定の更新周期(例えば5秒)ごとに更新される電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(9)の推移を示したものである。なお、便宜上、図9(d)における電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(9)の精度は、実際の走行場所に対してずれのない高精度なものとなっている。
【0019】
そして、従来のマップマッチング処理によれば、自車両が図9(d)に示したような走行場所を走行する場合におけるマップマッチング処理の結果は、図9(e)に示すようになる。
【0020】
すなわち、図9(e)に示すように、たとえ、自車両が実際の道路における微小角分岐点BKにおいて、リンクLKに対応する道路へと進路を変更した場合であっても、地図データベース上においては、その地点が微小角分岐点BKの手前であり、リンクLKよりも有力なマッチング候補道路は存在しないと判断されるため、自律航法位置P(1)、P(2)、P(3)が、それぞれリンクLK上への自車位置PMM(1)、PMM(2)、PMM(3)へとマッチングされてしまうことになる。
【0021】
また、自車両が地図データベース上の微小角分岐点BKを通過した直後においても、このときの自車両の走行状態は、リンクLKに対しては平行な直線状態(角度が0)である一方、リンクLKに対しては所定の角度を有しているため、投影法の条件に当てはめれば、図9(e)中の符号PMM(6)、PMM(7)に示すように、そのままリンクLKへのマッチングが継続されてしまうことになる。
【0022】
さらに、微小角分岐点BKを通過後、リンクLKに対応する道路とリンクLKに対応する道路とが平行になった後においても、この時点でリンクLK上にマッチングされている自車位置PMM(8)と電波航法位置PGPS(8)との距離が未だに近いため、マッチングの修正には至らない。
【0023】
このように、従来のマップマッチング処理では、微小角分岐点におけるミスマッチングを早期に解消することができないといった問題が生じていた。
【0024】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、微小角分岐点におけるミスマッチングを早期に解消することができ、ひいては、自車位置精度を向上させることができる車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述した目的を達成するため、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、電波航法によって自車位置を逐次検出する電波航法位置検出手段と、自律航法によって自車位置を逐次検出する自律航法位置検出手段と、自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置にマッチングさせる処理を行うマップマッチング処理手段と、このマップマッチング処理手段によるマッチングの候補となる複数本のマッチング候補道路同士が所定の角度以下の微小角度を有した状態として分岐するような分岐点である微小角分岐点を地図データを用いて検出する微小角分岐点検出手段とを備え、前記マップマッチング処理手段が、前記微小角分岐点検出手段によって検出された前記微小角分岐点を、自車両が、前記マップマッチング処理手段によって自車位置が前記複数本のマッチング候補道路における第1候補上にマッチングされた状態として通過した後に、前記自車両による前記微小角分岐点の通過後に前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記マッチング候補道路との距離の推移に基づいて、前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補上から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補以外の道路上へとマッチングを修正することが可能に形成されていることを特徴としている。
【0026】
そして、このような構成によれば、自車両が微小角分岐点を通過した後における電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移に基づいてマッチングを修正することが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る他の車載用ナビゲーション装置は、前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の誤差を算出する電波航法位置誤差算出手段を備え、前記マップマッチング処理手段が、次の(A)〜(C)の各条件、(A)前記電波航法位置誤差算出手段によって算出される誤差が閾値以下であること、(B)前記微小角分岐点を自車両が通過した後に前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離が所定の距離以下で安定する状態が、現在の自車位置から遡って所定の走行距離以上継続していること、(C)前記現在の第1候補と前記現在の第2候補との距離が所定の距離以上かつ前記現在の第1候補が前記現在の第2候補よりも前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置との距離が大きいこと、がすべて満足されるようになった場合に、前記現在の第1候補上から前記現在の第2候補上へとマッチングを修正するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【0028】
そして、このような構成によれば、(A)〜(C)の各条件を満足する場合に、現在の第1候補上から現在の第2候補上へとマッチングを修正することが可能となる。
【0029】
さらに、本発明に係る他の車載用ナビゲーション装置は、前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の誤差を算出する電波航法位置誤差算出手段を備え、前記マップマッチング処理手段が、次の(D)〜(G)の各条件、(D)前記電波航法位置誤差算出手段によって算出される誤差が閾値よりも大きいこと、(E)前記微小角分岐点を自車両が通過した後に前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離が所定の距離以下で安定する状態が、現在の自車位置から遡って所定の走行距離以上継続していること、(F)前記現在の第1候補が前記現在の第2候補よりも前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置との距離が大きいこと、(G)前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の軌跡に対して前記現在の第1候補のなす角度が所定の角度以上であること、がすべて満足されるようになった場合に、前記現在の第1候補上から前記現在の第2候補上へとマッチングを修正するように形成されていることを特徴としている。
【0030】
そして、このような構成によれば、(D)〜(G)の各条件を満足する場合に、現在の第1候補上から現在の第2候補上へとマッチングを修正することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、微小角分岐点において自車位置が不適切な第1候補上にマッチング(ミスマッチング)された場合であっても、微小角分岐点以後における電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移に基づいてマッチングを修正することができるので、微小角分岐点におけるミスマッチングを早期に解消することができ、ひいては、自車位置精度を向上させることができる。
【0032】
また、本発明に係る他の車載用ナビゲーション装置によれば、電波航法位置の誤差が小さい場合におけるマッチングの修正を簡便かつ確実に行うことができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る他の車載用ナビゲーション装置によれば、電波航法位置の誤差が大きい場合におけるマッチングの補正を簡便かつ確実に行うことができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1は、大別して、ナビゲーションメインユニット2と、このナビゲーションメインユニット2にそれぞれ接続されたディスク読取装置3、入力操作部5、GPSレシーバ7、自律航法センサ8、ディスプレイ9およびスピーカ10によって構成されている。
【0036】
ナビゲーションメインユニット2は、自車両を現在地から目的地まで推奨ルートに沿って案内するナビゲーションのための種々の制御および処理を行うようになっている。
【0037】
また、ユーザは、入力操作部5を用いることにより、ナビゲーションメインユニット2に対して、ナビゲーションの目的地の設定や推奨ルートの計算条件の入力等の種々の入力操作を行うことが可能とされている。この入力操作部5は、リモコンや、ディスプレイ9のタッチパネルまたはリニアエンコーダ等であってもよい。
【0038】
GPSレシーバ7は、GPS衛星11から軌道および時刻に関する情報(以下、GPS情報と称する)を所定の更新周期(例えば、5秒)ごとに受信し、受信されたGPS情報をナビゲーションメインユニット2に逐次出力するようになっている。
【0039】
自律航法センサ8は、ジャイロセンサおよび車速センサ(車速パルス)等によって構成されており、この自律航法センサ8は、自車方位や移動距離を検出し、検出結果をナビゲーションメインユニット2に出力するようになっている。
【0040】
ディスク読取装置3には、ディスク12が搭載されており、このディスク12には、ナビゲーションに用いる種々のデータが記憶されている。具体的には、ディスク12には、地図データが記憶されており、この地図データは、道路データおよび背景データ等によって構成されている。なお、道路データは、例えば、形状補間点、セグメント、リンク、ノード、リンク列、道路名称、通行条件(車種規制や通行時間帯規制等)および交通看板等のエンティティ(基本データ要素)によって構成されている。また、ディスク12には、目的地までの推奨経路を計算する経路計算データとしての道路ネットワークデータが記憶されており、この道路ネットワークデータは、例えば、ノード、リンクおよび通行条件等のエンティティによって構成されている。さらに、ディスク12には、目的地やサービスを検索するための検索データが記憶されている。なお、ディスク12は、例えば、DVDであってもよいし、または、ハードディスクであってもよい。
【0041】
次に、ナビゲーションメインユニット2について詳述すると、このナビゲーションメインユニット2は、自車位置(自車両の現在位置)を計算する自車位置計算部14を有している。
【0042】
自車位置計算部14とディスク読取装置3との間には、地図読出制御部15が接続されており、地図読出制御部15は、自車位置計算部14からの要求にしたがって、自車位置の計算に必要な地図データの読み出し要求をディスク読取装置3に出力するようになっている。この読み出し要求によって、ディスク読取装置3は、ディスク12から必要な地図データを読み出してナビゲーションメインユニット2におけるディスク読取装置3の出力側に接続された地図バッファ16に格納するようになっている。そして、自車位置計算部14は、地図バッファ16に格納された地図データを取得して自車位置の計算に用いるようになっている。
【0043】
ここで、図2に示すように、自車位置計算部14は、電波航法位置検出手段としての電波航法位置検出部17を有しており、この電波航法位置検出部17には、GPSレシーバ7から出力されたGPS情報が入力されるようになっている。そして、電波航法位置検出部17は、入力されたGPS情報から、絶対座標としての自車位置である電波航法位置をGPS情報の更新周期ごとに逐次検出するようになっている(電波航法)。
【0044】
また、自車位置計算部14は、自律航法位置検出手段としての自律航法位置・方位検出部18を有しており、この自律航法位置・方位検出部18には、自律航法センサ8の検出結果が入力されるようになっている。そして、自律航法位置・方位検出部18は、入力された検出結果から、前回の自車位置からの変化分である相対位置として、自律位置(自律航法位置)を逐次検出するとともに、前回の自車方位からの変化分として自車方位を逐次検出するようになっている(自律航法)。なお、自律航法の具体的な手法は従来と同様である。
【0045】
さらに、自車位置計算部14は、マップマッチング処理手段としてのマップマッチング処理部19を有しており、このマップマッチング処理部19には、電波航法位置検出部17によって検出された電波航法位置の情報と、自律航法位置検出部18によって検出された自律航法位置の情報とがそれぞれ入力されるようになっている。
【0046】
このマップマッチング処理部19は、地図読出制御部15を介してディスク読取装置3にディスク12から自律航法位置の周辺の地図データを読み出させ、この読み出させた地図データを、地図バッファ16を介して取得するようになっている。そして、マップマッチング処理部19は、自律航法位置および自車方位を用いた投影法によって、取得された地図データの中からマッチングの候補となるマッチング候補道路(リンク)を挙げ、最適なマッチング候補道路を第1候補と決定し、決定された第1候補上に自車位置をマッチング(補正)させるマップマッチング処理を行うようになっている。
【0047】
ただし、本実施形態におけるマップマッチング処理部19は、自車両が微小角分岐点を通過した以後の所定の走行距離内においては、従来の投影法を用いたマップマッチング処理とは異なる本発明に特有のマップマッチング処理を行うように構成されている。
【0048】
すなわち、自車位置計算部14は、複数本のマッチング候補道路同士が所定の角度以下の微小角度を有した状態として分岐するような分岐点である微小角分岐点を検出する微小角分岐点検出手段としての微小角分岐点検出部20を有しており、この微小角分岐点検出部20には、マップマッチング処理部19が接続されている。この微小角分岐点検出部20は、自車位置の周辺の地図データを取得し、取得された地図データを用いて、自車両が進行している道路上(進行方向前方)に存在する微小角分岐点を検出するようになっている。
【0049】
マップマッチング処理部19は、微小角分岐点検出部20によって検出された微小角分岐点を、自車両が、マップマッチング処理部19によって自車位置が複数本のマッチング候補道路における第1候補上にマッチングされた状態として通過した後においても、前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補上から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補以外の道路上へとマッチングを修正することが可能とされている。
【0050】
このマップマッチング処理部19によるマッチングの修正は、自車両による地図データ上の微小角分岐点の通過後に電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置と、前記複数本のマッチング候補道路における少なくとも1つとの距離の推移に基づいて行われるようになっている。
【0051】
このようなマッチングの修正を行うためのより具体的な構成として、自車位置計算部14は、電波航法位置誤差算出手段としての電波航法位置誤差算出部22を有しており、この電波航法位置誤差算出部22には、電波航法位置検出部17、自律航法位置検出部18およびマップマッチング処理部19がそれぞれ接続されている。
【0052】
電波航法位置誤差算出部22は、電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置の誤差を算出するようになっている。この誤差は、例えば、特開2003−279362号公報に開示されているように、自律航法により得られるある区間の走行距離(自律航法走行距離)と、GPSにより得られる当該区間に相当する区間の距離(GPS測位点間距離)とを比較し、自律航法走行距離とGPS測位点間距離との差に応じた値として算出するようにしてもよい。
【0053】
そして、マップマッチング処理部19は、自車両による地図データ上の微小角分岐点の通過後の電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移と、電波航法位置誤差算出部22によって算出された電波航法位置の誤差とを考慮して、以下に示す第1および第2のマッチング修正動作を行うようになっている。
【0054】
<第1のマッチング修正動作>
マップマッチング処理部19は、第1のマッチング修正動作として、自車両が微小角分岐点を通過した後に、次の(A)〜(C)の各条件がすべて満足されるようになった場合に、微小角分岐点から分岐される複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補上から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補上へとマッチングを修正する。
【0055】
(A)電波航法位置誤差算出部22によって算出される誤差が閾値以下であること。
【0056】
(B)前記推移に関する条件として、地図データ上の微小角分岐点を自車両が通過した後に電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離(最短距離)が所定の距離(以下、第2候補閾値離間距離と称する)以下で安定する状態が、現在の自律航法位置から遡って所定の走行距離(以下、閾値走行距離と称する)以上継続していること。
【0057】
(C)前記推移に関する条件として、前記現在の第1候補と前記現在の第2候補との距離(最短距離)が所定の距離(以下、候補間閾値離間距離と称する)以上かつ前記現在の第1候補が前記現在の第2候補よりも現在の電波航法位置との距離が大きいこと。
【0058】
なお、本実施形態において、条件(B)における安定とは、電波航法位置と現在の第2候補との距離の変動幅(ばらつき幅)が閾値変動幅以下であることを意味している。
【0059】
この第1のマッチング修正動作を行う具体例としては、図3(a)〜(c)に示すように、2本のマッチング候補道路LK、LKが微小角分岐点BK以後に並走する場合の例と、図4(a)〜(c)に示すように、2本のマッチング候補道路LK、LKが微小角分岐点BK以後に離間する場合の例とが挙げられる。以下、2つの具体例におけるマッチング修正動作を順次説明する。
【0060】
(第1のマッチング修正動作の具体例1)
具体例1においては、条件(B)における第2候補閾値離間距離が15m、閾値走行距離が30m、閾値変動幅が3m、また、条件(C)における候補間閾値離間距離が10mとされている。
【0061】
そして、この具体例1においては、図3(a)に示すように、自車両が、微小角分岐点BKと、この微小角分岐点BKの手前から分岐後にかけて直線状に延びる本線道路に対応するリンクLKと、このリンクLKの途中から微小角分岐点BKを介して分岐された分岐道路に対応するリンクLKとからなる地図データベース上の道路に対応する実際の道路上を、図3(a)において破線で示す実際の走行場所に沿って走行する。なお、リンクLKは、リンクLKからの分岐後に屈折してリンクLKに平行となる。
【0062】
図3(a)に示すように、自車両は、実際の道路形状に沿って、地図データ上の微小角分岐点BKよりも手前の実際の微小角分岐点BKからリンクLKに対応する分岐道路に進路変更している。
【0063】
具体例1においては、電波航法位置誤差算出部22によって算出される電波航法位置の誤差が閾値以下であり、条件(A)が満足されているので、電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(11)が、実際の走行場所に重なるようにしてGPSの更新周期毎に推移している。
【0064】
ここで、図3(b)は、自車両による地図データ上の微小角分岐点BKの通過時および通過後における自車位置のマッチング状態を示しており、また、図3(c)のグラフは、電波航法位置に対するリンクLKの推移および電波航法位置に対するリンクLKの推移を示している。なお、図3(c)のグラフにおける横軸に付された番号(ただし、1〜4番は省略)は、GPSの更新ポイントの番号であり、この図3(c)の横軸は、更新ポイントの各番号と同じ括弧付きの番号が付された電波航法位置PGPS(5)〜PGPS(11)の推移(軌跡)とみなすことができる。なお、図3(c)における更新ポイントの番号は一例に過ぎず、各番号が一連のものであれば、図3(c)に示した番号以外の番号をとってもよいことは勿論である。また、図3(c)のグラフにおける縦軸は、電波航法位置と各マッチング候補道路LK、LKとの距離(最短距離)であり、この距離は、電波航法位置からマッチング候補道路LK、LKに降ろした垂線の長さを実世界上に換算することによって求められる距離(m)である。
【0065】
図3(b)および(c)に示すように、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(5)に対応する5番目の更新ポイントおよびそれ以前の1番目〜4番目の更新ポイントにおいては、投影法によって自車位置を第1候補であるリンクLK上にマッチングさせる。なお、図3(b)におけるPMM(5)は、5番目の更新ポイントにおけるリンクLK上にマッチングされている自車位置(後述する自車位置マークと同義)を示している。
【0066】
また、マップマッチング処理部19は、自車両が地図データ上の微小角分岐点BKを通過した直後の電波航法位置PGPS(6)に対応する6番目の更新ポイントにおいては、条件(B)および条件(C)が満足されていないので、現在の第1候補(リンクLK)上へのマッチングを継続させる。このとき、リンクLKは、第2候補となる。
【0067】
さらに、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(7)に対応する7番目の更新ポイントおよび電波航法位置PGPS(8)に対応する8番目の更新ポイントにおいては、条件(C)は満足されるようになったが、条件(B)を未だに満足していないので、現在の第1候補(リンクLK)へのマッチングを継続させる。
【0068】
そして、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(9)に対応する9番目の更新ポイントにおいては、条件(A)〜(C)のすべてが満足されるようになったので、現在の第1候補(リンクLK)上から現在の第2候補(リンクLK)上へとマッチングを修正する。
【0069】
そして、9番目の更新ポイント以後においては、リンクLKが第1候補となり、リンクLKが第2候補となる。
【0070】
(第1のマッチング修正動作の具体例2)
具体例2においても、条件(B)における第2候補閾値離間距離が15m、閾値走行距離が30m、閾値変動幅が3m、また、条件(C)における候補間閾値離間距離が10mとされている。
【0071】
そして、この具体例2においては、図4(a)に示すように、自車両が、微小角分岐点BKと、この微小角分岐点BKの手前から分岐後にかけて直線状に延びる本線道路に対応するリンクLKと、このリンクLKの途中から微小角分岐点BKを介して分岐された分岐道路に対応するリンクLKとからなる地図データベース上の道路に対応する実際の道路上を、図4(a)において破線で示す実際の走行場所に沿って走行する。なお、リンクLKは、リンクLKからの分岐後にリンクLKとの距離が次第に広がっている。
【0072】
図4(a)に示すように、自車両は、実際の道路形状に沿って、地図データ上の微小角分岐点BKよりも手前の実際の微小角分岐点BKからリンクLKに対応する分岐道路に進路変更している。
【0073】
具体例2においても、具体例1と同様に、電波航法位置誤差算出部22によって算出される電波航法位置の誤差が閾値以下であり、条件(A)が満足されているので、電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(10)が、実際の走行場所に重なるようにしてGPSの更新周期毎に推移している。
【0074】
ここで、図4(b)は、自車両による地図データ上の微小角分岐点BKの通過時および通過後における自車位置のマッチング状態を示しており、また、図4(c)のグラフは、電波航法位置に対するリンクLKの推移および電波航法位置に対するリンクLKの推移を示している。なお、図4(c)のグラフにおける横軸に付された番号(ただし、1〜3番は省略)は、GPSの更新ポイントの番号であり、この図4(c)の横軸は、更新ポイントの各番号と同じ括弧付きの番号が付された電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(10)の推移(軌跡)とみなすことができる。図3(c)と同様に、図4(c)における更新ポイントの番号は一例に過ぎず、各番号が一連のものであれば、図4(c)に示した番号以外の番号をとってもよいことは勿論である。また、図4(c)のグラフにおける縦軸は、電波航法位置と各マッチング候補道路LK、LKとの距離(最短距離)であり、この距離は、電波航法位置からマッチング候補道路LK、LKに降ろした垂線の長さを実世界上に換算することによって求められる距離(m)である。
【0075】
図4(b)および(c)に示すように、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(4)に対応する4番目の更新ポイントおよびそれ以前の1番目〜3番目の更新ポイントにおいては、投影法によって自車位置を第1候補であるリンクLK上にマッチングさせる。なお、図4(b)におけるPMM(4)は、4番目の更新ポイントにおけるリンクLK上にマッチングされている自車位置(後述する自車位置マークと同義)を示している。
【0076】
また、マップマッチング処理部19は、自車両が地図データ上の微小角分岐点BKを通過した直後の電波航法位置PGPS(5)に対応する5番目の更新ポイントにおいては、条件(B)および条件(C)が満足されていないので、現在の第1候補(リンクLK)上へのマッチングを継続させる。このとき、リンクLKは、第2候補となる。
【0077】
さらに、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(6)に対応する6番目の更新ポイントおよび電波航法位置PGPS(7)に対応する7番目の更新ポイントにおいては、条件(C)は満足するようになったが、条件(B)を未だに満足していないので、現在の第1候補(リンクLK)へのマッチングを継続させる。
【0078】
そして、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(8)に対応する8番目の更新ポイントにおいては、条件(A)〜(C)がすべて満足されるようになったので、現在の第1候補(リンクLK)上から現在の第2候補(リンクLK)上へとマッチングを修正させる。
【0079】
そして、8番目の更新ポイント以後においては、リンクLKが第1候補となり、リンクLKが第2候補となる。
【0080】
<第2のマッチング修正動作>
マップマッチング処理部19は、第2のマッチング修正動作として、自車両が微小角分岐点を通過した後に、次の(D)〜(G)の各条件がすべて満足されるようになった場合に、微小角分岐点から分岐される複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補へのマッチングの修正を行う。
【0081】
(D)電波航法位置誤差算出部22によって算出される誤差が閾値よりも大きいこと。
【0082】
(E)自車両による地図データ上の微小角分岐点の通過後の電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移に関する条件として、微小角分岐点を自車両が通過した後に電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離(最短距離)が所定の距離(以下、第2候補閾値離間距離と称する)以下で安定する状態が、現在の自車位置から遡って所定の走行距離(以下、閾値走行距離と称する)以上継続していること。
【0083】
(F)現在の第1候補が現在の第2候補よりも電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置との距離(最短距離)が大きいこと。
【0084】
(G)電波航法位置検出部17によって検出される電波航法位置の軌跡に対して前記現在の第1候補のなす角度が所定の角度(以下、閾値角度と称する)以上であること。
【0085】
なお、本実施形態において、条件(E)における安定とは、電波航法位置と現在の第2候補との距離の変動幅(ばらつき幅)が閾値変動幅以下であることを意味している。この条件(E)は、前述した条件(B)と同一である。
【0086】
(第2のマッチング修正動作の具体例)
この第2のマッチング修正動作を行う具体例としては、図5(a)〜(c)に示すように、2本のマッチング候補道路LK、LKが微小角分岐点BK以後に離間する道路を走行する場合を挙げることができる。
【0087】
なお、この具体例においては、条件(E)における第2候補閾値離間距離が15m、閾値走行距離が30m、閾値変動幅が3m、また、条件(G)における閾値角度が20°とされている。
【0088】
そして、この具体例においては、図5(a)に示すように、自車両が、微小角分岐点BKと、この微小角分岐点BKの手前から分岐後にかけて直線状に延びる本線道路に対応するリンクLKと、このリンクLKの途中から微小角分岐点BKを介して分岐された分岐道路に対応するリンクLKとからなる地図データベース上の道路に対応する実際の道路上を、図5(a)において破線で示す実際の走行場所に沿って走行する。なお、リンクLKは、リンクLKからの分岐後にリンクLKとの距離が次第に広がっている。
【0089】
図5(a)に示すように、自車両は、実際の道路形状に沿って、地図データ上の微小角分岐点BKよりも手前の実際の微小角分岐点BKからリンクLKに対応する分岐道路に進路変更している。
【0090】
本具体例においては、電波航法位置誤差算出部22によって算出される電波航法位置の誤差が閾値よりも大きく、条件(D)が満足されいるので、電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(10)が、実際の走行場所から進行方向右方に15mずれるようにしてGPSの更新周期毎に推移している。
【0091】
ここで、図5(b)は、自車両による地図データ上の微小角分岐点BKの通過時および通過後における自車位置のマッチング状態を示しており、また、図5(c)のグラフは、電波航法位置に対するリンクLKの推移および電波航法位置に対するリンクLKの推移を示している。図5(c)のグラフにおける横軸に付された番号(ただし、1〜3番は省略)は、GPSの更新ポイントの番号であり、この図5(c)の横軸は、更新ポイントの各番号と同じ括弧付きの番号が付された電波航法位置PGPS(1)〜PGPS(11)の推移(軌跡)とみなすことができる。図5(c)における更新ポイントの番号は一例に過ぎず、各番号が一連のものであれば、図5(c)に示した番号以外の番号をとってもよいことは勿論である。また、図5(c)のグラフにおける縦軸は、電波航法位置と各マッチング候補道路LK、LKとの距離(最短距離)であり、この距離は、電波航法位置からマッチング候補道路LK、LKに降ろした垂線の長さを実世界上に換算することによって求められる距離(m)である。
【0092】
図5(b)および(c)に示すように、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(4)に対応する4番目の更新ポイントおよびそれ以前の1番目〜3番目の更新ポイントにおいては、投影法によって自車位置を第1候補であるリンクLK上にマッチングさせる。なお、図5(b)におけるPMM(4)は、4番目の更新ポイントにおけるリンクLK上にマッチングされている自車位置(後述する自車位置マークと同義)を示している。
【0093】
また、マップマッチング処理部19は、自車両が地図データ上の微小角分岐点BKを通過した直後の電波航法位置PGPS(5)に対応する5番目の更新ポイント、電波航法位置PGPS(6)に対応する6番目の更新ポイントおよび電波航法位置PGPS(7)に対応する7番目の更新ポイントにおいては、条件(E)、条件(F)および条件(G)が満足されていないので、現在の第1候補(リンクLK)上へのマッチングを継続させる。このとき、リンクLKは、第2候補となる。
【0094】
さらに、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(8)に対応する8番目の更新ポイントにおいては、条件(G)を満足するようになったものの、条件(E)および条件(F)を未だに満足していないので、現在の第1候補(リンクLK)へのマッチングを継続させる。
【0095】
そして、マップマッチング処理部19は、電波航法位置PGPS(9)に対応する9番目の更新ポイントおいては、条件(D)〜(G)がすべて満足されるようになったので、現在の第1候補(リンクLK)上から現在の第2候補(リンクLK)上へとマッチングを修正する。
【0096】
そして、9番目の更新ポイント以後においては、リンクLKが第1候補となり、リンクLKが第2候補となる。
【0097】
このようにして、本実施形態においては、自車両が微小角分岐点を通過した後の電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移に基づいたマッチングの修正を行うことができる。
【0098】
図1に戻って、地図バッファ16には、地図描画部25が接続されており、この地図描画部25には、地図バッファ16に保存された地図データが入力されるようになっている。そして、地図描画部25は、地図バッファ16から入力された地図データに基づいて、入力操作部5の操作によってユーザが指定した自車位置等の指定地点の周辺の地図の画像を表示するための地図描画データを生成するようになっている。地図描画部25とディスプレイ9との間には、表示処理部26が接続されており、この表示処理部26には、地図描画部25によって生成された地図描画データが入力されるようになっている。そして、表示処理部26は、地図描画部25から入力された地図描画データを、ディスプレイ9に表示する処理を行うようになっている。
【0099】
また、自車位置計算部14には、自車位置描画部27が接続されており、この自車位置描画部27には、前述した表示処理部26が接続されている。自車位置描画部27には、自車位置計算部14によって算出された自車位置の情報が入力されるようになっている。なお、この自車位置の情報は、自車位置計算部14による自車位置のマッチングが行われた場合には、マッチング後の自車位置の情報となる。自車位置描画部27は、自車位置計算部14から入力された自車位置の情報に基づいて、地図上の自車位置を示す自車位置マークを表示するための自車位置描画データを生成するようになっている。自車位置描画部27によって生成された自車位置描画データは、表示処理部26に入力されるようになっている。そして、表示処理部26は、自車位置描画部27から入力された自車位置描画データに基づいて、自車位置マークを自車位置の周辺の地図上に重ねて表示する処理を行うようになっている。
【0100】
入力操作部5、自車位置計算部14、地図読出制御部15および地図バッファ16には、ルート計算部28が接続されている。ルート計算部28は、自車位置計算部14によって算出された自車位置から入力操作部5の入力操作によって指定された目的地までの推奨ルートを算出するためのルート計算を行うようになっている。ルート計算部28は、ルート計算の際に、地図読出制御部15を介してディスク読取装置3に地図データ(道路ネットワークデータ等)を読み取らせ、この読み取らせた地図データをルート計算に利用するようになっている。
【0101】
ルート計算部28および地図バッファ16には、案内画像描画部29が接続されており、この案内画像描画部29には、表示処理部26が接続されている。案内画像描画部29は、ルート計算部28によって算出された推奨ルートに基づいて、地図上に推奨ルートを重ねて描画した画像や交差点拡大画像等の案内画像を表示するための案内画像描画データを生成するようになっている。案内画像描画データの生成には、必要に応じて地図バッファ16に格納された地図データが利用されるようになっている。案内画像描画部29によって生成された案内画像描画データは、表示処理部26に入力されるようになっている。そして、表示処理部26は、案内画像描画部29側から入力された案内画像描画データに基づいて、案内画像をディスプレイ9に表示する処理を行うようになっている。
【0102】
ルート計算部28とスピーカ10との間には、音声案内部30が接続されており、この音声案内部30は、ルート計算部28によって算出された推奨ルートに基づいて、交差点右左折案内等の音声案内を行うための案内音声データを生成し、生成した案内音声データをスピーカ10に対して出力するようになっている。スピーカ10は、音声案内部30によって生成された案内音声データを音声出力するようになっている。
【0103】
次に、本実施形態の主たる作用について説明する。
【0104】
本実施形態においては、まず、図6に示すように、微小角分岐点検出部20による微小角分岐点の検出動作を開始した後に、図6のステップ1(ST1)に示すように、微小角分岐点検出部20により、自車位置の周辺の地図データに基づいて、自車両が現在進行している道路上に分岐点が存在するか否かを判定する。
【0105】
そして、ステップ1(ST1)において、自車両が進行している道路上に分岐点が存在すると判定された場合には、ステップ2(ST2)に進み、存在しないと判定された場合には、微小角分岐点が検出されないまま動作を終了する。
【0106】
次いで、ステップ2(ST2)においては、微小角分岐点検出部20により、地図データに基づいて、ステップ1(ST1)において検出された分岐点において分岐されるマッチング候補道路同士の分岐角度が、微小角分岐点の基準となる閾値角度(例えば、20°)以下であるか否かを判定する。
【0107】
そして、ステップ2(ST2)において、検出された分岐点の分岐角度が閾値角度以下と判定された場合には、ステップ3(ST3)に進み、閾値角度よりも大きいと判定された場合には、微小角分岐点が検出されないまま動作を終了する。
【0108】
次いで、ステップ3(ST3)においては、検出された分岐点が微小角分岐点であると断定して動作を終了する。この場合、微小角分岐点を自車両が通過した後に、マップマッチング処理部19によるマッチング修正動作(第1または第2のマッチング修正動作)が開始することになる。
【0109】
次いで、図7に示すように、自車両が、微小角分岐点を、自車位置がマップマッチング処理部19によって現在の第1候補上にマッチングされた状態として通過した後に、マップマッチング処理部19によるマッチング修正動作を開始する。
【0110】
すなわち、まず、ステップ11(ST11)に示すように、マップマッチング処理部19により、電波航法位置検出部17の検出結果に基づいて、GPSが測位中であるか否かを判定し、測位中である場合には、ステップ12(ST12)に進み、測位中でない場合には、ステップ14(ST14)に進む。
【0111】
次いで、ステップ12(ST12)に示すように、マップマッチング処理部19により、前述した第1のマッチング修正動作のための条件(A)〜(C)のすべて、または、第2のマッチング修正動作のための条件(D)〜(G)のすべてが満足されるか否かを判定する。なお、第1のマッチング修正動作のための条件(A)と、第2のマッチング修正動作のための条件(D)とは、互いに相反するため、第1のマッチング修正動作のための全条件の成立と、第2のマッチング修正動作のための全条件の成立とが抵触することはない。
【0112】
そして、ステップ12(ST12)において、条件(A)〜(C)のすべて、または、条件(D)〜(G)のすべてが満足されると判定された場合には、ステップ13(ST13)に進み、そうでない場合には、ステップ15(ST15)に進む。
【0113】
ステップ13(ST13)においては、マップマッチング処理部19により、現在の第1候補上から現在の第2候補上へとマッチングを修正したうえでステップ14(ST14)に進む。
【0114】
一方、ステップ15(ST15)においては、現在の第1候補上へのマッチングを継続させたうえでステップ14(ST14)に進む。
【0115】
次いで、ステップ14(ST14)においては、マップマッチング処理部19により、自車両が、微小角分岐点を通過後に所定の閾値(例えば、200m)以上の走行距離を走行しているか否かを判定し、走行している場合には、マッチング修正動作を終了し、走行していない場合には、ステップ11(ST11)に戻る。
【0116】
以上述べたように、本実施形態によれば、微小角分岐点において自車位置が不適切な第1候補上にマッチング(ミスマッチング)された場合であっても、微小角分岐点以後における電波航法位置とマッチング候補道路との距離の推移に基づいてマッチングを修正することができるので、微小角分岐点におけるミスマッチングを早期に解消することができ、ひいては、自車位置精度を向上させることができる。
【0117】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0118】
例えば、前述した第2のマッチング修正動作の条件として、現在の第1候補と電波航法位置との間の距離が所定の距離(例えば、15m)以下で安定している状態が、微小角分岐点以後、所定の走行距離(例えば、30m)未満しか継続しなかったことを追加してもよい。
【0119】
また、本発明は、3本以上のマッチング候補道路が分岐するような微小角分岐点に適用してもよい。
【0120】
さらに、前述した実施形態においては、現在の第1候補から現在の第2候補へのマッチングの修正を1回のみ行っているが、本発明は、このような実施の形態に限定されるものではなく、例えば、1回目のマッチング修正後に、新たな第1候補が前述したマッチング修正動作の条件(A)〜(C)または(D)〜(G)を満たさなくなり、一方、新たな第2候補(当初の第1候補であってもよい)がマッチングの修正動作の条件を満たすようになった場合には、当該新たな第2候補上へとマッチングを再修正するようにしてもよい。
【0121】
さらにまた、微小角分岐点以後にマッチング候補道路に対応する道路が並走する場合と離間する場合とで、(A)〜(G)の各条件における具体的な数値を異ならせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、自車位置計算部の詳細な構成を示すブロック図
【図3】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、第1のマッチング修正動作の具体例1を説明するための説明図
【図4】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、第1のマッチング修正動作の具体例2を説明するための説明図
【図5】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、第2のマッチング修正動作の具体例を説明するための説明図
【図6】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、微小角分岐点の検出動作を示すフローチャート
【図7】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、マッチング修正動作を示すフローチャート
【図8】従来から採用されている投影法によるマップマッチング処理を示す説明図
【図9】従来の問題点として、微小角分岐点における自車位置のミスマッチング状態を説明するための説明図
【符号の説明】
【0123】
1 車載用ナビゲーション装置
17 電波航法位置検出部
18 自律航法位置検出部
19 マップマッチング処理部
20 微小角分岐点検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波航法によって自車位置を逐次検出する電波航法位置検出手段と、
自律航法によって自車位置を逐次検出する自律航法位置検出手段と、
自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置にマッチングさせる処理を行うマップマッチング処理手段と、
このマップマッチング処理手段によるマッチングの候補となる複数本のマッチング候補道路同士が所定の角度以下の微小角度を有した状態として分岐するような分岐点である微小角分岐点を地図データを用いて検出する微小角分岐点検出手段と
を備え、
前記マップマッチング処理手段が、
前記微小角分岐点検出手段によって検出された前記微小角分岐点を、自車両が、前記マップマッチング処理手段によって自車位置が前記複数本のマッチング候補道路における第1候補上にマッチングされた状態として通過した後に、前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記マッチング候補道路との距離の推移に基づいて、前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補上から前記複数本のマッチング候補道路における現在の第1候補以外の道路上へとマッチングを修正することが可能に形成されていること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の誤差を算出する電波航法位置誤差算出手段を備え、
前記マップマッチング処理手段が、次の(A)〜(C)の各条件、
(A)前記電波航法位置誤差算出手段によって算出される誤差が閾値以下であること、
(B)前記微小角分岐点を自車両が通過した後に前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離が所定の距離以下で安定する状態が、現在の自車位置から遡って所定の走行距離以上継続していること、
(C)前記現在の第1候補と前記現在の第2候補との距離が所定の距離以上かつ前記現在の第1候補が前記現在の第2候補よりも前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置との距離が大きいこと、
がすべて満足されるようになった場合に、前記現在の第1候補上から前記現在の第2候補上へとマッチングを修正するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の誤差を算出する電波航法位置誤差算出手段を備え、
前記マップマッチング処理手段が、次の(D)〜(G)の各条件、
(D)前記電波航法位置誤差算出手段によって算出される誤差が閾値よりも大きいこと、
(E)前記微小角分岐点を自車両が通過した後に前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置と前記複数本のマッチング候補道路における現在の第2候補との距離が所定の距離以下で安定する状態が、現在の自車位置から遡って所定の走行距離以上継続していること、
(F)前記現在の第1候補が前記現在の第2候補よりも前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置との距離が大きいこと、
(G)前記電波航法位置検出手段によって検出される自車位置の軌跡に対して前記現在の第1候補のなす角度が所定の角度以上であること、
がすべて満足されるようになった場合に、前記現在の第1候補上から前記現在の第2候補上へとマッチングを修正するように形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−134187(P2008−134187A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321933(P2006−321933)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】