説明

車載装置

【課題】駐車場などの施設内において、自車両の急発進を抑止する車載装置を提供する。
【解決手段】自車位置検出部11で検出した自車位置と、地図データ記憶部12から、自車両が施設に進入したと判定されると、ナビゲーション装置1はエンジン制御装置3に対して、燃料噴射量の上限を、自車両が急発進しない程度の量である所定の量に制限するよう指示する。指示を受けたエンジン制御装置3は、燃料噴射量の上限を所定の量に設定する。自車両から道路までの距離が所定の距離以下になり、方向指示器4の点滅が行われたことを示す信号が車体制御装置2からナビゲーション装置1へ送信されると、ナビゲーション装置1は、燃料噴射量の制限を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設内における車両の急発進を防止するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両がガソリンスタンドや駐車場などの施設内にあるときには、スロットル装置および燃料噴射装置を制御して、車速を制限するナビゲーション装置が公知である(特許文献1)。上記のナビゲーション装置は、地図データベースに施設情報を含んでおり、自車位置が施設情報で示される範囲内であった場合に前述の車速制限を行う。
【0003】
【特許文献1】特開平10−272913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施設から道路へ出る際には、車速制限が解除された状態である方が望ましい場合がある。しかしながら、前述のナビゲーション装置は、自車両が施設から出なければ車速制限が解除されない。そのため、常に車速制限が行われた状態で道路へ出なければならないという問題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記自車位置と、前記地図情報とに基づいて、自車が施設に入場しているか否かを判定する施設判定手段と、前記施設判定手段により、自車が施設に入場していると判定された場合には、前記自車の急発進を抑制する制御を実行する急発進抑制手段と、前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、所定の条件が満たされた場合には、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除する急発進抑制解除手段と、を備えることを特徴とする車載装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車載装置において、前記地図情報記録手段は、地図情報に施設情報を含み、前記施設判定手段は、前記自車位置と、前記施設情報とに基づいて、自車が施設に入場しているか否かを判定することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の車載装置において、前記施設判定手段は、前記自車位置が道路の外である状態で、車載装置の電源オフおよび電源オンが順に実行されたときに、自車が施設に入場していると判定することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載装置において、前記自車位置検出手段は、自車の向きを検出し、前記急発進抑制解除手段は、前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、前記自車位置から道路までの距離が所定値以下であり、かつ前記自車の向きと前記道路とが成す角度が所定値以下であった場合、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載装置において、自車の方向指示器が点灯したことを検出する方向指示検出手段を更に備え、前記急発進抑制解除手段は、前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、前記自車位置から道路までの距離が所定値以下であり、かつ前記方向指示検出手段により方向指示器が点灯したことを検出した場合、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、駐車場などの施設内において急発進の抑制が行われている状態において、所定の条件を満たした場合に、急発進の抑制が解除される。これにより、状況に応じて急発進が行える状態になった上で、施設からの退出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
――第1の実施の形態――
図1は、本実施形態におけるナビゲーション装置1の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御回路10、自車位置検出部11および地図データ記憶部12を備える。ナビゲーション装置1と、ナビゲーション装置1が搭載されている車両の車体制御装置2およびエンジン制御装置3は、バスを介して相互に接続されている。車体制御装置2には、方向指示器4が接続されている。
【0008】
制御回路10は、ナビゲーション機能の他に、自車位置検出部11および地図データ記憶部12から得られる情報に基づいて、車体制御装置2およびエンジン制御装置3へ制御指示を送信したり、車体制御装置2から送信される各種信号を受信する。自車位置検出部11は、例えばGPS(Global Positioning System)センサや車速センサなどを用いて車両の現在地を検出する装置である。地図データ記憶部12には、地図表示用データ、経路探索用データなどの他に、駐車場などの施設情報が記録されている。
【0009】
車体制御装置2は、車両の全般的な制御を行う。エンジン制御装置3は、エンジンユニットへの燃料噴射量などの制御を行う。方向指示器4は、ユーザの操作に応じて、車体制御装置2の制御により点滅し、方向指示を行う。車体制御装置2は、方向指示器4の点滅状態を示す信号をナビゲーション装置1へ送信する。
【0010】
次に、本実施形態におけるナビゲーション装置1の、急発進の抑止制御について、図を用いて説明する。図2は、急発進抑止制御の実行と解除の流れを説明するための図である。ナビゲーション装置1は、自車両が道路ではなく施設内にいると判定した場合、自車両に対して急発進抑止制御を実行する。急発進抑止制御は、所定の条件が満たされた時点で解除される。
【0011】
初めに、道路21を自車両が符号24の位置で走行中の状態であるとする。地図データ記憶部12には、施設22の情報が記録されている。また、斜線で示す領域23は、建造物を表している。
【0012】
自車両が施設22に進入すると、ナビゲーション装置1はエンジン制御装置3に対して、燃料噴射量の上限を、自車両が急発進しない程度の量である所定の量に設定するよう指示する。指示を受けたエンジン制御装置3は、燃料噴射量の上限を所定の量に設定する。これにより、運転者が誤ってアクセルを踏み込んでも、燃料噴射量が所定の量を超えることがないため、自車両の急発進が防止される。
【0013】
次に、符号25で示す位置において、ナビゲーション装置1の電源オフが行われたとする。この動作は、運転手が車両を駐車場に駐車し、エンジンを停止したことを意味している。その後、再度電源オンが行われると、ナビゲーション装置1は急発進抑止制御が実行されている状態での電源オフおよび電源オンが行われたことを検知し、自車両から道路21までの距離の計測を開始する。
【0014】
自車両が符号26で示す位置に移動し、このときの自車両から道路までの距離27が所定の距離以下になると、ナビゲーション装置1は、方向指示器4により行われる方向指示を待機する。
【0015】
運転者が自車両を左折させ、符号28の位置へ自車両を移動させるために、方向指示器4のうち左折方向を点滅させる操作を行うと、方向指示器4の点滅が行われたことを示す信号が車体制御装置2からナビゲーション装置1へ送信される。この信号を受信すると、ナビゲーション装置1は、エンジン制御装置3へ燃料噴射量の上限設定を解除するよう指示する。
【0016】
図3は、ナビゲーション装置1による、施設への入退出時の処理を示すフローチャートである。この処理は、ナビゲーション装置1によって繰り返し実行される。まずステップS1では、抑止中フラグを0に設定する。抑止中フラグは、燃料噴射量の制限が行われているか否かを示すフラグであり、ナビゲーション装置1の電源オフが行われた場合であっても値が保持される。ステップS2では、自車両が駐車場に入ったか否かの判定を行う。自車位置検出部11によって自車両の位置が駐車場内であると判定された場合、ステップS2が肯定され、ステップS3へ進む。他方、ステップS2により否定判定がなされた場合は、ステップS2へ戻る。
【0017】
ステップS3では、エンジン制御装置3へ燃料噴射量の制限を指示する。これによって急発進が抑止される。ステップS4では、燃料噴射量の制限が行われていることを示すため、抑止中フラグに1を設定する。ステップS5では、ナビゲーション装置1の電源オフが行われたか否かを判定する。電源オフが行われた場合、ステップS5により肯定判定がなされ、ステップS6へ進む。他方、ステップS5において否定判定がなされた場合には、ステップS5へ戻り、電源オフを待つ。
【0018】
ステップS6では、ステップS5にて電源オフが行われた後、ナビゲーション装置1の電源オンを待機する。電源オンが行われた場合、ステップS6により肯定判定がなされ、ステップS7へ進む。他方、ステップS6において否定判定がなされた場合には、引き続きステップS6で電源オンが行われるのを待つ。ステップS7では、抑止中フラグの値が1であるか否かを判定する。すなわち、ナビゲーション装置1の電源オフが最後に行われた際に、エンジン制御装置3が燃料噴射量の制限を行っていたか否かを判定する。抑止中フラグの値が0であった場合、ステップS7により否定判定がなされ、本処理を終了する。他方、ステップS7において肯定判定がなされた場合には、ステップS8へ進む。
【0019】
ステップS8では、自車両と、自車両が存在している駐車場に接続する道路との距離を調べ、所定の距離以下か否かを判定する。自車両が道路から所定の距離以上離れている場合、ステップS8において否定判定がなされ、ステップS8へ戻る。他方、ステップS8において肯定判定がなされた場合は、ステップS9へ進む。
【0020】
ステップS9では、方向指示器4の点滅状態を表す信号が車体制御装置2から送られてきたか否かを判定する。車体制御装置2から、方向指示器4が点滅したことを示す信号が送信された場合、ステップS9により肯定判定がなされ、ステップS10へ進む。他方、ステップS9において否定判定がなされた場合には、ステップS9へ戻る。
【0021】
ステップS10では、ステップS3において行われた燃料噴射量の制限を解除する。これにより、自車両の急発進が行えるようになる。ステップS11では、燃料噴射量の制限を解除したことに伴い、抑止中フラグの値を0に設定する。以上のようにして、ナビゲーション装置1は、自車両の急発進抑止を行う。
【0022】
上述した第1の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)方向指示器4を用いた方向指示をきっかけとして、急発進抑止が解除される。これにより、施設を退出する際に車速が制限されることがなく、スムーズな走行が行える。
(2)自車両から道路までの距離が一定以下になるまで、急発進抑止の解除が行われない。これにより、例えば駐車場内で方向指示器4を用いた際に、急発進抑止が解除されることを避けることができる。
【0023】
上述した第1の実施の形態では、燃料噴射量の制限を、方向指示器4の点滅状態を表す信号に基づいて解除していた。以下に詳述する第2の実施の形態では、道路に向かう角度に応じて、燃料噴射量の制限を解除するタイミングを変化させる。
【0024】
――第2の実施の形態――
第2の実施形態におけるナビゲーション装置は、第1の実施形態と同様の構成を備える。また、燃料噴射量の制限を行う条件も同様となるが、制限を解除する条件が異なる。以下、図を用いて、燃料噴射量の制限を解除する条件について説明する。
【0025】
図4は、本実施の形態におけるナビゲーション装置の、燃料噴射量の制限を解除する条件を示す図である。図4では、自車両が、車速の制限が行われる施設内から道路31へ出ようとしている。
【0026】
自車両が符号32で示される向きで道路31へ出るとき、自車両の向きと道路31の角度33は、ほぼ直角となる。この場合、自車両が急発進を行うことは、安全上望ましくない。一方、自車両が符号34で示される向きで道路31へ出るときは、自車両の向きと道路31の角度35は、角度33と比べて小さくなる。この場合、前述の場合とは逆に、急発進を抑止すべきではない。
【0027】
そこで、本実施形態におけるナビゲーション装置は、自車両から道路までの距離が所定の距離以下になったとき、自車両と道路の角度を調べる。この角度が所定値以下であった場合は、燃料噴射量の制限を解除して急発進を行える状態にする。角度が所定値以上であった場合は、燃料噴射量の制限は自車両が完全に道路に出るまで解除されない。
【0028】
図5は、本実施形態におけるナビゲーション装置の、施設への入退出時の処理を示すフローチャートである。ステップS21からステップS28までの処理は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1が行う処理と同様である。
【0029】
ステップS29では、自車両の、道路に向かう角度が所定の角度以上か否かを判定する。道路に向かう角度が所定の角度以下であった場合、ステップS29により否定判定がなされ、ステップS31へ進む。他方、ステップS29において肯定判定がなされた場合は、ステップS30へ進む。ステップS30では、自車両が施設から出たか否かを判定する。自車両が施設から出ていなかった場合、ステップS30において否定判定がなされ、ステップS29へ戻る。他方、ステップS30において肯定判定がなされた場合は、ステップS31へ進む。ステップS31では、燃料噴射量の制限を解除し、ステップS32では、抑止中フラグの値を0に設定する。
【0030】
上述した第2の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、第1の実施の形態によるナビゲーション装置で得られる作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。施設からの退出の際に、急発進を抑止すべきか否かを、自車両と道路の角度から判定する。これにより、急発進抑止の解除が適切に行われる。
【0031】
次のような変形も本発明の範囲内である。
(1)地図データに、施設データが存在しない場合は、道路外で電源オフが行われ、再度電源オンが行われた時点で燃料噴射量の制限を実行することで、同様の効果を得ることができる。
【0032】
(2)施設の出口情報が地図データに含まれている場合は、自車両から道路までの距離の代わりに、自車両から出口までの距離を利用してもよい。
【0033】
(3)施設の種類に合わせて、制御方法を変更してもよい。例えば、ドライブスルーを提供する施設に入る場合、電源オフが行われないので、自車両が進入し次第急発進抑止制御を行ってもよい。
【0034】
(4)ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関だけではなく、電気自動車や燃料電池車などに対しても本発明を適用することができる。
【0035】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
なお、以上説明した実施の形態におけるナビゲーション装置の各構成要素と特許請求の範囲の各構成要素との対応関係は以下の通りである。自車位置検出部11は自車位置検出手段に相当し、地図データ記憶部12は地図情報記憶手段に相当し、制御回路10は施設判定手段,急発進抑制手段および急発進抑制解除手段に相当する。
【0037】
なお、以上の対応関係の説明は一例であり、権利解釈に際して何ら拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施の形態における、ナビゲーション装置1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】急発進抑止制御の実行と解除の流れを説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態におけるナビゲーション装置による、施設への入退出時の処理を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態におけるナビゲーション装置の、燃料噴射量の制限を解除する条件を示す図である。
【図5】第2の実施の形態におけるナビゲーション装置による、施設への入退出時の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 ナビゲーション装置
2 車体制御装置
3 エンジン制御装置
4 方向指示器
10 制御回路
11 自車位置検出部
12 地図データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記自車位置と、前記地図情報とに基づいて、自車が施設に入場しているか否かを判定する施設判定手段と、
前記施設判定手段により、自車が施設に入場していると判定された場合には、前記自車の急発進を抑制する制御を実行する急発進抑制手段と、
前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、所定の条件が満たされた場合には、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除する急発進抑制解除手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記地図情報記録手段は、地図情報に施設情報を含み、
前記施設判定手段は、前記自車位置と、前記施設情報とに基づいて、自車が施設に入場しているか否かを判定する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載装置において、
前記施設判定手段は、前記自車位置が道路の外である状態で、車載装置の電源オフおよび電源オンが順に実行されたときに、自車が施設に入場していると判定する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載装置において、
前記自車位置検出手段は、自車の向きを検出し、
前記急発進抑制解除手段は、前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、前記自車位置から道路までの距離が所定値以下であり、かつ前記自車の向きと前記道路とが成す角度が所定値以下であった場合、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載装置において、
自車の方向指示器が点灯したことを検出する方向指示検出手段を更に備え、
前記急発進抑制解除手段は、前記急発進抑制手段により前記制御が実行されているときに、前記自車位置から道路までの距離が所定値以下であり、かつ前記方向指示検出手段により方向指示器が点灯したことを検出した場合、前記急発進抑制手段による前記制御の実行を解除する
ことを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−264352(P2009−264352A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118398(P2008−118398)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】