説明

軟X線検出装置、及び軟X線検出システム

【課題】 正確な軟X線の検出を行うことを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2には複数の検出ユニット1が配され、それぞれの検出ユニット1は変換部3と回路部4とを含む。変換部3は例えばフォトダイオードである。変換部3では軟X線によって発生した電荷が収集される。回路部4には例えば第1導電型(Nチャネル型)の増幅トランジスタ6が配される。増幅トランジスタ6は、変換部3からの信号を増幅して出力する増幅部である。隣接する変換部3の間には第1導電型のトランジスタが配されない。あるいは、隣接する検出ユニットに含まれるトランジスタが、互いに近接して配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟X線検出装置に関し、とりわけ軟X線検出装置の検出ユニットの平面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画素ごとに増幅部を有する固体撮像装置が提案されている。特許文献1には複数の画素を備える固体撮像装置が記載されている。複数の画素のそれぞれが、フォトダイオードと、増幅回路の一部であるソースフォロアMOSトランジスタとを含む。特許文献1に記載の固体撮像装置では、フォトダイオードとソースフォロアMOSトランジスタは単一の半導体基板に配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−024907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、可視光による撮像について記載されている。しかし、特許文献1では、軟X線の検出に関しては検討されていない。したがって、上述したような固体撮像装置及びこれに類似する装置を軟X線検出に適用した場合において生じうる課題について十分に検討されていなかった。
【0005】
これに対して、本発明者らは、軟X線を電荷に変換する変換部と、増幅部などの回路部とが配された半導体基板を備えた検出装置において、変換部及び回路部の配置次第で、軟X線検出の正確性を向上させることが可能であることを見出した。
【0006】
上述の課題に鑑み、本発明は、変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む軟X線検出装置において、正確性を高めた軟X線検出を行うことが可能な検出ユニットのレイアウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面に係る軟X線検出装置は、半導体基板及び前記半導体基板に配された複数の検出ユニットを備える軟X線検出装置であって、前記複数の検出ユニットのそれぞれが、前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを少なくとも含む読み出し回路と、を有し、前記半導体領域のうち隣接して配された二つの半導体領域の間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記二つの半導体領域を互いに電気的に分離する第1分離部が配されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の側面に係る軟X線検出装置は、半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、前記第1検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかと、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかとが、第1距離よりも近接して配されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の側面に係る軟X線検出装置は、半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域は、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも、第2距離より離間して配されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る軟X線検出装置によれば、軟X線を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図2】本発明の実施例1の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図3】二つのMOSトランジスタのレイアウト図。
【図4】本発明の実施例1の軟X線検出装置の等価回路図。
【図5】本発明の実施例2の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図6】本発明の実施例3の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図7】本発明の実施例4の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図8】本発明の実施例4の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図9】本発明の実施例5の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図10】本発明の実施例6の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図11】本発明の実施例9の軟X線検出システムのブロック図。
【図12】軟X線検出装置の検出ユニットの平面構造の概略図。
【図13】本発明の実施例7の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図14】本発明の実施例8の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る軟X線検出装置100の要部を図1及び図2を用いて説明する。図1に示された軟X線検出装置100は複数の検出ユニット1を含む。図1には6つの検出ユニット1a〜1fが示されている。複数の検出ユニット1は単一の半導体基板2(図2)に配される。
【0013】
本明細書において、異なる検出ユニットに含まれる複数の素子が同様の機能を有する場合には、当該複数の素子に同じ数字を含む符号を付す。これらの同様の機能を有する複数の素子について、複数の検出ユニットに共通する事項を説明する場合には、数字のみの符号を用いる。これらの同様の機能を有する複数の素子を検出ユニットごとに区別して説明する場合には、数字の後にアルファベットを組み合わせた符号を用いる。
【0014】
それぞれの検出ユニット1は変換部3と回路部4とを含む。変換部3は例えばフォトダイオードである。図2が示すように、変換部3には第1導電型(例えばN型)の半導体領域11が配される。軟X線は主として半導体基板2の変換部3に入射し、軟X線が半導体基板2に入射したことによって発生した電荷が半導体領域11に収集される。
【0015】
回路部4には読み出し回路を構成する第1導電型(例えばNチャネル型)のトランジスタが配される。図2に示すように、読み出し回路は、変換部3で生じた信号を増幅する増幅トランジスタ6を含む。増幅トランジスタ6は、変換部3で生じた電荷に基づく信号を出力する増幅部を構成する。
【0016】
このように、本発明に係る軟X線検出装置100は、第1導電型の半導体領域11と増幅トランジスタ6とを含んで構成される検出ユニットを複数有する。そして、変換部3に配された第1導電型の半導体領域11と、回路部4に配された第1導電型のトランジスタ(例えば増幅トランジスタ6)との位置関係が本発明の特徴部分である。具体的には、次の第1乃至第3の特徴のいずれか一つまたは複数の特徴を有している。
【0017】
第1の特徴は、互いに隣接する第1導電型の半導体領域11aと第1導電型の半導体領域11bとの間には第1導電型のトランジスタが配されず、それらの間に両者を電気的に分離する分離部が配されたことである。
【0018】
第1の特徴について、まず、半導体領域11aと半導体領域11bとの間にトランジスタが配されていないことについて説明する。変換部3aに含まれる半導体領域11aの内部の点Pと、変換部3bに含まれる半導体領域11bの内部の点Qとを両端とする仮想的な線分PQを考える。回路部4のうちトランジスタの配された領域が線分PQの一部を含む場合は、半導体領域11aと半導体領域11bとの間にトランジスタが配されている。逆に、トランジスタの配された領域が線分PQを含まない場合は、半導体領域11aと半導体領域11bとの間にはトランジスタが配されていない。
【0019】
トランジスタの配された領域とは、トランジスタの電極を構成する半導体領域やチャネルを構成する半導体領域などが配された領域である。例えば、MOSトランジスタの配された領域は、ソース領域、ドレイン領域、及びチャネル領域である。別の例として、バイポーラトランジスタの配された領域は、コレクタ領域、ベース領域、及びエミッタ領域である。さらに、トランジスタの電極となる半導体領域と配線を介して電気的に接続された別の半導体領域も、トランジスタの配された領域に含まれうる。例えば、電源電圧が供給される半導体領域がMOSトランジスタのドレイン領域と電気的に接続されている場合などである。一方で、上記の半導体領域が配されず、MOSトランジスタのゲート電極や、トランジスタに接続された金属配線のみが配された領域は、トランジスタの配された領域には含まれない。
【0020】
特に、第1導電型の半導体領域11と同じ導電型の領域が、二つの半導体領域11の間に配されないことが重要である。一般のトランジスタはP型半導体領域とN型半導体領域の両方を含んで構成される場合が多い。このうち、反対の導電型であるP型半導体領域だけであれば、二つのN型半導体領域11の間に配されていてもよい。
【0021】
半導体領域11aと半導体領域11bとの間に配される分離部は、LOCOSやSTIなどの絶縁膜による分離、半導体領域11とは反対導電型(例えばP型)の半導体領域による分離、あるいは両者を組み合わせた分離である。他にも、公知の分離が用いられうる。
【0022】
図1では、さらに変換部3bと変換部3cとの間、変換部3dと変換部3eとの間、及び変換部3eと変換部3fの間に回路部4が配されていないことが示されている。しかし、少なくとも一組の互いに隣接する変換部3の間において、回路部4に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、分離部が配されていればよい。
【0023】
なお、半導体領域11aと半導体領域11bとが隣接していることに関して、半導体領域11aと半導体領域11bとが互いに隙間なく連続して配されている必要はない。
【0024】
第2の特徴は、検出ユニット1aの回路部4aに含まれる複数の第1導電型のトランジスタのいずれかと、検出ユニット1aに隣接する検出ユニット1bの回路部4bに含まれる複数の第1導電型のトランジスタのいずれかとが、第1の距離dよりも近接して配されたことである。
【0025】
第1の距離dは、1つの軟X線のフォトンが入射したことによって電子が発生する領域(後述の電荷発生領域)102のサイズに基づいて決定される距離である。第1の距離dは、例えば1つの軟X線のフォトンが半導体基板2に入射したことによって電子が発生する領域102を内包する最小の球の直径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、第1の距離dは1.0マイクロメートルとすることができる。あるいは、第1の距離dが下記の式(1)を満たすものであってもよい(dの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(Eの単位はkeV)。
【0026】
【数1】

【0027】
第3の特徴は、検出ユニット1aの変換部3に含まれる第1導電型の半導体領域11aが、検出ユニット1aに隣接する検出ユニット1dの回路部4に含まれる複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも第2の距離rより離間して配されたことである。
【0028】
第2の距離rは、1つの軟X線のフォトンが入射したことによって電子が発生する領域(後述の電荷発生領域)102のサイズに基づいて決定される距離である。第2の距離rは、例えば1つの軟X線のフォトンが半導体基板2に入射したことによって電子が発生する領域102を内包する最小の球の半径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、第2の距離rは0.5マイクロメートルとすることができる。あるいは、第2の距離rが下記の式(2)を満たすものであってもよい(dの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(Eの単位はkeV)。
【0029】
【数2】

【0030】
以上では、検出ユニット1が変換部3と回路部4を有し、変換部3に配される第1導電型の半導体領域11を例に本発明の特徴を説明した。検出ユニット1がさらに電荷保持部を有していてもよい。電荷保持部には、変換部3で発生した電荷を収集し、保持する第1導電型(例えばN型)の半導体領域が含まれる。
【0031】
このように検出ユニット1が電荷保持部を有する場合には、電荷保持部に含まれる第1導電型の半導体領域と、変換部3に含まれる第1導電型の半導体領域11との間に、第1導電型のトランジスタが配されないことが好ましい。
【0032】
次に本発明の課題と効果について説明する。本発明においては、軟X線が半導体基板2に入射したことによって発生した電荷を信号として読み出すことで、軟X線を検出することが可能である。例えば、1個の軟X線のフォトンによって発生した電荷の大部分、もしくは全部を信号として読み出すことによって、検出した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。
【0033】
このとき、発生した電荷の一部のみが信号として読み出される可能性を低減することによって、軟X線のエネルギー測定の正確性を向上させることができる。この効果について以下に詳細に説明する。
【0034】
なお、実際に信号として読み出すのは、変換部(例えばフォトダイオード)の導電型に応じた電子、あるいは正孔のいずれかのみであってもよい。以後の説明では電子を信号電荷として扱う場合について説明する。もちろん正孔を信号電荷として扱ってもよい。また、電子及び正孔の両方を信号電荷として読み出してもよい。
【0035】
まず、軟X線のエネルギーを測定すること(フォトンカウンティング)について説明する。図2において、軟X線が半導体基板2に入射すると、複数の電子正孔対が発生する。このような現象の例として、半導体基板2に入射した軟X線が、半導体基板2を構成する原子(例えばシリコン原子)内の電子を電離させることが考えられる。
【0036】
発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーに応じて変化する。例えば、半導体基板2がシリコン基板の場合、発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーをシリコンの平均電離エネルギーで除した数になると考えられている。シリコンの平均電離エネルギーが3.65eV(エレクトロンボルト)であると仮定すると、1keVの軟X線が入射したことによって、約270対の電子正孔対が発生する。より大きなエネルギーの軟X線が入射すれば、より多数の電子正孔対が発生する。
【0037】
そこで、1つの検出ユニットにつき平均1個以下の軟X線フォトンが入射するように検出ユニットを構成し、そして、発生した電子の数に応じた信号を読み出すことによって、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。具体的に、軟X線検出装置に1個の軟X線フォトンが入射した際に、1つの検出ユニット1から270個の電子に対応する信号が出力されたとする。上述の通り、1個の電子を発生するために3.65eVのエネルギーが必要である。したがって、入射した軟X線のエネルギーは約1keV(270個×3.65eV/個)と計算できる。今度は、540個の電子に対応する信号が1つの検出ユニット1から出力された場合を考える。この場合には、入射した軟X線のエネルギーは約2keV(540個×3.65eV/個)と計算できる。
【0038】
これに対して、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合を説明する。例えば、2keVのエネルギーを持つ1個の軟X線フォトンが1つの検出ユニット1に入射し、540個の電子を発生させた場合を考える。この540個の電子をすべて信号として読み出すことができれば、上述の通り、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。しかし、何らかの要因によって検出ユニット1から270個の電子に対応した信号が出力されると、出力信号に基づいて計算される軟X線のエネルギーは1keV(270個×3.65eV/個)である。すなわち、2keVの軟X線が入射したにもかかわらず、1keVの軟X線が入射したことを示す測定結果が得られる。このように、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合がある。
【0039】
発生した電子の一部のみに対応した信号が出力されることの原因として、例えば、発生した電荷の一部が検出ノード以外の領域に排出されることが考えられる。このような課題は、1個のフォトンの入射に対して複数の電子が発生するという軟X線検出に固有の課題である。以下では、軟X線検出において、発生した電子の一部が排出されるメカニズムについてさらに詳しく説明する。
【0040】
軟X線が入射したことによって発生する複数の電子は、フォトンが入射した領域よりも空間的に広がった領域で発生する。入射する軟X線のエネルギーが数keVの場合、電子が発生する領域は半導体基板2の内部で数マイクロメートルの範囲に広がりうる。別の言い方をすれば、複数の電子が半導体基板内の1点で発生するのではなく、複数の異なる位置で発生する。複数の電子が発生する三次元空間的な範囲を、便宜的に電荷発生領域と呼ぶ。
【0041】
電荷発生領域の位置は、軟X線が入射した位置によって変わりうる。また、電荷発生領域の大きさは軟X線のエネルギーによって変わりうる。例えば、電荷発生領域は、上述の式(1)で表される長さdを直径とする球に近似することができる。この場合、式(1)が示すように、軟X線のエネルギーEが大きくなれば、直径dも大きくなる。このような電荷発生領域を、例えば図2の領域102、104によって例示する。
【0042】
軟X線検出装置の検出ユニット1における電荷発生領域の位置、つまり軟X線の入射した位置に応じて、信号として読み出される電子の量と排出される電子の量が決まる。この点について図12を用いて説明する。
【0043】
図12(a)は、軟X線検出装置の検出ユニット1を示している。検出ユニット1には、変換部3と回路部4とが配されている。図12(b)では、図12(a)に示された検出ユニット1が、便宜的に3つの領域1201〜1203に区分けして示されている。
【0044】
第1の領域1201は、変換部3の中心付近に対応する領域である。第1の領域1201に軟X線が入射すると、発生した電子の全部が変換部3に収集される。軟X線が入射した位置から離れた位置に電荷が発生するが、そのような離れた位置であっても変換部3の内部だからである。つまり、電荷発生領域の全体が変換部3の内部に位置するため、発生したすべての電子を、変換部3に収集し、読み出すことができる。したがって、第1の領域1201に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0045】
第2の領域1202は、図12(b)においてハッチングで示された領域である。第2の領域1202は変換部3の外周部と、回路部4の一部に対応する領域である。第2の領域1202に軟X線が入射すると、一部の電子は変換部3に収集されるが、他の一部の電子は回路部4に排出される場合がある。これは、電荷発生領域が変換部3と回路部4の両方に渡って広がるからである。このような場合、読み出される信号は発生した電子の一部のみに対応したものとなる。したがって、第2の領域1202に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが困難である。
【0046】
第3の領域1203は、変換部3から十分に離れた領域である。第3の領域1203に軟X線が入射すると、発生した電子はすべて排出されうる。これは電荷発生領域が変換部3までは広がらないからである。したがって、第3の領域1203に軟X線が入射した場合は、軟X線が検出されないことがほとんどである。
【0047】
ここで、第1〜第3の領域1201〜1203のいずれの領域に軟X線が入射するかは、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率に応じた統計的な確率で決まる。具体的に、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率が、1:6:3であると仮定する。このような軟X線検出装置で、1回の検出において検出ユニット1に1個のフォトンが入射する軟X線検出を1000回行う。そうすると、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映した信号が出力される。約600回の検出においては、軟X線が第2の領域1202に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される。約300回の検出においては、軟X線が第3の領域1203に入射し、軟X線が入射したことが検出されない。
【0048】
このように、1000回のうち約700回の検出において信号が出力される。しかし、出力された信号の約85%は軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号である。しかも、出力された信号からは、それが第1の領域1201あるいは第2の領域1202のいずれの領域に入射した軟X線に対応するものかを特定することが困難である。
【0049】
図12において、第1の領域1201と第2の領域1202との境界は、電荷の排出部となる領域からの距離に基づいて決まる。電荷の排出部とは、第1導電型のトランジスタが配された領域である。
【0050】
排出部から第2の距離rよりも離れた場所に軟X線が入射すれば、発生した電子が排出される可能性は小さい。第2の距離rは、例えば電荷発生領域を内包する最小の球の半径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、所定の距離rは0.5マイクロメートルとすることができる。あるいは、第2の距離Lが上述の式(2)で表される距離であってもよい。
【0051】
なお、回路部4の全体が電荷の排出部であるとしてもよい。あるいは、回路部4のうち、電源電圧が供給される半導体領域や、MOSトランジスタのソース・ドレインとなる半導体領域を電荷の排出部としてもよい。
【0052】
以上に述べた通り、第2の領域1202の面積が大きいほど、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される確率が高くなる。したがって、変換部3と排出部となる第1導電型のトランジスタの配置を工夫して、第2の領域1202の面積をなるべく小さくすることによって、軟X線エネルギーを測定する正確性を向上させることができる。以下に、本発明の第1乃至第3の特徴のそれぞれによって、第2の領域1202の面積を小さくすることができることを説明する。
【0053】
本発明の第1の特徴を有する軟X線検出装置100は、図1に示される通り、互いに隣接する2つの変換部3の間に第1導電型のトランジスタが配されない。すなわち、互いに隣接する2つの変換部3の間に、前述の電荷の排出部となり得る半導体領域が配されない。これによって、互いに隣接する2つの変換部3の境界近傍に軟X線が入射しても、電荷が排出される可能性を低減することができるので、軟X線検出の正確性を向上させることが可能となる。
【0054】
第1の特徴によって、電荷が排出される可能性が低減されることについて具体的に説明する。図1には、検出ユニット1eの変換部3eの内部であって、隣接する変換部3fに近い領域に軟X線が入射した場合の電荷発生領域105が示されている。図1が示す通り、電荷発生領域105の一部は変換部3eの内部に位置し、また他の一部は隣接する変換部3fの内部に位置している。変換部3eの内部で発生した電子は、ほとんどが変換部3eに収集される。変換部3fの内部で発生した電子は、変換部3eに収集される可能性は低いが、代わりに変換部3fに収集される可能性が高い。そして、変換部3eと変換部3fとの間で発生した電子は、拡散やドリフトによって変換部3eまたは変換部3fのいずれかに収集される可能性が高い。なぜならば、変換部3eと変換部3fとの間には、電子の排出部となりうる領域がないからである。こうして、発生した電荷の全てあるいはほとんどを変換部3eまたは変換部3fのいずれかで収集することが可能となる。したがって、2つの変換部3eと変換部3fからの信号に基づいて、正確に軟X線を検出することが可能になる。
【0055】
なお、このように複数の変換部3に電荷発生領域に広がった場合は、それぞれの変換部3にフォトンが1つずつ入射した場合との区別が必要になる。しかし、発生した電荷のほとんどを収集することができていれば情報が失われないため、後段の信号処理によって上記の場合を特定することが可能であり、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。例えば、入射する軟X線のエネルギーのおおよその範囲が分かっているときに、その範囲より極端に低いエネルギーを示す信号が出力された場合は、1つのフォトンによる電荷発生領域が複数の変換部に広がっていると判断できる。したがって、当該出力と隣接する検出ユニットの出力とを加算する信号処理によって、入射した軟X線の正確なエネルギーを測定することができる。このように、軟X線のエネルギー測定においては、情報が失われないこと、つまり発生した電荷の一部のみが排出されないことが重要である。
【0056】
間に回路部4が配されていない変換部3のペアの数が増えれば増えるほど、より正確な軟X線検出が可能となる。例えば、変換部3eは変換部3b、3d、3f、及び図示されていないが変換部3bとは反対側で隣接する変換部の4つの変換部3と隣接している。これらのうち、変換部3dと変換部3eとの間、及び変換部3fと変換部3eとの間には回路部4が配されていない。さらに、変換部3bと変換部3eとの間に、回路部4が配されていなければ、さらに軟X線検出の正確性を増すことが可能になる。もちろん、変換部3eと少なくとも一つの変換部3との間に回路部4が配されていなければ、本発明の効果を得ることができる。
【0057】
本発明の第2の特徴を有する軟X線検出装置100は、互いに隣接する2つの検出ユニット1a、1bにおいて、一方の検出ユニット1aに含まれるトランジスタと、他方の検出ユニット1bに含まれるトランジスタとが、第1の距離dよりも近接して配される。これによって軟X線が入射したことによって発生した電子が排出される可能性を低減することができるので、軟X線検出の正確性を高めることが可能となる。
【0058】
第2の特徴によって、電荷が排出される可能性が低減されることについて図3を用いて具体的に説明する。図3には2つのMOSトランジスタ301、302が示されている。MOSトランジスタ301は第1の検出ユニットに含まれ、MOSトランジスタ302は第1の検出ユニットに隣接する第2の検出ユニットに含まれる。図3(a)では、MOSトランジスタ301とMOSトランジスタ302とが互いに第1の距離d以上に離間して配されている。図3(b)では、MOSトランジスタ301とMOSトランジスタ302とが互いに第1の距離dよりも近接して配されている。
【0059】
ここで、第1の距離dは、電荷発生領域311を球に近似した時の直径を示している。この第1の距離dは例えば、上述の式(1)で表される。あるいは第1の距離dはシリコン基板においては1マイクロメートルとしてもよい。
【0060】
MOSトランジスタ301及び302は、それぞれソース領域303、チャネル領域304、ドレイン領域305を含む。さらにMOSトランジスタ301及び302は、ゲート電極306を含む。また、MOSトランジスタ302のドレイン領域はコンタクトプラグ308、309、及び配線310を介して電源部307と接続されている。
【0061】
トランジスタが配された領域は、ソース領域303、チャネル領域304、ドレイン領域305、電源部307である。図3において、トランジスタが配された領域から、d/2以内の範囲を点線312、313、314で示している。本明細書では、この領域を便宜的に排出領域と呼ぶ。図12の第2の領域1202はこの排出領域に対応する。排出領域に軟X線が入射すると、電荷発生領域311の一部が、トランジスタが配された領域と重なる。そのため、発生した電子の一部が排出されやすい。
【0062】
図3(a)では、MOSトランジスタ301の排出領域312と、MOSトランジスタ302の排出領域313、314とが重なっていない。そのため、排出領域の合計の面積が大きくなっている。つまり、軟X線が入射しても、発生した電子の一部が排出されてしまう可能性が高い。
【0063】
これに対して、図3(b)では、MOSトランジスタ301とMOSトランジスタ302とが第1の距離dよりも近接して配されている。そのため、MOSトランジスタ301の排出領域313とMOSトランジスタ302の排出領域314とが重なった領域315が存在する。図3(b)の排出領域の合計の面積は、二つのトランジスタが第1の距離dより離間している場合に比べて、この重なった領域315の分だけ小さくなっている。つまり、電子の一部が排出されやすい位置に軟X線が入射する可能性が小さくなる。結果として、軟X線の検出の正確性を高めることが可能である。
【0064】
また、排出領域312と排出領域314とが重なっていても同様の効果がある。あるいは、排出領域313と排出領域314とが重なっていても同様の効果がある。重なっている排出領域の面積が広いほど、軟X線検出の正確性は向上する。
【0065】
なお、トランジスタ間の距離は、トランジスタが配された領域のうち最も近接した部分の距離としてよい。
【0066】
本発明の第3の特徴を有する軟X線検出装置100は、互いに隣接する検出ユニット1a、1dにおいて、第1の検出ユニット1aに含まれる第1導電型の半導体領域11aが、第2の検出ユニット1dの回路部4に含まれる複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも第2の距離rより離間して配される。
【0067】
第2の特徴によって、電荷が排出される可能性が低減されることについて説明する。図12において、発生した電荷の一部が排出される可能性のある第2の領域1202は、電荷の排出部となる領域から第2の距離r以内の領域である。そのため、変換部3を構成する第1導電型の半導体領域11を、電荷の排出部である第1導電型のトランジスタから第2の距離rより離間して配置することで、第2の領域1202が変換部3と重なる部分を小さくする、あるいはゼロにすることができる。これによって、軟X線検出の正確性を向上させることができる。
【実施例1】
【0068】
本発明に係る第1の実施例の軟X線検出装置100について図面を用いて説明する。本実施例の軟X線検出装置100は、主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出可能である。この波長帯の電磁波が半導体基板に入射すると、上述の通り1つのフォトンに対して複数の電子が発生する。
【0069】
また、本実施例の軟X線検出装置100は、半導体基板に入射する段階での波長が主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出するものである。したがって例えば半導体基板に入射する前に上記波長範囲外の波長域(たとえば可視光域)に波長変換された電磁波のみを検出するものは発明に含まれない。しかし半導体基板に入射する前に波長変換部を設けていたとしても、変換後の波長が上記範囲内になる場合には本発明を適用可能である。
【0070】
図1は軟X線検出装置100の平面構造を示す概略図である。軟X線検出装置100は複数の検出ユニット1を含む。図1には6つの検出ユニット1a〜1fが示されている。検出ユニット1a〜1cは第1方向に沿って並んでいる。また、検出ユニット1d〜1fは第1方向に沿って並んでいる。一方、検出ユニット1aと検出ユニット1dは第1方向と交差する第2方向に沿って並んでいる。検出ユニット1bと検出ユニット1eは第2方向に沿って並んでいる。検出ユニット1cと検出ユニット1fは第2方向に沿って並んでいる。実際には検出ユニット1a〜1fの配置が第1方向及び第2方向に沿って繰り返し配される。例えば第1方向に沿って2000個以上の検出ユニット1が配列され、第2方向に沿って1500個以上の検出ユニット1が配列されうる。図1では、第1方向と第2方向とは互いに直交する方向を示している。しかし第1方向と第2方向とは必ずしも直交する必要はなく、互いに交差していればよい。
【0071】
それぞれの検出ユニット1は第1導電型の半導体領域を含む変換部3と第1導電型のトランジスタを含む回路部4とを含む。ここで第1導電型の半導体領域は信号電荷を収集可能な半導体領域である。言い換えると、その周囲に対して信号電荷に対するポテンシャルが低くなっている領域である。変換部3は例えばフォトダイオードである。回路部4には読み出し回路が配される。図2が示すように、読み出し回路は、変換部3で生じた信号を増幅する増幅トランジスタ6を含む。変換部3、及び回路部4とは分離部によって電気的に分離されている。隣接する2つの検出ユニットの変換部3の間も、分離部によって電気的に分離されている。
【0072】
本実施例においては、第1方向に沿って並んだ変換部3の間には第1導電型のトランジスタが配されていない。そして、第1方向に沿って並んだ変換部3の間に分離部が配されている。具体的には、変換部3aと変換部3bとの間、及び変換部3bと変換部3cとの間には第1導電型のトランジスタが配されていない。さらに、第1方向において検出ユニット1cと隣接する不図示の検出ユニットの変換部と、検出ユニット1cに含まれる変換部3cとの間にも、第1導電型のトランジスタが配されていない。
【0073】
一方で、第2方向に沿って並んだ変換部3の間には回路部4に含まれる第1導電型のトランジスタが配される。具体的には変換部3bと変換部3eとの間に回路部4に含まれる第1導電型のトランジスタが配されている。さらに、第2方向において検出ユニット1eと隣接する不図示の検出ユニットの変換部と、検出ユニット1eに含まれる変換部3eとの間にも、回路部4に含まれる第1導電型のトランジスタが配される。
【0074】
図2は軟X線検出装置100の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図2は、図1のABに沿った断面を示している。図2においては、検出ユニット1cの断面のみが示されている。他の検出ユニット1の断面も検出ユニット1cの断面と同様の構造となっていてもよい。
【0075】
本実施例の軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2は例えばP型のシリコン基板である。本実施例の検出ユニット1は、半導体基板2に配された変換部3及び回路部4を含む。
【0076】
変換部3は例えばフォトダイオードである。本実施例では、変換部3に第1導電型の半導体領域としてN型半導体領域11が配される。N型半導体領域11より半導体基板2の表面(軟X線が入射する主面)側にはP型半導体領域12が配される。N型半導体領域11は、P型半導体領域12及び半導体基板2のそれぞれとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、及び半導体基板2によって埋め込み型のフォトダイオードが構成される。半導体基板2をN型半導体基板とし、N型半導体基板にP型半導体領域(例えばP型ウェル)を設けて、このP型ウェルとN型半導体領域11、P型半導体領域12とにより埋め込み型のフォトダイオードを構成することもできる。N型半導体領域11の電子に対するポテンシャルは周囲のP型半導体領域より低いので、入射した軟X線によって発生した電子がN型半導体領域11に収集可能である。さらに、N型半導体領域11に電子が蓄積されてもよい。N型半導体領域での収集あるいは蓄積を開始する前に、N型半導体領域11に逆バイアスが印加されてもよい。印加された逆バイアスによって、N型半導体領域11のポテンシャルをさらに下げることができる。また、この逆バイアスによって、N型半導体領域11の全体が空乏化していてもよい。
【0077】
回路部4には、転送トランジスタ5と増幅トランジスタ6とが配される。これらのトランジスタの一方もしくは両方を第1導電型つまりNチャネル型のトランジスタとすることができる。転送トランジスタ5は転送ゲート電極13とフローティングディフュージョン(以下、FD)14を含んで構成される。FD14はN型半導体領域によって構成される。転送ゲート電極13には転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。転送ゲート電極に印加される電圧によって、変換部3のN型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルが制御される。その結果、変換部3で発生した電子をFD14に転送することが可能である。この時、変換部3の全ての電子がFD14に転送されてもよいし、一部の電子のみがFD14に転送されてもよい。変換部3の電荷がすべて転送されるとN型半導体領域11の全体が空乏化するので、このような転送動作を完全空乏転送と呼ぶ。
【0078】
FD14は不図示の配線を介して増幅トランジスタ6のゲート電極15と電気的に接続される。このように、FD14が増幅部の入力部の一部を構成する。つまり、FD14には軟X線の入射により生じた電子が転送され、その電子の量に応じた増幅信号が出力される。このため、FD14を検出ノードと呼ぶこともできる。
【0079】
増幅トランジスタ6は、ゲート電極15、ソース領域16、及びドレイン領域17を含んで構成されるMOSトランジスタである。ソース領域16及びドレイン領域17はN型半導体領域で構成される。すなわち、増幅トランジスタ6はNチャネル型のMOSトランジスタである。増幅トランジスタ6のゲート電極15は、増幅部の入力部の一部を構成する。ドレイン領域17は不図示の電源部に電気的に接続される。
【0080】
本実施例では、分離部7は絶縁体分離である。分離部7は、変換部3と、隣接する検出ユニットの変換部(不図示)とを電気的に分離している。さらに分離部7は、変換部3と回路部4とを分離している。また、分離部7は回路部4において、複数のトランジスタを互いに電気的に分離してもよい。分離部7の下部にP型半導体領域が配されてもよい。分離部7は例えばSTI(Shallow Trench Isolation)である。
【0081】
また、図2には示されていないが、半導体基板2に所定の電圧を供給するための半導体領域が配されてもよい。さらに、電源電圧を供給するための半導体領域が配されてもよい。電源電圧を供給するための半導体領域は増幅トランジスタのドレイン領域であってもよい。
【0082】
図4は、本実施例の軟X線検出装置100の検出ユニット1の等価回路を示す。図2と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
検出ユニット1は、さらにリセットトランジスタ8、選択トランジスタ9を含む。変換部3であるフォトダイオードのアノードが、転送トランジスタ5を介してノード201に接続される。検出ノード201は図2のFD14及び増幅トランジスタ6のゲート電極15に対応するノードである。本実施例では、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15とが互いに接続されているので、両方が同一の検出ノード201に対応する。つまり、検出ノード201は増幅部の入力ノードでもある。
【0084】
リセットトランジスタ8のドレインには電源電圧VDDが供給され、リセットトランジスタ8のソースは検出ノード201に接続される。リセットトランジスタ8は、そのゲートに供給される電圧に応じて、検出ノード201の電圧をリセットする。リセットトランジスタ8は例えばNチャネル型のMOSトランジスタである。
【0085】
選択トランジスタ9のドレインは増幅トランジスタ6のソースに接続され、選択トランジスタ9のソースは不図示の出力線に接続される。選択トランジスタ9のゲートに供給される電圧によって選択トランジスタ9がオンすると、検出ノード201の電圧に応じた信号が出力線に出力される。つまり、1つの出力線に複数の検出ユニット1からの信号が出力される場合に、選択トランジスタ9によって信号を出力する検出ユニットを選択することが可能である。
【0086】
リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は必要に応じて省略される。例えば、非選択とする検出ユニットの検出ノード201の電圧を制御することで増幅トランジスタ6をオフにすれば、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、リニアセンサにおいては、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、変換部3がフォトトランジスタであり、発生した電荷を光電流として読み出す場合には、リセットトランジスタ8は省略することができる。
【0087】
続いて、各トランジスタの回路部4の内部での位置関係について説明する。本実施例において、検出ユニット1の回路部4には、転送トランジスタ5、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9が配される。
【0088】
例えば図1に示された検出ユニット1bの回路部4bにおいて、増幅トランジスタ6bは検出ユニット1cに近い領域に配されている。また、検出ユニット1cの回路部4cにおいて、リセットトランジスタ8cは検出ユニット1bに近い領域に配されている。結果として、増幅トランジスタ6bと、リセットトランジスタとが1マイクロメートルより近接して配されている。このように、本実施例では、異なる検出ユニットに属する複数のトランジスタが、互いに第1の距離dより近接して配されている。第1の距離dは、電荷発生領域を内包する最小の球の直径、あるいは、上述の式(1)で表される距離である。
【0089】
なお、検出ユニット1における変換部3及び回路部4は、検出ユニット1の平面構造に基づいて決まる。検出ユニット1において、転送トランジスタ5(転送ゲート電極13及びFD14)、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9が配された領域が回路部4である。ここで、変換部3の境界は、例えばN型半導体領域11の境界である。ただし、N型半導体領域11が他の素子の下部に延在している場合には、当該他の素子の端が変換部3の境界である。そして、当該他の素子が配された領域は回路部4である。例えば、N型半導体領域11が転送ゲート電極13の下部に延在している場合には、転送ゲート電極13の端が変換部3の境界である。そして転送ゲート電極13が配された領域は回路部4である。
【0090】
以上に述べた通り、本実施例の軟X線検出装置100は、互いに隣接する2つの変換部3の間に第1導電型のトランジスタが配されず、そして、分離部7が配される。このような構成によれば、変換部3における排出領域(図12の第2の領域1202に対応する領域)の面積を低減することができる。したがって、電荷が排出される可能性を低減することができるので、正確な軟X線検出が可能となる。
【0091】
また、本実施例の軟X線検出装置100は、互いに隣接する2つの検出ユニット1a、1bにおいて、一方の検出ユニット1aに含まれるトランジスタと、他方の検出ユニット1bに含まれるトランジスタとが、第1の距離dよりも近接して配される。このような構成によれば、排出領域(図3の312〜314、あるいは図12の第2の領域1202に対応する領域)の面積を低減することができる。したがって、電荷が排出される可能性を低減することができるので、軟X線の検出の正確性が向上する。
【0092】
[実施例1の変形例]
次に、実施例1の各部位の変形例を説明する。以下で述べる変形例は、適宜組み合わせることができる。さらに、これらの変形例は後述の実施例2〜9についても適用可能である。
【0093】
実施例1では、電子が信号電荷となる構成を例に説明したが、ホールが信号電荷となる構成としてもよい。ホールが信号電荷となる構成では、半導体領域の導電型が本実施例とは反対になる。例えば、埋め込み型のフォトダイオードは、表面側からN型半導体領域、P型半導体領域、N型半導体領域が順に配された構造となる。そして、軟X線によって発生した電荷がP型半導体領域に収集される。また、FD14はP型半導体領域を含んで構成される。
【0094】
また、この場合は、二つの隣接するP型半導体領域の間に、トランジスタを構成する半導体領域のうち、同じ導電型であるP型半導体領域が配されないことが重要である。信号電荷がホールの場合、P型半導体領域が排出部となりえるからである。
【0095】
半導体基板2は、シリコン基板に限らず、ゲルマニウム基板、ガリウムヒ素基板などの各種の半導体基板が用いられる。半導体基板2はP型の基板、N型の基板のいずれでもよい。半導体基板2はエピタキシャル成長によって形成された基板であってもよい。あるいは、半導体基板2はSOI(Silicon On Insulator)基板であってもよい。また、必要に応じて半導体基板2にP型のウェル、またはN型のウェルが配されてもよい。ウェルが配された場合には、ウェルの内部に、変換部3や増幅トランジスタ6を構成する半導体領域が配される。
【0096】
実施例1では、転送トランジスタ5の転送ゲート電極13には、転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。さらに、オンに対応する電圧とオフに対応する電圧との中間の電圧が印加されてもよい。あるいは、N型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルを一定に制御するように固定の電圧が印加されるのみでもよい。なお、転送トランジスタ5は必須の構成ではなく、必要に応じて省略される。転送トランジスタ5が省略される場合には、例えば変換部3のN型半導体領域11が増幅トランジスタ6のゲート電極と接続される構成となっていればよい。この場合FD14を省略してもよい。
【0097】
FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との電気的な接続は、例えば、金属配線、金属配線とFD14とを接続するコンタクトプラグ、及び金属配線とゲート電極15とを接続するコンタクトプラグによって構成される。あるいは、ゲート電極15とFD14とが直接接触していてもよい。または、FD14とゲート電極15との両方に接続される共通のコンタクトプラグによって、FD14とゲート電極15とが接続されてもよい。コンタクトプラグは例えばタングステンで構成される。
【0098】
また、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との間の電気的経路にスイッチが配されてもよい。このような構成においては、FD14が電子を一時的に保持することが可能となる。すなわち、FD14が検出ユニットごとに配された電荷保持部として機能してもよい。
【0099】
実施例1では、増幅トランジスタ6としてMOSトランジスタが用いられた。しかし、増幅トランジスタとしては、バイポーラトランジスタ、接合型電界効果トランジスタ(JFET)、静電誘導型トランジスタ(SIT)などの各種の能動素子を用いることができる。また、実施例1では、増幅トランジスタ6はソースフォロア回路を構成する。しかし、増幅部はこのような構成に限られない。例えば、MOSトランジスタを用いた反転増幅回路、演算増幅器を用いたボルテージフォロアなどが用いられる。
【0100】
図2において、選択トランジスタ9は、増幅トランジスタ6のソースと不図示の出力線との間の電気的経路に配された。しかし、選択トランジスタ9が増幅トランジスタ6のドレインと電源との間に配されてもよい。選択トランジスタ9が省略されてもよい。
【0101】
FD14、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は、複数の検出ユニット1で共有されてもよい。例えば、複数の検出ユニット1の変換部3のそれぞれに対して転送ゲート電極13が配され、各変換部3の電子が独立に共通のFD14に転送される構成であってもよい。この場合、複数の検出ユニット毎に、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9が1つずつ配されればよい。複数の検出ユニットがこれらの素子を共有することによって、変換部3に対する回路部4の割合を小さくできる。そのため、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0102】
軟X線を吸収する吸収部が、半導体基板2の軟X線の入射する主面とは反対側の主面に配されていてもよい。吸収部は半導体基板2を透過した軟X線を吸収することによって、半導体基板2を透過した軟X線が軟X線検出装置の他の部分に及ぼす可能性を低減することができる。
【0103】
図2において、分離部7がSTIである例を説明した。しかし、分離部7はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)分離であってもよい。STIやLOCOS分離などで用いられる酸化膜の下部に、変換部の電荷が蓄積される領域とは反対導電型の半導体領域が配されてもよい。あるいは、分離部7は、酸化膜を用いないPN接合分離であってもよい。また、これらの素子分離構造が併用されてもよい。
【0104】
PN接合分離が用いられる場合や、酸化膜の下部に反対導電型の半導体領域が配される場合、N型半導体領域11に接するようにP型半導体領域が配される。この構成では、N型半導体領域とP型半導体領域との両方にわたって空乏層が伸びる。P型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分は変換部3の一部であると考えてもよい。つまり、ある場所で発生した電荷が所定の領域に収集されるならば、その場所は変換部3の一部であってもよい。
【0105】
変換部3の上に、特定の波長の電磁波を遮蔽するフィルターが配されてもよい。これによって、変換部3に主として検出したい波長帯の軟X線が入射するので、より高精度に軟X線を検出することができる。
【0106】
実施例1では、トランジスタのゲート電極が配された側の主面から変換部に軟X線が入射する構成について説明した。しかし、トランジスタのゲート電極が配された側の主面とは反対側から変換部に軟X線が入射する構成、いわゆる裏面照射型の構成でもよい。
【実施例2】
【0107】
本発明に係る第2の実施例の軟X線検出装置500について図面を用いて説明する。図5は軟X線検出装置500の平面構造を示す概略図である。実施例1とは、検出ユニット501における変換部503と回路部504との配置が異なる。そのほかの部分については、実施例1あるいは実施例1の変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0108】
本実施例においては、検出ユニット501b及び検出ユニット501cが並ぶ方向と、検出ユニット501e及び検出ユニット501fが並ぶ方向とが、いずれも第1方向に沿った方向である。そして、検出ユニット501bと検出ユニット501cとは、互いに隣接して配されている。また、検出ユニット501eと検出ユニット501fとは、互いに隣接して配されている。
【0109】
さらに、検出ユニット501b及び検出ユニット501eが並ぶ方向と、検出ユニット501c及び検出ユニット501fが並ぶ方向とが、いずれも第2方向に沿った方向である。そして、検出ユニット501bと検出ユニット501eとは、互いに隣接して配されている。また、検出ユニット501cと検出ユニット501fとは、互いに隣接して配されている。
【0110】
第1方向と第2方向とは互いに交差する方向である。本実施例では、第1方向と第2方向とが直交しているが、必ずしも直交している必要はない。
【0111】
このように、本実施例では検出ユニット501b、501c、501e、501fが2行2列の行列を構成している。そして、これらの検出ユニット501b、501c、501e、501fの変換部503b、503c、503e、503fの間には第1導電型のトランジスタが配されず、分離部が配されている。一方で、回路部504b、504c、504e、504fは、2行2列に配された変換部503b、503c、503e、503fをとり囲むように配される。
【0112】
そして、検出ユニット501b、501c、501e、501fのように2行2列に配列された検出ユニットのブロックが、さらに複数繰り返し配されている。例えば、検出ユニット501a及び検出ユニット501dは、隣のブロックに属する検出ユニットである。
【0113】
以上に述べた通り、本実施例の軟X線検出装置500では、互いに隣接する2行2列の変換部の間に第1導電型のトランジスタが配されず、分離部が配される。このような構成によれば、電荷発生領域512が4つの変換部503b、503c、503e、503fにわたって広がる場合でも、各変換部から電子を読み出すことができる。これによって、ほとんどの電子を読み出すことが可能になるため、正確な軟X線検出が可能となる。
【0114】
また、回路部504の内部でのトランジスタの配置は特に限定されない。例えば、回路部504bに含まれるトランジスタのそれぞれと、隣接する検出ユニットに含まれるトランジスタのいずれかとが、第1の距離dより近接して配されてもよい。外側に回路部が配された検出ユニットのブロックが繰り返し配されるために、上述のトランジスタの配置が可能である。
【0115】
このような構成によれば、より多くのトランジスタが、別のトランジスタと第1の距離dよりも近接して配される。このため、上述の排出領域の重なりが大きくなり、結果として全体の排出領域の面積を小さくすることができる。つまり、図12の第1の領域1201に相当する領域の面積の比率を大きくし、第2の領域1202に相当する領域の面積の比率を小さくすることができる。したがって、電荷が排出される可能性を低減することができるので、軟X線の検出の正確性を向上させることができる。
【実施例3】
【0116】
本発明に係る第3の実施例の軟X線装置600について図面を用いて説明する。図6は軟X線検出装置600の平面構造を示す概略図である。実施例1とは検出ユニット601における変換部603と回路部604との配置が異なる。そのほかの部分については、実施例1または実施例1の変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
本実施例においては、検出ユニット601a〜601cが並ぶ方向と、検出ユニット601d〜601fが並ぶ方向と、検出ユニット601g〜603iが並ぶ方向とが、いずれも第1方向に沿った方向である。そして、第1方向に沿って並んだ複数の検出ユニット601においては、隣接する2つの変換部603の間に、トランジスタが配されず、分離部が配されている。
【0118】
第1方向と交差する第2方向においては、検出ユニット601bの変換部603bと検出ユニット601hの変換部603hとの間に検出ユニット601eの変換部603eが配される。このうち、変換部603eと変換部603hとの間には、回路部604e及び回路部604hが配される。一方、変換部603eと変換部603bとの間には、トランジスタが配されず、分離部が配されている。この点が、実施例1と相違する部分である。
【0119】
変換部603a、603d、603gの間も、変換部603b、603e、603hと同様になっている。さらに、変換部603c、603f、603iの間も、変換部603b、603e、603hと同様になっている。
【0120】
つまり、本実施例では、行列を構成するように配された複数の検出ユニット601a〜601iにおいて、行ごと(あるいは列ごと)に変換部603と回路部604の位置関係が反対になっている。そのため、ある検出ユニットに対して第2方向において隣接する2つの検出ユニットについて、一方とは変換部603同士が近接して配され、他方とは回路部604同士が近接して配される。例えば、603bと603eとが近接して配され、回路部604eと604hとが近接して配される。
【0121】
このような構成によれば、電荷発生領域612が4つの変換部603b、603c、603e、603fにわたって広がる場合でも、各変換部から電子を読み出すことができる。したがって、ほとんどの電子を読み出すことが可能になるため、正確な軟X線検出が可能となる。
【0122】
さらに、本実施例では回路部604同士が近接して配される。そのため、回路部604に配されたトランジスタは、いずれも隣接する検出ユニットのトランジスタと第1の距離dよりも近接して配されうる。このような構成によれば、上述の排出領域の面積を小さくすることができるため、電荷が排出される可能性を低くし、正確な軟X線の検出を行うことができる。
【実施例4】
【0123】
本発明に係る第4の実施例の軟X線検出装置700について図面を用いて説明する。図7は軟X線検出装置700の平面構造を示す概略図である。図6において、図1と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例では、軟X線を遮蔽する遮蔽部701が回路部4と重なるように配された点が、実施例1〜3とは異なる。そのほかの点は、実施例1〜3のいずれか、または実施例1の変形例と同様であるので説明は省略する。
【0124】
図7が示す通り、回路部4の上に遮蔽部701が配される。半導体基板2の主面に対して垂直な方向に遮蔽部701が射影された場合に、遮蔽部701の一部または全部が回路部4の一部または全部に射影される。つまり、遮蔽部701は回路部4の一部または全部と重なって配される。別の言い方をすれば、遮蔽部701が回路部4の一部または全部を覆っている。以下、特に断りがない限り、「2つの部材が重なって配される」とは、半導体基板2の主面に対して垂直な方向に一方の部材が射影された場合に、当該一方の部材の少なくとも一部が他方の部材の少なくとも一部の領域に射影されることを言う。このとき、2つの部材が接触していてもよい。あるいは、2つの部材の間に別の部材が配されていてもよい。なお、本明細書において、半導体基板2の主面は、例えば、半導体材料で形成される層と他の材料(例えば絶縁体)との界面である。
【0125】
図8は、図7の線CDに沿った断面の概略図である。図2と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0126】
遮蔽部701は、増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配された部分を含む。検出ユニットがトランジスタを含む場合、当該トランジスタのゲート電極を含む配線層は導電部材のレイアウトが制約される場合がある。そのため、ゲート電極を含む配線層だけでは遮蔽性能を向上させることが困難な場合が多い。
【0127】
そこで、本実施例においては、ゲート電極が配された配線層よりも上の層において、回路部4を遮蔽する遮蔽部701が配される。これによって、軟X線に対する遮蔽性能を向上させることが可能となる。なお、ゲート電極を含む配線層より上の層とは、ゲート電極を含む配線層より、半導体基板からの距離が遠い層である。
【0128】
遮蔽部701は、回路部4に入射し得る軟X線の一部もしくは全部を遮蔽する。遮蔽部701が回路部4に入射し得る軟X線の全てを遮蔽する必要はない。遮蔽部701によって、回路部4に入射し得る軟X線の少なくとも一部が遮蔽されればよい。例えば、所定の割合の軟X線が遮蔽部701を透過してもよい。また、回路部4の一部が遮蔽部701によって覆われなくてもよい。
【0129】
遮蔽部701を透過しない軟X線は必ずしも遮蔽部701に吸収される必要はない。たとえば、軟X線の一部が散乱、回折、あるいは反射された結果、軟X線の回路部4への入射が抑制されればよい。また散乱や回折、反射等によって、軟X線が変換部3へ入射してもよい。
【0130】
好適には、遮蔽部701を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数は、アルミニウム及び銅の軟X線に対する遮蔽係数よりも高い。または、好適には、遮蔽部701を構成する材料は原子番号が70以上の元素を含む。一般には原子番号が大きい元素ほど、軟X線に対する遮蔽能力が高くなるからである。
【0131】
遮蔽係数は例えば以下の方法で測定することができる。まず測定対象となる材料で所定の厚さの膜を形成する。この膜に所定の量(強度)の軟X線を照射する。膜を透過した軟X線の量(強度)を測定することによって、膜に遮蔽された軟X線の量を測定する。そして、照射した軟X線の量に対する遮蔽された軟X線の量の比を遮蔽係数とする。つまり、透過する軟X線の量が多い材料ほど遮蔽係数が低く、逆に透過する軟X線の量が少ない材料ほど遮蔽係数が高い。異なる材料の間で比較する場合には、同じ厚さの膜を形成して透過する軟X線の量を比較する。あるいは遮蔽された軟X線の量を膜の厚さで規格化して比較してもよい。なお、膜に遮蔽された軟X線とは、膜を透過しない軟X線のことである。例えば、膜が軟X線を吸収し、反射させ、回折させ、あるいは散乱させることによって、軟X線が膜を透過しないことが考えられる。
【0132】
本実施例における遮蔽部701の構造をより詳細に説明する。遮蔽部701は転送トランジスタ5及び増幅トランジスタ6と重なるように配される。遮蔽部701は増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配される。遮蔽部701は回路部4に向かって照射された軟X線を遮蔽する。遮蔽部701を構成する材料はタンタルである。遮蔽部701の膜厚は0.5〜1.0マイクロメートルであることが好ましい。遮蔽部701の膜厚が0.5マイクロメートルより小さいと、遮蔽性能が十分に得られない可能性がある。一方、遮蔽部701の膜厚が1.0マイクロメートルより大きいと、強い応力が生じるために遮蔽部701を形成することが困難になる。もちろん、必要に応じて、遮蔽部701の膜厚が0.5〜1.0マイクロメートルの範囲以外の膜厚となっていてもよい。なお、遮蔽部701が必ずしも照射された軟X線の全部を遮蔽する必要はなく、回路部に入射しうる軟X線の量を低減すればよい。
【0133】
続いて遮蔽部701を構成する材料の遮蔽性能について説明する。例としてタンタルとアルミニウムとの間で軟X線の透過率を比較する。10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、アルミニウムの単位厚さあたりの透過率に対する、タンタルの単位厚さあたりの透過率の比が100%よりも小さい。つまり、10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、タンタルの透過率のほうがアルミニウムの透過率よりも低い。これは、タンタルの遮蔽係数がアルミニウムの遮蔽係数よりも高いことを示している。また、タンタルの遮蔽係数は銅の遮蔽係数よりも高い。タンタルのように、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料で遮蔽部701を構成することによって、軟X線に対して回路部4を十分に遮蔽することができる。
【0134】
特に、5keV以下の軟X線に対するタンタルの遮蔽係数は、アルミニウムの遮蔽係数の2倍以上である。例えば、5keV以下の軟X線に対して同等の遮蔽性能を得るために、タンタルで構成される遮蔽部701の厚さはアルミニウムで構成される場合に比べて半分でよい。遮蔽部701が厚いと大きな応力が生じるので、装置の信頼性が低下する可能性がある。したがって、遮蔽部701がアルミニウムに比べて遮蔽係数が高い材料で構成されることは、遮蔽性能と信頼性のバランスを最適化する上で有利である。
【0135】
遮蔽部701を構成する材料は、タンタルに限られない。遮蔽部701を構成する材料は、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料であれば好ましい。もしくは、遮蔽部701を構成する材料は、原子番号70以上の元素であれば好ましい。半導体プロセスとの整合性を考慮すると、タンタル、タングステン、金などが挙げられる。または、タンタル、タングステン、または金が主成分となっている合金であってもよい。もちろん半導体プロセスとの整合性の面では、アルミニウムや銅で遮蔽部701を構成してもよい。なお、本明細書において、主成分とは化合物あるいは混合物に含まれる成分のうち組成比あるいは構成比が最も多い成分である。
【0136】
また、遮蔽部701は単層である必要はない。間にシリコン酸化膜等の絶縁膜を挟んだ多層構成でも構わない。多層構造の場合、応力を下げるために各層の膜厚を小さくしても高い遮蔽性能を達成できる。多層構造の場合に、回路部4の一部の上には第1層の遮蔽部701が配され、第1層とは別の第2層の遮蔽部701は配されず、一方で、回路部4の別の一部の上には第2層の遮蔽部701が配される構造でもよい。このように層ごとに回路部4の遮蔽される領域が異なることで、レイアウトの自由度が向上する。また、遮蔽部701を構成する材料が導電体である場合には、遮蔽部701が配線の機能を備えていてもよい。例えば、遮蔽部701が各トランジスタを接続したり、半導体基板2や回路部4に電源を供給したりしてもよい。
【0137】
図7において、遮蔽部701は回路部4の全部の領域に重なって配されている。しかし、遮蔽部701が回路部4の一部の領域だけの上に配されていてもよい。つまり、回路部4のうち、一部の領域の上には回路部4が配されていなくてもよい。例えば、遮蔽部701が、転送ゲート電極13及びFD14の上には配されていなくてもよい。または、遮蔽部701が変換部3に隣接する分離部7の上には配されていなくてもよい。あるいは、遮蔽部701は増幅トランジスタ6のみを覆うように配されていてもよい。または、遮蔽部701はリセットトランジスタ8のみを覆うように配されていてもよい。
【0138】
遮蔽部701は回路部4のより多くの部分と重なって配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。遮蔽部701が回路部4の全部と重なって配される場合には、さらに正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。
【0139】
また、回路部4のうち変換部3に近い領域の上にのみ遮蔽部701が配されていてもよい。回路部4のなかでも特に変換部3に近い領域と重なって遮蔽部701が配されていれば、正確性を十分に向上させることができる。これは、変換部3に近い領域に軟X線が入射すると、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が排出される可能性が高いからである。
【0140】
回路部4のなかでも変換部3から遠い領域の上には、遮蔽部701が配されなくてもよい。変換部3から遠い領域に軟X線が入射した場合には、発生したすべての電荷が排出される可能性が高いからである。具体的には、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域の上には、遮蔽部701が配されていなくてもよい。この理由は、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域で電子が発生したとしても、その電子が変換部3に収集される可能性はほとんどないからである。例えば、回路部4のうち変換部3から所定の距離より遠い領域の上に遮蔽部701を配さないことによって、配線やコンタクトプラグのレイアウトの自由度を向上させてもよい。
【0141】
回路部4に配される素子によって、遮蔽されたほうが良い素子と、遮蔽が必要でない素子を区別してもよい。例えば、電荷が排出されてしまう領域、及びその近傍の領域の上に、遮蔽部701が配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。このような領域には電源部や電源部と電気的に接続された半導体領域などが挙げられる。一方で、電荷が蓄積される領域の上には遮蔽部701が配されなくてもよい。例えばFDや容量素子の上には遮蔽部701が配されなくてもよい。
【0142】
従来のCCD型の軟X線用撮像装置は検出ユニットに回路部を有していないため、増幅部を含む回路部の遮光構造については検討されていない。上述のように、検出ユニットが増幅部を含む場合の遮蔽構造を工夫することによって、より正確な軟X線検出を可能にすることができる。
【0143】
図7では省略されているが、遮蔽部701とは別に複数の配線層が配されてもよい。各配線層には各トランジスタやFD14を接続するための導電部材、電源電圧やグラウンド電圧を供給するための導電部材が配される。導電部材は、例えばアルミニウムや銅で形成される。特に、導電部材には遮蔽部701を構成する材料よりも電気伝導度の高い材料が用いられてもよい。アルミニウムや銅はタンタルに比べて電気伝導度が高い。複数の配線層の間には、層間絶縁膜が配される。層間絶縁膜によって複数の配線層に配された導電部材が互いに絶縁される。導電部材と層間絶縁膜の間には、必要に応じてバリアメタルとして機能する導電体が配されうる。バリアメタルにはチタンやチタン合金、タンタルやタンタル合金、チタンやチタン合金が用いられる。遮蔽部701とバリアメタルとに同じ材料(例えばタンタル)が用いられる場合、遮蔽部701がバリアメタルより厚いほうがよい。
【0144】
遮蔽部701を配線として用いることもできる。つまり、遮蔽部701が信号を伝達してもよいし、電源電圧を供給してもよい。このように配線が遮蔽部701の機能を兼ねる場合には、当該配線が他の配線を構成する材料よりも軟X線の遮蔽性能の高い材料を含んで構成されることが好ましい。あるいは、遮蔽部701の機能を兼ねる配線の厚さを、他の配線より厚くすることが好ましい。
【0145】
遮蔽部701の効果について、図12を用いて説明する。図12(c)には、本実施例の画素ユニットが示されている。図12(c)に示された遮蔽部1205が図7の遮蔽部701に相当する。遮蔽部1205は、第1の領域1201に対応した位置に開口1204を有する。
【0146】
この軟X線検出装置で1000回の軟X線検出を行うと、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射する。そして、約900回の検出においては、軟X線が入射したことが検出されない。これは、第1の領域1201以外の領域に入射しうる軟X線が、遮蔽部1205によって遮蔽されるからである。この結果、信号が出力される確率は小さくなる。しかし、出力された信号のほとんどが、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映した信号である。したがって、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0147】
図12(c)では、第2の領域1202はすべての領域が遮蔽部1205に覆われている。このような構成においては本発明の効果が高い。しかし、第2の領域1202の一部の領域は、遮蔽部1205に囲まれていなくてもよい。例えば、第2の領域1202のうち変換部3は遮蔽部1205に覆われていなくても効果を得ることができる。これは、第2の領域1202であっても変換部3の中心に近い場所に軟X線が入射すれば、発生した電子のほとんどを変換部3に収集し、信号として読み出すことが可能だからである。排出された電子の分だけ、得られる測定結果は実際に入射した軟X線のエネルギーとは異なる。それでも、この差が誤差として許容可能な範囲内であれば、電荷の一部が排出されてもよい。つまり、遮蔽部1205を配する領域は、軟X線検出装置に求められる性能に応じて適宜選択すればよい。なお、第3の領域1203と重なる位置には、遮蔽部1205が配されていなくてもよい。
【0148】
遮蔽部701による効果を説明するための比較例として、軟X線が半導体基板2の全面に一様に照射される軟X線検出装置を考える。比較例の軟X線装置では、変換部3に入射した軟X線801に基づく信号、すなわち軟X線のエネルギーが正確に反映された信号と、回路部4に入射した軟X線803に基づく信号、すなわち軟X線のエネルギーが正確に反映されていない信号とが出力される。前述の2つの信号の統計的な割合は、変換部3と回路部4との面積の比やレイアウトに基づいて決まる。検出ユニットごとに増幅トランジスタ6が配される軟X線検出装置では、回路部4の面積をゼロにすることは困難である。また、先に説明したが、出力された信号からは、変換部3に入射した軟X線801に基づく信号であるか、回路部4に入射した軟X線803に基づく信号であるかを判定することは困難である。
【0149】
まとめると、軟X線検出装置においては、軟X線が入射した位置に応じて、軟X線の情報が正確に反映された信号と、正確に反映されていない信号が出力されうる。本実施例の構成によれば、このうち、軟X線の情報が正確に反映された信号が出力される割合を増やすことができる。結果として、軟X線の検出の正確性をさらに高めることが可能となる。
【0150】
また、アルミニウム及び銅と比べて遮蔽係数の高い材料で遮蔽部701を構成することによって、正確な軟X線の検出を行うことが可能となる。また、原子番号が70以上の材料であれば、遮蔽部701の材料として十分な程度の遮蔽係数を有している。したがって、原子番号が70以上の材料で遮蔽部701を構成することによって、正確な軟X線の検出を行うことが可能となる。
【0151】
なお、図7では図1と同様のレイアウトが示されている。しかし、遮蔽部701を実施例2(図5)や実施例3(図6)の構成に適用することもできる。
【実施例5】
【0152】
本発明に係る第5の実施例の軟X線検出装置900について説明する。図9は軟X線検出装置900の検出ユニット1の平面構造を示す概略図である。図7(実施例4)と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例5では、遮蔽部901の配置が実施例4とは異なっている。以下では、実施例4と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例4と共通の構成とすることができる。
【0153】
実施例5では、遮蔽部901の一部が変換部3の上に配される。以下の説明では、遮蔽部901について、変換部3の上に配された部分を第1部分901a、回路部4の上に配された部分を第2部分902bと呼ぶ。
【0154】
第1部分901aは変換部3のうち回路部4に近い領域の上に配される。第1部分901aと第2部分901bとは連続して配されてもよい。つまり、1つの層として配された遮蔽部901が、回路部4の上から変換部3の上にまで延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分901aと第2部分901bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0155】
あるいは、第1部分901aと第2部分901bとが別の層として配されていてもよい。つまり、半導体基板2の表面から第1部分901aまでの距離と、該表面から第2部分901bまでの距離が異なっていてもよい。この場合に、第1部分901a及び第2部分901bが、互いに重なるように延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分901aと第2部分901bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0156】
また、別の層に配された第1部分901aと第2部分901bとを接続する部分が、遮蔽部901に含まれてもよい。これによって、第1部分901aと第2部分901bとが重なっていなくても、遮蔽性能を高めることができる。もちろん、第1部分901aと第2部分901bとが互いに分離されていてもよい。
【0157】
図9が示す通り、変換部3のうち、変換部3と回路部4との境界から第3の距離L以内の領域は、全て第1部分901aで覆われてもよい。あるいは、回路部4のトランジスタの配された領域から第3の距離L以内の領域がすべて第1部分901aで覆われていてもよい。
【0158】
変換部3のうち、境界から第3の距離Lより離れた領域の上には、遮蔽部901が全く配されていなくてもよいし、一部に遮蔽部901の第1部分901aが配されてもよい。
【0159】
次に本実施例の効果について説明する。本実施例では、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から第3の距離L以内の領域に、遮蔽部901の第1部分901aが配される。これによって、境界付近に入射する軟X線を遮蔽することができる。結果として、電荷発生領域が回路部にまで広がる位置に軟X線が入射する可能性を低減することができる。入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合が減少するので、より正確に軟X線を検出することが可能となる。
【0160】
さらに、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から第3の距離L以内の全ての領域の上に第1部分901aが配されれば、変換部3に入射した軟X線602によって発生する電子をほぼすべて収集することが可能になる。つまり、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合をさらに低減することができる。このように、変換部3の上に遮蔽部901を配することによって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0161】
第3の距離Lは必要に応じて設定すればよい。例えば、検出したいエネルギーの軟X線が半導体基板2に入射したときの電荷発生領域のサイズに基づいて、第3の距離Lを決定することができる。第3の距離Lが電荷発生領域の平均的な半径よりも大きければ、高い遮蔽性能が期待される。具体的には、電荷発生領域を包含する最小の球を想定し、その球の半径よりも大きいLを設定するとよい。
【0162】
あるいは、変換部3のサイズに基づいて第3の距離Lを決定してもよい。変換部3のサイズに対して第3の距離Lを小さくすれば、感度を落とすことがない。第3の距離Lが大きいと回路部4への電子の排出を抑制する効果が高くなるが、同時に軟X線が変換部3に入射する確率も下がる。つまり、軟X線検出の感度と正確性とはトレードオフの関係にある。したがって、必要とされる性能に応じて、第3の距離Lは適宜設定される。具体例として、検出する軟X線のエネルギーが10keV以下であって、検出ユニットサイズが約10マイクロメートルの場合、第3の距離Lは0.1〜2.0マイクロメートルの範囲であればよい。必要に応じて、第3の距離Lがこの範囲以外の値であってもよい。
【0163】
あるいは、第3の距離L(マイクロメートル)が以下の式(3)によってあらわされてもよい。ただし、E(keV)は入射する軟X線のエネルギーである。
【0164】
【数3】

【0165】
なお、境界から第3の距離L以内の領域の上に、遮蔽部901が配されていなくてもよい。変換部3のどの領域の上に第1部分901aを配するかは、必要に応じて変更することができる。
【0166】
本実施例では、N型半導体領域11と重なるように遮蔽部901が配された。しかし、実施例1の変形例で説明したように、N型半導体領域11と平面方向に隣接するP型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分が変換部3の一部であってもよい。このような場合、必ずしもN型半導体領域11と重なるように遮蔽部901を配さなくても、第3の距離L以内の領域と重なるように遮蔽部901を配することができる。
【0167】
本実施例の検出ユニット1の等価回路、平面構造、及び断面構造は、実施例1〜3の検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例6】
【0168】
本発明に係る第6の実施例の軟X線検出装置1000について説明する。図10は軟X線検出装置1000の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図2(実施例1)と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例6の検出ユニット1の平面構造は例えば実施例1と同様であり、図6は図1の線ABに沿った断面に相当する。
【0169】
実施例6では、半導体基板1001内部の構造が実施例1〜5とは異なっている。以下では、実施例1〜5と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1〜5のいずれかと共通の構成とすることができる。
【0170】
本実施例では半導体基板1001がN型のシリコン基板である。半導体基板1001に、P型ウェル1002が配される。P型ウェル1002は、変換部3に配された第1ウェル1002aと回路部4に配された第2ウェル1002bとを含む。変換部3を構成するN型半導体領域11、P型半導体領域12は第1ウェル1002aの内部に配される。N型半導体領域11は第1ウェル1002aとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、第1ウェル1002aが埋め込み型のフォトダイオードを構成している。転送トランジスタ5、増幅トランジスタ6の各半導体領域は第2ウェル1002bに配される。なお、便宜的に第1ウェル1002a及び第2ウェル1002bという二つのウェルについて説明したが、実際には両者が1つの半導体領域であってもよい。もちろん、2つの半導体領域が第1ウェル1002a及び第2ウェル1002bに対応していてもよい。
【0171】
本実施例の1つめの特徴は、各半導体領域が配されたP型ウェル1002の下に、反対導電型であるN型の半導体領域(半導体基板1001)が配されたことである。2つめの特徴は、第1ウェル1002aの下端が第2ウェル1002bの下端よりも深い位置にあることである。本明細書においては、転送ゲート電極13や、増幅トランジスタ6のゲート電極15が配された側の主面810が深さの基準である。半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが浅く、当該主面810から遠いほうが深い。上下については、半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが上、当該主面810から遠いほうが下とする。また、半導体領域の下端とはP型ウェル1002と半導体基板1001とのPN接合面としてよい。
【0172】
このようなP型ウェル1002の製造方法について簡単に説明する。まずN型の半導体基板1001を用意する。次に、第1ウェル1002aに対応する位置に開口を有する第1マスクを形成する。第1マスクを用いたイオン注入により第1ウェル1002aを形成する。続いて、第2ウェル1002bに対応する位置に開口を有する第2マスクを形成する。第2マスクを用いたイオン注入により第2ウェル1002bを形成する。イオン注入のエネルギーを変えることで、下端の深さが異なる第1ウェル1002a及び第2ウェル1002bを形成することができる。
【0173】
別の形成方法としては、N型の半導体基板1001を用意し、P型ウェル1002が配される領域の全面に同じ深さのP型半導体領域を形成する。そして、第1ウェル1002aに対応する領域にだけ、最初に形成したP型半導体領域よりも深い位置にP型半導体領域を形成するためのイオン注入を行う。あるいは、第2ウェル1002bに対応する領域にだけ、カウンターでN型の不純物(ドナー)をイオン注入する。なお、これらの方法は一例であり、P型ウェル1002を形成するために他の公知の方法を用いてもよい。
【0174】
次に本実施例の効果について説明する。本実施例においては、P型ウェル1002の下部に、N型の半導体基板1001が配される。そのため、P型ウェル1002と半導体基板1001との境界付近では、電子がP型ウェル1002から半導体基板1001に向かうようなポテンシャル勾配が形成される。つまり、P型ウェル1002は半導体基板1001にある電子にとってのポテンシャル障壁となりうる。
【0175】
回路部4が遮蔽部701で覆われていても、例えば斜めに入射する軟X線1003が回路部4に入射し、回路部4で複数の電子が発生することが考えられる。つまり、回路部4が遮蔽部701で覆われていても、回路部4に近い領域が電荷発生領域1004に含まれる場合がある。本実施例の構造によれば、第2ウェル1002bの下端近傍や下端よりも深い位置で発生した電子は、ポテンシャル障壁のために変換部3に収集される可能性が低い。また、回路部4の第2ウェル1002bの下端は、浅い位置にある。そのため、回路部4の第2ウェル1002bの下端よりも浅い領域で発生した電子は、近くの電源部などに排出されやすい。つまり、回路部4で発生した電子は、いずれも変換部3に収集されることなく、電源部などに排出されやすいのである。一方、変換部3においては、第1ウェル1002aの下端が深い位置にある。そのため、変換部3で発生した電子は半導体基板1001に排出されにくい。
【0176】
先述の通り、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が別の場所に排出されると、軟X線のエネルギーを反映していない信号が出力されうる。発生した電子の全てを読み出すか、あるいは発生した電子の全てが排出されることで、エネルギーを正確に反映した信号を得ることができる。本実施例の構成によれば、変換部3に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが変換部3に収集される可能性を高くすることができる。そして、回路部4に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが排出される可能性を高くすることができる。したがって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0177】
なお、本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1〜5のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例7】
【0178】
本発明に係る第7の実施例の軟X線検出装置1300について説明する。図13は軟X線検出装置1300の検出ユニットの平面構造を示す概略図である。実施例1〜6のいずれかと同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0179】
本実施例における特徴部分は、第1検出ユニットに含まれる変換部3が、第1検出ユニットに隣接する第2検出ユニットの回路部4に含まれる第1導電型のトランジスタから第2の距離rよりも離間して配されたことである。
【0180】
図13においては、3行3列に配置された9つの検出ユニットが示されている。それぞれの検出ユニットにおいて、変換部3、回路部4、転送ゲート電極13、FD14が示されている。回路部4には増幅トランジスタなどの第1導電型のトランジスタが配される。また、変換部3や回路部4に含まれるトランジスタを電気的に分離する分離部7が配されている。
【0181】
図13が示すように、検出ユニット1bに含まれる変換部3bは、隣接する検出ユニット1aの回路部4aに配された第1導電型のトランジスタから第2の距離rよりも離間して配されている。さらに、変換部3bは、別の隣接する検出ユニット1cの回路部4cに配された第1導電型のトランジスタからも第2の距離rより離間して配されている。
【0182】
第2の距離rは、例えば電荷発生領域を内包する最小の球の半径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、第2の距離rは0.5マイクロメートルとすることができる。あるいは、第2の距離rが式(4)で表される距離であってもよい(Lの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(単位はkeV)。なお、式(4)は上述の式(2)と同じ式である。
【0183】
【数4】

【0184】
検出ユニット1は、転送トランジスタを含んでいてもよい。本実施例では、転送ゲート電極13及びFD14が転送トランジスタを構成している。回路部4には、転送トランジスタを除くトランジスタが配されている。つまり、変換部3は同じ検出ユニットに含まれる複数の第1導電型のトランジスタのうち、転送トランジスタを除くすべてのトランジスタから、第2の距離rより離間して配されてもよい。あるいは、本実施例においては、変換部3bが、同じ検出ユニット1bの回路部4bに含まれるすべての第1導電型のトランジスタから第2の距離rより離間して配されてもよい。
【0185】
以上に述べたように、変換部3が電荷の排出部となりうる第1導電型のトランジスタから離間して配置される。このような構成によれば、変換部3のうち排出領域となる部分の面積を小さくすることができる。したがって、発生した電荷の一部が排出される確率を低減することが可能となり、軟X線検出の正確性を向上させることができる。
【0186】
さらに、同じ検出ユニット内の変換部3と回路部4との間の領域に重なるように遮蔽部を設けてもよい。このような構成によれば、さらに軟X線検出の正確性を向上させることができる。
【0187】
なお、本実施例の検出ユニット1の等価回路及び断面構造は、実施例1〜6のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例8】
【0188】
本発明に係る第8の実施例の軟X線検出装置1400について説明する。図14は軟X線検出装置1400の検出ユニットの平面構造を示す概略図である。実施例1〜7のいずれかと同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0189】
本実施例では、隣接する変換部3の間にはいずれも第1導電型のトランジスタが配される。それらのトランジスタが隣接する検出ユニットのトランジスタと近接して配されることが特徴である。
【0190】
図1には6つの検出ユニット1a〜1fが示されている。このうち、検出ユニット1bを例に本実施例の平面構造について説明する。検出ユニット1bは変換部3と回路部1401〜1404を有する。変換部3は第1導電型の半導体領域を含む。また、回路部1401〜1404のそれぞれが、第1導電型のトランジスタを含む。
【0191】
回路部1401〜1404のそれぞれに含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニットのトランジスタとの位置関係は以下の通りである。回路部1401に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1aに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。また、回路部1401に含まれるトランジスタが、不図示の隣接する検出ユニットに含まれるトランジスタと、第1の距離dより近接して配されてもよい。
【0192】
同様に、回路部1402に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1cに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。また、回路部1402に含まれるトランジスタが、不図示の隣接する検出ユニットに含まれるトランジスタと、第1の距離dより近接して配されてもよい。
【0193】
回路部1403に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1aに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。また、回路部1403に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1eに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。
【0194】
回路部1404に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1cに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。また、回路部1404に含まれるトランジスタと、隣接する検出ユニット1eに含まれるトランジスタとが第1の距離dよりも近接して配される。
【0195】
回路部1401〜1404は、いずれも二つの変換部3の間に配されている。このように、本実施例では変換部の間に配されたトランジスタは、いずれも隣接する検出ユニットのトランジスタについて第1の距離dよりも近接して配される。
【0196】
第1の距離dは、1つの軟X線のフォトンが入射したことによって電子が発生する領域のサイズに基づいて決定される距離である。第1の距離dは、例えば1つの軟X線のフォトンが半導体基板に入射したことによって電子が発生する領域を内包する最小の球の直径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、第1の距離dは1マイクロメートルとすることができる。あるいは、第1の距離dが下記の式(4)を満たすものであってもよい(dの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(Eの単位はkeV)。なお、式(5)は上述の式(1)と同じ式である。
【0197】
【数5】

【0198】
なお、図14では、変換部3bと、変換部3bに隣接するすべての変換部3との間に第1導電型のトランジスタが配されている。しかし、図1や図5、図6に示される通り、隣接する変換部3の間に第1導電型のトランジスタが配されていなくてもよい。
【0199】
本実施例の軟X線検出装置1400は、図14が示す通り、互いに隣接する2つの検出ユニット1a、1bにおいて、一方の検出ユニット1aに含まれる第1導電型のトランジスタと、他方の検出ユニット1bに含まれる第1導電型のトランジスタとが、第1の距離dよりも近接して配される。このような構成によれば、排出領域(図12の第2の領域1202に対応する領域)の面積を低減することができる。したがって、電荷が排出される可能性を低減することができるので、軟X線の検出の正確性が向上する。
【0200】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び断面構造は、実施例1〜7のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例9】
【0201】
本発明に係る軟X線検出装置を含む軟X線撮像システムの実施例について図11を用いて説明する。本実施例の軟X線撮像システムは、実施例1〜7の軟X線検出装置100、500、600、700、900、1000、1300のいずれかを有する。軟X線撮像システムは、さらに軟X線検出装置からの信号を処理する信号処理回路1101、軟X線検出装置を駆動するための駆動回路1102を有する。信号処理回路1101や駆動回路1102には固体撮像装置に適用しうる公知の回路を用いることができる。信号処理回路1101の一部または全部、及び駆動回路1102の一部または全部が1つの半導体基板に配されてもよい。あるいは、信号処理回路1101、または駆動回路1102が、軟X線検出装置の有する半導体基板とは別の半導体基板に配されてもよい。
【0202】
また、軟X線撮像システムは、推進装置を備えていてもよい。例えば、推進装置は衛星軌道上に配された軟X線検出システムの位置を制御するものである。あるいは、推進装置は地球の地表から衛星軌道上に軟X線検出システムを移動させるためのロケットエンジンであってもよい。これらの推進装置は着脱可能であってもよい。
【0203】
このような軟X線撮像システムの駆動方法の例について説明する。軟X線のエネルギーを測定する目的の場合には、1回の蓄積期間に1つの検出ユニットに入射するフォトンの平均数が1以下になるように、駆動回路1102が軟X線検出装置を駆動する。つまり、入射する軟X線の量に基づいて、十分に短い蓄積期間を設定すればよい。具体的には、軟X線の量はあるユニット面積においてユニット時間あたりに照射されるフォトンの数で表される。そこで、検出ユニットの面積から、ユニット時間あたりに1つの検出ユニットに照射されるフォトンの数を計算すれば、蓄積期間をいくつに設定すればよいか決定することができる。そして1回の蓄積動作を行ったあとに軟X線検出装置が信号電荷を信号として出力し、信号処理回路1101が画像を作成する。この画像は、各検出ユニットに入射した軟X線のエネルギーを2次元平面にマッピングしたものであってもよい。
【0204】
さらに、入射する軟X線の量(強度)、つまり、フォトンの数を検出する場合には、上述の蓄積動作を複数回繰り返して、蓄積のたびに信号を読み出せばよい。例えば、地球の衛星軌道上で太陽が発する軟X線を検出すると、軟X線検出装置の1つの検出ユニットに毎秒数百個のフォトンが入射する場合がある。これらのフォトンの数とエネルギーを測定するためには、1秒間に数百〜数千枚の画像を撮像し、読み出す必要がある。CCD型の軟X線検出装置でこのような高速の読み出しを行うためには、検出ユニット数を減らして解像度を犠牲にする必要がある。これに対して、本発明に係る軟X線検出装置は検出ユニットに増幅部を有するので、解像度を犠牲にすることなく高速の撮影を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0205】
1 検出ユニット
2 半導体基板
3 変換部
4 回路部
6 増幅トランジスタ
7 分離部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板及び前記半導体基板に配された複数の検出ユニットを備える軟X線検出装置であって、
前記複数の検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを少なくとも含む読み出し回路と、を有し、
前記半導体領域のうち隣接して配された二つの半導体領域の間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記二つの半導体領域を互いに電気的に分離する第1分離部が配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項2】
半導体基板及び前記半導体基板に配された複数の検出ユニットを備える軟X線検出装置であって、
前記複数の検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを少なくとも含む読み出し回路と、を有し、
前記半導体領域は、第1方向に沿って並んだ少なくとも三つの半導体領域と、前記少なくとも三つの半導体領域とは別の第1半導体領域及び第2半導体領域とを含み、
前記少なくとも三つの半導体領域のそれぞれの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記少なくとも三つの半導体領域を互いに電気的に分離する第1分離部が配され、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に、前記少なくとも三つの半導体領域のうちの一つが配され、
前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域は、いずれも前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つと隣接して配され、
前記第1半導体領域と前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つとの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配され、
前記第2半導体領域と前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つとの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型の別のトランジスタが配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項3】
半導体基板及び前記半導体基板に配された複数の検出ユニットを備える軟X線検出装置であって、
前記複数の検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを少なくとも含む読み出し回路と、を有し、
前記半導体領域は、第1方向に沿って並んだ少なくとも三つの半導体領域と、前記少なくとも三つの半導体領域とは別の第1半導体領域及び第2半導体領域とを含み、
前記少なくとも三つの半導体領域のそれぞれの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記少なくとも三つの半導体領域を互いに電気的に分離する第1分離部が配され、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に、前記少なくとも三つの半導体領域のうちの一つが配され、
前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域は、いずれも前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つと隣接して配され、
前記第1半導体領域と前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つとの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記第1半導体領域と前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つとを電気的に分離する第2分離部が配され、
前記第2半導体領域と前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つとの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項4】
前記第1半導体領域、前記少なくとも三つの半導体領域のうちの前記一つ、及び前記第2半導体領域が、前記第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の軟X線検出装置。
【請求項5】
半導体基板及び前記半導体基板に配された複数の検出ユニットを備える軟X線検出装置であって、
前記複数の検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを少なくとも含む読み出し回路と、を有し、
前記半導体領域は、第1半導体領域、第2半導体領域、第3半導体領域、及び第4半導体領域を含み、
前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域は、第1方向に沿って配され、
前記第3半導体領域及び前記第4半導体領域は、前記第1方向と平行な第2方向に沿って配され、
前記第1半導体領域及び前記第3半導体領域は、前記第1方向とは交差する第3方向に沿って配され、
前記第2半導体領域及び前記第4半導体領域は、前記第3方向と平行な第4方向に沿って配され、
前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域、及び前記第4半導体領域のそれぞれの間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されず、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域、及び前記第4半導体領域を互いに電気的に分離する第1分離部が配され、
前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域、及び前記第4半導体が1つのブロックを構成し、当該ブロックと、当該ブロックを構成する半導体領域とは別の半導体領域との間に、前記読み出し回路に含まれる第1導電型のトランジスタが配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項6】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかと、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかとが、第1距離よりも近接して配され、
前記第1距離は、前記軟X線のフォトンの一つが前記半導体基板に入射したときに、電荷が発生する領域を包含する最小の球の直径であることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項7】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記複数のトランジスタのいずれかと、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数のトランジスタのいずれかとが、第1距離よりも近接して配され、
前記第1距離は、前記軟X線のエネルギーをE(keV)としたときに、以下の式で表されるd(マイクロメートル)であることを特徴とする軟X線検出装置。
【数1】

【請求項8】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかと、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれかとが、第1距離よりも近接して配され、
前記第1距離は、1マイクロメートルであることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項9】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域は、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも、第2距離より離間して配され、
前記第2距離は、前記軟X線のフォトンの一つが前記半導体基板に入射したときに、電荷が発生する領域を包含する最小の球の半径であることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項10】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域は、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも、第2距離より離間して配され、
前記第2距離は、前記軟X線のエネルギーをE(keV)としたときに、以下の式で表されるr(マイクロメートル)であることを特徴とする軟X線検出装置。
【数2】

【請求項11】
半導体基板と前記半導体基板に配された第1及び第2検出ユニットとを備える軟X線検出装置であって、
前記第1及び第2検出ユニットのそれぞれが、
前記半導体基板に配され、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される第1導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に収集された電荷に基づく信号を出力する増幅トランジスタを含む複数の第1導電型のトランジスタと、を有し、
前記第1検出ユニットと前記第2検出ユニットは互いに隣接して配され、
前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域は、前記第2検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのいずれからも、第2距離より離間して配され、
前記第2距離は、0.5マイクロメートルであることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項12】
前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域は、前記第1検出ユニットに含まれる前記複数の第1導電型のトランジスタのうち転送トランジスタを除くいずれからも、前記第2距離より離間して配されたことを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項13】
前記第1検出ユニットに含まれる前記半導体領域と、前記第2検出ユニットに含まれる前記半導体領域との間に、第1分離部が配されたことを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項14】
前記軟X線検出装置は、前記半導体基板に入射する軟X線の量を低減する遮蔽部をさらに備え、
前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板への射影が前記複数の第1導電型のトランジスタの少なくとも一部と重なるように、前記遮蔽部が配されたことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項15】
前記半導体領域は前記軟X線を前記電荷に変換する変換部であり、
前記遮蔽部の別の一部の前記半導体基板への射影が、前記半導体領域の一部であって、前記複数のトランジスタからの距離が第3距離以内の領域の全部と重なるように、前記遮蔽部が配され、
前記第3距離は、前記軟X線のエネルギーをE(keV)としたときに、以下の式で表されるL(マイクロメートル)であることを特徴とする請求項14に記載の軟X線検出装置。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−38174(P2013−38174A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171972(P2011−171972)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】