説明

転がり軸受

【課題】転動体の円周方向の不等配を抑制して、回転軸の振れ回りを小さく抑えることができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受10は、外周面に内輪軌道面11aを有する内輪11と、内周面に外輪軌道面12aを有する外輪12と、内輪軌道面11aと外輪軌道面12aとの間に転動自在に設けられた複数の転動体13と、円周方向の少なくとも一カ所に切断部14が形成され、複数の転動体13を円周方向に略等間隔で保持する合成樹脂製の保持器15と、を備える。そして、保持器15は、平衡含水率まで吸水させた状態において、切断部14の円周方向幅ΔLが該保持器15の所定の温度変化による伸長分と略等しいように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業機械、ロボツトの関節部や旋回機構部、工作機械の主軸、回転テーブルや主軸旋回機構部、医療機器、半導体/液晶製造装置、光学及びオプトエレクトロニクス装置等の回転支持部に用いられる転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転がり軸受として、円周方向の一ヶ所に切断部を設けた合成樹脂製の冠形保持器が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1に記載の転がり軸受では、切断部を設けることで、内外輪及び玉と保持器との熱膨張係数の違い等により玉とポケットとの間に発生する突っ張り力を緩和して保持器の摩耗等を防止することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の転がり軸受では、円周方向の一ヶ所に切断部が設けられるとともに、切断部の円周方向幅を温度変化と吸水率変化による保持器の伸長分とし、軌道輪との案内すきまを確保することが記載されている。
【特許文献1】特開2003−336640号公報
【特許文献2】特開2006−226496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の転がり軸受では、玉案内方式を採用して、玉とポケットとの間の半径方向すきまは小さく設定されているので、軸受の回転による昇温で、軸受各部品(例えば、内輪、外輪及び玉が軸受鋼、保持器がポリアミド樹脂などの合成樹脂で形成されている場合)間の線膨張係数の差により保持器が相対的に膨張する際に、半径方向には膨張しにくく、相対膨張分は円周方向に向かう。
【0005】
その結果、保持器の切断部の円周方向すきまが小さくなり、使用環境温度も含めて軸受の昇温値が高い場合、保持器の切断部の円周方向の端面同士が突っ張り干渉して、該干渉部での発熱や摩耗、損傷が生じるという問題がある。また、保持器がポリアミド樹脂などの一般的な汎用合成樹脂で形成されている場合は、空気中の水分を吸収して膨張することもあり、吸水による膨張量が加わることも問題である。
【0006】
また、特許文献2に記載の転がり軸受では、切断部の円周方向幅を温度変化と吸水率変化による保持器の伸長分(温度膨張+吸水膨張)としているが、切断部の円周方向幅が広くなりすぎてしまい、温度上昇が小さい条件や乾燥した雰囲気条件では、切断部の円周方向幅の変化が小さく、切断部を挟んだ部分での玉間の円周方向の距離が他の玉間の円周方向距離より大きくなり、玉の円周方向の不等配が発生する。
【0007】
玉の円周方向の不等配が生じると、軸受の径方向の剛性が円周位相で不均一(玉の円周方向の不等配部の位相で剛性低下)になるため、軸受回転時に玉の公転周期に対応した振れ回り、いわゆるNRRO値(内輪2回転に約1回の周期)が増加する。特に、回転精度が要求される工作機械の主軸、回転テーブル及び主軸の旋回機構部などの回転支持部に本軸受を使用した場合、回転軸の振れ回りが大きくなり(NRRO値が大)、フライス加工などでは加工面に縞模様が発生したり、旋盤加工などでは加工面の引き目不良や真円度悪化などが発生したりするという問題がある。
【0008】
本発明は、このような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、転動体の円周方向の不等配を抑制して、回転軸の振れ回りを小さく抑えることができる転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、円周方向の少なくとも一カ所に切断部が形成され、前記複数の転動体を円周方向に略等間隔で保持する合成樹脂製の保持器と、を備えた転がり軸受において、
前記保持器は、所定の平衡含水率まで吸水した状態において、前記切断部の円周方向幅が該保持器の所定の温度変化による伸長分と略等しくなるように形成されることを特徴とする転がり軸受。
(2) 前記保持器は、冠型保持器であることを特徴とする(1)に記載の転がり軸受。
(3) 前記転動体が、玉であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の転がり軸受。
(4) 前記転動体が、円筒ころであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の転がり軸受。
(5) 前記内輪と前記外輪との間の軸受空間にはグリースが封入されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の転がり軸受。
(6) 前記内輪及び前記外輪のうちの固定輪側の軸方向端部に配置される、接触型又は非接触型のシール部材をさらに有することを特徴とする(5)に記載の転がり軸受。
(7) 前記グリースは、前記保持器が前記所定の平衡含水率まで吸水した後に、前記軸受空間に封入されることを特徴とする(5)又は(6)に記載の転がり軸受。
(8) 前記保持器の表面には油膜が形成されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の転がり軸受。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転がり軸受によれば、保持器は、所定の平衡含水率まで吸水した状態において、切断部の円周方向幅が保持器の所定の温度変化による伸長分と略等しくなるように形成されるので、転動体の円周方向の不等配を抑制して、回転軸の振れ回りを小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る転がり軸受について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態の転がり軸受10(以下、幅狭玉軸受10とも称す)は、アンギュラ玉軸受とされており、2列のアンギュラ玉軸受を背面組合せ(接触角がハの字となる配列)としている。各転がり軸受10は、外周面に内輪軌道面11aを有する内輪11と、内周面に外輪軌道面12aを有する外輪12と、内輪軌道面11aと外輪軌道面12aとの間に転動自在に設けられた複数の玉(転動体)13と、円周方向の一カ所に切断部14(図4参照)が形成され、複数の玉13を円周方向に略等間隔で保持する合成樹脂製の冠形保持器15と、を備える。また、2列の幅狭玉軸受10の各外輪12の軸方向外側の端部内周面には、それぞれ非接触型のシール部材16が装着されている。なお、シール部材16は、接触型タイプでもよく、また、材質、形状は特に限定されない。
【0013】
ここで、本実施形態では、軸方向の省スペース化を図るため、転がり軸受10の軸方向断面幅Bと半径方向断面高さH(=(外輪外径D−内輪内径d)/2)との断面寸法比(B/H)をB/H<0.63としている。
【0014】
なお、B/Hは、理論的にはB/H>0であるが、現実的には、使用する玉径や保持器、シール部材の設計、選定等を加味すると、B/H>0.10、好ましくはB/H>0.20、より好ましくはB/H>0.30とする。
【0015】
また、国際標準化機構(ISO)で規定されている標準寸法玉軸受の場合、B/Hが1.0前後のものが多くを占める。したがって、B/H<0.5に設定すれば、標準玉軸受約1列分の幅方向スペースで2列分の幅狭玉軸受10を配設させることができ、省スペース化が図れる。
【0016】
また、アンギュラ玉軸受の場合、1列では一方向の軸方向荷重しか受けられず、また、モーメント荷重を受けることはできないが、2列以上組合わせることで、両方向の軸方向荷重やモーメント荷重の負荷が可能となる。また、予圧を付加することもできるので、省スペース化と共にラジアル剛性やアキシャル剛性及びモーメント剛性なども大きくすることができる。
【0017】
また、B/H<0.25に設定すれば、さらなる省スペース化と共に、標準玉軸受約1列分の幅方向スペースで4列の幅狭玉軸受を配設させることができ、さらに剛性の向上が可能である。
【0018】
ここで、図10及び図11は、それぞれ標準的に使用されている極薄肉玉軸受(軸受内径:φ38.1mm、軸受外径:φ47.625mm、軸受幅:4.762mm、前記断面寸法比(B/H)=1)を基準とし、軸受外径及び軸受幅を変えずに、軸受内径を変化させた場合、即ち、(B/H)の値を変化させた場合の内外輪リングの半径方向の変形特性(図8参照:内輪を例示)及び半径方向の断面2次モーメントI(図9参照:I=bh3 /12で計算)を比較した結果を示している。
【0019】
また、図12及び図13は、それぞれ標準的に使用されている極薄肉玉軸受(軸受内径:φ63.5mm、軸受外径:φ76.2mm、軸受幅:6.35mm、前記断面寸法比=1)を基準とし、軸受外径及び軸受幅を変えずに、軸受内径を変化させた場合、即ち、(B/H)の値を変化させた場合の内外輪リングの半径方向の変形特性及び半径方向の断面2次モーメントIを比較した結果を示している。
【0020】
いずれの軸受の場合も、(B/H)=0.63未満で、剛性の増加率勾配の変化が顕著に出ている。すなわち、(B/H)=0.63未満で、断面2次モーメントIの増加は顕著になり、半径方向の内外輪リングの変形量の減少は飽和状態となる。これにより、従来の極薄肉玉軸受で問題となる内外輪製作時の旋盤加工や研磨加工時の加工力による軸受変形を防止することができ、真円度や偏肉等の軸受精度を向上させることができる。
【0021】
また、(B/H)=0.63未満とすることで、軸やハウジングに軸受を組み込んだ場合(特に、軸やハウジングとすきま嵌合で組み込んだ場合)、外輪を端面押え、内輪を軸受ナット等でそれぞれ固定した場合の内外輪の変形(特に真円度の悪化)を抑制することができると共に、変形によって生じるトルク不良や回転精度不良、あるいは、発熱増大、摩耗や焼付き等の不具合を防止することができる。
【0022】
さらに、(B/H)=0.63未満とすることで、軸受の幅寸法が従来の標準単列玉軸受の約半分となるので、玉径も従来の玉軸受の半分程度となるが、逆に1列あたりの玉数が少なくとも2倍以上に増加し、軸受剛性は従来の玉軸受に対して増加する。
【0023】
また、国際標準化機構(ISO)で規定されている寸法系列が18(例えば、6820)、19(例えば、6938)、10(例えば、7016A)、02(例えば、7224C)、03(例えば、7350A)などの標準寸法玉軸受では、軸受内径寸法がφ5mm〜φ500mmにおいては、断面寸法比(B/H)はB/H=0.63〜1.17となっているが、本実施形態の幅狭玉軸受10は、軸方向に幅狭としたので、上述の断面寸法比に該当しないものとなる。
【0024】
本実施形態の幅狭玉軸受10では、軸受の負荷容量や剛性を上げるために、円周方向に隣り合う玉13間のピッチは極力小さくし、できる限り玉数を多くしている。通常の玉軸受では、玉数は多くとも30〜40個以下/1列程度であるが、本実施形態では、50個以上、好ましくは60個以上、より好ましくは70個以上/1列としている。
【0025】
アンギュラ玉軸受の場合、接触角は、大きなモーメント荷重を負荷した際に、内外輪みぞ肩部への玉と内外輪みぞ接触部の乗り上げを抑えるため、概ね60°以下、望ましくは50°以下、さらに望ましくは40°以下がよいが、20°未満の場合は、許容アキシャル荷重やモーメント剛性が低下するので好ましくない。本実施形態における適正な玉径は、シール部材等の装着有無により変化するが、剛性を増加させるため、極端に玉径を小さくすると、玉と内外輪の軌道みぞとの接触部間の面圧が増加し、耐圧痕性が低下するおそれがあるため、概ね、単列の場合、軸受幅(B)の30〜90%、複列の場合、軸受幅(B2)の15〜45%が望ましい。
【0026】
更に、本実施形態では、玉13の軸方向ピッチをできるだけ組合せ側端面の反対側にずらし(図1:X1>X2)、保持器15の円環部17(図2〜図5参照)が軸受組合せ端面側になるように配置しており、円環部17の軸方向肉厚を大きくし、また、モーメント剛性を上げるための作用点間距離を大きくとれるようにしている。
【0027】
また、軸受の材質としては、標準の軸受鋼(SUJ2やSUJ3)など、特に限定されないが、必要に応じて、これらの材料で、軸受の寸法安定性や耐摩耗性などの機械的性質を向上させるために、内輪11及び外輪12の少なくとも一方に、サブゼロ処理を施してもよい。
【0028】
サブゼロ処理の方法としては、例えば、焼入れ直後に、液体窒素を用いて−150°C程度の雰囲気とし、本サブゼロ処理後に焼戻しを行なう。そして、サブゼロ処理と焼戻し処理とを数回繰り返す。冷却溶媒として、液体窒素使用のサブゼロ処理では、繰り返し回数は多くとも3回程度でかまわない。サブゼロ処理によって、組織中の残留オーステナイト(γR)がマルテンサイトに変態する。併せて、結晶粒の安定化も促進されるので、これにより経時寸法変化の防止と耐摩耗性などの機械的性質が向上する。
【0029】
本実施形態の場合、内輪11及び外輪12の軸方向幅が狭いので、そりや真円度不良などの経時寸法変化が発生しやすい傾向がある。したがって、サブゼロ処理により、前記経時寸法変化を抑制することができ、特に、軸受精度が必要な工作機械の回転テーブルや主軸旋回機構部、印刷機械のドラム等の回転機構部などの回転支持部に本実施形態の幅狭玉軸受10を使用する場合、軸受精度劣化による機器の精度不具合を防止でき、長期的に良好な機能を保持することができる。
【0030】
また、例えば真空用途や腐食環境などでは、軸受鋼以外に、耐食材料であるステンレス鋼系材料(例えば、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼材料やSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼材料、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼材料など)、チタン合金やセラミック系材料(例えば、Si3 N4 ,SiC,Al2 O3 ,ZrO2など)を採用してもよい。
【0031】
潤滑方法も特に限定されず、一般的な使用環境では、鉱油系グリースや合成油系(例えば、リチウム系、ウレア系等)のグリースや油を使用でき、真空用途などでは、フッ素系のグリースまたは油、あるいはフッ素樹脂、MOS2 などの固体潤滑剤を使用することができる。
【0032】
また、本実施形態に使用される冠型保持器15は、図2〜図5に示すように、円環部17と、円環部17の軸方向の一端部に円周方向に等間隔で複数箇所軸方向に突設された柱部18と、を備え、各柱部18間に玉13を円周方向に転動可能に保持する球面ポケット部19を形成する。また、円周方向の一カ所の柱部18の位置には、所定の円周方向幅を有する切断部14(図4参照)が形成されている。また、本実施形態では、ポケット部19の入り口部に玉径より若干小さくして引っかかり代(パチン代)を設けており、これにより、内輪11及び外輪12に保持器15を組み込む際、玉13の脱落を防止して、軸受の組立を容易にしている。
【0033】
保持器15の材質は、例えば、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6Tなどのポリアミド樹脂を採用しているが、ポリアセタールやポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材でもよい。必要に応じて、合成樹脂材にガラス繊維や炭素繊維等の補強材を混入した材料としてもよい。なお、保持器15の形状は、本実施形態に限定されず、適時変更可能である。
【0034】
ここで、本実施形態では、保持器15は、平衡含水率まで吸水させた状態において、保持器15の切断部14の円周方向幅ΔLが、該保持器15の所定の温度変化による伸長分と略等しくなるように形成している。
【0035】
即ち、保持器15を平衡含水率まで含水させた状態における切断部14の円周方向幅ΔLが、軸受が所定の温度まで上昇した際に、軸受部品間(例えば、内輪11、外輪12及び玉13が軸受鋼、保持器15がポリアミド樹脂などの合成樹脂で形成されている場合)の線膨張係数差による保持器15の相対的膨張により、切断部14 の円周方向のすき間が0以下(負)とならないようにしている。
【0036】
このように、本実施形態では、切断部14の円周方向幅に吸水による膨張分をあらかじめ加味しているので、その分、保持器15を平衡含水率まで含水させた後の切断部14の円周方向幅ΔLを小さくすることができる。これにより、温度上昇が小さい条件や乾燥した雰囲気条件でも、玉13の円周方向の不等配を抑制することができ、その結果、回転軸の振れ回りを小さく抑えることができる。
【0037】
また、使用環境温度も含めて軸受の昇温値が高い場合でも、所定の温度上昇以内であれば、保持器15の切断部14の円周方向の端面同士が干渉して摩耗を生じることもなく、また、一時的に所定の温度以上まで上昇し、該端面同士の接触干渉に至り、さらに、保持器15の相対的な膨張が半径方向に生じても、この膨張分は、(一時的な最高温度−所定の温度)に相当する量であり、各玉13と保持器15のポケット部19との間の半径方向すきまが負となるまでの量にはならないので、玉13とポケット部19間での突っ張り力は働かず、安定した回転性能を得ることができる。
【0038】
さらに詳述すると、例えば、射出成形で製作した樹脂製保持器(例えば、一般的に広く採用されているポリアミド66樹脂(強化材未添加グレード))では、成形直後は絶乾状態であり、含水率はほぼ0%の状態である。ところが、この保持器を空気中で保管しておくと空気中の水分を吸収して徐々に膨張する。
【0039】
図6に示すように、ポリアミド66樹脂(強化材未添加グレード)では、相対湿度が通常50〜70%の空気中では、平衡含水率は3%前後であり、図7より、このときの寸法変化率は0.5〜0.6%にも達する。ただし、一度平衡含水率まで達すると、大気中の一般的な環境条件においては、含水率の変化は発生しにくい。
【0040】
また、例えば、軸受の回転による温度上昇等で、多少の温度変化や湿度変化が発生しても、短時間では含水率の変化は生じにくい。本実施形態の幅狭玉軸受10の使用用途は、揺動回転や往復動回転、あるいは連続回転であったとしても、軸受のdmn値(dm:玉ピッチ円直径(mm)×n:回転数(min-1))が20〜30万以下程度と、軸受としては比較的回転数が低いので、軸受自身の発熱による温度上昇値は小さく、含水率の変化が生じにくい。加えて、軸受には油やグリースなどの潤滑剤が運転中に供給、あるいは、あらかじめ封入されており、保持器15の表面には常に油膜が形成されているので、水分の蒸発や侵入が生じにくい。特に、グリース潤滑の場合は、軸受の内部空間にグリースが相当量充填されているので、大気中の環境条件の変化(湿度変化など)の影響は極めて受けにくい利点がある。
【0041】
本実施形態では、一度平衡含水率に達した状態の保持器15を軸受に組み込んだ場合に、大気中の一般的な環境条件においては、多少の湿度や温度変化が発生しても含水率の変化は発生しにくい性質を利用しており、保持器15を射出成形後、あるいは、切削加工後にあらかじめ、平衡含水率まで水分を樹脂内に吸収させておくことで、(使用中の)寸法変化を最小限に抑えることができる。
【0042】
一方、保持器を絶乾状態のままとして軸受に組み込んだ場合、含水膨張と温度膨張による分の伸長が保持器に発生するため、切断部の断面同士を干渉させないように切断部の円周方向幅を大きく設定しておく必要があり、玉の円周方向の不等配が顕著になってしまう。つまり、平衡含水率に達しない状態の保持器が軸受に組み込まれグリースなどの潤滑剤が封入されてしまうと、逆に水分の吸収が不十分な状態で軸受が使用されることになり、切断部の円周方向幅が大きい状態であるので、NRRO値が大きくなってしまう。
【0043】
さらには、含水率が少ないと保持器の靭性値(アイゾット(IZOT)衝撃強度などで規定される値)も低下するため、耐衝撃性も平衡含水処理された保持器に比べて低下する。平衡含水率が大きい、すなわち、吸水による寸法変化が大きい樹脂材料ほど、本発明の効果が発揮される。たとえば、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6Tなどのポリアミド樹脂材などでは本発明の効果が大きい。
【0044】
軸受組立後、軸受空間にグリース封入を行なうなどで保持器15の表面に油膜を十分形成させておけば、含水率の変化をさらに防止することができる。平衡含水率まで吸水している状態で軸受空間にグリース封入を行えばさらによい。また、上述したように、2列の幅狭玉軸受10の各外輪12の軸方向外側の端部内周面に、それぞれシール部材16を装着することで、グリースが外部に流出しにくく、また、保持器15の表面の油膜が剥れにくくなり、含水率の変化をさらに抑えることができる。
【0045】
なお、モータ内蔵の構造などで、軸受近傍に発熱源がある場合、軸受周辺で一時的に温度上昇が生じるが、この場合、保持器15は温度膨張によって伸長する反面、温度上昇により含水率が若干少なくなるため収縮が生じ、保持器15の寸法変化は相殺される。軸受が停止し、常温状態になると、保持器15の吸水率は再び平衡含水率までもどる。ただし、モータ内蔵の場合、モータのステータ周辺部に冷却油を循環させるなどの冷却構造を採用しているのが常であり、この点で、軸受部の温度はさほど上昇しないのが通常である。
【0046】
保持器15にあらかじめ吸水させる際の含水率は、保持器15の材質や強化材(ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維など)の添加量によって得られる所定の平衡含水率とする。例えば、上述のポリアミド66(強化材無添加グレード)の場合、軸受が保管、あるいは使用される環境の温度を20〜25°C、平均相対湿度を50〜70%として、平衡含水率2.9%とする(図6参照)。保持器15の平衡含水率の許容差は、処理条件に応じて適正な値としてよいが、おおむね±0.5%程度が望ましい。
【0047】
平均相対温度は、各地域によって異なるが、本実施形態の幅狭玉軸受10が使用される製品分野から判断して、屋内の適正な空調の整った環境で使用あるいは保管されるのが常である。したがって、環境温度は、20〜30°C、相対湿度は、50〜70%と考えてよい。従って、保持器の材料として、上記の合成樹脂材料以外を適用する場合も、上記の環境温度条件下での平衡含水率に設定する。
【0048】
また、本実施形態のような幅狭玉軸受10では、冠型保持器15の円周方向に切断部14が形成されることで、以下のような効果を奏する。
【0049】
即ち、切断部がない円環状の冠型保持器を有する従来の幅狭玉軸受では、軸受が幅狭のため、玉径は幅方向の寸法で限定されて小さくなる。したがって、保持器の円環部の断面肉厚が小さくなり、円環部の剛性は小さい。また、寸法測定時の測定圧による変形が大きく、径方向寸法の測定ができず、保持器が適正な精度か否かを判断できない。玉ピッチ円直径に対してポケット径中心のピッチ円直径がずれていると、玉案内方式なので玉とポケット部とが直径方向で干渉する。
【0050】
仮に、保持器の寸法精度が適正であった場合でも、玉径寸法が小さいため、保持器の円環部の断面肉厚が薄くなり、円環部の剛性が小さいため、真円度などの形状精度が悪くなる。また、昇温や吸水による保持器の直径方向の伸長のため、玉とポケットとの間の突っ張りなどが生じ、ポケット面の摩耗や回転中の発熱大、トルクむら、トルク大等の不具合が発生する。
【0051】
一方、本実施形態の幅狭玉軸受10では、切断部14を形成することで剛性がさらに小さくなるが、仮にピッチ円直径がずれていても、逆に、弾性変形が容易で、玉ピッチ円直径になじんでくれるので、玉13とポケット部19との間の強い接触圧を伴う干渉が生じにくい。また、保持器15を平衡含水率まで吸水させることで柔軟性が向上し、ピッチ円直径が玉ピッチ円直径にさらになじみやすくなる。
【0052】
従って、本実施形態の幅狭玉軸受10では、例えば、射出成形によって保持器15を形成する際、切断部14の円周方向幅は、絶乾状態から所定の平衡含水率に達する状態までの保持器15の円周方向の伸長分と、保持器15の所定の温度変化による円周方向の伸長分とを予め考慮した合計分に略等しい寸法となるように設定される。そして、加工後の保持器15を所定の平衡含水率に達するまで含水し、保持器15に水分を吸収させる。
【0053】
その後、所定の平衡含水率まで吸水した保持器15を軸受空間に組み込んで複数の玉13を保持させて、幅狭玉軸受10を組み立て、さらに、軸受空間にグリースや油等の潤滑剤を封入する。これにより、軸受空間内に配置された所定の平衡含水率まで吸水した保持器15は、上述したように含水率の変化を生じにくいので、保持器15の切断部14の円周方向幅ΔLが、保持器15の所定の温度変化による伸長分と略等しい構成となっており、玉13の円周方向の不等配を小さくした状態で組み込むことができる。従って、軸受の使用時において、温度変化が所定範囲内であれば、切断部14の円周方向幅ΔLが負となることはなく、上述した安定した回転性能を得ることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図14に示す本発明の第2実施形態に係る転がり軸受は、第1実施形態の2列の背面組合せされた幅狭玉軸受に対して、シール部材16が省略された構成である。この実施形態では、シール部材16が設けられていないので、玉径を大きくできる。また、第1実施形態の同径の玉を使用した場合には、シール部材16を設けない分、軸受の軸方向幅をより薄くすることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0055】
(第3実施形態)
図15に示す本発明の第3実施形態に係る転がり軸受は、第2実施形態のものに対して、玉ピッチ円直径を、玉ピッチ円直径>(D+d)/2としている。この実施形態では、玉ピッチ円直径=(D+d)/2に比べて、軸受1列あたりの玉数を多くすることが可能となり、軸受の負荷容量を上げ、かつ剛性をより向上することができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0056】
(第4実施形態)
図16に示す本発明の第4実施形態に係る転がり軸受は、第2実施形態のものに対して、左右の幅狭玉軸受10の玉径、玉ピッチ円直径を変えている。この実施形態では、軸方向荷重が左右の軸受で不均一な場合など、大荷重が負荷する側に玉径大の軸受を配設することで、軸受の損傷防止や寿命向上が図れる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0057】
(第5実施形態)
図17に示す本発明の第5実施形態に係る転がり軸受は、第1実施形態のものに対して、シール部材16が対向する内輪11の外周面にシール溝を形成しない構成である。これにより、内輪11の形状を簡素化することができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0058】
(第6実施形態)
図18に示す本発明の第6実施形態に係る転がり軸受は、幅狭玉軸受10の外輪12の軸方向の両端側内周部にそれぞれ非接触型のシール部材16を装着する。この実施形態では、グリースの軸受外部への流出を防止でき、軸受内への外部からの異物の侵入も起こりにくい。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0059】
(第7実施形態)
図19に示す本発明の第7実施形態に係る転がり軸受は、2列の幅狭玉軸受10を正面組合せとしている。この実施形態では、接触角が逆ハの字であり、背面組合せに対してモーメント剛性が小さくなるので、取り付け時の内輪11及び外輪12の相対傾きが大きくなることが避けられない場合、軸受の内部発生負荷荷重を小さくすることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0060】
(第8実施形態)
図20に示す本発明の第8実施形態に係る転がり軸受は、3列の幅狭玉軸受10を背面組合せとしている。この実施形態では、軸受の剛性及び負荷容量を向上させることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0061】
(第9実施形態)
図21に示す本発明の第9実施形態に係る転がり軸受は、4列の幅狭玉軸受10を背面組合せとしている。この実施形態では、軸受の剛性及び負荷容量をさらに向上させることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0062】
(第10実施形態)
図22に示す本発明の第10実施形態に係る転がり軸受は、図19に示す第7実施形態のものに対して、2列の内輪11を一体の内輪101とした複列幅狭玉軸受100である。この実施形態では、2列の単列幅狭玉軸受10と置き換えることができ、また、接触角が逆ハの字であるため、背面組合せに対してモーメント剛性が小さくなる。なお、複列幅狭玉軸受100の軸方向断面幅B2と半径方向断面高さH2(=(外輪外径D2−内輪内径d2)/2)との断面寸法比(B2/H2)は、B2/H2<1.2が好ましく、より好ましくは、B 2/H2 <1.0とすることで、標準寸法玉軸受と容易に置き換えることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。
【0063】
(第11実施形態)
図23に示す本発明の第11実施形態に係る転がり軸受は、図19に示す第7実施形態のものに対して、2列の外輪12を一体の外輪102とするとともに、接触角をハの字とした複列幅狭玉軸受110である。この実施形態では、2列の単列幅狭玉軸受10と置き換えることができ、また、接触角がハの字であるため、正面組合せに対してモーメント剛性が大きくなる。なお、複列幅狭玉軸受110の軸方向断面幅B2と半径方向断面高さH2(=(外輪外径D2−内輪内径d2)/2)との断面寸法比(B2/H2)は、B2/H2<1.2が好ましく、より好ましくは、B 2/H2 <1.0とすることで、標準寸法玉軸受と容易に置き換えることができる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同様である。なお、外輪102の軸方向両端部に接触型又は非接触型のシール部材を装着してもよい。
【0064】
(第12実施形態)
図24に示す本発明の第12実施形態に係る転がり軸受は、外周面に複列の内輪軌道面121aを有する内輪121と、内周面に複列の外輪軌道面122aを有する外輪122と、内輪軌道面121aと外輪軌道面122aとの間に転動自在に設けられた複数の円筒ころ(転動体)123と、円周方向の少なくとも一カ所の柱部127の位置に切断部124(図25参照)が形成され、複数の円筒ころ123を円周方向に略等間隔で保持する合成樹脂製の冠型保持器125と、を備えた複列円筒ころ軸受120である。保持器125は、図25を参照して、ポケット部126が円筒形状とされ、ポケット部126の内周面と保持器125の内径面との交点、あるいはポケット部126の内周面と保持器126の外径面との交点のいずれかで、円筒ころ123と保持器125とが半径方向で接触するころ案内方式である。切断部124の円周方向幅ΔLの設定方法は、第1実施形態のものと同様である。
【0065】
(第13実施形態)
図26に示す本発明の第13実施形態に係る転がり軸受は、図14に示す第2実施形態のものに対して、合成樹脂製の冠形保持器15に代えて合成樹脂製のもみ抜き保持器150を用い、外輪案内方式が適用されている。もみ抜き保持器150の円周方向の少なくとも1ヶ所の柱部(不図示)位置には、切断部(不図示)が設けられている。切断部の円周方向幅ΔLの設定方法は、第1実施形態のものと同様であり、保持器150を上記同様に平衡含水率まで吸水させた状態において、切断部の円周方向幅ΔLを所定(想定した)の温度上昇による円周方向膨張分に相当する量としてもよい。
【0066】
ここで、軸方向の両側部に円環部を備える従来のもみ抜きタイプの保持器の場合、比較的強度があるので、適正寸法の維持に対しては有利である。ただし、外輪案内方式の場合には、温度上昇や吸水による膨張で案内すきまがなくなり、最悪かじる可能性がある。かじらないような大きな案内すきまとすると、膨張が伴わない条件では保持器が振れ回り、騒音等の不具合が生じる。しかしながら、本実施形態のような切断部を有するもみ抜きタイプの保持器では、案内すきまの減少を最小限に抑え、案内面での食い付き等の不具合を防止できる。
【0067】
(第14実施形態)
図27に示す本発明の第14実施形態に係る転がり軸受は、図14に示す第2実施形態のものに対して、合成樹脂製の冠形保持器15に代えて合成樹脂製のもみ抜き保持器160を用い、内輪案内方式が適用されている。もみ抜き保持器160の円周方向の少なくとも1ヶ所の柱部(不図示)位置には、切断部(不図示)が設けられている。切断部の円周方向幅ΔLの設定方法は、第1実施形態のものと同様である。
【0068】
従来の内輪案内方式の切断部のない保持器の場合には、温度上昇や吸水による膨張で案内すきまが大きくなりすぎ、保持器の異常振動による騒音等が発生するが、本実施形態のような切断部を有するもみ抜きタイプの保持器では、案内すきまの増加を最小限に抑え、保持器の異常振動や騒音を防止できる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変更、改良等が可能である。例えば、本発明の保持器15の切断部14は、円周方向の少なくとも一カ所に形成されればよく、図28に示すように、保持器15に対して円周方向の二カ所に切断部14を形成してもよい。この場合、切断部14の円周方向幅ΔLは、△L=△L1+△L2とする。
【実施例】
【0070】
ここで、図1と同一構造の2列の背面組合せアンギュラ玉軸受に組み込まれる保持器15について、切断部14の円周方向幅ΔLが設定される実施例について説明する。
【0071】
本実施例の軸受仕様は次の通りである。
<軸受仕様>
・軸受寸法:内径φ170mm、外径φ215mm、幅13.5mm(単体幅)、接触角35°、玉径6.35mm、玉数80個、玉ピッチ円径=φ192.5mm、B/H=0.60
・保持器材質:ポリアミド66(強化材混入なし)線膨張係数:80×10-6(K-1
・内輪、外輪及び玉材質:軸受鋼(SUJ2)線膨張係数:12.5×10-6(K-1
【0072】
また、軸受の使用環境が平均温度:23°C、平均湿度60%とすると、図6より平衡含水率は約2.9%となる。また、軸受の最大想定温度上昇を80°Cとする(たとえば、用途がモータ内蔵型の工作機械回転テーブルやダイレクトモータ回転支持部であるとモータ負荷回転時は、温度上昇が最大80°Cと予想される)。
【0073】
この場合、切断部14の円周方向幅ΔLは、△L=192.5π×(80−12.5)×10-6×80=3.27mmとなり、平衡含水率での切断部14の円周方向幅△Lを3.27mmとすれば良い。
【0074】
なお、保持器を射出成形にて製作する場合、射出成形直後は絶乾状態(含水率≒0%)となっているので、成形時寸法(含水処理前)は、図7より、平衡含水率2.9%のときの寸法変化率が0.45%(保持器円環部の円周方向は射出成形時の樹脂の流れ方向となるので、図7の実線が該当する)であるから、平衡含水処理による膨張分:192.5π×0.0045=2.72mmを見込み、射出成形時の切断部14の円周方向幅△L=3.27+2.72=5.99≒6mmとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図2】図1に示す転がり軸受に組み込まれた冠形保持器の部分的斜視図である。
【図3】図1に示す転がり軸受に組み込まれた冠形保持器の断面図である。
【図4】図3の矢印A方向から見た一部を破断した図である。
【図5】図3の矢印B方向から見た一部を破断した図である。
【図6】ポリアミド66の平衡含水率と相対湿度との関係を示すグラフ図である。
【図7】ポリアミド66の吸水による寸法変化率を示すグラフ図である。
【図8】内輪の半径方向の変形量を説明するための説明図である。
【図9】内輪の断面2次モーメントの計算方法を説明するための説明図である。
【図10】断面寸法比(B/H)と半径方向の内外輪の変形量との関係を示すグラフ図である。
【図11】断面寸法比(B/H)と内外輪の断面2次モーメントIとの関係を示すグラフ図である。
【図12】断面寸法比(B/H)と半径方向の内外輪の変形量との関係を示すグラフ図である。
【図13】断面寸法比(B/H)と内外輪の断面2次モーメントIとの関係を示すグラフ図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図19】本発明の第7実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図20】本発明の第8実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図21】本発明の第9実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図22】本発明の第10実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図23】本発明の第11実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図24】本発明の第12実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図25】図24に組み込まれた保持器を図24の矢印A方向から見た一部を破断した図である。
【図26】本発明の第13実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図27】本発明の第14実施形態に係る転がり軸受を説明するための要部断面図である。
【図28】冠形保持器の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10 転がり軸受
11a 内輪軌道面
11 内輪
12a 外輪軌道面
12 外輪
13 転動体
14 切断部
15 保持器
16 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、円周方向の少なくとも一カ所に切断部が形成され、前記複数の転動体を円周方向に略等間隔で保持する合成樹脂製の保持器と、を備えた転がり軸受において、
前記保持器は、所定の平衡含水率まで吸水した状態において、前記切断部の円周方向幅が該保持器の所定の温度変化による伸長分と略等しくなるように形成されることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記保持器は、冠型保持器であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記転動体が、玉であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記転動体が、円筒ころであることを特徴とする請求項1又は2に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記内輪と前記外輪との間の軸受空間にはグリースが封入されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記内輪及び前記外輪のうちの固定輪側の軸方向端部に配置される、接触型又は非接触型のシール部材をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記グリースは、前記保持器が前記所定の平衡含水率まで吸水した後に、前記軸受空間に封入されることを特徴とする請求項5又は6に記載の転がり軸受。
【請求項8】
前記保持器の表面には油膜が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転がり軸受。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2009−168108(P2009−168108A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5783(P2008−5783)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】