説明

転写フィルム及び透明導電膜付き接着フィルム

【課題】 透明導電層を、簡便な転写法で、低温で、十分な導電性を有し、安価に形成することを可能にする転写フィルム、透明導電膜付き接着フィルムを提供する。
【解決手段】 仮支持体14と、仮支持体14上に形成された金属層13と、金属層13上に形成された透明導電層12と、透明導電層12上の接着層11と、を備え、接着層11と透明導電層12とが剥離しないように、かつ、透明導電層12と金属層13とが剥離しないように、仮支持体14を金属層13から剥離することが可能である、転写フィルム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写により所望の被転写体へ透明導電性を附与することができる、転写フィルム及び透明導電膜付き接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイス、センサー、太陽発電素子等に透明導電膜が多用されている。この透明導電膜の製造法としては、真空成膜法やめっき法、印刷法などの方法により、所望の支持体基板上に透明導電膜を形成する(例えば、特許文献1、2、3参照)。
例えばガラス基板上にスパッタリング装置を用いて、透明な導電性の酸化インジウム薄膜を成膜して得るという方法が採られていた。
【0003】
しかし、この方法で得られる透明導電膜は、製造に時間を要したり、製造費用が高く、面内での厚みの均一性が難しいという問題があった。また、近年支持体基板の大型化に伴い、透明導電膜は大型の成膜装置やこれらを設置するクリーンルームが必要で、設備投資も巨額なものになっている。
【0004】
一方、導電性微粒子やホイスカーを樹脂とともに塗布したり、塗布した膜を転写フィルムにして転写する方法が、試みられているが、必要な導電性を得るには足りず、抵抗が高かったり、200℃を超える焼成加熱で導電性微粒子や導電性ホイスカー同士を接続させる工程が必要で、耐熱性が乏しいデバイスや樹脂膜上への導電性膜形成や低温化による安価な導電性膜形成が困難であるという問題があった(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−6346号公報
【特許文献2】特開昭59−74271号公報
【特許文献3】特開2008−144303号公報
【特許文献4】特開2004−273205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記のような状況から、大型化にも対応でき、簡便な転写法により、低温成膜と十分な導電性を得る手段に用いる透明導電膜の部材を提供するものである。すなわち、転写により導電性を容易に安価に得る、透明導電膜の部材を付与できる転写フィルム及び透明導電膜付き接着フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、透明導電性膜を、接着機能を提供する主に樹脂からなる接着層とを分けて複数の層を積層したタイプの転写フィルムにして形成し、所望の支持体基板に透明導電膜を接着層とともに転写することで、導電性を真空成膜法並に得られ、成膜温度を抑制できることを見出し、積層タイプの転写フィルムを発明した。
【0008】
即ち本発明は、以下の転写フィルムを提供する。
1.仮支持体と、前記仮支持体上に形成された金属層と、前記金属層上に形成された透明導電層と、前記透明導電層上に形成された接着層と、を備える転写フィルム。
2.前記金属層は3μm以下の厚みを有する、項1記載の転写フィルム。
【0009】
3.前記金属層は前記仮支持体上へ、スパッタリング又は蒸着により形成されるものである、項1又は2に記載の転写フィルム。
4.前記透明導電層は1μm以下の厚みを有する、項1〜3のいずれかに記載の転写フィルム。
5.前記透明導電層は、前記仮支持体上に形成された金属層へ、スパッタリング又は蒸着により形成されるものである、項1〜4のいずれかに記載の転写フィルム。
6.前記接着層と透明導電層の積層膜が70%以上の可視光透過率を有する、項1〜5のいずれかに記載の転写フィルム。
【0010】
7.前記接着層は、100質量部の樹脂成分と、40〜180質量部のフィラーと、を含有し、前記樹脂成分は、
(A)架橋性官能基を有し、重量平均分子量が10万〜40万であり、かつガラス転移温度が−50〜50℃である高分子量成分15〜40質量%と、
(B)分子量800以上のエポキシ樹脂を含む熱硬化性成分60〜85質量%と、を含有する、項1〜6のいずれかに記載の転写フィルム。
8.硬化前の前記接着層は、25℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が200〜3000MPaであり、かつ80℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が0.1〜10MPaである、項1〜7のいずれかに記載の転写フィルム。
【0011】
9.前記仮支持体はダイシングテープである、項1〜8のいずれかに記載の転写フィルム。
10.前記接着層は、光硬化性樹脂を含有するものである1〜6のいずれかに記載の転写フィルム。
11.前記金属層と、前記金属層上に形成された透明導電層と、前記透明導電層上に形成された接着層と、を備える透明導電膜付き接着フィルム。
12.項1〜10のいずれかに記載の転写フィルムから仮支持体を剥離して得られる項11に記載の透明導電膜付き接着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の転写フィルム又は透明導電膜付き接着フィルムは、転写により透明性と導電性を容易に安価に得ることが可能である。さらに、本発明による転写フィルム又は透明導電膜付き接着フィルムを用いてフォトリソグラフィーにより、導電性膜のパターン像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の転写フィルムの使用方法の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、実際の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
本発明の転写フィルムは、ラミネータ装置やフィルム貼付機などを用いて、ガラス、シリコンウェハ、金属板などの被転写体となる支持体基板に接着層とともに、この接着層上の透明導電膜(透明導電層)を転写、形成するために使用されるものである。
本発明の転写フィルムは、仮支持体の離型が容易な面に、金属層、透明導電層、接着機能を提供する接着層とを積層した構造を有する転写フィルムである。必要に応じ、接着層上に、カバーフィルムを積層してもよい。転写フィルムは、使用時の量産性を考慮し、樹脂などの筒型のコアを軸として、巻物状の形態である場合が多くの場合想定される。また、シート状に裁断してある形態であってもよい。形態については、特に制限されない。
【0015】
図1は転写フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態の転写フィルム10は、仮支持体14と、仮支持体14上に形成された金属層13と、金属層13上に形成された透明導電層12、透明導電層12上に形成された接着層11とを備える。接着層11は接着性を有する。金属層13と透明導電層12及び接着層11は転写フィルム10によって接着される被着体(例えばウエハ)と同じ平面形状を有することが好ましい。
【0016】
仮支持体14と金属層13とは互いに剥離可能である。言い換えると、接着層11と透明導電層12とが剥離しないように、また、透明導電層12と金属層13とが剥離しないように仮支持体14を金属層13から剥離することが可能である。接着層11と透明導電層12との間の剥離強度が、金属層13と仮支持体14との間の剥離強度よりも大きいことが好ましい。また、透明導電層12と金属層13との間の剥離強度が、金属層13と仮支持体14との間の剥離強度よりも大きいことが好ましい。これにより、金属層13及び仮支持体14を損傷することなく容易に両者を剥離することが可能になる。
一方、金属層を設けずに、仮支持体に透明導電層を形成すると、接着層と透明導電層との間の剥離強度が、仮支持体や透明導電層自体の強度より大きくなる。このため、透明導電層及び仮支持体を損傷することなく両者を剥離することは困難となる。したがって、金属層を設けることが肝要である。
接着層に透明導電層を成膜すると、転写フィルムとして必要な支持体と透明導電層の接着が得られにくく、転写フィルムとしての機能が不充分となるため、仮支持体にまず金属層を設けた後、透明導電層を積層することが好ましい。
【0017】
金属層13と仮支持体14との間の剥離強度を小さくするために、仮支持体14は離型処理を施された表面を有することが好ましい。この場合、離型処理を施された表面上に金属層13が形成される。離型処理としてはシリコーン系やメラミン系の離型処理等がある。
【0018】
より具体的には、仮支持体14は、離型処理を施された表面を有するプラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは寸法安定性に優れる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。離型処理を施された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、市販されており、それらを使用することができる。離型処理は、シリコーン系離型処理表面の他、非シリコーン系離型処理表面であっても差し支えない。
【0019】
仮支持体14として用いられる上記プラスチックフィルムはダイシングテープであってもよい。この場合、転写フィルム10は、ダイシングテープ一体型の接着シートとして用いることができる。ダイシングテープ一体型の接着シートを用いることにより、ウエハへのラミネート工程が一回ですむため、作業の効率化が可能となる。
【0020】
仮支持体14の金属層13との接触面は、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0021】
仮支持体14がダイシングテープである場合、仮支持体14は粘着性を有することが好ましい。そのために、ダイシングテープとなる上記プラスチックフィルム自体に粘着性を付与してもよいし、プラスチックフィルム及びその片面に形成された粘着層を有する積層フィルムを、ダイシングテープとしての仮支持体14として用いてもよい。粘着層は、液状成分及び高分子量成分を含有する樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗布した後乾燥することで形成可能である。粘着層として機能するためには、乾燥後の粘着層のタック強度が適度なものとなるように、特に液状成分の含有割合、及び高分子量成分のTg(ガラス転移温度)を調整すればよい。
【0022】
仮支持体14としてのダイシングテープの膜厚は、特に制限はなく、接着層の膜厚やダイシングテープ一体型の接着シートの用途によって適宜調整される。例えば、経済性及びフィルムの取扱い性が良好である点から、ダイシングテープの膜厚は60〜150μmであると好ましく、70〜130μmであるとより好ましい。
【0023】
金属層13を構成する金属としては、特に制限はないが、金、銀、アルミニウム、ニッケル及びインジウムが挙げられる。これらの金属の中でも特に、アルミニウムが特に好ましい。ヒロックやマイグレーションを防止するために、金属層13の材料は合金化されたものであってもよい。金属層13は、複数種の金属膜が積層されていても構わない。転写フィルムに高い柔軟性を付与するために、金属層13の厚みは3μm以下であることが好ましく、下限は特に制限されないが一般に0.01μm以上とされる。なお、金属層を介して光硬化性樹脂を含有する接着層に活性な光をあて、硬化させる場合、金属層の厚みは、0.1μm以下、0.002μm以上が好ましい。厚すぎると、活性な光を透過せず、薄すぎると、離型性が失われる。成膜法は特に制限されるものではなく、真空成膜法や電析法、無電解めっき法、ゾルゲル法などの方法で成膜される。生産性の観点で、真空成膜法すなわち、スパッタリングや蒸着が好ましい。仮支持体の離型性を損なわない成膜法として、蒸着が特に好ましい。
【0024】
一方、透明導電層12は、高い透過率と高い導電性が必要であるので、酸化インジウムや酸化亜鉛、酸化すずなどの酸化物が好ましく、すずドープ酸化インジウム(別名“ITO”あるいは“酸化インジウムすず”)が特に好ましい。酸化物の透明導電膜には、亜鉛、インジウム、すず、アルミニウム、ゲルマニウム、フッ素などを導電性や透過率などの特性を上げる目的で入れてもよい。膜厚は、特に制限されないが、実用的な導電性を得る必要から、0.02μm以上が好ましく、転写フィルムに高い柔軟性を付与するために、1μm以下の範囲が好ましい。成膜法は特に限定されるものではなく、真空成膜法や電析法、無電解めっき法、ゾルゲル法などの方法で成膜される。生産性の観点で、真空成膜法が好ましく、真空成膜法の中でも、高い透明性と導電性が得られ易いスパッタリングが特に好ましい。
【0025】
本発明の転写フィルムに用いる接着層としては、接着性のほかに、可視光線の透過性を備える樹脂であることが好ましい。接着層と透明導電層が積層された積層膜の状態で70%以上の可視光透過率があれば、表示デバイスなどの通常の用途に用いることが可能であるので好ましい。可視光透過率が70%未満だと、表示デバイス用途に向かず、太陽光発電パネル用途においては、発電効率を著しく落とすため使用に耐えることが困難となる。
なお、本発明で説明する可視光線とは、実用上必要な可視波長の光線をいい、例えば、緑550nmを代表波長として透過率を得る。
【0026】
接着層には、樹脂成分のほかに、導電膜(透明導電層)との接着性やクラック防止などフィルムの信頼性向上のために、フィラーや着色顔料、体質顔料を含んでいても構わない。また、接着後、熱や光で硬化する材料であっても構わない。すなわち、被着体を介して活性な光線を照射可能な場合、接着層に既知の光硬化性樹脂を用いて均一に短時間で硬化することで、耐環境に優れる透明導電膜を提供できる。一方、被着体を介して活性な光線を照射できない場合は、接着層に熱硬化性樹脂を適用することで、耐環境に優れる透明導電膜を提供できる。これらの接着層の組成物は硬化する過程でガスの放出が少ない材料であることが好ましい。ガスの放出が多いと、透明導電膜にピンホールができやすい。
【0027】
接着層11のタック強度は、25℃において8gf〜30gfであることが好ましい。また、接着層11のタック強度は、60℃において80gf以上であることが好ましい。これにより、金属層13と透明導電層12と接着層11の積層体をラミネートにより付設することが容易になる。
【0028】
上記タック強度の値は、Bステージ状態(本発明の転写フィルムを使用する際の状態)の接着層11の表面について、レスカ株式会社製のプローブタッキング試験機を用いて、JISZ0237−1991に記載の方法(プローブ直径5.1mm、引き剥がし速度10mm/s、接触荷重100gf/cm、接触時間1s)により測定される。
【0029】
接着層11は、樹脂成分と、フィラーとを含有することが好ましい。この場合、接着層11は、樹脂成分100質量部に対して、フィラーを40〜180質量部含有することが好ましい。フィラーの含有量が40質量部未満であると、ダイシングの際にチップクラックが多発しやすくなる傾向にある。フィラーの含有量が180質量部を超えると、接着層11の弾性率が高くなって反りや剥離が生じやすくなる傾向にある。
【0030】
接着層11中の樹脂成分は、10万以上の重量平均分子量を有する高分子量成分と、熱硬化性成分とを含有することが好ましい。樹脂成分全体質量を基準として、高分子量成分の含有割合は15〜40質量%であり、熱硬化性成分の含有割合は60〜85質量%であると好適である。また、接着層11は、熱硬化性成分及び高分子量成分を合計で40〜85体積%含み、フィラーを15〜60体積%含むことが好適である。フィラーの含有量が15体積%未満であると、ダイシングの際にチップクラックが多発しやすくなる傾向にある。フィラーの含有量が60体積%を超えると、接着層11の弾性率が高くなって反りや剥離が生じやすくなる傾向にある。
【0031】
高分子量成分の重量平均分子量は、好ましくは10万〜100万であり、より好ましくは10万〜40万である。この重量平均分子量が10万未満であると接着層11の耐熱性が低下する傾向にある。この重量平均分子量が100万を超えると接着層11のフロー性が低下する傾向にある。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0032】
高分子量成分のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃〜50℃、より好ましくは−20℃〜40℃、さらに好ましくは−10℃〜40℃である。高分子量成分のTgがこれら数値範囲内にあることにより、ウエハダイシング時に転写フィルム10が切断しやすく、かつ樹脂くずが発生し難くなる。また接着層11の耐熱性がより高くなる。Tgが−20℃〜40℃であるとき、高分子量成分の重量平均分子量は10万〜90万であることが好ましい。Tgが−10℃〜40℃であるとき、高分子量成分の重量平均分子量は20万〜85万であることが好ましい。
【0033】
高分子量成分の好適な具体例としては、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂及び変性ポリフェニレンエーテル樹脂が挙げられる。これらは架橋性官能基を有することが好ましい。架橋性官能基としては、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、及びカルボキシル基が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
高分子量成分は、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートを含むモノマを重合して得られる、重量平均分子量が10万以上である、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体であってもよい。この(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びアクリルゴムが挙げられ、アクリルゴムがより好ましい。
【0035】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主なモノマー単位として含む共重合体から構成されるゴムである。アクリルゴムは、ブチルアクリレート及びアクリロニトリルを含む共重合体や、エチルアクリレート及びアクリロニトリルを含む共重合体であってもよい。
【0036】
熱硬化性成分は、熱硬化性樹脂及びその硬化剤を含む成分である。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好適に用いられる。エポキシ樹脂を用いることにより、半導体チップを実装する場合に要求される程度の耐熱性及び耐湿性を容易に得ることができる。
【0037】
エポキシ樹脂は、硬化により接着作用を示すものであれば特に制限されない。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂のような二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂として、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂を採用することもできる。
【0038】
Bステージ状態での接着層11の可撓性を高くするために、エポキシ樹脂の分子量又は重量平均分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることが更に好ましい。一方で、硬化後の接着層11の耐熱性を高めるために、エポキシ樹脂の分子量は、800以上であることが好ましい。可撓性及び耐熱性をバランスよく良好にするためには、熱硬化性成分は、分子量が500以下のエポキシ樹脂と分子量が800以上のエポキシ樹脂との両方を含むことが好ましい。例えば、分子量500以下のビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂50〜90質量部と、分子量が800〜3000の多官能エポキシ樹脂10〜50質量%とを併用することが好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。その具体例としては、アミン類;ポリアミド;酸無水物;ポリスルフィド;三フッ化ホウ素;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が挙げられる。
【0040】
接着層11に含まれるフィラーは無機フィラーであると好ましい。その具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、及びアンチモン酸化物が挙げられる。これらの中で、熱伝導性向上のためには、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ及び非晶性シリカ等が好ましい。また、溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ及び非晶性シリカ等が好ましい。さらには、ダイシング性を向上させるためには、アルミナ及びシリカが好ましい。
【0041】
フィラーの平均粒径が0.01μm未満であると接着層11の粘度が大幅に上昇する傾向にある。また、フィラーの平均粒径が5μmを超えると、接着層11の薄膜化が困難となり、接着層11表面の平滑性を保つことが難しくなる傾向にある。したがって、接着層11の流動性及び表面平滑性を良好にする点から、フィラーの平均粒径は、0.01〜5μmが好ましい。さらに、流動性により優れる観点から、フィラーの平均粒径の下限としては、0.1μmがより好ましく、0.3μmが特に好ましい。また平滑性により優れる観点から、フィラーの平均粒径の上限としては3μmがより好ましく、1μmが特に好ましい。
【0042】
フィラーの平均粒径の値は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック)を用いて測定される。具体的には、フィラー0.1〜1.0gを秤量し、超音波により分散した後、その粒度分布を測定し、その分布での累積質量が50%となる粒子径をフィラーの平均粒径とする。
【0043】
フィラーの比表面積は、流動性及び表面平滑性を良好にする点から、2〜200m/gが好ましい。さらに、流動性により優れる観点から、比表面積の上限は50m/gがより好ましく、10m/gが特に好ましい。
【0044】
上記比表面積は、ブルナウアー・エメット・テーラー(Brunauer−Emmett−Teller)式により、フィラーに窒素を吸着させて測定されるBET比表面積の値である。BET比面積は市販されているBET装置により測定できる。
【0045】
接着層11は、タック強度及びシート状での取扱い性を優れたものとするために、上述の各成分の他、硬化促進剤、触媒、各種添加剤及びカップリング剤等の成分を必要に応じて含んでもよい。
【0046】
接着層11の膜厚は1〜250μmであると好ましい。この膜厚が1μmよりも薄いと応力緩和効果や接着性が低下する傾向にある。この膜厚が250μmよりも厚いと、透明導電層の内部応力により、透明導電層に亀裂や表面荒れが発生する上、経済的でなくなる。なお、接着性をより高め、透明導電層の表面荒れ抑制のため、接着層11の膜厚は2〜50μmがより好ましく、3〜20μmがさらに好ましい。
【0047】
硬化前(Bステージ状態)の接着層11の25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は、ダイシング性により優れる観点から、200〜3000MPaであると好ましい。また、ダイシング性を更に良好にし、かつウエハとの密着性を高める点から、上記貯蔵弾性率は500〜2000MPaであるとより好ましい。硬化前(Bステージ状態)の接着層11の80℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は0.1〜10MPaであると、80℃でウエハに良好にラミネートできるので好ましい。特にウエハへの密着性を高める点から、この貯蔵弾性率は0.5〜5MPaであるとより好ましい。
【0048】
硬化後(Cステージ状態)の接着層11の170℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は、良好なワイヤボンディング性を得るために20〜600MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率は、より好ましくは40〜600MPa、さらに好ましくは40〜400MPaである。
【0049】
本発明の転写フィルムにおいて、カバーフィルムは、必要に応じ使用される。カバーフィルムとしては、化学的および熱的に安定で、接着層との剥離が容易であるものが望ましい。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール等の薄いシート状のもので表面の平滑性が高いものが好ましい。剥離性を付与するために表面に離型処理をしたものも含まれる。
【0050】
転写フィルム10を、接着層11の透明導電層12の側とは反対側の表面が被着体と接するように積層した後、仮支持体14を金属層13から剥離してこれを除去すると、被着体上に接着層11、透明導電層12及び金属層13がこの順に形成された状態となる。すなわち、接着層11と透明導電層12と金属層13とを有しこれらが被着体側からこの順で積層している透明導電膜付き接着フィルムが得られる。この状態で、必要に応じ、接着層を光や熱で硬化する。むろん、被着体への積層後、仮支持体を除去する前に、接着層を硬化しても差し支えない。透明導電膜付き接着フィルムをそのまま用いることもできるし、金属層13や透明導電層12をフォトリソグラフィーなどの既知の方法でパターニングし透明導電層12や接着層11を露出させても良い。金属層13や透明導電層12の接着層11とは反対側の面に更に他の接着層を積層してもよい。
【0051】
転写フィルム10を被着体に接着層11が半硬化状態のまま積層し、部分的に接着層11を加熱などにより硬化した後、硬化していない部分の接着層11を剥離する方法により、被着体表面のうち必要箇所のみ選択的に接着層11を積層することもできる。
【0052】
転写フィルム10は、仮支持体14上に金属層13を形成する工程と、金属層13上に透明導電層12を形成する工程と、接着層11を形成する工程とを備える方法により製造することができる。
【0053】
接着層11は、例えば、上述の樹脂成分、フィラー、有機溶媒及び必要に応じて他の成分を含有するワニスを準備する工程と、ワニスの層を仮支持体14上の透明導電層12上に形成する工程と、透明導電層12上のワニスを加熱により乾燥して接着層11を形成する方法により形成される。
【0054】
あるいは、接着層11は、上述の樹脂成分、フィラー、有機溶媒及び必要に応じて他の成分を含有するワニスを準備する工程と、ワニスの層を基材フィルム上に形成する工程と、基材フィルム上のワニスを加熱により乾燥して接着層11を形成する工程と、接着層11を透明導電層12上に転写する方法により形成される。
【0055】
ワニスは上記各成分を有機溶媒中で混合、混練して調製される。混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。
【0056】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、各成分を均一に溶解又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、及びキシレンが挙げられる。これらの中では、乾燥速度が速く、価格が安い点で、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンが好ましい。
【0057】
ワニスの調製に用いられた有機溶媒は、ワニスの乾燥後、残存させないことが好ましいが、形成される接着層11中に残存揮発分として含まれる場合が多い。接着層11中の残存揮発分の割合は、接着層11全質量を基準として0.01〜3質量%であることが好ましい。耐熱信頼性の観点から、残存揮発分の割合は、0.01〜2質量%がより好ましく、0.01〜1.5質量%が更に好ましい。
【0058】
ワニスの乾燥の条件は、使用した有機溶媒が十分に揮発する条件であれば特に制限はなく、例えば、加熱温度が60℃〜200℃、加熱時間が0.1〜90分間の条件であってもよい。
【0059】
接着層を基材フィルムから金属層に転写する方法としては、プレス又はホットロールラミネートする方法が挙げられる。連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールラミネートする方法が好ましい。
【0060】
本発明は、以上で説明した実施形態に制限されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、接着層は多層構造を有していてもよい。この場合、同じ又は異なる組成を有する複数の接着層が積層される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0062】
(実施例1)
エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量160、東都化成株式会社製、商品名「YD−8170C」)29質量部、及び、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210、東都化成株式会社製、商品名「YDCN−703」)9.7質量部を準備した。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「プライオーフェンLF2882」)27.4質量部を準備した。さらに、エポキシ基含有アクリル系共重合体としてエポキシ基含有アクリルゴム(重量平均分子量80万、グリシジルメタクリレート3質量%、Tg:−7℃、ナガセケムテックス株式会社製、商品名「HTR−860P−3DR」)28.3質量部を準備した。硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、商品名「キュアゾール2PZ−CN」)0.1質量部を準備した。フィラーとして、シリカフィラー(アドマファイン株式会社製、商品名「S0−C2」、比重:2.2g/cm、モース硬度:7、平均粒径:0.5μm、比表面積:6.0m/g)94.4質量部を準備した。また、日本ユニカー株式会社製、γ−メルカプトプロピルメトキシシラン「A−189」(商品名)0.25質量部、及び日本ユニカー株式会社製、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン「A−1160」(商品名)0.5質量部の2種のシランカップリング剤を準備した。以上の各材料を所定の容器に投入した後、さらにシクロヘキサノンを投入して撹拌することにより混合し、真空脱気することにより接着剤のワニスを得た。
【0063】
得られたワニスを、表面に離型処理を施した厚さ35μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)上に塗布した。次いで、90℃で10分間、120℃で5分間の加熱により乾燥して、膜厚が60μmでBステージ状態にある接着層を形成した。
【0064】
一方、表面に離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A70)の離型面上に、株式会社アルバック製、抵抗加熱蒸着装置を用いて、アルミニウム層を抵抗加熱蒸着により形成した。金属層であるアルミニウム層の膜厚は0.2μmであった。ついで、金属層であるアルミニウム層上に、株式会社アルバック製、スパッタ装置を用いて、透明導電層としてITO(酸化インジウム錫)層をスパッタリングにより形成した。この際、スパッタリングターゲットとして5インチ×15インチのITO焼結体を用い、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用い、1アンペアのDCスッパタリングにより成膜レートを0.06μm/分とし、0.03μmの厚みとした。
【0065】
形成されたITO層上に上述の接着層を60℃でラミネートした。こうして、仮支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムA70上にアルミニウム層及びITO層、接着層がこの順に形成された転写フィルムを得た。
【0066】
(比較例1)
アルミニウム層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを作製した。
【0067】
(評価)
コーニング社製1737ガラス基板を準備した。そして、上述の実施例1の転写フィルムから接着層側の支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラス基板面に接着層が接する向きで転写フィルムをラミネートした。ラミネートは接着シートを60℃に加熱しながら行った。次いで、アルミニウム層から仮支持体を剥離して、アルミニウム層を露出させた。実施例1の試料は、アルミニウム層が露出された。一方、比較例1の試料は、仮支持体とともにITOが剥離し、接着層が露出された。その後、170℃で1時間加熱することにより、接着層を硬化した。実施例1の試料のみ、アルミニウム層をエッチングするため、リン酸中に浸漬し、アルミニウムを除去し、水洗した。
【0068】
得られた試料のITO表面の導電性と、接着層/ITO層の積層体の可視光線透過率を、測定した。その結果、実施例1の転写フィルムを用いた場合は、150Ω/□のシート抵抗で導電性が確認されたのに対して、比較例1の転写フィルムを用いた場合は、表面の導電性が観察されなかった。実施例1の可視光線透過率(550nm)は、80%であった。
【0069】
(実施例2)
仮支持体として、非シリコーン系離型処理PETフィルム(東洋紡績株式会社製、TN100)の離型面にアルミニウム層を電子ビーム真空蒸着した仮支持体上の金属層を用意した。アルミニウムの膜厚は、0.3μmである。ついで、金属層であるアルミニウム層上に、株式会社アルバック製スパッタ装置を用いて、透明導電層としてITO(酸化インジウム錫)層をスパッタリングにより形成した。この際、スパッタリングターゲットとして5インチ×15インチのITO焼結体を用い、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用い、1アンペアのDCスッパタリングにより成膜レートを0.06μm/分とし、0.03μmの厚みとした。ついで、接着層として、下記の光硬化性の接着層をスピンコートした。スピンコート条件は、1000rpmで10秒間である。次いで、仮支持体上のネガ型感光性接着層を90℃のホットプレートで3分間乾燥した。カバーフィルムとして、ポリエチレンフィルムを載せ、転写フィルムとした。
【0070】
(光硬化性の接着層の塗液):
ポリマーとしてスチレン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート共重合樹脂を用いた(ポリマーA)。重量平均分子量は約70,000、酸価は約75mgKOH/gである。
ポリマーA 823質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(モノマー) 175質量部
2−(o−クロロフェニル)−4,5−
ジフェニルイミダゾール二量体(開始剤) 10.0質量部
N,N′−テトラエチル−4,4′−
ジアミノベンゾフェノン(開始剤) 1.5質量部
2−メルカプトベンズイミダゾール(開始剤) 1.0質量部
シリコーン(添加剤) 0.35質量部
2−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(添加剤) 41.6質量部
マロン酸(添加剤) 5.0質量部
水(添加剤) 8.9質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) 750質量部
【0071】
(転写フィルムの使用試験)
転写フィルムのカバーフィルムを剥離し、コーニング社製1737ガラス基板に光硬化性の接着層の面が触れるようにラミネータで加熱圧着し、ガラス基板上に、接着層、透明導電層、金属層、仮支持体が積層された状態にした。ラミネート条件は、90℃で速度0.2m/分である。次いで、ガラス基板側の光硬化性の接着層に、超高圧水銀灯の平行露光機で、100mJ/cm露光を施した。ついで、仮支持体を剥がし、アルミニウムを露出させた。ついで、230℃のオーブンでガラス基板ごと加熱を行い、接着層を完全に硬化した。
得られたアルミニウム膜の一部にリン酸を主成分とする公知のエッチャントを滴下し、5分まち、アルミニウム膜の一部をエッチング除去後、水洗した。ガラス基板上の透明導電層ITOが露出した部分の550nmの光線透過率は、83%であった。また、ITOが露出した部分とアルミニウム膜にテスターを当て、導電性のあることを確認した。ガラス基板上に所望の透明導電膜ITOを得た。
【0072】
(比較例2)
アルミニウム層(金属層)を形成しなかったこと以外は実施例2と同様にして、転写フィルムを作製した。その後、実施例2と同様に転写フィルムの使用試験を行い、仮支持体を剥離した結果、仮支持体側に導電性が観察され、ガラス基板側の膜表面の導電性が観察されなかった。ガラス基板上に所望の透明導電膜ITOを得られなかった。
【0073】
(実施例3)
実施例2の、アルミニウムの代わりに銀を抵抗加熱真空蒸着成膜した点以外同じ方法で、転写フィルムを作製した。さらに、実施例2と同様の転写フィルムの使用試験を行い、ガラス基板上に透明導電膜ITOを得た。ガラス基板上のITO膜の露出した部分の550nmの光線透過率は、77%であった。
【0074】
(実施例4)
実施例2のアルミニウム層の膜厚を0.005μmの半透過にした点以外、実施例2と同じ方法で、転写フィルムを作製した。
(転写フィルムの使用試験)
転写フィルムのカバーフィルムを剥離し、コーニング社製1737ガラス基板に光硬化性の接着層の面が触れるようにラミネータで加熱圧着し、ガラス基板上に、接着層、透明導電層、金属層、仮支持体が積層された状態にした。ラミネート条件は、90℃で速度0.2m/分である。次いで、仮支持体側から、光硬化性の接着層に、超高圧水銀灯の平行露光機で、300mJ/cm露光を施した。ついで、仮支持体を剥がし、アルミニウムを露出させた。ついで、150℃のオーブンでガラス基板ごと加熱を行い、接着層を完全に硬化した。
得られたアルミニウム膜の一部にリン酸を主成分とする公知のエッチャントを滴下し、5分まち、アルミニウム膜の一部をエッチング除去後、水洗した。ガラス基板上の透明導電層ITOが露出した部分の550nmの光線透過率は、83%であった。また、ITOが露出した部分にテスターを当て、導電性のあることを確認した。ガラス基板上に所望の透明導電膜ITOを得た。
上記結果から、本発明の転写フィルムによれば、透明導電層をフィルム転写法で形成することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0075】
10‥転写フィルム、11‥接着層、12‥透明導電層、13‥金属層、14‥仮支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、前記仮支持体上に形成された金属層と、前記金属層上に形成された透明導電層と、前記透明導電層上に形成された接着層と、を備える転写フィルム。
【請求項2】
前記金属層は3μm以下の厚みを有する、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記金属層は前記仮支持体上へ、スパッタリング又は蒸着により形成されるものである、請求項1又は2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記透明導電層は、1μm以下の厚みを有する請求項1〜3のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記透明導電層は、前記仮支持体上に形成された金属層へ、スパッタリング又は蒸着により形成されるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項6】
前記接着層と前記透明導電層の積層膜が70%以上の可視光透過率を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項7】
前記接着層は、100質量部の樹脂成分と、40〜180質量部のフィラーと、を含有し、前記樹脂成分は、
(A)架橋性官能基を有し、重量平均分子量が10万〜40万であり、かつガラス転移温度が−50〜50℃である高分子量成分15〜40質量%と、
(B)分子量800以上のエポキシ樹脂を含む熱硬化性成分60〜85質量%と、を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項8】
硬化前の前記接着層は、25℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が200〜3000MPaであり、かつ80℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が0.1〜10MPaである、請求項1〜7のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項9】
前記仮支持体は、ダイシングテープである、請求項1〜8のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項10】
前記接着層は、光硬化性樹脂を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の転写フィルム。
【請求項11】
前記金属層と、前記金属層上に形成された透明導電層と、前記透明導電層上に形成された接着層と、を備える透明導電膜付き接着フィルム。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の転写フィルムから仮支持体を剥離して得られる請求項11に記載の透明導電膜付き接着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20333(P2011−20333A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166790(P2009−166790)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】